以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係る一実施の形態の苗移植機の側面図、図2は、同苗移植機の平面図である。図3は、本発明に係る一実施の形態の苗移植機の部分側面図であって、重複状態の予備苗載置部を実線で、展開状態の予備苗載置部を2点鎖線で示す。図4は、同苗移植機の部分平面図であって、予備苗載置部が展開状態になっている状態を示す。図5は、同苗移植機の部分正面図であって、予備苗載置部が重複状態になっている状態を示す。
なお、本明細書においては、前後、左右の方向基準は、運転席からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。
図1、図2、図3、図4、図5に示すように、車体の運転部1におけるフロア2の後部には運転座席3が備えられている。エンジンを覆うボンネット4がフロア2の前方に備えられており、このボンネット4の上部に、前輪5を操向操作する操縦ハンドル6が備えられている。フロア2の両横外側には、右及び左の補助ステップ7、7が備えられている。以後車体の左側を中心に説明する。なお、図1、図2において、61は車体の後ろ側に取り付けられた植え付け部、62は後輪、63は施肥部である。
図3及び図5に示すように、補助ステップ7の横側には、予備苗載台83u、83m、83d…等から構成される予備苗載置部8を支持する第1の支持フレーム9が取り付けられている。具体的には、第1の支持フレーム9は、その下端部9aが屈曲しており、その屈曲部が補助ステップ7の下側に回り込み、車体フレームのブラケット100に固定されており、他方、第1の支持フレーム9の上方部はほぼ垂直に立設している。
また、さらに、第2の支持フレーム110の屈曲した下端部110aが車体フレームのブラケット100に固定され、その上方部は図3に示すように、少し前方に傾斜して立設している。なお、図5においては、第2の支持フレーム110の上方部は図示省略している。従って、図5においては第1の支持フレーム9が主に見えている。また、図4においては第1、第2の支持フレーム9、110は図示省略している。なお、第1の支持フレーム9は本発明の支持部材に対応する。
図6は、予備苗載置部8を示す斜視図であり、説明を分かり易くするため一部簡略化して描いた図である。
図3乃至図6に示すように、第1の支持フレーム9の上端部9bには、左方向に突出するブラケット12が取り付けられている。そのブラケット12の先端部12aの前後両面に、それぞれ前後方向に伸びた角形ステム80、80が固定されている。そして、ブラケット12の先端部12aの上面と、2つの角形ステム80、80の各上面には、コの字状の中段丸形パイプ81mの中央部81m0が固定されている。コの字上の中段丸形パイプ82mは上記ブラケット12の先端部12aを基準として少し前方寄りに固定されている。
さらに、第1支持フレーム9の上端部9bとブラケット12の先端12aの間に、さらに一対の角形ステム82、82が固定されている。すなわち、ブラケット12の前後側面にそれぞれ角形ステム82、82が前後方向に固定されている。
これら第1の支持フレーム9と、ブラケット12と、角形ステム80、82とは、本発明の支持部材に対応する。
中段丸形パイプ81mはコの字型に屈曲しており、さらに、その途中にも2本のパイプ81m1、81m1が固定され、これらパイプ81mの上に、中段の固定予備苗載台83mが固定され、保持されている。なお、第2の支持フレーム110の上端部110bもこの中段丸形パイプ81mに固定されている。
さらに、前側に位置し互いに対向する角形ステム80と角形ステム82のそれぞれの先端80a,82aには回動軸89aが回動可能に取り付けられている。同様に、後側に位置し互いに対向する角形ステム80と角形ステム82のそれぞれの先端80b,82bには回動軸89bが回動可能に取り付けられている。これら回動軸89a、89bが本発明の支持部材の所定の支点に対応する。
この回動軸89a、89bには、変形可能なほぼ平行四辺形状のリンク部材84が固定されて、リンク部材84は回動可能となっている。
この平行四辺形状のリンク部材84は、縦長の前側辺部84aと、縦長の後側辺部84bと、短い長さの上側辺部辺84cと、短い長さの下側辺部84dとで構成される。ここで本発明の「リンク部材」はこの平行四辺形の縦長の前側辺部84aと、縦長の後側辺部84bに対応し、本発明の「リンク補助部材」は、短い長さの上側辺部辺84cと後述する短尺ロッド85aの組合せ、あるいは、短い長さの下側辺部84dと後述する短尺ロッド85bの組合せに対応する。
前側辺部84aと後側辺部84bは、上述した一対の角形ステム80、80と、他の一対の角形ステム82、82との間の隙間に、回動可能なだけのスペースをもって配置されている。
