以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。説明中、「上」、「下」等の方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。
一実施形態に係る液晶表示装置1は、図1に示したように、面状の光を出力する面光源装置2と、面光源装置2から出力された光(以下、「バックライトBL」と称す)によって照明される液晶ディスプレイパネル(以下、「液晶パネル」と称す)3とを備える。
面光源装置2は、導光板(面発光素子)4と、導光板4の側面4a近傍に配置された光源5と、反射部6とを備えるエッジライト方式の面光源装置2である。
導光板4は、側面4aから入射された光を、側面4aと交差した(図1では、直交した)出射面部4bと、出射面部4bと反対側に位置する反射面部4cとの間で全反射させながら導光板4内を伝播させる。
反射面部4cには、全反射条件とは異なる条件で反射する非全反射領域が適宜設けられている。非全反射領域は、印刷ドットといった拡散ドット、線状のレンズ部又はドーム状のレンズ部などが付与された領域であり得る。この非全反射領域で反射した光は、出射面部4bで全反射せずに出射面部4bから外部に出ていく。
従って、上記構成では、導光板4内を全反射しながら伝搬する光の一部が出射面部4bから取り出されるので、導光板4から面状の光が出射される。すなわち、導光板4は、光源5から出射された光を面状の光に変換している。通常、非全反射領域は、面状の光の輝度が面内で均一になるようなパターンで設けられている。導光板4から出射される面状の光が、液晶表示装置1において、液晶パネル3を照明するバックライトBLとして機能する。
光源5は、導光板4の入射面である側面4aに対向して配置されている。光源5の例は、発光ダイオードである。発光ダイオードの例は、青色発光ダイオードに黄色の蛍光体を組み合わせた又は青色発光ダイオードに緑色及び赤色の蛍光体を組み合わせた白色(擬似白色)タイプの発光ダイオード、及び、赤色光、緑色光及び青色光を発光するRGBタイプの発光ダイオードを含む。
光源5が発光ダイオードといった点光源である場合、面光源装置2は、複数の光源5を有し、複数の光源5は、側面4aにおいて導光板4の厚み方向に直交する方向に沿って直線状に配列される。光源5は、点光源に限定されず、蛍光管のような線状光源であってもよい。
図1に例示した面光源装置2においては、導光板4の4つの側面のうちの1つの側面4aに対向してのみ光源5が設けられている。しかしながら、光源5は、例えば、導光板4の少なくとも一つの側面に対して設けられていればよい。
反射部6は、図1において、導光板4及び反射部6の間に模式的に図示されている矢印で示されるように、導光板4の反射面部4cから出射されてきた光を導光板4側に反射する。反射部6は、光の偏光状態を擾乱するように光を反射する反射板であり、例えば、光を乱反射する。反射部6は、例えば、光を乱反射する処理が施された導光板4等を収容する筐体の底面でもよい。
液晶パネル3は、図2に示したように、液晶セル10と、光学積層体11と、前側偏光板12とを有しており、面光源装置2から出力されるバックライト(照明光)BLにより照明されて画像を表示するパネルである。図2では、液晶パネル3の断面構成の一部を拡大して模式的に示している。
(1)液晶セル
液晶セル10は、液晶駆動基板20と、カラーフィルタ基板30と、液晶層40とを含む。
液晶駆動基板20は、透明基板21と、透明基板21上にアレイ状に設けられる画素電極22と、画素電極22を覆うように設けられた配向膜23とを有する。透明基板21の例はガラス基板であり、画素電極22の例は薄膜トランジスタである。配向膜23は、例えば、ポリイミド樹脂からなる膜である。
カラーフィルタ基板30は、透明基板31と、透明基板31上に設けられる透明電極層32と、透明電極層32上に設けられるカラーフィルタ層33と、カラーフィルタ層33上に設けられる配向膜34とを有する。配向膜34は、配向膜23と同様の膜とし得る。
透明基板31の例はガラス基板である。透明電極層32の材料は特に限定されないが、透明電極層32の材料の例は酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO)等、及び、その合金等を含む。通常、酸化インジウム錫(ITO)又は酸化インジウム亜鉛(IZO)が用いられる。
カラーフィルタ層33は、液晶パネル3において画像をカラー表示するための層である。カラーフィルタ層33は、赤色、緑色及び青色に着色された透明着色領域35R,35G,35Bと、それらを区画するブラックマトリクス領域36とを含む。
