以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<車両の構成>
まず、本開示の一実施の形態に係る運転支援装置を含む車両の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る運転支援装置を含む車両の構成の一例を示すブロック図である。なお、ここでは、運転支援装置に関連する部分に着目して、図示および説明を行う。
図1に示す車両1は、例えば、直列6気筒のディーゼルエンジンを搭載した、トラック等の大型車両である。図1に示すように、車両1は、車両1を走行させる駆動系統10、車両1を減速させる制動系統20、および運転者による車両1の運転を支援する運転支援装置30等を有する。
駆動系統10は、エンジン11、クラッチ12、変速機(トランスミッション)13、推進軸(プロペラシャフト)14、差動装置(デファレンシャルギヤ)15、駆動軸(ドライブシャフト)16、車輪17、エンジン用ECU18、および動力伝達用ECU19を有する。
エンジン用ECU18および動力伝達用ECU19は、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークによって運転支援装置30に接続され、必要なデータや制御信号を相互に送受信可能となっている。エンジン用ECU18は、運転支援装置30からの駆動指令に従って、エンジン11の出力を制御する。動力伝達用ECU19は、運転支援装置30からの駆動指令に従って、クラッチ12の断接および変速機13の変速を制御する。
エンジン11の動力は、クラッチ12を経由して変速機13に伝達される。変速機13に伝達された動力は、さらに、推進軸14、差動装置15、および駆動軸16を介して車輪17に伝達される。これにより、エンジン11の動力が車輪17に伝達されて車両1が走行する。
制動系統20は、常用ブレーキ21、補助ブレーキ22、23、駐車ブレーキ(図示略)、およびブレーキ用ECU24を有する。
常用ブレーキ21は、摩擦ブレーキであり、一般に、主ブレーキ、フットブレーキ、あるいはファウンデーションブレーキ等と呼ばれる。常用ブレーキ21は、例えば、車輪17と一緒に回転するドラムの内側にブレーキライニング(ブレーキパッド)を押し付けることにより制動力を得るドラムブレーキである。
補助ブレーキ22は、推進軸14の回転に直接負荷を与えることで制動力を得るリターダであり(以下「リターダ22」と称する)、例えば、電磁式リターダである。補助ブレーキ23は、エンジンの回転抵抗を利用してエンジンブレーキの効果を高める排気ブレーキである(以下「排気ブレーキ23」と称する)。リターダ22および排気ブレーキ23を設けることにより、制動力を増大できるとともに、常用ブレーキ21の使用頻度が低減されるので、ブレーキライニング等の消耗を抑制することができる。
ブレーキ用ECU24は、CAN等の車載ネットワークによって運転支援装置30に接続され、必要なデータや制御信号を相互に送受信可能となっている。ブレーキ用ECU24は、運転支援装置30からの制動指令に従って、常用ブレーキ21の制動力(車輪17のホイールシリンダーのブレーキ液圧)を制御する。
常用ブレーキ21の制動動作は、運転支援装置30およびブレーキ用ECU24によって制御される。リターダ22および排気ブレーキ23の制動動作は、運転支援装置30によってオン/オフで制御される。リターダ22および排気ブレーキ23の制動力はほぼ固定であるため、所望の制動力を正確に発生させる場合には、制動力を細かく調整できる常用ブレーキ21が適している。
運転支援装置30は、車間距離検出部41、ACC用操作部42、アクセル操作検出部43、ブレーキ操作検出部44、および車速センサ45から各種情報を取得し、取得した情報に基づいて、駆動系統10および制動系統20の動作を制御する。
また、運転支援装置30は、走行に関する各種情報を、音や画像等により情報出力部50から出力する。
また、運転支援装置30は、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を実現する。すなわち、運転支援装置30は、車両1における定速走行制御および追従走行制御(以下「自動走行制御」と総称する)を行う。
定速走行制御とは、所定の範囲に先行車両が存在しない場合に、車両1の走行速度(以下「車速」という)が所定の目標値(値、あるいは、値の範囲)に近付くように、駆動系統10および制動系統20を動作させる制御である。
また、追従走行制御とは、所定の範囲に先行車両が存在する場合に、車間距離が所定の目標範囲に収まるように、かつ、相対速度がゼロに近付くように、駆動系統10および制動系統20を動作させる制御である。運転支援装置30の詳細については、後述する。
