<第1実施形態>
(ダイカストマシンの全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。
ダイカストマシン1は、金型101内(キャビティCa等の空間。以下同様。)に液状金属(溶湯)又は固液共存金属を射出し、その金属を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造するものである。なお、ダイカストマシン1は、液状金属及び固液共存金属のいずれの成形にも用いることができるものであるが、以下の説明においては、主として、固液共存金属の一例である半凝固金属の成形に係る構成及び手順について説明する。金属は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金である。
金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。本実施形態の説明では、便宜上、固定金型103又は移動金型105の断面を1種類のハッチングで示すが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定金型103及び移動金型105には、中子などが組み合わされてもよい。
ダイカストマシン1は、例えば、成形のための機械的動作を行うマシン本体3と、マシン本体3の動作を制御する制御ユニット5とを有している。マシン本体3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101の内部に半凝固金属を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105(図1では移動金型105)から押し出す押出装置11とを有している。また、マシン本体3は、射出装置9に半凝固金属を供給する供給装置13(図2参照)を有している。
ダイカストマシン1において、供給装置13及び制御ユニット5以外の構成(例えば型締装置7及び射出装置9の構成)は、液状金属又は固液共存金属を射出して成形を行う公知の種々の構成と同様とされてよい。また、供給装置13の構成は、公知の種々の半凝固金属供給装置の構成と同様とされてよい。
型締装置7は、例えば、基本的な構成として、固定金型103を保持する固定ダイプレート15と、移動金型105を保持する移動ダイプレート17と、両ダイプレートに架け渡される1以上(通常は複数。例えば4本)のタイバー19とを有している。
固定ダイプレート15及び移動ダイプレート17は互いに対向して配置されており、その対向側(前面側)に固定金型103又は移動金型105を保持している。移動ダイプレート17が固定ダイプレート15との対向方向(型開閉方向)において移動されることによって、金型101の型開閉がなされる。また、例えば、金型101が型閉じ(型接触)された状態(2点鎖線で示す)で、固定ダイプレート15に固定されたタイバー19の、移動ダイプレート17側部分が移動ダイプレート17の背後(紙面左側)へ引っ張られることによって、タイバー19の伸張量に応じた型締力(金型101を締め付ける力)が得られる。
また、型締装置7は、例えば、型開閉及び型締めを実現するための駆動部として、電動式かつトグル式の型締駆動部21を有している。具体的には、型締駆動部21は、例えば、移動ダイプレート17の背後に位置するリンクハウジング23と、リンクハウジング23と移動ダイプレート17との間に介在する複数のリンク25と、複数のリンク25に駆動力を付与する型締電動機27とを有している。
リンクハウジング23は、タイバー19の紙面左側部分と固定されている。また、上述のように、タイバー19の紙面右側部分は、固定ダイプレート15と固定されている。従って、型締電動機27によって複数のリンク25に駆動力が付与され、リンクハウジング23と移動ダイプレート17とが互いに離反すると、移動ダイプレート17が固定ダイプレート15へ向かって移動し、型閉じがなされる。駆動力の付与は、型接触がなされて移動ダイプレート17の固定ダイプレート15側への移動が規制された後も継続される。従って、タイバー19が移動ダイプレート17の背後へ引っ張られることになり、型締力が生じる。
型締電動機27は、例えば、回転式の電動機である。型締電動機27の回転は、例えば、ねじ機構29によって並進運動に変換されてリンク25に伝達される。ねじ機構29は、例えば、リンクハウジング23に対する軸方向の移動が規制され、型締電動機27によって軸回りに回転されるねじ軸31と、ねじ軸31に螺合され、リンク25に連結され、軸回りの回転が規制されたナット33(クロスヘッド)とを有している。
また、型締装置7は、型締電動機27の回転を検出するエンコーダ35と、型締力を検出する型締力センサ37とを有している。
エンコーダ35は、インクリメンタル型であってもよいし、アブソリュート型であってもよい。エンコーダ35及び/又は制御ユニット5は、エンコーダ35において生成されるパルスの数を積算することによって、移動ダイプレート17と、リンクハウジング23(タイバー19のリンクハウジング23側部分)との相対位置を検出することができる。従って、エンコーダ35は、型接触前は、移動ダイプレート17の位置を検出でき、型接触後は、タイバー19の伸びを検出することができる。
型締力センサ37は、例えば、ひずみゲージを含んで構成され、タイバー19のうち型締めにおいて伸長される部分に取り付けられ、タイバー19のひずみに応じた信号を生成する。型締力センサ37及び/又は制御ユニット5は、生成された信号(ひずみ)と、タイバー19の情報とに基づいて、型締力を算出することができる。型締力の算出に用いられるタイバー19の情報は、例えば、タイバー19の、本数、ヤング率及び断面積(径)である。
射出装置9は、例えば、金型101内に通じるスリーブ39と、スリーブ39内を摺動可能なプランジャ41と、プランジャ41を駆動する射出駆動部43とを有している。なお、射出装置9の説明においては、金型101側を前方、その反対側を後方ということがある。
半凝固金属がスリーブ39内に配置された状態で、プランジャ41が図示の位置からスリーブ39内を前方へ摺動することにより、半凝固金属が金型101内に押し出される(射出される)。その後、金型101内で半凝固金属が凝固することにより、ダイカスト品が形成される。
スリーブ39は、例えば、固定金型103に連結された筒状部材であり、上面には金属材料をスリーブ39内に受け入れるための供給口39aが開口している。なお、スリーブ39が固液共存金属に専用のものである場合においては、供給口39aは、スリーブ39の上面後端を切欠いた切欠きによって構成されてもよい。プランジャ41は、スリーブ39内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ41aと、先端がプランジャチップ41aに固定されたプランジャロッド41bとを有している。
射出駆動部43は、例えば、液圧式のものであり、射出シリンダ45を含んで構成されている。射出シリンダ45は、シリンダ部45aと、シリンダ部45aの前方へ延び出て、プランジャロッド41bの後端と連結されるピストンロッド45cとを有している。そして、ピストンロッド45cがシリンダ部45aに対して軸方向に駆動されることにより、プランジャ41が駆動される。
制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置47(図図4参照)と、画像を表示する表示装置49と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置51とを有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、ユーザインターフェースとしての操作部53とを有している。
制御装置47は、例えば、不図示の制御盤及び操作部53に設けられている。制御装置47は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置47は、型締装置7、射出装置9、押出装置11及び半凝固金属供給装置13毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
表示装置49及び入力装置51は、例えば、操作部53に設けられている。操作部53は、例えば、型締装置7の固定ダイプレート15に設けられている。表示装置49は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置51は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
(半凝固金属の供給装置の構成)
図2は、射出装置9に半凝固金属を供給する供給装置13の一例を示す模式図である。
供給装置13は、液状の金属材料Mから半凝固状の金属材料Mを製造してスリーブ39に供給する装置として構成されている。供給装置13は、例えば、液状の金属材料Mを保持する保持炉55と、保持炉55から液状の金属材料を汲み出す注湯装置57と、注湯装置57により液状の金属材料が注がれ、注がれた液状の金属材料を半凝固状態とする半凝固化装置59とを有している。
保持炉55及び注湯装置57は、例えば、一般的な液状の金属材料を成形するダイカストマシンにおいて液状の金属材料をスリーブ39へ注ぐための公知の構成と概ね同様とされてよい。保持炉55は、例えば、上面が開放された炉体に金属材料を収容するとともにその金属材料を加熱して液状に保つ。なお、保持炉55は、溶解炉を兼ねるものであってもよい。注湯装置57は、例えば、ラドル61と、ラドル61を搬送するラドル搬送装置63とを含んで構成されており、保持炉55から1ショット分の液状の金属材料を汲み出す。