透明着色領域35R,35G,35Bは、着色用の有機顔料が含まれた熱硬化性樹脂又は感光性樹脂から構成され得る。透明着色領域35R,35G,35Bは、赤色、緑色及び青色のカラーフィルタとして機能する。ブラックマトリクス領域36は、遮光性粒子を含む熱硬化性樹脂又は感光性樹脂から構成され得る。
液晶層40は、一定間隔を空けて配置された液晶駆動基板20と、カラーフィルタ基板30との間に液晶化合物が充填されることによって構成されている。液晶駆動基板20と、カラーフィルタ基板30とは、配向膜23及び配向膜34とが対向するように配置されている。液晶駆動基板20と、カラーフィルタ基板30との間の間隙は、例えば、それらの間にスペーサを設けることで形成され得る。
(2)光学積層体
光学積層体11は、光学フィルム50と背面側偏光板60とを有する積層偏光板である。光学積層体11は、背面側偏光板60が液晶セル10側に位置するように、液晶セル10の面光源装置2側の面に貼合されている。よって、面光源装置2から出射されるバックライトBLは、光学フィルム50に入射される。
(2.1)光学フィルム
光学フィルム50は、400nm以上700nm以下の波長範囲のうちの所定の波長範囲において、特定の方向に偏光している第1の偏光光を主に反射すると共に、400nm以上700nm以下の波長範囲において、上記第1の偏光光の偏光方向に直交する方向に偏光した第2の偏光光を主に透過する所定の波長スペクトルを有する光学フィルムである。
すなわち、光学フィルム50は、偏光分離機能を有すると共に、波長選択機能を有する波長選択性偏光分離フィルムである。光学フィルム50の一例は、特開2012−230361号公報に開示されている光学フィルムである。
上記所定の波長範囲が、青色波長範囲(すなわち、430nm≦λ≦480nm)、緑色波長範囲(すなわち、510nm≦λ≦560)及び赤色波長範囲(すなわち、600nm≦λ≦660nm)である形態を例にして、光学フィルム50の構成について説明する。
図3に示したように、光学フィルム50は、基板51と、基板51上に積層された3個のスタック521,522,523とを有する。スタック521とスタック522との間及びスタック522とスタック523との間にはスペーサ層S1,S1が配置されてもよい。更に、基板51に対して最も上に位置するスタック523上には、スキン層S2が設けられてもよい。
基板51、スペーサ層S1及びスキン層S2は、着目している400〜700nmの波長範囲において、光学フィルム50の光学特性(波長選択性及び偏光分離機能)に影響をほとんど及ぼさないような構成を有し得る。
一実施形態において、基板51、スペーサ層S1及びスキン層S2は、例えば、着目する上記波長範囲に対して光学的に透明で等方性の材料から構成され得る。基板51、スペーサ層S1及びスキン層S2の材料の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。基板51、スペーサ層S1及びスキン層S2の材料は、異なっていてもよい。
一実施形態において、基板51、スペーサ層S1及びスキン層S2の厚さの例は、上記波長範囲より十分大きな(例えば、数μm〜数百μm)厚さであり得る、又は、400〜700nmの波長範囲内のある波長をλpとした場合に、qλp/2(qは1以上の整数)であり得る。一実施形態において、基板51、スペーサ層S1及びスキン層S2の屈折率は、表面反射などが生じないように選択される。
光学フィルム50の説明においては、スタック521,522,523の積層方向をz方向と称する場合もある。スタック521,522,523のz方向に直交する方向をx方向及びy方向と称する場合もある。x方向及びy方向は直交する。x方向及びy方向は、z方向に直交する面内の方向である。
以下の説明では、特に断らない限り、上記第1の偏光光は光学フィルム50への入射光であるバックライトBLのs偏光成分であり、図1に示したx方向が、s偏光成分の偏光方向(電場の振動方向)である。この場合、y方向は、バックライトBLのp偏光成分の偏光方向(電場の振動方向)である。
図4を参照してスタック521〜523の基本構造について、スタック521〜523をスタック52iと称して説明する。iは1,2,3の何れかである。
スタック52iは、第1の光学材料層53iaと、第2の光学材料層53ibとがz方向に積層された基本ブロック(基本対)53iを複数有する。基本ブロック(基本対)53iの数の一例は、25以上100以下であり、好ましくは、25以上50以下である。スタック52iは、複数の基本ブロック53iがz方向に積層された積層体である。従って、スタック52iでは、第1の光学材料層53iaと第2の光学材料層53ibとが交互に積層されている。