車間距離検出部41は、車両1と先行車両との間の車間距離(以下、単に「車間距離」という)を計測(検出)し、計測結果を運転支援装置30へ出力する。車間距離検出部41には、例えばレーザレーダ、ミリ波レーダ、撮像装置等を単独または組み合わせて適用することができる。上述の運転支援装置30は、車間距離検出部41の検出結果に基づいて、定速走行中および追従走行中の駆動系統10および制動系統20の動作を制御する。
ACC用操作部42は、ACCを実行可能とするためのメインスイッチ、および、ACCの設定/解除を行うためのACC設定スイッチを有する。また、ACC用操作部42は、車速の目標値を設定するための速度設定ボタン、および、車間距離を設定するための車間距離設定ボタンを含む。なお、これらのスイッチおよびボタンは、タッチパネル付きディスプレイに表示されたユーザインタフェースであってもよい。ACC用操作部42は、ACC用操作部42において行われた操作の内容を示す操作信号を、運転支援装置30へ出力する。上述の運転支援装置30は、ACC用操作部42からの操作信号(ACC用操作部42を通じて行われる運転者の操作)に基づいて、自動走行制御に関する情報を設定する。
アクセル操作検出部43は、車両を加速させるためのアクセルペダルが踏み込まれたか否か、および、アクセルペダルの踏み込み量を検出し、検出結果を、運転支援装置30へ出力する。運転支援装置30は、アクセルペダルの踏み込み量に基づいて、エンジン用ECU18および動力伝達用ECU19に駆動指令を送出する。
ブレーキ操作検出部44は、常用ブレーキ21を動作させるためのブレーキペダルが踏み込まれたか否か、および、ブレーキペダルの踏み込み量を検出する。また、ブレーキ操作検出部44は、リターダ22または排気ブレーキ23を動作させる補助ブレーキレバーが操作されたか否かを検出する。そして、ブレーキ操作検出部44は、ブレーキペダルおよび補助ブレーキレバーに関する検出結果を、運転支援装置30へ出力する。上述の運転支援装置30は、ブレーキペダルの踏み込み量に基づいて、ブレーキ用ECU24に制動指令を送出する。また、運転支援装置30は、補助ブレーキレバーの操作に基づいて、リターダ22または排気ブレーキ23のオン/オフ動作を制御する。
車速センサ45は、例えば推進軸14に取り付けられ、車速を検出し、検出結果を、運転支援装置30へ出力する。
情報出力部50は、例えば、スピーカ、および、いわゆるインストルメント・パネルやあるいはナビゲーションシステムのディスプレイ(図示略)等の表示部(ディスプレイ)を含む。運転支援装置30は、情報出力部50を用いて、例えばスピードメータ、タコメータ、燃料計、水温計、距離計等の各種計器類、および自動走行制御に関する情報の表示や、警報音の出力等を行う。
なお、エンジン用ECU18、動力伝達用ECU19、ブレーキ用ECU24、および運転支援装置30は、図示しないが、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、RAM(Random Access Memory)等の作業用メモリ、および通信回路をそれぞれ有する。この場合、例えば、運転支援装置30を構成する後述の各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。なお、エンジン用ECU18、動力伝達用ECU19、ブレーキ用ECU24、および運転支援装置30の全部または一部は、一体的に構成されていてもよい。
このような構成を有する車両1は、運転支援装置30により、運転者の操作に基づく通常の走行だけでなく、車速や車間距離等に基づく自動走行制御による走行を行うことができる。
<運転支援装置の構成>
次に、運転支援装置30の構成について説明する。
図2は、運転支援装置30の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、運転支援装置30は、情報取得部31、走行制御部33、操作判定部32、フェード判定部34、および警報出力部35を有する。
情報取得部31は、例えばACC用操作部42からの入力情報に基づいて、車速、相対速度、あるいは車間距離の目標値を取得し、取得した目標値を、走行制御部33へ出力する。
また、情報取得部31は、車速センサ45および車間距離検出部41からの入力情報に基づいて、車速と、車両1に対する先行車両の相対速度(以下、単に「相対速度」という)と、車間距離とを取得する。例えば、情報取得部31は、入力情報を記録し、車間距離の時間変化から、相対速度を算出する。そして、情報取得部31は、取得した車速、相対速度、および車間距離を、走行制御部33へ出力する。
なお、情報取得部31は、例えば、車速の目標値および車間距離の目標値を、現在の車速および車間距離と、ユーザにより予め設定された車間レンジ(車間距離のレベル)とに基づいて、適宜設定してもよい。例えば、情報取得部31は、エンジン11の始動時に、ACC用操作部42の車間距離設定ボタンを介して、予め設定された複数の車間レンジの中から1つを選択する操作を運転者から受け付ける。そして、情報取得部31は、より長い車間レンジが選択されるほど、あるいは、現在の車速が大きいほど、より大きい値で車間距離の目標値を設定する。情報取得部31は、設定された車間レンジを示す情報を、情報出力部50に表示させてもよい。
