JP6814547B2 - ポリアセタール樹脂組成物 - Google Patents
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Description
近年ポリアセタール樹脂は、自動車分野を中心に低VOC化の要求が高まっており、自動車内装部品に使用される樹脂として、部品からのホルムアルデヒド放出量の少ないポリアセタール樹脂の要求が高くなっている。
しかしながら、ランナー部をリワーク成形する際、該ランナーは熱履歴を受けているため、成形機シリンダー内での樹脂流動性に影響する場合があり、バリ、そり等の成形不良を発生させ安定生産性が困難となることがある。よって近年では、安定生産性、及び生産コストの観点から、自動車内装部品等の成形でホットランナー金型を選択する傾向が高まっている。
ホットランナー金型を用いて連続成形を行う場合、ホットランナー金型内のマニホールド温度(溶融樹脂が滞留する部分:ホットランナー部)は、一般的に成形機シリンダー温度以上の温度に設定する。その為、コールドランナー金型を用いて連続成形する場合よりも、ポリアセタール樹脂に、より高い熱安定性が要求される。
そこで本発明は、ホットランナー金型を用いた連続成形等の樹脂組成物が高温に長時間曝される成形方法を適用した場合においても、ポリアセタール樹脂の熱分解が少なく、得られた成形品からのホルムアルデヒド放出量や金型汚染の少ないポリアセタール樹脂組成物を提供することを目的とする。
〔1〕
(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)窒素含有ヒンダード化合物0.001〜0.2質量部と、(C)タルク0.0001〜0.1質量部とを、含有する、ポリアセタール樹脂組成物。
〔2〕
(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物の含有量が、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して0.001〜0.2質量部である、前記〔1〕に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔3〕
(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物がヒドラジン構造を含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔4〕
さらに、(D)安定剤として、アミノ置換トリアジン化合物、尿素誘導体、ヒドラジド誘導体、アミド化合物、ポリアミド、及び、ポリアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物0.001〜0.2質量部と、(C)タルク0.0001〜0.1質量部とを、含有する。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に含まれる(A)ポリアセタール樹脂は、オキシメチレン基を主鎖に有するポリマーをいい、例えば、ホルムアルデヒド単量体、又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる実質上オキシメチレン単位のみからなるポリアセタールホモポリマー;ホルムアルデヒド単量体、又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコール、ジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、又は環状ホルマールとを共重合させて得られたポリアセタールコポリマー;単官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー;多官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマー等が挙げられる。
さらに、(A)ポリアセタール樹脂としては、両末端又は片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマー;同じく両末端又は片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテルや環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーなども用いることができる。
前記ポリアセタールホモポリマーは、例えば、モノマーであるホルムアルデヒド、連鎖移動剤(分子量調節剤)及び重合触媒を、炭化水素系重合溶媒を導入した重合反応器にフィードし、スラリー重合法により重合することにより製造することができる。
この際、原料モノマーや連鎖移動剤、重合触媒には、連鎖移動可能な成分(不安定末端基を生成する成分)、例えば、水やメタノール及び蟻酸、が含まれているため、まずこれら連鎖移動可能な成分の含有量を調整することが好ましい。
この時の連鎖移動可能な成分の含有量は、モノマーであるホルムアルデヒドに対して、好ましくは1〜1000ppmの範囲であり、より好ましくは1〜500ppm、さらに好ましくは1〜300ppmである。
連鎖移動可能な成分量を上記範囲に調整することにより、熱安定性に優れるポリアセタール樹脂ホモポリマーを得ることができる。
分子量調節剤としては、特に無水プロピオン酸、無水酢酸が好ましく、より好ましくは無水酢酸である。
分子量調節剤の導入量は、目的とするポリアセタールホモポリマーの特性(特にメルトフローレート)に応じて調節し決定する。例えば、ポリアセタールホモポリマーは、メルトフローレート(MFR値(ISO1133に準拠))が、0.1〜100g/10分の範囲になるようにすることが好ましく、より好ましくは1.0g/10分〜70g/10分の範囲になるようにする。
ポリアセタールホモポリマーのMFR値を上記範囲とすることにより、機械強度に優れるポリアセタールホモポリマーを得ることができる。
[R1R2R3R4M]+X- ・・・(I)
(式(I)中、R1、R2、R3、R4は、各々、独立にアルキル基を示し、Mは孤立電子対を持つ元素を示し、Xは求核性基を示す。)
