JP2017040880A - 偏光フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを製造する方法において、製造工程中におけるフィルム破断を抑制することができる方法を提供する。【解決手段】長さ1000m以上のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して少なくとも延伸処理、染色処理、及び架橋処理を施して偏光フィルムを製造する方法であって、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ATR−IR法による赤外分光スペクトルから次式:指標α=(A1043−A1160)/(A1093−A1160)[式中、A1043、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1043、1160及び1093cm-1における吸光度である。]で求められる指標αが0.73以上である方法が提供される。【選択図】図1

Description

本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを製造するための方法に関する。
偏光フィルムには、延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料のような二色性色素を吸着配向させたものが従来用いられている。偏光フィルムは通常、その片面又は両面に接着剤を用いて保護フィルムを貼合して偏光板とされる。偏光板は、液晶テレビ、パーソナルコンピュータ用モニター等の他、スマートフォンやタブレット端末に代表されるモバイル機器等の画像表示装置(液晶表示装置等)に広く用いられている。
一般に偏光フィルムは、連続的に搬送される長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤浴、染色浴、架橋浴のような処理浴に順次浸漬する処理を施すとともに、いずれかの段階で延伸処理を施すことによって製造される〔例えば、特開2011−186084号公報(特許文献1)〕。
特開2011−186084号公報
画像表示装置の薄型軽量化への要請から、近年益々、偏光フィルムの薄膜化が要求されているが、偏光フィルムが薄膜になるほど製造工程中にフィルムが破断するという問題が益々顕在化するようになっている。製造工程中のフィルム破断は、偏光フィルムの安定的な製造を妨げ、製造効率及び歩留まりを低下させる。特許文献1は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸中に起こるフィルム破断を抑制するために、3段以上の連続するホウ酸処理工程を設け、該ホウ酸処理工程の3段目以降に、少なくとも1本のガイドロールを介して1.5倍以上の一軸延伸を行う高延伸処理工程を設け、該工程におけるフィルム搬送方向の上流側のニップロールから最初のガイドロールに接触するまでのフィルムの滞留時間を4秒以下とすることを提案している。
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを製造する方法において、製造工程中におけるフィルム破断を抑制することができる新たな方法を提供することにある。
本発明は、以下に示す偏光フィルムの製造方法を提供する。
[1]長さ1000m以上のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して少なくとも延伸処理、染色処理、及び架橋処理を施して偏光フィルムを製造する方法であって、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ATR−IR法による赤外分光スペクトルから下記式(1):
指標α=(A1043−A1160)/(A1093−A1160) (1)
[式中、A1043、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1043、1160及び1093cm-1における吸光度である。]
で求められる指標αが0.73以上である、方法。
[2]前記延伸処理前において前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの平均膜厚が10〜60μmである、[1]に記載の方法。
[3]前記延伸処理前において前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの幅方向における最大膜厚と最小膜厚との差が平均膜厚の10%以下である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記延伸処理における延伸倍率が3.5倍以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記延伸処理を施した後の延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ATR−IR法による赤外分光スペクトルから下記式(2):
指標β=(A1143−A1160)/(A1093−A1160) (2)
[式中、A1143、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1143、1160及び1093cm-1における吸光度である。]
で求められる指標βが下記式(3):
β≧(0.78/前記延伸処理前の平均膜厚)+0.56 (3)
を満たす、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、偏光フィルム製造工程中のフィルム破断を抑制することができる。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法の一例を示すフローチャートである。
<偏光フィルムの製造方法>
