JP6981451B2 - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、易接着性ポリエステルフィルムに関する。更に詳しくは、各種ラミ用途、印刷用途において優れた接着性を示すポリエステルフィルムとその製造方法に関する。
ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)フィルムに代表される二軸延伸ポリエステルフィルムは、その優れた透明性、寸法安定性、機械的性質、電気的性質、耐薬品性等から磁気テ−プ、絶縁テープ、写真フィルム、トレーシングフィルム、包装材料、電気絶縁材料、情報記録材料、各種工程紙などの幅広い分野で利用されている。しかしながら、二軸延伸ポリエステルフィルムは高度に結晶配向しているため、フィルム表面は各種接着剤、塗料、インキ、感光剤、磁性塗料、マット剤等に対する接着性が乏しい。そこで、簡便な方法としては、フィルムを高温でアニール処理するほか、製膜工程中の熱固定時に高温での処理を実施することで、フィルム全体の配向を下げて易接着化する方法が採られていたが、かかる従来技術ではフィルムが脆化するという問題点があった。
そこで、一般的な方法として、実際に各種工程で使用される場合にはポリエステルフィルム表面に何らかの易接着処理を施す必要がある場合が多い。以下に例示する。
原料中に結晶融解熱量の小さい成分(例えばポリアルキレングリコールなど)を添加・共重合することにより、表面は融解しやすくなり、これによりインキ密着性、ラミネート強度は増加するという技術が知られている(例えば特許文献1等参照。)。しかし、かかる従来技術は表面の結晶化度が低くなることから、接着性は改善するが、基材側の面の接着性が高温では低下しやすい、ブロッキングしやすいという問題点があった。
また、インラインコートまたはオフラインコートにより表面に易接着性のコート層を積層により、形成される樹脂層によりインキ密着性、ラミネート強度が増加するという技術が知られている(例えば特許文献2等参照。)。しかし、かかる従来技術は製造工程が複雑化する、製品として使用されないフィルム端部を回収時に表層成分が混入するという問題点があった。
一方、印刷時やラミネート時において、インキ密着性、ラミネート強度などの接着性を増加させるために、紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、火炎処理などの物理的方法や、アルカリ処理、プライマー処理などの化学的処理などを実施することが知られている。例えば、表層に形成される極性基によりインキ密着性、ラミネート強度は増加するという技術が知られていた(例えば特許文献3参照)。しかし、コロナ処理によりフィルム表面の結晶化度も高くなるため、易接着化しにくくなるという問題点があった。
特開昭51−90346号公報 特公昭41−8470号公報 特公昭58−25331号公報
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的はコロナ放電処理などの易接着処理など簡単な方法によりフィルム強度と易接着性を併せもつ二軸延伸ポリエステルフィルムとを提供することにある。
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、
1.3〜50μmの厚みを有し、下記要件(1)〜(4)のフィルム物性を満足する二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、テレフタル酸とエチレングリコールを主たる構成成分とし、融点が253℃以上であり、DSCにより得られる40℃/分の速度で溶融状態から冷却される際に観察される再結晶化温度と20℃/分の速度での再結晶化温度の差が0〜15℃であり、ポリオレフィン系樹脂成分を含まず、窒素系化合物及び硫黄系化合物の混入量が1ppm以下であるポリエステル樹脂を加熱溶融し、チルロール上に押し出して未延伸フィルムを得る工程、未延伸フィルムを二軸延伸する工程、二軸延伸フィルムを熱固定後、コロナ処理をする工程を含むことを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
(1)長手方向の熱収縮率が0.5〜10%である。
(2)突き刺し強度が5〜20Nである。
(3)易接着処理面側について、ATR−IRにより求められる表面結晶化度が1.10〜1.35である。
(4)フィルムの易接着処理面の表面結晶化度からフィルムの非処理面の表面結晶化度を引いた値が−0.1〜0の範囲にある。
2.前記二軸延伸ポリエステルフィルムの非易接着処理面の表面結晶化度が1.20〜1.50の範囲にある上記1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
3.前記ポリエステル樹脂が植物由来のエチレングリコール成分から重合されたポリエステル樹脂を含む上記1又は2に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
本発明の積層体は二軸延伸ポリエステルフィルムのそれぞれの面を特定の表面状態とすることで、フィルムの強度を保ちながら、一方の面の表面の結晶化度と配向が低下させることが可能となり、フィルムの接着性を向上できる。
