JP6809912B2 - 炭化珪素粉末、その製造方法、及び炭化珪素単結晶の製造方法 - Google Patents

炭化珪素粉末、その製造方法、及び炭化珪素単結晶の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、昇華再結晶法(改良レーリー法)で炭化珪素の単結晶を製造する際の原料となる炭化珪素粉末、その製造方法、及び炭化珪素単結晶の製造方法に関する。
炭化珪素粉末は、その高硬度性、高熱伝導性、高温耐熱性から、成形砥石、セラミックス部品等の材料として使用されている。また、炭化珪素の単結晶は、シリコンと比較すると、バンドギャップは約3倍、絶縁破壊電界強度は約10倍という物性を有するので、シリコンに代わるパワー半導体用基盤の材料として注目されている。
炭化珪素単結晶の製造方法として、原料である炭化珪素粉末を2000℃以上の高温条件下において昇華させ、炭化珪素を単結晶成長させる昇華再結晶法がよく知られており、工業的に広く使用されている。
昇華再結晶法により炭化珪素の単結晶を得る方法においては、単結晶の成長速度を安定させることが重要である。成長速度が不安定であるとマイクロパイプ欠陥等の欠陥の原因になりやすく、またホウ素の添加を行ってp型半導体とするなど単結晶に対してドープを行う場合、単結晶に添加されるドーパントの濃度が、単結晶成長が速いほど相対的に小さくなり、不均一になってしまう。
結晶成長速度を安定させる方法として、特許文献1には、昇華速度が不安定になるのは、昇華時に断熱容器として使用する黒鉛製のるつぼに昇華ガスのSiが吸収されることによってるつぼの断熱性が変化してるつぼの加熱条件が変化するためであると考え、るつぼに対して前もってSiを吸収させることでるつぼの断熱性変化を抑制するという方法が記載されている。
また、特許文献2には、シリコン小片と炭素粉末を加熱した6H型のポリタイプを持つ炭化珪素粉末前駆体を昇華の原料として使用することで、昇華を行う際の炭化珪素結晶の成長速度を高める方法が記載されている。
また、特許文献3には、原料として炭化珪素と炭素の混合物を原料粉末とすることで、Siリッチな雰囲気下での急激な結晶成長に起因するシリコンドロップレットの発生を抑制しつつ、結晶成長面と原料粉末近傍の温度差が200℃以上という温度差の大きい条件での結晶の高速成長を行う方法が記載されている。
特開2014−43394号公報 特開2013−252998号公報 特開2013−103848号公報
上記の各文献では、Siガスが断熱材に吸収されることによる断熱材の劣化、Siガス濃度の過剰によるシリコンドロップレットの発生といった欠陥の発生メカニズムが論じられているが、総じて、炭化珪素粉末を昇華させる際、特に昇華初期において、昇華ガス中のSi濃度がC濃度よりも高くなることが欠陥発生の原因となっている。
これに対して原料の炭素濃度を上げる、Siガスの発生を加味した系あるいは昇華条件とすることで影響を緩和する方法が検討されているが、原料の炭素濃度を上げることは、炭素原料を余分に加熱する必要があることからエネルギー効率の低下につながり、Siガスの発生を加味した系や昇華条件を選ぶ方法は、繰り返し炭化珪素単結晶を製造する際に断熱材の劣化等の状況に応じて都度条件を再検討する必要があることから、工業的な生産に不向きである。
したがって、本発明の目的は、炭化珪素粉末の昇華初期において、昇華ガス中のSi濃度がC濃度よりも高くなることを抑制して、炭化珪素単結晶の成長速度を安定させ、シリコンドロップレット等の欠陥の発生を抑制できる炭化珪素粉末、その製造方法、及び炭化珪素単結晶の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の炭化珪素粉末は、昇華再結晶法により炭化珪素の単結晶を製造する際の原料として用いられる炭化珪素粉末において、粒子表面から深さ10μmまでの領域における遊離炭素濃度が0.10〜3.0質量%であることを特徴とする。