スタック52i内の第1の光学材料層53iaの数と第2の光学材料層53ibの数との合計を2M(Mは1以上の整数)とすると、2Mの例は、50以上200以下であり、好ましくは、50以上100以下である。スタック521〜523における基本ブロック531〜533の数或いは層の総数は、スタック521〜523毎に異なっていてもよい。光学フィルム50全体の層の数は、好ましくは、150以上500以下である。
厚さ方向(z方向)に直交する面内(xy平面内)の2つの方向(x方向及びy方向)のうちx方向の第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの屈折率は異なる。具体的には、第1の光学材料層のx方向、y方向及びz方向の屈折率をnia_x、nia_y、nia_zとし、第2の光学材料層53ibのx方向、y方向及びz方向の屈折率をnib_x、nib_y、nib_zとしたとき、
nia_x≠nib_x
が成立する。
この場合、スタック52iにおいて、x方向を特定方向とする第1の偏光光、すなわち、バックライトBLのうちs偏光成分に対しては屈折率差が生じ、p偏光成分に対して屈折率差は生じない。その結果、スタック52iは、スタック52iは、s偏光成分を反射すると共に、p偏光成分を透過する偏光分離機能を有する。
具体的には、図5(a)に示したように、バックライトBLのうちs偏光成分は、隣接する第1の光学材料層53iaと第2の光学材料層53ibの界面において一部が反射される。一方、図5(b)に示したように、バックライトBLのうちp偏光成分は、基本ブロック53iによってほとんど反射されずに各基本ブロック53iをz方向に進行する。よって、スタック52iは、偏光分離機能を有する。図5(a)及び図5(b)に示したスタック52iが有する第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの数は、図示における便宜的な数であり、他の図とは必ずしも一致していない。
第1の光学材料層53iaと第2の光学材料層53ibについて説明する。第1の光学材料層53iaと第2の光学材料層53ibのx方向の屈折率差を|Δni|=|nia_x−nib_x|とすると、|Δni|の例は、0.02以上0.23以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.23)であり、好ましくは、0.02以上0.15以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.15)である。nia_xの方がnib_xより大きくてもよく、nib_xの方がnia_xより大きくてもよい。
第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの材料は、上述した屈折率差に関する条件を満たし得る透明材料であれば特に限定されない。加工の容易性の観点から、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの材料の例は、透明樹脂である。
第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの材料は、それぞれ、結晶性、半結晶性、又はアモルファス性の高分子材料から選択され得る。第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの一方が等方性であり、他方が非等方性である場合、等方性である光学材料層の材料は、好ましくは、結晶性、半結晶性、又はアモルファス性の高分子材料から選択され、非等方性である光学材料層の材料は、好ましくは、結晶性又は半結晶性の高分子材料から選択され得る。
第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの材料の具体例は、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びその異性体(例えば、1,4−PEN、1,5−PEN、2,7―PEN及び2,3−PEN等)、並びに、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、メタクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリスチレン、ポリプロピレン等)、環状ポリオレフィン樹脂を含む。