さらに、前側辺部84aの中央部84a0は回動軸89aに固定され、後側辺部84bの中央部84b0は、回動軸89bにおいて固定されている。この前側辺部84aにおいて、その中央部84a0より上の部分は、本発明のリンク部材の一方部分に対応し、その中央部84a0より下の部分は、本発明のリンク部材の他方部分に対応する。
また、上側辺部84cの前側端84c1は、前側辺部84aの上端84a1と回動軸84a3で回動自在に連結されている。上側辺部84cの後側端84c2は、後側辺部84bの上端84b1と回動軸84b3で回動自在に連結されている。この前側辺部84aの上端84a1や後側辺部84bの上端84b1は、本発明のリンク部材の先端に対応する。
下側辺部84dの前側端84d1は、前側辺部84aの下端84a2と回動軸84a4で回動自在に連結されている。下側辺部84dの後側端84d2は、後側辺部84bの下端84b2と回動軸84b4で回動自在に連結されている。この前側辺部84aの下端84a2や後側辺部84bの下端84b2も、本発明のリンク部材の先端に対応する。
なお、上側辺部84cと下側辺部84dは、前側辺部84aや後側辺部84bに対して、左側、すなわち、予備苗載台83が存在する側で、回動自在に連結されている。従って、上側辺部84cと下側辺部84dとは、本実施の形態では、上記角形ステム80、80や丸形パイプ81mの中央部81m0と、ほぼ同じ垂直面上に配置されていることになる。
さらに、上側辺部84cの前側端84c1の近傍位置の下面84c3からは上側短尺ロッド85aが下向きに立設している。また、下側辺部84dの前側端84d1の近傍位置の上面84d3には、下側短尺ロッド85bが上向きに立設している。
上側短尺ロッド85aの下端85a1には、コの字状の上段丸形パイプ81uがその後ろ寄りの位置81u1(図4参照)で固定されている。この上段丸形パイプ81uの構造と、それに保持された、可動な上段予備苗載台83uの構造は、上述した中段の丸形パイプ81mの構造と、中段の固定予備苗載台83mの構造と同じである。この上側短尺ロッド85aの下端85a1は本発明のリンク補助部材の他端に対応する。
他方、下側短尺ロッド85bの上端85b1には、コの字状の下段丸形パイプ81dがその前寄りの位置81d1(図4参照)で固定されている。この下段丸形パイプ81dの構造と、それに保持された、可動な下段予備苗載台83dの構造は、上述した中段の丸形パイプ81mの構造と、中段の固定予備苗載台83mの構造と同じである。この下側短尺ロッド85bの上端85b1も本発明のリンク補助部材の他端に対応する。
なお、上側短尺ロッド85aの上にはハンドル86が上向きに取り付けられ、この平行四辺形のリンク部材84を操作しやすくしている。
次に、上述した予備苗載置部8の動作を説明する。
図7は、上段予備苗載台83uと、中段の固定予備苗載台83mと、下段の予備苗載台83dとが、縦方向に重複配置された状態を示す模式側面図である。平行四辺形リンク部材84はやや後方に縮んだ状態である。図8は上段予備苗載台83uと、中段の固定予備苗載台83mと、下段の予備苗載台83dとが、ほぼ水平方向に展開配置された状態を示す模式側面図である。平行四辺形リンク部材84は前方に向かって大きく縮んだ状態である。
平行四辺形のリンク部材84は、上述のとおり、それぞれの4隅(84a3、84b3、84a4、84d4)で回動自在に変形出来るようになっており、長尺の前側辺部84aと後側辺部84bのそれぞれの中央部84a0、84b0は、上述した一対の角形ステム80、82及び一対の角形ステム80、82によって、回動軸89a、89bによって回動自在となっているので、上側辺部84cと下側辺部84dとは、回動する間ほぼ水平状態を維持する。
その結果、その上側辺部84cと下側辺部84dとに固定された、上側短尺ロッド85aと、下側短尺ロッド85bは、回動する間、それぞれほぼ垂直方向の姿勢を維持する。その結果、上側短尺ロッド85aの下端85a1に固定されている、上段丸形パイプ81uと、それに保持された上段予備苗載台83uも、回動する間、ほぼ水平状態を維持する。同様に、下側短尺ロッド85bの上端85b1に固定されている、下段丸形パイプ81dと、それに保持された下段予備苗載台83dも、回動する間、ほぼ水平状態を維持する。
図9(a)は、そのような予備苗載置部8の重複状態から展開状態に到る途中の状態を示す側面図である。前側辺部84aの上端84a1、下端84a2は、軌跡L10を描いて移動すると共に、後側辺部84bの上端84b1、下端84b2は、軌跡L20を描いて移動する。なお、(b)は部分平面図、(c)は部分正面図を併せて描いている。