本発明に係る偏光フィルムの製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して少なくとも延伸処理、染色処理、及び架橋処理を施して偏光フィルムを製造する方法に関する。本明細書では、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを製造するにあたってポリビニルアルコール系樹脂フィルムに施すあらゆる処理を総称して「偏光フィルム化処理」ともいう。以下、偏光フィルム化処理に供されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムについて説明した後、各処理工程について説明する。
(1)ポリビニルアルコール系樹脂フィルム
偏光フィルム化処理に供されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂で構成されるフィルムである。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体の例は、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、及びアンモニウム基を有するアクリルアミド類等を含む。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は通常、85〜100mol%程度であり、98mol%以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール又はポリビニルアセタール等を用いることもできる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は通常、1000〜10000程度であり、1500〜5000程度が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準拠して求めることができる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものがポリビニルアルコール系樹脂フィルムである。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。本発明で用いるポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、その単独(単層)フィルムである。
偏光フィルム化処理に供されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、可塑剤を含有する。可塑剤は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの製膜用材料(ポリビニルアルコール系樹脂組成物)に含有させ、これを製膜することによってポリビニルアルコール系樹脂フィルムに含有、分散させることができる。
可塑剤の好ましい例は多価アルコールであり、その具体例は、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール等を含む。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、1種又は2種以上の可塑剤を含有することができる。中でも、フィルム破断抑制の観点から、可塑剤はグリセリンを含むことが好ましい。
1つの好ましい実施形態において、偏光フィルム化処理に供されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムにおける可塑剤の含有量は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常3重量部以上であり、好ましくは5重量部以上、より好ましくは7重量部以上である。
可塑剤の含有量は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、例えば20重量部以下であり、好ましくは18重量部以下であり、さらに好ましくは15重量部以下である。可塑剤の含有量が過度に多いと、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの可撓性が大きくなり過ぎて取扱性が低くなり得る。
可塑剤の含有量は、例えばポリビニルアルコール系樹脂フィルムからメタノールによりソックスレー抽出を行い、その前後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの重量差として求めることができる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂の重量は、ソックスレー抽出した後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの重量として求めることができる。
本発明において、偏光フィルム化処理に供されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ATR−IR法(Attenuated total Reflection Infrared Spectroscopy;全反射減衰赤外分光法)による赤外分光スペクトルから下記式(1):
指標α=(A1043−A1160)/(A1093−A1160) (1)
で求められる指標αが0.73以上であり、好ましくは0.74以上、より好ましくは0.75以上である。式(1)中、A1043、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1043、1160及び1093cm-1における吸光度である。指標αは、非結晶性のポリビニルアルコール系樹脂の量に対する可塑剤(典型的にはグリセリンのような多価アルコール)の量の比についての指標となるパラメータである。指標αが大きいほど可塑剤の含有量が高いといえる。
指標αが上記範囲にあるポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して偏光フィルム化処理を施すことによって、指標αが上記範囲より小さい場合と比較して、偏光フィルム化処理中におけるフィルム破断頻度を有意に低減させることができる。これにより、長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを連続的に偏光フィルム化処理に供しても製造効率を下げることなく、薄膜の偏光フィルムを安定的にかつ高収率で製造することができる。
