JP6952146B2 - 注入材原料の回収方法 - Google Patents
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本実施形態に係る注入材原料の回収方法を説明する前に、注入材について説明する。注入材は、空隙(例えば、構造物に形成される空隙や構造物と地盤との間に形成される空隙等)に注入可能に構成される。例えば、土木構造物の空洞へ充填されたり裏込め材として使用されたりするものである。
また、超遅延剤添加工程は、A液を形成してから10時間以内に行うのが好ましく、5時間以内に行うのがより好ましい。
本実施形態に係る注入材の施工方法は、注入材の原料であるA液が超遅延剤を含むものである。つまり、本実施形態に係る注入材の施工方法は、超遅延剤を含むA液を空隙に向けて搬送し、B液と混合することで注入材を形成し、該注入材を空隙に注入するものである。これにより、空隙への注入材の注入を終了した時点でA液が残っても、A液が硬化して硬化体となるまでの時間が比較的長くなる。このため、A液が流動性を有していれば、吸引装置でA液を吸引して回収することができる。または、A液が流動性を有していなくても、練り返すことが可能な状態であれば、スコップ等を用いてA液を回収したり、練り返して流動性を回復させて吸引装置で吸引して回収したりすることができる。上記のようにしてA液を回収する回収工程は、超遅延剤が添加されたA液を作製してから14日以内に行うのが好ましく、7日以内に行うのがより好ましい。
・セメント:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)
・可塑化材1:アタパルジャイト(品名:「JETMS L材」 住友大阪セメント社製)
・可塑化材2:ベントナイト(品名:「JETMS B材」 住友大阪セメント社製)
・混和剤1:ポリカルボン酸系遅延型流動化剤(品名:「JETMS A液混和剤」 住友大阪セメント社製)
・混和剤2:リン酸塩系流動化剤(品名:「JETMS L液混和剤」 住友大阪セメント社製)
・混和剤3:ポリカルボン酸系流動化剤(品名:「JETMS B液混和剤」 住友大阪セメント社製)
・水(上水道水)
・超遅延剤1:クエン酸(品名:「無水クエン酸」 昭栄薬品工業社製)
・超遅延剤2:ショ糖(品名:「ショ糖(スクロース)」 林純薬工業社製)
・超遅延剤3:酢酸(品名:「酢酸」 昭和電工社製)
<A液の作製>
上記の各材料を用いて、下記表1に示す配合で、A液を作製した。
上記の各A液について、ブリーディング率の測定を行った。ブリーディング率は、土木学会コンクリート標準示方書「プレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーディング率 及び膨張率試験方法(ポリエチレン袋方法)」(JSCE−F−522−2013)に基づいて測定した。ブリーディング率の測定結果については、下記表1に示す。また、超遅延剤の添加量とブリーディング率との関係を図1のグラフに示す。
上記の各A液について、硬化状況の評価を行った。硬化状況の評価方法は、上記のブリーディング率の測定で使用するポリエチレン袋にA液を入れ、袋越しにA液の一部を指で押し、A液に形成される凹みの状態で評価した。具体的には、袋越しにA液を指で押して凹ませても凹みが維持されない状態(流動性があって液状であるもの)を〇、指で押して凹ませた後、凹みが3〜15秒維持されてその後に凹みが消失する状態(こわ張り状態であるが練り返すことで流動性が復活する状態)を△、指で押して凹ませることができない状態あるいは凹みが消失しないもの(流動性を失って練り返すこともできない状態)を×として評価した。硬化状況の評価結果については、下記表1に示す。
<注入材の作製>
下記表2に示す配合でA液およびB液を作製し、作製したA液とB液とを混合して注入材を作製した。
上記の各注入材について、フロー値の測定を行った。フロー値の測定は、NEXCO試験方法127に基づいて行った。フロー値の測定結果については、下記表2に示す。
上記の各注入材が硬化することで形成される硬化体について、一軸圧縮強さの測定を行った。一軸圧縮強さの測定は、JIS A 1216(φ50×100mmの供試体)に基づいて行った。
強度の測定結果については、下記表2に示す。
<注入材の作製>
下記表3に示す配合でA液およびB液を作製し、作製したA液を下記表3に示す日数で20℃の環境に放置した。そして、各放置日数のA液をB液と混合して注入材を作製した。
上記の放置日数毎の注入材について、上記と同様の方法でフロー値の測定を行った。フロー値の測定結果については、下記表3に示す。
上記の放置日数毎の注入材が硬化することで形成される硬化体について、上記と同様の方法で強度の測定を行った。強度の測定結果については、下記表3に示す。
表1を見ると、各配合において各実施例と各比較例とを比較すると、各実施例の方が硬化状況の評価が高いことが認められる。つまり、超遅延剤を添加したA液のブリーディング率が本発明の範囲となるようにA液に超遅延剤を添加することで、A液が硬化するのを遅延させることができる。これにより、A液の回収を容易に行うことが可能となる。
また、実施例30〜31を比較すると、実施例30の硬化状況の評価が高いことが認められる。つまり、超遅延剤としてクエン酸を用いることで、A液の硬化をより遅延させることができる。これにより、A液の回収を容易に行うことが可能な期間をより長くすることができる。
また、実施例17〜21と、実施例22〜29とを比較すると、実施例22〜29の硬化状況の評価が高いことが認められる。つまり、超遅延剤が添加されたA液を比較的低い温度で保持することで、A液の硬化をより遅延させることができる。これにより、A液の回収を容易に行うことが可能な期間をより長くすることができる。
また、実施例1〜8と、実施例9〜16とを比較すると、実施例1〜8の硬化状況の評価が高いことが認められる。つまり、水/セメント比が比較的小さい方が、A液の硬化をより遅延させることができる。これにより、A液の回収を容易に行うことが可能な期間をより長くすることができる。
また、表1の実施例12を見ると、超遅延剤添加したA液だけでは7日でも流動性を保持しているが、表2の実施例12を見ると、超遅延剤添加したA液とB液と混合することにより遅延効果が消失し、材齢7日で一軸圧縮強さが発現していることが認められる。つまり、超遅延剤添加したA液であってもB液と混合することで施工可能となるため、A液の回収量を減らすことができ、経済性に優れるものとなる。
Claims (2)
- セメントおよび水を含むA液と、可塑性を付与する可塑化材および水を含むB液とを混合して注入材を形成した後で残るA液を回収する注入材原料の回収方法であって、
注入材を形成した後で残るA液に超遅延剤を添加する超遅延剤添加工程と、該超遅延剤添加工程後のA液を回収する回収工程とを備えており、
超遅延剤は、クエン酸、ショ糖、および、酢酸からなる群から選択される少なくとも一つであり、
超遅延剤添加工程では、超遅延剤を添加したA液のブリーディング率が1.3%以上になるようにA液に超遅延剤を添加する、
注入材原料の回収方法。 - 超遅延剤添加工程では、超遅延剤を添加したA液のブリーディング率が超遅延剤を添加していないA液のブリーディング率を超えるようにA液に超遅延剤を添加する、
請求項1に記載の注入材原料の回収方法。
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