本発明の炭化珪素粉末によれば、粒子表面から深さ10μmまでの領域における遊離炭素濃度が0.05質量%以上であるため、昇華再結晶法により炭化珪素の単結晶を製造する際、昇華初期におけるSiの昇華を遅らせ、かつCの昇華を促進することができ、成長初期の単結晶におけるSiが過剰となることがなく、昇華初期におけるシリコンドロップレットなどの欠陥の発生を抑制できると共に、安定した成長速度で単結晶を成長させることができる。また、遊離炭素濃度が大きいのが表面のみであれば、原料として炭素質材料を混合してCリッチな条件で運転する場合と異なり、昇華後期においてカーボンインクルージョンなどの欠陥の要因となることも防ぐことができる。
そして、粒子表面から深さ10μmまでの領域における遊離炭素濃度が0.10〜3.0質量%であるため、単結晶の成長速度をより安定化することができる。
また、本発明の炭化珪素粉末においては、篩の目開き寸法による粒度範囲が106〜2360μmであることが好ましい。なお、本発明における粒度範囲とは、篩分けを行った時に95質量%以上の粒子がその範囲に入ることを意味する。細かい粒子だとカーボンの微粉のためにカーボンインクルージョンが起こりやすく、粗い粒子だと比表面積が小さいため昇華速度が遅くなり、シリコンドロップレットが発生しやすくなる傾向がある。
一方、本発明の炭化珪素粉末の製造方法は、昇華再結晶法により炭化珪素の単結晶を製造する際の原料として用いられる炭化珪素粉末の製造方法において、無機珪酸質原料と炭素質原料とを混合して炭化珪素製造用原料を得る原料作成工程と、前記炭化珪素製造用原料を2200℃以上で焼成することにより、炭化珪素からなる塊状物を形成する焼成工程と、前記焼成工程で得られた炭化珪素からなる塊状物を冷却する冷却工程と、冷却された前記塊状物を粉砕し、粉砕物を分級することにより所定粒度の炭化珪素粉末を得る粉末形成工程とを含み、前記冷却工程の際、前記塊状物が酸素と接触するのを遮断しつつ冷却することを特徴とする。
本発明の炭化珪素粉末の製造方法によれば、冷却工程の際、炭化珪素からなる塊状物が酸素と接触するのを遮断しつつ冷却することにより、粒子の表面領域において遊離炭素と酸素が燃焼反応して表面の遊離炭素濃度が低下するのを防ぐことができ、最終的に得られる炭化珪素粉末の粒子表面の遊離炭素濃度を高めることができる。それによって前述した効果を有する炭化珪素粉末を得ることができる。
本発明の炭化珪素粉末の製造方法においては、前記冷却工程の際、前記塊状物が酸素と接触するのを遮断しつつ冷却することにより、最終的に得られる炭化珪素粉末の粒子表面から深さ10μmまでの領域における遊離炭素濃度が0.05質量%以上となるようにすることが好ましい。これによれば、前述した効果を更に良好に得ることができる。
本発明の炭化珪素粉末の製造方法においては、前記冷却工程を、前記塊状物に水を噴霧しつつ行うことが好ましい。この方法より、塊状物の周辺が蒸気でバリアされることにより塊状物表面が空気中の酸素による酸化を受けにくくなるようにすることができ、また蒸発潜熱により高温の塊状物の冷却が促進されることにより、塊状物表面が、燃焼反応が起こりやすい高温状態に保たれる時間を短くすることができる。
本発明の炭化珪素粉末の製造方法においては、前記粉末形成工程において、篩の目開き寸法による粒度範囲が106〜2360μmとなるように、前記粉砕及び分級を行うことが好ましい。これによって、昇華再結晶法により炭化珪素の単結晶を製造する際、カーボンインクルージョンや、シリコンドロップレットが発生しにくい炭化珪素粉末を得ることができる。
更に、本発明の炭化珪素単結晶の製造方法は、前述した炭化珪素粉末を原料として、昇華再結晶法により炭化珪素の単結晶を成長させることを特徴とする。それによって前述した作用効果を得ることができる。
本発明の炭化珪素粉末によれば、昇華再結晶法により炭化珪素の単結晶を製造する際、昇華初期におけるSiの昇華を遅らせ、かつCの昇華を促進することができ、成長初期の単結晶におけるSiが過剰となることがなく、昇華初期におけるシリコンドロップレットなどの欠陥の発生を抑制できると共に、安定した成長速度で単結晶を成長させることができる。また、昇華後期においてカーボンインクルージョンなどの欠陥が発生することも防ぐことができる。
