JP6720865B2 - ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法、ポリビニルアルコール系フィルム、および偏光膜 - Google Patents

ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法、ポリビニルアルコール系フィルム、および偏光膜 Download PDF

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Description

本発明は、ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法に関し、さらに詳しくは、流涎法(キャスト法)によるポリビニルアルコール系フィルムの製造方法における紫外線を用いたキャスト型の洗浄方法、及び該キャスト型を用いて製造される表面平滑性に優れたポリビニルアルコール系フィルム、更に、該ポリビニルアルコール系フィルムを原反として製造される偏光度や光線透過率に優れた偏光膜に関する。
従来技術
従来、ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を水などの溶媒に溶解して製膜用の原液を調製したのち、かかる原液を、キャストドラムやキャストベルトなどのキャスト型に流延して製膜し(キャスト法)、金属加熱ロールなどを使用して乾燥することにより製造される。このようにして得られるポリビニルアルコール系フィルムは、透明性や染色性に優れたフィルムとして多くの用途に利用されており、その有用な用途の一つに偏光膜があげられる。かかる偏光膜は、液晶ディスプレイの基本構成要素として用いられており、近年では高品位で高信頼性の要求される機器へとその使用が拡大されている。
このような中、液晶画面の高精細化や高輝度化にともない、従来品より一段と透明性や表面平滑性に優れたポリビニルアルコール系フィルムが必要とされている。ポリビニルアルコール系フィルムの表面平滑性が低い場合には、偏光膜の光線透過率が下がると共に偏光性能が低下するため、ディスプレイの高輝度化や高精細化の障害となる。また、ポリビニルアルコール系フィルムに欠点が多い場合には、当然のことながら、偏光膜の表示欠点も増加し、高品位なディスプレイの製造は困難となる。
表面が平滑、かつ欠点の少ないポリビニルアルコール系フィルムを製造するためには、キャスト型の表面が平滑でなければならない。一般的に、キャスト型の表面は、表面平滑性を確保するために、クロムメッキなどの金属メッキ処理が施される。しかし、処理直後は平滑な表面を有するキャスト型であっても、フィルムの製造が繰り返されると有機物が付着し、表面粗さが増大し、表面の欠点も増加する。かかる有機物としては、ポリビニルアルコール系樹脂の分解物、添加剤の分解物、環境からの付着物など様々であり、化学的な構造も一様ではない。
ポリビニルアルコール系フィルムの表面平滑性を向上する手法として、例えば、キャスト型の表面にフッ素系樹脂膜を形成する手法が提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。また、特定組成の原液(ポリビニルアルコール系樹脂水溶液)を用いて、特定の製膜条件で、ポリビニルアルコール系フィルムを製造する手法が提案されている(たとえば、特許文献2参照。)。また、ポリビニルアルコール系フィルムの厚さを均一化するため、表面粗さが3S以下である金属表面(キャスト型表面)で製膜する手法が提案されている(たとえば、特許文献3参照。)。
特開2006−305924号公報 特開2011−245872号公報 特開2001−315138号公報
しかしながら、特許文献1の開示技術では、キャスト型の使用開始時には有機物の付着を低減できるものの、経年的にキャスト型が繰り返し加熱/冷却されると、フッ素系樹脂膜の剥がれや、フッ素系樹脂膜の分解物が生じるため、キャスト型表面の欠点が増加する傾向にある。また、特許文献2の開示技術は、上述した通り、キャスト型表面に各種添加剤の分解物が付着する傾向にある。また、特許文献3の開示技術は、キャスト型表面への有機物の付着は回避できない。
そこで、本発明ではこのような背景下において、特段キャスト型を補修することなくとも、表面が平滑であり、かつ欠点の少ないポリビニルアルコール系フィルムを得ることができるポリビニルアルコール系フィルムの製造方法、ポリビニルアルコール系フィルム、および偏光膜を提供することを目的とするものである。