第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの材料は、PENの共重合体、ポリアルカンテレフタレートの共重合体又はスチレン共重合体であってもよい。PENの共重合体の例は、2,6−,1,4−,1,5−,2,7−及び2,3−ナフタレンジカルボン酸又はそのエステルと、a)テレフタル酸又はそのエステル、b)イソフタル酸又はそのエステル、c)フタル酸又はそのエステル、d)アルカングリコール、e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノール)、又は、f)アルカンジカルボキシル酸(例えば、シクロヘキサンジカルボキシル酸)との共重合体である。ポリアルカンテレフタレートの共重合体の例は、テレフタル酸又はそのエステルと、a)ナフタレンジカルボン酸又はそのエステル、b)イソフタル酸又はそのエステル、c)フタル酸又はそのエステル、d)アルカングリコール、e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノール)、f)アルカンジカルボン酸、及び/又は、g)シクロアルケンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)との共重合体である。スチレン共重合体の例は、スチレンーブタジエン共重合体及びスチレンーアクリロニトリル共重合体である。更に、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの材料はABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体樹脂)、MS樹脂(メタクリル酸メチルースチレン共重合体樹脂)であってもよい。
更に、各第1及び第2の光学材料層53ia,53ibは、例示した高分子又は高分子共重合体の2つ以上の混合物でもよい。上記例示した材料は、吸光係数が小さく、吸収による損失が小さい点でも好ましい。
スタック52iにおける第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの材料の好ましい組み合わせは、PEN/co―PEN、co−PEN/PEN、PET/co―PEN、co−PEN/PET、PEN/sPS、sPS/PEN、PET/sPS、sPS/PET、PEN/EASTER(登録商標)、EASTER/PEN、PET/EASTER又はEASTER/PETである。co―PENは、ナフタレンジカルボン酸に基づく共重合体又は混合物を意味する。EASTERは、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートを意味する。更に、sPSは、シンジオタクチックポリスチレンを意味する。
スタック521〜スタック523の第1の光学材料層531a〜533aの材料は同じであってもよく、スタック521〜スタック523の第2の光学材料層531b〜533bの材料は同じであってもよい。
第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの材料は、上述した屈折率差|Δni|を有すればよい。従って、例えば、第1の光学材料層53iaが等方的な光学材料層であって、第2の光学材料層53ibが非等方的な光学材料層であってもよい。この場合、nia_x=nia_y=nia_z(=nia)及びnia=nib_y=nib_zが成立する。非等方的な光学材料層の材料としては、複屈折性を有する液晶高分子が例示され得る。
第1の光学材料層53iaが等方的な光学材料層であって、第2の光学材料層53ibが非等方的な光学材料層である形態では、第1の光学材料層53iaは、必要な加工条件で処理される際に、x、y及びz方向の屈折率が有意な差を生じない材料であり得ると共に、第2の光学材料層の材料は、加工条件の下で、所定方向の屈折率が大きく変化する材料であり得る。
より確実に偏光を分離する観点から、第1の光学材料層53iaと第2の光学材料層53ibのy方向の屈折率差|δniy|(=|nia,y−nib,y|)及びz方向の屈折率差|δniz|(=|nia,z−nib,z|)は、好ましくは、いずれも0.02未満であり、更に好ましくは0.01以下である。
第1の光学材料層53iaが等方的であって、第2の光学材料層53ibが非等方的である場合、第1の光学材料層53ia内におけるx方向、y方向及びz方向の屈折率nia_x、nia_y、nia_zのうちの任意の2つの方向の屈折率差の大きさは0が好ましいが、0.01以下であればよい。非等方的な第2の光学材料層53ibについては、δnibyzを|nib_y−nib_z|と定義したとき、δnibyzは、好ましくは0.02未満であり、より好ましくは0.01以下である。更に、Δnibxyを|nib_x−nib_y|と定義し、Δnibzxを|nib_z−nib_x|と定義したとき、|Δnibxy−Δnibzx|は、好ましくは0.02未満であり、より好ましくは0.01以下である。