本発明の炭化珪素粉末の製造方法によれば、冷却工程の際、炭化珪素からなる塊状物が酸素と接触するのを遮断しつつ冷却することにより、粒子の表面領域において遊離炭素と酸素が燃焼反応して表面の遊離炭素濃度が低下するのを防ぐことができ、最終的に得られる炭化珪素粉末の粒子表面から深さ10μmまでの領域における遊離炭素濃度が0.05質量%以上となるようにすることができる。
本発明の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、昇華初期におけるシリコンドロップレットなどの欠陥の発生を抑制できると共に、安定した成長速度で単結晶を成長させることができる。
本発明の実施例において、昇華再結晶法で炭化珪素の単結晶を製造する際に用いたるつぼの構造を示す概略断面図である。 同実施例において、成長した単結晶を取出し、スライスする状態を示す説明図である。 同実施例において、スライスした単結晶から試料片を切り出す状態を示す説明図である。
以下、本発明の実施形態を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。
まず、炭化珪素粉末の製造方法について説明する。ここでは、固相反応を利用した方法について説明するが、液相反応などを利用した方法であってもよい。
本発明の炭化珪素粉末の製造方法は、無機珪酸質原料と炭素質原料とを混合して炭化珪素製造用原料を得る原料作成工程と、前記炭化珪素製造用原料を2200℃以上で焼成することにより、炭化珪素からなる塊状物を形成する焼成工程と、前記焼成工程で得られた炭化珪素からなる塊状物を冷却する冷却工程と、冷却された前記塊状物を粉砕し、粉砕物を分級することにより所定粒度の炭化珪素粉末を得る粉末形成工程とを含んでいる。そして、前記冷却工程の際、前記塊状物が酸素と接触するのを遮断しつつ冷却することにより、最終的に得られる炭化珪素粉末の粒子表面から深さ10μmまでの領域における遊離炭素濃度が0.05質量%以上となるようにすることを特徴とする。
無機珪酸質原料としては、珪石などの結晶質シリカ、シリカフューム、シリカゲル等の非晶質シリカ、あるいは顆粒状等の金属シリコンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。無機珪酸質原料の平均粒径は、焼成時の環境、原料の状態(結晶質、非晶質)、炭素質原料との反応性などによって、適宜選ばれる。ただし、焼成時の反応性が良く、炉の制御が容易となるので、無機珪酸質原料としては、非晶質シリカを用いることが好ましい。
炭素質原料としては、例えば、天然黒鉛、人工黒鉛等の結晶質カーボンや、カーボンブラック、コークス、活性炭等の非晶質カーボンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。炭素質原料の平均粒径は、焼成時の環境、原料の状態(結晶質、非晶質)、及び炭素質材料との反応性などによって、適宜選ばれる。
無機珪酸質原料と炭素質原料とを混合して、炭化珪素粉末用の原料を調整する。この際の混合方法は任意であり、湿式混合、乾式混合の何れであってもよい。混合の際の炭素質原料と無機珪酸質原料の混合モル比(C/Si)は、焼成時の環境、炭化珪素粉末用原料の粒径、反応性などを考慮して、最適なものを選択する。ここでいう「最適」とは、焼成によって得られる炭化珪素の収量を向上させ、且つ、無機珪酸質原料及び炭素質原料の未反応の残存量を小さくさせることを意味する。
得られた混合粉末(炭化珪素製造用の原料)を2200℃以上、好ましくは2500℃以上で焼成して、塊状の炭化珪素を得る。
焼成方法は、特に限定されないが、外部加熱による方法、通電加熱による方法等が挙げられる。外部加熱の方法としては、例えば、流動層炉、バッチ式の炉などを用いる方法が挙げられる。通電加熱による方法としては、例えば、アチソン炉を用いる方法が挙げられる。