しかるに、本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、キャスト型の表面に対する間隙が3mm以下の位置に光源を設置し、該間隙に不活性ガスを送風しながら該キャスト型の表面に紫外線を照射することにより、キャスト型表面に付着した有機物を分解し、表面洗浄することにより、表面が平滑であり、かつ欠点の少ないポリビニルアルコール系フィルムが得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を、キャスト型に流涎して製膜し、連続して乾燥するポリビニルアルコール系フィルムの製造方法であり、キャスト型の表面に対する間隙が3mm以下の位置に光源を設置し、該間隙に不活性ガスを送風しながら該キャスト型の表面に紫外線を照射することにより付着した有機物を分解し、表面洗浄することを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法である。
そして、本発明の要旨は、上記ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法により製造されてなるポリビニルアルコール系フィルムである。また、本発明の要旨は、上記ポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光膜である。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法では、キャスト型表面の平滑性に優れた状態でポリビニルアルコール系フィルムを製造できるため、表面が平滑であり、かつ欠点の少ないポリビニルアルコール系フィルムが得られ、更に、欠点の少ない高品質な偏光膜も得られるものである。
本発明は、ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法であり、該ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を、キャスト型に流涎して製膜し、連続して乾燥することにより得られるものである。
本発明で使用されるキャスト型には、鉄を主成分とするステンレス鋼(SUS)などの表面に、傷つき防止のため金属メッキが施されているものが使用される。金属メッキとしては、例えば、クロムメッキ、ニッケルメッキ、亜鉛メッキなどが挙げられ、これらが単層または2層以上積層化して使用される。これらの中では、キャスト型表面の平滑化の容易さや、耐久性の点から、最表面がクロムメッキであることが好ましい。
本発明では、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液をキャスト型に流涎する前に、予めかかるキャスト型の表面に紫外線を照射することにより付着した有機物を分解し、表面洗浄することを特徴とする。キャスト型がキャストドラムである場合は、かかるキャストドラムを回転させながら、連続的に洗浄されることが、作業効率の点で好ましい。キャスト型がキャストベルトの場合は、水平方向に移送しながら、連続的に洗浄すればよい。かかる連続洗浄においては、キャスト型の全幅にわたって紫外線を照射することが好ましく、必要に応じて、紫外線ランプをキャスト型の幅方向に並べればよい。
かかる紫外線としては、波長270nm以下の短波長紫外線であることが好ましい。特に好ましくは260nm以下、更に好ましくは255nm以下である。
かかる紫外線の光源としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、深紫外線ランプ、エキシマランプ、紫外線レーザーなどが挙げられる。
これらの中でも、洗浄効率の点で、低圧水銀ランプ、深紫外線ランプ、エキシマランプなどの短波長紫外線ランプが好ましく、作業効率の点で、低圧水銀ランプやエキシマランプなどの線光源が特に好ましく、設備の簡便さの点で、長さ1m以上の線光源が更に好ましく、エネルギー効率の点で、エキシマランプが殊に好ましい。これらのランプは複数を組み合わせて使用することもできる。
かかるエキシマランプとしては、Arエキシマランプ(126nm)、Krエキシマランプ(146nm)、Xeエキシマランプ(172nm)、NeArエキシマランプ(185nm)、ArFエキシマランプ(193nm)、KrClエキシマランプ(222nm)、KrFエキシマランプ(248nm)、XeIエキシマランプ(254nm)、XeFエキシマランプ(305nm)、XeClエキシマランプ(308nm)などが挙げられる。なお、( )内の数値はピーク波長を示す。
これらの中でも、有機物の化学結合を効率よく切断し、かつキャスト型の表面にダメージを与えない点で、NeArエキシマランプ、Xeエキシマランプ、ArFエキシマランプ、KrClエキシマランプが好ましい。
一般的に、短波長かつ単波長の紫外線は、空気中での減衰が大きいため、光源とキャスト型表面との間隙は3mm以下とし、かかる間隙に窒素やアルゴンなどの不活性ガスを送風する
かかる照射強度は、10〜10,000mW/cmが好ましく、特に好ましくは50〜5,000mW/cm以上、更に好ましくは100〜3,000mW/cmである。
照射強度が、低すぎると洗浄効果が低下する傾向にあり、高すぎるとキャスト型の表面が劣化する傾向にある。
かかる照射時間は、1〜600秒/回が好ましく、特に好ましくは2〜300秒/回、更に好ましくは3〜100秒/回である。照射時間が短すぎると、洗浄効果が低下する傾向にあり、長すぎるとキャスト型の表面が劣化する傾向にある。
