JP7348095B2 - 流動接触分解触媒の製造方法 - Google Patents
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ゼオライトおよびバインダー成分の塩基性塩化アルミニウムを含むマトリックスと炭酸ランタンとを含む混合スラリーを得る第一工程と、
前記第一工程で得られた混合スラリーを噴霧乾燥することにより流動接触分解触媒の前駆体を得る第二工程と、
前記第二工程で得られた流動接触分解触媒の前駆体を、pHが5.5~7.5の範囲にあり、温度が40~70℃の範囲にある水溶液に懸濁させた後、濾別を行いさらに温水洗浄して洗浄ケーキ1を得る第三工程と、
前記第三工程で得られた洗浄ケーキ1をさらにpHを5~7の範囲に調整した硫酸アンモニウム水溶液に懸濁させた後、濾別を行いさらに温水洗浄して洗浄ケーキ2を得る第四工程と、
前記第四工程で得られた洗浄ケーキ2を、さらに温水中に懸濁させた後、RE2O3前駆体を含む水溶液を添加・撹拌し、濾別を行いさらに温水洗浄後、乾燥して希土類置換流動接触分解触媒を得る第五工程と、
を含む流動接触分解触媒の製造方法である。
(1)前記第二工程において、スプレー出口温度が200~250℃の範囲であること、
(2)前記第三工程の懸濁時に用いる水溶液には、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムのいずれか1つのナトリウム塩を含むこと、
(3)前記第三工程の懸濁液中のアニオン量は、バインダー由来のAl2O3量[Al2O3(バインダー成分)]に対するアニオン量[A-]のモル比が、[A-]/[Al2O3(バインダー成分)]=0.1~1の範囲である、ただし、[A-]にOH-やバインダー由来のCl-は含まないこと、
などがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
本発明に係わる流動接触分解触媒は、塩基性塩化アルミニウムをバインダー成分とし、ゼオライトおよび炭酸ランタンを触媒基準でLa2O3として5質量%以上含有するものである。本発明で用いる結晶性アルミノシリケートゼオライト(以下、ゼオライトという)としては、通常の接触分解触媒に使用されるゼオライトが使用可能であり、例えば、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、モルデナイト、ZSM型ゼオライトなどの合成ゼオライトおよび天然ゼオライトなどが挙げられる。これらのゼオライトは通常の接触分解触媒に使用される場合と同様に、水素、アンモニウムおよび多価金属から選ばれるカチオンでイオン交換された形で使用される。Y型ゼオライト、特に超安定化Y型ゼオライト(USY)は耐水熱安定性に優れているので好適である。
前述の流動接触分解触媒は、前述の多孔性無機酸化物マトリックス前駆物質として、塩基性塩化アルミニウムに前述のゼオライトを加えて均一に分散させ、得られた混合物スラリーに前述の炭酸ランタンを加えて均一に分散させた混合物スラリーを以下の工程で噴霧乾燥および洗浄することによって製造することができる。
ゼオライトとバインダー成分の塩基性塩化アルミニウムを含むマトリックスと炭酸ランタンを触媒基準でLa2O3として5質量%以上含む混合スラリーを得る工程を第一工程とする。
ここで得られる混合スラリーは、その後の噴霧乾燥工程に適応するために固形分濃度が25~50質量%の範囲で調整することが好ましい。固形分濃度が、25質量%未満では、触媒の嵩密度の低下や耐摩耗性の悪化があり、50質量%以上では、調合スラリーの粘度上昇により噴霧乾燥が困難になる場合がある。
前記第一工程で得られた混合スラリーを噴霧乾燥することにより流動接触分解触媒の前駆体を得る工程を第二工程とする。
本工程での噴霧乾燥の条件は、スプレー出口温度が200~250℃の範囲であることが好ましい。出口温度が、200℃以下では触媒を洗浄した後に粒子形状を保つことが困難となり、耐摩耗性が悪化し、一方、250℃以上では洗浄した後の粒子形状は保てるものの、乾燥速度が速くなるため触媒粒子に割れなどが発生しやすくなり、かえって耐摩耗性が悪化する場合がある。
