JP6845367B1 - チアミン臭抑制剤、液状組成物及びチアミン臭の発生を抑制する方法 - Google Patents

チアミン臭抑制剤、液状組成物及びチアミン臭の発生を抑制する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】新規なチアミン臭抑制剤を提供すること。【解決手段】エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、チアミン臭抑制剤。【選択図】なし

Description

本発明は、チアミン臭抑制剤に関する。本発明はまた、液状組成物及びチアミン臭の発生を抑制する方法に関する。
チアミンは、水溶性のビタミンでビタミンB1とも呼ばれ、チアミン又はその誘導体は栄養強化目的などで使用されている。チアミン誘導体の中でもチアミンラウリル硫酸塩は日持向上剤としても使用されている。他方、チアミン又はその誘導体を各種製品(例えば、栄養ドリンク等の飲食品)に配合すると、保存中に臭気(チアミン臭)が発生する場合があった。
チアミン臭(ビタミンB1臭)を抑制する技術手段については、これまでにも種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、ビタミンB1またはその誘導体含有酸性飲用組成物に、茶抽出物を含有させることを特徴とする異臭成分の発生を防止する方法が開示されている。
特開2005−304323号公報
本発明は、新規なチアミン臭抑制剤を提供することを目的とする。
本発明は、エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、チアミン臭抑制剤に関する。
本発明によれば、上記有効成分を含有させることにより、チアミン臭の発生を抑制することができる。
チアミン臭抑制剤において、上記有機酸は、有機カルボン酸であってよい。この場合、チアミン臭抑制効果がより一層優れたものとなる。
チアミン臭抑制剤において、有効成分は、フマル酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。この場合、チアミン臭抑制効果がより一層優れたものとなる。
本発明はまた、チアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種と、エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有し、エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の含有量が、0.01質量%以上である、液状組成物に関する。
液状組成物において、上記有機酸は、有機カルボン酸であってよい。この場合、チアミン臭抑制効果がより一層優れたものとなる。
液状組成物において、上記エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種は、フマル酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。この場合、チアミン臭抑制効果がより一層優れたものとなる。
本発明はまた、チアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種と、エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種とを混合することを含む、チアミン臭の発生を抑制する方法に関する。
本発明によれば、新規なチアミン臭抑制剤を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係るチアミン臭抑制剤は、エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
チアミン臭は、ビタミンB1臭ともよばれ、チアミン及び/又はその誘導体の保存中に発生する臭気である。チアミン臭は、例えば、チアミン及び/又はその誘導体が分解して生じる臭気成分(チアミン臭原因物質)に起因する。本実施形態に係るチアミン臭抑制剤は、例えば、チアミン臭原因物質の生成を抑制する、チアミン臭原因物質をチアミン臭を生じない他の物質に変換する、チアミン臭をマスキングする等によって、チアミン臭を抑制することができる。チアミン臭原因物質としては、例えば、2−メチル−3−フランチオール、ビス2−メチル−3−フリルジスルフィドが挙げられるが、これらに限定されない。本実施形態に係るチアミン臭抑制剤は、例えば、チアミン臭原因物質の生成抑制剤ということもできる。
本実施形態に係るチアミン臭抑制剤によれば、例えば、フレーバーを使用することなく、チアミン臭の発生を抑制することができるため、風味に影響を与えることなく、チアミン及び/又はその誘導体を含む組成物(例えば、飲食品組成物)等のチアミン臭を抑制することが可能となる。本実施形態に係るチアミン臭抑制剤によれば、チアミン臭の抑制が可能となるため、チアミン及び/又はその誘導体の使用用途及び使用量が制限されにくくなり、チアミン及び/又はその誘導体が有する本来の効果を発揮させやすくなる。