なお、本発明の一形態として、有機物がキャスト型表面に局所的に付着している場合は、かかる局所をスポットで紫外線洗浄することも可能である。かかる場合は、紫外線レーザーが光源として好ましく用いられ、具体的には、KrFレーザー、XeFレーザー、GaNレーザー、Nd:YAGレーザー(第3高調波)などが挙げられる。安全上の観点から、レーザー出力はクラス3(5mW)以下が好ましい。照射法としては、レーザー光源より発生させたレーザービームを、球面レンズやシリンドリカルレンズなどを用いて平面状や線状に拡大することが、照射面積の点で好ましい。なお、かかる手法は、一般的に、レーザーアブレーションと呼ばれている。本発明においては、かかる局所的な洗浄と、前述したキャスト型全体の洗浄を組み合わせて行ってもよい。
かくしてキャスト型の洗浄が行われるが、紫外線の照射は、洗浄速度を向上するため、キャスト型全体を加温したり、キャスト型表面を熱風で加温してもよい。かかる場合、キャスト型の表面温度は50〜200℃であることが好ましい。
本発明におけるキャスト型表面の水との接触角は、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の流涎性の点で、90°以下あることが好ましく、特に好ましくは85°以下、更に好ましくは80°以下である。特にはキャスト型を洗浄した後のキャスト型表面の水との接触角が上記規定を満足することがより好ましい。
本発明におけるキャスト型の表面粗さRzは、0.3μm以下であることが好ましく、特に好ましくは0.2μm以下、更に好ましくは0.1μm以下である。特にはキャスト型を洗浄した後のキャスト型の表面粗さが上記規定を満足することがより好ましい。表面粗さRzが大きすぎるとキャストフィルムの表面粗さが増大する傾向にある。
上記ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を用いると、表面が平滑であり、かつ欠点の少ないポリビニルアルコール系フィルムが得られるものである。以下、ポリビニルアルコール系フィルムの製造例を説明する。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を、キャスト型に流涎して製膜し、連続して乾燥することにより得られる。
かかるポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、未変性のポリビニルアルコール系樹脂、即ち、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルをケン化して製造される樹脂が用いられる。必要に応じて、酢酸ビニルと、少量(例えば、10モル%以下、好ましくは5モル%以下)の酢酸ビニルと共重合可能な成分との共重合体をケン化して得られる樹脂を用いることもできる。酢酸ビニルと共重合可能な成分としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2〜30のオレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等が挙げられる。また、ケン化後の水酸基を化学修飾して得られる変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂として、側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。かかる側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、(i)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(ii)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(iii)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(iv)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、10万〜30万であることが好ましく、特に好ましくは11万〜28万、更に好ましくは12万〜26万である。かかる重量平均分子量が小さすぎるとポリビニルアルコール系樹脂を光学フィルムとする場合に充分な光学性能が得られにくい傾向があり、大きすぎるとポリビニルアルコール系フィルムを偏光膜製造時の延伸が困難となる傾向がある。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、GPC−MALS法により測定される重量平均分子量である。
本発明で用いるポリビニルアルコール系樹脂の平均ケン化度は、通常98モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは99モル%以上、更に好ましくは99.5モル%以上、殊に好ましくは99.8モル%以上である。かかる平均ケン化度が小さすぎるとポリビニルアルコール系フィルムを偏光膜とする場合に充分な光学性能が得られない傾向がある。