その場合、上段の予備苗載台83uの最上昇位置は、該上段の予備苗載台83uが固定されている、上側短尺ロッド85aが最上昇位置に来たときであり、そして上側短尺ロッド85aの最上昇位置は、該上側短尺ロッド85aが固定されている上側辺部84cが最上昇位置に来た場合であるから、結局、図9の実線に描かれているとおり、平行四辺形リンク部材84が縦に矩形状になった場合に、上段の予備苗載台83uが最も上昇位置に来たことになる。
同様に、下段の予備苗載台83dの最下降位置は、該下段の予備苗載台83dが固定されている、下側短尺ロッド85bが最下降位置に来たときであり、そして下側短尺ロッド85bの最下降位置は、下側短尺ロッド85bが固定されている下側辺部84dが最下降位置に来た場合であるから、結局、図9の実線に描かれているとおり、平行四辺形リンク部材84が縦に矩形状になった場合に、下段の予備苗載台83dが最も下降位置に来たことになる。
このそれぞれの予備苗載台83uと予備苗載台83dが、最上昇位置と最下降位置に存在する場合、前側辺部84の上端84a1が存在する位置に比べて、上段予備苗載台83uの位置はほぼ上側短尺ロッド85aの長さだけ低い位置に存在することになる。従って、従来の予備苗載置部では前側辺部の上端位置まで上段予備苗載台がほぼ上昇していた場合に比べて格段に最上昇位置は低くなっている。
また、同様に、前側辺部84の下端84a2が存在する位置に比べて、下段予備苗載台83dの位置はほぼ下側短尺ロッド85bの長さだけ高い位置に存在することになる。従って、従来の予備苗載置部では前側辺部の下端位置まで下段予備苗載台がほぼ下降していた場合に比べて格段に最下降位置は高くなっている。
その結果、本実施の形態によれば、上段予備苗載台83uの通る上方空間が低くなり、相対的に他の部材などを配置出来る有効空間が上方で広くなる。また、下段予備苗載台83dの通る下方空間が高くあがるので、相対的に他の部材などを配置出来る有効空間が下方で広くなる。
このように有効空間が広がるにもかかわらず、本実施の形態では展開状態において、上段あるいは下段の予備苗載台をより遠くへ運ぶことが出来、大きな苗を載置出来るという優れた効果は維持している。すなわち、例えば展開状態においては、上段予備苗載台83uは前側辺部84aの上端84a1に直接取り付けられたとほぼ同じ遠い前方位置まで運ばれており、下段の予備苗載台83dについても、後側辺部84bの下端84b2に直接取り付けられたのとほぼ同じ遠い位置まで運ばれる。
図10は本実施の形態においては、重複状態と展開状態との間での切り換え動作が安定して行われることを説明するための図面である。
すなわち、図10において、Mは、中段の固定補助苗載台83mの縦中央線を示し、Nは、平行四辺形リンク部材84のリンク中央、すなわち、2つの回動軸89a、89bの中央を通る縦中央線を示す。
図10から分かるように、双方の中央線は互いにずれている。その結果、上段の予備苗載台83uの重さによって引き起こされる反時計回り方向への回転モーメントと、下段の予備苗載台83dの重さによって引き起こされる時計回り方向への回転モーメントとが釣り合わず、図の例では、上段の予備苗載台83uの方の反時計方向の回転モーメントの方が大きいので、例えば、重複状態から展開状態に切り換える際、ハンドル86で上段の予備苗載台83uを最上昇位置にまで引き上げた後は手を離しても自然に展開状態に落ち着く。
逆に展開状態から重複状態に切り換える際、ハンドル86で上段の予備苗載台83uを最上昇位置にまで引き上げた後は手を離しても自然に重複状態に落ち着く。
その結果、ハンドル86で予備苗載台83uを移動させる途中で手を離しても、そのまま中途半端な状態で停止する心配が無い。あるいは、重複状態あるいは展開状態にあるこれらの予備苗載台83u、83m、83dが機械振動で動き出すような心配も無い。これに比べて、従来の予備苗載置部はそれらの予備苗載台の機構がバランスを取れているため、重複状態と展開状態との切り換え時には、手を離すと途中でバランスがとれて停止してしまい安定しない。あるいは重複状態又は展開状態に落ち着いていても、何らかの機械振動があると予備苗載台が動き出すことさえあり得る。本発明によればそのような心配は無い。
なお、このようなアンバランスを故意に実現することによって、ハンドル86で移動させる際バランスがある場合に比べて多少は余分な力が必要になるが、上段予備苗台83uと下段予備苗台83dは連結されているのでこの余分な力は少なくてすむ。
なお、上側短尺ロッド85aが上側辺部84cの前側端84c1の近傍位置に固定されているのに対して、下側短尺ロッド85bが下側辺部84dの前側端84d1の近傍位置に固定されているので、上段の予備苗載台83uの回転モーメントと、下段の予備苗載台83dの回転モーメントにアンバランスをもたらしているともいえる。