半凝固化装置59は、例えば、注湯装置57により液状の金属材料Mが注がれる容器65と、容器65に液状の金属材料を注ぐ前に容器65を冷却するプレ冷却装置67と、容器65に液状の金属材料Mが注がれるときに容器65が載置される載置装置69と、容器65を搬送する容器搬送装置71とを有している。
容器65は、例えば、概略円筒状の部材である。容器65は、有底であってもよいし、無底であってもよい。プレ冷却装置67は、例えば、容器65を冷却媒体に浸すことにより容器65を冷却する。冷却媒体は、気体であってもよいし、液体であってもよい。載置装置69は、例えば、容器65が載置される載置面下で冷却媒体を循環させて容器65を下方から冷却する。なお、載置装置69の載置面は、容器65が無底の場合は容器の底を構成する。容器搬送装置71は、例えば、多関節ロボットにより構成されている。
プレ冷却装置67によって冷却された容器65が容器搬送装置71によって載置装置69上に搬送されると、注湯装置57によってラドル61から容器65へ液状金属が注がれる。液状金属は、容器65によって熱を奪われて冷却されるとともに、注がれた際の流れによって攪拌される。これにより、半凝固金属が製造される。そして、容器65は、容器搬送装置71によってスリーブ39の供給口39a上へ搬送され、半凝固金属は、容器65からスリーブ39内へ落下する。これにより、半凝固金属が射出装置9に供給される。
(金型に設けられているセンサ)
図3(a)は、金型101を型開閉方向に見た模式的な透視図である。
固定金型103の移動金型105側の面及び移動金型105の固定金型103側の面の少なくとも一方には凹部が形成されており、金型101が型閉じされると、金型101内に空間が構成される。当該空間は、例えば、鋳込み口(スリーブ39)から延びる湯道101a(ランナー)、キャビティCa(製品部)及びオーバーフロー部101b(湯だまり)を有している。
湯道101aは、キャビティCaへ半凝固金属を導く部分である。キャビティCaは、製品を形成する部分である。オーバーフロー部101bは、例えば、余剰な半凝固金属を収容する部分である。なお、特に図示しないが、オーバーフロー部101bからガス抜きが延びていてもよい。
これらの形状は、製品の形状に応じて適宜に設定されてよい。また、図示の例では、1つの金型101に1つのキャビティCaが構成されているが、1つの金型101に複数のキャビティCaが構成されてよい。オーバーフロー部101bは、1つのキャビティCaに対して1つ設けられてもよいし、1つのキャビティCaに対して複数設けられてもよい。オーバーフロー部101bは、溶湯が射出される金型のものに比較して、キャビティCaとの接続部の断面積が大きく(例えば型開閉方向において厚く)形成されていてもよい。
金型101は、キャビティCaに概ね半凝固金属が充填されたときに半凝固金属が入り込むようなオーバーフロー部101b(以下、単にオーバーフロー部101bという場合は、このようなものを指す。)を有している。このようなオーバーフロー部101bは、例えば、キャビティCaの外縁のうち半凝固金属が概ね最後に到達する部分に接続されている。
例えば、オーバーフロー部101bのキャビティCaへの接続位置は、キャビティCaに対して、湯道101aのキャビティCaへの接続位置(ゲート)とは反対側に位置している。ここでいう反対側は、例えば、横型締めされる金型101において、キャビティCaの下側及び上側のようなものでよい。また、例えば、オーバーフロー部101bのキャビティCaへの接続位置は、キャビティCaの外縁のうち湯道101aからの経路(例えばキャビティCa内を通過する最短経路)の長さが最も長い位置である。
ダイカストマシン1は、金型101に設けられた通電センサ73及び温度センサ75を有している。なお、これらのセンサは、固定金型103及び移動金型105のいずれに設けられてもよい。また、これらのセンサは、例えば、金型101内の空間に露出又は近接する位置に設けられている。なお、これらのセンサは、固定金型103又は移動金型105において、金型101内の空間を構成する凹部及び凸部のいずれに設けられていてもよい。本実施形態の説明では、固定金型103の凹部に設けられている場合を例示する(図8(b)及び図8(c)等)。
通電センサ73は、金型101内の所定位置における通電に応じた信号を出力する。すなわち、通電センサ73は、金型101内の所定位置における通電を検知する。なお、通電に応じた信号は、通電が検知されたときのみ出力される信号であってもよいし、通電及び非通電それぞれに対応した信号レベルの信号であってもよい。
具体的には、通電センサ73は、例えば、特に図示しないが、金型101内に露出する1対の電極を有している。そして、金型101内に射出された半凝固金属が1対の電極に接触すると1対の電極が通電される。そして、通電センサ73は、1対の電極が通電されると、そのことを示す信号を出力する。
通電センサ73によって通電が検知されることによって、通電センサ73が通電を検出する位置まで半凝固金属が到達したことが検知される。
通電センサ73が通電を検出する位置(1対の電極の露出位置)は、例えば、半凝固金属がキャビティCa内に概ね充填されたことを検出可能に、金型101内の適宜な位置とされる。
例えば、通電が検出される位置は、オーバーフロー部101b内の位置である。より好ましくは、半凝固金属がオーバーフロー部101b内に完全に充填される前に通電を検出できるように、通電が検出される位置は、オーバーフロー部101bの端部(例えばキャビティCaとは反対側の外縁)からキャビティCa側へ離れた位置であり、例えば、オーバーフロー部101bの体積の中心よりもキャビティCa側の位置である。
また、例えば、図示の例とは異なり、通電が検出される位置は、キャビティCaのうち、湯道101aとは反対側の外縁に隣接する位置、又は湯道101aからの経路が最も長い位置であってもよい。なお、ここでいう反対側及び経路の意味は、オーバーフロー部101bの位置について述べたものと同様である。
温度センサ75は、金型101内の所定位置における温度に応じた信号を出力する。すなわち、温度センサ75は、金型101内の所定位置における温度を検出する。温度に応じた信号は、例えば、温度の変化に対応して信号レベルが変化する信号である。温度センサ75は、接触式のものであってもよいし、非接触式のものであってもよい。例えば、温度センサ75は、金型101内に露出する熱電対である。その他、温度センサ75は、例えば、金型101に埋設されて金型101内(半凝固金属が供給される空間)に露出しないサーミスタであってもよい。
半凝固金属が金型101内へ射出され、温度センサ75が温度を検出する位置へ半凝固金属が到達すると、温度センサ75が検出する温度は上昇する。従って、例えば、温度センサ75の検出する温度に基づいて、温度が検出される位置まで半凝固金属が到達したことを検知可能である。また、温度が検出される位置へ半凝固金属が到達した後、半凝固金属は金型101に熱を奪われるから、温度センサ75の検出する温度は低下する。従って、例えば、温度センサ75の検出する温度に基づいて、半凝固金属の凝固の進行状況を把握可能である。
温度センサ75が温度を検出する位置は、金型101内の適宜な位置とされてよい。
例えば、半凝固金属が概ねキャビティCaに充填されたことを検知する目的で温度センサ75を設ける場合においては、温度センサ75が温度を検出する位置は、好ましくは、上述した、通電センサ73が通電を検出する好ましい位置と同様である。例えば、検出位置は、キャビティCaのうち、湯道101aとは反対側の外縁に隣接する位置、若しくは湯道101aからの経路が最も長い位置、又はオーバーフロー部101b内の位置である。オーバーフロー部101b内の位置は、例えば、オーバーフロー部101bの端部からキャビティCa側へ離れた位置、又はオーバーフロー部101bの体積の中心よりもキャビティCa側の位置である。
また、例えば、半凝固金属の凝固の進行状況を把握する目的で温度センサ75が設けられる場合においては、温度センサ75が温度を検出する位置は、金型101内の適宜な位置とされてよい。例えば、検出位置は、キャビティCaのうち、湯道101aとは反対側の外縁に隣接する位置、若しくは湯道101aからの経路が最も長い位置であってもよいし、図示の例とは逆に、湯道101aの近くであってもよい。
(射出駆動部の構成)
図3(b)は、プランジャ41を駆動する射出駆動部43及びその周辺機器の構成を示す模式図である。
射出駆動部43は、既述の射出シリンダ45と、射出シリンダ45に対する作動液の流れを制御する液圧装置77とを有している。
射出シリンダ45は、上述したシリンダ部45a及びピストンロッド45cに加え、ピストンロッド45cに固定されており、シリンダ部45a内を摺動可能なピストン45bを有している。シリンダ部45aの内部は、ピストン45bによって、ピストンロッド45cが延び出る側のロッド側室45rと、その反対側のヘッド側室45hとに区画されている。そして、ヘッド側室45h及びロッド側室45rに選択的に作動液が供給されることによって、ピストン45b及びピストンロッド45cは前進又は後退する。なお、図3(b)では、いわゆる単胴式の射出シリンダ45を示しているが、射出シリンダ45は、いわゆる増圧式のものであってもよい。
