JP6971356B2 - 水素製造用シリコン微細粒子 - Google Patents
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Description
2 シリコン微細粒子
3 表面酸化膜除去後のシリコン微細粒子
4 親水化処理後のシリコン微細粒子
5 水素
10 粉砕機
14 排出口
15 フィルター
30 乾燥室
40 ロータリーエバポレータ
50 表面酸化膜除去槽
57,67,77 撹拌器
58 遠心分離機
60 親水化処理槽
70 水素発生部
72 反応槽
75 水又は水溶液
79 移送管
80 水槽
87 水素捕集器
89 水素管
90 水素貯蔵容器
100,200 水素製造装置
250 追加的表面酸化膜除去槽
270 追加的水素発生部
<第1の実施形態>
本実施形態の水素製造方法は、半導体製品の生産過程におけるシリコンの切削加工において通常は廃棄物とされるシリコンの切粉又はシリコンの研磨屑(以下、「シリコン廃材」とも称する。)を出発材料の一例とした、各種の工程を備える。また、シリコン廃材には、廃棄ウェハを粉砕した微細な屑も含まれる。図1は、本実施形態の水素製造方法の各工程を示す図である。図1に示すように、本実施形態の水素製造方法は、以下の(1)乃至(3)の工程を含む。
(1)洗浄工程(S1)
(2)粉砕工程(S2)
(3)水素発生工程(S3)
本実施形態の洗浄工程(S1)では、例えば、単結晶又は多結晶のシリコンのインゴットの切削過程において生成されるシリコン廃材を洗浄する。この洗浄工程(S1)は、主として、シリコン廃材に付着する有機物、代表的には、切削過程で使用する切削油及び添加剤等の有機物の除去を目的とする。まず、洗浄の対象となるシリコン廃材を秤量した後、所定の第1液体を添加し、ボールミル機によりシリコン廃材を前記液体中に分散させる。ここで、本実施形態のボールミル機は、鋼球、磁性ボール、玉石及びその類似物を粉砕媒体とする粉砕機である。また、前述の本実施形態の第1液体の例は、アセトンである。
その後、粉砕工程(S2)では、洗浄されたシリコンスラッジを粉砕することにより、結晶子径が100nm以下のシリコン微細粒子を形成する。なお、シリコン微細粒子の結晶子径が100nm以下であれば、シリコン微細粒子の凝集粒度分布が100nm以上5μm以下の範囲内であっても良好な効果、すなわち本実施形態の効果と同等の効果を得ることが可能である。その後、洗浄後のシリコンスラッジに、所定の第2液体を添加する。第2液体の例は、プロパノールである。さらにその後、ボールミル機を用いて粗粉砕処理を行う。粗粉砕処理されたシリコン廃材を、フィルターに通して比較的粗い粒子を取り除いた後、残ったシリコン廃材を、ビーズミル機を用いて微粉砕処理する。その後、ロータリーエバポレータを用いて第2液体を除去することによって、微粉砕処理された結果物としてシリコン微細粒子が得られる。
その後の水素発生工程(S3)では、粉砕工程(S2)により得られたシリコン微細粒子を水又は水溶液に接触及び/又は水又は水溶液中に分散させることにより水素を発生させる。この水素発生工程で使用する水は、必ずしも純水である必要はなく、一般の水道水や工業用水等の電解質や有機物を含んだ水でもよい。また、本実施形態の水溶液の種類も、特に限定されない。また、該水溶液の水素イオン濃度指数(pH値)は特に限定されないが、pH値は10以上であることがより好ましい。これは、発明者らの分析結果によれば、pH値が高いほど水素の生成速度が速くなり、より短時間で水素生成反応が終了する傾向が確認されているためである。従って、長期間にわたって少量の水素を供給し続けたい場合には、意図的に上述の水溶液のpH値を低くすることが好適な一態様である。一方、一時的に大量の水素を供給したい場合には、上述の水溶液のpH値を高く設定することによって、各産業界あるいは各種のデバイスの利用者の要求に応じた水素の製造を行うことが可能である。
本実施形態では、第1実施形態における粉砕工程後にシリコン微細粒子表面の酸化膜を除去する表面酸化膜除去工程を追加した点を除いて、第1実施形態と同じである。
(1)洗浄工程(T1)
(2)粉砕工程(T2)
(3)表面酸化膜除去工程(T3)
(4)水素発生工程(T4)
本実施形態では、第2の実施形態における表面酸化膜除去工程の後に、シリコン微細粒子表面を親水化する親水化処理工程を追加した点を除いて、第2の実施形態と同じである。
(1)洗浄工程(U1)