他の重合触媒としては、オニウム塩系重合触媒が挙げられ、当該オニウム塩系重合触媒のなかでも、テトラエチルホスホニウムイオダイド、トリブチルエチルホスホニウムイオダイドのような第4級ホスホニウム塩系化合物や、テトラメチルアンモニウムブロマイド、ジメチルジステアリルアンモニウムアセテートのような第4級アンモニウム塩系化合物が好ましい。
これら第4級ホスホニウム塩系化合物や第4級アンモニウム塩系化合物の添加量は、ホルムアルデヒド1モルに対して0.0003〜0.01molであることが好ましく、より好ましくは0.0008〜0.005molであり、さらに好ましくは0.001〜0.003molである。
これらの炭化水素系溶媒は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできるが、ヘキサンが特に好ましい。
粗ポリアセタールホモポリマーを製造する重合装置は、モノマーであるホルムアルデヒド、連鎖移動剤(分子量調節剤)、重合触媒と炭化水素系重合溶媒を同時に供給できる装置であれば特に限定されるものではないが、生産性の観点から連続式重合装置が好ましい。
重合工程により得られた粗ポリアセタールホモポリマーは、重合体の末端基が熱的に不安定であるので、この不安定末端基をエステル化剤やエーテル化剤等でポリマー末端基を封鎖し、安定化処理することが好ましい。
エステル化による粗ポリアセタールホモポリマーの末端安定化は、例えば、粗ポリアセタールホモポリマーと、前記エステル化剤及びエステル化触媒とを、炭化水素系溶媒を導入した末端安定化反応機にそれぞれ投入し、反応させることによって行うことができる。
この時の反応温度や反応時間については限定はないが、例えば、反応温度が130〜155℃であり、反応時間は1〜100分間であることが好ましく、反応温度が135〜155℃であり、反応時間が5〜100分であることがより好ましく、反応温度が140〜155℃であり、反応時間が10〜100分であることがさらに好ましい。
R5COOCOR6 ・・・(II)
(式(II)中、R5、R6は、各々、独立にアルキル基を示す。R5、R6は、同じであっても異なっていてもよい。)
当該エステル化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水安息香酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無水プロピオン酸、無水酢酸が挙げられ、好ましくは無水酢酸である。
これらエステル化剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
炭素数1〜18のカルボン酸のアルカリ金属塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸が蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプリル酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸のアルカリ金属塩が挙げられ、当該アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。
これらカルボン酸金属塩の中でも、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、及び酢酸カリウムのアルカリ金属塩が好ましい。
この場合のエーテル化剤としては、脂肪族又は芳香族酸と、脂肪族、脂環式族又は芳香族アルコールとのオルトエステル、例えば、メチル又はエチルオルトホルメート、メチル又はエチルオルトアセテート及びメチル又はエチルオルトベンゾエート、及びオルトカーボネート、具体的にはエチルオルトカーボネートから選択し、p−トルエンスルホン酸、酢酸及び臭酸のような中強度有機酸、ジメチル及びジエチルスルフェートのような中強度鉱酸等のルイス酸型の触媒を用いて得ることができる。
粗ポリアセタールホモポリマーの末端基を、エーテル化により封鎖し、安定化するときの、当該エーテル化反応に用いる溶媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン及びベンゼン等の低沸点脂肪族有機溶媒;脂環式族及び芳香族炭化水素系有機溶媒;塩化メチレン、クロロホルム及び四塩化炭素等のハロゲン化低級脂肪族等の有機溶媒が挙げられる。
ポリアセタールコポリマーは、以下に限定されるものではないが、例えば、コモノマーとして1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコール、ジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、又は環状ホルマールを用い、これらと前記トリオキサン等のモノマーとを共重合させることにより製造することができる。
共重合させるコモノマーの割合は、ホルムアルデヒド1molに対して0.03〜20mol%であることが好ましく、0.03〜7mol%であることがより好ましく、0.04〜3mol%であることがさらに好ましい。
コモノマーの割合が上記範囲であれば、より機械的強度に優れたポリアセタール樹脂ペレットが得られる。
ルイス酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、具体的には三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。
また、プロトン酸及びそのエステル又は無水物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
これらの中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、例えば、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルが好ましいものとして挙げられる。
三フッ化ホウ素の添加量としては、ホルムアルデヒド1molに対して、三フッ化ホウ素が、0.10×10-4mol以下が好ましく、より好ましくは0.07×10-4mol以下であり、さらに好ましいのは、0.03〜0.05×10-4molである。
