JP6770713B2 - 蓄電素子 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子に関する。
従来、集電体と、集電体上に形成された活物質層と、を有する電極、及び、電解質を備えたリチウムイオン二次電池が知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載の電池では、活物質層は、リチウムの可逆的な挿入及び脱離が可能な活物質と、バインダーと、を少なくとも含む。活物質層の内部には、いったん配合された気孔形成用ポリマーが電解質に溶出されることにより、気孔が形成されている。
特許文献1に記載の電池では、出力性能が必ずしも十分でないことから、出力性能が向上された電池などの蓄電素子が要望されている。
特開2008−130542号公報
本実施形態は、出力性能が向上された蓄電素子を提供することを課題とする。
本実施形態の蓄電素子は、正極と負極と電解液とを含み、正極及び負極は、活物質粒子を含有する活物質層をそれぞれ有し、正極及び負極の少なくともいずれか一方の活物質層の表面部に、活物質粒子の平均一次粒子径よりも大きい開口径の孔が形成されている。斯かる構成により、孔を介して活物質層の内部に電解液を供給できる。活物質層の内部にも電解液が十分に供給される分、活物質層にて出力時の反応が効率よく進む。従って、出力性能が向上されている。
上記の蓄電素子では、正極及び負極の間に配置されたシート状のセパレータをさらに含み、セパレータの空隙率は、一方の表面部において、他方の表面部よりも高く、正極又は負極のいずれか一方の活物質層における単位面積あたりの孔の数は、他方の活物質層における単位面積あたりの孔の数よりも少なく、且つ、セパレータは、該セパレータの空隙率の高い方の面が、単位面積あたりの孔の数が少ない活物質層と対向するように、配置されていてもよい。斯かる構成により、いずれか一方の活物質層へ電解液が偏って供給されることが抑制される。電解液の供給の偏りが抑制される分、出力時の反応が効率よく進む。従って、出力性能が向上される。
上記の蓄電素子は、孔が形成されている活物質層の表面に重なり且つ無機フィラーを含有する無機多孔層をさらに含み、無機多孔層の無機フィラーの一部は、無機多孔層に重なる活物質層の孔に入っていてもよい。斯かる構成により、孔の周壁での出力時の反応が不均一になることを抑制できる。
上記の蓄電素子では、活物質層は、カルボキシメチルセルロースを含有し、活物質層のカルボキシメチルセルロースの濃度は、孔の底部を形成する部分にて、該部分以外よりも、高くてもよい。
上記の蓄電素子では、活物質層は、カルボキシメチルセルロースを含有し、カルボキシメチルセルロースのエーテル化度は、0.6以下であってもよい。
上記の蓄電素子は、正極及び負極の間に配置されたシート状のセパレータをさらに含み、セパレータは、セパレータ基材と、該セパレータ基材の一方の面上に形成され且つ無機粒子を含む無機層と、を有し、セパレータの空隙率は、無機層において、セパレータ基材よりも高く、正極又は負極のいずれか一方の活物質層における単位面積あたりの孔の数は、他方の活物質層における単位面積あたりの孔の数よりも少なく、且つ、セパレータは、セパレータ基材が、単位面積あたりの孔の数がより多い活物質層と対向するように、配置されてもよい。
本実施形態によれば、出力性能が向上された蓄電素子を提供できる。
図1は、本実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。 図2は、図1のII−II線位置の断面図である。 図3は、図1のIII−III線位置の断面図である。 図4は、同実施形態に係る蓄電素子の電極体の構成を説明するための図である。 図5は、重ね合わされた正極、負極、及びセパレータの断面図(図4のV−V断面)である。 図6は、重ね合わされた正極、負極、及びセパレータの一例を模式的に表した断面図である。 図7は、重ね合わされた正極、負極、及びセパレータの他の例を模式的に表した断面図である。 図8は、蓄電素子の製造方法の工程を表したフローチャート図である。 図9は、同実施形態に係る蓄電素子を含む蓄電装置の斜視図である。 図10は、負極活物質層の表面部に形成された孔の電子顕微鏡写真である。
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、図1〜図6を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
本実施形態の蓄電素子1は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子1は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子1は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子1は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子1は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子1は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子1と組み合わされて蓄電装置100に用いられる。前記蓄電装置100では、該蓄電装置100に用いられる蓄電素子1が電気エネルギーを供給する。
蓄電素子1は、図1〜図6に示すように、正極11と負極12とを含む電極体2と、電極体2を収容するケース3と、ケース3の外側に配置される外部端子7であって電極体2と導通する外部端子7と、を備える。また、蓄電素子1は、電極体2、ケース3、及び外部端子7の他に、電極体2と外部端子7とを導通させる集電体5等を有する。
電極体2は、正極11と負極12とがセパレータ4によって互いに絶縁された状態で積層された積層体22が巻回されることによって形成される。
正極11は、金属箔111(正極基材)と、金属箔111の表面に重ねられ且つ活物質を含む活物質層112と、を有する。本実施形態では、活物質層112は、金属箔111の両面にそれぞれ重なる。なお、正極11の厚さは、通常、40μm以上150μm以下である。
金属箔111は帯状である。本実施形態の正極11の金属箔111は、例えば、アルミニウム箔である。正極11は、帯形状の短手方向である幅方向の一方の端縁部に、正極活物質層112の非被覆部(正極活物質層が形成されていない部位)115を有する。