前記第二工程で得られた流動接触分解触媒の前駆体を、pH5.5~7.5の範囲、40~70℃の水溶液に懸濁させた後、濾別を行いさらに温水洗浄して洗浄ケーキ1を得る工程を第三工程とする。
本工程で懸濁時に用いる水溶液には、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムのナトリウム塩を含む水溶液であることが好ましく、水溶液のpHが所望の範囲内になるように調整して用いることが好ましい。また、水酸化ナトリウムの場合は、硫酸アンモニウムを同時に用いることが好ましい。
前記第三工程で得られた洗浄ケーキ1をさらにアンモニア水でpHを5~7の範囲に調整した硫酸アンモニウム水溶液に懸濁させた後、濾別を行いさらに温水洗浄して洗浄ケーキ2を得る工程を第四工程とする。
前記第四工程で得られた洗浄ケーキ2を、さらに温水中に懸濁させた後、RE2O3前駆体を含む水溶液を添加・撹拌し、濾別を行いさらに温水洗浄後、乾燥して希土類置換した流動接触分解触媒を得る工程を第五工程とする。
本発明の流動接触分解触媒の成分組成のうちアルミニウム、ランタン、ナトリウムは、プラズマ発光分析(ICP)法で、塩素は銀滴定法、硫黄は燃焼法により測定した。
本発明の流動接触分解触媒の強熱減量(LOI:Loss on ignition)は、1000℃に加熱し、揮発分(水分等)による重量減少を測定した。
第五工程で得た流動接触分解触媒を、600℃で2時間加熱処理したものの物性評価を行った。
<全比表面積SA、マトリックスの比表面積MSA,ゼオライトの比表面積ZSAの測定方法>
全比表面積SAは、素吸着―脱着等温線を基にしてBET(Brunauer-Emmett-Teller)の式にて算出し、マトリックスの比表面積MSAは、t-plot解析にて算出し、ゼオライトの比表面積ZSAは、全比表面積からマトリックスの比表面積を引いて求めた。
本発明の流動接触分解触媒は、各々試料の粒度分布の測定を、堀場製作所(株)製レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA-950V2)にて行うことができる。具体的には、光線透過率が70~95%の範囲となるように試料を溶媒(水)に投入し、循環速度:2.8L/min、超音波印加:3min、反復回数:30で測定した。メディアン径(D50)を平均粒子径として採用し、本発明の流動接触分解触媒の平均粒子径は、40~100μmが好適であり、50~90μmがより一層好ましい。
本発明の流動接触分解触媒は、水銀圧入法により測定した4~1000nmの細孔径範囲の細孔容積(PV)が0.05~0.50ml/g、好適には0.10~0.45ml/gの範囲内にあることが好ましい。流動触媒として使用した場合、細孔容積が0.05ml/gを下回ると、十分な接触分解活性が得られないおそれがある。一方で、細孔容積が0.50ml/gを超えるものは触媒強度が低下するおそれがある。
本発明の流動接触分解触媒の嵩密度(ABD)の測定方法は、25mlのシリンダーを用いて、触媒の質量を測定し、単位体積当たりの質量から嵩密度を計算した。嵩密度は0.65g/mlを下限とすることが好ましい。嵩密度が0.65g/mlより低い場合は、触媒が反応塔外に飛散するなどのおそれがある。
本発明の流動接触分解触媒の耐摩耗性指数(CAI)は小孔を備えた蓋が上下に取り付けられた筒状容器内に所定量(例えば、100g)の流動接触分解触媒を入れた後、下方の小孔から空気を234m/sの速度で送り、12~42時間の間で摩耗して粉化した触媒の重量を測定し、粉化した重量と初期の重量との割合を耐摩耗指数として求めた。
<第一工程>
