以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<作業車両(苗移植機)1の全体構成>
図1を参照して実施形態に係る作業車両(苗移植機)1の全体構成について説明する。図1は、実施形態に係る作業車両(苗移植機)1の一例を示す概略左側面図である。なお、以下では、実施形態に係る作業車両1として、圃場を走行しながら圃場の表土面(圃場面)に苗を植え付ける苗移植機を例に説明する。
また、以下の説明において、前後方向とは、作業車両である苗移植機1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定している。苗移植機1の進行方向とは、直進時において、後述する操縦席9からステアリングハンドル10に向かう方向である(図1参照)。
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。以下では、「前」側へ向けて左右を規定している。すなわち、作業者(操縦者ともいう)が操縦席9に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。また、上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。
なお、これらの方向は説明をわかりやすくするために便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、苗移植機1を指して「機体」という場合がある。
図1に示すように、苗移植機1は、圃場を走行可能な走行車体2を備える。走行車体2は、左右一対の前輪3と、左右一対の後輪4とを備える。なお、走行車体2は、たとえば、前輪3および後輪4が駆動する四輪駆動となる。走行車体2の後部には、昇降装置20によって昇降駆動される苗植付部30が設けられる。
走行車体2は、機体フレーム5と、機体フレーム5上に設けられたエンジンEと、エンジンEで発生した動力を駆動輪および苗植付部30に伝達する動力伝達装置6とを備える。すなわち、動力源であるエンジンEで発生した動力は、走行車体2を前進または後進させるために使用されるだけでなく、苗植付部30を駆動するためにも使用される。
エンジンEは、左右方向における走行車体2の中央部で、走行車体2に搭乗した作業者が足を載せるフロアステップ7よりも上方に突出した位置に配置される。なお、エンジンEとしては、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関が用いられる。フロアステップ7は、前後方向において、走行車体2の前部に設けられる。フロアステップ7は、走行車体2の前部からエンジンEの後部にかけて設けられる。
フロアステップ7は、機体フレーム5上に取り付けられる。フロアステップ7のうち、たとえば、後述する操縦席9付近の一部などは作業者の靴などに付着した泥などを圃場に落とせるように、平面視において格子状に形成される。なお、フロアステップ7の後部には、後輪4のフェンダを兼ねるリヤステップが設けられてもよい。
エンジンEは、エンジンカバー8に覆われている。エンジンカバー8の上方には操縦席9が設けられる。動力伝達装置6は、エンジンEから動力が伝達されるベルト式動力伝達部6aと、エンジンEからベルト式動力伝達部を介して伝達される動力を変速する変速装置である油圧式無段変速機と、ミッションケース6bとを備える。
油圧式無段変速機は、たとえば、HST(Hydro Static Transmission)といわれる静油圧式無段変速機である。油圧式無段変速機は、主変速レバーが操作されることで、出力(回転速度)と出力方向(回転方向)とを変更可能である。すなわち、油圧式無段変速機は、回転速度や回転方向を変更することで、走行車体2の前後進や走行速度を変更可能である。
ミッションケース6bには、油圧式無段変速機によって変速されたエンジンEからの動力を各部に伝達する伝動装置が設けられる。ミッションケース6bは、走行時や作業時における走行速度を切り替える副変速機構を備える。ミッションケース6bは、副変速レバーが操作されると、走行車体2の走行速度を、たとえば、植付作業時の走行速度よりも高速な走行速度、植付作業時における苗植付速度などに切り替え可能である。
図1に示すように、走行車体2は、フロアステップ7上に操縦席9を備える。操縦席9は、作業者が操縦時に着席する座席である。走行車体2は、操縦席9の前方に、ステアリングハンドル10や植付レバーなどを備える。ステアリングハンドル10は、走行車体2のボンネット11に設けられ、作業者に操作されることで、走行車体2を操舵するものである。なお、植付レバーは、クラッチレバーであり、ボンネット11に設けられ、苗植付部30を昇降させたり、苗植付部30による苗の植え付けを開始および停止させるために操作するレバーである。
また、走行車体2は、主変速レバーと、副変速レバーとを備える。主変速レバー(HSTレバーともいう)は、走行車体2の前後進および走行速度を変更する場合に操作されるレバーである。副変速レバーは、走行車体2の走行速度を、走行する場所(圃場や路上)に応じた速度に切り替える場合に操作されるレバーである。
また、ボンネット11は、フロアステップ7から上方に突出して設けられ、フロントカバー11aに覆われている。ボンネット11には、たとえば、表示部(メータパネル)が設けられる。表示部は、操縦席9に着席して前方を向いた作業者と対面するように、後下がりに傾斜した表示面を有する。
表示部は、たとえば、圃場面に直進の目安となる進行基準線を形成する後述するマーカ12(図6参照)が走行車体の左右側部に出ていることを検知するマーカセンサ、植付レバーの操作位置を検知する植付レバーポジションセンサ、施肥装置40の貯留ホッパ41に貯留された肥料が所定量を下回ったことを検知する肥料切れセンサ、貯留ホッパ41から送られた肥料が供給経路に詰まったことを検知する肥料詰まりセンサなどの各種センサ類からの情報を表示する。