(2)粉砕工程(U2)
(3)表面酸化膜除去工程(U3)
(4)親水化処理工程(U4)
(5)水素発生工程(U5)
本実施形態における親水化処理工程(U4)では、表面酸化膜除去工程の後に、シリコン微細粒子の表面を界面活性剤又は硝酸で処理する。界面活性剤を用いて処理する場合、界面活性剤の代表例は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及びノニオン界面活性剤の群から選択される少なくとも1種である。本実施形態では、例えば、プロパノール等の第4液体にシリコン微細粒子を接触及び/又は第4液体内に分散させ、界面活性剤又は硝酸を添加した後、撹拌を行う。また、本実施形態では、撹拌した後、第4溶液をロータリーエバポレータにより除去する。
<第4の実施形態>
以下に、本実施形態の水素製造装置100について説明する。図4は、本実施形態における水素製造装置100の構成を概略的に示す説明図である。図4に示すように、本実施形態の水素製造装置100は、主として、粉砕機10、乾燥室30、ロータリーエバポレータ40、表面酸化膜除去槽50、遠心分離機58、親水化処理槽60、水素発生部70、及び水素貯蔵容器90とを備える。なお、本実施形態における水素製造装置100は、後述する複数の工程を行う各装置(処理部)の集合体ともいえるため、この水素製造装置100は、水素製造システムと呼びかえても良い。
以下、上述の実施形態をより詳細に説明するために、実施例をあげて説明するが、上述の実施形態はこれらの例によって限定されるものではない。以下の実施例1乃至5については、水素製造装置100を用いて水素製造試験を行った結果を示す。
実施例1においては、水素製造装置100によって、第1実施形態の水素製造方法に基づき、水素を製造した。具体的には、洗浄工程及び粉砕工程の後、水素発生工程を実施した。
シリコンの切粉200g(グラム)にアセトン200mL(ミリリットル,「ml」とも表記する)を添加し、ボールミル機で1時間分散させた。ボールミルは、MASUDA社製Universal
BALL MILLを使用した。使用ボールは、粒径φ10mm(ミリメートル)とφ20mmのアルミナビーズを使用した。その後、液体を吸引ろ過によって除去し、残渣を40℃設定の乾燥機で乾燥させた。
次に、洗浄したシリコンスラッジ15gをポリ容器に秤量し、2−プロパノール285gを添加する。次に、ボールミル機にアルミナボールを入れ、周速80rpmで2時間粗粉砕を行う。本実施例で使用するボールミルは、MASUDA社製Universal
BALL MILLである。また、本実施例で使用するボールは、粒径φ10mmとφ20mmのアルミナボールである。粉砕工程によって得られた結果物を、180μmメッシュフィルターに通すことにより粗い粒子を除去した。
超純水50.21g中に水素製造用のシリコン微細粒子0.86gを浸漬した。なお、本実施例では、常温(約25℃)下で実験を実施した。
実施例2においては、水素製造装置100によって、第2の実施形態の水素製造方法に基づき、水素を製造した。従って、第1実施例における粉砕工程後に表面酸化膜除去工程を追加した点を除いて、実施例1と同じ工程で行った。具体的には、洗浄工程、粉砕工程、表面酸化膜除去工程、水素発生工程の順で製造した。表面酸化膜除去工程は、以下の通りである。
実施例3においては、水素製造装置100によって、第3の実施形態の水素製造方法に基づき、水素を製造した。従って、実施例2に表面酸化膜除去工程後に親水化処理工程として界面活性剤を用いた処理を追加した点を除いて、実施例2と同じ工程で行った。
実施例4においては、水素製造装置100によって、第2の実施形態の水素製造方法において、水素発生工程の水溶液として、0.1mol/Lの炭酸水素ナトリウム及び0.1mol/Lの炭酸ナトリウムからなる緩衝液を用いて、水溶液のpH値を10に調整した以外は、実施例2と同様の方法で行った。
実施例5においては、水素製造装置100によって、第2の実施形態の水素製造方法において、水素発生工程の水溶液として、0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて、水溶液のpH値を13に調整した以外は、実施例2と同様の方法で行った。
1.断面TEM写真による結晶構造解析