焼成雰囲気は、還元雰囲気であることが好ましい。還元性が弱い雰囲気下で焼成すると、炭化珪素の収率が低下するためである。この際、無機珪酸質原料の一つとして非晶質シリカを用いると、反応性が良いことから炉の制御が容易になるため、無機珪酸質原料には非晶質シリカを単独あるいは、一部に非晶質シリカ含む混合物を使うことが好適である。
なお、本明細書中、「アチソン炉」とは、上方が開口した箱型の間接抵抗加熱炉をいう。ここで、間接抵抗加熱とは、被加熱物に電流を直接流すのではなく、電流を流して発熱させた発熱体によって炭化珪素を得るものである。また、このようなアチソン炉の具体的構成の一例は、特開2013−112544号公報に記載されている。
このような炉を用いることにより、下記式(1)に示した反応が生じ、炭化珪素(SiC)からなる塊状物が得られる。
SiO+3C→SiC+2CO …(1)
アチソン炉の発熱体の種類は、電気を通すことができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、黒鉛粉、カーボンロッド等が挙げられる。
発熱体を構成する物質の形態は、特に限定されず、例えば、粉状、塊状等が挙げられる。発熱体は、アチソン炉の通電方向の両端に設けられた電極芯を結ぶように全体として棒状の形状になるように設けられる。ここでの棒状の形状とは、例えば、円柱状、角柱状等が挙げられる。
通電後、炉内に炭化珪素からなる塊状物が生成する。そして、炉内が常温になるまで冷却を行う。この際、冷却中の炭化珪素塊状物が酸素と接触するのを遮断することで、粒子の表面領域において遊離炭素と酸素が燃焼反応して表面の遊離炭素濃度が低下するのを防ぐことができる。
冷却中の炭化珪素塊状物が酸素と接触するのを遮断する方法としては、冷却中の炭化珪素塊状物にミスト状の水を噴霧する方法が好ましく採用される。この方法より、塊状物の周辺が蒸気でバリアされることにより塊状物表面が空気中の酸素による酸化を受けにくくなるようにすることができ、また蒸発潜熱により高温の塊状物の冷却が促進されることにより、塊状物表面が、燃焼反応が起こりやすい高温状態に保たれる時間を短くすることができる。
なお、冷却中の炭化珪素塊状物が酸素と接触するのを遮断する方法としては、炉内が常温になるまで、アルゴンガス等の不活性ガスを導入して空冷を行う方法や、顆粒状やペレット状の炭素粒や金属シリコン粒を、塊状物を覆うように供給する方法なども採用できる。
そして、得られた炭化珪素からなる塊状物(インゴット)を粉砕する。粉砕方法は、トップグラインダー、ディスクグラインダー、ジェットミル、ボールミル等を用いて粉砕する方法が挙げられる。
その後、所望の粒度範囲になるように、粉砕物を分級することが好ましい。分級は、篩を用いた方法が最も簡便であり、好ましい。ただし、分級は、篩を用いた方法に限定されず、乾式、湿式の何れでもよい。また、乾式の分級として、気流を用いた例えば遠心式の分級方法を用いることもできる。
分級によって、篩の目開き寸法による粒度範囲が、好ましくは106〜2360μm、より好ましくは250〜2000μm、最も好ましくは355〜1700μmとなるように調整する。細かい粒子だとカーボンの微粉のためにカーボンインクルージョンが起こりやすく、粗い粒子だと比表面積が小さいため昇華速度が遅くなり、シリコンドロップレットが発生しやすくなる傾向がある。
また、粉砕物を、塩酸などを用いて適宜酸洗浄することにより、粉砕によるコンタミネーションを除去してもよい。
こうして得られた本発明の炭化珪素粉末は、粒子表面の遊離炭素濃度が高いという特徴を有している。本発明において粒子表面の遊離炭素濃度とは、粒子全体における遊離炭素の割合ではなく、炭化珪素粒のうち表面に相当する部分に関して、その中の遊離炭素の割合のことである。粒子表面からどのくらいの深さまでを表面と考えるかについて、発明者らは、種々研究の結果、深さ10μm程度までの領域における遊離炭素濃度が、特に昇華初期におけるシリコンドロップレットの抑制に寄与していることを見出した。このため、本発明では、炭化珪素粉末の粒子表面から深さ10μmまでの領域を表面に相当する部分と考えて、その部分の遊離炭素濃度を求めることとした。この遊離炭素濃度をどのようにして求めたかについて、以下説明する。