本発明により、従来は両立が困難であった密着性と力学特性とのバランス化のほか、他の材料の混入もなく、表面層の耐熱性に優れた易接着性ポリエステルフィルムを提供することが可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)を主たる構成成分として得られるポリエステル(A)であり、TPAの含有率60質量%以上が好ましく、さらには70質量%以上、特には75質量%以上が好ましく、最も好ましくは80質量%以上である。60質量%未満であると結晶性が低下してしまい、フィルム特性としては十分なものでなくなってしまう。
主たる構成成分として用いるポリエステル(A)は、ジカルボン酸成分として、TPAが90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは98モル%以上である。グリコール成分としてEGが90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは97モル%以上である。このとき重合時にエーテル結合により生成する副生物以外の不純物は含まれないことが好ましい。これらの不純物は非常に少量であっても、ポリエステル樹脂の融点を大幅に低下させるため好ましくない。
ポリエステルは、共重合体であってもよい。ポリエステルに共重合されても良いジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸など挙げられる。ポリエステルに共重合されても良いグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。これらの成分の共重合はポリエチレンテレフタレートの結晶化のしやすさと結晶融点を低下させる効果があり、コロナ放電処理などの処理時の熱により容易に表面の配向結晶を緩和させることになるため、本発明の目的に対して非常に好ましい方法である。
また、ポリエステルの他の構成成分としては特に制限されないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)などのポリエステル(A)以外のポリエステル樹脂が挙げられる。加えて、添加剤として、屈曲時の耐ピンホール性を改善するために、柔軟なポリエーテル成分、ポリカーボネート成分、ポリエステル成分の少なくともいずれかを共重合したポリエステル系およびポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー等が添加できる。これらの添加剤の量の下限は0重量%であり、上限は20重量%であることが好ましい。20重量%を超えると効果が飽和するほか、フィルムの透明性が低下するなどの不具合が起こることがある。
ポリエステルフィルムには滑剤を含有することができる。滑剤の種類としてはシリカ、炭酸カルシウム、アルミナなどの無機系滑材のほか、有機系滑剤が好ましく、シリカ、炭酸カルシウムがより好ましく、特にシリカが好ましい。これら滑剤の添加により、フィルムに透明性と滑り性とを付与することができる。
滑剤のポリエステルフィルム中での含有濃度(ppm)の下限は好ましくは10であり、より好ましくは30であり、さらに好ましくは50である。上記未満であると滑り性の面で実用性が低くとなることがある。滑剤濃度(ppm)の上限は好ましくは10000であり、より好ましくは9000であり、さらに好ましくは8000である。上記を超えるとフィルムの透明性が低下することがある。
滑剤の粒子径については一次粒子径の下限が0.005μm、好ましくは0.010μm、更に好ましくは0.015μmである。0.005μm以下では溶融時の粘度上昇が見られるため好ましくない。滑剤の粒子径については一次粒子径の上限が50μm、好ましくは40μm、更に好ましくは30μmである。50μm以上では透明性の低下や脱落が見られ好ましくない。
前記ポリエステル樹脂は必要に応じて、従来公知の添加剤、例えば、滑剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤、静電防止剤、紫外線吸収剤等を含有していてもよい。
これらの添加剤は、インパクト強度や突き刺し強度が満足できる範囲で調整する必要がある。
本発明におけるポリエステル樹脂の特徴は、DSCにより得られる−20℃/分の速度で溶融状態から冷却される際に観察される再結晶化温度(以下、Tc(A)とする)とDSCにより得られる−40℃/分の速度での再結晶化温度(以下、Tc(B)とする)の差(以下、Tc(A)−Tc(B)とする。)が特定の範囲内にあることが特徴である。
Tc(A)−Tc(B)の下限は好ましくは0である。より好ましくは0.5であり、さらに好ましくは1である。0℃未満では結晶化速度が遅すぎて本発明に対して好ましくない。
Tc(A)−Tc(B)の上限は好ましくは15であり、より好ましくは14.5であり、さらに好ましくは14であり、特に好ましくは13.5であり、最も好ましくは13.3である。上記を超えるとコロナ放電処理などの熱に対して非常に安定となるため、各種接着性の改善効果が小さいため好ましくない。この理由については、結晶化速度が速く、より低温で強固な表面の結晶が生成し、コロナ放電処理などの熱により容易に溶融しないためと推定される。
Tc(A)−Tc(B)は、ポリエステル樹脂中の滑剤の種類や樹脂中の不純物の量、共重合成分の種類や結晶化遅延効果のある添加剤の添加によりコントロールできることがわかった。
Tc(A)の下限は好ましくは140であり、より好ましくは141であり、さらに好ましくは143である。上記未満であると結晶化速度が低すぎてフィルムの耐熱性が低くなることがある。