液圧装置77は、例えば、作動液を送出可能なポンプ79と、作動液を収容するタンク81と、ポンプ79からヘッド側室45hへの作動液の供給を許容及び禁止する流入側バルブ83と、ロッド側室45rからタンク81への作動液の排出を許容及び禁止する流出側バルブ85とを有している。
流入側バルブ83が開かれ、ポンプ79からヘッド側室45hへ作動液が供給され、かつ流出側バルブ85が開かれ、ロッド側室45rからタンク81への作動液の排出が許容されることにより、ピストン45bは前進する。
また、流入側バルブ83として流量制御弁が用いられてメータイン回路が構成されることにより、及び/又は流出側バルブ85として流量制御弁が用いられてメータアウト回路が構成されることにより、ピストン45bの前進速度は制御される。なお、流量制御弁は、例えば、負荷変動等に関わらずに流量を設定値に調整可能な圧力補償付き流量制御弁であり、また、サーボ機構の中で使用され、入力された信号に応じて無段階で流量を調整可能なサーボバルブである。
なお、図3(b)では、本実施形態においてピストン45bの前進に係る主要な構成のみを簡略的に示している。従って、液圧装置77は、図示以外にも構成要素を含んでいる。例えば、液圧装置77は、ピストン45bを後退させるためにロッド側室45rに作動液を供給する流路、当該流路における作動液の流れを制御するバルブ等を有している。また、図示の例とは異なり、ヘッド側室45hへの作動液の供給は、アキュムレータからなされてもよいし、ロッド側室45rから排出される作動液は、いわゆるランアラウンド回路を介してヘッド側室45hへ還流されてもよい。
(射出装置のセンサ)
射出装置9(ダイカストマシン1)は、ヘッド側室45hの圧力を検出するヘッド側圧力センサ87Hと、ロッド側室45rの圧力を検出するロッド側圧力センサ87Rと、プランジャ41の位置を検出する位置センサ89とを有している。なお、以下では、ヘッド側圧力センサ87H及びロッド側圧力センサ87Rを区別せずに、単に「圧力センサ87」ということがある。
圧力センサ87は、圧力に応じた信号を出力する。圧力に応じた信号は、例えば、圧力の変化に対応して信号レベルが変化する信号である。圧力センサ87は、ダイヤフラム式など、公知の適宜なものが用いられてよい。
ヘッド側圧力センサ87H及びロッド側圧力センサ87R(2つの圧力センサ87)の検出圧力からプランジャ41が半凝固金属に付与する圧力(射出圧力)を求めることができる。具体的には、まず、ヘッド側圧力センサ87Hの検出した圧力と、ピストン45bのヘッド側室45hにおける受圧面積との積により、作動液からピストン45bに付与される前進方向の力が求められる。また、ロッド側圧力センサ87Rの検出した圧力と、ピストン45bのロッド側室45rにおける受圧面積との積により、作動液からピストン45bに付与される後退方向の力が求められる。次に、前者から後者を差し引くことにより、ピストン45bがプランジャ41に付与している駆動力が求められる。この駆動力をプランジャチップ41aの半凝固金属に対する押圧面積で割ることにより、射出圧力が求まる。
なお、メータアウト回路が設けられない場合においては、ロッド側圧力センサ87Rは設けられなくてもよい。すなわち、射出においてロッド側室45rがタンク圧とされる場合においては、ヘッド側圧力センサ87Hの検出圧力から射出圧力が求められてよい。
位置センサ89は、例えば、リニアエンコーダを構成している。例えば、位置センサ89は、不図示のスケール部に対して当該スケール部の軸方向に直交する方向において対向し、スケール部との軸方向における相対移動に応じてパルスを生成する。そして、位置センサ89及び/又は制御ユニット5は、生成されたパルスの数を積算することによって位置センサ89とスケール部との相対位置を特定可能であり、また、時間当たりのパルスの数を特定することによって速度を特定可能である。
そして、位置センサ89は、シリンダ部45aに対して固定的に設けられ、スケール部は、ピストンロッド45c又はピストンロッド45cに固定的な部材に設けられる。従って、ピストンロッド45cの位置及び/又は速度が検出されることによって、間接的にプランジャ41の位置及び/又は速度が検出される。
なお、位置センサ89は、パルスを出力するだけであってもよいし、位置及び/又は速度を特定し、その特定した位置及び/又は速度に応じた信号を出力してもよい。前者であっても、位置に応じてパルスの総数が異なるから位置に応じた信号を出力しているといえ、また、速度に応じて単位時間当たりのパルス数が異なるから速度に応じた信号を出力しているといえる。後者の場合の信号は、例えば、位置及び/又は速度の変化に応じて信号レベルが変化する信号である。
位置センサ89は、上記のようなリニアエンコーダの他、例えば、シリンダ部45aに対して固定的に設けられ、ピストンロッド45c又はピストンロッド45cに対して固定的な部材との距離を測定するレーザ測長器であってもよい。
(信号処理系の構成)
図4は、ダイカストマシン1の信号処理系に係る構成を示すブロック図である。
制御装置47は、例えば、特に図示しないが、CPU、RAM、ROM及び外部記憶装置を含むコンピュータによって構成されている。CPUがROM及び外部記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、種々の制御乃至は演算を担う複数の機能部(91、93、95、97及び99)が構成される。また、外部記憶装置(一時的にはRAMでもよい)には、制御に利用される情報を含むデータDTが記憶される。
制御装置47に構築される複数の機能部のうち、紙面上方に示した機能部(91、93及び95)は、型締装置7及び射出装置9の制御に係る機能部である。これらの機能部は、例えば、型締装置7及び射出装置9からの信号、並びにデータDTの情報に基づいて、型締装置7及び射出装置9へ制御指令を出力することに寄与する。これらの機能部の詳細については、制御装置47が実行する処理の手順(図9)等の説明において説明する。
供給制御部97は、供給装置13を制御する機能部であり、保持炉55、ラドル搬送装置63、プレ冷却装置67、載置装置69及び容器搬送装置71からの各種の信号(例えば不図示の温度センサ及び位置センサからの信号)に基づいてこれらの装置を制御する。
入力設定部99は、入力装置51からの信号に基づいて、データDTに保持される情報を設定乃至は更新する。データDTに保持される情報の詳細については、制御装置47が実行する処理の手順(図9)等の説明において説明する。
(鋳造サイクルの概要)
図5(a)〜図6(c)は、ダイカストマシン1が実行する鋳造サイクルの概要を模式的に示す断面図である。鋳造サイクルは、図5(a)から図6(c)へ順に進む。
図5(a)に示すように、鋳造サイクルの開始時において、移動ダイプレート17は固定ダイプレート15から比較的離れた所定の型開位置に配置されており、金型101は型開状態とされている。
次に、図5(b)に示すように、型締駆動部21によって型閉じ及び型締めが行われる。この型締めは、後述するように、金型101の型厚(別の観点では型接触時の移動ダイプレート17の位置)を特定するために行われる。
次に、図5(c)に示すように、型締駆動部21によって型開きが行われる。このとき、金型101は、その合わせ面(型締めされたときに型開閉方向において互いに当接する面)同士が比較的小さな隙間dで離間するように位置決めされる。
次に、図6(a)に示すように、供給装置13によって半凝固金属Mがスリーブ39に供給される。
次に、図6(b)に示すように、射出駆動部43によってプランジャ41が前方へ駆動され、半凝固金属Mが金型101間に射出される。金型101は、隙間dで型開きされているものの、半凝固金属Mの粘性が比較的高いこと、及び隙間dが比較的小さいことなどから、半凝固金属Mの金型101の合わせ面へのはみ出し(バリの生成)は抑制される(ここでいう抑制は、はみ出しが生じない場合を含む。)。
次に、図6(c)に示すように、型締駆動部21によって型締めが行われる。これにより、金型101間に充填されていた半凝固金属Mはプレスされる。その結果、半凝固金属M(の一部)は、金型101のキャビティCaの形状に成形される。また、プレスの際の圧力によって初晶が圧縮されて金属組織が緻密化され、製品の品質が向上する。
その後、型開き、製品の取り出し等が行われ、鋳造サイクルは終了する。また、鋳造サイクルが繰り返し行われるようにダイカストマシン1に対して操作が行われていた場合においては、次の鋳造サイクルが開始される。
このように、本実施形態のダイカストマシン1は、型締めした状態で射出を行うのではなく、僅かに型開きした状態で射出を行い(図6(b))、その後、型締めによって半凝固金属のプレスを行う(図6(c))ことを1つの特徴としている。
図5(c)の隙間dの大きさは、型締力及び半凝固金属の粘度等の種々の事情を考慮して適宜に設定されてよい。例えば、隙間dは、0.1mm以上3.0mm以下である。このような大きさであれば、例えば、半凝固金属がキャビティCaからはみ出すおそれを低減しつつ、プレス(図6(c))の効果を得ることができる。また、プレスの効果を十分に得る観点からは、隙間dは1mm以上であることが好ましい。
隙間dの設定値は、データDTに保持されている。この設定値は、ダイカストマシン1の製造者によって設定されてもよいし、オペレータの入力装置51に対する操作に応じて入力設定部99が設定してもよいし、金型形状の情報等に基づいて制御装置47が算出して設定してもよい。