まず、昇華再結晶法(改良レーリー法)で結晶質の炭化珪素粉末を製造する場合、基本的に遊離炭素は表面にしか形成されない。これは、この方法では、偶発的に発生した(たまたま蒸気濃度の高い場所で種結晶が生じた)小さな結晶の周りで気相反応が起きて徐々に結晶が成長し、遊離炭素のような異物は結晶から排斥されて中には取り込まれないためである。遊離炭素は、結晶成長のごく最後に、表面が炭化する、あるいは表面にごく小さな黒鉛が付着することによって生成する。
一方、粒子の中に遊離炭素が残る場合がある。それは、反応中に炭化珪素粒子同士がせめぎ合って成長し、最終的に一つの粒子となり、せめぎ合いに巻き込まれた炭素源が中に残るケースである。本発明の粒子もそういった炭素は一定の割合で存在すると推定される。
しかし、本発明では表面下10μmの炭素のみを測定したいので、試料は粉砕せず、JIS R 6124「遊離炭素の定量方法」によって、遊離炭素の含有率を測定することにした。この方法では、試料を粉砕する場合、せめぎ合いに巻き込まれて中に残った炭素も粉砕で露出して検出されるが、粉砕しない場合、中に残った炭素は検出されない。
ここで、「粒子全体に対する遊離炭素量」だと、遊離炭素は粒子表面にしかないので、粒径の大きいものの方が、相対的に値が小さくなる。しかし、粒径の大きいものでも、「表面部分に何%以上含まれている」という評価方法で見れば、表面の遊離炭素濃度の高いものは、粒径の小さいものと同じように欠陥抑制の効果を発揮する、という考えに基づいて、本発明においては、「粒子表面から深さ10μmまでの領域」を表面と仮定し、その部分における遊離炭素濃度を求めることとした。
そこで、まず、測定する炭化珪素粉末における表面部分の割合を求める。炭化珪素粉末に篩による分級を行い、粒度分布を求める。累積重量が50%となるような粒径を粉末の平均粒径とする。便宜上炭化珪素粉末は一律にここで求めた平均粒径を持つ球状粒子であると仮定する。この時の粒子半径をD(μm)とする。この時、炭化珪素粉末における表面部分の割合Rは、下記式(2)で求められる。
粉末における表面部分の割合Rを求めた上で、前記JIS R 6124「遊離炭素の定量方法」によって遊離炭素の含有率を測定する。ここで、試料は粒径に関わらず粉砕せずに測定し、助燃剤は使用しない。そうして求められる遊離炭素濃度は、粉末粒子の表面の遊離炭素濃度である。
求められた遊離炭素の含有率がX(%)であったとすると、本発明における粒子表面における遊離炭素濃度S(%)は、下記式(3)で求められる。
本発明の炭化珪素粉末は、上記のようにして求めた粒子表面から深さ10μmまでの領域における遊離炭素濃度が0.05質量%以上、好ましくは0.10〜3.0質量%、より好ましくは0.15〜2.0質量%とされている。なお、遊離炭素が多すぎると、C過剰となり、単結晶におけるカーボンインクルージョンの原因となる恐れがあり、結晶成長が困難となる可能性がある。
発明の炭化珪素単結晶の製造方法は、本発明の炭化珪素粉末を原料として、昇華再結晶法により炭化珪素の単結晶を成長させる方法である。昇華再結晶法により炭化珪素単結晶を製造する方法は、常法に従って行えばよく、特に限定されないが、概略は下記の通りである。
まず、原料である炭化珪素粉末を例えば黒鉛製のるつぼ内に充填し、このるつぼを加熱装置内に配設する。ただし、炭化珪素粉末が中に充填される容器は、黒鉛製のるつぼに限定されず、昇華再結晶法で単結晶炭化珪素を製造する際に使用されるものであればよい。
そして、るつぼをアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気とした減圧下で、るつぼ内の原料が2000〜2500℃となるように加熱する。ただし、るつぼの蓋の下面の炭化珪素単結晶が成長する部分は、これより100℃程度温度低くなるようにしておく。