図1に示すように、苗移植機1は、昇降装置20と、苗植付部30とを備える。昇降装置20は、昇降リンク21を備える。昇降リンク21は、走行車体2の後部と苗植付部30とを連結する平行リンクであり、走行車体2の後部のリンクフレームと苗植付部30とのそれぞれに対して上下方向に回動自在に連結されることで、走行車体2に対して苗植付部30を昇降可能に連結する。
また、昇降装置20は、油圧式の昇降シリンダ22を備える。昇降シリンダ22は、植付レバーが操作されて油圧バルブが切り替えられることで、伸縮動作する。昇降シリンダ22は、伸縮動作することで昇降リンク21を駆動して、苗植付部30を昇降させる。すなわち、昇降シリンダ22は、植付レバーが操作されることで、苗植付部30を上昇させた非作業位置、苗植付部30を下降させた対地作業位置(植付位置)に切り替える。
苗植付部30は、上記したように、昇降リンク21を介して走行車体2の後部に取り付けられる。苗植付部30は、たとえば、複数の列(条)で苗を植え付けることが可能である。苗植付部30は、苗載置台31と、フロート32と、植付装置33とを備える。
苗載置台31は、機体の左右方向において、植付条数分の苗載せ面を有する。各苗載せ面は、上下方向に複数枚のマット苗(土付きマット苗)を載置可能な後下がりの傾斜面である。フロート32は、走行車体2の移動に伴い圃場(水田)の圃場面上を滑走しながら整地する。フロート32は、機体の左右方向において、機体中央部に配置されるセンターフロートと、センターフロートを挟んで左右方向の外側に配置されるサイドフロートとを備える。なお、図示の例では、苗移植機1は、整地装置である整地ロータ13をさらに備える。
フロート32の各フロート(センターフロートおよびサイドフロート)は、圃場面の凹凸に応じて前部が上下動するように、走行車体2に回動自在に取り付けられる。植付装置33は、たとえば、センターフロートの上下動を迎角制御用の回動センサで検知する。苗植付部30では、植付作業時にはセンターフロートの前部の上下動が回動センサによって検知され、回動センサの検知結果に応じて後述する制御部100(図15Aおよび図15B参照)によって昇降シリンダ22の伸縮動作を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部30を昇降させ、苗の植え付け深さを調節することができる。
植付装置33は、苗載置台31の植付支持フレームによって支持されることで、苗載置台31の下方に配置される。植付装置33は、苗載置台31に載置された苗を圃場に植え付ける。植付装置33は、植込杆331と、ロータリーケース332と、植付伝動ケース333とを備える。植込杆331は、苗載置台31に載置されたマット苗から苗をとって圃場面に植え付ける。植込杆331は、植付伝動ケース333に対して回転可能に連結される。
ロータリーケース332は、植込杆331を回転可能に支持するとともに、植付伝動ケース333に対して回転可能に連結される。ロータリーケース332には、植込杆331の回転速度を変化させながら植込杆331を回転させることが可能な不等速伝動機構が設けられる。植込杆331は、ロータリーケース332に対する回転角度によって回転速度を変えながら回転する。植付伝動ケース333は、エンジンEから苗植付部30に伝達された動力を、植込杆331に伝達する。
図1に示すように、苗移植機1は、施肥装置40を備える。施肥装置40は、圃場に肥料を散布する装置である。苗移植機1においては、苗植付部30によって圃場に苗を植え付けながら、施肥装置40によって圃場に肥料を散布する。施肥装置40は、たとえば、走行車体2の後部上方であり操縦席9の後方に設けられる。施肥装置40は、肥料を貯留する貯留ホッパ41を備える。
図1に示すように、苗移植機1は、たとえば、走行車体2の前側における左右いずれか一方または両方の側部に積載部(予備苗載部ともいう)50を備える。積載部50は、複数の積載台51を備える。積載台51は、パレット状であり、一対の側壁511と、底面512(図2B参照)とを備える。積載部50は、複数の積載台51が上下多段となって平面視で重複した積層状態と、複数の積載台51が、たとえば、前後方向に直線状に展開した展開状態とを切り替え可能に構成される。
<積載部50>
次に、図2Aおよび図2Bを参照して積載部50についてさらに説明する。図2Aは、積載部50の積層状態および展開状態を示す概略左側面図である。図2Bは、積載部50の展開時を示す概略平面図である。なお、図2Aには、積載部50の積層状態および展開状態の両方を示している。上記したように、苗移植機1(図1参照)は、走行車体2(図1参照)の前部の左右いずれか一方または両方の側部に、補給用の苗(予備苗)や肥料が入った肥料袋などの作業資材が積載される複数の積載台51(51a,51b)を備える。
図2Aに示すように、積載部50は、上記したように、複数(たとえば、2つ)の積載台51(51a,51b)が上下多段(たとえば、2段)となって重複した積層状態と、積層状態となった積載台51a,51bが直線状に展開した展開状態とが切り替え可能である。ここで、積載部50は、積層状態では、前側の積載台51aが、位置固定された後側の積載台51bの上方に配置される。また、積載部50は、展開状態では、前側の積載台51aが前方に移動して後側の積載台51bの前方に配置される。なお、図2Aおよび図2Bに示す例では、積載部50が前後方向に展開する構成としているが、たとえば、積載部50が左右方向に展開する構成としてもよい。また、積載部50は、たとえば、フロアステップ7から突出した支持軸(鉛直軸)によって回転自在に支持され、作業者の手によって自由に回動させることができる。