エチレン性不飽和結合を含む有機酸(以下、単に「有機酸」と称する。)は、分子内にエチレン性不飽和結合と、酸性基とを有する化合物である。
酸性基とは、溶媒中でプロトンを放出して、酸性を示す官能基を意味する。酸性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。
有機酸における酸性基は、カルボキシ基であることが好ましい。すなわち、有機酸は、有機カルボン酸であることが好ましい。この場合、チアミン臭の抑制効果がより一層優れたものとなる。有機酸における酸性基の数は、例えば、1〜5であってよく、1〜3であってよい。
有機酸は、分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合(C=C)を有する。有機酸におけるエチレン性不飽和結合の数は、例えば、1以上であり、5以下、4以下、3以下、又は2以下であってよく、1であってよい。有機酸が2個以上(例えば2個)のエチレン性不飽和結合を有する場合、当該有機酸は、共役二重結合を有する化合物であってよい。上記エチレン性不飽和結合には、芳香環中の共役二重結合は含まれない。
有機酸は、例えば、チアミン臭抑制効果がより一層優れたものとなる観点から、下記式(1)で表される化合物であってよい。
Figure 0006845367
式(1)中、Aは、酸性基を示し、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子(−H)、カルボキシ基(−COOH)、アミノ基、カルボニル基、ヒドロキシ基又は置換基を有していてよい炭化水素基を示す。Aで表される酸性基は、上記酸性基と同意義である。
、R及びRで表される炭化水素基の炭素数は、例えば、1〜10、1〜5、1〜3、又は1〜2であってよい。炭化水素基は、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。炭化水素基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、エテニル基、1−プロぺニル基、2−プロぺニル基が挙げられる。R、R及びRで表される炭化水素基は置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。R、R及びRで表される炭化水素基の置換基としては、例えば、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、ヒドロキシ基などが挙げられる。置換基を有していてよい炭化水素基の具体例としては、例えば、カルボキシメチル基(−CH−COOH)、1−プロぺニル基(−CH=CH−CH)が挙げられる。
有機酸は、チアミン臭抑制効果がより一層優れたものとなる観点から、例えば、Aがカルボキシ基である下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0006845367
及びRの一方は、水素原子であってよい。この場合、他方は、カルボキシ基又は置換基を有していてよい炭化水素基(例えば、アルケニル基)であってよく、カルボキシ基又は1−プロぺニル基であってよい。
は、水素原子又は置換基を有していてよい炭化水素基(例えば、置換基を有するアルキル基)であってよく、水素原子又はカルボキシメチル基であってよい。
有機酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸が挙げられる。アコニット酸としては、Cis−アコニット酸及びtrans−アコニット酸が挙げられる。有機酸は、チアミン臭抑制効果がより一層優れたものとなる観点から、フマル酸、マレイン酸、ソルビン酸及びアコニット酸からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記有機酸は、構造上生ずるすべての幾何異性体、光学異性体、回転異性体、立体異性体、互変異性体等の異性体及び異性体混合物を含み、いずれか一方の異性体でも、各異性体を任意の比率で含む混合物でもよい。したがって例えば、有機酸には、光学異性体及びラセミ体が存在することがありえるが、本明細書においてはいずれにも限定されず、ラセミ体であっても、各光学活性体のいずれかであっても、各光学活性体を任意の比率で含む混合物でもよい。
有機酸の塩は、例えば、飲食品の用途に許容される塩であってよい。このような塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。アルカリ金属塩の具体例としては、例えば、ナトリウム、カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム、マグネシウムが挙げられる。
有機酸の塩は、アルカリ金属塩、又はアルカリ土類金属塩であることが好ましく、ナトリウム又はカリウムであることがより好ましい。有機酸の塩がナトリウム又はカリウムである場合、有機酸の種類により溶解性(ソルビン酸やフマル酸等)及び/又は呈味(酸味等)の面で一層優れたものとなる。