Tc(A)の上限は好ましくは175であり、より好ましくは170であり、さらに好ましくは168である。上記を超えると結晶化温度と溶融温度の差が小さくなりすぎて延伸性が低下することがある。
Tc(B)の下限は好ましくは130であり、より好ましくは131であり、さらに好ましくは133である。上記未満であると結晶化速度が低すぎてフィルムの耐熱性が低くなることがある。
Tc(B)の上限は好ましくは165であり、より好ましくは155であり、さらに好ましくは155である。上記を超えると接着性が得られないことがある。
本発明におけるフィルムにおいてポリエステル樹脂のTc(A)−Tc(B)を上記範囲にするには、ポリエステル樹脂に含まれる結晶核剤の量の上限は100ppmであり、好ましくは10ppmであり、最も好ましくは5ppm以下である。
また、不純物としては、窒素系化合物、硫黄系化合物など原料に含まれる不純物のほか、重合中や溶融押出中に混入するものを指し、その混入量の上限は好ましくは1ppm以下、より好ましくは0.5ppm以下、最も好ましくは0.1ppm以下である。
それぞれの上限を超えると、コロナ放電処理による結晶化度の変化が小さく易接着化の効果が小さくなる。理由は不明であるが、熱固定時の配向した結晶の前駆体が低温で強固な配向結晶を形成するようになり、この結果、二軸延伸後の表層の結晶の熱安定性が高くなり、本発明での目的である処理時の熱による結晶の溶融が起こりにくく、易接着化の効果が小さくなるものと推定される。
本発明におけるポリエステルフィルムは、従来の化石燃料由来の原料を用いて得られたポリエステル樹脂以外に、植物由来の原料を用いて得られたポリエステル樹脂を使用することも可能である。昨今の環境負荷低減の側面からは、むしろ植物由来原料を使用することが好ましい。具体的には、植物由来のTPA、EG、BD、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、イソソルビド、フランジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されない。
特に植物由来の原料を用いて得られたポリエステル樹脂はその精製過程において不純物の除去に限界があり、窒素化合物などが残存するなどの問題があるが、これらの植物由来の原料を用いて得られたポリエステル樹脂はフィルムの結晶化促進に寄与し、強固な配向結晶を形成するため、処理時の熱による表層の結晶緩和が小さくなり接着性低下の要因となるため、精製度の高い原料を使用することが重要である。
本発明におけるポリエステルフィルムは、バージン原料のみからも得られることができるが、リサイクル原料を使用することも可能である。特にPETボトルを回収して得られる再生PETレジンなどを使用することで昨今の環境負荷低減に寄与できる。
再生PETレジンのIV(固有粘度、単位[dL/g])の下限は0.5であることが必要であり、さらに好ましくは0.55である。0.5未満では力学特性低下のほか、分子量低下により結晶化速度が増加し製膜性が低下するなどの問題が起こるため好ましくない。IVの上限は0.8の範囲であることが必要であり、好ましくは0.75である。IVが0.8を超えると溶融粘度が高すぎて押出機での吐出量が低下し生産性が低下する。 再生PETレジンなど再生原料の添加量については特に制限されないが、色調やフィルムのIVなどから勘案して決定される。全量が再生PETレジンであっても、差し支えないが、色調としてCo−b値が10以下となる範囲が好ましく、具体的には0〜95%である。
再生PETレジンを使用する場合はフィルムのポリエステル樹脂中のイソフタル酸の酸成分に対する共重合量は0.5〜2.5モル%が好ましく、1.0〜2.5モル%がさらに好ましい。
また、PETボトル用原料や再生PETレジンを使用する場合にはキャスト時の静電密着性の付与のため、溶融比抵抗を調整する添加剤を添加することが好ましい。添加剤としては公知の化合物が使用でき、具体的には、Mg系化合物、P系化合物、Na系化合物、K系化合物、などが使用可能で、その溶融比抵抗と色調などの面から添加量などは決定される。
以下に、本発明における二軸延伸フィルムの製膜方法について、具体的に述べるが、これらに限定するものではない。
本発明における延伸フィルムとしては長手方向(MD方向)もしくは横方向(TD方向)の一軸延伸フィルムでも良いが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸の場合は逐次二軸延伸であっても同時二軸延伸であっても良いが、逐次二軸延伸がさらに好ましい。
延伸フィルムとすることで、従来のポリプロピレンフィルムでは予想できなかった150℃でも熱収縮率が低いフィルムを得ることができる。
以下に最も好ましい例である縦延伸−横延伸の逐次二軸延伸のフィルムの製造方法を説明する。
まず、ポリエステル樹脂を単軸または2軸の押し出し機で加熱溶融させ、チルロール上に押し出して未延伸フィルムを得る。
樹脂溶融温度(℃)の下限は好ましくは220であり、より好ましくは240であり、さらに好ましくは260である。上記未満であると溶融粘度が高く、吐出が困難となることがある。樹脂溶融温度(℃)の上限は好ましくは350であり、より好ましくは340であり、さらに好ましくは330である。上記を超えると熱分解による分子量低下や着色などが見られるため好ましくない。