操作判定部32は、車両1の運転者により所定の操作が行われたか否かを判定し、所定の操作が行われとき、その旨を走行制御部33へ通知する。本実施の形態では、所定の操作とは、ACC用操作部42におけるACCの開始を指示する操作であり、例えば上述のメインスイッチの押下操作である。
走行制御部33は、車速、相対速度、および車間距離のうち少なくとも1つが、それぞれの目標値に近付くように、車両1の駆動系統10および制動系統20を制御する。すなわち、走行制御部33は、上述の自動走行制御を行う。
例えば、走行制御部33は、車速とその目標値との差分、および、相対速度とその目標値との差分に対して比例制御(P制御)を行い、車間距離とその目標値(車間レンジ)との差分に対して積分制御(I制御)を行う。これにより、走行制御部33は、これらの差分のそれぞれを0に近付ける加減速度を、加減速度の目標値(以下「目標加減速度」という)として算出し、算出された目標加減速度に対応する値を、駆動系統10および制動系統20に対する制御値として出力する。
なお、走行制御部33は、上述の自動走行制御を、上述の所定の操作が行われる毎に開始する。但し、走行制御部33は、自動走行制御が解除された後に所定の操作が行われたとき、後述のフェード判定部34により設定されるフェード注意フラグがオフとなっていることを条件として、自動走行制御を再開する。
フェード注意フラグとは、フェード現象が発生する可能性の度合いが所定のレベル以上であると判定されたか否かを示すフラグである。すなわち、走行制御部33は、ACCの開始を指示する操作が行われたとしても、フェード現象が発生する可能性が高いと判定された場合には、自動走行制御を開始しないようになっている。フェード注意フラグは、走行制御部33が保持してもよいし、フェード判定部34が保持してもよい。
また、走行制御部33は、所定のタイミングで自動走行制御を解除し、その旨を警報出力部35へ通知する。例えば、走行制御部33は、車速が35km/h等の所定の閾値まで低下したとき、自動走行制御を解除し、運転者の操作による通常の走行に切り替える。
また、走行制御部33は、ACCが働いていないとき、アクセル、ブレーキ、シフトレバー、およびハンドル等の操作インタフェース(いずれも図示せず)の操作に基づいて、駆動系統10および制動系統20を含む車両1の各部を制御する。かかる制御は、従来の車両における通常走行における制御と同一であるため、ここでの説明を省略する。
また、走行制御部33は、摩擦ブレーキである常用ブレーキ21が作動しているか否かを示す信号を、逐次、フェード判定部34へ出力する。かかる情報としては、例えば、ブレーキ用ECU24に対して出力される、常用ブレーキ21の作動およびその強さを指示するブレーキ制御信号を採用することができる。
フェード判定部34は、走行制御部33からの入力情報が示す常用ブレーキ21(摩擦ブレーキ)の作動状況に基づいて、フェード現象が発生する可能性の度合いが所定のレベル以上であるか否かを判定する。そして、フェード判定部34は、上記度合いが所定のレベル以上であるとき、上述のフェード注意フラグをオンにするとともに、上記度合いが所定のレベル以上である旨を警報出力部35へ通知する。また、フェード判定部34は、上記度合いが所定のレベル未満であるとき、上述のフェード注意フラグをオフにするとともに、上記度合いが所定のレベル未満である旨を警報出力部35へ通知する。
警報出力部35は、走行制御部33において自動走行制御が解除されるとき、情報出力部50を用いて、警報出力を開始させる。また、警報出力部35は、フェード現象が発生する可能性の度合いが所定のレベル以上であるとき、所定の警報出力を行う。所定の警報出力は、例えば、情報出力部50のスピーカからの警報音の出力と、情報出力部50の表示部における警報メッセージの表示である。
このような運転支援装置30は、摩擦ブレーキである常用ブレーキ21の作動状況に基づいて、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1のレベル以上であるときにこれを判定し、警報出力等を行うことができる。したがって、運転支援装置30は、フェード現象が発生する可能性が第1のレベルよりも高くなる前に、運転者に対して警報を行い、必要な対策を促すことができる。
<判定基準の決定手法>
ここで、フェード現象が発生する可能性の度合いを判定する基準、つまり、上述の第1のレベルの、決定手法の例について説明する。
図3は、判定基準の決定手法の一例を説明するための図である。