三フッ化ホウ素の添加量が前記範囲であれば、熱安定性に優れたポリアセタール樹脂組成物を提供することができる。
重合装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出混錬機、2軸パドル型連続混合機等のセルフクリーニング型押出混錬機が挙げられる。
溶融状態のモノマーが前記重合機に供給され、重合の進行とともに固体塊状のポリアセタールコポリマーが得られる。
以上のように、本実施形態においては、(A)ポリアセタール樹脂に限定はなく、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーいずれも用いることが可能である。
この中でも、好ましいのはポリアセタールコモポリマーである。
本実施形態において、窒素含有ヒンダードフェノール化合物とは、その構造式に少なくとも一つの窒素原子を含んでいるヒンダードフェノール化合物(水酸基の少なくとも一つのオルト位に第3級アルキル基を有するフェノール化合物)のことをいう。
ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上、特にホルムアルデヒド放出量低減、の観点から、窒素含有ヒンダードフェノール化合物である事が好ましい。
(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,2−ビス[3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、1,3,5−トリス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、4−[[4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ]−2,6−ジ−t−ブチルフェノールが挙げられる。
これら窒素含有ヒンダードフェノール化合物の中でも、1,2−ビス[3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、が好ましく、より好ましいのは1,2−ビス[3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオニル]ヒドラジンである。
(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物の融点が前記範囲であれば、より熱安定性に優れたポリアセタール樹脂組成物を提供することができる。
(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物の含有量が前記範囲であれば、熱安定性に優れたポリアセタール樹脂組成物を提供することができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物中の(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物を定量する方法としては、例えば、ポリアセタール樹脂ペレットを凍結粉砕し、クロロホルム等の溶媒でソックスレー抽出し、GCMS、または1H−NMRにより定量する方法が挙げられる。
(C)タルクとは含水珪酸マグネシウムからなる粒子であり、その組成は一般的に[Mg3Si4O10(OH)2]で示され、SiO2約60質量%、MgO約30質量%と結晶水4.8質量%が主成分である。真比重は一般に2.7〜2.8であり、白色度はJIS K−8123に準じて測定した数値が93%以上、pHはJIS K−5101に準じて測定した数値が9.0〜10の範囲であることが好ましい。
又、45μm篩残分はJIS K−5101に準じて測定した数値が0.2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以下である。(C)タルクの平均粒子径は、好ましくは1〜30μmであり、より好ましくは2〜25μm、更に好ましくは2〜20μmである。(C)タルクの平均粒子径が前記範囲であると、より熱安定性に優れたポリアセタール樹脂組成物を提供することができる。
本実施形態において、(C)タルクは、(A)ポリアセタール樹脂との親和性を向上させるために公知の表面処理剤を用いて表面処理されていてもよい。
表面処理剤としては例えば、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、さらには脂肪酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸)、脂環族カルボン酸及び樹脂酸や金属石鹸をあげることができる。表面処理剤の添加量としては好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下であり、最も好ましくは実質的に添加されていないことである。
(C)タルクの含有量が前記範囲であれば、熱安定性に優れたポリアセタール樹脂組成物を提供することができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物においては、上述の(B)及び(C)の組合せ添加によって良好な熱安定性が達成されているので、その他に安定剤を添加しなくてもよいが、さらなる熱安定性の改良やその他の物性の安定性を改良するために、さらに、(D)各種安定剤を含んでいてもよい。
(D)安定剤としては、例えば、アミノ置換トリアジン化合物、尿素誘導体、ヒドラジド誘導体、アミド化合物、ポリアミド、及び、アクリルアミド重合体等が挙げられる。
前記N−置換尿素としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルキル基等の置換基を有するメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素が挙げられる。前記尿素縮合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、尿素とホルムアルデヒドの縮合体等が挙げられる。前記ヒダントイン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン等が挙げられる。前記ウレイド化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アラントイン等が挙げられる。