正極活物質層112は、粒子状の活物質(活物質粒子)と、粒子状の導電助剤と、バインダとを含む。正極活物質層112(1層分)の厚さは、通常、12μm以上70μm以下である。正極活物質層112(1層分)の目付量は、6mg/cm以上17mg/cm 以下である。正極活物質層112の密度は、1.5g/cm 以上3.0g/cm 以下である。目付量及び密度は、金属箔111の一方の面を覆うように配置された1層分におけるものである。
正極11の活物質は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物である。正極11の活物質の平均粒子径D50は、通常、3μm以上8μm以下である。
正極11の活物質は、例えば、リチウム金属酸化物である。具体的に、正極の活物質は、例えば、LiMeO(Meは、1又は2以上の遷移金属を表す)によって表される複合酸化物(LiCo、LiNi、LiMn、LiNiCoMn等)、又は、LiMe(XO(Meは、1又は2以上の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、Vを表す)によって表されるポリアニオン化合物(LiFePO、LiMnPO、LiMnSiO、LiCoPOF等)である。
本実施形態では、正極11の活物質は、LiNiMnCoの化学組成で表されるリチウム金属複合酸化物(ただし、0<p≦1.3であり、q+r+s=1であり、0≦q≦1であり、0≦r≦1であり、0≦s≦1であり、1.7≦t≦2.3である)である。なお、0<q<1であり、0<r<1であり、0<s<1であってもよい。
上記のごときLiNiMnCoの化学組成で表されるリチウム金属複合酸化物は、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi1/6Co1/6Mn2/3、LiCoO などである。
正極活物質層112に用いられるバインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。本実施形態のバインダは、ポリフッ化ビニリデンである。
正極活物質層112の導電助剤は、炭素を98質量%以上含む炭素質材料である。炭素質材料は、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等である。本実施形態の正極活物質層112は、導電助剤としてアセチレンブラックを有する。
負極12は、金属箔121(負極基材)と、金属箔121の上に形成された負極活物質層122と、を有する。本実施形態では、負極活物質層122は、金属箔121の両面にそれぞれ重ねられる。金属箔121は帯状である。本実施形態の負極の金属箔121は、例えば、銅箔である。負極12は、帯形状の短手方向である幅方向の一方の端縁部に、負極活物質層122の非被覆部(負極活物質層が形成されていない部位)非被覆部125を有する。負極12の厚さは、通常、40μm以上150μm以下である。
負極活物質層122は、粒子状の活物質(活物質粒子)と、バインダと、を含む。負極活物質層122は、セパレータ4を介して正極11と向き合うように配置される。負極活物質層122の幅は、正極活物質層112の幅よりも大きい。
負極活物質層122の一方の表面部であって金属箔121に重ならない方の表面部に、活物質粒子の平均一次粒子径よりも大きい開口径の孔hが形成されている。斯かる孔hの開口径は、孔hが形成された表面部を電子顕微鏡で観察したときの、孔hの開口縁に内接する最大円(真円)の直径である。また、活物質粒子の平均一次粒子径は、孔hが形成された表面部を電子顕微鏡で観察したときに、孔h以外の領域にあるランダムに選んだ少なくとも50個の活物質の一次粒子径を測定した平均である。なお、一次粒子が真球状でない場合、最も長い径を粒子径として測定する。
負極活物質層122の表面部に形成された孔hの開口径は、通常、10μm以上1000μm以下である。斯かる開口径は、50μm以上500μm以下であってもよい。上記の孔hの開口径は、通常、活物質粒子の平均粒子径D50の5倍以上500倍以下である。
負極活物質層122の活物質粒子の平均一次粒子径は、通常、0.1μm以上10μm以下である。負極活物質層122の活物質粒子の平均一次粒子径は、1μm以上5μm以下であるとよい。平均一次粒子径は、上記のようにして測定される。
負極活物質層122の表面部に形成された単位面積あたりの孔hの数は、100cmあたり1個以上500個以下であってもよい。また、孔hの数は、100cmあたり5個以上200個以下であってもよい。孔hの数は、正方形の単位面積あたりの数である。単位面積あたりの孔hの数は、例えば、負極活物質層122を作製するための合剤組成物に配合するカルボキシメチルセルロース(以下、CMCともいう 後述)のエーテル化度を変化させることによって、調整することができる。具体的に、CMCのエーテル化度を小さくすることにより、単位面積あたりの孔hの数を多くすることができる。また、単位面積あたりの孔hの数を調整する方法としては、上記の合剤組成物を撹拌するときの撹拌力や撹拌時間を変化させる方法が挙げられる。具体的に、上記の撹拌力を小さくすること、上記の撹拌時間を短くすることによって、溶解しないCMCの割合を高め、単位面積あたりの孔hの数を多くすることができる。ところで、合剤組成物にCMCが溶解するほど、合剤組成物の粘度が高くなる。従って、合剤組成物の粘度を指標にして、CMCの溶解程度を把握することができる。なお、CMCが配合された合剤組成物によって、負極活物質層122の表面部に孔hが形成される理由については、後述する。
単位面積あたりの孔hの数は、正極活物質層112よりも、負極活物質層122において多い。正極活物質層112での上記の単位面積あたりの孔hの数は、通常、負極活物質層122での上記孔hの数の1/10未満である。本実施形態では、正極活物質層112の表面部に形成された孔hの数であって、活物質粒子の平均一次粒子径よりも大きい開口径の孔hの数は、ほぼ0である。
負極活物質層122の表面部に形成された孔hの深さは、通常、負極活物質層122の厚さの1/3以上2/3以下である。孔hの深さは、開口縁から孔hの最深部までの厚さ方向での長さである。