押し出しダイス温度(℃)の下限は好ましくは220であり、より好ましくは240であり、さらに好ましくは260である。上記未満であると溶融粘度が高く、吐出が困難となることがある。押し出しダイス温度(℃)の上限は好ましくは350であり、より好ましくは340であり、さらに好ましくは330である。上記を超えると熱分解による分子量低下や着色などが見られるため好ましくない。
チルロール温度(℃)の下限は好ましくは0であり、より好ましくは2であり、さらに好ましくは5である。チルロール温度が上記未満のように低すぎるとチルロールが結露することがあり品質の安定性が低下するため好ましくない。チルロール温度(℃)の上限は好ましくは80であり、より好ましくは50であり、さらに好ましくは40である。上記を超えると冷却化が不足し、延伸性の低下や厚み不良となることがある。
キャスト速度(m/min)の下限は好ましくは2であり、より好ましくは5であり、さらに好ましく10はであり、特に好ましくは20である。上記未満であると生産性が低くとなることがある。
キャスト速度(m/min)の上限は好ましくは120であり、より好ましくは110であり、さらに好ましくは100である。上記を超えるとキャストが不安定化となることがある。キャスト厚み(μm)の下限は好ましくは10であり、より好ましくは15であり、さらに好ましくは20である。上記未満であるとキャスト厚みが薄すぎて二軸延伸が困難となることがある。
キャスト厚み(μm)の上限は好ましくは1250であり、より好ましくは1000であり、さらに好ましくは800である。上記を超えると冷却が不十分となり、安定した延伸性を得ることが困難となることがある。
MD延伸方法としては一段延伸のほか、二段延伸などの多段延伸が好ましい。特に二軸延伸後の面配向を高くさせないことや二軸延伸後の歪みの低減には二段延伸などの多段延伸が好ましい。MD延伸方法としてはロール加熱方式、赤外加熱方式が好ましい。
MD延伸倍率(倍)の下限は好ましくは3であり、より好ましくは3.1であり、さらに好ましくは3.2である。上記未満であると突き刺し強度などの力学特性の低下が見られることがある。MD延伸倍率(倍)の上限は好ましくは4.5であり、より好ましくは4.4であり、さらに好ましくは4.3である。上記を超えると製膜時に破断などが見られ生産性が低下することがある。
MD予熱温度(℃)の下限は好ましくは30であり、より好ましくは35であり、さらに好ましくは40である。上記未満であると予熱が不十分で、延伸が困難となることがある。MD予熱温度(℃)の上限は好ましくは200であり、より好ましくは180であり、さらに好ましくは150である。上記を超えると結晶化してしまい、延伸が困難となることがある。
MD延伸温度(℃)の下限は好ましくは50であり、より好ましくは60であり、さらに好ましくは70であり、特に好ましくは80である。上記未満であると樹脂が軟化せず、延伸が困難となることがある。MD延伸温度(℃)の上限は好ましくは150であり、より好ましくは145であり、さらに好ましくは140である。上記を超えると結晶化してしまい、延伸が困難となることがある。
赤外加熱方式の場合での延伸温度はその製膜条件から適宜調整できるが、延伸時のフィルム温度が上記の範囲にあることが好ましい。
MD延伸速度(%/分)の下限は好ましくは100であり、より好ましくは150であり、さらに好ましくは200である。上記未満であると生産性が低くとなることがある。MD延伸速度(%/分)の上限は好ましくは100000であり、より好ましくは90000であり、さらに好ましくは80000である。上記を超えると製膜安定性が低下となることがある。
MD延伸倍率の下限は好ましくは2.5であり、より好ましくは2.6であり、さらに好ましくは2.7である。上記未満であると表層の結晶化度が低く、押出ラミ条件変更時に剥離力が変化となるほか、突き刺し強度が低下することがある。MD延伸倍率の上限は好ましくは4.5であり、より好ましくは4.4であり、さらに好ましくは4.35である。上記を超えると製膜時の生産性の低下となることがある。
MD延伸後の厚み(μm)の下限は好ましくは5であり、より好ましくは10であり、さらに好ましくは15である。上記未満であると横延伸が困難となることがある。
MD延伸後の厚み(μm)の上限は好ましくは250であり、より好ましくは240であり、さらに好ましくは230である。上記を超えると二軸延伸後の厚みが厚すぎて本発明の目的に対して不適となることがある。
TD延伸倍率(倍)の下限は好ましくは3.5であり、より好ましくは3.6であり、さらに好ましくは3.7である。上記未満であると製膜時の生産性が低下するほか、厚みの均一性が低下することがある。TD延伸倍率(倍)の上限は好ましくは5であり、より好ましくは4.8であり、さらに好ましくは4.5である。上記を超えると製膜時に破断などが見られ生産性が低下することがある。
TD予熱温度(℃)の下限は好ましくは30であり、より好ましくは40であり、さらに好ましくは50であり、特に好ましくは60である。上記未満であると予熱が不十分で、延伸が困難となることがある。TD予熱温度(℃)の上限は好ましくは150であり、より好ましくは145であり、さらに好ましくは140である。上記を超えると結晶化してしまい、延伸が困難となることがある。