積載部50は、積載台51の左右いずれか側部に設けられ、前側の積載台51aと後側の積載台51bとの間を連結するフレーム52を備える。フレーム52は、前後に複数(たとえば、2つ)並んで設けられ、前側の積載台51aが図中の矢線Xで示す方向に回動移動するための回動リンク機構を構成している。
フレーム52は、前側の積載台51aを、後側の積載台51bに対して、積載部50の積層状態と展開状態とで姿勢変更しつつ支持する。すなわち、フレーム52は、積載部50の積層状態と展開状態とで姿勢が変わる。具体的には、フレーム52は、後側の積載台52bに取り付けられ、位置固定された第1支点(固定支点)521を中心に前後方向に向けて回動可能であるとともに、前側の積載台51aに取り付けられ、前後方向に移動する第2支点(移動支点)522を中心に回動可能である。
また、フレーム52は、積載部50の展開状態において、中途から上方に向けて屈曲された形状を有する。このように、フレーム52が積載部50の展開状態で上方に屈曲していることで、フレーム52の剛性を高めることができる。フレーム52の屈曲部から先の部分は、後述する移動補助部53と当接する当接部523となる。
積載部50は、積層状態においては、積載台51a,51bに積載された作業資材(たとえば、マット苗や肥料袋)を積載台51a,51bの底面512上に固定する。また、積載部50は、展開状態においては、積載台51a,51bに積載された作業資材の固定を解除する。ここで、作業資材の固定とは、作業資材が積載台51(51a)上で移動不可となる状態であり、作業資材が積載台51(51a)上に安定して載置されている状態である。作業資材の固定解除とは、作業資材が積載台51(51a)上において移動可能となる状態である。また、積載部50は、積載台51a,51bの底面512上において作業資材を固定解除するとともに作業資材の展開方向の移動を補助するために、移動補助部53を備える。
移動補助部53は、積載台51(たとえば、前側の積載台51a)の底面512に設けられる。移動補助部53は、左右方向に並んだ複数(たとえば、2つ)の移動補助部材であるローラ531を備える。各ローラ531は、回転軸531aの向きが作業資材の搬送方向(積載部50の展開方向であり、たとえば、前後方向)と直交して設けられ、積載台51の底面512において並列に配置される。このように、積載台51の底面512にローラ531が設けられることで、積載台51の底面512上を作業資材が移動する場合に、作業資材の移動(搬送)負荷が低減され、作業資材の円滑な移動が可能となる。なお、複数のローラ531は、回転軸531aと平行な連結軸532により連結される。
また、移動補助部53は、連結軸532の左右の端部のうち、上記したフレーム52が設けられた側の端部(左端部)に積載台51の側方に突出して設けられた突出部533を備える。突出部533には、積載部50の展開状態においてフレーム52の当接部523と当接する場合における移動補助部53側の当接部となる当接ローラ533aが設けられる。また、突出部533は、クランク状に形成され、連結軸532の延長線上から外れて配置される。
ローラ531は、図2Aに示すように、積載部50の積層状態において積載台51の底面512よりも下方に移動する。また、ローラ531は、積載部50の展開状態において積載台51の底面512よりも上方に移動する。具体的には、ローラ531は、積載部50の積層状態では、フレーム52よりも後方にある。この場合、当接ローラ533aがフレーム52の当接部523から離れているため、ローラ531が底面512よりも下方に沈み込んだ状態となる。また、ローラ531は、積載部50の展開状態では、フレーム52の上方にあり、当接ローラ533aがフレーム52の当接部523に当接することで、押し上げられた状態となる。これにより、ローラ531を、作業資材を移動させる積載部50の展開時に自動的に作用させることができる。すなわち、必要なときにローラ531を自動的に作用させることができる。
これまでは、積載台に移動補助用のローラを備えるものは、積載部の積載状態においてローラが突出したままであり、積載台上に作業資材を安定させることが困難であったが、上記したように、ローラ531を収納式とすることで、積載部50の積載状態において積載台51(51a)上に作業資材を固定することができる。一方、積載台に移動補助用のローラを備えないものは、積載部の展開状態において作業資材の移動が円滑でないことがあったが、上記したように、ローラ531を収納式とすることで、積載部50の展開状態において積載台51(51a)の底面512からローラ531が突出するため、作業資材が積載台51(51a)上で安定しなくなり、作業資材を固定解除することができる。
また、ローラ531は、積載部50の積層状態では、積載台51の底面512から突出していないため、作業資材に作用することはない。これにより、積載台51に積載された作業資材の自重により作業資材を底面512上に安定させることができる。すなわち、作業資材を底面512上に固定することができる。
また、ローラ531は、図2Aに示すように、既存のローラから所定距離dだけ前方に配置され、既存のローラと協働することで、積載台51を移動する作業資材に対して連続的に作用するようになる。なお、ローラ531は、既存のローラの250mm程度前方に配置されることが好ましい。
なお、移動補助部53は、移動補助部材として、ローラ531に代えて、たとえば、積載部50の展開方向に延びたスライドピンを備える構成としてもよい。スライドピンにおいても、ローラ531と同様に収納式であり、積載部50の展開時には積載台51の底面512上に突出する。