負極12の活物質は、負極12において充電反応及び放電反応の電極反応に寄与し得るものである。例えば、負極12の活物質は、グラファイト、非晶質炭素(難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素)などの炭素材料、又は、ケイ素(Si)及び錫(Sn)などリチウムイオンと合金化反応を生じる材料である。本実施形態の負極の活物質は、非晶質炭素である。より具体的には、負極の活物質は、難黒鉛化炭素である。
負極活物質層122(1層分)の厚さは、通常、10μm以上70μm以下である。負極活物質層122の目付量(1層分)は、通常、3mg/cm以上10mg/cm以下である。負極活物質層122の密度(1層分)は、通常、0.6g/cm以上1.2g/cm以下である。
負極活物質層に用いられるバインダは、正極活物質層に用いられるバインダと同様のものである。本実施形態のバインダは、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。
負極活物質層122では、バインダの割合は、活物質粒子とバインダとの合計質量に対して、1質量%以上10質量%以下であってもよい。
負極活物質層122は、カルボキシメチルセルロース(CMC)を含む。CMCは、セルロースのヒドロキシ基の一部がカルボキシメチル基に置換されたものである。カルボキシメチル基は、エーテル結合によってセルロースを構成する炭素と結合している。セルロースのヒドロキシ基がカルボキシメチル基に置換された数を表す指標は、例えば後述するエーテル化度である。カルボキシメチルセルロースは、塩の状態であってもよい。カルボキシメチルセルロースの分子量は、通常、20万以上140万以下である。
CMCのエーテル化度は、通常、0.4以上である。斯かるエーテル化度は、0.6以下であってもよい。CMCのエーテル化度は、CMCの水溶性の指標の1つである。CMCのエーテル化度が大きいほど、CMCは、水に溶解しやすくなる。一方、CMCのエーテル化度が小さいほど、CMCは、水に溶解しにくくなる。水を溶媒として含む負極活物質層122を形成するための合剤組成物は、水に溶解したCMCだけでなく、水に溶解せず塊状となったCMCの不溶物も含む。よって、合剤組成物では、CMCの一部が、溶解していない。従って、負極活物質層122は、大きさが10μm以上200μm以下の塊状のCMC(CMCの不溶物a)を含有する。
CMCのエーテル化度は、下記の測定方法によって求められる。CMC0.5〜0.7gを秤量し、ろ紙に包んでルツボ中で灰化させる。冷却後、灰化物を500mLビーカーに移し、水を約250mL加え、さらに0.05mol/L濃度の硫酸水溶液35mLを加え、30分間煮沸する。冷却後、フェノールフタレイン指示薬を加えて、過剰の酸を0.1mol/L水酸化カリウム水溶液で逆滴定し、次の式によってエーテル化度を算出する。
A={(af−bf)/秤量した量[g]}−アルカリ度(または+酸度)
エーテル化度=(162×A)/(10,000−80×A)
A:CMC1g中の結合アルカリに消費された0.05mol/L硫酸のmL
a:0.05mol/L硫酸の使用mL
f:0.05mol/L硫酸の力価
b:0.1mol/L水酸化カリウムの滴定mL
:0.1mol/L水酸化カリウムの力価
負極活物質層122のCMCの濃度は、孔hの底部を形成する部分にて、該部分以外よりも、高い。言い換えると、図6に示すように、負極活物質層122では、上述したCMCの不溶物aが孔hの底部を形成する部分に存在する。
負極活物質層122は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の負極活物質層122は、導電助剤を有していない。
蓄電素子1の電極体2は、図7に示すように、上記孔hが形成されている負極活物質層122の表面に重なり且つ無機フィラーを含有する無機多孔層8をさらに含んでもよい。無機多孔層8は、無機フィラーの間の空隙によって多孔質に形成されている。無機多孔層8の面積は、セパレータ4のセパレータ基材41や無機層42(後述)の面積よりも小さい。
無機多孔層8は、無機フィラーと、無機フィラー同士を結着させる結着剤とを含む。無機多孔層8は、単位面積あたりの孔hの数がより多い負極活物質層122の表面に重なっている。無機多孔層8の無機フィラーの一部は、無機多孔層8に重なる負極活物質層122の表面部の孔hに入っている。表面部に形成された複数の孔hの全てに無機フィラーが入っていてもよく、複数の孔hの一部に無機フィラーが入っていてもよい。また、孔hの容積の全部が無機フィラーで埋まっていてもよく、孔hの容積の一部が無機フィラーで埋まっていてもよい。
無機フィラーは、粒子状である。無機フィラーは、無機物を98質量%以上含有する。斯かる無機物としては、酸化鉄、SiO、Al、TiO、BaTiO、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物などの酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶物質;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶物質;タルク、モンモリロナイトなどの粘土粒子;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカなどの鉱物資源由来物質あるいはそれらの人造物;などが挙げられる。無機フィラーの粒子径は、通常、0.5μm以上10μm以下である。
本実施形態の電極体2では、以上のように構成される正極11と負極12とがセパレータ4によって絶縁された状態で巻回される。即ち、本実施形態の電極体2では、正極11、負極12、及びセパレータ4の積層体22が巻回される。セパレータ4は、絶縁性を有する部材である。セパレータ4は、正極11と負極12との間に配置される。これにより、電極体2(詳しくは、積層体22)において、正極11と負極12とが互いに絶縁される。また、セパレータ4は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、リチウムイオンが、セパレータ4を挟んで交互に積層される正極11と負極12との間を移動する。
セパレータ4は、帯状である。セパレータ4は、多孔質なセパレータ基材41を有する。セパレータ4は、正極11及び負極12間の短絡を防ぐために正極11及び負極12の間に配置されている。セパレータ4は、セパレータ基材41と、無機粒子を含む無機層42とを有してもよい。無機層42の空隙率は、セパレータ基材41の空隙率よりも高い。上述した無機多孔層8が形成されない場合、セパレータ基材41が負極活物質層122に接触し、セパレータ基材41の一部が、負極活物質層122の上記の孔hに入り込んでいてもよい。