ヒドラジド化合物としては、カルボン酸(含芳香族、脂環)とヒドラジンとの反応により合成される、カルボン酸モノ/又はジヒドラジド化合物やアルキル基置換モノ/又はジヒドラジド化合物が挙げられる。カルボン酸モノ/又はジヒドラジド化合物を構成するカルボン酸としては、モノカルボン酸の例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸である。ジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタリン酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、アミノ酸、ニトロカルボン酸が挙げられる。また不飽和カルボン酸の例としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸が挙げられる。これらカルボン酸を用いて合成されるカルボン酸モノ(ジ)ヒドラジド化合物は、例えば、カルボジヒドラジン、シュウ酸モノ(ジ)ヒドラジド、マロン酸モノ(ジ)ヒドラジド、コハク酸モノ(ジ)ヒドラジド、グルタル酸モノ(ジ)ヒドラジド、アジピン酸モノ(ジ)ヒドラジド、セバシン酸モノ(ジ)ヒドラジド、ラウリン酸モノ(ジ)ヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、プロピオン酸モノヒドラジド、ラウリン酸モノヒドラジド、ステアリン酸モノヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタリン酸ジヒドラジド、p―ヒドロキシベンゾイックヒドラジン、p―ヒドロキシベンゾイックヒドラジン、1,4−シクロへキサンジカルボン酸ジヒドラジン、アセトヒドラジド、アクリロヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ベンゾヒドラジド、ニコチノヒドラジド、イソニコチノヒドラジド、イソブチルヒドラジン、オレイン酸ヒドラジド等が挙げられる。これらカルボン酸の中でも、アジピン酸、セバシン酸、ラウリン酸等のジカルボン酸が好ましく、アジピン酸モノ(ジ)ヒドラジド、セバシン酸モノ(ジ)ヒドラジド、ラウリン酸モノ(ジ)ヒドラジドが、最も好ましいカルボン酸ヒドラジド化合物である。
前記アクリルアミド重合体を構成する、アクリルアミド以外のビニル基を有するモノマーとしては、ビニル基を1個又は2個有するモノマーが挙げられる。
ビニル基を1個有するモノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、シクロへキシルメタクリレート、2−エチルへキシルメタクリレート、セシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
ビニル基を2個有するモノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジビニルベンゼン、エチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。
これらのビニル基を有するモノマーの中で、N,N’−メチレンビスアクリルアミドが好ましい。
前記アクリルアミド重合体に対する前記ビニル基を有するモノマーの導入量は、アクリルアミド成分とビニル基を有するモノマーとの合計量に対して0.05〜20質量%であることが好ましい。
上述したビニル基を有するモノマーと共重合する(架橋構造を持たせる)ことにより、ポリアセタール樹脂ペレットの押出し生産性を向上させることができる。
アクリルアミド重合体の平均粒子径は、0.1〜20μmが好ましく、より好ましくは0.1〜15μm、さらに好ましくは0.1〜10μmである。
アクリルアミド重合体の平均粒子径が上記範囲であると、押出し生産性に優れるポリアセタール樹脂組成物が得られる。
ポリアセタール樹脂に対する熱安定剤の添加量を前記範囲にすることで、より熱安定性に優れるポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、上述したものの他に、公知の添加剤、例えば、前述した、(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物を除く酸化防止剤、ギ酸捕捉剤、耐候安定剤、離型剤、潤滑剤、導電剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、染顔料、顔料、あるいは無機充填剤又は有機充填剤等を添加してもよい。
これらの添加剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
当該ヒンダートフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3'−メチル−5'−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4 −ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン‐3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。
これらの酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
その他のギ酸捕捉剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシドが挙げられる。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムもしくはバリウムなどの水酸化物;上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩、さらには層状複水酸化物が挙げられる。