なお、このようなアンバランスをもたらす機構としては、上段と下段の予備苗載台の重量に差異をつけるなど、他の機構も可能である。
また、以上の実施の形態では3段タイプの予備苗載置部について説明したが、これに限らず、可動な上段の予備苗載台と中段の固定予備苗載台だけ、あるいは中段の固定予備苗載台と可動な下段の予備苗載台だけといった、2段タイプの予備苗載置部も本発明の適用範囲である。なお、その場合、本発明の平行四辺形とは、上述した前側辺部84aの半分と後側辺部84bの半分と、上側辺部84cと、角形ステム80,80,82,82とが構成する平行四辺形に対応することになる。
さらには、5段タイプなど他の段数タイプの予備苗載台部でも本発明は適用可能である。
ただし、上述した回転モーメントのアンバランスを利用する場合は、上段側の予備苗載台と、下段側の予備苗載台の数が同数の場合の実施の形態に限られる。
なお、本実施の形態では平行四辺形の部材を利用しているが、本発明は必ずしもこれに限定されず、例えば、前側辺部84aだけのリンク部材であっても、その先端にリンク補助部材である短尺ロッド85aを直接回動可能に取り付け、その下端に上段の予備苗載台83uを固定し、さらに、前側辺部84aの回動に合わせて、チェーンや歯車機構などの手段により、短尺ロッド85aの回動角度を制御することによって、本発明の効果を奏することも可能である。
次に、予備苗載置部の変形例について説明する。
図11は、その変形例の予備苗載置部11における、上段の予備苗載台10uと、中段の固定予備苗載台10mと、下段の予備苗載台10dが重複状態になっている斜視図である。図12はこのように重複状態になっている状態から展開状態に移動する状態を示す模式図である。図13は展開状態において、複数枚の苗が載せられた状態を示す一部省略側面図である。
図11〜図13において、上段の予備苗載台10uは、苗載置面10u1と、左右側に設けられ、苗が滑り落ちるのを防止するための横ストッパー10u2と、後側に回動可能に取り付けられた後ストッパー10u3と、前側に設けられた、本発明の延長部材である前ストッパー10u4とを備える。この後ストッパー10u3は、苗載置面10u1の後端縁の左側に偏って取り付けられている。
また、前ストッパー10u4は、図に示すように、上端部が前方向に傾斜し、下端部が苗載置面10u1の前端縁に取り付けられた、断面「へ」の字状の屈曲した部材である。その高さは他のストッパーの高さより少し高くなっている。その大きさは、幅は60〜80cmで、長さは、図13に示すように、後述するスペースSの長さと前ストッパー10u4の前後方向長さとの和L12が、少なくとも苗の長さの半分以上で3分の2程度になるような長さが望ましい。
また、中段の予備苗載台10mは、苗載置面10m1と、左右側に設けられ、苗が滑り落ちるのを防止するための横ストッパー10m2と、後側に回動可能に取り付けられた後ストッパー10m3と、前側に設けられた、前ストッパー10m4とを備える。この後ストッパー10m3は、苗載置面10m1の後端縁の左側に偏って取り付けられている。また、前ストッパー10m4は、苗載置面10m1の前端縁の右側に偏って取り付けられている。
また、下段の予備苗載台10dは、苗載置面10d1と、左右側に設けられ、苗が滑り落ちるのを防止するための横ストッパー10d2と、後側に取り付けられた後ストッパー10d3と、前側に設けられた、前ストッパー10d4とを備える。この後ストッパー10d3は、苗載置面10d1の後端縁の真ん中に取り付けられている。
また、前ストッパー10d4は、苗載置面10d1の前端縁の右側に偏って取り付けられている。
このような予備苗載置部11は、図12に示すように、平行四辺形リンク部材84が回動することによって、重複状態から展開状態となる。その際、上段の予備苗載台10uの後ストッパー10u3と、中段の予備苗載台10mの後ストッパー10m3及び前ストッパー10m4と、下段の予備苗載台10dの前ストッパー10d4とは、回動して畳まれる。その際、上述したように、上段の予備苗載台10uの後ストッパー10u3は、苗載置面10u1の後端縁の左側に偏って取り付けられ、中段の予備苗載台10mの前ストッパー10m4は、苗載置面10m1の前端縁の右側に偏って取り付けられているので、衝突することなく低い位置に納まる。同様に、中段の予備苗載台10mの後ストッパー10m3は、苗載置面10m1の後端縁の左側に偏って取り付けられ、下段の予備苗載台10dの前ストッパー10d4は、苗載置面10d1の前端縁の右側に偏って取り付けられているので、衝突することなく低い位置に納まる。