フィルム破断頻度の低減効果は、指標αを上記範囲まで高めたことによるフィルムの機械的強度の向上に起因すると考えられる。すなわち、指標αが上記範囲にあるポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して延伸処理を行うことにより、延伸により薄膜化されるにもかかわらず、一方でこの延伸によりフィルムの結晶化度を高めることが可能となり、この結晶化度の向上とともに機械的強度が高まるものと考えられる。
指標αは、例えば1.00以下であり、好ましくは0.97以下であり、さらに好ましくは0.95以下である。指標αが過度に高いと、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの可撓性が大きくなり過ぎて取扱性が低くなり得る。
指標αを求める際の赤外分光スペクトルの測定条件は、後述する実施例の項に記載に従う。
偏光フィルム化処理に供されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの長さは、1000m以上であり、好ましくは3000m以上、より好ましくは4000m以上である。本発明によれば、長さ1000m以上の長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを連続的に偏光フィルム化処理に供しても製造効率を下げることなく、薄膜の偏光フィルムを安定的にかつ高収率で製造することができる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの幅は、例えば1500〜6000mm程度である。
偏光フィルム化処理に供される、従って延伸処理前のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの平均膜厚は、例えば75μm以下であり、好ましくは65μm以下であり、より好ましくは60μm以下である。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの平均膜厚が小さいほど偏光フィルム化処理においてフィルム破断を生じやすいが、本発明によれば、上記範囲のような薄膜であってもフィルム破断を効果的に抑制することができる。また、延伸処理前のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの平均膜厚は、通常10μm以上である。これより薄いと、延伸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの取扱が困難となる。
偏光フィルム化処理に供される、従って延伸処理前のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの幅方向における最大膜厚と最小膜厚との差は、上記平均膜厚の10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましい。〔(最大膜厚−最小膜厚)/平均膜厚〕×100(以下、「膜厚バラツキ」ともいう。)を小さくすること、とりわけ10%以下にすることは、偏光フィルム化処理中のフィルム破断を抑制するうえで有利である。また、膜厚バラツキが小さく、従って光学特性のムラが小さい偏光フィルムを得るうえでも有利である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの平均膜厚及び膜厚バラツキは、後述する実施例の項に記載の方法に従って測定される。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、これを巻回してなるフィルムロールとして用意され、そこからポリビニルアルコール系樹脂フィルムを巻き出すとともに連続搬送しながら、偏光フィルム化処理に供される。以下では、図1を参照しながら、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの偏光フィルム化処理について説明する。図1は、本発明に係る偏光フィルムの製造方法の一例を示すフローチャートである。
(2)延伸処理工程S10
延伸処理工程S10は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して延伸処理を施す工程である。この延伸は通常、縦一軸延伸である。図1には一例として、未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、まず延伸処理を実施する態様を示しているが、延伸処理工程の実施時期はこれに限定されず、偏光フィルム化処理のスタート時から乾燥処理工程S50の前までの間のいずれかの段階で行えばよく、この間の複数の段階で延伸処理を行うこともできる。
延伸方式は、大気中(空中)で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、水溶液等の液中で延伸を行う湿式延伸であってもよい。乾式延伸としては、表面が加熱された熱ロールと、この熱ロールとは周速の異なるガイドロール(又は熱ロールであってもよい。)との間を通すことにより、熱ロールと接触することで生じる加熱状態下に縦延伸を行う熱ロール延伸;距離を置いて設置された2つのニップロール間にある加熱手段(オーブン等)を通過させながら、これら2つのニップロール間の周速差によって縦延伸を行うロール間延伸;圧縮延伸等を挙げることができる。偏光フィルム化処理においてまず延伸処理を実施する場合、この延伸は通常、乾式延伸である。また湿式延伸としては、染色処理浴や架橋処理浴のような処理浴中に浸漬しながら延伸を行う方法が挙げられ、この場合の延伸方式は通常、ロール間延伸である。2以上の処理浴中で延伸を行ってもよい。延伸処理工程S10は、2種以上の乾式延伸処理を含んでいてもよく、2種以上の湿式延伸処理を含んでいてもよく、乾式延伸処理及び湿式延伸処理の双方を含んでいてもよい。