スチームジャケット付きのチタン製のタンク(容量60L)に、10.14kgの塩化アルミニウム6水和物と38.9kgの純水とを入れて十分に撹拌し、塩化アルミニウム水溶液を得た。この塩化アルミニウム水溶液を撹拌しながら95℃まで加温し、液温を保持したまま、純度99.9%のアルミニウムホイル(アルミ箔)5.67kgを6時間かけて少量ずつ(15.75g/分)投入して、アルミ箔を溶解させた。なお、アルミ箔の溶解時には、大量の水素ガスが発生し、水溶液中の水が水蒸気として蒸発するため、タンク内の水溶液の貯留量が一定になるように95℃の純水を補給した。アルミ箔が完全に溶解した後、この水溶液を35℃まで冷却して、54.7kgの塩基性塩化アルミニウム水溶液を得た。この塩基性塩化アルミニウム水溶液は、pH3.6であり、Al2O3として23.5質量%の塩基性塩化アルミニウムを含んでいた。このようにして調製した塩基性塩化アルミニウム水溶液3191.5gと水3420.0gとを混合した。次いで、この撹拌混合液に、超安定化Y型ゼオライトをシリカ-アルミナ基準で1500.0gとカオリンを乾燥基準で1600.0gと活性アルミナを乾燥基準で650.0gと炭酸ランタン(La2O3濃度:69.9質量%)を715.3gとを順次添加し、良く撹拌し調合スラリー(混合スラリー)を得た。得られた調合スラリーはコロイドミルを用いて粉砕処理を行い、固形分濃度42質量%、pH4.6だった。
調合スラリーを液滴として、入口温度が480℃、出口温度が240℃に設定された噴霧乾燥器で噴霧乾燥を行い、平均粒子径が70μmの球状粒子の触媒前駆体1を得た。
触媒前駆体1を乾燥基準で300gと7質量%の炭酸水素ナトリウム溶液とを、撹拌しつつ60℃に維持した純水1500g中にpH6.5に調整しながら加え、5分間撹拌した。吸引濾過した後、濾過残渣に60℃の純水1500gを掛け水して洗浄し、洗浄ケーキ1aを得た。
洗浄ケーキ1aを60℃の純水1500gに再懸濁した水溶液に、硫酸アンモニウム15.2gを加え、さらにpH5~7に調整した水溶液を、60℃で3分間撹拌した。吸引濾過した後、濾過残渣に60℃の純水1500gを掛水して洗浄した。この操作を2回繰り返し、洗浄ケーキ2aを得た。
次いで、洗浄ケーキ2aを60℃の純水1500gに再懸濁し、La2O3換算で21.0質量%の塩化ランタン溶液を33.4g添加し、20分間撹拌した。吸引濾過した後、濾過残渣に60℃の純水1500gを掛け水して洗浄した後、濾過残渣粒子を150℃で一晩乾燥させ、流動接触分解触媒1(平均粒子径が70μmの球状粒子)を得た。
第三工程として、実施例1の第二工程で得た触媒前駆体1を乾燥基準で300gと10質量%の炭酸ナトリウム水溶液とを、撹拌しつつ60℃に維持した純水1500g中にpH6.5に調整しながら加え、5分間撹拌した。吸引濾過した後、濾過残渣に60℃の純水1500gを掛け水して洗浄し、洗浄ケーキ1bを得た。洗浄ケーキ2bを得る第四工程以降は実施例1と同様に行い流動接触分解触媒2を得た。
第三工程として、60℃の純水1500gに硫酸アンモニウムを22.8g溶解し、この硫酸アンモニウム溶液を60℃に維持し撹拌中に、実施例1の第二工程で得た触媒前駆体1を乾燥基準で300gと10質量%の水酸化ナトリウム溶液とをpH6.5に調整しながら加え、5分間撹拌した。吸引濾過した後、濾過残渣に60℃の純水1500gを掛け水して洗浄し、洗浄ケーキ1cを得た。洗浄ケーキ2cを得る第四工程以降は実施例1と同様に行い流動接触分解触媒3を得た。
第二工程として、実施例1の第一工程で得た調合スラリーを液滴として、入口温度が415℃、出口温度が215℃に設定された噴霧乾燥器で噴霧乾燥を行い、平均粒子径が70μmの球状微粒子の触媒前駆体2を得た。第三工程として、60℃の純水1500gに硫酸アンモニウムを14.4g溶解し、この硫酸アンモニウム溶液を60℃に維持し撹拌中に、触媒前駆体2を乾燥基準で300gと10質量%の水酸化ナトリウム溶液とをpH6.5に調整しながら加え、5分間撹拌した。吸引濾過した後、濾過残渣に60℃の純水1500gを掛け水して洗浄し、洗浄ケーキ1dを得た。洗浄ケーキ2dを得る第四工程以降は実施例1と同様に行い流動接触分解触媒4を得た。