本実施形態に係るチアミン臭抑制剤は、上記有機酸及びその塩の1種を単独で含有していてもよく、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。
本実施形態に係るチアミン臭抑制剤は、固体(例えば、粉末)、液体(水溶性又は脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状であってもよい。
本実施形態に係るチアミン臭抑制剤は、有効成分である上記有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物のみからなるものであってもよく、またチアミン臭抑制剤の具体的態様に応じて、有効成分の他、例えば、飲食品に許容されるその他成分を含有するものであってもよい。
その他成分としては、例えば、デキストリン、糖類等の賦形剤、乳化剤、pH調整剤、増粘多糖類、油脂、食塩、二酸化ケイ素(分散性向上・固結防止)、アルコール(エタノール)食物繊維(セルロース)等が挙げられる。
本実施形態に係るチアミン臭抑制剤は、その具体的態様(例えば、形態、用法及び用量等)に応じて、例えば、有効成分である有機酸及び/又はその塩を配合することで得ることができる。
チアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種、又は、チアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む組成物に対して、上述したチアミン臭抑制剤を混合することによって、例えば、チアミン成分が有する効果(例えば、栄養強化、日持ち向上)が発揮されながら、チアミン臭の発生が抑制された組成物を得ることができる。
本実施形態に係る液状組成物は、チアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種(以下「チアミン成分」ともいう。)と、エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下「有機酸成分」ともいう。)と、を含有する。
有機酸成分は、上述した有機酸を好適に用いることができる。液状組成物において、有機酸成分の含有量は、次に示す範囲内にあってよい。有機酸成分の含有量とは、有機酸の含有量と、有機酸の塩を等モルの有機酸と置き換えた場合の含有量との合計値(有機酸換算の含有量)を意味する。
液状組成物における、有機酸成分の含有量は、液状組成物の全質量を基準として、0.01質量%以上であってよく、0.02質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上又は0.2質量%以上であってよく、上限はとくに制限されないが呈味や経済的な面から2.0質量%以下、又は1.0質量%以下であってよい。有機酸成分の含有量が上記範囲内にある場合には、チアミン臭がより一層抑制されることとなる。
有機酸成分の含有量は、HPLC等による一般的な有機酸分析法を用いることによって測定することができる。
液状組成物は、上記有機酸成分がフマル酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種であり、かつ、有機酸成分含有量が、上述した範囲内であることが好ましい。
チアミン誘導体は、例えば、チアミンの塩であってよい。チアミンの塩は、例えば、有機酸塩であってよく、無機酸塩であってもよい。有機酸塩としては、ラウリル硫酸塩、セチル硫酸塩、ナフタレン−1,5ジスルホン酸塩等が挙げられる。無機酸塩としては、塩酸塩、硝酸塩、チオシアン酸塩等が挙げられる。チアミン成分は、日持ち向上効果がより一層優れたものとなる観点から、チアミンラウリル硫酸塩であってよい。
チアミン誘導体は、例えば、チアミンの少なくとも一つの官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基)が他の基に置換した化合物又はその塩であってもよい。当該化合物としては、例えば、チアミンピロリン酸、ジベンゾイルチアミン、ビスベンチアミン、フルスルチアミン等が挙げられる。当該化合物の塩は、例えば、上述した有機酸塩、又は無機酸塩であってよい。
チアミン成分の含有量は、次に示す範囲内であってよい。本明細書において、チアミン成分の含有量は、チアミン又はその誘導体を等モルのチアミン塩酸塩に置き換えた場合の含有量(チアミン塩酸塩換算の含有量)である。
チアミン成分の含有量は、上記液状組成物の全質量を基準として、0.0001質量%以上、0.0004質量%以上、又は0.001質量%以上であってよく、液状を維持できる濃度であれば上限は制限されないが、例えば、50質量%以下であってよい。チアミン成分の含有量は、例えば、通常用いられる方法によって測定することができる。具体的には、チアミン成分(例えば、第9版食品添加物公定書に収載されているチアミン成分)の含有量は、例えば、第9版食品添加物公定書の記載に準じた方法によって測定される。
液状組成物は、液状媒体を含んでいてよい。液状媒体としては、例えば、水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、又はこれらの混合物が挙げられる。