ここで、本発明における平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定されるものである。
本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂として、変性種、重量平均分子量、平均ケン化度などの異なる2種以上のものを併用してもよい。
ポリビニルアルコール系フィルムは、かかるポリビニルアルコール系樹脂の水溶液をキャストドラム(ドラム型ロール)やキャストベルトなどのキャスト型に流延して、キャスト法により製膜、乾燥することで連続的に製造することができ、例えば以下の工程により製造することができる。
(A)キャスト法によりフィルムを製膜する工程。
(B)フィルムを加熱して乾燥する工程。
ここで、上記キャスト型としては、例えばキャストドラム(ドラム型ロール)やエンドレスベルト等があげられるが、幅広化や長尺化、膜厚の均一性に優れる点からキャストドラムで行うことが好ましい。
以下、キャスト型がキャストドラムの場合を例にとって説明する。
工程(A)においては、まず、前述したポリビニルアルコール系樹脂を、水などの溶剤を用いて洗浄し、遠心分離機などを用いて脱水して、含水率50重量%以下のポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキとすることが好ましい。含水率が大きすぎると、所望する水溶液濃度にすることが難しくなる傾向がある。
かかるポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを温水や熱水に溶解して、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調整する。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の調製方法は、特に限定されず、例えば、加熱された多軸押出機を用いて調製してもよく、また、上下循環流発生型撹拌翼を備えた溶解缶に、前述したポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを投入し、缶中に水蒸気を吹き込んで、溶解及び所望濃度の水溶液を調製することもできる。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液には、ポリビニルアルコール系樹脂以外に、必要に応じて、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどの一般的に使用される可塑剤や、ノニオン性、アニオン性またはカチオン性の界面活性剤を含有させることが、製膜性の点より好ましい。
このようにして得られるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂濃度は、15〜60重量%であることが好ましく、特に好ましくは17〜55重量%、更に好ましくは20〜50重量%である。かかる樹脂濃度が低すぎると乾燥負荷が大きくなるため生産能力が低下する傾向があり、高すぎると粘度が高くなりすぎて均一な溶解ができにくくなる傾向がある。
次に、得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、脱泡処理される。脱泡方法としては、静置脱泡や多軸押出機による脱泡などの方法があげられる。多軸押出機としては、ベントを有した多軸押出機であれば、とくに限定されないが、通常はベントを有した2軸押出機が用いられる。
脱泡処理のち、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、一定量ずつT型スリットダイに導入され、回転するキャストドラム上に吐出及び流延されて、キャスト法により製膜される。
T型スリットダイ出口のポリビニルアルコール系樹脂水溶液の温度は、80〜100℃であることが好ましく、特に好ましくは85〜98℃である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の温度が低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると発泡する傾向がある。
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の粘度は、吐出時に50〜200Pa・sであることが好ましく、特に好ましくは70〜150Pa・sである。
かかる水溶液の粘度が、低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると流涎が困難となる傾向がある。