上記した積載部50によれば、積載部50の積層状態においては、作業資材が積載台51(51a)に固定されるため、機体が作業中であっても積載台51(51a)から作業資材が滑り落ちるのを防止することができる。また、積載部50の展開状態においては、作業資材が固定解除されるため、作業資材の積み込み性が良好となる。すなわち、作業性を向上させることができる。
また、移動補助部53により、積載部50の展開状態において固定解除された作業資材が積載台51上を円滑に移動することができ、作業資材の積み込み性がさらに良好となる。また、移動補助部53により、積載部50の積層状態においては、作業資材が積載台51(51a)に固定されるため、機体が作業中であっても積載台51(51a)から作業資材が滑り落ちるのを防止することができ、積載台51(51a)の展開状態においては、作業資材が固定解除されるため、作業資材の積み込み性が良好となる。すなわち、作業性を向上させることができる。
また、積層状態において移動補助部53が積載台51(51a)の底面512よりも下方に移動することで、作業資材が自重で積載台51(51a)上に安定し、展開状態において移動補助部53が積載台51(51a)の底面512よりも上方に移動することで底面512と作業資材との間に介在して作業資材の移動が補助される。これにより、積層状態においては積載台51(51a)から作業資材が滑り落ちるのを防止することができ、展開状態においては作業資材の積み込み性が良好となる。
また、移動補助部53が、積層状態と展開状態とで姿勢変更するフレーム52によって積載台51(51a)の底面512に対して進退自在となるため、積載部50の状態に応じて移動補助部53を確実に作動させることができる。
また、上記した積載部50では、展開状態から積層状態に可変させる場合に、前側の積載台51aを、積層状態の位置、すなわち、後側の積載台51bの上方に向けて引っ張るアシスト部が設けられる場合がある。アシスト部は、たとえば、前側のフレーム52の途中位置と後側のフレーム52の第1支点(固定支点)521との間をばね部材で接続することで構成される。ばね部材は、積載部50が展開状態では、フレーム52の長手方向に沿って伸長し、積載部50が積層状態になるように移動する前側の積載台51aをアシストする。
<積載部50の変形例>
ここで、図3Aおよび図3Bを参照して積載部50の変形例(積載部50A)について説明する。図3Aは、積載部50の変形例(積載部50A)の積層状態および展開状態を示す概略左側面図である。なお、図3Aには、積載部50Aの積層状態および展開状態の両方を示している。図3Bは、図3AにおけるA部の模式的な拡大斜視図である。
図3Aおよび図3Bに示すように、積載部50Aは、アシスト部54を備える。アシスト部54は、前側のフレーム52の中途位置に設けられたピン541aと、ピン541aにばね部材542を介して接続される後側のフレーム52の第1支点521に設けられたピン541bとを備える。第1支点521に設けられたピン541bは、第1支点521の回転軸の延長線上から外れた(オフセットされた)先端部にばね部材542が接続される。かかる構成によれば、図3Aに示すように、積載部50Aの展開状態で第1支点521に設けられたピン541bの先端部が第1支点521よりも後方に配置され、ばね部材542の付勢力を高めることができる。
なお、ばね部材542は、第1支点521に設けられたピン541bの先端部が第1支点521から側方に離れているため、前側のフレーム52の第1支点521と干渉することはない。また、ばね部材542は、積載部50Aの積層状態では自由長で付勢力が最小となり、積載部50Aの積層状態において付勢力が最大となる。このため、積載部50Aを展開状態から積層状態に可変させる場合に高い付勢力を得ることができる。
<補助積載部56>
次に、図4を参照して補助積載部56について説明する。図4は、補助積載部56を示す概略左側面図である。苗移植機1(図1参照)は、走行車体2(図1参照)の前部左右のうち、たとえば、積載部50(図1参照)とは左右の反対側に肥料袋などの作業資材が積載される補助積載部56を備える場合がある。図4に示すように、補助積載部56は、複数(たとえば、2つ)の補助積載台57を備える。
また、図4に示すように、2つの補助積載台57は、上下2段に積層されるように設けられる。なお、補助積載部56は、下側に配置された補助積載台57の下方に設けられた後述する取付板551に、マーカ12の先端部(水車部)12aを保持するマーカ保持部55(図6参照)を備える。また、図5は、補助積載部56の変形例(補助積載部56A)を示す概略左側面図である。図5に示すように、補助積載部56Aは、3つの補助積載台57が上下3段に積層されるように設けられる。
<マーカ保持部55>
次に、図6を参照してマーカ保持部55について説明する。図6は、マーカ保持部55を示す概略左側面図である。積載部50は、マーカ12の不使用時に、マーカ12の先端部(水車部)12aを保持するマーカ保持部55を備える。マーカ12は、上記したように、圃場面に直進の目安となる進行基準線を形成するために走行車体(図1参照)の左右側部に出退自在に設けられる。また、マーカ12は、走行車体2から延びた基部に対して先端部12aが着脱可能に設けられる。先端部12aは、マーカ12の不使用時には基部から取り外して所定の場所に保管される。
図6に示すように、マーカ保持部55は、後側の積載台の下方に設けられた取付板551に取り付けられたクリップ552と、取付板551に形成された小孔553とを備える。マーカ保持部55は、クリップ552により先端部12aのロッド121を把持するとともに、小孔553にロッド121の直角に屈曲された屈曲部121aが挿通されることで、マーカ12の先端部12aを保持する。