液状組成物中の液状媒体の含有量は、液状組成物の全質量を基準として、1質量%以上又は10質量%以上であってよく、上限は制限されないが、99.989質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
液状組成物は、チアミン成分、有機酸成分及び液状媒体以外の成分(他の成分)を含んでいてよい。他の成分としては、例えば、調味料、食塩、醸造発酵物、pH調整剤、増粘多糖類、糖類(液糖、デキストリン、サイクロデキストリン、水飴、還元水飴、糖アルコール等含む)、乳化剤、香料、カフェイン、保存料(安息香酸ナトリウム等)、その他マスキング素材が挙げられる。
本実施形態に係る液状組成物のpHは、酸性領域であることが望ましく、2.0〜6.0であってよく、2.5〜5.0であってよく、2.5〜4.0であってよい。液状組成物中のpHが上記範囲内にある場合には、チアミン臭がより一層抑制されることとなる。pHは、例えば、温度20℃の条件下で、pHメーターを用いて測定することができる。
以上液状組成物について述べたが、チアミン成分と有機酸成分とを含有する組成物は、液状以外の形状(他の形状)で用いることもできる。他の形状としては、例えば、ゼリー状、粉末状、カプセル状、錠剤、ペースト状が挙げられる。
本実施形態に係る組成物は、例えば、チアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種(チアミン成分)と、有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種(有機酸成分)とを混合する工程を含む方法によって製造することができる。液状組成物を得る場合、チアミン成分と有機酸成分との混合は、例えば、チアミン成分、液状媒体、及び必要に応じて他の成分を含む液に、有機酸成分を混合することにより実施してよく、チアミン成分、液状媒体、及び、必要に応じて他の成分を含む液と、有機酸成分、液状媒体、及び必要に応じて他の成分を含む液とを混合することにより実施してよく、有機酸成分及び液状媒体を含む液に、チアミン成分を混合することにより実施してもよい。液状媒体及び他の成分については上述したとおり成分であってよい。
本実施形態に係る組成物を製造する方法において、混合する工程後に、得られた混合物を加熱する工程を更に含んでいてもよい。
加熱する工程において、混合物の加熱温度は、使用するチアミン成分、有機酸成分の種類、含有量等に応じて、適宜設定することができる。例えば、混合物の加熱温度は、200℃以下であってよく、180℃以下であってよく、60℃〜130℃であってよく、60℃〜100℃で行われてよい。上記温度に保持する時間は、例えば、瞬間でもよく、60分間でもよい。本実施形態に係る組成物は、有機酸成分を含有するため、加熱後のチアミン臭の発生が抑制されている。そのため、上記混合する工程及び上記加熱する工程を含む製造方法は、チアミン成分を含有する加熱食品の製造方法として好適に用いることができる。
本実施形態に係る組成物は、飲食品、医薬品、医薬部外品、食品添加物製剤として用いることができる。
チアミン成分を含有する組成物は、加熱によりチアミン臭が強くなる場合がある。しかし、本実施形態に係る組成物は、有機酸成分を含有することにより、チアミン臭の発生が抑制されているため、加熱して用いられる組成物にも好適に適用することができる。
飲食品組成物は、飲料組成物及び食品組成物を含む。飲料組成物の具体的な形態としては、例えば、栄養ドリンク、エナジードリンク、ゼリー飲料、清涼飲料水等が挙げられる。食品組成物の具体的な形態としては、醤油、醤油加工品、漬物、調味液、そうざい(野菜の煮物、おこわ、揚げ物など)等が挙げられる。本実施形態に係る組成物は、加熱食品としても好適に用いることができる。
また、食品組成物には、例えば、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品等が含まれる。
チアミン成分と、有機酸成分とを混合することにより、チアミン成分からのチアミン臭の発生が抑制されることとなる。したがって、本発明の一実施形態として、チアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種(チアミン成分)と、エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種(有機酸成分)とを混合することを含む、チアミン臭の発生を抑制する方法が提供される。当該製造方法では、有機酸成分を、上述した有機酸成分の含有量となるように混合してよく、チアミン成分を上述したチアミン成分の含有量となるように混合してよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
〔試験例1:チアミン臭抑制効果の評価〕
以下に示す化合物を準備した。
クエン酸(昭和化工株式会社製)
フマル酸1ナトリウム(川崎化成工業株式会社製)