なお、隙間dは、当然に、通常の型開き(図5(a))における金型101の合わせ面間の距離に比較して小さい。例えば、通常の型開きにおける合わせ面間の距離は、少なくとも製品を金型101間から取り出せる大きさであり、ひいては、製品及びビスケットの厚みよりも大きい。一方、隙間dは、製品の厚みよりも小さい。従って、例えば、金型101の合わせ面同士の間隔がその金型101によって形成される製品の厚みよりも小さいか否かで、図5(c)の近接状態か否か判定されてよい。
半凝固金属をスリーブ39への供給したとき(図6(a))、半凝固金属は、液状金属とは異なり、スリーブ39の前方(固定金型103)へ流れて固定金型103から流れ落ちる蓋然性は極めて低い。従って、半凝固金属のスリーブ39への供給(図6(a))の時期は、図5(c)の位置決めが完了した後ではなく、図5(a)から図5(c)までの動作の時期と重複していてもよい。重複させた場合、鋳造サイクルを短縮できる。
ただし、例えば、半凝固金属がスリーブ39に供給された後、図5(c)の位置決め等が行われると、半凝固金属がスリーブ39において不必要に冷却されてしまうおそれがある。そのようなおそれを低減する観点からは、半凝固金属のスリーブ39への供給が完了する以前又は直後に、図5(c)の位置決めが完了することが好ましい。
上記に関連して、プランジャ41を前進させるとき(図6(b))、半凝固金属は、液状金属とは異なり、前進開始前から又は前進開始直後から金型101間に到達するわけではないから、プランジャ41の前進開始後(射出開始後)に図5(c)の位置決めが完了してもよい。ただし、隙間dを意図した大きさに確実に制御した状態で、半凝固金属が金型101間へ移動するようにする観点からは、図5(c)の位置決め完了後にプランジャ41を前進させることが好ましい。
射出の際、半凝固金属から金型101へ加えられる圧力によって隙間dが大きくならないように、適宜な構成及び/又は動作が採用されてよい。例えば、ねじ機構29においては、ナット33へ付与されるリンクハウジング23側への力によってねじ軸31が回転しないように、ボールねじ機構ではなく、すべりねじ機構が採用されたり、リード角が小さくされたりしてもよい。また、型締電動機27は、一定の位置で停止するようにフィードバック制御がなされたり、ブレーキ付とされたりしてもよい。その他、適宜なストッパが移動ダイプレート17又は型締駆動部21に設けられてもよい。
(型厚の測定)
図5(b)を参照して説明したように、本実施形態では、鋳造サイクル毎に型厚を測定する。これにより、例えば、温度変化によって型厚が変化した場合であっても、図5(c)の工程において隙間dを正確に制御することができる。その測定方法は、以下のとおりである。
型厚の測定においては、例えば、移動ダイプレート17を型閉方向へ移動させるように型締駆動部21が駆動され、この駆動は、型開状態(図5(a))から型接触を経て、型締力センサ37の検出する型締力が所定の測定用型締力に到達するまで行われる。このとき、型開状態から型接触までにおいては、タイバー19は伸びず、その長さはL0である。一方、型接触から測定用型締力が得られるまでにおいては、型締力に応じた伸び量でタイバー19は伸び、測定用型締力が得られたときには、タイバー19の長さはL0+ΔLとなる。
ここで、ΔLは、測定用型締力、並びにタイバー19の本数、ヤング率、断面積及び長さL0から算出することができる。一方、移動ダイプレート17の位置x(タイバー19のリンクハウジング23側の端部に対する相対位置)は、エンコーダ35の検出値に基づいて特定可能である。従って、測定用型締力が得られたときに位置x=x2であるとすると、型接触位置x1は、x1=x2−ΔLにより算出することができる。なお、固定ダイプレート15が固定されているから、型接触位置x1の特定は、型厚の測定に相当する。
そして、図5(c)の近接状態における位置x3は、型接触位置x1及び所定の隙間dを用いて、x3=x1−dにより算出される。
なお、型締力センサ37が歪ゲージを含んで構成されている場合においては、歪及び長さL0からΔLを算出することも可能である。従って、例えば、型締力とタイバーの情報とに基づいて算出という場合、型締力そのものの値を用いる態様だけでなく、型締力に相関する値(例えば歪)を用いる態様を含むものとする。他の物理量(相対位置x等)についても同様である。
上記のような測定を行うために、制御装置47は、例えば、型締力センサ37の検出する型締力がデータDTの保持する計測用型締力の設定値に収束するように型締電動機27のフィードバック制御を行う。データDTが保持する計測用型締力の設定値は、例えば、ダイカストマシン1の製造者によって設定されている。ただし、計測用型締力の設定値は、入力装置51からの信号に基づいて入力設定部99が設定するなどしてもよい。
計測用型締力の具体的な値は、適宜に設定されてよい。例えば、ダイカストマシンの大きさを表す型締力の大きさを100%としたときに、100%とされてもよいし、これよりも小さくされてもよい。また、計測用型締力は、図6(c)におけるプレス用の型締力と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
(比較例における射出及びプレスに係る物理量の変化)
図7(a)は、比較例に係る射出(図6(b))及びプレス(図6(c))における射出速度、射出圧力及び型締力の経時変化を示す図である。
同図において、横軸は時間tを示し、縦軸は、射出速度V(プランジャ41の前進速度)、射出圧力P(プランジャ41が半凝固金属に付与する圧力)、又は型締力F(金型101を締め付ける力)を示している。線LV、LP及びLFは、それぞれ時間tの経過に対する射出速度V、射出圧力P及び型締力Fの変化を示している。
射出速度Vは、例えば、半凝固金属が金型101間に移動する期間の概ね全体に亘って一定とされる。すなわち、液状金属の射出においては、液状金属による空気の巻き込みを低減するための低速射出、及び液状金属の凝固に遅れずに充填を行う等の目的の高速射出が行われることが多いが、比較例(及び本実施形態)における半凝固金属の射出においては、そのような変速は行われない。ただし、適宜な変速が行われてもよい。
具体的には、射出速度は、射出工程の開始時(t0)から比較的速やかに、比較的低速の一定速度V1に到達する(t1)。このときの速度勾配(加速度)は、例えば、射出装置9に過度な負担が生じない範囲で最大の速度勾配とされてよい。そして、一定速度V1が相対的に長く維持され、この間に半凝固金属の大部分は金型101間に移動する。その後、金型101間に概ね充填された半凝固金属からプランジャ41が受ける力によって、射出速度は低下し始める(t2)。さらには、半凝固金属の充填が完了することによって射出速度は(略)0となる(t3)。すなわち、狭義の射出が終了する。
射出圧力Pは、プランジャ41の前進開始(t0)に伴って上昇し、プランジャ41が一定の速度で前進しているときは(t1〜t2)、比較的低い圧力で推移する。その後、半凝固金属が金型101間にある程度充填されると(t2)、充填に対する半凝固金属の抵抗力が大きくなり、射出圧力は比較的急激に上昇する。また、射出圧力は、プランジャ41が減速している間(t2〜t3)に開始される昇圧動作によって、プランジャ41が略停止(t3)した後に最大(終圧P1)となり(t4)、その後、一定の値に維持される。
図7(a)において線LFで示す型締力Fは、隙間dの縮小に伴って金型101に加えられる力と、その後、型接触して金型101に加えられる力との双方を示している。同図の例では、射出圧力Pが終圧P1に到達すると(t4。別の観点では射出圧力が一定の大きさに収束すると)、型締電動機27の駆動力によって移動ダイプレート17が固定ダイプレート15側への移動を開始する(隙間dの縮小が開始される)。これにより、型締力Fは上昇し始め、時点t4から時点t5までの間の適宜な時点において型接触がなされ、型締力Fは、予め設定されたプレス用型締力F1に到達する。その後、型締力Fは、プレス用型締力F1に維持される。
(実施形態における射出及びプレスに係る物理量の変化)
図7(b)は実施形態に係る射出(図6(b))及びプレス(図6(c))における射出速度、射出圧力及び型締力の経時変化を示す図であり、図7(a)に相当する。
図7(a)に示す比較例においては、射出速度Vは、金型101間に概ね充填された半凝固金属からプランジャ41が受ける力によって減速され、0に至る(t2〜t3)。この際、射出圧力Pは上昇する。このような態様においては、例えば、金型101間の隙間dが大きいと、上昇した射出圧力Pによって半凝固金属が金型101の合わせ面へはみ出し、バリが生じるおそれがある。その一方、隙間dを小さくすると、プレスによって半凝固金属の組織を緻密化する効果が低下する。
そこで、本実施形態では、図7(b)に示すように、半凝固金属が金型101間に概ね充填されるとき(t2)、又はその前に、射出駆動部43によってプランジャ41の減速を行う。また、プランジャ41が概ね停止した後の昇圧動作も行わない。別の観点では、プランジャ41の減速制御を行って射出を終了する(プランジャ41を(略)停止させる。)。これにより、射出圧力Pの上昇が抑制される(上昇しない場合を含む)。ひいては、隙間dを大きくしてプレスの効果を十分に得つつも、バリが発生することを抑制することができる。例えば、隙間dを1mm以上にすることが容易化される。
