JP5722255B2 - 偏光板の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の製造方法で用いるポリビニルアルコール系フィルムを形成するポリビニルアルコール系樹脂は、通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものが例示される。ケン化度としては、通常85モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは99モル%〜100モル%である。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度としては、通常1000〜10000、好ましくは1500〜5000程度である。
膨潤工程は、フィルム表面の異物除去、フィルム中の可塑剤除去、次の染色工程での易染色性の付与、フィルムの可塑化などの目的で行われる。処理条件はこれらの目的が達成できる範囲で、かつフィルムの極端な溶解、失透などの不具合が生じない範囲で決定される。予め気体中で延伸したフィルムを膨潤させる場合には、たとえば20℃〜70℃、好ましくは30℃〜60℃の水溶液にフィルムを浸漬して行われる。フィルムの浸漬時間は、好ましくは30秒〜300秒、更に好ましくは60秒〜240秒程度である。未延伸の原反フィルムを膨潤させる場合には、たとえば10℃〜50℃、好ましくは20℃〜40℃の水溶液にフィルムを浸漬して行われる。フィルムの浸漬時間は、好ましくは30秒〜300秒、更に好ましくは60秒〜240秒程度である。
二色性色素による染色工程は、フィルムに二色性色素を吸着、配向させるなどの目的で行われる。処理条件はこれらの目的が達成できる範囲で、かつフィルムの極端な溶解、失透などの不具合が生じない範囲で決定される。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、たとえば10℃〜45℃、好ましくは20℃〜35℃の温度で、かつ重量比でヨウ素/ヨウ化カリウム/水=0.003〜0.2/0.1〜10/100の濃度で30秒〜600秒、好ましくは60秒〜300秒間浸漬処理を行う。ヨウ化カリウムに代えて、他のヨウ化物、たとえばヨウ化亜鉛などを用いてもよい。また、他のヨウ化物をヨウ化カリウムと併用してもよい。また、ヨウ化物以外の化合物、たとえばホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルトなどを共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合、ヨウ素を含む点で下記のホウ酸処理と区別される。水100重量部に対し、ヨウ素を0.003重量部以上含んでいるものであれば染色槽と見なせる。
架橋工程は、水100重量部に対してホウ酸を1〜10重量部含有する水溶液に、二色性色素で染色したポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行われる。二色性色素がヨウ素の場合、ヨウ化物を1〜30重量部含有させることが好ましい。ヨウ化物としてはヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛などが挙げられる。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウムなどを共存させてもよい。
架橋工程の後、水洗工程に供される。水洗工程は、たとえば、耐水化および/または色調調整のためにホウ酸処理したポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬、水をシャワーとして噴霧、あるいは浸漬と噴霧を併用することによって行われる。水洗工程における水の温度は、通常、2〜40℃程度であり、浸漬時間は2〜120秒であるのがよい。
水洗工程の後、ポリビニルアルコール系フィルムを第1乾燥工程に供する。第1乾燥工程によりポリビニルアルコール系フィルムの厚みが低減される。本発明においては、厚みの比により適切な乾燥の程度を表すこととする。すなわち、本発明においては、後述する第2乾燥工程後の偏光板中の偏光フィルムの厚みTbに対する、第1乾燥工程後であって貼合工程前の偏光フィルムの厚みTaの比Ta/Tbが1.02〜1.30の関係を満たすように第1乾燥工程および後述する第2乾燥工程の乾燥温度および乾燥時間を制御する。第1乾燥工程における乾燥温度は、たとえば、20〜90℃とすることができ、乾燥時間は、たとえば、10〜300秒間とすることができる。第1乾燥工程において、乾燥温度が20〜70℃であり、乾燥時間が10〜120秒間であることが好ましい。
水分率=(熱処理前の重量−熱処理後の重量)/熱処理前の重量×100(重量/重量%)
により計算して求めることができる。
偏光フィルムの製造工程において、ポリビニルアルコール系フィルムの両端部分に厚みムラが生じることがあるため、この場合は厚みムラが顕著な両端部分を切断して除去する除去工程を有してもよい。除去工程は、たとえば、架橋工程の後であって第1乾燥工程の前に、または、第1乾燥工程の後であって次に説明する貼合工程の前に行なうことができる。本発明においては、偏光フィルムの幅の収縮を抑制することができるので、除去工程により両端部を除去しても、十分な幅を有し、より厚みの均一な偏光フィルムを製造することができる。以上のように製造した偏光フィルムを用いて、さらに以下の工程を経て偏光板を製造する。