T型スリットダイからキャストドラムに吐出されるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の吐出速度は、0.5〜5m/分であることが好ましく、特に好ましくは0.6〜4m/分、更に好ましくは0.7〜3m/分である。
かかる吐出速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると流涎が困難となる傾向がある。
かかるキャストドラムの直径は、好ましくは2〜5m、特に好ましくは2.4〜4.5m、更に好ましくは2.8〜4mである。
かかる直径が小さすぎると乾燥長が不足し生産速度が低下する傾向があり、大きすぎると輸送性が低下する傾向がある。
かかるキャストドラムの幅は、好ましくは2m以上であり、特に好ましくは3m以上、更に好ましくは4m以上、殊に好ましくは4.5〜6mである。
キャストドラムの幅が小さすぎると生産性が低下する傾向がある。
かかるキャストドラムの回転速度は、3〜50m/分であることが好ましく、特に好ましくは4〜40m/分、更に好ましくは5〜35m/分である。
かかる回転速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると乾燥が不十分となる傾向がある。
かかるキャストドラムの表面温度は、40〜99℃であることが好ましく、特に好ましくは60〜95℃である。
かかる表面温度が低すぎると乾燥不良となる傾向があり、高すぎると発泡してしまう傾向がある。
次いで、前記工程(B)について説明する。工程(B)は、製膜されたポリビニルアルコール系フィルムを加熱して乾燥する工程である。
キャストドラムで製膜されたフィルムの乾燥は、膜の表面と裏面とを複数の熱ロールに交互に接触させることにより行なわれる。熱ロールの表面温度は、通常40〜150℃、好ましくは50〜140℃である。かかる表面温度が低すぎると乾燥不良となる傾向が有り、高すぎると乾燥しすぎることとなり、うねりなどの外観不良を招く傾向がある。
また、熱ロールは、例えば、表面をハードクロムメッキ処理又は鏡面処理した、直径0.2〜2mのロールであり、通常2〜30本、好ましくは10〜25本を用いて乾燥を行うことが好ましい。
本発明においては、熱ロールによる乾燥後、フィルムに熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度は、60〜150℃が好ましく、特には70〜140℃が好ましい。熱処理温度が低すぎると、ポリビニルアルコール系フィルムの耐水性が低下したり、位相差ふれの原因となる傾向があり、高すぎると偏光膜製造時の延伸性が低下する傾向がある。かかる熱処理方法としては、例えば、高温の熱ロールに接触させる方法や、フローティングドライヤーにて行う方法等が挙げられる。
乾燥、必要に応じて熱処理が行われたフィルムは、両端をスリットして、ロールに巻き取られ、製品(ポリビニルアルコール系フィルム)となる。
かかるポリビニルアルコール系フィルムのヘイズは、0.3%以下が好ましい。より好ましくは0.2%以下、更に好ましくは0.1%以下である。ヘイズが高すぎると偏光膜の光線透過率が低下する傾向にある。
かかるポリビニルアルコール系フィルムの表面粗さRzは、0.3μm以下であることが好ましい。更に好ましくは0.2μm以下である。表面粗さRzが、大きすぎると偏光膜の偏光度が低下する傾向にある。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、高さ1μm以上の欠点(点状も線状も含む)が、1mm中に3個以下あることが好ましい。より好ましくは2個以下、更に好ましくは1個以下である。かかる欠点の個数が多すぎると偏光膜の偏光度が低下する傾向にある。
かかるポリビニルアルコール系フィルムの厚さは、薄型化の点から50μm以下であることが好ましい。より好ましくは、リタデーション低減の点から30μm以下、特に好ましくは破断回避の点から5〜30μmである。
かかるポリビニルアルコール系フィルムの幅は、偏光膜の幅広化の点で2m以上であることが好ましく、特に好ましくは3m以上、更に好ましくは4〜6mである。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、長さが2km以上であることが必要であり、大面積化の点から特に好ましくは3km以上、輸送重量の点から、更に好ましくは4〜50kmである。
かかるポリビニルアルコール系フィルムは、欠点が少なく表面平滑性に優れ、光学用のポリビニルアルコール系フィルムとして好適に用いられ、更には偏光膜用の原反として特に好ましく用いられる。
以下、本発明のポリビニルアルコール系フィルムを用いて得られる偏光膜の製造方法について説明する。
本発明の偏光膜は、上記ポリビニルアルコール系フィルムを、ロールから巻き出して水平方向に移送し、膨潤、染色、ホウ酸架橋、延伸、洗浄、乾燥などの工程を経て製造される。