前記カルボン酸塩のカルボン酸としては、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウム、12ヒドロキシステアリン酸カルシウムが挙げられ、中でも好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシジステアリン酸カルシウムが挙げられる。
ギ酸補捉剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ベンゾトリアゾール系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
これらの化合物はそれぞれ1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記蓚酸アリニド系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリドなどが挙げられる。
これらの化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ヒンダードアミン系光安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物、などが挙げられる。
前記ヒンダードアミン系光安定剤は、それぞれ1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
離型剤及び潤滑剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
導電剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂は1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
また、熱可塑性樹脂としては、上述した樹脂の変性物も含まれる。
熱可塑性エラストマーは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
無機系顔料とは樹脂の着色用として一般的に使用されているものを言い、以下に限定されるものではないが、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩やカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられる。
有機系顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の顔料である等の顔料が挙げられる。
染顔料は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
顔料の添加割合は色調により大幅に変わるため明確にすることは難しいが一般的には、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲で用いられる。
その他の樹脂は1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
繊維状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維が挙げられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類も含まれる。
粉粒子状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイト等の珪酸塩;酸化鉄、酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩;炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
板状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔が挙げられる。
中空状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン等が挙げられる。
有機充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状充填剤が挙げられる。
これらの充填剤は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
表面処理剤としては、特に限定されず、従来公知の表面処理剤が使用可能である。
表面処理剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤、樹脂酸、有機カルボン酸、有機カルボン酸の塩等、界面活性剤が使用できる。
具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネート等が挙げられる。
一般的には、(A)ポリアセタール樹脂と、(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物と、(C)タルクとを、必要に応じて上述した所定の成分を、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラー、V字型ブレンダ―等で混合した後、1軸又は多軸の押出機、加熱ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより得られる。中でも、ベント減圧装置を備えた押出機による混練が、生産性の観点から好ましい。また、ポリアセタール樹脂組成物を大量に安定して製造するには、単軸又は二軸の押出機が好適に用いられる。
また、予め混合することなく、定量フィーダーなどで各成分を単独あるいは数種類ずつまとめて押出機に連続フィードすることもできる。
また、予め各成分からなる高濃度マスターバッチを作製しておき、押出溶融混練時にポリアセタール樹脂で希釈することもできる。