セパレータ基材41は、多孔質である。セパレータ基材41は、例えば、織物、不織布、又は多孔膜などである。セパレータ基材の材質としては、高分子化合物、ガラス、セラミックなどが挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン(PO)、又は、セルロースが挙げられる。
無機層42は、セパレータ基材41の一方の面に重ねられる。無機層42の面積は、負極活物質層122や上述した無機多孔層8の面積よりも大きい。無機層42は、通常、無機粒子を10質量%以上99質量%以下含む、無機粒子としては、酸化鉄、SiO、Al、TiO、BaTiO、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物などの酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土粒子;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカなどの鉱物資源由来物質あるいはそれらの人造物の粒子;などが挙げられる。無機粒子の粒子径は、通常、0.5μm以上10μm以下である。
無機層42は、結着剤、及び増粘剤をさらに含む。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素含有樹脂;スチレンブタジエンゴム(SBR);アクリル樹脂(分子中にエステル結合を有する);ポリオレフィン樹脂;ポリビニルアルコール;ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの窒素含有樹脂;セルロースとアクリルアミドの架橋重合体とセルロースとキトサンピロリドンカルボン酸塩の架橋重合体;及び、多糖類高分子ポリマーであるキトサン、キチン等を架橋剤で架橋したもの等が挙げられる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
セパレータ4は、例えば、セパレータ基材41が負極活物質層122と接触し、無機層42が正極活物質層112と接触するように、正極11及び負極12の間に配置される。即ち、セパレータ基材41は、例えば、孔hが形成される負極活物質層122と接触するように、正極11及び負極12の間に配置される。このような構成により、負極活物質層122の内部に孔hを介して電解液を供給できると共に、無機層42に含まれた電解液が正極活物質層112に供給されやすくなり、電解液に含まれるイオン等が正極活物質及び負極活物質の双方に供給されやすくなる。
セパレータ4の空隙率は、一方の表面部において、他方の表面部よりも高い。セパレータ4は、該セパレータ4の空隙率の高い方の面が、単位面積あたりの孔hの数が少ない正極活物質層112と対向するように、配置されている。具体的に、空隙率がより高い無機層42が、孔hの数がより少ない正極活物質層112と対向する。なお、セパレータ4が例えば2つの層で構成される場合、各層の空隙率を比較することによって、表面部の空隙率の高低を決める。セパレータ4の全部が同じ材質で構成される場合(例えば、セパレータ4がセパレータ基材41のみで構成される場合)、セパレータ4を厚さ方向に半分に分け、一方の空隙率と他方の空隙率とを比較することによって、表面部の空隙率の高低を決める。セパレータ4が二層以上で構成されている場合(例えば、セパレータ4がセパレータ基材41と無機層42とで構成される場合)、一方の表面部側の層の空隙率と他方の表面部側の層の空隙率とを比較することによって、表面部の空隙率の高低を決める。セパレータ4が三層以上で構成されている場合、一方の表面部側及び他方の表面部側のいずれにも位置しない層、つまり、中間に配置される層の空隙率は考慮しない。より高い一方の空隙率は、通常、40%以上80%以下であり、より低い他方の空隙率は、通常、30%以上70%以下である。
セパレータ4の空隙率は、水銀圧入法によって測定される。水銀圧入法は、水銀圧入ポロシメーターを用いて実施できる。具体的に、水銀圧入法は、例えばWIN9400(Micometrics社製)を装置として用い、日本工業規格(JIS R1655:2003)に準じて実施する。セパレータ4の空隙率は、水銀圧入法によって測定された水銀圧入量A(cm)と、セパレータ4の測定部分のみかけ体積V(cm)とから、p=(A/V)×100により算出される。ここで、みかけ体積V(cm)とは、セパレータ4を平面視したときの面積(cm)にセパレータの厚さ(cm)を乗じたものである。なお、セパレータの空隙率は、解体された電池から得られたセパレータ4を用いて測定される。まず、電池を放電した後、該電池を乾燥雰囲気下で解体する。次に、セパレータを取り出してジメチルカーボネートで洗浄した後、2時間以上真空乾燥する。その後、セパレータ4の全部が同じ材質で構成される場合、セパレータ4を厚さ方向に半分に切断し、セパレータ4の一方と他方とに対して、それぞれ水銀圧入ポロシメーターを用いて、空隙率を測定する。測定された一方の空隙率と他方の空隙率とを比較することによって、表面部の空隙率の高低を決める。セパレータ4が二層で構成されている場合、真空乾燥後のセパレータ4全体の水銀圧入量A0を測定した後、一方の表面部側の層を剥離した後の水銀圧入量A1を測定する。測定されたA1の値から、他方の表面部側の層の空隙率を算出し、A0とA1との差分から一方の表面部側の層の空隙率を算出する。セパレータ4が三層以上で構成されている場合、真空乾燥後のセパレータ4全体の水銀圧入量A0を測定した後、一方の表面部側の層を剥離した後の水銀圧入量A1を測定する。A0とA1との差分から一方の表面部側の層の空隙率を算出する。その後、他方の表面部側の層を剥離した後の水銀圧入量A2を測定する。A1とA2との差分から他方の表面部側の層の空隙率を算出する。
上記のごとき空隙率の異なるセパレータ4は、例えば、セパレータ基材41の一方の表面に無機層42を形成することによって作製できる。また、上記のごとき空隙率の異なるセパレータ4は、例えば、空隙率の異なるセパレータ基材用の2つのシートを貼り合わせることによって作製できる。