偏光フィルムの片面または両面に接着剤層を介して保護フィルムを貼合する。
保護フィルムを構成する材料としては、たとえば、シクロオレフィン系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレンなど、当分野において従来より広く用いられているフィルム材料を挙げることができる。偏光フィルムの両面に保護フィルムが貼合される場合、各々の保護フィルムは同じものであってもよく、異なる種類のフィルムであってもよい。
接着剤層を構成する接着剤としては、水系接着剤、活性エネルギー線硬化型の接着剤などが挙げられる。水系接着剤を用いた場合は、第2乾燥工程において、偏光フィルムの乾燥と接着剤の乾燥を同時に行なうことができるので、好適である。
貼合工程の後、偏光フィルムと保護フィルムとからなる積層体を第2乾燥工程に供して偏光板を製造する。第2乾燥工程により、接着剤を乾燥させ、また偏光板が適切な水分率となるように乾燥させる。第2乾燥工程により、さらにポリビニルアルコール系フィルムの厚みが低減される。本発明においては、厚みの比により適切な乾燥の程度を表すこととする。すなわち、上述の通り、第2乾燥工程後の偏光板中の偏光フィルムの厚みTbに対する、第1乾燥工程後であって貼合工程前の偏光フィルムの厚みTaの比Ta/Tbが1.02〜1.30の関係を満たすように第2乾燥工程の乾燥温度および乾燥時間を制御する。
(偏光フィルムの作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレビニロンVF−PS#7500、重合度2,400、ケン化度99.9モル%以上)を30℃の純水に、フィルムが弛まないように緊張状態を保ったまま浸漬しフィルムを十分に膨潤させた(膨潤工程)。次にヨウ素とヨウ化カリウムが重量比で0.04/2.0/100の30℃の水溶液に浸漬しつつ一軸延伸を行った後(染色工程)、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比で12/4.2/100の56℃水溶液に浸漬して架橋処理しつつ原反からの積算延伸倍率が5.7倍になるまで一軸延伸を行った(架橋工程および延伸工程)。次に、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比で9/2.9/100の40℃水溶液に浸漬し、続いて5℃の純水で洗浄した後、乾燥温度30℃、乾燥時間50秒の乾燥条件で乾燥処理して偏光フィルムを得た(第1乾燥工程)。得られた偏光フィルムは、厚み(Ta)33.1μm、幅(Wa)225mm、水分率30%であった。
アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール系樹脂(商品名「ゴーセファイマーZ−200」、日本合成化学工業(株)製、4%水溶液粘度12.4mPa・sec、ケン化度99.1モル%)を純水に溶解し、10%濃度の水溶液を調製した。このアセトアセチル基変性ポリビニルアルコール系樹脂水溶液と、架橋剤となるグリオキシル酸ナトリウムとを、前者:後者の固形分重量比が1:0.1となるように混合し、さらに水100部に対してアセトアセチル基変性ポリビニルアルコール系樹脂が1部となるように純水で希釈し、接着剤組成物を調製した。
先に得られた偏光フィルムの両面に、ケン化処理が施されたトリアセチルセルロースからなる厚み80μmのフィルム(KC8UX2MW、コニカミノルタオプト(株)製)を、上記接着剤を介して、ニップロールにより貼合し、乾燥温度75℃、乾燥時間150秒の乾燥条件で乾燥処理して(第2乾燥工程)、偏光板を得た。得られた偏光板中の偏光フィルムは、厚み(Tb)27.0μm、幅(Wb)221mm、ホウ素含有率3.8wt%であった。すなわち、Ta/Tbが1.23、Wb/Waが0.982であった。
得られた偏光板の光学性能を求めるために、(株)日本分光製の紫外可視分光光度計V7100に偏光板をセットし、透過方向と吸収方向の偏光板の紫外可視スペクトルを測定した。単体透過率、偏光度(視感度補正偏光度)はJIS−Z8729に準拠して計算にて求めた。実施例1の偏光板の光学特性は、視感度補正単体透過率が42.5%、視感度補正偏光度が99.995%であった。
(偏光フィルムの作製)
第1乾燥工程における乾燥条件を、乾燥温度50℃、乾燥時間50秒間とした点以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムは、厚み(Ta)32.1μm、幅(Wa)219mm、水分率16%であった。
実施例1と同様にして偏光板を得た。得られた偏光板中の偏光フィルムは、厚み(Tb)28.0μm、幅(Wb)217mm、ホウ素含有率3.8wt%であった。すなわち、Ta/Tbが1.15、Wb/Waが0.991であった。実施例2の偏光板の光学特性は、視感度補正単体透過率が42.5%、視感度補正偏光度が99.997%であった。
(偏光フィルムの作製)