混練温度は、使用するポリアセタール樹脂の好ましい加工温度に従えばよく、一般的には、140〜260℃の範囲、好ましくは180〜230℃の範囲とする。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、成形し、成形品として使用することができる。成形する方法については、特に限定はなく、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法の何れかによって成形することができる。
これらの中でも、安定生産性の観点から射出成形法が好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ホットランナー金型を用いた連続成形を行っても、ポリアセタール樹脂の熱分解が少なく、そのため金型の汚染も少ない。
また、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は厳しい成形条件下で成形しても、得られた成形品からのホルムアルデヒド放出量が少ない。
従って、様々な用途の成形品に使用することが可能である。
例えば、ギア、カム、スライダー、レバー、軸、軸受け及びガイド等に代表される機構部品、アウトサート成形の樹脂部品またはインサート成形の樹脂部品(シャーシ、トレー、側板部品)、プリンター又は複写機用部品、デジタルカメラ又はデジタルビデオ機器用部品、音楽、映像又は情報機器用部品;通信機器用部品;電気機器用部品;電子機器用部品用に用いられる。
また、自動車用の部品として、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドア廻り部品;シートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品;スイッチ類に好適に使用される。
さらに、住宅設備機器に代表される工業部品としても好適に使用できる。
なお、実施例及び比較例において適用した測定・評価方法を下記に示す。
〔測定・評価方法〕
<ホットランナー金型によるモールドデポジッド性評価>
図1に示す構成を有する成形機を用い、及び下記(a)成形条件に従って、ポリアセタール樹脂組成物のモールドデポジッド性評価を行った。評価基準は下記(b)を用いた。
(a)成形条件
・射出成形機 :東芝機械(株)IS−100GN
(溶融樹脂流路末端先端部ガス抜き部無、ウエルド部有)
・シリンダー設定温度 :220℃
・マニホールド設定温度:230℃(ノズル自動開閉式)
・金型設定温度 :80℃
・成形サイクル :射出時間/冷却時間=10/20秒
・金型サイズ :70×60mm×3mm
(b)評価基準
以下の評価基準に基づいて、成形開始から300ショット目と1000ショット目の金型キャビティ内のモールドデポジッド付着状況を観察した。
1:付着物が金型キャビティ内の5%未満の範囲で観察された。
2:付着物が金型キャビティ内の5%以上10%未満の範囲で観察された
3:付着物が金型キャビティ内の10%以上20%未満の範囲で観察された。
4:付着物が金型キャビティ内の20%以上30%未満の範囲で観察された。
5:付着物が金型キャビティ内の30%以上の範囲で観察された。
(1)成形機シリンダー内滞留無
(株)東芝製IS−100GN射出成形機を用いて、シリンダー温度220℃、金型温度80℃、射出圧力60MPa、射出時30秒、冷却時間15秒により試験片を成形した。成形開始から5ショットまでの成形品は廃棄し、6ショット目の成形品について、下記に示す条件(VDA275法)により、成形品から放出されるホルムアルデヒド量を測定した。
(2)成形機シリンダー内滞留有
(株)東芝製IS−100GN射出成形機を用いて、シリンダー温度220℃、金型温度80℃、射出圧力60MPa、射出時30秒、冷却時間15秒で試験片を成形した。
5ショット目を成形している途中(成形機シリンダー内に溶融樹脂が計量され、冷却ゾーンに入っている状態)で成形機を停止し、シリンダー温度220℃を保持した状態で、成形機シリンダー内に溶融樹脂を5分間滞留させた。5分後、再び成形機を起動し、射出成形機内に滞留させていたポリアセタール樹脂を、金型温度80℃、射出圧力60MPa、射出時30秒、冷却時間15秒の条件で成形し試験片を得た。滞留直後に成形した成形品について、下記に示す条件(VDA275法)により、成形品から放出されるホルムアルデヒド量を測定した。
※VDA275法:
ポリエチレン容器に蒸留水50mLと規定されたサイズの試験片(縦100mm×横40mm×厚み3mm)を入れ密閉し、60℃で3時間加熱しながら蒸留水中にホルムアルデヒドを抽出し、その後室温まで冷却した。
冷却後、ホルムアルデヒドを吸収した蒸留水5mLに、アセチルアセトン0.4質量%水溶液5mL、及び酢酸アンモニウム20質量%水溶液5mLを加え、40℃で15分間加熱を行い、ホルムアルデヒドとアセチルアセトンの反応を行った。
更に当該混合液を室温まで冷却後、UV分光光度計を用いて412nmの吸収ピークより蒸留水中のホルムアルデヒド量を定量した。
成形品から放出されるホルムアルデヒド量(mg/kg)は下記式により求めた。
成形品から放出されるホルムアルデヒド量(mg/kg)
=蒸留水中のホルムアルデヒド量(mg)/測定に用いたポリアセタール樹脂成形品の質量(kg)
実施例、及び比較例に用いた原料成分について下記に示す。
<(a)ポリアセタール樹脂>
ジャケット付き2軸パドル型連続重合反応機((株)栗本鐵工所製、径2B、L/D=14.8)を80℃に調整し、下記に示す重合条件(供給速度)にて原料等を供給してポリアセタールコポリマーを重合した。
得られた粗ポリマーの不安定末端基を下記に示す末端安定化条件で除去し、1,3−ジオキソランに由来するコモノマー成分の含有量が4mol%、MFR値が9g/10minのポリアセタールコポリマー(ポリアセタール樹脂(A−1))を得た。
なお、ポリアセタールコポリマーの重合条件(原料の供給速度)及び末端安定化条件を以下に示した。
[重合条件]
以下に示す供給速度で反応機に原料を供給した。
・トリオキサン(主モノマー):3500gr/hr
・1,3−ジオキソラン(コモノマー):120.9gr/hr
・メチラール(分子量調節剤):2.4gr/hr
・シクロヘキサン(有機溶媒):6.5g/hr