第1及び第2の光学材料層53ia,53ibが有するそれぞれのz方向の厚さtia,tibは、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibそれぞれのx方向及びy方向の長さより十分短い。すなわち、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの形状は薄膜状である。第1及び第2の光学材料層53ia,53ibそれぞれのz方向の厚さtia,tibは、光学フィルム50へのバックライトBLの波長λより小さい。厚さtia,tibの例は、5nm以上400nm以下であり、より好ましい例は、5nm以上200nm以下である。
スタック52i内の全ての第1の光学材料層53iaの厚さtiaは同じであり、スタック52i内の全ての第2の光学材料層53ibの厚さtibは同じである。スタック521〜スタック523の第1の光学材料層53iaの厚さt1a〜t3aはそれぞれ異なると共に、スタック521〜スタック523の第2の光学材料層53ibの厚さt1b〜t3bはそれぞれ異なる。すなわち、次の関係が成立する。
t1a≠t2a≠t3a
t1b≠t2b≠t3b
上記厚さに関する関係が成立することによって、スタック521〜スタック523は主に異なる波長選択性を備える。
次に、光学フィルム50が有する所定の反射スペクトルについて図6を利用して説明する。図6の横軸は、波長(nm)を示しており、縦軸は、反射率(%)を示している。
図6に示したように、所定の反射スペクトル70(以下、単に「反射スペクトル70」と称す)は、s偏光成分の反射スペクトル71と、p偏光成分の反射スペクトル72とを含む。p偏光成分の反射スペクトル72は、400〜700nmの波長範囲において反射率Rが20%以下であるスペクトルである。s偏光成分の反射スペクトル71の例は、青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲においてそれぞれ反射ピーク領域73を有する。図6に示したように、反射スペクトル71は、反射ピーク領域73としての3つの大きな山部を有する。
反射ピーク領域73について、図7を利用して説明する。図7に示した波長範囲における最小波長をλminとし、最大波長をλmaxとする。例えば、図7に示した波長範囲が青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲に対応する場合、λminはそれぞれ例えば430nm、510nm及び600nmであり、λmaxはそれぞれ例えば480nm、560nm及び660nmである。波長範囲λmin〜λmaxにおける反射ピーク領域73内の最大反射率Rmax(図7では、一例としてRmax=100%)に対応するピーク波長をλkと称する。
反射ピーク領域73は、50%以上の反射率を有するスペクトル領域73aであって、波長幅が20〜60nmであるスペクトル領域73aを有する。一実施形態の反射ピーク領域73において、スペクトル領域73aの波長幅は、反射ピークに対応する波長がスペクトル領域73aの最小波長と最大波長の中心になるように設定され得る。
反射ピーク領域73は、反射スペクトル71において、次式で定義されるηが50%以上となる反射率R1を最大反射率Rmaxとして有する領域であり得る。
η=100×(R1−R2)/(R1+R2)
ηの定義式において、R1は、反射スペクトル71(図6参照)が有する複数の反射ピーク(山部の頂部)のうち、ある反射ピークP1の反射率である。R2は、波長が増加又は減少する方向において、反射ピークP1の前側及び後側における反射ピーク各々と、反射ピークP1との間の2つの最小反射率のうちより大きな最小反射率である。
一実施形態において、反射ピーク領域73の形状は、以下の条件1を満たす形状である。
条件1:
{λk−(Δλk/2)}≦λ≦{λk+(Δλk/2)}に対して、R≧50%
好ましくは、反射ピーク領域73の形状は以下の条件2を満たす形状である。
条件2:
{λk−(Δλk/4)}≦λ≦{λk+(Δλk/4)}に対して、R≧80%
他の実施形態において、反射ピーク領域73の形状は、以下の条件3を満たす形状である。
条件3:
{λk−(Δλk/2)}≦λ≦{λk+(Δλk/2)}に対して、R≧80%