TD延伸温度(℃)の下限は好ましくは50であり、より好ましくは60であり、さらに好ましくは70であり、特に好ましくは80であり、最も好ましくは100である。上記未満であると樹脂が軟化せず、延伸が困難となることがある。
TD延伸温度(℃)の上限は好ましくは180であり、より好ましくは175であり、さらに好ましくは170であり、特に好ましくは165であり、最も好ましくは160である。上記を超えると結晶化してしまい、延伸が困難となることがある。
熱固定条件の設定は本発明における最も重要な点である。本発明において、接着性の発現にはコロナ放電処理などの処理時の熱でフィルム表面の結晶が緩和するように、熱固定条件を設定する必要がある。コロナ放電処理前の状態で表面の結晶が強固なものであると、結晶の溶融など、構造の緩和が起こりにくくなり、コロナ放電処理による接着性の改善の効果が小さくなる。そのため、二軸延伸直後の熱固定前の状態に合わせて熱固定条件を設定する必要がある。
大まかな指針として、
・結晶化速度の速い原料を用いた場合や二軸延伸後の配向が高い場合は、表面の結晶が強固なものとなっており、フィルム表面が到達する温度として高温の熱固定が必要であるが、長時間高温にさらすとフィルムの力学特性が低下する。このため、フィルムが到達する温度は高く、高温での処理時間は短くする必要がある。
・結晶化速度の遅い原料を用いた場合や二軸延伸後の配向が低い場合は、熱固定時の熱でフィルムの結晶化が起こりにくいため、高温での熱固定ではフィルムが溶融するなどが起こり、フィルムの力学特性が低下する。このため、低温かつ長時間での熱固定が必要であるが、あまりにも低温かつ長時間の処理ではフィルムの力学特性の改善や表面の結晶の溶融などが起こらず、コロナ放電処理などによる接着性の改善が起こらない。このため、フィルムの物性を確認した上で適宜熱固定温度を高めつつ高温での熱固定時間を短くする調整する必要がある。
これらの点について検討した結果、後述の表面結晶化度の範囲となるよう、製膜条件(延伸倍率)および熱固定条件を調整し、コロナ放電処理前後の表面に調整することで、接着性の改善が得られることを見出した。これらの点から適宜、条件を調整する必要があり、以下に例示するが、これらの方法や条件に限定されるものではない。
以下には、熱固定ゾーンが一つまたは二つ以上ある場合(前半部をゾーン1、後半部をゾーン2とする)を想定して記載する。
各ゾーンの熱固定温度(℃)の下限は好ましくは150であり、より好ましくは160であり、さらに好ましくは170である。上記未満であると熱収縮率が大きくなりすぎて、各種加工工程での寸法安定性不良となることがある。各ゾーンの熱固定温度(℃)の上限は好ましくは280であり、より好ましくは270であり、さらに好ましくは260である。上記を超えると表層の結晶のみならず、フィルム全体の配向が崩壊し、力学特性の低下が起こることがある。
熱固定時間(秒)の下限は好ましくは0.5であり、より好ましくは1であり、さらに好ましくは1.2であり、特に好ましくは1.5であり、最も好ましくは2.5である。
上記未満であると生産性が低下となることがある。熱固定時間(秒)の上限は好ましくは50であり、より好ましくは15であり、さらに好ましくは10であり、特に好ましくは7であり、最も好ましくは5である。上記を超えると生産性が低下となることがある。
TDリラックス率(%)の下限は好ましくは0であり、より好ましくは0.5であり、さらに好ましくは0.8である。上記未満であると破断しやすく、生産性が低下となることがある。TDリラックス率(%)の上限は好ましくは20であり、より好ましくは15であり、さらに好ましくは10である。上記を超えるとたるみが発生し、幅方向の厚み精度が低下となることがある。
TD出口での製膜速度(m/min)の下限は好ましくは3であり、より好ましくは5であり、さらに好ましくは10であり、特に好ましくは20である。上記未満であると生産性が低く、工業的な面から見て不適である。TD出口での製膜速度(m/min)の上限は好ましくは500であり、より好ましくは400であり、さらに好ましくは300である。上記を超えると歪みが大きくとなることがある。
二軸延伸後の厚み(μm)の下限は好ましくは3であり、より好ましくは4であり、さらに好ましくは5である。上記未満であると薄すぎて作業性が低下となることがある。二軸延伸後の厚み(μm)の上限は好ましくは50であり、より好ましくは45であり、さらに好ましくは40である。上記を超えると厚すぎて作業性が低下する以外にも、包装材料として用いると屈曲性が低下となることがある。
(フィルム特性)
本発明におけるフィルムの150℃×15分でのMD方向の熱収縮率(%)の下限は好ましくは0.5であり、より好ましくは0.6であり、さらに好ましくは0.7である。上記未満であると寸法安定性向上による実用上の効果が飽和する。150℃×15分でのMD方向の熱収縮率(%)の上限は好ましくは10であり、より好ましくは8であり、さらに好ましくは5である。上記を超えると各種加工工程でのピッチずれなどが発生し、外観が低下することがある。
本発明におけるフィルムの易接着処理面の表面結晶化度の下限は好ましくは1.1であり、より好ましくは1.15であり、さらに好ましくは1.2であり、最も好ましくは1.25である。上記未満であると熱によるフィルム表層の結晶化度の変化が大きく、加工後の熱処理により各種密着性が変化することがある。易接着処理面の表面結晶化度の上限は好ましくは1.35であり、より好ましくは1.34であり、さらに好ましくは1.33であり、特に好ましくは1.3であり、最も好ましくは1.28である。上記を超えるとフィルム表層の結晶化度が高すぎて接着性の低下となることがある。