チアミン塩酸塩を0.4質量%含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)にクエン酸、又はフマル酸1ナトリウムを各1質量%添加した。有機酸塩を添加した後pHを調整し、次いで、オートクレーブを使用して加熱した。オートクレーブを使用した加熱は、121℃、15分間の条件で実施した。得られた加熱物を評価用の試料とした。有機酸及び有機酸塩を添加しなかったこと以外は、同様にして、基準試料(無添加の試料)を準備した。評価用の試料中の有機酸(フマル酸)換算の有機酸成分の含有量は、0.725質量%であった。
得られた試料のチアミン臭について、4名のパネルにより官能評価を実施した。官能評価では、基準試料と比べたチアミン臭の有無について評価した。
官能評価に加えて、2−メチル−3−フランチオール(MFT)量の測定によるチアミン臭の抑制効果の評価を実施した。MFT量の測定は、“Automated HPLC analysis of glutathione and thiol-containingcompounds in grape juice and wine using pre-column derivatization withfluorescence detection”, Food Chemistry,2000年、68巻、4号、475〜480頁を参考にした条件で実施した。MFT及びビス−2−メチル−3−フリルジスルフィドの合計量をHPLC分析により、MFT量として求めた。
試料は適宜80%アセトン水溶液(アセトン800mLと水200mlを混合したもの)で希釈して用いた。0.2M酢酸緩衝液(pH4.7)にTris(2−carboxyethyl)phosphine Hydrochloride(TCEP−HCl)を任意の濃度で溶解させた。得られたTCEP−HClを含む溶液を、TCEP−HClの濃度が最終10ppmになるように試料に添加し、室温で10分間反応させ、還元処理を行った。還元処理した試料に、還元処理した試料の半量のo−フタルアルデヒド(OPA)0.2%(w/v)(in methanol)溶液を混ぜ、続けて混合したOPAと同量(還元処理した試料の半量)の2−アミノエタノール0.2%(v/v)(in 0.8Mほう酸ナトリウム溶液:pH7.4)溶液を混ぜ、室温条件下、暗所で1分間反応させた。得られた反応液をHPLCを用いて分析した。
HPLC分析には、ODSカラム(Capcelpak C18 MGII 粒子径5μm〔4.6φ×250mm〕)を用い、移動相として50mM酢酸buffer/メタノール=30:70を用いた。流速0.8ml/min、カラム温度40℃の条件で、検出器として蛍光検出器(Ex.340、Em.450nm)を用いて行った。
Figure 0006845367
表1に示すとおり、チアミン塩酸塩を配合した試料にフマル酸1ナトリウムを配合した場合には、有機酸又はその塩を添加しなかった場合及びクエン酸を添加した場合と比べて、MFT濃度の低下がみられた。パネル4人による官能評価でもフマル酸によるチアミン臭の抑制効果は明らかであった。
〔試験例2:栄養ドリンクを用いた場合の評価〕
市販のチアミン成分を含有する栄養ドリンク(商品名:エスカップ、エスエス製薬株式会社製)を準備した。
市販の栄養ドリンクに対して、フマル酸1ナトリウムを、濃度が表2に示す量となるように添加して、評価用の試料を準備した。フマル酸1ナトリウムを添加しなかったこと以外は同様にして、基準試料を準備した。評価用の試料と、基準試料のチアミン臭について、パネル4名による官能評価を実施した。官能評価は、フマル酸1ナトリウムを添加してから3か月間、40℃の条件で保存した試料を用いて実施した。0.1質量%、0.2質量%及び0.6質量%となるようにフマル酸を添加した評価用の試料中の有機酸(フマル酸)換算の有機酸成分の含有量は、それぞれ0.084質量%、0.168質量%及び0.505質量%であった。
官能評価は以下の評価基準に基づいて実施した。官能評価では、チアミン臭がする場合「×」、チアミン臭が低減している場合「〇」、チアミン臭がより一層低減している場合(「〇」より更にチアミン臭が減少している場合)「◎」と評価した。
Figure 0006845367
フマル酸1ナトリウムを添加した場合、無添加の場合と比べて、チアミン臭が抑制されていた。
〔試験例3:他種の有機酸を用いた場合の効果〕
以下に示す化合物を準備した。
フマル酸2ナトリウム(関東化学株式会社製)
マレイン酸2ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製)
ソルビン酸カリウム(株式会社タイショーテクノス製)
Trans−アコニット酸(東京化成工業株式会社製)