図3の上側に示すように、車両1においてフェードが発生しない車速変化のパターン(摩擦ブレーキの作動パターン)として、ある制動試験パターン110が、予め存在している。制動試験パターン110は、例えば、「車両等の型式認定相互承認協定」の「乗用車の制動装置に係る協定規則(第13H号)」に準拠した制動試験パターンである。
この制動試験パターン110では、常用ブレーキ21を作動させる区間aと、かかる作動を解除していく区間bと、常用ブレーキ21を作動させない区間cを1セットの走行パターンとし、かかる走行パターンを20セット連続して繰り返すパターンである。区間aでは、車速が60km/hから30km/hまで2.8秒かけて減速するように、摩擦ブレーキを作動させる。具体的には、区間aは、−3m/s2の減速度で常用ブレーキ21を作動させる区間である。区間bでは、摩擦ブレーキを解除し、車速が50−2.8=47.2秒かけて60km/hに戻るように加速する。区間cでは、車速を60km/hで10秒間維持させる。
このような制動試験パターン110で走行を行った場合、図3の下側に示す温度変化パターン120に示すように、車両1のブレーキライニングの温度(ライニング温度)は、時間とともに上昇していく。そして、上述の走行パターンが20セット繰り返される1200秒の間(区間d)に、ライニング温度はある最大値121に到達し、5000秒かけて、空気による冷却等により、元の温度まで戻る(区間e)。
車両1は、制動試験パターン110で走行したときのライニング温度の最大値121において、フェードが発生しないことが、試験により確認されている。したがって、少なくとも、制動試験パターン110における常用ブレーキ21の作動状況に近似した作動状況では、フェードが発生する可能性は低いといえる。
そこで、フェード判定部34は、制動試験パターン110における常用ブレーキ21の作動状況に対応する値を、第1の閾値として使用する。具体的には、フェード判定部34は、制動試験パターン110の区間a〜cの走行パターンを20セット連続して繰り返したときの減速度の積算値を、第1の閾値として予め設定する。すなわち、第1の閾値は、3[m/s2]×2.8[s]×20=168である。
フェード判定部34は、常用ブレーキ21が作動している間、所定の周期(以下「カウント周期」という)で速度の変化量を算出し、算出した値を1秒当たりの速度の変化量(つまり減速度)の絶対値に換算する。そして、フェード判定部34は、かかる換算により得られた値(以下「単位時間当たり発熱相当量」という)を、カウント値として積算し、カウント値が第1の閾値を超えたとき、上述のフェード注意フラグをオンにする。
一方で、常用ブレーキ21が作動していない場合、フェード判定部34は、5000秒でライニング温度が最大値121から元の値に戻るときの温度減少の速度で、カウント値を減少させる。すなわち、フェード判定部34は、ライニング温度の最大値121に対応するカウント値である168を5000秒で除し、更にカウント周期の長さを乗じて得られる値(以下「単位時間当たり放熱相当量」という)を、カウント値から減算する。そして、フェード判定部34は、カウント値が第2の閾値を下回ったとき、上述のフェード注意フラグをオフにする。
ライニング温度の上昇および減少は、ある程度限定されている。したがって、フェード判定部34は、カウント値の増減を、0から168の範囲で行う。
なお、フェード判定部34は、上述の手法以外の手法により、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1のレベル以上であるか否かを判定してもよい。例えば、フェード判定部34は、車両1の重量や走行抵抗等のパラメータを取得し、これらのパラメータを加味して設定された閾値を用いてもよい。
<運転支援装置の動作>
次に、運転支援装置30の動作について説明する。ここでは、運転支援装置30の動作を、走行制御部33を主体とする処理(以下「走行制御処理」という)と、フェード判定部34を主体とする処理(以下「フェード判定処理」という)とに分けて説明する。
運転支援装置30は、例えば、エンジン11の始動時に、ACCをオフ(解除)にした状態で、以下に説明する走行制御処理およびフェード判定処理を開始する。なお、運転支援装置30は、ACCが働いていないとき、運転者の操作に従って通常の走行制御を行うが、ここでの図示および説明を省略する。
図4は、走行制御処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS1100において、操作判定部32は、ACC用操作部42においてACC開始操作が行われたか否かを判定する。操作判定部32は、ACC開始操作が行われていない場合(S1100:NO)、かかる判定処理を繰り返す。また、操作判定部32は、ACC開始操作が行われた場合(S1100:YES)、処理をステップS1200へ進める。