かかる構成によれば、マーカ12の不使用時において先端部12aを機体の一部となる積載部50に保管することができ、マーカ12の先端部12aの紛失を防止することができる。
<拡張ステップ71>
次に、図7A〜図9Bを参照して拡張ステップ71について説明する。図7Aおよび図7Bは、フロアステップ7および拡張ステップ71を示す概略平面図である。なお、図7Aにおいては、拡張ステップ71に斜線を付している。図8は、拡張ステップ71を示す概略斜視図である。図9Aは、フロアステップ7および拡張ステップ71を示す模式的な斜視図である。図9Bは、図9AにおけるB−B線端面図である。図7Aに示すように、フロアステップ7は、走行車体2の前部からエンジンE(図1参照)を収容するエンジンカバー8の後部にかけて設けられる。
図7Aおよび図7Bに示すように、フロアステップ7の前部における左右側部には、図8に示す拡張ステップ(小ステップともいう)71が設けられる。図9Aおよび図9Bに示すように、拡張ステップ71は、フロアステップ7と略同一の面であり、また、ステップ面71aには穴部72が形成される。このように、穴部72が形成されることで、作業者はフロアステップ7上から前輪3(図1参照)などを視認することができる。また、デザイン性も向上する。
また、図7A、図7Bおよび図9Aに示すように、フロアステップ7の左右いずれか一方または両方の側部には、張出部(ワイドステップともいう)73が設けられる。上記した拡張ステップ71は、フロアステップ7の前部と張出部73との間に、これらに挟まれるように配置される。このように、拡張ステップ71がフロアステップ7の前部と張出部73との間に配置されることで、拡張ステップ71が隙間を埋める形となり、また、フロアステップ7全体の面積も拡大するため、安全性が向上する。また、図9Aおよび図9Bに示すように、フロアステップ7の左右の側縁部には、前後方向に連続する突起部74が設けられる。このように、突起部74が設けられることで、すべり止めになることから、安全性が向上する。
ここで、図7Aに示すように、走行車体2後部の左右いずれかの側端部(たとえば、左側端部)には、施肥装置(図1参照)とエアダクトを介して接続されたブロア47が設けられる。ブロア47は、たとえば、エアダクト内の清掃や肥料の排出、その他のメンテナンス時において機体内側に向けて90度程度回動可能に構成される。苗移植機1(図1参照)は、ブロア47を機体内側に向けて回動させる場合に、ブロア47との干渉を避けるために着脱式の手すり75を備える。
<手すり75>
次に、図10〜12を参照して着脱式の手すり75について説明する。図10は、着脱式の手すり75の説明図であり、(a)手すり75の平面図、(b)手すり75の側面図、(c)手すり75の背面図である。図11は、着脱式の手すり75の取付部(張出部73)の説明図である。図12は、着脱式の手すり75の取り付けの説明図である。なお、着脱式の手すり75は、走行車体2(図7A参照)後部の左右のうち、ブロア47が設けられた左側の手すりである。
図10に示すように、着脱式の(左側の)手すり75は、本体部751と、固定部76とを備える。本体部751は、パイプ状の部材であるとともに、直線状のものが折り返すように湾曲された部材である。固定部76は、上部が屈曲された板状の部材であり、本体部751の両端部に、たとえば溶着される。また、固定部76は、穴部761,762を備える。このうち、穴部762は、屈曲された部分に形成される。穴部761,762には、後述するボルトなどの固定具763(図12参照)が挿通される。
図11に示すように、手すり75が取り付けられる取付部は、上記したフロアステップ7(図7Aおよび図7B参照)から外側方に張り出したの張出部73であり、パイプ状の手すり75の両端部の穴752に嵌入されるピン731を備える。そして、図12の右側に示すように、手すり75を取り付ける場合は、張出部73のピン731に手すり75の両端部の穴752を嵌入させて固定部76の穴部761を介して固定具763が取り付けられることで、手すり75は、張出部73に固定される。
また、手すり75は、機体内側に回動させたブロア47の姿勢保持に供することもできる。この場合、図12の左側に示すように、張出部73の取付穴732に対して固定部76の穴部762を介して上方から固定具763が取り付けられることで、手すり75は、両端部の間にブロア47のエアダクトとの接続部を挟み込むように固定される。
このように、着脱式の手すり75によって、ブロア47の回動に対応するために形状を変更する必要もない。なお、手すりの形状を変更すると、左右で形状の異なるものとなるため、デザイン性の低下や部品点数の増加など、種々の問題があるが、着脱式の手すり75では、このような問題が生じることもない。なお、着脱式の手すり75は、ブロア47がない方に設けることも可能である。
なお、図13には、走行車体2後部の左右のうち、ブロア47がない方の手すり77であり、固定式の手すり77を示している。図13は、固定式の手すり77の説明図であり、(a)手すり77の平面図、(b)手すり77の側面図、(c)手すり77の背面図である。この場合、手すり77は、溶接などにより、本体部771が張出部73に固定される。
<積載部50および施肥装置40の他の変形例>
次に、図14を参照して積載部50(50B)および施肥装置40(40B)の他の変形例について説明する。図14は、他の変形例に係る積載部50Bおよび施肥装置40B周辺の説明図である。なお、図14に例示する施肥装置40Bは、走行車体2の左右側部に配置された、いわゆるサイド施肥装置である。