本発明におけるフィルムの非処理面の表面結晶化度の下限は好ましくは1.1であり、より好ましくは1.15であり、さらに好ましくは1.2であり、最も好ましくは1.25である。非処理面の表面結晶化度はコロナ放電処理などの処理前の表面と同一であるが、上記未満であると、フィルム表層の結晶化度が低すぎて、各種密着性が変化することがある。非処理面の表面結晶化度の上限は好ましくは1.5であり、より好ましくは1.45であり、さらに好ましくは1.4である。上述のとおり、非処理面は各種処理前の処理面とほぼ同一であるが、上記を超えるとフィルム表層の結晶化度が高すぎて易接着処理面側の密着性が改善しないため好ましくない。
本発明におけるフィルムの一方の面の表面結晶化度からフィルムの他方の面の結晶化度を引いた値の下限は好ましくは−0.1であり、より好ましくは−0.08であり、さらに好ましくは−0.05である。上記未満であると接着性改善の効果が飽和する。フィルムの一方の面の表面結晶化度からフィルムの他方の面の結晶化度を引いた値の上限は好ましくは0であり、より好ましくは−0.001であり、さらに好ましくは−0.004であり、最も好ましくは−0.008である。上記を超えるとコロナ放電処理などの易接着処理により表面の結晶化度が増加していることになり、接着性が改善されない。
より限定的にはフィルムの易接着処理面の結晶化度から非処理面の結晶化度を引いた値が上記範囲であるとよい。
本発明におけるフィルムの突き刺し強度(N)の下限は好ましくは5であり、より好ましくは6であり、さらに好ましくは7である。上記未満であると加工時の破断などが起こりやすくなることとなることがある。突き刺し強度(N)の上限は好ましくは20であり、より好ましくは18であり、さらに好ましくは17である。上記を超えると効果が飽和することがある。
本願明細書において、「易接着処理面」とは、以下に示す易接着処理が施された面をいう。本発明における易接着処理方法として、紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、火炎処理などの物理的な方法のほか、アルカリ処理、プライマー処理などの化学的処理などが使用できる。好ましいのは乾式で処理が可能な物理的な方法であり、より好ましくは紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、火炎処理であり、更に好ましくは、紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理であり、最も好ましくはコロナ放電処理である。
コロナ放電処理については公知の方法が利用できる(例えば特許文献特開昭62−106934号参照)。好ましい放電量(W・min/m)の下限は1であり、より好ましくは5であり、更に好ましくは10である。上記未満であると、処理の効果が小さく、接着性の改善の効果が見られない。好ましい放電量(W・min/m)の上限は200であり、より好ましくは180であり、更に好ましくは150である。上記を超えると、表面の酸化が進みすぎて逆に接着性の改善の効果が見られない。
本発明において、フィルムの各特性を本発明の範囲とすることにより、ラミネート加工した場合に非常に高い接着性(ラミネート強度)を付与できる。
ラミネート強度の下限は好ましくは3であり、より好ましくは3.5であり、さらに好ましくは4である。上記未満であると袋や蓋材などとして使用した際に、強い衝撃が加わったときに破袋しやすいなどの不具合となることがある。ラミネート強度の上限は好ましくは15であり、より好ましくは13であり、さらに好ましくは10である。上記を超えると効果が飽和となることがある。
本願は、平成24年8月3日に出願された日本国特許出願第2012−172815号に基づく優先権の利益を主張するものである。平成24年8月3日に出願された日本国特許出願第2012−172815号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価は次の測定法によって行った。
[ポリエステルの固有粘度]
ポリエステル0.1gをフェノール/テトラクロロエタン(容積比:3/2)の混合溶媒25mL中に溶解させ、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。
[ポリエステルの融点]
SII製示差走査型熱量計(DSC)を用い、サンプル量10mg、昇温速度20℃/分で測定した。ここで検知された融解吸熱ピーク温度を融点とした。
[厚み]
JIS−Z−1702準拠の方法で測定した。
[表面結晶化度]
試料の易接着処理面および非処理面の両面について、以下の条件でFT−IR ATR測定を行った。
FT−IR装置:Bio Rad DIGILAB社製 FTS−60A/896
1回反射ATRアタッチメント:golden gate MKII(SPECAC製)内部反射エレメント:ダイヤモンド
入射角:45°
分解能:4cm−1
積算回数:128回
結晶化度は1340cm−1付近に現れる吸収と1410cm−1付近に現れる吸収度の強度比(1340cm−1/1410cm−1)により算出した。ここで1340cm−1はエチレングリコールのCH(トランス構造)の変角振動による吸収、1410cm−1は結晶、配向とは無関係の吸収である。