第三工程として、実施例1の第二工程で得た触媒前駆体1を乾燥基準で300gと15質量%のアンモニウム溶液とを、撹拌しつつ60℃に維持した純水1500g中にpH6.5に調整しながら加え、5分間撹拌した。吸引濾過した後、濾過残渣に60℃の純水1500gを掛け水して洗浄し、洗浄ケーキ1eを得た。洗浄ケーキ2eを得る第四工程以降は実施例1と同様に行い流動接触分解触媒5を得た。
第三工程として、実施例1の第二工程で得た触媒前駆体1を乾燥基準で300gと10質量%の水酸化ナトリウム溶液とを、撹拌しつつ60℃に維持した純水1500g中にpH6.5に調整しながら加え、5分間撹拌した。吸引濾過した後、濾過残渣に60℃の純水1500gを掛け水して洗浄し、洗浄ケーキ1fを得た。洗浄ケーキ2fを得る第四工程以降は実施例1と同様に行い流動接触分解触媒6を得た。
第三工程として、実施例1の第二工程で得た触媒前駆体1を乾燥基準で300gを撹拌しつつ60℃に維持した純水1500g中に加え、5分間撹拌した。5分撹拌後のpHは4.7だった。吸引濾過にて所定の濾過時間を超過したため、触媒調製を中断した。
以上、流動接触分解触媒1~7の製造条件をまとめて、表1に示す。なお、流動接触分解触媒2~6も流動接触分解触媒1と同様、平均粒子径70μmの球状粒子であった。
上記で調製した流動接触分解触媒1~6について、耐摩耗性指数(CAI)を測定し、表2に示す。発明例の流動接触分解触媒1から4および6は、バインダーの加水分解を抑制でき、結合力を保った為、十分な耐摩耗性を有している。一方、比較例の流動接触分解触媒5は、バインダーの加水分解が進行し、結合力が低下し耐摩耗性が悪化する結果であった。
Claims (4)
- バインダー成分、ゼオライトおよび炭酸ランタンを触媒基準でLa2O3として5質量%以上含む流動接触分解触媒の製造方法であって、
ゼオライトおよびバインダー成分の塩基性塩化アルミニウムを含むマトリックスと炭酸ランタンとを含む混合スラリーを得る第一工程と、
前記第一工程で得られた混合スラリーを噴霧乾燥することにより流動接触分解触媒の前駆体を得る第二工程と、
前記第二工程で得られた流動接触分解触媒の前駆体を、pHが5.5~7.5の範囲にあり、温度が40~70℃の範囲にある水溶液に懸濁させた後、濾別を行いさらに温水洗浄して洗浄ケーキ1を得る第三工程と、
前記第三工程で得られた洗浄ケーキ1をさらにpHを5~7の範囲に調整した硫酸アンモニウム水溶液に懸濁させた後、濾別を行いさらに温水洗浄して洗浄ケーキ2を得る第四工程と、
前記第四工程で得られた洗浄ケーキ2を、さらに温水中に懸濁させた後、RE2O3前駆体を含む水溶液を添加・撹拌し、濾別を行いさらに温水洗浄後、乾燥して希土類置換流動接触分解触媒を得る第五工程と、
を含み、
前記第三工程の懸濁時に用いる水溶液には、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、および水酸化ナトリウムのうち少なくともひとつが含まれる流動接触分解触媒の製造方法。 - 前記第二工程において、スプレー出口温度が200~250℃の範囲であること、
を特徴とする請求項1に記載の流動接触分解触媒の製造方法。 - 前記第三工程の懸濁時に用いる水溶液には、以下の(ア)~(ウ)のうち少なくともひとつが含まれること、
を特徴とする請求項1または2に記載の流動接触分解触媒の製造方法。
(ア)炭酸ナトリウム
(イ)炭酸水素ナトリウム
(ウ)水酸化ナトリウムと硫酸アンモニウム - 前記第三工程の懸濁液中のアニオン量は、バインダー由来のAl2O3量[Al2O3(バインダー成分)]に対するアニオン量[A-]のモル比が、[A-]/[Al2O3(バインダー成分)]=0.1~1の範囲である、ただし、[A-]にOH-やバインダー由来のCl-は含まないこと、
を特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の流動接触分解触媒の製造方法。
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