図14に示すように、積載部50Bは、上記した積載部50と同様、複数の積載台51Bが上下多段に重なった積層状態と、複数の積載台51Bが直線状に展開した展開状態とを切り替え可能に構成される。また、積載部50Bの各状態の切り替えは、たとえば、電動アクチュエータによって自動で行われる。積載部50Bは、3つの積載台51Ba,51Bb,51Bcを備える。
積載部50Bの積層状態において、中央部に位置する積載台(中央積載台という)51Baは、積層状態および展開状態で位置が固定され、中央積載台51Baの下方に位置する積載台(前側積載台という)51Bbは、展開する場合には、図中の矢線Y1で示すように、前方に移動し、中央積載台51Baの上方に位置する積載台(後側積載台という)51Bcは、展開する場合には、図中の矢線Y2で示すように、後方に移動する。前側積載台51Bbおよび後側積載台51Bcは、中央積載台51Baに対してそれぞれフレーム52により構成される回動リンク機構を介して連結される。また、前側積載台51Bbは、上下複数段(2段)となった積載台により構成される。
かかる構成によれば、積載部50Bの積層状態において位置固定された中央積載台51Baの下方に位置する前側積載台51Bbが、展開する場合には前方に移動するため、たとえば、図14に示すように、展開時の移動途中で機体後部に設けられたブロア14と干渉するのを防止することができる。また、前側積載台51Bbは、展開状態から積層状態に可変する場合には下方に向けて移動するため、たとえば、電動アクチュエータにかかる負荷が低減される。また、前側積載台51Bbは、複数(2つ)の積載台により構成されるため、作業資材の補給量を増やすことができる。
また、図14に示すように、積載部50Bの各積載台51Bは、前方から後方にかけて上り傾斜している。この場合、積載部50Bの展開状態で後部に配置される後側積載台51Bcは、施肥装置40Bの貯留ホッパ41の蓋部42よりも前方に位置し、かつ、走行車体2の両側部に設けられた手すり15(図12に示すような手すり77でもよい)よりも上方に位置する。すなわち、積載部50Bは、展開状態において後方よりも前方が低いことから、作業資材の供給位置が下がり、供給性が向上する。また、後側積載台51Bcが貯留ホッパ41の蓋部42と干渉しなくなり、たとえば、積載部50Bの展開状態でも蓋部42を開けることができる。また、後側積載台51Bcが手すり15とも干渉しないため、作業資材を受け取る場合に手すり15に妨げられることもない。また、施肥装置40Bの貯留ホッパ41の前方に、図7Aに示すような回動式のブロア47とは異なるブロア14が配置された設計であっても、積載部50Bを展開することができる。
また、積載部50Bの展開状態では、機体の後方視において積載台51Bの下方における積載台51Bの左右の幅内に少なくとも施肥装置40Bの貯留ホッパ41およびブロア14が収まるように配置される。これにより、機体幅を抑えることができ、たとえば、軽トラックなどの輸送車に機体を積載することが可能となる。
<施肥装置40に関連する制御>
次に、図14、図15Aおよび図15Bを参照して制御部100による施肥装置40(40B)に関連する制御について説明する。図15Aおよび図15Bは、制御部100による報知制御に関する各部を示すブロック図である。図14に示すように、施肥装置40Bの貯留ホッパ41の蓋部42には、超音波センサなどの粉体センサ101が設けられる。粉体センサ101は、貯留ホッパ41内の肥料(粉体)を検知する。粉体センサ101は、肥料を繰り出す繰出部43の上方に配置される。また、繰出部43の繰出シャフト44には、繰出シャフト44の回転を検知する繰出シャフト回転センサ103が設けられる。
図15Aに示すように、施肥装置40B(図14参照)に関連する制御においては、施肥装置40Bにおける施肥不良、および各部におけるその他の不良が発生した場合に、制御部100により、報知部150に報知させる。図15Aに示すように、制御部100には、粉体センサ101、肥料高さセンサ102、繰出シャフト回転センサ103、植付レバーポジションセンサ104および畦クラッチレバーポジションセンサ105などが接続される。また、制御部100には、報知部150が接続される。なお、報知部150は、ランプ151やブザー152(図15B参照)を備える構成としてもよい。
制御部100は、粉体センサ101から肥料の減少を検知した信号が入力されると、報知部150に信号を出力する。報知部150は、「肥料トラブル」を報知する。この場合、繰出部43では、肥料が減少すると肥料の上面が凹状となる。上記したように、粉体センサ101が肥料の繰出部43の上方にあることで、肥料の上面が凹状となったことを検知することができ、貯留ホッパ41内で肥料が減少している状況を最短となる時間で検知することが可能となる。
また、制御部100は、圃場での作業中における機体の旋回後に肥料高さセンサ102による植付「入」時の肥料高さの検知信号が入力されるとともに、繰出シャフト回転センサ103による繰出シャフト44(図14参照)の回転検知信号が入力され、これらの検知信号に基づいて、肥料高さの下降が停止した場合、または、肥料高さの下降量が所定量よりも少ない場合に、報知部150に信号を出力する。報知部150は、「肥料トラブル」を報知する。また、制御部100は、かかる制御を植え付けの1工程ごとに行う。植え付け工程では、畦際において肥料を補給するため、肥料補給後から肥料の減少を検知することができ、肥料の減少を正確に把握することができる。また、制御部100は、肥料高さセンサ102が肥料補給による肥料高さの増加を検知した場合には、植付「入」で繰出シャフト44が回転した状態で、新たに肥料高さを検知し、上記制御を継続する。これにより、肥料の繰り出し再開時の肥料高さを開始時として肥料の減少を監視することができる。