なお、「フィルムの一方の面の表面結晶化度からフィルムの他方の面の表面結晶化度を引いた値」としては、「フィルムの易接着処理面の表面結晶化度から非処理面の表面結晶化度を引いた値」を用いた。
[破断強度、破断伸度]
JIS K 7113に準ずる。フィルムの長手方向および幅方向に幅10mm、長さ100mmの試料を、剃刀を用いて切り出して試料とした。23℃、35%RHの雰囲気下で12時間放置したあと、測定は23℃、35%RHの雰囲気下、チャック間距離40mm、引っ張り速度200mm/分の条件で行い、5回の測定結果の平均値を用いた。測定装置としては島津製作所社製オートグラフAG5000Aを用いた。
[突き刺し強度]
食品衛生法における「食品、添加物等の規格基準 第3:器具及び容器包装」(昭和57年厚生省告示第20号)の「2.強度等試験法」に準拠して測定した。先端部直径0.7mmの針を、突刺し速度50mm/分でフィルムに突き刺し、針がフィルムを貫通する際の強度を測定して、突き刺し強度とした。測定は常温(23℃)で行い、単位は[N]である。
[熱収縮率]
試験温度150℃、加熱時間10分間とした以外は、JIS−C−2318記載の寸法変化試験法で測定した。
[ラミネート強度]
厚み40μmのポリオレフィンフィルムとラミネートした積層体を、幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、東洋ボールドウイン社製の「テンシロンUMT−II−500型」を用いて、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、ポリエステルフィルム1の未処理面とポリオレフィン樹脂層との接合面での剥離強度を測定した。なお、引張速度は10cm/分、剥離角度は180度とした。
[インキ密着性]
JIS−K5400に記載の碁盤目評価に準拠し、フィルムの易接着面にインキを印刷後、クロスカットガイドを用いて1mmマス目をカッター刃で100個作成した後、粘着テープ(ニチバン社製、セロハンテープ)を用いてマス目部分の密着力を評価した。
用いたインキとして、溶剤型インキ(十條インキ社製、900シリーズテトロンインキ)を用い、フィルムの被覆層面(本発明の被覆層A)に#250のスクリーン印刷後24時間放置乾燥したものを用いた。
[ポリエステル樹脂1の製造例]
テレフタル酸とエチレングリコールの混合物中に酢酸マグネシウム四水塩をポリエステル中にMg原子として60ppmとなるように加え常圧下にて温度255℃でエステル化反応させた。その後Sb原子としてポリエステル中に150ppmとなるような量の三酸化アンチモンおよびP原子としてポリエステル中に40ppmとなるような量のリン酸トリメチルを加え、さらに温度260℃で反応させた。
引き続いて、反応生成物を重縮合反応層に移し、平均粒径2.3μmのシリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、シリカがポリエステル中に1000ppmとなるように添加した後、次いで加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して133Pa(1mmHg)の減圧下、280℃で常法により重縮合を行い、IV=0.62のポリエステルチップを得た。なお、得られたポリエステル樹脂は、DSCにより得られる20℃/分の速度で溶融状態から冷却される際に観察される再結晶化温度[Tc(A)]が161℃、40℃/分の速度での再結晶化温度[Tc(B)]が157℃、Tc(A)−Tc(B)が4℃であった。
[実施例1]
ポリエステル樹脂1を、120℃で24時間減圧乾燥(1.3hPa)し、単軸押出機を用いて280℃で溶融させた後、30cm幅のTダイ(280℃)より冷却ロール(表面温度10℃)上へキャストして(冷却ロール周面に対向するように設置した直径が30μmのタングステンワイヤー電極から7.2kVの電圧を印加し、0.2mAの電流を流して静電密着させて)、中央部の厚みが170μmの未延伸シートを得た。
該未延伸シートをロール温度95℃で予熱し、延伸温度100℃で長手方向に3.5倍延伸し、ついで100℃で横方向に4.0倍延伸し、次いで、リラックス率3.0%で、230℃で熱固定処理を行い、厚さ12μmのポリエステルフィルムを得た。TD出口での速度は50m/min、熱固定ゾーンでの滞留時間は2秒であった。その後、40℃に予熱後、フィルムの一方面側にコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理は90W・min/mで行った。その後、紙管に巻き取り、ポリエステルフィルム1とした。得られたフィルムの特性を表1に示す。
[実施例2]
表1に記載の条件によりフィルムを得た。得られたフィルムの製膜条件、物性および評価結果を表1に示した。
[実施例3]
原料として、PETボトルを洗浄後、再ペレット化して得られた再生PET樹脂(IV:0.68、Co−b:8、イソフタル酸共重合量2.0モル%)60%に平均粒径1.3μmの凝集シリカを含むポリエステル樹脂40%を混合し、シリカ濃度を700ppmとしたものを用いて、表1に記載の条件によりフィルムを得た。得られたフィルムの製膜条件、物性および評価結果を表1に示した。なお、上記の原料処方において、DSCにより得られる20℃/分の速度で溶融状態から冷却される際に観察される再結晶化温度[Tc(A)]が151℃、40℃/分の速度での再結晶化温度[Tc(B)]が144℃、Tc(A)−Tc(B)が7℃であった。