膨潤工程は、染色工程の前に施される。膨潤工程により、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れを洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色ムラなどを防止する効果もある。膨潤工程において、処理液としては、通常、水が用いられる。当該処理液は、主成分が水であれば、ヨウ化化合物、界面活性剤等の添加物、アルコール等が少量入っていてもよい。膨潤浴の温度は、通常10〜45℃程度であり、膨潤浴への浸漬時間は、通常0.1〜10分間程度である。
染色工程は、フィルムにヨウ素または二色性染料を含有する液体を接触させることによって行なわれる。通常は、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は0.1〜2g/L、ヨウ化カリウムの濃度は1〜100g/Lが適当である。染色時間は30〜500秒程度が実用的である。処理浴の温度は5〜50℃が好ましい。水溶液には、水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させてもよい。
ホウ酸架橋工程は、ホウ酸やホウ砂などのホウ素化合物を使用して行われる。ホウ素化合物は水溶液または水−有機溶媒混合液の形で濃度10〜100g/L程度で用いられ、液中にはヨウ化カリウムを共存させるのが、偏光性能の安定化の点で好ましい。処理時の温度は30〜70℃程度、処理時間は0.1〜20分程度が好ましく、また必要に応じて処理中に延伸操作を行なってもよい。
延伸工程は、一軸方向に3〜10倍、好ましくは3.5〜6倍延伸することが好ましい。この際、延伸方向の直角方向にも若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度、またはそれ以上の延伸)を行なっても差し支えない。延伸時の温度は、40〜170℃が好ましい。さらに、延伸倍率は最終的に前記範囲に設定されればよく、延伸操作は一段階のみならず、製造工程の任意の範囲の段階に実施すればよい。
洗浄工程は、例えば、水やヨウ化カリウム等のヨウ化物水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行われ、フィルムの表面に発生する析出物を除去することができる。ヨウ化カリウム水溶液を用いる場合のヨウ化カリウム濃度は1〜80g/L程度でよい。洗浄処理時の温度は、通常、5〜50℃、好ましくは10〜45℃である。処理時間は、通常、1〜300秒間、好ましくは10〜240秒間である。なお、水洗浄とヨウ化カリウム水溶液による洗浄は、適宜組み合わせて行ってもよい。
乾燥工程は、大気中で40〜80℃で1〜10分間行えばよい。
また、偏光膜の偏光度は、好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.8%以上である。偏光度が低すぎると液晶ディスプレイにおけるコントラストを確保することができなくなる傾向がある。
なお、偏光度は、一般的に2枚の偏光膜を、その配向方向が同一方向になるように重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H11)と、2枚の偏光膜を、配向方向が互いに直交する方向になる様に重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H)より、下式にしたがって算出される。
〔(H11−H)/(H11+H)〕1/2
さらに、本発明の偏光膜の単体透過率は、好ましくは42%以上である。かかる単体透過率が低すぎると液晶ディスプレイの高輝度化を達成できなくなる傾向がある。
単体透過率は、分光光度計を用いて偏光膜単体の光線透過率を測定して得られる値である。
かくして、本発明の偏光膜が得られるが、本発明の偏光膜は、高品位な偏光板を製造するのに好適である。
以下、本発明の偏光板の製造方法について説明する。
本発明の偏光膜は、その片面または両面に、接着剤を介して、光学的に等方性な樹脂フィルムを保護フィルムとして貼合されて偏光板となる。保護フィルムとしては、たとえば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエステル、ポリ−4−メチルペンテン、ポリフェニレンオキサイドなどのフィルムまたはシートがあげられる。
貼合方法は、公知の手法で行われるが、例えば、液状の接着剤組成物を、偏光膜、保護フィルム、あるいはその両方に均一に塗布した後、両者を貼り合わせて圧着し、加熱や活性エネルギー線を照射することで行われる。
また、偏光膜には、薄膜化を目的として、上記保護フィルムの代わりに、その片面または両面にウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレア樹脂などの硬化性樹脂を塗布し、硬化して偏光板とすることもできる。
