JP2017040880A - 偏光フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]長さ1000m以上のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して少なくとも延伸処理、染色処理、及び架橋処理を施して偏光フィルムを製造する方法であって、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ATR−IR法による赤外分光スペクトルから下記式(1):
指標α=(A1043−A1160)/(A1093−A1160) (1)
[式中、A1043、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1043、1160及び1093cm-1における吸光度である。]
で求められる指標αが0.73以上である、方法。
指標β=(A1143−A1160)/(A1093−A1160) (2)
[式中、A1143、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1143、1160及び1093cm-1における吸光度である。]
で求められる指標βが下記式(3):
β≧(0.78/前記延伸処理前の平均膜厚)+0.56 (3)
を満たす、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して少なくとも延伸処理、染色処理、及び架橋処理を施して偏光フィルムを製造する方法に関する。本明細書では、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを製造するにあたってポリビニルアルコール系樹脂フィルムに施すあらゆる処理を総称して「偏光フィルム化処理」ともいう。以下、偏光フィルム化処理に供されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムについて説明した後、各処理工程について説明する。
偏光フィルム化処理に供されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂で構成されるフィルムである。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体の例は、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、及びアンモニウム基を有するアクリルアミド類等を含む。
指標α=(A1043−A1160)/(A1093−A1160) (1)
で求められる指標αが0.73以上であり、好ましくは0.74以上、より好ましくは0.75以上である。式(1)中、A1043、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1043、1160及び1093cm-1における吸光度である。指標αは、非結晶性のポリビニルアルコール系樹脂の量に対する可塑剤(典型的にはグリセリンのような多価アルコール)の量の比についての指標となるパラメータである。指標αが大きいほど可塑剤の含有量が高いといえる。
延伸処理工程S10は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して延伸処理を施す工程である。この延伸は通常、縦一軸延伸である。図1には一例として、未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、まず延伸処理を実施する態様を示しているが、延伸処理工程の実施時期はこれに限定されず、偏光フィルム化処理のスタート時から乾燥処理工程S50の前までの間のいずれかの段階で行えばよく、この間の複数の段階で延伸処理を行うこともできる。
指標β=(A1143−A1160)/(A1093−A1160) (2)
で求められる指標βが下記式(3):
β≧(0.78/延伸処理前の平均膜厚)+0.56 (3)
を満たすことが好ましい。式(2)中、A1143、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1143、1160及び1093cm-1における吸光度である。式(3)における延伸処理前の平均膜厚とは、偏光フィルム化処理に供されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの平均膜厚を意味する。
膨潤処理工程S20は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム表面の異物除去や染色処理工程での易染色性の付与等の目的で必要に応じて行われる工程であり、長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、少なくとも水を含む膨潤浴に浸漬することにより行うことができる。膨潤浴の温度は、例えば10〜70℃程度であり、好ましくは20〜60℃程度である。2以上の膨潤浴に順次浸漬して膨潤処理を行ってもよい。膨潤浴へのフィルムの浸漬時間は、例えば30秒〜300秒程度、好ましくは60秒〜240秒程度である。
染色処理工程S30は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する工程であり、長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含む染色浴に浸漬することにより行うことができる。2以上の染色浴に順次浸漬して染色処理を行ってもよい。上述のように、染色浴中で湿式延伸を行ってもよい。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。
架橋処理工程S40は、架橋による耐水化やフィルムの色相調整等の目的で行われる工程であり、染色された長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、架橋剤を含む架橋浴に浸漬することにより行うことができる。2以上の架橋浴に順次浸漬して架橋処理を行ってもよい。上述のように、架橋浴中で湿式延伸を行ってもよい。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。架橋剤は1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でもホウ酸が好ましく用いられる。