この加熱を数時間から数十時間持続させる。これにより、原料である炭化珪素粉末が昇華して昇華ガスとなり、蓋の下面に到達して単結晶化し、この単結晶が成長することにより炭化珪素単結晶の塊状物を得ることができる。
本発明の炭化珪素粉末は、前述したように、粒子表面から深さ10μmまでの領域における遊離炭素濃度が0.05質量%以上であるため、昇華再結晶法により炭化珪素の単結晶を製造する際、昇華初期におけるSiの昇華を遅らせ、かつCの昇華を促進することができ、成長初期の単結晶におけるSiが過剰となることがなく、昇華初期におけるシリコンドロップレットなどの欠陥の発生を抑制できると共に、安定した成長速度で単結晶を成長させることができる。また、遊離炭素濃度が大きいのが表面のみであれば、原料として炭素質材料を混合してCリッチな条件で運転する場合と異なり、昇華後期においてカーボンインクルージョンなどの欠陥の要因となることも防ぐことができる。
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されない。
(実施例1)
非晶質珪酸質原料(非晶質シリカ)と炭素質原料(カーボンブラック)を、2軸ミキサーを用いて炭素と珪素のモル比(C/Si)が3.20となるように混合して、炭化珪素製造用原料を得た。
得られた炭化珪素製造用原料850kg、及び発熱体を、アチソン炉(アチソン炉の内寸:長さ2500mm、幅1000mm、高さ850mm)に収容した後、2200℃で13.5時間焼成を行った。
その後、空冷による冷却を行う一方、炉の高さに対して更に2.0m高い位置から、25℃の蒸留水200g/minをミスト状にして噴霧した。ここでミストは上方に向けて噴霧しており、ゆるやかな速度で炉に向かって降下する。結果として塊状の炭化珪素粉末を得た。
得られた塊状の炭化珪素を、トップグラインダー、ディスクミルを用いて粉砕し、炭化珪素粉末を得た。なお、得られた炭化珪素粉末は、結晶質の炭化珪素粉末であった。
得られた炭化珪素粉末を、目開き1700μm、500μmのふるいを用いて、500〜1700μmの範囲に分級した。この粉末について、前述した方法で表面の遊離炭素濃度の測定を行った。
図1に示すように、上記分級によって得られた炭化珪素粉末150.0gからなる原料5を、内寸φ120×200mmの黒鉛製のるつぼ1に充填した。このるつぼ1に、中心に厚さ5mmの台座2を備えた黒鉛製の板3に、直径50.8mm、厚み1.0mmの円盤状にカットした炭化珪素の単結晶(種結晶)4を接着したもので蓋をし、周囲をグラファイト製の断熱材で覆った。
この全体を炉の中に静置して、3Torr(400Pa)のアルゴン雰囲気下において、誘導加熱にて炉底温度が2350℃となるように加熱を行った。
ここで、昇温速度が10℃/minとなるように制御し、温度が2350℃になった時点の時間から10時間の加熱を行った。その後、炉を停止し、常温まで空冷してから、るつぼ1を取り出した。昇華により成長した単結晶4を台座2から取り外し、その重量変化(g)を加熱時間(=10h)で割った値から昇華速度を算出した。
また、図2に示すように、取り外した単結晶4について、直径50mmに外周を研削したのち、台座2に接着していた面から1.2mm、2.2mmの位置でそれぞれスライスを行い、単結晶を平板状に切り出した(すなわち、単結晶の元の厚みが1.0mmであるから、結晶成長の最初の0.2〜1.2mm分を切り出した)。
分析のため、切り出した単結晶から、図3のように5mm角の試料を15片切り出した。なお、図3中の数字は、長さ(mm)である。
この15片の試料のうち、各7片(約1.1g)をそれぞれランダムに選び、粉砕により100μmのふるいを全通する粉末にしたのち、JIS R 6124の方法(中和滴定法による表面珪酸の定量、燃焼容量法による遊離炭素の定量)で遊離珪酸、遊離炭素の定量を行った。遊離珪酸が検出された試料についてはシリコンドロップレットが発生している、遊離炭素が検出された試料についてはカーボンインクルージョンが発生していると判断した。
(実施例2)