1つの好ましい実施形態において延伸処理工程S10は、膨潤処理工程S20の前(膨潤処理工程S20を有しない場合は染色処理工程S30の前)に行う延伸処理を少なくとも含む。この延伸処理は通常、上述のように乾式延伸である。かかる乾式延伸、とりわけ熱ロール延伸を実施することにより、得られる偏光フィルムの膜厚の均一性を向上させることができる。
延伸処理工程S10における延伸倍率は、得られる偏光フィルムの光学特性(特に偏光特性)の観点から、好ましくは3.5倍以上であり、より好ましくは4倍以上である。ここでいう延伸倍率は、延伸処理を2回以上実施する場合には、すべての延伸処理を終えた後の累積延伸倍率を意味する。延伸倍率は通常、8倍程度以下である。
延伸処理を施した後(延伸処理を2回以上実施する場合には、すべての延伸処理を終えた後)の延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ATR−IR法による赤外分光スペクトルから下記式(2):
指標β=(A1143−A1160)/(A1093−A1160) (2)
で求められる指標βが下記式(3):
β≧(0.78/延伸処理前の平均膜厚)+0.56 (3)
を満たすことが好ましい。式(2)中、A1143、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1143、1160及び1093cm-1における吸光度である。式(3)における延伸処理前の平均膜厚とは、偏光フィルム化処理に供されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの平均膜厚を意味する。
指標βは、非結晶性のポリビニルアルコール系樹脂の量に対する結晶性のポリビニルアルコール系樹脂の量の比についての指標となるパラメータであり、指標βからポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸による結晶化度を把握することができる。指標βが大きいほど結晶化度が高いといえる。そして、指標βが式(3)を満たすとき、フィルム破断頻度が有意に低減されることが確認されている。これは、結晶化度の向上によりフィルムの機械的強度が高まるためであると考えられる。換言すれば、式(3)を満たすかどうかを確認することによって、十分な破断抑制効果が得られるかどうかを判定することができる。
指標βは、延伸処理を施した直後の延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムについて測定される。直後とは、延伸処理後であって次の処理工程の前までをいう。指標βを求める際の赤外分光スペクトルの測定条件は、後述する実施例の項に記載に従う。
(3)膨潤処理工程S20
膨潤処理工程S20は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム表面の異物除去や染色処理工程での易染色性の付与等の目的で必要に応じて行われる工程であり、長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、少なくとも水を含む膨潤浴に浸漬することにより行うことができる。膨潤浴の温度は、例えば10〜70℃程度であり、好ましくは20〜60℃程度である。2以上の膨潤浴に順次浸漬して膨潤処理を行ってもよい。膨潤浴へのフィルムの浸漬時間は、例えば30秒〜300秒程度、好ましくは60秒〜240秒程度である。
(4)染色処理工程S30
染色処理工程S30は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する工程であり、長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含む染色浴に浸漬することにより行うことができる。2以上の染色浴に順次浸漬して染色処理を行ってもよい。上述のように、染色浴中で湿式延伸を行ってもよい。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。
ヨウ素による染色処理としては通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する染色浴(水溶液)に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。染色浴におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり0.003〜1重量部程度であることができる。ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり0.1〜20重量部程度であることができる。ヨウ化カリウムに代えて、ヨウ化亜鉛等の他のヨウ化物を用いてもよく、ヨウ化カリウムと他のヨウ化物を併用してもよい。染色浴の温度は、10〜45℃程度、好ましくは20〜40℃程度である。染色浴へのフィルムの浸漬時間は、例えば30秒〜600秒程度、好ましくは60秒〜300秒程度である。
一方、二色性有機染料による染色処理としては通常、二色性有機染料を含有する染色浴(水溶液)に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。二色性有機染料は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。二色性有機染料を含有する染色浴は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含有していてもよい。この染色浴における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり1×10-4〜10重量部程度であることができる。染色浴の温度は、20〜80℃程度、好ましくは30〜70℃程度である。染色浴へのフィルムの浸漬時間は、例えば30秒〜600秒程度、好ましくは60秒〜300秒程度である。
(5)架橋処理工程S40