また、制御部100は、畦クラッチレバーポジションセンサ105により畦クラッチレバーが操作されたことが検知された場合に、たとえば、2条単位の肥料が減少していないことが検知されると、報知部150に信号を出力しない。すなわち、「肥料トラブル」の報知は行わない。また、制御部100は、畦クラッチレバーポジションセンサ105により畦クラッチレバーが元に戻されたことが検知された場合に、その条に対応する肥料が減少していないことが検知されると、報知部150に信号を出力する。すなわち、「肥料トラブル」の報知を行う。これにより、たとえば、1条クラッチ使用後の戻し忘れを防止することができる。
図15Bに示すように、制御部100には、後輪回転センサ106、センターフロートポジションセンサ107、植付深さレバーポジションセンサ108および油圧感度センサ109などが接続される。また、制御部100には、報知部150が接続される。報知部150は、ランプ151やブザー152を備える。制御部100は、後輪回転センサ106(およびバック感知スイッチなど)により機体の後進を検知した信号が入力され、センターフロートポジションセンサ107によりセンターフロート32(図14参照)が圃場面に接地したことを検知した信号が入力されると、報知部150に信号を出力する。報知部150は、たとえば、肥料詰まりを知らせるランプ151およびブザー152で報知する。なお、制御部100は、たとえば、ブザー停止スイッチの操作や、植え付け開始、キーオフのいずれかが検知された場合に報知部150に報知を終了させる信号を出力する。この場合、たとえば、機体の後進により作溝機に泥が詰まったことを知らせることで、肥料詰まりを防止することができる。
また、制御部100は、植付深さレバーポジションセンサ108により検知された植付深さレバーの「浅い」から「深い」までの位置に応じて、報知部150に信号を出力するとともに、センターフロート32(図14参照)の位置を「敏感」から「鈍感」のいずれかになるよう制御する。この場合、制御部100は、センターフロート32の位置が下がる場合(すなわち、浅い場合)はその位置を「敏感」に、センターフロート32の位置が上がる場合(すなわち、深い場合)はその位置を「鈍感」になるよう制御する。このように、制御部100は、最適な切り替え制御を行うことができる。
また、制御部100は、油圧感度センサ109により検知された油圧感度の「敏感」から「鈍感」までの位置に応じて、報知部150に信号を出力するとともに、センターフロート32(図14参照)の位置を「敏感」から「鈍感」のいずれかになるよう制御する。この場合、制御部100は、油圧感度の位置が「敏感」の圃場では表土が軟らかく作溝機に泥が詰まりにくいため、センターフロート32の位置を「鈍感」に、油圧感度の位置が「鈍感」の圃場では表土が硬く作溝機に泥が詰まりやすいため、センターフロート32の位置を「敏感」になるよう制御する。このように、制御部100は、最適な切り替え制御を行うことができる。
また、制御部100は、後輪回転センサ106が、油圧感度の位置が「鈍感」ほど少ないカウント数で機体の後進を検知するように設定し、後輪回転センサ106により機体の後進を検知した信号が入力され、センターフロートポジションセンサ107によりセンターフロート32(図14参照)が圃場面に接地したことを検知した信号が入力されると、報知部150に信号を出力する。また、制御部100は、植付深さレバーポジションセンサ108が、植付深さレバーの位置が「深い」ほど少ないカウント数で機体の後進を検知するように設定し、後輪回転センサ106により機体の後進を検知した信号が入力され、センターフロートポジションセンサ107によりセンターフロート32が圃場面に接地したことを検知した信号が入力されると、報知部150に信号を出力する。このように、作溝機に泥が詰まりやすい条件では、より少ない移動距離で機体の後進を検知することで、泥の詰まりを防ぐことができる。
また、図14に示すように、苗植付部30の苗載置台31の前方に、たとえば、前方および上方が泥除け用のカバーによって覆われたカメラなどの画像認識装置を設け、画像認識装置により撮像された画像に基づいて肥料の溢れを認識する構成としてもよい。この場合、苗載置台31の昇降時の上下スライドの動力により回動する手段を設け、図15Bに示すように、制御部100は、画像認識装置の画像により施肥ホース45から肥料の溢れを検知すると、報知部150に信号を出力する。報知部150は、ランプ151やブザー152により肥料溢れを報知する。すなわち、1つの装置(苗植付部30)が作動することで、広範囲の施肥ホース45の状況を把握して肥料の溢れを検知した場合には報知する。
また、図14に示すように、たとえば、全条の施肥ホース45を保持するパイプ部に肥料の重量を検知する重量検知部46を設け、制御部100は、走行車体2が植付状態で圃場を走行している場合に重量検知部46により施肥ホース45内の肥料の重量が増加を続けていることが検知された場合、肥料詰まりを検知する。これにより、施肥ホース45内に溜まった肥料を検知して、肥料詰まりを、たとえば無人の状況でも検知することができる。
<後輪4のスイング規制構造(スイング規制部60)>
次に、図16Aおよび図16Bを参照して後輪4のスイング規制構造(スイング規制部60)について説明する。図16Aおよび図16Bは、後輪4のスイング規制構造(スイング規制部60)の説明図である。なお、図8Aは、スイング規制構造(スイング規制部60)の模式的な図であり、走行車体2を後方から見た図(背面図)である。図16Bは、後輪4とその周辺の概略左側面図である。