このような展開状態において、図13に示すように、4枚の苗121a、121b、121c、121dを予備苗載せ台11に載せる構成としてもよい。図13から明らかなように、各予備苗載台の苗載置面10u1、10m1,10d1の大きさは3台分であるが、上述したように、ストッパー10u3,10m3,10m4,10d4が畳まれるので、ほぼストッパー10u3,10m3,10m4,10d4を収納する長さL13の2つ分、苗を載置する前後方向長さが大きくなる。そこで、図に示すように3枚の苗121a、121b、121cを3枚分苗載置面に詰めて載せるとともに、もう一枚の苗121dを、余ったスペース部分Sと上述した屈曲した前ストッパー10u4の上部分を利用して、載せることが出来る。前ストッパー10u4の上端部は傾斜しているので4枚目の苗をスムーズに補給することが出来る。
このようにすることによって、本変形例では、3台の予備苗載台に対して、4枚の苗を載せることが出来る長所とともに、次のような効果も有する。
すなわち、上述のようにストッパー10u3,10m3,10m4,10d4を展開状態で畳み込む機構を採用した場合、従来のようにそこに3枚だけの苗を載せると、ストッパーを収納する長さL13の2つ分もスペースが余っているので、作業中3枚の苗が前後方向にガタガタと動いてしまう欠点がある。しかしながら、本変形例では4枚目の苗を詰め込むのでそのような余分のスペースもなくなり、苗が動いてしまう心配が無い。その結果作業者が苗取り板で苗を取る作業が楽になるというメリットがある。
なお、最前列のストッパー10u4の別の例として、重複状態では起き上がり、展開状態で前方向に回動して寝た状態になるように構成してもかまわない。すなわち、図11,図12において、ストッパー10u4の下端に回動軸10u41を設け、その回動軸10u41を回動させることで前方向に回動させ、ストッパー10u4を寝かせて退避状態とする。ただし、その場合はストッパー10u4の先端部は上述のように屈曲せず、真っ直ぐで且つ他のストッパーよりも長さが長い部材とする必要がある。このようにしても、より多くの苗を載置できるスペースを確保出来る。
次に、別の予備苗載置部の変形例について説明する。
図14は、この予備苗載置部13の展開状態の模式平面図である。この変形例では、各予備苗載台14u、14m、14dの前後側の端縁が斜めになっている。すなわち、上段の予備苗載台14uの前端縁14u1、後端縁14u2、中段の予備苗載台14mの前端縁14m1、後端縁14m2、下段の予備苗載台14dの前端縁14d1、後端縁14d2はほぼ20度程度傾斜している。
従来の予備苗載台はほぼ矩形形状をしており、展開状態においては、例えば、上段の予備苗載台の後端縁と、中段の予備苗載台の前端縁は、苗が詰め込まれて来る方向に対して直角に真っ直ぐな形状になっている。しかもその境目部分では多少の段差が存在することが多い。そこで、苗を送り込むと苗の前端縁がその境目部分で引っ掛かるという課題があった。
しかし、本変形例では、苗送り方向Dに対して境目部分Bが傾斜しているので、たとえ苗が引っ掛かったとしても傾斜部分の一部に過ぎず、従来のような境目部分の幅全面に同時に引っ掛かることは無いので小さな力で引っ掛かりを乗り越えることが出来、スムーズに苗を送ることが可能となる。
なお、上段の予備苗載台14uの前端縁14u1と、下段の予備苗載台14dの後端縁14d2は必ずしも傾斜している必要はない。
図15は、別の変形例の予備苗載置部15であって、展開状態を示している。各予備苗載台16u、16m、16dの前後側の端縁がクランク形状となっている。すなわち、上段の予備苗載台16uの前端縁16u1、後端縁16u2、中段の予備苗載台16mの前端縁16m1、後端縁16m2、下段の予備苗載台16dの前端縁16d1、後端縁16d2はクランク形状となっている。なお、それらのクランクの凹凸形状は、図15のように展開状態となったとき、互いに衝突せずクランクの凹凸が相嵌め合うように各端縁に形成されている。すなわち、互いに凹凸の形成位置がずれあっている。
このような構造を有しているので、苗が方向Dに送られて境目部分Bで引っ掛かるとしても、半分程度以下しか引っ掛からないので、従来のような境目部分の幅全面に同時に引っ掛かることは無いので小さな力で引っ掛かりを乗り越えることが出来、スムーズに苗を送ることが可能となる。
さらに、中段の予備苗載台16mと、下段の予備苗載台16dのクランク形状の凹凸部には、図16に示すようなピン17が固定されている。すなわち、前端縁16m1のクランク形状の凸部16m1aの下面には、ピン17の一端部17aが固定され、残りの部分17bはクランク形状の凹部に臨出している。下段の予備苗載台16dも同様な構造を有している。