架橋処理工程S40は、架橋による耐水化やフィルムの色相調整等の目的で行われる工程であり、染色された長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、架橋剤を含む架橋浴に浸漬することにより行うことができる。2以上の架橋浴に順次浸漬して架橋処理を行ってもよい。上述のように、架橋浴中で湿式延伸を行ってもよい。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。架橋剤は1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でもホウ酸が好ましく用いられる。
架橋浴における架橋剤の含有量は、水100重量部あたり2〜15重量部程度であることができる。架橋浴は、ヨウ化カリウムに代表されるヨウ化物を含有することができる。ヨウ化物の含有量は、水100重量部あたり0.1〜20重量部程度であることができる。架橋浴の温度は、10〜85℃程度、好ましくは50〜80℃程度である。架橋浴へのフィルムの浸漬時間は、例えば10〜600秒程度、好ましくは60〜420秒程度、より好ましくは90〜300秒程度である。
(6)洗浄処理工程S50
架橋処理工程後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、洗浄処理される。洗浄処理工程S50は通常、水洗浄工程を含む。水洗浄処理は、架橋処理工程後のフィルムをイオン交換水、蒸留水等の純水に浸漬、純水をシャワーとして噴霧、あるいは浸漬と噴霧とを併用することにより行うことができる。水洗浄温度は、通常2〜50℃、好ましくは4〜20℃の範囲であり、浸漬時間は2〜120秒程度である。洗浄液には、水のほか、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノール等の液体アルコールを適宜含有させることもできる。なお、洗浄処理工程S50を省略することも可能である。
(7)乾燥処理工程S60
洗浄処理工程S50後に、通常は乾燥処理工程S60を行って偏光フィルムを得る。乾燥処理としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥等の任意の適切な方法を採用し得る。例えば加熱乾燥の場合、乾燥温度は通常、20〜95℃である。乾燥重量法に従う偏光フィルムの水分率は、例えば5〜20重量%程度である。
偏光フィルムの平均膜厚(測定方法はポリビニルアルコール系樹脂フィルムと同じである。)は、例えば2〜30μmであり、好ましくは3〜20μmである。
<偏光板>
以上のようにして製造される偏光フィルムの片面又は両面に接着剤を用いて保護フィルムを貼合することにより偏光板を得ることができる。保護フィルムは、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;又はこれらの混合物、共重合物等からなる樹脂フィルムであることができる。両面に保護フィルムが貼合される場合、それらは、同じ樹脂から構成されるフィルムであってもよいし、互いに異なる樹脂から構成されるフィルムであってもよい。
保護フィルムは、位相差フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。例えば、上記材料からなる樹脂フィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸など)したり、該フィルム上に液晶層などを形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。保護フィルムは、ハードコート層、防眩層、反射防止層、光拡散層、帯電防止層、防汚層、導電層のような表面処理層(コーティング層)を有していてもよい。保護フィルムの厚みは90μm以下が好ましく、より好ましくは5〜60μmである。
保護フィルムを貼合するための接着剤は、紫外線硬化性接着剤のような活性エネルギー線硬化性接着剤や、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液、又はこれに架橋剤が配合された水溶液、ウレタン系エマルジョン接着剤のような水系接着剤を挙げることができる。紫外線硬化性接着剤は、ラジカル重合性の(メタ)アクリル系化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む硬化性樹脂組成物や、カチオン重合性のエポキシ化合物と光カチオン重合開始剤とを含む硬化性樹脂組成物等であることができる。また、カチオン重合性のエポキシ化合物とラジカル重合性の(メタ)アクリル系化合物とを併用し、開始剤として光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤とを併用した硬化性樹脂組成物を用いることもできる。
保護フィルムの貼合に先立ち、偏光フィルムと保護フィルムとの接着性を向上させるために、偏光フィルム及び/又は保護フィルムの貼合面に、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射、プライマー塗布処理、ケン化処理等の表面活性化処理を施してもよい。
活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合、偏光フィルムに接着剤層を介して保護フィルムを積層した後、活性エネルギー線を照射することによって接着剤層を硬化させる。活性エネルギー線は、好ましくは紫外線である。紫外線光源としては、波長400nm以下に発光分布を有する光源が好ましく、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を挙げることができる。
水系接着剤を用いる場合、偏光フィルムに接着剤層を介して保護フィルムを積層した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するために乾燥処理を行う。乾燥は、例えばフィルムを乾燥炉に導入することによって行うことができる。乾燥温度は、好ましくは30〜90℃である。乾燥処理後、室温又はそれよりやや高い温度、例えば20〜45℃程度の温度で養生する工程を設けてもよい。養生温度は、乾燥温度よりも低く設定されるのが一般的である。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