図5は、実施例1における粉砕工程後におけるシリコン微細粒子の結晶構造を示す断面TEM(透過型電子顕微鏡)写真である。図5(a)は、シリコン微細粒子が一部凝集して、不定形のやや大きな微粒子が形成されている状態を示している。一方、図5(b)は、個別のシリコン微細粒子に着目したTEM写真である。図5(b)中の中央部の丸囲いで示すように、約5nm以下の大きさのシリコン微細粒子が確認された。また、このシリコン微細粒子が、結晶性を有していることが確認された。
図6は、粉砕工程後におけるシリコン微細粒子の結晶子径分布をX線回折法によって、解析した結果を示す図である。図6に示すグラフは、横軸が結晶子径(nm)を表し、縦軸は、頻度を表している。また、実線は個数分布基準の結晶子径分布を示し、破線は体積分布基準の結晶子径分布を示している。個数分布においては、モード径が1.97nm、メジアン径(50%結晶子径)が3.70nm、平均径が5.1nmであった。また、体積分布においては、モード径が13.1nm、メジアン径が24.6nm、平均径が33.7nmであった。これらの結果により、粉砕工程後に得られるシリコン微細粒子は、ビーズミル法での処理で結晶子径が、100nm以下の範囲で、特に50nm以下に分布しているいわゆるシリコンナノ粒子物であることが確認された。
図7は、実施例1、実施例2、及び実施例3について、水素発生量を測定した結果を示すグラフである。図7中の横軸は、浸漬時間(分)を示し、図7中の縦軸は、水素製造用のシリコン微細粒子1g当りの水素発生量(mL/g)を示している。
ところで、上述の第4の実施形態においては、水素発生部70の反応槽72において、シリコン微細粒子2、表面酸化膜除去後のシリコン微細粒子3、及び親水化処理後のシリコン微細粒子4の群から選択される少なくとも1種を、水又は水溶液75に接触及び/又は水又は水溶液75中に分散して水素を発生させている。しかしながら、時間の経過とともに反応が平衡状態に至り、その結果として水素の発生量又は発生速度が飽和する可能性がある。そこで、そのような問題を解決するための第4の実施形態の変形例として、図10に示す水素製造装置200の構成を開示するとともに、実施例6を開示する。
実施例6の水素発生工程においては、p型のシリコンの切粉をZiO2製のビーズを用いて、上述の実施例5と同様にビーズミル機によって粉砕して形成したシリコン微細粒子0.86gを、水溶液(0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液)75中に浸漬した。なお、実施例6の水溶液は、水酸化カリウム(KOH)を添加する量を変えることにより、pH値が12.1、12.9、13.4、及び13.9の4種類に調製された各水溶液75が準備された。
次に、水素製造装置100を用いて水素製造試験を行った他の結果について説明する。実施例7の水素発生工程においては、水溶液75が、水酸化ナトリウム水溶液又はアンモニアを含む水溶液である。水溶液75に、シリコン微細粒子0.86gを接触及び/又は水溶液75中に分散して常温下で反応させた。
Claims (2)
- シリコンの切粉の粉砕によって形成され、フッ化水素酸及び/又はフッ化アンモニウム水溶液を接触させて表面の酸化膜が除去された、結晶子径が100nm以下であって、且つシリコン微細粒子の凝集粒度分布が100nm以上5μm以下である水素製造用シリコン微細粒子であり、かつ水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、又はアンモニア(NH3)を含むpH値を調整する化学物質を含有するpH値が13以上の水溶液に接触させることにより、該水溶液に接触させてから30分間に230ml/g以上の水素を発生させる水素発生能を有する、
水素製造用シリコン微細粒子。 - シリコンの切粉の粉砕によって形成され、フッ化水素酸及び/又はフッ化アンモニウム水溶液を接触させて表面の酸化膜が除去された、結晶子径が100nm以下であって、且つシリコン微細粒子の凝集粒度分布が100nm以上5μm以下である水素製造用シリコン微細粒子であり、かつ水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、又はアンモニア(NH3)を含むpH値を調整する化学物質を含有するpH値が13以上の水溶液に接触させることにより、該水溶液に接触させてから10分間に70ml/g以上の水素を発生させる水素発生能を有する、
水素製造用シリコン微細粒子。
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