チアミン塩酸塩を0.01%含むリン酸緩衝液(pH6.5)に上記有機酸又は有機酸塩を表3に示す量となるように添加し、pHを希塩酸又は水酸化ナトリウム溶液で調製した。これを100℃、60分間の条件で加熱し、得られた加熱物を測定用の試料とした。0.05質量%、0.10質量%、0.20質量%、0.50質量%及び1.00質量%となるようにフマル酸2ナトリウム添加した試料中の有機酸(フマル酸)換算の有機酸成分の含有量は、それぞれ0.036質量%、0.073質量%、0.145質量%、0.218質量%、0.363質量%及び0.725質量%であった。0.50質量%となるようにマレイン酸2ナトリウムを添加した試料中の有機酸(マレイン酸)換算の有機酸成分の含有量は、0.363質量%であった。0.50質量%となるようにソルビン酸カリウムを添加した試料中の有機酸(ソルビン酸)換算の有機酸成分の含有量は、0.374質量%であった。
上記有機酸及び有機酸塩を添加しなかったこと以外は同様にして基準試料を準備した。評価用の試料及び基準試料について、MFT類の分析を試験例1と同様の方法で行った。
Figure 0006845367
表3に示すとおり、エチレン性不飽和結合を含む有機酸を用いた場合、無添加の場合と比べて、MFT量は減少した。フマル酸2Naを用いた場合、濃度依存的にMFT生成量の低下がみられた。
〔試験例4:製剤中のチアミン臭抑制効果〕
チアミンラウリル硫酸塩を5質量%、アルコール(95%エタノール)を60質量%含み、その他が水である製剤を準備した。準備した製剤に、製剤中のフマル酸1ナトリウムの含有量が1質量%となるように添加し、評価用製剤を作製した。フマル酸1ナトリウムを添加しなかったこと以外は評価用製剤と同様にして、基準製剤を準備した。得られた評価用製剤と、フマル酸1ナトリウム無添加の基準製剤を25℃又は40℃の条件下で8か月保管した。製剤中のチアミン成分の含有量は、チアミン塩酸塩換算で、2.07質量%であった。
保管後の製剤におけるチアミン臭について、4名のパネルによる官能評価を実施した。また、保管後の製剤中のMFT量を、試験例1と同様の方法で測定した。MFT量の測定は2回実施し、その平均値を下表に示す。
Figure 0006845367
上記表に示すとおり、MFT生成量はフマル酸1ナトリウムを添加することにより抑制されていた。官能評価についても、フマル酸1ナトリウムを配合した場合には、明らかにチアミン臭が低減している結果が得られた。
チアミンラウリル硫酸塩を5質量%、アルコール(95%エタノール)を60質量%含み、その他が水である製剤を準備した。準備した製剤に、製剤中のフマル酸1ナトリウムの含有量が表5又は表6に示す量となるように添加し、評価用製剤を作製した。得られた製剤を25℃又は40℃の条件下で4か月間保管した。得られた試料を官能評価した。以下に示す評価基準に基づき、4人のパネルによる官能評価を実施した。官能評価では、チアミン臭がする場合「×」、チアミン臭が低減している場合「〇」、チアミン臭がより一層低減している場合(「〇」より更にチアミン臭が減少している場合)「◎」と評価した。
Figure 0006845367
Figure 0006845367
上記表に示すとおり、フマル酸1ナトリウムを0.05質量%配合した場合でも、チアミン臭抑制効果を発揮しているという結果が得られた。

Claims (3)

  1. エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有し、
    前記有効成分が、フマル酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸及びこれらの塩(但し、カルシウム塩を除く。)からなる群より選択される少なくとも1種である、チアミン臭抑制剤。
  2. チアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種と、エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有し、
    前記エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の含有量が、0.01質量%以上であり、
    前記エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種が、フマル酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸及びこれらの塩(但し、カルシウム塩を除く)からなる群より選択される少なくとも1種である、液状組成物。
  3. チアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種と、エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種とを混合することを含み、
    前記エチレン性不飽和結合を含む有機酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種が、フマル酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸及びこれらの塩(但し、カルシウム塩を除く)からなる群より選択される少なくとも1種である、チアミン臭の発生を抑制する方法。
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