実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムは、実施例1と同様に、厚み(Ta)33.1μm、幅(Wa)225mm、水分率30%であった。
第2乾燥工程における乾燥条件を、乾燥温度90℃、乾燥時間150秒間とした点以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板中の偏光フィルムは、厚み(Tb)26.6μm、幅(Wb)219mm、ホウ素含有率3.8wt%であった。すなわち、Ta/Tbが1.24、Wb/Waが0.973であった。実施例3の偏光板の光学特性は、視感度補正単体透過率が42.5%、視感度補正偏光度が99.996%であった。
(偏光フィルムの作製)
架橋処理におけるヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比を12/3.1/100とした以外は実施例2と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムは、厚み(Ta)32.8μm、幅(Wa)226mm、水分率22%であった。
実施例2と同様にして偏光板を得た。得られた偏光板中の偏光フィルムは、厚み(Tb)27.2μm、幅(Wb)223mm、ホウ素含有率3.2wt%であった。すなわち、Ta/Tbが1.21、Wb/Waが0.987であった。実施例4の偏光板の光学特性は、視感度補正単体透過率が42.5%、視感度補正偏光度が99.993%であった。
(偏光フィルムの作製)
第1乾燥工程における乾燥条件を、乾燥温度80℃、乾燥時間150秒間とした点以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムは、厚み(Ta)29.5μm、幅(Wa)213mm、水分率9%であった。
実施例1と同様にして偏光板を得た。得られた偏光板中の偏光フィルムは、厚み(Tb)29.5μm、幅(Wb)213mm、ホウ素含有率3.9wt%であった。すなわち、Ta/Tbが1.00、Wb/Waが1.00であった。比較例1の偏光板の光学特性は、視感度補正単体透過率が42.5%、視感度補正偏光度が99.996%であった。
(偏光フィルムの作製)
積算延伸倍率を5.0倍とした以外は、比較例1と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムは、厚み(Ta)34.4μm、幅(Wa)227mm、水分率9.5%であった。
実施例1と同様にして偏光板を得た。得られた偏光板中の偏光フィルムは、厚み(Tb)34.2μm、幅(Wb)227mm、ホウ素含有率3.9wt%であった。すなわち、Ta/Tbが1.01、Wb/Waが1.00であった。比較例2の偏光板の光学特性は、視感度補正単体透過率が42.5%、視感度補正偏光度が99.980%であった。
Claims (7)
- ポリビニルアルコール系フィルムを二色性色素で染色する染色工程と、
染色した前記ポリビニルアルコール系フィルムを架橋剤を含む溶液に浸漬して架橋する架橋工程と、
架橋した前記ポリビニルアルコール系フィルムを乾燥する第1乾燥工程と、を順に行ないポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光フィルムを製造した後に、
前記偏光フィルムの少なくとも一方の面に接着剤層を介して保護フィルムを貼合して積層体を形成する貼合工程と、
前記積層体を乾燥する第2乾燥工程と、を順に行ない前記積層体からなる偏光板を製造する製造方法であって、
前記第2乾燥工程後の前記偏光板中の前記偏光フィルムの厚みTbに対する、前記第1乾燥工程後であって前記貼合工程前の前記偏光フィルムの厚みTaの比Ta/Tbが1.02〜1.30である、偏光板の製造方法。 - 前記第1乾燥工程後であって前記貼合工程前の前記偏光フィルムの幅Waに対する、前記第2乾燥工程後の前記偏光板中の前記偏光フィルムの幅Wbの比Wb/Waが0.960以上1.000未満である、請求項1に記載の偏光板の製造方法。
- 前記第1乾燥工程後であって前記貼合工程前の前記偏光フィルムの水分率が12〜45%である、請求項1または2に記載の偏光板の製造方法。
- 前記第2乾燥工程後の前記偏光板中の前記偏光フィルムのホウ素の含有率が2.5〜4.5wt%である、請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板の製造方法。
- 前記第2乾燥工程は、前記第1乾燥工程の最高乾燥温度より高い乾燥温度で処理を行なう工程を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板の製造方法。
- 前記第2乾燥工程は、工程開始時の乾燥温度より高い乾燥温度で処理を行なう工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の偏光板の製造方法。
- 前記貼合工程前に前記ポリビニルアルコール系フィルムの両端部を切断して除去する除去工程をさらに有する、請求項1〜6のいずれかに記載の偏光板の製造方法。
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