架橋処理工程後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、洗浄処理される。洗浄処理工程S50は通常、水洗浄工程を含む。水洗浄処理は、架橋処理工程後のフィルムをイオン交換水、蒸留水等の純水に浸漬、純水をシャワーとして噴霧、あるいは浸漬と噴霧とを併用することにより行うことができる。水洗浄温度は、通常2〜50℃、好ましくは4〜20℃の範囲であり、浸漬時間は2〜120秒程度である。洗浄液には、水のほか、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノール等の液体アルコールを適宜含有させることもできる。なお、洗浄処理工程S50を省略することも可能である。
洗浄処理工程S50後に、通常は乾燥処理工程S60を行って偏光フィルムを得る。乾燥処理としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥等の任意の適切な方法を採用し得る。例えば加熱乾燥の場合、乾燥温度は通常、20〜95℃である。乾燥重量法に従う偏光フィルムの水分率は、例えば5〜20重量%程度である。
以上のようにして製造される偏光フィルムの片面又は両面に接着剤を用いて保護フィルムを貼合することにより偏光板を得ることができる。保護フィルムは、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;又はこれらの混合物、共重合物等からなる樹脂フィルムであることができる。両面に保護フィルムが貼合される場合、それらは、同じ樹脂から構成されるフィルムであってもよいし、互いに異なる樹脂から構成されるフィルムであってもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムのATR−IR法による赤外分光スペクトルをフーリエ変換赤外分光光度計(アジレント・テクノロジー株式会社製の「FT−640」)を用いて測定し、下記式(1):
指標α=(A1043−A1160)/(A1093−A1160) (1)
に従って指標αを算出した。式中、A1043、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1043、1160及び1093cm-1における吸光度である。赤外分光スペクトル測定は以下の条件で行った。
波数分解能:2cm-1、
測定波数範囲:4000〜700cm-1、
スキャンスピード:5kHz、
ローパスフィルタ:1.28kHz、
光源:MIR、
ビームスプリッタ:KBr、
検出器:DLaTGS,TE Cooled、
結晶:ダイヤモンド、
入射角度:45°。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから、長さ方向に10cm間隔で長さ方向5cm×幅方向全幅のサンプルを3本切り出した後、各サンプルの片側の端部から10cm間隔で接触式膜厚計((株)ニコン製の「デジマイクロカウンタMFC−101」)を用いて膜厚を測定し、得られた全ての測定値の平均値を平均膜厚とした。また、全ての測定値の最大値を幅方向における最大膜厚とし、全ての測定値の最小値を幅方向における最小膜厚とした。また、これらの測定値に基づき、下記式:
膜厚バラツキ=〔(最大膜厚−最小膜厚)/平均膜厚〕×100
に従って、膜厚バラツキを算出した。
延伸処理を施した直後の延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムのATR−IR法による赤外分光スペクトルをフーリエ変換赤外分光光度計(アジレント・テクノロジー株式会社製の「FT−640」)を用いて測定し、下記式(2):
指標β=(A1143−A1160)/(A1093−A1160) (2)
に従って指標βを算出した。式中、A1143、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1143、1160及び1093cm-1における吸光度である。赤外分光スペクトル測定は以下の条件で行った。
波数分解能:2cm-1、
測定波数範囲:4000〜700cm-1、
スキャンスピード:5kHz、
ローパスフィルタ:1.28kHz、
光源:MIR、
ビームスプリッタ:KBr、
検出器:DLaTGS,TE Cooled、
結晶:ダイヤモンド、
入射角度:45°。
β≧(0.78/延伸処理前の平均膜厚)+0.56 (3)
の充足性を確認した。充足する場合をA、充足しない場合をBとした。
平均重合度が約2400、ケン化度が99.9モル%以上、可塑剤(グリセリン)含有量がポリビニルアルコールフィルムを構成するポリビニルアルコール100重量部に対して10.0重量部、指標αが0.733、平均膜厚が60.2μm、最大膜厚と最小膜厚との差が平均膜厚の6%であり、長さが5000mのポリビニルアルコールフィルム(PVAフィルム)を、表面温度が122℃の熱ロールを用いて乾式で4.5倍に一軸延伸した。引き続き、緊張状態に保ったまま、40℃の純水に滞留時間1分で浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.1/5/100で28℃の水溶液に滞留時間60秒で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が10.5/7.5/100で72℃の水溶液に滞留時間300秒で浸漬した。引き続き10℃の純水で5秒間洗浄した後、400Nの張力で保持した状態で、40℃で75秒、次いで70℃で30秒乾燥し、ヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを連続的に製造したところ、フィルムの破断頻度はフィルム1kmあたり0.2回/kmと低頻度であり、安定的に偏光フィルムを製造することができた。一軸延伸後の延伸ポリビニルアルコールフィルムの指標βは0.575であった。また、得られた偏光フィルムの平均膜厚は22.1μmであった。PVAフィルムの可塑剤含有量、指標α、平均膜厚、最大膜厚と最小膜厚との差、膜厚バラツキ、長さ、熱ロールの表面温度、得られた偏光フィルムの平均膜厚、指標β、及び破断頻度を表1にまとめた。
表1に記載の可塑剤含有量、指標α、平均膜厚、最大膜厚と最小膜厚との差、膜厚バラツキ、及び長さを有するPVAフィルムを表1に記載の表面温度を有する熱ロールを用いて一軸延伸したこと以外は実施例1と同様にして連続的に偏光フィルムを製造した。得られた偏光フィルムの平均膜厚、指標β及び破断頻度を表1に示す。