セパレータ4の幅(帯形状の短手方向の寸法)は、負極活物質層122の幅より僅かに大きい。セパレータ4は、正極活物質層112及び負極活物質層122が重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極11と負極12との間に配置される。このとき、図4に示すように、正極11の非被覆部115と負極12の非被覆部125とは重なっていない。即ち、正極11の非被覆部115が、正極11と負極12との重なる領域から幅方向に突出し、且つ、負極12の非被覆部125が、正極11と負極12との重なる領域から幅方向(正極11の非被覆部115の突出方向と反対の方向)に突出する。積層された状態の正極11、負極12、及びセパレータ4、即ち、積層体22が巻回されることによって、電極体2が形成される。正極11の非被覆部115又は負極12の非被覆部125のみが積層された部位によって、電極体2における非被覆積層部26が構成される。
非被覆積層部26は、電極体2における集電体5と導通される部位である。非被覆積層部26は、巻回された正極11、負極12、及びセパレータ4の巻回中心方向視において、中空部27(図4参照)を挟んで二つの部位(二分された非被覆積層部)261に区分けされる。
以上のように構成される非被覆積層部26は、電極体2の各極に設けられる。即ち、正極11の非被覆部115のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における正極11の非被覆積層部を構成し、負極12の非被覆部125のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における負極12の非被覆積層部を構成する。
ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。ケース3は、電極体2及び集電体5等と共に、電解液を内部空間に収容する。ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。ケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。ケース3は、ステンレス鋼及びニッケル等の金属材料、又は、アルミニウムにナイロン等の樹脂を接着した複合材料等によって形成されてもよい。
電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO、LiBF、及びLiPF等である。本実施形態の電解液は、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを所定の割合で混合した混合溶媒に、0.5〜1.5mol/LのLiPFを溶解させたものである。
ケース3は、ケース本体31の開口周縁部と、長方形状の蓋板32の周縁部とを重ね合わせた状態で接合することによって形成される。また、ケース3は、ケース本体31と蓋板32とによって画定される内部空間を有する。本実施形態では、ケース本体31の開口周縁部と蓋板32の周縁部とは、溶接によって接合される。
以下では、図1に示すように、蓋板32の長辺方向をX軸方向とし、蓋板32の短辺方向をY軸方向とし、蓋板32の法線方向をZ軸方向とする。ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。
蓋板32は、ケース3内のガスを外部に排出可能なガス排出弁321を有する。ガス排出弁321は、ケース3の内部圧力が所定の圧力まで上昇したときに、該ケース3内から外部にガスを排出する。ガス排出弁321は、X軸方向における蓋板32の中央部に設けられる。
ケース3には、電解液を注入するための注液孔が設けられる。注液孔は、ケース3の内部と外部とを連通する。注液孔は、蓋板32に設けられる。注液孔は、注液栓326によって密閉される(塞がれる)。注液栓326は、溶接によってケース3(本実施形態の例では蓋板32)に固定される。
外部端子7は、他の蓄電素子1の外部端子7又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子7は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子7は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。
外部端子7は、バスバ等が溶接可能な面71を有する。面71は、平面である。外部端子7は、蓋板32に沿って拡がる板状である。詳しくは、外部端子7は、Z軸方向視において矩形状の板状である。
集電体5は、ケース3内に配置され、電極体2と通電可能に直接又は間接に接続される。本実施形態の集電体5は、クリップ部材50を介して電極体2と通電可能に接続される。即ち、蓄電素子1は、電極体2と集電体5とを通電可能に接続するクリップ部材50を備える。
集電体5は、導電性を有する部材によって形成される。図2に示すように、集電体5は、ケース3の内面に沿って配置される。集電体5は、蓄電素子1の正極11と負極12とにそれぞれ配置される。本実施形態の蓄電素子1では、集電体5は、ケース3内において、電極体2の正極11の非被覆積層部26と、負極12の非被覆積層部26とにそれぞれ配置される。
正極11の集電体5と負極12の集電体5とは、異なる材料によって形成される。具体的に、正極11の集電体5は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成され、負極12の集電体5は、例えば、銅又は銅合金によって形成される。
本実施形態の蓄電素子1では、電極体2とケース3とを絶縁する袋状の絶縁カバー6に収容された状態の電極体2(詳しくは、電極体2及び集電体5)がケース3内に収容される。
次に、上記実施形態の蓄電素子の製造方法について、図8を参照しつつ説明する。
上記の製造方法では、活物質粒子を含有する活物質層をそれぞれ有する正極及び負極を作製する(ステップ1[S1])。作製した正極と、作製した負極と、電解液とを用いて蓄電素子を組み立てる(ステップ2[S2])。
ステップ1では、正極及び負極の少なくともいずれか一方の活物質層を作製するために、活物質粒子と溶媒とカルボキシメチルセルロースとを含む合剤組成物を調製する。合剤組成物を電極基材(金属箔)に塗布し、塗布された合剤組成物から溶媒を揮発させることによって、正極及び負極の少なくともいずれか一方の活物質層の表面部に、活物質粒子の平均一次粒子径よりも大きい開口径の孔hを形成する。