なお、操作判定部32は、車速が後述の所定値に満たない場合や、車速が110km/h等の他の所定値を超えている場合、ACC開始操作を無効としてもよい。
ステップS1200において、走行制御部33は、フェード注意フラグがオンとなっているか否かを判定する。フェード注意フラグは、上述の通り、フェード判定部34により設定されるフラグであり、フェード現象が発生する可能性の度合いが所定のレベル以上であるか否かを示すフラグである。走行制御部33は、フェード注意フラグがオンとなっている場合(S1200:YES)、処理をステップS1300へ進める。
ステップS1300において、走行制御部33は、情報出力部50を用いて、ACCを開始しない旨を示すエラー通知を行い、処理をステップS1100へ戻す。エラー通知は、例えば、情報出力部50のスピーカからの警報音の出力と、情報出力部50の表示部における警報メッセージの表示である。すなわち、走行制御部33は、フェード現象が発生する可能性の度合いが所定のレベル以上である場合、ACCを禁止する。
一方、フェード注意フラグがオフとなっている場合(S1200:NO)、走行制御部33は、処理をステップS1400へ進める。
ステップS1400において、情報取得部31は、車速v、相対速度vr、車間距離dを取得し、運転支援装置30のメモリ等に記録する。
ステップS1500において、走行制御部33は、車速vが35km/h等の所定値(ACCの下限速度)以下であるか否かを判定する。なお、かかる所定値は、35km/hに限定されない。走行制御部33は、車速vが所定値以下ではない場合(S1500:NO)、処理をステップS1600へ進める。
ステップS1600において、情報取得部31は、ACC用操作部42においてACC解除操作が行われたか否かを判定する。情報取得部31は、ACC解除操作が行われていない場合(S1600:NO)、処理をステップS1700へ進める。
ステップS1700において、走行制御部33は、車速v、相対速度vr、車間距離dに基づいて、目標加減速度Aを決定する。目標加減速度Aは、速度の単位時間当たりの変化量であり、加速の場合に正の値を取り、減速の場合に負の値を取る。
ステップS1800において、走行制御部33は、目標加減速度Aが所定の閾値α(但し、α>0)よりも大きいか否かを判定する。走行制御部33は、目標加減速度Aが閾値αよりも大きい場合(S1800:YES)、処理をステップS1900へ進める。また、走行制御部33は、目標加減速度Aが閾値α以下である場合(S1800:NO)、処理を後述のステップS2000へ進める。
ステップS1900において、走行制御部33は、車両1の加減速度が目標加減速度Aに近付くように、エンジン11の燃料噴射量を増加させ、車両1を加速させる。
ステップS2000において、走行制御部33は、目標加減速度Aが所定の閾値β(但し、β<0)よりも小さいか否かを判定する。走行制御部33は、目標加減速度Aが閾値βよりも小さい場合(S2000:YES)、処理をステップS2100へ進める。また、走行制御部33は、目標加減速度Aが閾値β以上である場合(S2000:NO)、処理を後述のステップS2200へ進める。なお、目標加減速度Aが閾値β以上である場合、走行制御部33は、処理をステップS1400へ戻してもよい。
ステップS2100において、走行制御部33は、車両1の加速度が目標加減速度Aに近付くように、エンジン11の燃料噴射量を減少させ、車両1を減速させる。
ステップS2200において、走行制御部33は、目標加減速度Aが所定の閾値γ(但し、γ<β)よりも小さいか否かを判定する。走行制御部33は、目標加減速度Aが閾値γよりも小さい場合(S2200:YES)、処理をステップS2300へ進める。また、走行制御部33は、目標加減速度Aが閾値γ以上である場合(S2200:NO)、処理を後述のステップS2400へ進める。なお、目標加減速度Aが閾値γ以上である場合、走行制御部33は、処理をステップS1400へ戻してもよい。
ステップS2300において、走行制御部33は、車両1の加減速度が目標加減速度Aに近付くように、補助ブレーキであるリターダ22および排気ブレーキ23を作動させ、車両1を減速させる。
ステップS2400において、走行制御部33は、目標加減速度Aが所定の閾値δ(但し、δ<γ)よりも小さいか否かを判定する。走行制御部33は、目標加減速度Aが閾値δよりも小さい場合(S2400:YES)、処理をステップS2500へ進める。また、走行制御部33は、目標加減速度Aが閾値δ以上である場合(S2400:NO)、処理をステップS1400へ戻す。
ステップS2500において、走行制御部33は、車両1の加減速度が目標加減速度Aに近付くように、主ブレーキである常用ブレーキ21を作動させ、車両1を減速させる。このとき、走行制御部33は、上述のブレーキ制御信号を、フェード判定部34へ出力する。
運転支援装置30は、ステップS1400〜S2500の処理を繰り返すことにより、ACCを実現する。