なお、このピン17の役割は次のとおりである。すなわち、各予備苗載台16u、16m、16dが、重複状態から、図15のような展開状態へ移動する場合、上段の予備苗載台16uの後端縁16u2が、中段の予備苗載台16mの前端縁16m1に向かって上から下降してくるが、上段の予備苗載台16uの後端縁16u2のクランク形状の凸部16u2aの下面が、中段の予備苗載台16mの前端縁16m1のクランク形状の凹部に臨出しているピン17の部分17b上に当接してそれ以上の下降が停止される。
下段の予備苗載台16dの前端縁16d1に取り付けられたピン17についても同様に、前端縁16d1が上昇していくと、そこに固定されているピン17が、展開状態に至って、中段の予備苗載台16mの後端縁16m2のクランク形状の凸部の下面に当接してそれ以上の上昇が停止される。
その結果、展開状態において、各予備苗載台16u、16m、16d同士の境目部分では、より前側の予備苗載台が直ぐ後の予備苗載台より低い位置で停止することはあり得なくなり、苗を送る際境目部分で引っ掛かる心配が無くなる。
なお、上段の予備苗載台16uの前端縁16u1と、下段の予備苗載台16dの後端縁16d2は必ずしもクランク形状になっている必要はない。
図17(a)、(b)、(c)は、他の各種形状を有する予備苗載台18a、18b、18cの平面図を示すが、これらの予備苗載台も図14、図15に示す変形例と同様に苗を送る際引っ掛かることを抑制できる効果を持っている。なお、予備苗載台の形状はこれらに限らず、要するに、予備苗載台の境目部分で、側面から視た状態で、前側の予備苗載台の後端縁と、直ぐ後側の予備苗載台の前端縁とが、一部でも重なり合う形状、構造となっておりさえすればよい。すなわち、送り込まれてくる苗の前側直線部分が境目部分において、同時に、予備苗載台の前側端縁に全幅的に引っ掛かることが回避出来れば足る。
図18〜図20は、別の変形例の予備苗載置部19を示し、図18(a)、(b)、(c)はそれら予備苗載台の斜視図を示し、図18図は重複状態を示し、図19は展開状態を示す。
図18(a)は、上段の予備苗載台20uの斜視図であって、苗載置面20u1の両横側には苗のストッパー20u2が立設され、その前側にはストッパー20u4が立設されている。さらに、後側にはローラ20u3を上端に有するストッパーが2個立設されている。さらに、苗載置面20u1の下方の少し離れた位置に、一対のローラ20u5、20u5が取り付けられるとともに、ハンドル20u6で回動されるロッドアーム20u7が前後方向3分の1の位置2箇所にそれぞれ配置されている。さらに、苗載置面20u1には、前後方向3分の1の位置2箇所に、上記一対のローラ20u5、20u5が上方に起き上がれるように、2つの開口20u1a、20u1aが開設されている。
なお、起こされた状態のローラ20u5の高さは、上述したストッパー上のローラ20u3の高さと同じ高さ(図20参照)になったところでロックが掛かる機構(図示省略)となっている。なお、上段の予備苗載台20uについて、両横側のストッパー20u2と、前側のストッパー20u4の高さは、起きた状態のローラ20u5の高さや後側のローラ20u3の高さより高くしてある。
図18(b)は、中段の予備苗載台20mの斜視図であって、苗載置面20m1の両横側には苗のストッパー20m2が立設され、その前側にはローラ20m4を上端に有するストッパーが2個立設されている。さらに、後側にはローラ20m3を上端に有するストッパーが2個立設されている。さらに、苗載置面20m1の下方の少し離れた位置に、一対のローラ20m5、20m5が取り付けられるとともに、ハンドル20m6で回動されるロッドアーム20m7が前後方向3分の1の位置2箇所にそれぞれ配置されている。さらに、苗載置面20m1には、前後方向3分の1の位置2箇所に、上記一対のローラ20m5、20m5が上方に起き上がれるように、2つの開口20m1a、20m1aが開設されている。
なお、起こされた状態のローラ20m5の高さは、上述したストッパー上のローラ20m3の高さと同じ高さ(図20参照)になったところでロックが掛かる機構(図示省略)となっている。なお、中段の予備苗載台20mについて、両横側のストッパー20m2の高さは、起きた状態のローラ20m5の高さや前側、後側のローラ20m3、20m4の高さより高くしてある。
図18(c)は、下段の予備苗載台20dの斜視図であって、苗載置面20d1の両横側には苗のストッパー20d2が立設され、その前側にはローラ20d4を上端に有するストッパーが2個立設されている。さらに、後側にはストッパー20d3が立設されている。
さらに、苗載置面20d1の下方の少し離れた位置に、一対のローラ20d5、20d5が取り付けられるとともに、ハンドル20d6で回動されるロッドアーム20d7が前後方向3分の1の位置2箇所にそれぞれ配置されている。さらに、苗載置面20d1には、前後方向3分の1の位置2箇所に、上記一対のローラ20d5、20d5が上方に起き上がれるように、2つの開口20d1a、20d1aが開設されている。