なお、例えば、射出制御部93から、流入側バルブ83及び/又は流出側バルブ85の開度を徐々に絞るような制御信号が出力されるのではなく、これらのバルブを閉じることのみを目的とした制御信号が出力される場合を考える。例えば、制御信号の信号レベルが、開位置に対応する信号レベルから閉位置に対応する信号レベルへ徐々に変化するのではなく、開位置に対応する信号レベルから閉位置に対応する信号レベルへ瞬時に切り換えられる場合である。この場合であっても、結果として減速が生じ、その後に停止が生じる。従って、本実施形態の説明において、プランジャ41を減速させる制御等という場合においては、特に断りがない限り、減速のみ、又は減速及び停止を目的とした制御だけでなく、プランジャ41を停止させることのみを目的とした制御等も含むものとする。また、プランジャ41を停止させる制御という場合においては、特に断りがない限り、バルブの開度を徐々に絞り、最終的にバルブを閉じるような、狭義の減速制御の後に停止が行われるものを含むものとする。減速させる制御等という場合、減速のための制御信号が出力されておらず、概ね金型101に充填された半凝固金属からプランジャ41が受ける力によって減速されるものは含まれない。
減速制御が行われること、及び昇圧動作が行われないことを除いては、実施形態における動作は、比較例における動作と同様とされてよく、上述した比較例についての説明がそのまま本実施形態に適用されてよい。例えば、射出速度Vは、半凝固金属が金型101間に移動する期間の概ね全体に亘って一定とされてよい。
減速を開始する時点は、図示の例とは異なり、半凝固金属が概ね金型101間に充填される時点(t2付近)であってもよいし、図示の例のように、前記の時点よりも前(t6)であってもよい。プレス完了時にキャビティCaに半凝固金属が行き渡るように、その一方で、射出圧力の上昇が好適に抑えられるように、個々の金型101の形状等に応じて適宜に設定されてよい。
プランジャ41は、図示の例のように、概ね射出駆動部43による減速によって停止し、射出圧力の上昇が生じなくてもよい。また、図示の例とは異なり、射出駆動部43によって減速されつつ、半凝固金属から受ける力によって停止してもよい。後者の場合であっても、減速制御が行われることによって、減速制御が行われない場合に比較して、射出圧力の上昇は抑制される。
減速するときの速度勾配は適宜に設定されてよい。この速度勾配は、上述の説明から理解されるように、制御遅れの結果として生じるものであってもよいし、意図的に制御されたものであってもよい。また、速度勾配が制御される場合において、その制御はフィードバック制御であってもよいし、オープン制御であってもよい。
(射出及びプレスの制御の概要)
図8(a)〜図8(c)は、射出及びプレスの制御の概要を示す模式図である。
図8(a)は、プランジャ41を前進させて半凝固金属を金型101間に充填しているとき(図7(b)のt0〜t6)の制御を模式的に示している。なお、このときの速度は、既述のように、例えば、基本的に、比較的低速の一定速度V1である。
射出制御部93(主速度制御部93a)は、例えば、データDTに保持されている射出速度の設定値(目標値)を参照し、位置センサ89の検出値に基づいて、プランジャ41の速度がその設定値に収束するように、射出駆動部43の速度フィードバック制御を行う。なお、この速度フィードバック制御は、速度自体の偏差を求めるようなものであってもよいし、速度の設定値から求められる時々刻々の(経過時間毎の)目標位置と、検出された位置との偏差を求め、時々刻々と位置フィードバック制御を行うことによって実質的に速度フィードバック制御を行うものであってもよい。射出駆動部43の速度は、既に述べたように、流入側バルブ83(ここでは不図示)及び/又は流出側バルブ85の開度によって制御される。
データDTの射出速度の設定値は、例えば、入力装置51からの信号に基づいて入力設定部99が設定する。換言すれば、オペレータが設定する。なお、ダイカストマシン1の製造者によって、射出速度の設定値又は当該設定値を設定可能な範囲が設定されていてもよいし、金型形状の情報等に基づいて制御装置47が射出速度の設定値を設定してもよい。
一定速度V1の具体的な値は、適宜に設定されてよい。例えば、一定速度V1は、液状金属の射出における低速射出の速度と同等でよく、1m/s以下、さらには0.2m/s以下(例えば0.1m/s程度)でよい。本実施形態では、型締力によって最終的に半凝固金属を成形することから、半凝固金属を早期に充填するとともにプランジャ41で早期に高い圧力を半凝固金属に付与する必要性が低いことなどからである。
図8(b)は、プランジャ41の減速を開始するとき(図7(b)のt6)の制御を模式的に示している。
射出制御部93(減速制御部93b)は、例えば、通電センサ73からの信号に基づいて通電を検知すると、プランジャ41を減速するように射出駆動部43を制御する。既述のように、通電センサ73は、例えば、オーバーフロー部101bの端部よりもキャビティCaに位置しているから、半凝固金属がキャビティCaに概ね充填され、かつ金型101間の空間全体としては半凝固金属が充填される前に通電が検出される。従って、射出圧力が上昇する時点t2よりも前に、減速が開始されることになる。
プランジャ41を減速させる制御は、流入側バルブ83(ここでは不図示)及び/又は流出側バルブ85の開度を絞る(閉じる)制御である。例えば、射出制御部93は、流入側バルブ83及び/又は流出側バルブ85を閉じるための制御信号を出力する。停止までの減速は、例えば、これらのバルブや射出シリンダ45等における制御遅れによって生じる。もちろん、制御遅れによって減速するのではなく、任意の速度勾配で減速するように制御信号が出力されてもよい。流入側バルブ83及び/又は流出側バルブ85が閉じられると、基本的には、射出シリンダ45からプランジャ41には圧力は付与されず、射出圧力は実質的に0となる(図7(b)も参照)。
なお、通電センサ73による通電の検知から減速が開始されるまでに、不可避な制御遅れが生じてもよいことは当然である。また、通電センサ73を金型101に取り付けた後、トライアルの射出を行った結果、通電の検知時点と減速の好適な開始時点とがずれていることが考えられる。このような場合に減速の開始時点を微調整するために、通電の検知から減速のための制御信号の出力までに若干(射出速度等にもよるが例えば0.1秒以下)のタイムラグが意図的に設定されてもよい。本実施形態において、通電を検知した「とき」にプランジャ41を減速させる制御を開始するというような場合においては、このような微調整のためのタイムラグがある場合を含むものとする。すなわち、制御の開始時点が検知の時点に基づいていればよい。後述する、通電の検知に代わる種々の変形例においても同様である。
図8(c)は、プレスを開始するとき(図7(b)のt7)の制御を模式的に示している。
プレス用型締制御部95は、例えば、温度センサ75の検出する温度に基づいて、半凝固金属(別の観点では金型101内若しくはキャビティCa内)の温度が所定のプレス開始温度まで低下したか否か判定する。より具体的には、例えば、プレス用型締制御部95は、通電センサ73によって通電が検知されたことを条件として、又は、射出開始後、金型101内の温度がプレス開始温度を超えたか否かを繰り返し判定し、この判定において肯定判定がなされたことを条件として、金型101内の温度がプレス開始温度以下であるか否か判定する。そして、プレス用型締制御部95は、プレス開始温度まで低下したと判定(検知)したとき、プレス用の型締めを開始するように型締装置7(型締電動機27)を制御する。
このようにプレスを開始することによって、例えば、半凝固金属の粘度がある程度の高さになってからプレスを行うことになり、プレスの圧力がオーバーフロー部に逃げることを抑制できる。
プレス開始温度は、データDTに保持されており、また、ダイカストマシン1の製造者によって設定されてもよいし、オペレータの入力装置51に対する操作に応じて入力設定部99によって設定されてもよいし、半凝固金属の材料等の情報に基づいて制御装置47が設定してもよい。プレス開始温度は、トライアルの成形等に基づいて適宜に設定されてよい。一例として、プレス開始温度は、半凝固金属の固相率がいわゆる流動限界固相率になるときの温度又はそれ以下の温度とされてよい。
また、プレス開始温度に至ったか否かの判定に用いられる温度は、温度センサ75の検出温度そのままであってもよいし、当該検出温度に対して所定の補正をした温度であってもよい。補正は、例えば、温度センサ75の位置の温度を半凝固金属の中心部の温度に変換するようなものである。ただし、補正した検出温度をプレス開始温度と比較することは、生の検出温度と補正した狭義のプレス開始温度との比較に相当すると捉えることもでき、結局は、検出温度と広義のプレス開始温度との比較に他ならない。
プレス用型締力F1の具体的な値は、適宜に設定されてよい。例えば、一般に、ダイカストマシンの大きさは型締力によって表わされ、この型締力が鋳造サイクルにおいて通常用いられている。この型締力の大きさがプレス用型締力F1とされてよい。また、ダイカストマシンの大きさを表す型締力の大きさを100%としたときに、製品に要求される品質、キャビティCaの形状、半凝固金属の固相率等に応じて、100%未満の範囲、又は100%を超える範囲で適宜にプレス用型締力F1が設定されてもよい。また、型締力が上昇する過程における型締力の変化の態様も適宜に設定されてよい。
プレス用型締力の設定値は、データDTに記憶されている。この設定値は、ダイカストマシン1の製造者によって設定されてもよいし、オペレータの入力装置51に対する操作に応じて入力設定部99が設定してもよいし、半凝固金属の材料の情報等に基づいて制御装置47が設定してもよい。