本発明の偏光膜は、表示欠点が少なく、偏光性能にも優れており、携帯情報端末機、パソコン、テレビ、プロジェクター、サイネージ、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、電子ペーパー、ゲーム機、ビデオ、カメラ、フォトアルバム、温度計、オーディオ、自動車や機械類の計器類などの液晶表示装置、サングラス、防眩メガネ、立体メガネ、ウェアラブルディスプレイ、表示素子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパーなど)用反射低減層、光通信機器、医療機器、建築材料、玩具などに好ましく用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
各物性について、次のようにして測定をおこなった。
<測定条件>
(1)接触角(°)
協和界面科学社製「ポータブル接触角計PCA−1」を用い、注射針より作製される1μlの水滴をキャストドラム表面と接触、落液させ測定し、θ/2法で算出した。測定雰囲気は23℃、50%RHである。
(2)表面粗さRz(μm)
キーエンス社製レーザーフォーカス顕微鏡VK−9700(測定長:1mm、対物レンズ:10倍)を用いて、キャストドラム、またはロールフィルムの10か所を測定し、平均値を表面粗さとした。
(3)ヘイズ(%)
ロールフィルムから50mm×50mmの試験片を10枚採取し、日本電色工業社製ヘイズメーター「NDH−2000」を用いて測定し、10枚の平均値をヘイズとした。
(4)欠点(個/mm
キーエンス社製レーザーフォーカス顕微鏡VK−9700(対物レンズ:10倍)を用いて、ロールフィルムの10か所(各面積1mm)に存在する高さまたは深さが1μm以上の欠点数(点状も線状も含む)を観察し、平均値を欠点数とした。
(5)偏光度(%)、単体透過率(%)
得られた偏光膜から、100m刻みで、延伸方向50mm×幅方向4mに切断して短冊サンプルを作成し、大塚電子社製:RETS−1100Aを用いて、幅方向に10mmピッチで全幅にわたり偏光度と単体透過率を測定し、それぞれの平均値を得られた偏光膜の偏光度と単体透過率とした。
(6)表示欠点(個/m
長さ1m×幅1mの偏光膜を15000lxの環境下で目視検査し、100μm以上の欠点数を測定した。
<実施例1>
(キャストドラムの洗浄A)
ポリビニルアルコール系フィルムの製造に使用中のキャストドラム(直径3m、幅4.5m、表面クロムメッキ)を目視観察すると、表面の一部にかすかな濁りが見られた。かかる部分の接触角を測定すると、表1に示される通り、接触角は100°であり、有機系の分解物が付着していることが予想された。また、かかる部分の表面粗さを測定すると、表1に示される通り、表面粗さRzは0.4μmであり、微量の分解物が付着して表面荒れが発生していると予想された。
キャストドラムのフィルムが接していない位置に、ピーク波長172nmのXe2エキシマランプ(長さ2m)を、キャストドラムの幅方向に2本設置した。ランプとキャストドラムの間は1mmである。また、幅広ノズルを用いて、かかる間隙に窒素ガスを送風した。次いで、キャストドラムを0.1m/分で回転させながら、キャストドラム全幅にわたって紫外線を照射し、表面の洗浄を行なった。
100回転後に、得られたキャストドラムAの表面を目視観察したところ、濁りは見られず、接触角を測定すると、表1に示される通り、接触角は80°であり、クロムメッキ層本来の接触角に復元した。また、表面粗さを測定したところ、表1に示される通り、表面粗さRzは0.1μmであり、購入時の表面平滑性に復元した。
(ポリビニルアルコール系フィルムAの製造)
重量平均分子量142000、ケン化度99.8モル%のポリビニルアルコール系樹脂1000kg、水2000kg、可塑剤としてグリセリン100kgを入れ、撹拌しながら150℃まで昇温して、樹脂濃度25%に濃度調整を行い均一に溶解したポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。次に該ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、2軸押出機に供給して脱泡した後、水溶液温度を95℃にし、T型スリットダイ吐出口よりキャストドラムAに、吐出速度1.25m/分で流延して製膜した。
次いで、得られたフィルムを、乾燥し熱処理を行った後、幅4mになるように両端部をスリットで切り落とし、ポリビニルアルコール系フィルムA(膜厚30μm)を得た。
得られたポリビニルアルコール系フィルムAの特性は、表1に示されるとおり良好であった。
(偏光膜Aの製造)
得られたポリビニルアルコール系フィルムAを、水温25℃の水槽に浸漬しつつ、1.7倍に延伸した。次にヨウ素0.5g/L、ヨウ化カリウム30g/Lよりなる28℃の水溶液中に浸漬しつつ1.6倍に延伸し、ついでホウ酸40g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液(55℃)に浸漬するとともに、同時に2.1倍に一軸延伸しつつホウ酸処理を行なった。その後、ヨウ化カリウム水溶液で洗浄行い、乾燥して総延伸倍率5.8倍の偏光膜Aを得た。得られた偏光膜Aの偏光特性を表2に示した。