平均重合度が約2400、ケン化度が99.9モル%以上、可塑剤(グリセリン)含有量がポリビニルアルコールフィルムを構成するポリビニルアルコール100重量部に対して10.2重量部、指標αが0.754、平均膜厚が29.4μm、最大膜厚と最小膜厚との差が平均膜厚の5%であり、長さが5000mのポリビニルアルコールフィルム(PVAフィルム)を、表面温度が116℃の熱ロールを用いて乾式で4.1倍に一軸延伸した。引き続き、緊張状態に保ったまま、40℃の純水に滞留時間1分で浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.1/5/100で28℃の水溶液に滞留時間60秒で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が10.5/7.5/100で65℃の水溶液に滞留時間300秒で浸漬した。引き続き10℃の純水で5秒間洗浄した後、400Nの張力で保持した状態で、40℃で75秒、次いで70℃で30秒乾燥し、ヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを連続的に製造したところ、フィルムの破断頻度は0.1回/kmと低頻度であり、安定的に偏光フィルムを製造することができた。一軸延伸後の延伸ポリビニルアルコールフィルムの指標βは0.597であった。また、得られた偏光フィルムの平均膜厚は12.0μmであった。PVAフィルムの可塑剤含有量、指標α、平均膜厚、最大膜厚と最小膜厚との差、膜厚バラツキ、長さ、熱ロールの表面温度、得られた偏光フィルムの平均膜厚、指標β、及び破断頻度を表2にまとめた。
表2に記載の可塑剤含有量、指標α、平均膜厚、最大膜厚と最小膜厚との差、膜厚バラツキ、及び長さを有するPVAフィルムを表2に記載の表面温度を有する熱ロールを用いて一軸延伸したこと以外は実施例6と同様にして連続的に偏光フィルムを製造した。得られた偏光フィルムの平均膜厚、指標β及び破断頻度を表2に示す。
平均重合度が約2400、ケン化度が99.9モル%以上、可塑剤(グリセリン)含有量がポリビニルアルコールフィルムを構成するポリビニルアルコール100重量部に対して10.1重量部、指標αが0.741、平均膜厚が20.1μm、最大膜厚と最小膜厚との差が平均膜厚の8%であり、長さが5000mのポリビニルアルコールフィルム(PVAフィルム)を、表面温度が105℃の熱ロールを用いて乾式で4.1倍に一軸延伸した。引き続き、緊張状態に保ったまま、30℃の純水に滞留時間1分で浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.1/5/100で28℃の水溶液に滞留時間60秒で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が10.5/7.5/100で64℃の水溶液に滞留時間300秒で浸漬した。引き続き10℃の純水で5秒間洗浄した後、400Nの張力で保持した状態で、40℃で75秒、次いで70℃で30秒乾燥し、ヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを連続的に製造したところ、フィルムの破断頻度は0.1回/kmと低頻度であり、安定的に偏光フィルムを製造することができた。一軸延伸後の延伸ポリビニルアルコールフィルムの指標βは0.601であった。また、得られた偏光フィルムの平均膜厚は7.2μmであった。PVAフィルムの可塑剤含有量、指標α、平均膜厚、最大膜厚と最小膜厚との差、膜厚バラツキ、長さ、熱ロールの表面温度、得られた偏光フィルムの平均膜厚、指標β、及び破断頻度を表3にまとめた。
表3に記載の可塑剤含有量、指標α、平均膜厚、最大膜厚と最小膜厚との差、膜厚バラツキ、及び長さを有するPVAフィルムを表3に記載の表面温度を有する熱ロールを用いて一軸延伸したこと以外は実施例8と同様にして連続的に偏光フィルムを製造した。得られた偏光フィルムの平均膜厚、指標β及び破断頻度を表3に示す。
Claims (5)
- 長さ1000m以上のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して少なくとも延伸処理、染色処理、及び架橋処理を施して偏光フィルムを製造する方法であって、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ATR−IR法による赤外分光スペクトルから下記式(1):
指標α=(A1043−A1160)/(A1093−A1160) (1)
[式中、A1043、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1043、1160及び1093cm-1における吸光度である。]
で求められる指標αが0.73以上である、方法。 - 前記延伸処理前において前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの平均膜厚が10〜60μmである、請求項1に記載の方法。
- 前記延伸処理前において前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの幅方向における最大膜厚と最小膜厚との差が平均膜厚の10%以下である、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記延伸処理における延伸倍率が3.5倍以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記延伸処理を施した後の延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ATR−IR法による赤外分光スペクトルから下記式(2):
指標β=(A1143−A1160)/(A1093−A1160) (2)
[式中、A1143、A1160及びA1093はそれぞれ、波数1143、1160及び1093cm-1における吸光度である。]
で求められる指標βが下記式(3):
β≧(0.78/前記延伸処理前の平均膜厚)+0.56 (3)
を満たす、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
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