プレスがなされる間、射出制御部93は、半凝固金属からプランジャ41が受ける圧力によってプランジャ41が後退しないように、適宜に射出装置9を制御してよい。例えば、射出制御部93は、ヘッド側室45hからの作動液の排出を禁止するように不図示の弁を制御してよい。また、例えば、射出駆動部43によってプランジャ41に前進方向の力を加えてもよい。なお、プランジャ41に前進方向の力を加える場合、プランジャ41の後退を抑制するだけでもよいし、プレスの力に加えてプランジャ41の力を半凝固金属に付与してもよい。また、プランジャ41に前進方向の力を加える場合、射出の終期の減速後、射出駆動部43の駆動を一旦停止した後に射出駆動部43を再駆動してもよいし、射出の終期に減速しつつも射出駆動部43の駆動を継続してもよい。
(制御装置による処理の手順の一例)
図9は、図5(a)〜図8を参照して説明した鋳造サイクルを実現するために制御装置47が実行するサイクル処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、入力装置51に対するサイクル開始の操作をトリガとして繰り返し実行される。
ステップST1では、制御装置47は、型閉じを行うように型締装置7を制御する(図5(a)及び図5(b))。具体的には、例えば、制御装置47は、移動ダイプレート17が型閉方向へ移動する回転方向へ型締電動機27を回転させるように型締電動機27へ制御指令を出力する。このときの速度は、例えば、エンコーダ35の検出値に基づいて適宜にフィードバック制御される。
ステップST2では、制御装置47は、型厚(型接触位置)を計測するための型締め(図5(b))を行う。具体的には、制御装置47は、ステップST1に引き続いて、移動ダイプレート17が型閉方向へ移動する回転方向へ型締電動機27を回転させるように型締電動機27へ制御指令を出力し、データDTに記憶されている計測用型締力が得られるまで型締電動機27を回転させる。そして、制御装置47は、計測用型締力及びデータDTに記憶されているタイバー情報(本数、断面積、ヤング率及び長さL0)に基づいてΔLを算出し、型接触位置を特定する。
なお、金型101の熱膨張等を反映した正確な型接触位置は、このステップST2において特定されるが、ステップST1等においては、そのような正確性を有さない、とりあえず入力又は計測された標準の型接触位置が用いられてよい。例えば、ステップST1では、移動ダイプレート17が標準の型接触位置に所定の距離まで近づいたときに、型接触の衝撃を緩和するように移動ダイプレート17が減速されてよい。また、移動ダイプレート17が標準の型接触位置に所定の距離まで近づいたときに、速度制御(ステップST1)からトルク制御(ステップST2)へ切り換えられてもよい。
ステップST3では、制御装置47(隙間制御部91)は、ステップST2によって特定された型接触位置を基準として、隙間dで金型101が型開きされるように型締装置7を制御する(図5(c))。具体的には、例えば、隙間制御部91は、図5(b)及び図5(c)を参照して説明したように、データDTに記憶されている隙間d(隙間設定値)に対応する位置x3を特定し、その特定した位置へ移動ダイプレート17が位置決めされるように、エンコーダ35の検出値に基づいて、移動ダイプレート17の位置のフィードバック制御を行う。
ステップST4では、制御装置47(供給制御部97及び射出制御部93)は、半凝固金属の射出が開始されるように供給装置13及び射出装置9を制御する(図6(a)及び図6(b))。具体的には、供給制御部97は、ステップST1〜ST3に並行して製造及び搬送していた半凝固金属をスリーブ39に供給するように供給装置13を制御し、次いで、射出制御部93は、プランジャ41を前進させるように射出駆動部43を制御する。この際の射出制御部93の主速度制御部93aによる射出速度の制御については既に述べたとおりである。図9では、便宜上、ステップST3の後にステップST4が図示されているが、両者のタイミングが適宜に重複してよいことは既に述べたとおりである。
ステップST5では、制御装置47(減速制御部93b)は、図8(b)を参照して説明したように、通電センサ73から通電の検知を示す信号を受信したか否か判定する。すなわち、制御装置47は、プランジャ41の減速を開始する条件が満たされたか否か判定する。そして、制御装置47は、否定判定のときは待機し、肯定判定のときはステップST6に進む。
ステップST6では、制御装置47(減速制御部93b)は、プランジャ41の減速を行うように射出駆動部43の制御を行う。この減速制御が、狭義の減速のみ(停止を含まない)を指示するものであったり、停止のみを指示して結果として減速が生じるものであったり、狭義の減速及び停止を指示するものであったりしてよいことは、既に述べたとおりである。
ステップST7では、制御装置47(プレス用型締制御部95)は、図8(c)を参照して説明したように、温度センサ75からの信号に基づいて、半凝固金属の温度がデータDTに記憶されているプレス開始温度まで低下したか否か判定する。すなわち、制御装置47は、プレス開始条件が満たされたか否か判定する。そして、制御装置47は、否定判定のときは待機し、肯定判定のときはステップST8に進む。
ステップST8では、制御装置47(プレス用型締制御部95)は、プレスのための型締めを行うように型締装置7を制御する(図6(c))。具体的には、プレス用型締制御部95は、移動ダイプレート17を型閉方向へ移動させる回転方向へ型締電動機27を回転させるように型締電動機27に制御指令を出力し、型締力センサ37によって検出される型締力がデータDTに記憶されているプレス用型締力に到達するまで型締電動機27を回転させる。なお、プレス用型締制御部95は、例えば、型締力がプレス用型締力に収束するように型締力センサ37の検出値に基づいてフィードバック制御を行ってもよい。
ステップST9では、制御装置47は、経過時間などに基づいて半凝固金属が凝固したか否か判定し、凝固したと判定すると、型開きを行うように型締装置7を制御したり、製品を金型101から取り出すように押出装置11を制御する。そして、制御装置47は、サイクル処理を終了する(次のサイクル処理を開始する。)。なお、特に図示しないが、この他、適宜な時期に金型101の洗浄や離型剤の塗布が行われるなど、適宜なステップが挿入されてよい。
以上のとおり、本実施形態では、ダイカストマシン1は、1対の金型101の型開閉及び型締めを行う型締装置7と、1対の金型101の間に通じているスリーブ39内においてプランジャ41を前進させることにより1対の金型101へ射出を行う射出装置9と、型締装置7及び射出装置9を制御する制御装置47と、を有している。そして、制御装置47は、射出制御部93及びプレス用型締制御部95を有している。射出制御部93は、1対の金型101が隙間を介して対向している状態(例えば隙間dで対向する近接状態)のときに射出を開始するように射出装置9を制御する(図6(b))。プレス用型締制御部95は、射出開始後に型接触及び型締めが行われるように型締装置7を制御する(図6(c))。さらに、射出制御部93は、(制御により及び/又は半凝固金属からの力により)プランジャ41が停止する前にプランジャ41を減速させる制御を行う。
別の観点では、本実施形態では、固液共存金属(例えば半凝固金属)の成形方法は、射出ステップ(ST4)及びプレス用型締ステップ(ST8)を有している。射出ステップ(ST4)は、隙間を介して対向している1対の金型101の間へ、当該1対の金型101間に通じているスリーブ39内の固液共存金属をプランジャ41によって押し出すように、射出駆動部43を制御する(図6(b))。プレス用型締ステップ(ST8)は、固液共存金属がその間に介在している1対の金型101の型接触及び型締めを行う(図6(c))。さらに、射出ステップでは、プランジャ41が停止する前にプランジャ41を減速させる制御を行う。
従って、金型101によるプレスによって、比較的高い圧力を万遍無く固液共存金属に付与することができる。その結果、固液共存金属の初晶が圧縮されて金属の組織が緻密化され、製品の品質が向上する。しかも、金型101間への固液共存金属の供給は、プランジャ41による押し出しによってスリーブ39から金型101へなされることから、液状金属を成形するダイカストマシンの構成を利用できる。その結果、例えば、装置全体又は各部の汎用性が向上し、ひいては、コストを削減することができる。
さらに、プランジャ41を減速させる制御を行って射出を終了することから、概ね金型101間に充填されて行き場を失った半凝固金属がプランジャ41に押されて比較的高い圧力が半凝固金属に付与されるおそれが低減される。その結果、バリの発生が抑制され、別の観点では、隙間dを大きくすることができる。
また、本実施形態では、射出制御部93は、プランジャ41を減速させる制御として、プランジャ41を停止させる制御を行って射出を終了する。従って、より確実に半凝固金属の圧力が上昇することを抑制できる。
また、本実施形態では、ダイカストマシン1は、金型101内の所定位置における通電に応じた信号を出力する通電センサ73を更に有している。射出制御部93は、通電センサ73からの信号に基づいて通電を検知したときにプランジャ41を減速させる制御を開始する。
従って、半凝固金属の位置を正確に把握して、半凝固金属の充填時又はその前に減速制御を確実に開始することができる。
また、本実施形態では、金型101は、その内部にキャビティCa(製品部)及びオーバーフロー部101bを構成するものである。通電が検出される位置は、オーバーフロー部101b内の、当該オーバーフロー部101bの端部からキャビティCa側へ離れた位置である。