例えば、ステップ1では、活物質粒子とバインダと溶媒としての有機溶媒とを混合したカルボキシメチルセルロース(CMC)を含まない正極用の合剤組成物を調製する。一方で、活物質粒子とバインダと溶媒としての水とCMCとを混合して負極用の合剤組成物を調製する。負極用の合剤組成物を混合するときの撹拌力の強さ、撹拌時間の長さなどによって、水へのCMCの溶解割合を調整できる。撹拌を強くするほど、また、撹拌時間を長くするほど、また、撹拌時の温度を高くするほど、CMCを溶媒により多く溶解させることができる。調製した合剤組成物は、溶解したCMCだけでなく、未溶解せずに残った塊状の状態のCMCを含む。なお、CMCが水に溶解するほど、合剤組成物の粘度が高くなることから、合剤組成物の粘度を指標にして、CMCの溶解割合を調整できる。
具体的に、ステップ1では、正極用の金属箔111の両方の面に、正極用の合剤組成物をそれぞれ塗布することによって正極活物質層112を形成する。正極活物質層112を形成するための塗布方法としては、一般的な方法が採用される。
一方、ステップ1では、負極用の金属箔121の両方の面に、負極用の合剤組成物をそれぞれ塗布することによって負極活物質層122を形成する。負極活物質層122を形成するための塗布方法としては、一般的な方法が採用される。塗布後の合剤組成物を加熱すること等によって、合剤組成物から溶媒(水)を揮発させる。溶媒(水)が揮発するときに、上述した未溶解の塊状のカルボキシメチルセルロースは、収縮する。この収縮により、塊状のカルボキシメチルセルロースよりも表面側の部分が、金属箔121の方へ引き込まれる(陥没する)。これにより、表面部に孔hを形成させる。
ステップ1では、正極活物質層112と対向する負極活物質層122の表面に、無機フィラーと結着剤と溶媒とを含む組成物を塗布することによって無機多孔層8を形成してもよい。無機多孔層8を形成するための塗布方法としては、一般的な塗工方法が採用される。
ステップ2では、正極11と負極12との間にセパレータ4を挟み込んだ積層体22を巻回することにより、電極体2を形成する。電極体2の形成では、正極活物質層112と負極活物質層122とがセパレータ4を介して互いに向き合うように、正極11とセパレータ4と負極12とを重ね合わせ、積層体22を作る。このとき、セパレータ4の空隙率の低い方の面と、孔hの数がより多い負極活物質層122の表面と、が接するように、正極11とセパレータ4と負極12とを重ね合わせる。次に、積層体22を巻回して、電極体2を形成する。なお、セパレータ4として、空隙率がより低いセパレータ基材41の片面上に、空隙率がより高い無機層42が形成されたものを用いてもよい。
ステップ2では、ケース3のケース本体31に電極体2を入れ、ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぎ、電解液をケース3内に注入する。ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぐときには、ケース本体31の内部に電極体2を入れ、正極11と一方の外部端子7とを導通させ、且つ、負極12と他方の外部端子7とを導通させた状態で、ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぐ。電解液をケース3内へ注入するときには、ケース3の蓋板32の注入孔から電解液をケース3内に注入する。
本実施形態の蓄電素子1は、ケース3の外方から0.01MPa以上10MPa以下の面加重が加えられて使用されてもよい。
上記のように構成された本実施形態の蓄電素子1では、負極活物質層122の表面部に、活物質粒子の平均一次粒子径よりも大きい開口径の孔hが形成されている。斯かる構成により、孔hを介して負極活物質層122の内部に電解液を供給できる。負極活物質層122の内部にも電解液が十分に供給される分、負極活物質層122にて出力時の反応が効率よく進む。従って、出力性能が向上されている。
上記の蓄電素子1は、正極11及び負極12の間に配置されたシート状のセパレータ4をさらに含み、セパレータ4の空隙率は、一方の表面部において、他方の表面部よりも高く、正極活物質層112における単位面積あたりの孔hの数は、負極活物質層122における単位面積あたりの孔hの数よりも少なく、且つ、セパレータ4は、該セパレータ4の空隙率の高い方の面が、単位面積あたりの孔hの数が少ない正極活物質層112と対向するように、配置されている。斯かる構成により、孔hの数が多い負極活物質層122へ電解液が偏って供給されることが抑制される。電解液の供給の偏りが抑制される分、出力時の反応が効率よく進む。従って、出力性能が向上される。
上記の蓄電素子1は、孔hが形成されている負極活物質層122の表面に重なり且つ無機フィラーを含有する無機多孔層8をさらに含み、無機多孔層8の無機フィラーの一部は、無機多孔層8に重なる負極活物質層122の孔hに入っている。斯かる構成により、孔hの周壁で電解液を介した出力時の反応が不均一になることを抑制できる。従って、金属リチウムが析出することを抑制できる。
上記の蓄電素子1では、負極活物質層122は、カルボキシメチルセルロースを含有し、負極活物質層122のカルボキシメチルセルロースの濃度は、孔hの底部を形成する部分にて、該部分以外よりも、高くてもよい。言い換えると、図6に示すように、負極活物質層122では、上述したCMCの不溶物aが孔hの底部を形成する部分に存在する。
上記の蓄電素子1の製造方法において、負極活物質層122を作製するための合剤組成物にカルボキシメチルセルロースを配合し、合剤組成物を撹拌することによって合剤組成物を調製する。調製した合剤組成物は、溶解したカルボキシメチルセルロースだけでなく、未溶解せずに残った塊状の状態のカルボキシメチルセルロースを含む。合剤組成物を金属箔121に塗布し、塗布後の合剤組成物を加熱すること等によって、合剤組成物から溶媒(水)を揮発させる。溶媒(水)が揮発するときに、上述した未溶解の塊状のカルボキシメチルセルロース(CMCの不溶物a)は、収縮する。この収縮により、負極活物質層122において、塊状のカルボキシメチルセルロースよりも表面側の部分が、金属箔121の方へ引き込まれる。これにより、負極活物質層122の表面部に孔hを形成させることができる。従って、物理的に孔hをあけなくても、負極活物質層122の表面部に孔hを形成させることができる。