そして、走行制御部33は、車速vが所定値に低下した場合、あるいは、車速vが元々所定値以下である場合(S1500:YES)、処理をステップS2600へ進める。
ステップS2600において、警報出力部35は、ACCを解除する旨を通知する警報の出力を行って、処理をステップS2700へ進める。
また、情報取得部31は、ACC解除操作が行われた場合(S1600:YES)、同様に、処理をステップS2700へ進める。
ステップS2700において、走行制御部33は、ACCを解除して、処理をステップS1100へ戻す。すなわち、走行制御部33は、運転者が自主的にブレーキ操作等を行うことを前提とした通常の制御に戻す。なお、走行制御部33は、ACCが解除されている状態においても、ACCによる制動系統20の制御とは別に、緊急ブレーキの作動等の制御を行ってもよい。
なお、走行制御部33は、車速が15km/h等に低下するまでの間、ACCのうち主ブレーキの制御のみを維持してもよい。この場合、車速が15km/h等に低下したときに、ACCの主ブレーキ制御が解除されるが、警報出力部35は、その際にも警報出力を行う。
図5は、フェード判定処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS3100において、フェード判定部34は、車速vを、情報取得部31、走行制御部33、あるいは車速センサ45から取得し、取得された車速vが15km/h(第1の所定値)以上であるか否かを判定する。
フェード判定部34は、車速vが15km/h未満である場合(S3100:NO)、処理を後述のステップS4200へ進める。また、フェード判定部34は、車速vが15km/h以上である場合(S3100:YES)、処理をステップS3200へ進める。
なお、車速vが小さいときには、常用ブレーキ21を作動させたとしても、発生する摩擦熱は小さい。したがって、ステップS3100の判定処理により、以下のステップS3200〜S4100の処理を行わないようにすることにより、不要な処理が行われるのを回避することができる。
ステップS3200において、フェード判定部34は、主ブレーキである常用ブレーキ21が作動しているか否かを判定する。フェード判定部34は、例えば、0.1秒毎等の細かい周期(カウント周期)で、常用ブレーキ21の作動を指示するブレーキ制御信号が入力されているか否かを判定する。
フェード判定部34は、常用ブレーキ21が作動していない場合(S3200:NO)、処理をステップS3300へ進める。また、フェード判定部34は、常用ブレーキ21が作動している場合(S3200:YES)、処理をステップS3400へ進める。
ステップS3300において、フェード判定部34は、カウント値をデクリメントする。なお、フェード判定部34は、カウント値が最小値である場合、その最小値でカウント値を維持する。カウント値の初期値は、0である。デクリメントの量は、上述の単位時間当たり放熱相当量である。
ステップS3400において、フェード判定部34は、カウント値をインクリメントする。なお、フェード判定部34は、カウント値が最大値である場合、その最大値でカウント値を維持する。インクリメントの量は、上述の単位時間当たり発熱相当量である。フェード判定部34は、例えば、カウント周期毎に車速vを取得し、現在のカウント周期の車速vに対する1つ前のカウント周期の車速vの差分を算出することにより、単位時間当たり発熱相当量を算出する。
ステップS3500において、フェード判定部34は、カウント値が第1の閾値以上であるか否かを判定する。すなわち、フェード判定部34は、常用ブレーキ21の作動状況に基づいて、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1のレベル以上であるか否かを判定する。第1の閾値は、例えば、上述の168である。フェード判定部34は、カウント値が第1の閾値以上である場合(S3500:YES)、処理をステップS3600へ進める。フェード判定部34は、カウント値が第1の閾値未満である場合(S3500:NO)、処理を後述のステップS3700へ進める。
ステップS3600において、警報出力部35は、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1のレベル以上であることを示す警報の出力を開始(または出力状態を継続)する。また、フェード判定部34は、フェード注意フラグをオンにする(またはオン状態を維持させる)。
かかる警報を受けた運転者は、上述のメインスイッチの押下等、ACCを解除する操作を行い、運転者の操作による通常の走行に切り替えることができる。そして、運転者は、シフトダウンを行って常用ブレーキ21の使用頻度を低減させる等、フェード現象の発生を回避するための対策を速やかに行うことができる。