なお、起こされた状態のローラ20d5の高さは、上述したストッパー上のローラ20d4の高さと同じ高さ(図20参照)になったところでロックが掛かる機構(図示省略)となっている。なお、下段の予備苗載台20dについて、両横側のストッパー20d2と、後側のストッパー20d3の高さは、起きた状態のローラ20d5の高さや前側のローラ20d4の高さより高くしてある。
図19の重複状態では、上段の予備苗載台20u、中段の予備苗載台20m、下段の予備苗載台20dのそれぞれの下方のローラ20u5、20m5、20d5は下方位置に退避している。苗210、210、210はそれぞれの予備苗載台20u、20m、20dの苗載置面20u1、20m1、20d1上に載置されている。ローラ20u5、20m5、20d5は下方位置に退避しているので、苗210はローラの存在により前後にガタガタと揺れ動く心配が無い。
図20の展開状態では、上段の予備苗載台20u、中段の予備苗載台20m、下段の予備苗載台20dのそれぞれの下方のローラ20u5、20m5、20d5はそれぞれの苗載置面20u1、20m1、20d1から上方にハンドルの操作によって、起こしている。そして、各苗210、210、210はそれぞれの予備苗載台20u、20m、20dのローラ20u5、20m5、20d5および、ストッパー上のローラ20u3、20m4、20m3、20d4の上に載置される。従って、各苗210、210、210は、前側にある予備苗載台からより後側にある予備苗載台上へ、順次、境目部分にあるストッパーを越えて円滑に送り込まれる。その結果、境目のストッパーを回動させて倒すような余分な構造を省略することが出来る。
図21は、別の変形例の予備苗載置部21であって、重複状態を示し、図22は展開状態を示し、図23(a)は上段の予備苗載台の斜視図を示す。
図23(a)に示すように、上段の予備苗載台22uの後端縁22u7の近傍には、断面「へ」の字状の苗送り部材22u10が回動可能に配置されている。この苗送り部材22u10の上半部であるフェンス部22u4の上端縁には一個のローラ22u3が回動自在に取り付けられている。このローラ22u3は図21のような重複状態で、苗23aに対してストッパー機能を果たす。他方、苗送り部材22u10の下半部22u5の下端縁には2個のローラ22u6が回動自在に取り付けられている。さらに、この苗送り部材22u10の屈曲部には左右方向に軸22u8が固定されており、その軸22u8の回動によって、苗送り部材22u10が全体として回動出来るようになっている。
上半部であるフェンス部22u4の幅は、下半部22u5の幅の半分程度であり、しかも右方向に偏っている。これは図22のような展開状態とするとき、中段の予備苗載台22mの前端側に配置された苗送り部材22m2(後述する)のフェンス部と衝突しないようにするためである。また、予備苗載台22uの前端縁22u12には背の高いストッパー22u9が立設している。
この上段の予備苗載台22uの苗載置面22u1の上記後端縁22u7寄りには、開口部22u11が開設されている。この開口部22u11は、苗送り部材22u10の下側のローラ22u6が上に上昇したときに苗載置面22u1より上に臨出させるための開口である。
中段の予備苗載台22mの構造は、上述した上段の予備苗載台22uの構造と似ているが、その前端縁22m1の近傍にも、苗送り部材22m2が配置されている点が異なる。その苗送り部材22m2の上半部であるフェンス部は幅が短く左側に偏っており(上述したように上段の苗送り部材22u2のフェンス部22u4と展開状態で衝突しないようにするため左側に偏っている)、その上にローラm4が回動自在に取り付けられている。また、その苗送り部材22m2用の開口部22m3も開設されている。後段の予備苗載台22dの構造は、上述した上段の予備苗載台22uの構造が前後反転している構造を有している。すなわち、予備苗載台22dの後端縁には背の高いストッパー22d1が立設している。
このような予備苗載置部21は、その展開状態においては、図22に示すように、上段の予備苗載台22uの苗送り部材22u10のフェンス部22u4を45度程度回動して倒すと、それに従って、その上端に取り付けられているローラ22u3は下降し、他方、下方に位置していたローラ22u6は上昇し、開口部22u11から上に起き上がる。その結果、双方のローラ22u3とローラ22u6の高さは同じになる。