図16Aに示すように、スイング規制部60は、左右の後輪4(4L,4R)の所定角度(たとえば、20度)以上の上下動(スイングという)を規制するものである。スイング規制部60は、振子ウエイト61と、スイングロックプレート62と、ケーブル63とを備える。振子ウエイト61は、後輪4の車軸4a上の中央部に、図中の矢線Zで示すように、左右方向に揺動可能に設けられる。振子ウエイト61は、左右の後輪4L,4Rのスイングによる機体の左右方向の傾きに応じて支点61aを中心として左右に揺動する。スイングロックプレート62(62L,62R)は、車軸4aの左右両端部であり左右の後輪4L,4Rよりも内側において、車軸4aに連結される。
図16Bに示すように、スイングロックプレート62には、上下に並んで複数(2つ)の小孔62aが形成される。また、図16Aに示すように、ケーブル63(63L,63R)は、振子ウエイト61とスイングロックプレート62(62L,62R)との間に設けられ、振子ウエイト61とスイングロックプレート62(62L,62R)とを接続している。スイング規制部60は、振子ウエイト61が、たとえば、左右の後輪4L,4Rのうち左後輪4Lが上がり右後輪4Rが下がるようなスイングの場合には、右後輪4R側に寄り支点61a側が左方に移動する。これに伴い、右後輪4Rに接続されたケーブル63Rが上方に引っ張られ、右後輪4Rが引き上げられる。このように、左右の後輪4L,4Rの上下のスイング量を少なくすることで、左右の後輪4L,4Rを規制することができ、機体移動時の転倒角を自動的に改善することができる。
なお、上記したスイング規制部60では、振子ウエイト61が機体後部に設けられているが、たとえば、振子ウエイト61が機体前部に設けられてもよい。かかる構成とすれば、振子ウエイト61がバランスウエイトの代わりとなり、部品点数を減らすことができる。また、スイング規制部60を苗植付部30(図1参照)の上昇時に作用させるように構成してもよい。かかる構成とすることで、苗植付部30が上昇している状態、すなわち、機体バランスが悪い状態でスイング規制部60が作用するため、より効果的に転倒角を改善することができる。
<密播苗用の苗取口80およびスペーサ90>
次に、図17A〜図18Cを参照して密播苗用の苗取口80について説明する。図17Aは、密播苗用の苗取口80およびスペーサ90を示す概略左側面(一部断面)図である。図17Bは、密播苗用の苗取口80およびスペーサ90を示す概略背面図である。図18Aは、密播苗用の苗取口80およびスペーサ90を示す概略左側面図である。図18Bは、密播苗用の苗取口80およびスペーサ90を示す概略平面図である。図18Cは、密播苗用の苗取口80およびスペーサ90を示す概略背面図である。
ここで、密播苗を植え付ける場合、慣行苗用の苗取口から苗取口の上下の幅と奥行きを狭めた密播苗用の苗取口に付け替える必要がある。この場合、ボルトなどの締結部材を外して苗取口を付け替えるため、手間がかかる。また、たとえば、圃場ごとに密播苗と慣行苗とを分けたい場合には苗取口を頻繁に付け替える必要がある。このため、本実施形態においては、図17Aおよび図17Bに示すように、スペーサ90を用いて苗取口80の上下の幅と奥行きを調節することで、慣行苗用と密播苗用とを変更可能とする。
図17Aおよび図17Bに示すように、慣行苗用の苗取口80の上部には、スペーサ90がが取り付けられる。これにより、苗取口80の上下の幅と奥行きが狭まり、密播苗用の苗取口80を形成することができる。これにより、スペーサ90を取り付けるまたは取り外すだけで密播苗用と慣行苗用とを変更することができ、苗取口80を付け替える必要がなくなり、手間を省くことができる。
図18A、図18Bおよび図18Cに示すように、スペーサ90は、係合部91と、垂板部92とを備える。係合部91は、フック91aを備える。フック91aは、図18Bに示すように、苗取口80の上面81に形成された穴部82に嵌り込む。フック91aは、手前側に押し返されているため、穴部82に引っ掛かり抜け止めとなる。係合部91は、上下のプレートで上面を挟み込みつつ、下プレートに設けられたフック91aが穴部82に嵌り込むことで、苗取口80と係合される。
また、係合部91は、上下のプレートが奥行き方向に向けて広がるように形成される。これにより、スペーサ90の取り付けが容易となる。
垂板部92は、たとえば、板ばねであり、弾性を有する。垂板部92は、スペーサ90が苗取口80に取り付けられた状態で下方に延出している。また、垂板部92は、先端部(下端部)が奥行き方向に屈曲されている。
また、図18Aに示すように、苗取口80に開口部83が設けられることで、たとえば、スペーサ90を取り外す場合にドライバなどの工具を開口部83に挿入すればスペーサ90を容易に取り外すことができる。
図19Aは、密播苗用の苗取口80およびスペーサの変形例(スペーサ90A)を示す概略左側面図である。図19Bは、密播苗用の苗取口80およびスペーサの変形例(スペーサ90A)を示す概略平面図である。図19Cは、密播苗用の苗取口80およびスペーサの変形例(スペーサ90A)を示す概略背面図である。
図19A、図19Bおよび図19Cに示すように、変形例に係るスペーサ90Aは、係合部91Aと、垂板部92Aとを備える。係合部91Aは、フック91Aaを備える。フック91Aaは、図19Bに示すように、苗取口80の上面81に形成された穴部82に嵌り込む。なお、フック91Aaは、図19Bに示すように、コ字状に形成されることで、剛性を高めている。
垂板部92Aは、たとえば、板ばねであり、弾性を有する。垂板部92Aは、スペーサ90Aが苗取口80に取り付けられた状態で下方に延出している。また、垂板部92Aは、先端部(下端部)が奥行き方向に屈曲されている。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。