上記の蓄電素子1では、負極活物質層122に含有されるカルボキシメチルセルロースのエーテル化度は、0.6以下であってもよい。
上述したように、上記の蓄電素子1の製造方法において、負極活物質層122を作製するための合剤組成物にカルボキシメチルセルロースを配合することによって、物理的に孔hをあけなくても、負極活物質層122の表面部に孔hを形成させることができる。エーテル化度が0.6以下であることにより、上記の合剤組成物において、未溶解の塊状のカルボキシメチルセルロースの割合が増える。従って、より確実に孔hを形成させることができる。
上記の蓄電素子1では、セパレータ4の空隙率は、無機層42において、セパレータ基材41よりも高い。負極活物質層122における単位面積あたりの孔の数は、正極活物質層112における単位面積あたりの孔の数よりも少ない。しかも、セパレータ4は、セパレータ基材41が、単位面積あたりの孔の数がより多い負極活物質層122と対向するように、配置されている。斯かる構成により、孔hの数が多い負極活物質層122へ電解液が偏って供給されることが抑制される。電解液の供給の偏りが抑制される分、出力時の反応が効率よく進む。従って、出力性能が向上される。
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
上記の実施形態では、図6に示すように、セパレータ4が、セパレータ基材41と、該セパレータ基材41の一方の面に重なる無機多孔層8と、を有する蓄電素子について詳しく説明したが、本発明では、図7に示すように、セパレータ4が、一方の表面部と他方の表面部とで空隙率が異なるように形成されたセパレータ基材41のみを有してもよい。本発明では、図7に示すように、電極体2は、負極活物質層122に接触した無機多孔層8を備えてもよい。
上記の実施形態では、正極活物質層112よりも多くの孔hが表面部に形成された負極活物質層122について詳しく説明したが、本発明では、負極活物質層122におけるよりも正極活物質層112において、より多くの孔hが形成されていてもよい。
上記の実施形態では、CMCを含む負極活物質層を有する負極について詳しく説明したが、本発明では、正極が、CMCを含む正極活物質層を有してもよい。
上記の実施形態では、活物質を含む活物質層が金属箔に直接接した正極について詳しく説明したが、本発明では、正極が、バインダと導電助剤とを含む導電層であって活物質層と金属箔との間に配置された導電層を有してもよい。
上記実施形態では、活物質層が各電極の金属箔の両面側にそれぞれ配置された電極について説明したが、本発明の蓄電素子では、正極11又は負極12は、活物質層を金属箔の片面側にのみ備えてもよい。
上記実施形態では、積層体22が巻回されてなる電極体2を備えた蓄電素子1について詳しく説明したが、本発明の蓄電素子は、巻回されない積層体22を備えてもよい。詳しくは、それぞれ矩形状に形成された正極、セパレータ、負極、及びセパレータが、この順序で複数回積み重ねられてなる電極体を蓄電素子が備えてもよい。
上記実施形態では、蓄電素子1が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子1の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態では、蓄電素子1の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
蓄電素子1(例えば電池)は、図9に示すような蓄電装置100(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)に用いられてもよい。蓄電装置100は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材91と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子に適用されていればよい。
以下に示すようにして、非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)を製造した。
(試験例1)
(1)正極の作製
有機溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、導電助剤(アセチレンブラック)と、バインダ(PVdF)と、活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)の一次粒子が互いに凝結した凝結粒子とを、混合し、混練することで、正極用の合剤組成物を調製した。導電助剤、バインダ、活物質の配合量は、それぞれ4.5質量%、4.5質量%、91質量%とした。調製した正極用の合剤組成物を、アルミニウム箔(厚さ15μm)の両面に、乾燥後の塗布量(目付量)が8.61mg/cmとなるようにそれぞれ塗布した。乾燥後、ロールプレスを行った。その後、真空乾燥して、水分等を除去した。活物質層(1層分)の厚さは、32μmであった。活物質層の密度は、2.69g/cmであった。
(2)負極の作製
活物質としては、粒子状の非晶質炭素(難黒鉛化炭素)を用いた。バインダとしては、スチレンブタジエンゴムを用いた。カルボキシメチルセルロース(CMC)としては、エーテル化度が0.6のカルボキシメチルセルロースNa塩(ニチリン化学社製 製品名「DN400H」)を用いた。負極用の合剤組成物は、溶剤として水と、バインダと、CMCと、活物質とを混合、混練することで調製した。CMCは、1.0質量%となるように配合し、バインダは、2.0質量%となるように配合し、活物質は、97.0質量%となるように配合した。調製した負極用の合剤組成物を、乾燥後の塗布量(目付量)が3.8mg/cmとなるように、銅箔(厚さ10μm)の両面にそれぞれ塗布した。乾燥後、真空乾燥して、水分等を除去した。活物質層(1層分)の厚さは、39μmであった。活物質層の密度は、0.974g/cmであった。なお、活物質層の密度は、負極を所定の大きさに切りだし、質量と厚さとを測定した後、活物質層を金属箔から剥離し、金属箔の質量及び厚さを測定し、負極の質量及び厚さから金属箔の質量及び厚さをそれぞれ差し引くことによって測定した。
作製した負極をエネルギー分散型X線分析(EDX)によって分析したところ、負極活物質層の表面部に形成された孔の底部を形成する部分には、塊状のCMCが存在した。また、単位面積あたりの孔の数は、100個/100cmであった。活物質の平均一次粒子径は、4.0μmであった。