〔1〕ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの指標αの測定
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムのATR−IR法による赤外分光スペクトルをフーリエ変換赤外分光光度計(アジレント・テクノロジー株式会社製の「FT−640」)を用いて測定し、下記式(1):
指標α=(A1043−A1160)/(A1093−A1160) (1)
に従って指標αを算出した。式中、A1043、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1043、1160及び1093cm-1における吸光度である。赤外分光スペクトル測定は以下の条件で行った。
積算回数:16回、
波数分解能:2cm-1
測定波数範囲:4000〜700cm-1
スキャンスピード:5kHz、
ローパスフィルタ:1.28kHz、
光源:MIR、
ビームスプリッタ:KBr、
検出器:DLaTGS,TE Cooled、
結晶:ダイヤモンド、
入射角度:45°。
〔2〕ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの膜厚の測定
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから、長さ方向に10cm間隔で長さ方向5cm×幅方向全幅のサンプルを3本切り出した後、各サンプルの片側の端部から10cm間隔で接触式膜厚計((株)ニコン製の「デジマイクロカウンタMFC−101」)を用いて膜厚を測定し、得られた全ての測定値の平均値を平均膜厚とした。また、全ての測定値の最大値を幅方向における最大膜厚とし、全ての測定値の最小値を幅方向における最小膜厚とした。また、これらの測定値に基づき、下記式:
膜厚バラツキ=〔(最大膜厚−最小膜厚)/平均膜厚〕×100
に従って、膜厚バラツキを算出した。
〔3〕延伸処理を施した後の延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの指標βの測定
延伸処理を施した直後の延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムのATR−IR法による赤外分光スペクトルをフーリエ変換赤外分光光度計(アジレント・テクノロジー株式会社製の「FT−640」)を用いて測定し、下記式(2):
指標β=(A1143−A1160)/(A1093−A1160) (2)
に従って指標βを算出した。式中、A1143、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1143、1160及び1093cm-1における吸光度である。赤外分光スペクトル測定は以下の条件で行った。
積算回数:16回、
波数分解能:2cm-1
測定波数範囲:4000〜700cm-1
スキャンスピード:5kHz、
ローパスフィルタ:1.28kHz、
光源:MIR、
ビームスプリッタ:KBr、
検出器:DLaTGS,TE Cooled、
結晶:ダイヤモンド、
入射角度:45°。
また、下記式(3):
β≧(0.78/延伸処理前の平均膜厚)+0.56 (3)
の充足性を確認した。充足する場合をA、充足しない場合をBとした。
<実施例1>
平均重合度が約2400、ケン化度が99.9モル%以上、可塑剤(グリセリン)含有量がポリビニルアルコールフィルムを構成するポリビニルアルコール100重量部に対して10.0重量部、指標αが0.733、平均膜厚が60.2μm、最大膜厚と最小膜厚との差が平均膜厚の6%であり、長さが5000mのポリビニルアルコールフィルム(PVAフィルム)を、表面温度が122℃の熱ロールを用いて乾式で4.5倍に一軸延伸した。引き続き、緊張状態に保ったまま、40℃の純水に滞留時間1分で浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.1/5/100で28℃の水溶液に滞留時間60秒で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が10.5/7.5/100で72℃の水溶液に滞留時間300秒で浸漬した。引き続き10℃の純水で5秒間洗浄した後、400Nの張力で保持した状態で、40℃で75秒、次いで70℃で30秒乾燥し、ヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを連続的に製造したところ、フィルムの破断頻度はフィルム1kmあたり0.2回/kmと低頻度であり、安定的に偏光フィルムを製造することができた。一軸延伸後の延伸ポリビニルアルコールフィルムの指標βは0.575であった。また、得られた偏光フィルムの平均膜厚は22.1μmであった。PVAフィルムの可塑剤含有量、指標α、平均膜厚、最大膜厚と最小膜厚との差、膜厚バラツキ、長さ、熱ロールの表面温度、得られた偏光フィルムの平均膜厚、指標β、及び破断頻度を表1にまとめた。
<実施例2〜5、比較例1〜2>
表1に記載の可塑剤含有量、指標α、平均膜厚、最大膜厚と最小膜厚との差、膜厚バラツキ、及び長さを有するPVAフィルムを表1に記載の表面温度を有する熱ロールを用いて一軸延伸したこと以外は実施例1と同様にして連続的に偏光フィルムを製造した。得られた偏光フィルムの平均膜厚、指標β及び破断頻度を表1に示す。
Figure 2017040880
<実施例6>