<実施例2>
ピーク波長185nmのNeArエキシマランプを用いる以外は、実施例1と同様にして、キャストドラムB、ポリビニルアルコール系フィルムB、偏光膜Bを得た。諸特性は表1および表2に示される通りであった。
<実施例3>
ピーク波長254nmのXeIエキシマランプを用いる以外は、実施例1と同様にして、キャストドラムC、ポリビニルアルコール系フィルムC、偏光膜Cを得た。諸特性は表1および表2に示される通りであった。
<比較例1>
キャストドラムを洗浄しなかった以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムと偏光膜を得た。諸特性は表1および表2に示される通りであった。
Figure 0006720865
Figure 0006720865
実施例1〜3のポリビニルアルコール系フィルムは、ヘイズと表面粗さが小さく、且つ欠点が少ないのに対し、比較例1のポリビニルアルコール系フィルムは、ヘイズと表面粗さが大きく、且つ欠点も多いものである。紫外線によりキャストドラムの表面洗浄を行うことで、ヘイズと表面粗さが小さく、且つ欠点が少ないポリビニルアルコール系フィルムを製造できることがわかる。
そして、各々のポリビニルアルコール系フィルムから得られる偏光膜は、実施例1〜3の方が、比較例1よりも優れていることがわかる。
上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。
本発明の偏光膜は、表示欠点が少なく、偏光性能にも優れており、携帯情報端末機、パソコン、テレビ、プロジェクター、サイネージ、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、電子ペーパー、ゲーム機、ビデオ、カメラ、フォトアルバム、温度計、オーディオ、自動車や機械類の計器類などの液晶表示装置、サングラス、防眩メガネ、立体メガネ、ウェアラブルディスプレイ、表示素子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパーなど)用反射低減層、光通信機器、医療機器、建築材料、玩具などに好ましく用いられる。

Claims (12)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を、キャスト型に流涎して製膜し、連続して乾燥するポリビニルアルコール系フィルムの製造方法であり、キャスト型の表面に対する間隙が3mm以下の位置に光源を設置し、該間隙に不活性ガスを送風しながら該キャスト型の表面に紫外線を照射することにより付着した有機物を分解し、表面洗浄することを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
  2. キャスト型が金属メッキされていることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
  3. 金属が、金属クロムであることを特徴とする請求項2記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
  4. キャスト型が、キャストドラムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
  5. キャストドラムが、回転しながら連続的に洗浄されることを特徴とする請求項4記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
  6. 紫外線が、波長270nm以下の短波長紫外線であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
  7. 紫外線の光源が、長さ1m以上の線光源であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
  8. キャスト型表面の水との接触角が、90°以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
  9. キャスト型の表面粗さRzが、0.3μm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
  10. 請求項1〜のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法により製造されてなることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
  11. フィルムの厚さが5〜30μmであることを特徴とする請求項10記載のポリビニルアルコール系フィルム。
  12. 請求項10または11記載のポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光膜。
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