同様に、中段の予備苗載台22mの苗送り部材22m2のローラ22m4等も下降しあるいは上昇する。下段の予備苗載台22dの苗送り部材についても同様である。この状態で苗23a,23b,23cはそれらローラの上に載置することが出来、送り移動が容易になる。
他方、重複状態では、それぞれの苗送り部材は逆方向に回動し、浮上していたローラ22u6などは苗載置面より下に収納される。従って、重複状態では苗23a、23b、23cはそのローラ22u6等の上に載ることはなく、その結果動いてガタガタする心配はない。しかも、それらローラ22u6などの回動は、フェンス部22u4の収納動作を利用して行えるため、構造が簡単となり、コストダウンともなる。なお、上段の予備苗載台22uの前端のストッパー22u9と、下段の予備苗載台22dの後端のストッパー22d1とは、固定されているが苗が大幅に移動する部分では無いので不都合は無い。
なお、図23(b)は、苗送り部材22u10の変形例であって、下半部22u50を除いて、同図(a)と同じである。すなわち、下半部22u50は少し上へ湾曲している。その結果、軸22u8を中心として回動した場合、開口部22m3の大きさを小さくしてもローラ22u6が起き上がることが出来る。
図24は、本発明に係る別の実施の形態の苗移植機の作業時における一部正面図、図25(a)、(b)はその一部拡大図である。図26は上記苗移植機の倉庫などへの収納時における一部正面図、図27は作業時の状態から収納時の状態への切り換えを示す模式平面図である。
図24〜図27において、車体の左側(走行方向基準)の予備苗載置部24は、重複状態と展開状態を切り替え可能な機構を有する。その予備苗載置部24は例えば上述した予備苗載置部であるが、従来の予備苗載置部であってもかまわない。本実施の形態では従来の予備苗載置部である。他方、車体の右側の予備苗載置部25は、重複状態のみを取り得る固定タイプの機構であり、左側の切り換え可能な予備苗載置部24より簡単な構造を有し重量も軽い。
予備苗載置部24は、車体に固定された支持フレーム26の上端に回動可能に連結されている。詳しくは図25(a)に示すように、予備苗載置部24の、予備苗載台24u、24m、24dが連結された縦長の保持フレーム24aの下端が、支持フレーム26の上端に取り付けられ回動可能な回動部26aに固定されることによって、予備苗載置部24全体がその回動部26aを軸心として外側(作業時)と内側(収納時)に回動可能となっている。各予備苗載台24u、24m、24dは、保持フレーム24aに対して片持ちで保持されている。
他方、予備苗載置部25は、支持フレーム27の上端に回動可能に連結されている。詳しくは、図25(b)に示すように、支持フレーム27の上端27aにブラケット27bが固定され、そのブラケット27bの他端にはブラケット27bに対して回動可能な回動部27cが取り付けられている。さらに、その回動部27cの上端には内側に向かってアーム27dが固定されている。従って、このアーム27dは、回動部27cの回動により回動可能となっている。さらに、このアーム27dの先端には、予備苗載台25u、25m、25dが連結された縦長の保持フレーム25aの下端が固定されている。各予備苗載台25u、25m、25dは、保持フレーム25aに対して片持ちで保持されている。
このような構造の本実施の形態の苗移植機は次のように収納する。
図26に示すように、展開可能な予備苗載置部24を重複状態とした後、回動部26aの回動によってそこを軸心として、内側へ収納される。他方、展開出来ないタイプの予備苗載置部25は、回動部27cによってそこを軸心として内側へ収納する。
その場合、図27(分かりやすくするため配置関係を少し誇張している)に示すように、作業時では、左右の予備苗載置部24、25は車体に対してほぼ対称の位置に配置される。しかし、収納時には重量の重い、展開可能な予備苗載置部24の方は回動部26aの周りに大きく回り込むので、ボンネット4に近接する。他方、重量の比較的軽い、展開不可能な予備苗載置部25は回動部27cの周りに小さく回り込むので、ボンネット4には余り近づかない。すなわち、図27から明らかなように、重い予備苗載置部24はその周縁のほぼ外側に回動部26aが設けられているため、回動すると大きく回り込むが、軽い予備苗載置部25はその周縁より内側に回動部27cが配設されているため、回動する場合小回りすることになる。
その結果、収納時においても左右の重量バランスがとれて車体が安定する効果を発揮する。さらに、右側に小回りをする予備苗載置部25を配置することで、右側に配置される操作桿28を配置出来るスペースがゆとりを持って確保出来る。さらに、そこのスペースが広いので、作業者が機体前方から乗り込むためのスペースが出来る。つまり、収納の際、納屋や倉庫にバックで車体を入れた場合でも、前から乗り降り出来るスペースを確保出来るということになる。