・三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラート(重合触媒):0.04g/hr(ホルムアルデヒド1molに対して、三フッ化ホウ素が、0.05×10-4molとなるように供給速度を設定した。)
なお、重合触媒のみ上記の他の成分と別ラインにてフィードした。
[末端安定化条件]
重合反応機から排出された粗ポリアセタールコポリマーを、トリエチルアミン水溶液(0.5質量%)中に浸漬し、その後、常温で1hr攪拌を実施した後、遠心分離機でろ過し、窒素下で120℃×3hr乾燥し、ポリアセタールコポリマー(ポリアセタール樹脂(A−1))を得た。
B−1:1,2−ビス[3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(Irganox MD1024)
B−2:N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド] (Irganox1098)
B−3:1,3,5−トリス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(Irganox 3114)
b−4:トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート](Irganox 245)
b−5:1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4 −ヒドロキシフェニル)−プロピオネート](Irganox 259)
C−1:MSタルク(平均粒子径16μm) 日本タルク株式会社製
<(d)安定剤>
D−1:ポリアクリルアミド重合体(平均粒子径5μm)
(A−1)ポリアセタール樹脂100質量、(B−1)1,2−ビス[3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオニル]ヒドラジン0.05質量部、及び、(C−1)タルク0.01質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて均一に混合して混合物を得た。
この混合物を200℃に設定された30mmベント付2軸押出機のトップフィード口からフィードし、スクリュー回転数80rpm、ベント減圧度−0.09MPa、吐出量5kg/hrで溶融混錬しペレット化した後、当該ペレットを熱風温度80℃で3時間乾燥することによりポリアセタール樹脂ペレットを得た。
得られたポリアセタール樹脂ペレットを用いて、成形品からのホルムアルデヒド放出量、ホットランナー成形モールドデポジッド性を、上述した方法により測定、評価した。評価結果を下記表1に示す。
組成を表1の通りとした以外は、実施例1と同様な操作を行い、ポリアセタール樹脂ペレットを得た。
得られたポリアセタール樹脂ペレットを用いて、ホットランナー金型によるモールドデポジッド性、及び、成形品からのホルムアルデヒド放出量を、上述した方法により測定、評価した。評価結果を下記表1に示す。
(A−1)ポリアセタール樹脂100質量を、200℃に設定された30mmベント付2軸押出機のトップフィード口からフィードし、スクリュー回転数80rpm、ベント減圧度−0.09MPa、吐出量5kg/hrで溶融混錬しペレット化した後、当該ペレットを熱風温度80℃で3時間乾燥することによりポリアセタール樹脂ペレットを得た。
得られたポリアセタール樹脂ペレットを用いて、ホットランナー金型によるモールドデポジッド性、及び、成形品からのホルムアルデヒド放出量を、上述した方法により評価、測定した。評価結果を下記表1に示す。
(A−1)ポリアセタール樹脂100質量と(C−1)タルク0.01質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて均一に混合して混合物を得た。
この混合物を200℃に設定された30mmベント付2軸押出機のトップフィード口からフィードし、スクリュー回転数80rpm、ベント減圧度−0.09MPa、吐出量5kg/hrで溶融混錬しペレット化した後、当該ペレットを熱風温度80℃で3時間乾燥することによりポリアセタール樹脂ペレットを得た。
得られたポリアセタール樹脂ペレットを用いて、ホットランナー金型によるモールドデポジッド性、及び、成形品からのホルムアルデヒド放出量を、上述した方法により評価、測定した。評価結果を下記表1に示す。
組成を表1の通りとした以外は、実施例1と同様な操作を行い、ポリアセタール樹脂ペレットを得た。
得られたポリアセタール樹脂ペレットを用いて、ホットランナー金型によるモールドデポジッド性、及び、成形品からのホルムアルデヒド放出量を、上述した方法により評価、測定した。評価結果を下記表1に示す。
一方、比較例1〜12で得られたポリアセタール樹脂組成物は、モールドデポジット性が劣り、得られた成形品からのホルムアルデヒド放出量も多かった。
Claims (3)
- (A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物0.05〜0.2質量部と、(C)タルク0.01〜0.1質量部とを、含有し、
(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物がヒドラジン構造を含む、ポリアセタール樹脂組成物。 - (B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物の含有量が、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して0.05〜0.15質量部である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- さらに、(D)安定剤として、アミノ置換トリアジン化合物、尿素誘導体、ヒドラジド誘導体、アミド化合物、ポリアミド、及び、アクリルアミド重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
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