従って、半凝固金属がキャビティCaに概ね充填され、かつ金型101の内部空間全体としては完全に半凝固金属が充填されていないときに、減速を開始することができる。その結果、例えば、キャビティCaに半凝固金属が十分に充填されないことによる不良品が製造されるおそれを低減できる。また、プランジャ41から半凝固金属に加えられる圧力をオーバーフロー部101bに逃がすことができ、これによってもバリの発生のおそれを低減できる。
また、本実施形態では、ダイカストマシン1は、キャビティCa(製品部)における温度に応じた信号を出力する温度センサ75を更に有している。プレス用型締制御部95は、温度センサ75からの信号に基づいてキャビティCaにおける温度が所定のプレス開始温度まで低下したことを検知したときにプレス用の型接触及び型締めの制御を開始する。
従って、既に述べたように、半凝固金属の粘度がある程度の高さになってからプレスを行うことになり、プレスの圧力がオーバーフロー部101bに逃げることを抑制できる。これにより、例えば、オーバーフロー部101bを厚く(開口断面を大きく)することができる。その結果、通電センサ73を適宜な位置に設けたり、プランジャ41から半凝固金属に加えられる圧力を逃がしたりすることが容易化される。
<減速開始条件の変形例>
上記の実施形態では、図8(b)を参照して説明したように、減速制御の開始条件(ステップST5)を、通電センサ73によって通電が検知されたこととした。しかし、減速制御の開始条件は、これ以外にも種々可能であり、以下では、そのいくつかの例を示す。
(第1変形例)
図10(a)は、第1変形例に係る図8(b)に対応する図であり、プランジャ41の減速を開始するときの制御を模式的に示している。
実施形態の説明においても述べたように、半凝固金属が温度センサ75に到達すると、温度センサ75の検出温度は上昇する。そこで、第1変形例では、射出制御部93は、温度センサ75からの信号に基づいて金型101内の温度が所定の減速開始温度まで上昇したことを検知すると、プランジャ41を減速するように射出駆動部43を制御する。より具体的には、射出制御部93は、例えば、射出開始後、金型101内の温度が所定の減速開始温度以上であるか否かを繰り返し判定し、肯定判定がなされたときに減速制御を開始する。
減速開始温度は、データDTに記憶されており、射出制御部93に参照される。また、減速開始温度は、ダイカストマシン1の製造者によって設定されてもよいし、オペレータの入力装置51に対する操作に応じて入力設定部99が設定してもよいし、適宜な情報に基づいて制御装置47が設定してもよい。また、減速開始温度は、スリーブ39に供給される半凝固金属の温度等に応じて適宜に設定されてよい。
なお、このように温度センサ75を用いるときの温度センサ75の好適な位置については、既に述べたとおりである。また、通電センサ73を設ける必要がないこと、減速制御の開始条件が温度であることを除いて、第1変形例の構成及び動作は、実施形態と同様でよい。
第1変形例によっても、実施形態と同様に、半凝固金属の位置を正確に把握して、半凝固金属の充填時又はその前に減速制御を確実に開始することができる。
また、第1変形例においては、減速制御の開始条件が満たされたか否かの判定に用いる温度センサ75が、プレス開始条件が満たされたか否かの判定(図8(c)及びステップST7)にも用いられることになる。従って、実施形態よりも構成が簡素である。
(第2変形例)
図10(b)は、第2変形例に係る図8(b)に対応する図であり、プランジャ41の減速を開始するときの制御を模式的に示している。
プランジャ41の位置と、半凝固金属の金型101間における充填の程度とは、当然ながら相関がある。そこで、第2変形例では、射出制御部93は、位置センサ89からの信号に基づいてプランジャ41が所定の減速開始位置に到達したことを検知すると、プランジャ41を減速するように射出駆動部43を制御する。なお、通電センサ73を設ける必要がないこと、減速制御の開始条件がプランジャ41の位置であることを除いて、第2変形例の構成及び動作は、実施形態と同様でよい。
減速開始位置は、データDTに記憶されており、射出制御部93に参照される。また、減速開始位置は、例えば、オペレータの入力装置51に対する操作に応じて入力設定部99が設定してもよいし、入力装置51を介して入力された鋳造条件に関する情報(例えばビスケット厚の情報)等から特定される、半凝固金属が金型101内(又はキャビティCa内)に概ね充填されるときのプランジャ41の位置に対して所定の量又は割合で手前の位置を制御装置47が自動的に設定してもよい。
プランジャ41の位置に対して変速を設定することは、射出後にプレスを行わない通常のダイカストマシンにおいても行われている。第2変形例は、そのようなダイカストマシンに備わっている機能を利用して実現されてもよい。
なお、射出の後にプレスが行われることを除いても、例えば、以下の点で、第2変形例は、通常のダイカストマシンの速度制御とは相違する。通常のダイカストマシンでは、低速射出に続いて高速射出が行われるから、比較的低速の射出の後に減速は行われない。通常のダイカストマシンでは、狭義の射出(低速射出及び高速射出等)に続いて増圧を行うことから、プランジャ41を停止させるような減速制御は行われない。射出開始からの経過時間毎の位置フィードバック制御によって実質的にプランジャ41の速度フィードバック制御を行っている場合においては、所定の位置の検知によって減速を開始することは行われない。
(第3変形例)
第3変形例に係る制御は、上記の第2変形例と同様に、図10(b)によって示される。
第2変形例で述べたように、射出後にプレスが行われない通常のダイカストマシンにおける、プランジャ41の位置に対して射出速度を設定する機能を用いて、減速開始位置が設定されてもよい。一方、既述のように、ダイカストマシンとして、位置センサ89からの信号に基づいて、射出開始からの経過時間毎の位置フィードバック制御を行い、これにより、実質的にプランジャ41の速度フィードバック制御を行うものがある。この両者が組み合わされると、射出制御部93は、位置センサ89からの信号に基づいて減速開始位置を検知したときに減速を開始するのではなく、射出開始(所定時点)から所定長さの時間が経過した(減速開始位置に対応する時点(例えば図7(b)のt6)が到来した)ことを検知したときに減速を開始することになる。
なお、プランジャ41が減速開始位置に到達したことを検知するための具体的な情報が位置センサ89の検出する位置ではなく、射出制御部93が射出開始から計時している経過時間であることを除けば、第3変形例の構成及び動作は第2変形例のものと同様である。
(第4変形例)
第4変形例に係る制御も、図10(b)によって示される。図7(a)を参照して説明したように、射出制御部93が、プランジャ41が所定の目標速度V1で金型101に向かって前進するように制御を行っている状態であっても(減速制御を行っていなくても)、半凝固金属が金型101間に概ね充填されると、プランジャ41は半凝固金属から受ける力によって減速する。
そこで、第4変形例では、射出制御部93は、プランジャ41の速度が目標速度V1となるように制御を行っている状態において、位置センサ89(速度センサ)からの信号に基づいて、プランジャ41の速度が目標速度V1よりも低い所定の減速開始速度Vs(図7(a))まで低下したことを検知したときに、プランジャ41を減速させる制御を開始する。なお、通電センサ73を設ける必要がないこと、減速制御の開始条件がプランジャ41の速度であることを除いて、第4変形例の構成及び動作は、実施形態と同様でよい。
減速開始速度は、データDTに記憶されており、射出制御部93に参照される。また、減速開始速度は、例えば、ダイカストマシン1の製造者によって設定されてもよいし、オペレータの入力装置51に対する操作に応じて入力設定部99が設定してもよいし、目標速度V1に対して所定の量又は割合で低い速度を制御装置47が自動的に設定してもよい。
(第5変形例)
図10(c)は、第5変形例に係る図8(b)に対応する図であり、プランジャ41の減速を開始するときの制御を模式的に示している。
図7(a)を参照して説明したように、射出制御部93が、プランジャ41が所定の目標速度V1で金型101に向かって前進するように制御を行っている状態においては、半凝固金属が金型101間に概ね充填されると、射出圧力が比較的急激に上昇する。
そこで、第5変形例では、射出制御部93は、プランジャ41の速度が目標速度V1となるように制御を行っている状態において、圧力センサ87(87H及び87Rの組み合わせ、又は87Hのみ)からの信号に基づいて、射出圧力が所定の減速開始圧力Ps(図7(a))まで上昇したことを検知したときに、プランジャ41を減速させる制御を開始する。なお、通電センサ73を設ける必要がないこと、減速制御の開始条件が射出圧力であることを除いて、第5変形例の構成及び動作は、実施形態と同様でよい。
減速開始圧力は、データDTに記憶されており、射出制御部93に参照される。また、減速開始圧力は、例えば、ダイカストマシン1の製造者によって設定されてもよいし、オペレータの入力装置51に対する操作に応じて入力設定部99が設定してもよいし、目標速度V1等に基づいて制御装置47が自動的に設定してもよい。
なお、実施形態(通電判定)、第1変形例(温度判定)、第2変形例(位置判定)及び第3変形例(時間判定)では、半凝固金属(固液共存金属)の金型101内への充填が完了に近づくことによる射出圧力の上昇(図7(a)の時点t2以降の上昇)が生じる前、及び生じ始めた後(例えば直後)のいずれにおいて減速制御が開始されてもよく、好適には、生じる前に減速制御が開始されるように、センサの位置又は判定条件が設定される。