ステップS3700において、フェード判定部34は、カウント値が、第1の閾値以下の値である第2の閾値未満であるか否かを判定する。すなわち、フェード判定部34は、常用ブレーキ21の作動状況に基づいて、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1のレベル以下である第2のレベル未満であるか否かを判定する。
フェード判定部34は、カウント値が第2の閾値未満である場合(S3700:YES)、処理をステップS3800へ進める。フェード判定部34は、カウント値が第2の閾値以上である場合(S3700:NO)、処理を後述のステップS3900へ進める。
ステップS3800において、警報出力部35は、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1のレベル以上であることを示す警報の出力を停止(または非出力状態を維持)する。また、フェード判定部34は、フェード注意フラグをオフにする(またはオフ状態を維持させる)。
なお、第2の閾値を第1の閾値よりも小さくした場合、検出誤差等によりむやみにフェード注意フラグがオフとなるのを回避することができる。
ステップS3900において、フェード判定部34は、ステップS3100と同様に車速vを取得し、取得された車速vが15km/h(第1の所定値)以上であるか否かを判定する。フェード判定部34は、車速vが15km/h以上である場合(S3900:YES)、処理をステップS3200へ戻す。また、フェード判定部34は、車速vが15km/h未満である場合(S3900:NO)、処理をステップS4000へ進める。
ステップS4000において、フェード判定部34は、ステップS3100と同様に車速vを取得し、取得された車速vが10km/h(第2の所定値)以上であるか否かを判定する。フェード判定部34は、車速vが10km/h以上である場合(S4000:YES)、処理をステップS3300へ戻す。また、フェード判定部34は、車速vが10km/h未満である場合(S4000:NO)、処理をステップS4100へ進める。
ステップS4100において、警報出力部35は、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1のレベル以上であることを示す警報の出力を停止(または非出力状態を維持)する。
そして、ステップS4200において、フェード判定部34は、ステップS3300と同様に、カウント値をデクリメントし、カウント値が最小値である場合にはその値を維持する。そして、フェード判定部34は、処理をステップS3100へ戻す。
このような動作により、運転支援装置30は、ACCの自動走行制御を実現するとともに、常用ブレーキ21の作動状況に基づいてフェード現象が発生する可能性の度合いを判定し、第1のレベル以上となったときに所定の警報出力を行うことができる。また、運転支援装置30は、フェード現象が発生する可能性の度合いに基づく常用ブレーキ21の自動制御の解除を行わないようにしつつ、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1のレベル以上となっている間、ACCの開始を禁止することができる。
なお、ライニング温度が十分に低い状態から、図3の区間a(2.8秒)の摩擦ブレーキが掛かり続けた状態が継続したとしても、20回分、つまり、2.8秒×20回=56秒は、フェード現象が発生しないといえる。したがって、運転支援装置30は、例えば、エンジン始動後に最初に車速が15km/hに達した時点(図5のステップS3100:YES)等、ライニング温度が十分に低い時点からの56秒間は、フェード注意フラグをオフのまま維持してもよい。あるいは、運転支援装置30は、例えば、かかる56秒間は、図5のステップS3200〜S4100の処理をマスクしてもよい。これにより、不要なフェード判定処理が行われるのを防ぐことができる。
<本実施の形態の効果>
以上のように、本実施の形態に係る運転支援装置30は、車速、相対速度、および車間距離のうち少なくとも1つを含む走行パラメータを取得する情報取得部31を有する。また、運転支援装置30は、走行パラメータが所定の目標値に近付くように車両1の駆動系統10および制動系統20を制御する、自動走行制御を行う走行制御部33を有する。そして、運転支援装置30は、摩擦ブレーキである常用ブレーキ21の作動状況に基づいて、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1のレベル以上であるか否かを判定するフェード判定部34と、上記度合いが第1のレベル以上であるとき、所定の警報出力を行う警報出力部35と、を有する。
これにより、本実施の形態に係る運転支援装置30は、ACCによる走行を実現しつつ、摩擦ブレーキの使用頻度の低減を図ることができる。したがって、本実施の形態に係る運転支援装置30は、車両走行における安全性と快適性とを両立させることができる。