平均重合度が約2400、ケン化度が99.9モル%以上、可塑剤(グリセリン)含有量がポリビニルアルコールフィルムを構成するポリビニルアルコール100重量部に対して10.2重量部、指標αが0.754、平均膜厚が29.4μm、最大膜厚と最小膜厚との差が平均膜厚の5%であり、長さが5000mのポリビニルアルコールフィルム(PVAフィルム)を、表面温度が116℃の熱ロールを用いて乾式で4.1倍に一軸延伸した。引き続き、緊張状態に保ったまま、40℃の純水に滞留時間1分で浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.1/5/100で28℃の水溶液に滞留時間60秒で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が10.5/7.5/100で65℃の水溶液に滞留時間300秒で浸漬した。引き続き10℃の純水で5秒間洗浄した後、400Nの張力で保持した状態で、40℃で75秒、次いで70℃で30秒乾燥し、ヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを連続的に製造したところ、フィルムの破断頻度は0.1回/kmと低頻度であり、安定的に偏光フィルムを製造することができた。一軸延伸後の延伸ポリビニルアルコールフィルムの指標βは0.597であった。また、得られた偏光フィルムの平均膜厚は12.0μmであった。PVAフィルムの可塑剤含有量、指標α、平均膜厚、最大膜厚と最小膜厚との差、膜厚バラツキ、長さ、熱ロールの表面温度、得られた偏光フィルムの平均膜厚、指標β、及び破断頻度を表2にまとめた。
<実施例7、比較例3>
表2に記載の可塑剤含有量、指標α、平均膜厚、最大膜厚と最小膜厚との差、膜厚バラツキ、及び長さを有するPVAフィルムを表2に記載の表面温度を有する熱ロールを用いて一軸延伸したこと以外は実施例6と同様にして連続的に偏光フィルムを製造した。得られた偏光フィルムの平均膜厚、指標β及び破断頻度を表2に示す。
Figure 2017040880
<実施例8>
平均重合度が約2400、ケン化度が99.9モル%以上、可塑剤(グリセリン)含有量がポリビニルアルコールフィルムを構成するポリビニルアルコール100重量部に対して10.1重量部、指標αが0.741、平均膜厚が20.1μm、最大膜厚と最小膜厚との差が平均膜厚の8%であり、長さが5000mのポリビニルアルコールフィルム(PVAフィルム)を、表面温度が105℃の熱ロールを用いて乾式で4.1倍に一軸延伸した。引き続き、緊張状態に保ったまま、30℃の純水に滞留時間1分で浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.1/5/100で28℃の水溶液に滞留時間60秒で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が10.5/7.5/100で64℃の水溶液に滞留時間300秒で浸漬した。引き続き10℃の純水で5秒間洗浄した後、400Nの張力で保持した状態で、40℃で75秒、次いで70℃で30秒乾燥し、ヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを連続的に製造したところ、フィルムの破断頻度は0.1回/kmと低頻度であり、安定的に偏光フィルムを製造することができた。一軸延伸後の延伸ポリビニルアルコールフィルムの指標βは0.601であった。また、得られた偏光フィルムの平均膜厚は7.2μmであった。PVAフィルムの可塑剤含有量、指標α、平均膜厚、最大膜厚と最小膜厚との差、膜厚バラツキ、長さ、熱ロールの表面温度、得られた偏光フィルムの平均膜厚、指標β、及び破断頻度を表3にまとめた。
<実施例9〜11>
表3に記載の可塑剤含有量、指標α、平均膜厚、最大膜厚と最小膜厚との差、膜厚バラツキ、及び長さを有するPVAフィルムを表3に記載の表面温度を有する熱ロールを用いて一軸延伸したこと以外は実施例8と同様にして連続的に偏光フィルムを製造した。得られた偏光フィルムの平均膜厚、指標β及び破断頻度を表3に示す。
Figure 2017040880

Claims (5)

  1. 長さ1000m以上のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して少なくとも延伸処理、染色処理、及び架橋処理を施して偏光フィルムを製造する方法であって、
    前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ATR−IR法による赤外分光スペクトルから下記式(1):
    指標α=(A1043−A1160)/(A1093−A1160) (1)
    [式中、A1043、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1043、1160及び1093cm-1における吸光度である。]
    で求められる指標αが0.73以上である、方法。
  2. 前記延伸処理前において前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの平均膜厚が10〜60μmである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記延伸処理前において前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの幅方向における最大膜厚と最小膜厚との差が平均膜厚の10%以下である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記延伸処理における延伸倍率が3.5倍以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記延伸処理を施した後の延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ATR−IR法による赤外分光スペクトルから下記式(2):
    指標β=(A1143−A1160)/(A1093−A1160) (2)
    [式中、A1143、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1143、1160及び1093cm-1における吸光度である。]
    で求められる指標βが下記式(3):
    β≧(0.78/前記延伸処理前の平均膜厚)+0.56 (3)
    を満たす、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
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