<プレス開始条件の変形例>
実施形態では、図8(c)を参照して説明したように、プレス開始条件(ステップST7)を、温度センサ75の検出温度が所定のプレス開始温度まで低下したこととした。しかし、プレス開始条件は、これ以外にも種々可能である。
例えば、特に図示しないが、プレス用型締制御部95は、適宜な計時開始時点からの経過時間が所定のプレス開始時点に到達したときにプレスを開始してもよい。計時開始時点は、適宜に設定されてよく、例えば、射出開始時点であってもよいし、プランジャ41の減速を開始した時点であってもよいし、プランジャ41が停止した時点であってもよい。プレス開始時点(別の観点では計時開始時点からの経過時間)も適宜に設定されてよく、例えば、プランジャ41が停止すると推測される時点であってもよいし、半凝固金属の粘度がある程度高くなったと推測される時点であってもよい。
計時開始時点及び/又はプレス開始時点は、データDTに保持されており、プレス用型締制御部95に参照される。計時開始時点及び/又はプレス開始時点は、例えば、ダイカストマシン1の製造者によって設定されてもよいし、オペレータの入力装置51に対する操作に応じて入力設定部99が設定してもよいし、適宜な情報に基づいて制御装置47が自動的に設定してもよい。
また、特に図示しないが、減速開始条件に用いた指標をプレス開始条件に用いることもできる。例えば、プレス用型締制御部95は、通電センサ73からの信号に基づいて通電を検知したときにプレスを開始してもよい。なお、この場合の通電センサ73は、減速開始条件の判定に用いられるものと同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、例えば、プレス用型締制御部95は、位置センサ89からの信号に基づいてプランジャ41が所定のプレス開始位置に到達したことを検知したときにプレスを開始してもよい。また、例えば、プレス用型締制御部95は、圧力センサ87(87H及び87Rの組み合わせ、又は87Hのみ)からの信号に基づいて射出圧力が所定のプレス開始圧力まで上昇したことを検知したときにプレスを開始してもよい。
なお、実施形態では、半凝固金属のプレス開始(移動ダイプレート17の移動開始)の時点は、半凝固金属の温度が所定のプレス開始温度まで低下したときとされ、結果として、図7(b)では、半凝固金属が金型101間に概ね充填された後(時点t6の後又はt2の後)にプレスが開始される。ただし、上記の各種の変形例においては、金型101によって半凝固金属をプレスできる限り、実施形態で示したプレス開始時点よりも前であってもよいし、同等であってもよいし、後であってもよい。
例えば、極端な事を言えば、プレス開始時点は、射出開始後(t0後)乃至は射出の中間時点以後(図7(b)の(t2−t0)/2以後)でよく、さらには、射出開始前(t0前)も可能である。ただし、早期にプレスを開始する場合は、射出に対して早期に型接触が生じてしまわないようにプレスの速度を相対的に低くする必要がある。
現実的には、プレス開始の時点は、例えば、プランジャ41の減速開始時点(t6)の直前、減速開始時点からプランジャ41が略停止する時点までの間(t6〜t2)の適宜な時点、プランジャ41が略停止した後(図7(b)のt2の後)の適宜な時期である。
確実に金型101によって半凝固金属をプレスする観点からは、プレス開始時点は、減速開始時点(t6)以後が好ましく、さらに好ましくはプランジャ41の停止時点(図7(b)のt2)以後である。
実施形態及び第1〜第5変形例における減速開始条件と、上述の種々の変形例に係るプレス開始条件とは適宜に組み合わされてよい。例えば、第3〜第5変形例に係る減速開始条件のいずれかと、経過時間(タイマ)、位置センサ89又は圧力センサ87のいずれかを用いるプレス開始条件とを組み合わせることにより、通電センサ73及び温度センサ75を不要としてもよい。
<第2実施形態>
図11は、第2実施形態に係るダイカストマシン201の要部の構成を示す、図1に対応する図である。
第1実施形態では、射出装置9の射出駆動部43は液圧式である。これに対して、第2実施形態では、射出装置209の射出駆動部243は電動式である。それ以外の点については、第2実施形態は、第1実施形態と同様である。
電動式の射出駆動部243は、種々の構成とされてよい。図示の例では、射出駆動部243は、回転式の電動機244と、電動機244の回転を並進運動に変換してプランジャ41に伝達する伝達機構245とを有している。
伝達機構245は、例えば、ねじ機構によって構成されており、ねじ軸245aと、ねじ軸245aに螺合しているナット245bとを有している。ねじ軸245aは、例えば、軸方向の移動が規制されるとともに軸回りの回転が許容され、電動機244の回転が伝達される。ナット245bは、例えば、軸方向の移動が許容されるとともに軸回りの回転が規制され、プランジャ41に連結されている。そして、電動機244によってねじ軸245aが軸回りに回転されると、ナット245bが軸方向へ移動し、ひいては、プランジャ41が前進又は後退する。
ダイカストマシン201の動作は、基本的には、第1実施形態(及びその種々の変形例)と同様である。ただし、電動式であるから、速度制御及び圧力(トルク)制御は、電動機244に供給される電力(直流又は交流)の電流、電圧及び/又は周波数によって制御される。
また、速度フィードバック制御、減速開始条件の判定及び/又はプレス開始条件の判定に関して、位置センサ89に代えて、電動機244のエンコーダ244aが用いられてもよい。なお、エンコーダ244aは、プランジャ41の位置を検出可能な位置センサの一種として捉えられてもよい。エンコーダ244aが速度センサとなり得ることは位置センサ89と同様である。
電動式の射出駆動部243では、圧力センサ87が設けられない。しかし、減速開始条件の判定及び/又はプレス開始条件の判定に関して、射出圧力は、例えば、電動機244が生じているトルクに基づいて特定されてよい。トルクの検出は、例えば、消費電力に基づいて測定されてもよいし、駆動軸と負荷軸との間に生じる変位又は変形を検出することによって測定されてもよい。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、1対の金型101を隙間dで対向させた近接状態で射出を開始し、射出開始後に型締めによってプレスを行うこと、射出の際、プランジャを減速させる制御を行って射出を終了することなどから、第1実施形態と同様の効果が奏される。すなわち、金属組織の緻密化による品質向上が得られ、またバリの発生を抑制できる(別の観点では隙間dを大きくすることができる。)。
また、第2実施形態では、射出装置209が電動式とされている。溶湯を射出する通常の射出装置においては、速やかに溶湯を射出する高速射出を実現するために、射出シリンダと、射出シリンダへ作動液を供給するアキュムレータとを有する構成が採用されることが多く、特に大型のダイカストマシンにおいては射出装置を電動式とすることが難しい。しかし、半凝固金属を前提とするのであれば、本実施形態のような電動式の射出装置209を採用することが容易化される。さらには、ダイカストマシン201の全体を電動式とすることが容易化される。
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、ダイカストマシンは、横型締横射出に限定されず、縦型締めのもの及び/又は縦射出のものであってもよい。ダイカストマシンは、半凝固金属の成形だけでなく、溶湯の成形を行うことができるものであってもよいし、溶湯の成形を行うことができない、固液共存金属の成形に専用のものであってもよい。
型締装置の駆動部は、電動式に限らず、液圧式(油圧式)であってもよい。ただし、正確に所定の隙間で1対の金型を対向させる観点からは、型締装置の駆動部は電動式であることが好ましい。また、型締装置は、トグル式のものに限定されず、いわゆる直圧式のものであってもよいし、型開閉と型締めとが別個の駆動部によって行われるいわゆる複合式のものであってもよい。タイバーは、実施形態とは逆に、移動ダイプレートに固定されて、固体ダイプレートに対して移動可能であってもよい。
射出装置の駆動部は、実施形態においても述べたように、液圧式であってもよいし、電動式であってもよく、さらには、両者を組み合わせたハイブリッド式であってもよい。射出装置の駆動部は、液圧式の場合において、アキュムレータを有していなくてもよい。半凝固金属を成形するだけであれば、高速で射出シリンダを駆動する必要はないことからである。射出装置の駆動部は、電動式の場合において、リニアモータを用いるものであってもよい。また、回転式のモータを用いる場合において、回転を並進運動に変換する機構は、ねじ機構に限定されず、例えば、ラック・ピニオン機構であってもよい。また、ねじ機構を用いる場合において、ねじ軸がプランジャに連結されてナットが回転されてもよい。
型締装置の駆動部の構成と射出装置の駆動部の構成との組み合わせも適宜であり、例えば、双方が電動式とされた全電動式(第2実施形態)とされてもよいし、双方が液圧式とされた全液圧式とされてもよいし、いずれか一方が電動式、他方が液圧式とされたハイブリッド式(例えば第1実施形態)とされてもよい。
プランジャの速度は、その一部又は全部がオープン制御によって制御されてもよい。なお、オープン制御の場合においても、第3変形例のように、所定時点(通常は射出開始)から所定長さの時間が経過したときに減速が開始されてよい。