(3)セパレータ
セパレータとして厚さが22μmのポリエチレン製微多孔膜の片面上に4μmの厚さの無機層を形成したものを用いた。無機層は、95質量%のアルミナ粒子と、5質量%のポリフッ化ビニリデンと、を含むように形成した。セパレータの透気抵抗度は、100秒/100ccであった。
セパレータの空隙率は、装置としてWIN9400(Micometrics社製)を用いて、水銀圧入法によって測定した。一方(無機層が形成された側)の表面部の空隙率は、55%であり、他方の表面部の空隙率は、45%であった。
(4)電解液の調製
電解液としては、以下の方法で調製したものを用いた。非水溶媒として、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートを、いずれも1容量部ずつ混合した溶媒を用い、この非水溶媒に、塩濃度が1mol/LとなるようにLiPFを溶解させ、電解液を調製した。
(5)ケース内への電極体の配置
上記の正極、上記の負極、上記の電解液、セパレータ、及びケースを用いて、一般的な方法によって電池を製造した。
まず、セパレータが上記の正極および負極の間に配されて積層されてなるシート状物を巻回した。このとき、セパレータ基材に相当するポリエチレン製微多孔膜が負極活物質層に接触し、無機層が正極活物質層に接触するように巻回した。次に、巻回されてなる電極体を、ケースとしてのアルミニウム製の角形電槽缶のケース本体内に配置した。続いて、正極及び負極を2つの外部端子それぞれに電気的に接続させた。さらに、ケース本体に蓋板を取り付けた。上記の電解液を、ケースの蓋板に形成された注液口からケース内に注入した。最後に、ケースの注液口を封止することにより、ケースを密閉した。
(試験例2)
カルボキシメチルセルロースのエーテル化度を0.8としたこと以外は、試験例1と同様にして電池を製造した。この電池では、負極活物質層の表面部に孔が観察されなかった。
<アシスト出力性能の評価>
25℃、4Aにて、上限4.1V、下限2.4Vで各試験例の電池を放電させることにより、電流容量1C(A)を定めた。つぎに、放電状態から25℃、0.5C(A)にて、各電池を1.1時間充電することにより、SOC55%とした各電池を調製した。調製した各電池を、25℃、20Cで連続的に放電させ、放電開始から10秒後の電圧値及び電流値を測定した。10秒後の電圧値及び電流値を乗ずることにより、各電池の出力値を算出した。
上記試験例1で製造した電池の負極活物質層を電子顕微鏡で観察したときの観察像を図10に示す。
試験例1で製造した電池の出力値は、試験例2で製造した電池の出力値と比較して、107%の値を示した。つまり、負極活物質層の表面部に孔を形成させた電池の出力性能は、負極活物質層の表面部に孔を形成させなかった電池の出力性能よりも、向上されていた。
1:蓄電素子(非水電解質二次電池)、
2:電極体、
26:非被覆積層部、
3:ケース、 31:ケース本体、 32:蓋板、
4:セパレータ、 41:セパレータ基材、 42:無機層、
5:集電体、 50:クリップ部材、
6:絶縁カバー、
7:外部端子、 71:面、
8:無機多孔層、
11:正極、
111:正極の金属箔(正極基材)、 112:正極活物質層、
12:負極、
121:負極の金属箔(負極基材)、 122:負極活物質層、
91:バスバ部材、
100:蓄電装置。

Claims (5)

  1. 正極と負極と電解液とを含み、
    前記正極及び前記負極は、活物質粒子を含有する活物質層をそれぞれ有し、
    前記正極及び前記負極の少なくともいずれか一方の活物質層の表面部に、活物質粒子の平均一次粒子径よりも大きい開口径の孔が形成され
    前記正極及び前記負極の間に配置されたシート状のセパレータをさらに含み、
    前記セパレータの空隙率は、一方の表面部において、他方の表面部よりも高く、
    前記正極又は前記負極のいずれか一方の活物質層における単位面積あたりの前記孔の数は、他方の活物質層における単位面積あたりの前記孔の数よりも少なく、且つ、
    前記セパレータは、該セパレータの空隙率の高い方の面が、単位面積あたりの前記孔の数が少ない活物質層と対向するように、配置されている、蓄電素子。
  2. 正極と負極と電解液とを含み、
    前記正極及び前記負極は、活物質粒子を含有する活物質層をそれぞれ有し、
    前記正極及び前記負極の少なくともいずれか一方の活物質層の表面部に、活物質粒子の平均一次粒子径よりも大きい開口径の孔が形成され
    前記孔が形成されている活物質層の表面に重なり且つ無機フィラーを含有する無機多孔層をさらに含み、
    前記無機多孔層の無機フィラーの一部は、前記無機多孔層に重なる前記活物質層の前記孔に入っている、蓄電素子。
  3. 正極と負極と電解液とを含み、
    前記正極及び前記負極は、活物質粒子を含有する活物質層をそれぞれ有し、
    前記正極及び前記負極の少なくともいずれか一方の活物質層の表面部に、活物質粒子の平均一次粒子径よりも大きい開口径の孔が形成され
    前記正極及び前記負極の間に配置されたシート状のセパレータをさらに含み、
    前記セパレータは、セパレータ基材と、該セパレータ基材の一方の面上に形成され且つ無機粒子を含む無機層と、を有し、
    前記セパレータの空隙率は、前記無機層において、前記セパレータ基材よりも高く、
    前記正極又は前記負極のいずれか一方の活物質層における単位面積あたりの前記孔の数は、他方の活物質層における単位面積あたりの前記孔の数よりも少なく、且つ、
    前記セパレータは、前記セパレータ基材が、単位面積あたりの前記孔の数がより多い前記活物質層と対向するように、配置されている、蓄電素子。
  4. 前記活物質層は、カルボキシメチルセルロースを含有し、
    前記活物質層のカルボキシメチルセルロースの濃度は、前記孔の底部を形成する部分にて、該部分以外よりも、高い、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電素子。
  5. 前記活物質層は、カルボキシメチルセルロースを含有し、
    前記カルボキシメチルセルロースのエーテル化度は、0.6以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電素子。
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