[実施例4]
原料として、ポリエステル樹脂1のエチレングリコールを植物由来エチレングリコールとし、凝集シリカを添加せずに得られたポリエステル樹脂(IV:0.65)80%に平均粒径2.3μmの凝集シリカを3500ppmで含むPET樹脂20%を混合し、シリカ濃度を700ppmとしたものを用いて、表1に記載の条件によりフィルムを得た。得られたフィルムの製膜条件、物性および評価結果を表1に示した。なお、上記の原料処方において、DSCにより得られる20℃/分の速度で溶融状態から冷却される際に観察される再結晶化温度[Tc(A)]が168℃、40℃/分の速度での再結晶化温度[TcB)]が155℃、Tc(A)−Tc(B)が13℃であった。また、用いた植物由来エチレングリコール中の酸素循環式化学発光法により得られた窒素化合物量は0〜1ppmの範囲であった。
[比較例1〜4]
表1に記載の条件によりフィルムを得た。得られたフィルムの製膜条件、物性および評価結果を表1に示した。
[比較例5〜7]
原料として、不純物として窒素系化合物を10ppm含む植物由来エチレングリコールを用いた以外は実施例4と同様にして得られたポリエステル樹脂(IV:0.65)80%に平均粒径1.3μmの凝集シリカを含むPET樹脂20%を混合し、シリカ濃度を1000ppmとしたものを用い、表1に記載の条件によりフィルムを得た。得られたフィルムの製膜条件、物性および評価結果を表1に示した。なお、上記の原料処方において、DSCにより得られる20℃/分の速度で溶融状態から冷却される際に観察される再結晶化温度[Tc(A)]が175℃、40℃/分の速度での再結晶化温度[Tc(B)]が155℃、Tc(A)−Tc(B)が20℃であった。
[比較例8]
ポリエステル樹脂1に結晶核剤(アデカ製アデカスタブNA−05)を1重量%添加した原料を用いて、表1に記載の条件によりフィルムを得た。得られたフィルムの製膜条件、物性および評価結果を表1に示した。なお、上記の原料処方において、DSCにより得られる20℃/分の速度で溶融状態から冷却される際に観察される再結晶化温度[Tc(A)]が185℃、40℃/分の速度での再結晶化温度[Tc(B)]が153℃、Tc(A)−Tc(B)が32℃であった。
上記結果を表1に示す。
Figure 0006981451
本発明に用いるポリエステルフィルムは磁気テ−プ、絶縁テープ、写真フィルム、トレーシングフィルム、包装材料、電気絶縁材料、情報記録材料、各種工程紙などの幅広い分野に広く使用することができるが、特に耐熱性、寸法安定性に優れるため印刷加工に適する。
また、耐熱性が高いため、コートや印刷の乾燥時に高温乾燥か可能となり、生産の効率化や従来用いられにくかったコート剤やインキ、ラミネート接着剤などを用いることができる。
さらには、コンデンサーやモーターなどの絶縁フィルム、太陽電池のバックシート、無機酸化物のバリアフィルム、ITOなどの透明導電フィルムのベースフィルムにも適する。

Claims (3)

  1. 3〜50μmの厚みを有し、下記要件(1)〜(4)のフィルム物性を満足する二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、テレフタル酸とエチレングリコールを主たる構成成分とし、融点が253℃以上であり、DSCにより得られる40℃/分の速度で溶融状態から冷却される際に観察される再結晶化温度と20℃/分の速度での再結晶化温度の差が0〜15℃であり、ポリオレフィン系樹脂成分及びポリテトラメチレンテレフタレート−ポリテトラメチレンオキサイドブロック共重合ポリエステルを含まず、窒素系化合物及び硫黄系化合物の混入量が1ppm以下であるポリエステル樹脂を加熱溶融し、チルロール上に押し出して未延伸フィルムを得る工程、未延伸フィルムを長手方向に50℃以上、150℃以下の温度で2.5倍以上、4.5倍以下で延伸する工程、得られた延伸フィルムを横方向に50℃以上、180℃以下の温度で3.5倍以上、5倍以下で延伸する工程、得られた二軸延伸フィルムを170℃以上、260℃以下の温度で0.5秒以上、10秒以下の時間の間熱固定する工程、得られた二軸延伸フィルムの一方の面にコロナ放電処理を行い、処理した面を易接着処理面とする工程を含むことを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
    (1)長手方向の熱収縮率が0.5〜10%である。
    (2)突き刺し強度が5〜20Nである。
    (3)易接着処理面側について、ATR−IRにより求められる表面結晶化度が1.10〜1.35である。
    (4)フィルムの易接着処理面の表面結晶化度からフィルムの非処理面の表面結晶化度を引いた値が−0.1〜0の範囲にある。
  2. 前記二軸延伸ポリエステルフィルムの非易接着処理面の表面結晶化度が1.20〜1.50の範囲にある請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
  3. 前記ポリエステル樹脂が植物由来のエチレングリコール成分から重合されたポリエステル樹脂を含む請求項1又は2に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
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