<本実施の形態の変形例>
なお、運転支援装置30は、ACCが働いていない間(通常の走行時)においても、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1のレベル以上であるか否かの判定を行い、判定結果に基づいて警報出力を行ってもよい。
また、運転支援装置30は、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1のレベル以上であると判定したとき、警報出力およびACC開始の禁止のうち1つのみを行ってもよい。
また、運転支援装置30は、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1のレベル以上であると判定したとき、ACCを解除してもよい。このとき、運転支援装置30は、図4のステップS2600と同様に、ACCを解除する旨を通知する警報の出力を行うことが望ましい。
また、フェード現象に関する判定の対象は、上述の例に限定されるものではなく、ディスクブレーキ等、他の各種摩擦ブレーキであってもよい。
また、警報出力部35が行う警報出力は、上述の例に限定されるものではなく、メッセージ音声の出力、テキスト表示、画像表示、ランプの点灯、運転者の座席やハンドルからの振動の出力等、他の各種警報出力であってもよい。
また、走行制御部33が行う自動走行制御の内容は、上述の例に限定されるものではなく、例えば、車間距離のみについて所定の目標値に近付くように、所定の加減速度の範囲内で車両1の加減速を制御するものであってもよい。
また、走行制御部33が自動走行制御の解除のトリガとするタイミングは、上述の例に限定されるものではなく、相対速度、車間距離、あるいは自動走行制御が開始されてからの経過時間が所定の条件を満たすことになったタイミングであってもよい。
なお、以上説明した運転支援装置30の構成の一部は、運転支援装置30の構成の他の部分と物理的に離隔していてもよい。この場合、それらの構成は、互いに通信を行うための通信部をそれぞれ備える必要がある。
<本開示のまとめ>
本開示の運転支援装置は、車両の運転を支援する運転支援装置であって、前記車両の車速、前記車両に対する先行車両の相対速度、および前記車両と前記先行車両との間の車間距離のうち少なくとも1つを含む走行パラメータを取得する情報取得部と、前記走行パラメータが所定の目標値に近付くように前記車両の駆動系統および制動系統を制御する、自動走行制御を行う走行制御部と、摩擦ブレーキの作動状況に基づいて、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1のレベル以上であるか否かを判定するフェード判定部と、前記度合いが前記第1のレベル以上であるとき、所定の警報出力を行う警報出力部と、を有する。
なお、上記運転支援装置は、前記車両の運転者により所定の操作が行われたか否かを判定する操作判定部、を有し、前記フェード判定部は、前記摩擦ブレーキの作動状況に基づいて、前記度合いが、前記第1のレベル以下である第2のレベル未満であるか否かを判定し、前記走行制御部は、所定のタイミングで前記自動走行制御を解除し、前記自動走行制御が解除された後に前記所定の操作が行われたとき、前記度合いが前記第2のレベル未満であることを条件として、前記自動走行制御を再開してもよい。
また、上記運転支援装置において、前記フェード判定部は、所定の周期で前記摩擦ブレーキの作動の有無を判定して所定の数値範囲内においてカウント値を増減させるカウント処理を行い、前記カウント値を前記度合いとしてもよい。
また、上記運転支援装置において、前記フェード判定部は、前記摩擦ブレーキが作動しているときの前記車速の変化量と、前記摩擦ブレーキが作動していない、または、前記車速が所定値以下となっているときの時間の長さと、に基づいて、前記カウント値を増減させてもよい。
また、上記運転支援装置において、前記フェード判定部は、前記車速が増加して第1の所定値に達したとき、前記カウント処理を開始し、前記車速が減少して前記第1の所定値以下の第2の所定値に達したとき、前記カウント処理を終了すると共に前記カウント値を初期化してもよい。
本開示の運転支援方法は、車両の運転を支援する運転支援方法であって、前記車両の車速、前記車両に対する先行車両の相対速度、および前記車両と前記先行車両との間の車間距離のうち少なくとも1つを含む、走行パラメータの取得を開始するステップと、前記走行パラメータが所定の目標値に近付くように前記車両の駆動系統および制動系統を制御する、自動走行制御を開始するステップと、摩擦ブレーキの作動状況に基づいて、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1のレベル以上であるか否かを判定するステップと、前記度合いが前記第1のレベル以上であるとき、所定の警報出力を行うステップと、を有する。