実施例2については、実施例1と同様の方法で炭化珪素粉末を製造したが、冷却時の噴霧水量を100g/minとした。
(実施例3〜11)
実施例3〜6については実施例1と同じ方法で、実施例7〜8については実施例2と同じ方法で炭化珪素粉末を製造したが、分級に用いるふるいを変え、表1に記載する粒度範囲に限定した。実施例9〜11については実施例1と同じ方法で炭化珪素粉末を製造したが、原料の非晶質シリカ粉末の25%を、同Siモルの金属シリコン粉末(純度>99.999%、粒径150〜425μm)に置換した原料を用いた。
(比較例1〜10)
実施例1と同様の方法によって塊状の炭化珪素粉末を製造し、表1のように分級範囲を変えた。ただし、比較例1〜4では、冷却時に噴霧を行わなかった。また、比較例5〜6では、冷却時に水の噴霧を行う代わりに、空気を50L/minの流量で炉に向けて噴射した(これは水を100g/minで噴霧する際の空気消費量に相当する)。比較例7〜8では、実施例1と同様に水を噴霧したが、炭素と珪素のモル比(C/Si)を2.7とした原料を用いた。比較例9〜10では、実施例1と同様に水を噴霧したが、炭素と珪素のモル比(C/Si)を3.5とした原料を用いた。
いくつかの試料については、結晶成長後の単結晶をスライスした段階で単結晶表面にカーボンインクルージョンの黒点が見られた。
各実施例、比較例について、粒度範囲、表面の遊離炭素濃度、実験で得られた昇華試験の結果を表1に示す。
表1に示されるように、実施例1〜11ではいずれの例もカーボンインクルージョンの発生を示す遊離C濃度は定量下限値以下であり、またシリコンドロップレットの発生を示唆する遊離Si濃度も定量下限値以下であるか、比較例1〜10と比較して少なかった。
一方、比較例1〜10は、比較例9〜10を除いていずれも遊離Si濃度が高く、一方、比較例9〜10のようにCリッチな条件で製造された、表面だけでなく全体がCリッチな炭化珪素粉末では、遊離Siは抑制できるものの遊離Cが多くなることが分かった。
以上から、表面の遊離炭素濃度が大きい原料を用いることがカーボンインクルージョンやシリコンドロップレットの抑制に有効であることが読み取れる。

Claims (6)

  1. 昇華再結晶法により炭化珪素の単結晶を製造する際の原料として用いられる炭化珪素粉末において、粒子表面から深さ10μmまでの領域における遊離炭素濃度が0.10〜3.0質量%であることを特徴とする炭化珪素粉末。
  2. 篩の目開き寸法による粒度範囲が106〜2360μmである請求項1記載の炭化珪素粉末。
  3. 昇華再結晶法により炭化珪素の単結晶を製造する際の原料として用いられる炭化珪素粉末の製造方法において、
    無機珪酸質原料と炭素質原料とを混合して炭化珪素製造用原料を得る原料作成工程と、
    前記炭化珪素製造用原料を2,200℃以上で焼成することにより、炭化珪素からなる塊状物を形成する焼成工程と、
    前記焼成工程で得られた炭化珪素からなる塊状物を冷却する冷却工程と、
    冷却された前記塊状物を粉砕し、粉砕物を分級することにより所定粒度の炭化珪素粉末を得る粉末形成工程とを含み、
    前記冷却工程の際、前記塊状物が酸素と接触するのを遮断しつつ冷却することにより、最終的に得られる炭化珪素粉末の粒子表面から深さ10μmまでの領域における遊離炭素濃度が0.05質量%以上となるようにすることを特徴とする炭化珪素粉末の製造方法。
  4. 前記冷却工程を、前記塊状物に水を噴霧しつつ行う請求項記載の炭化珪素粉末の製造方法。
  5. 前記粉末形成工程において、篩の目開き寸法による粒度範囲が106〜2360μmとなるように、前記粉砕及び分級を行う請求項3又は4に記載の炭化珪素粉末の製造方法。
  6. 請求項1又は2に記載の炭化珪素粉末を原料として、昇華再結晶法により炭化珪素の単結晶を成長させることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
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