条件1〜3において、Δλkは、スペクトル領域73aの波長幅であり、Δλkは、20nm〜60nmである。Δλkは20nm〜45nmがより好ましい。図6は、条件1を満たす場合の反射ピーク領域73の形状を例示しており、条件1において、Δλkは、半値幅に対応する。条件3は、スペクトル領域73aの反射率が80%以上であることを示している。
反射スペクトル70は、液晶表示装置1の光源5の発光スペクトルの特性に応じたスペクトル形状又は液晶パネル3が有するカラーフィルタ層33の光学特性(例えば、吸光特性)に応じたスペクトル形状とし得る。
光学フィルム50を製造する方法の一例について説明する。光学フィルム50を製造する場合、まず、光学フィルム50で実現すべき反射スペクトル70が得られるように光学フィルム50を設計する。
具体的には、光学フィルム50は、スタック52iの個数、及び、各スタック52iにおける第1及び第2の光学材料層53ia,53ibにおける、反射させるべき偏光方向(本実施形態ではx方向)の屈折率差|Δni|、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの厚さtia,tib、基本ブロック53iの数等を設計する。
光学フィルム50の反射スペクトル71は、図5に例示したように、青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲にそれぞれ反射ピーク領域73を有するので、製造する光学フィルム50は、図3に示したように、3つのスタック521〜523を有する。
各スタック52iにおいて、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibにおける屈折率差|Δni|、厚さtia,tib、基本ブロック53iの数等を設計する方法について説明する。
各スタック52iの屈折率差|Δni|、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの厚さtia,tib、基本ブロック53iの数は、反射スペクトル71,72の形状に影響を与える。
従って、各スタック52iの屈折率差|Δni|、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの厚さtia,tib、基本ブロック53iの数は、s偏光成分の反射スペクトル71が青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲においてそれぞれ反射ピーク領域73を示すと共に、p偏光成分の反射スペクトル72が400〜700nmにおいて反射率Rが20%以下となるように設計される。
p偏光成分の反射スペクトル72は、400〜700nmにおいて反射率Rが20%以下であればよいので、反射スペクトル72のスペクトル形状は任意であり得る。s偏光成分の反射スペクトル71は、3種類の色の波長範囲にそれぞれ反射ピーク領域73を有すればよいが、3種類の色の波長範囲それぞれにおける反射ピーク領域73の形状は、光学フィルム50における所望の光学特性に応じた形状に設計され得る。3種類の色の波長範囲にそれぞれ反射ピーク領域73は、好ましくは、上記条件1〜3の何れかを満たす形状に設計される。
スタック52iの構成を設計する方法は少なとも2つある。一つは、λ/4法を用いる方法(例えば、M. Born and E.Wolf, “Principle of Optics,”7th(expanded)edition,Cambridge U. Press, 1999参照)であり、もう一つは最適化アルゴリズムを用いる方法である。
反射スペクトル70に応じたスタック52iの構成を設計する方法について説明する。以下の説明では、設計モデルとして、図3に示した構成においてスキン層S2を除いた構成を採用する。設計において、光学フィルム50への入射光であるバックライトBLのうちx方向に偏光した成分がs偏光成分である。更に、設計において、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの面内においてx方向の屈折率が異なり、y方向の屈折率は同じである。
スタック521〜523は、それぞれ青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲に反射ピーク領域73を有するように設計される。よって、図7を利用した説明で述べた反射ピーク波長λk及び波長幅Δλkをスタック521〜523に対応させて反射ピーク波長λi及び波長幅Δλiとも称す。
λ/4法を利用して、スタック521〜523を設計する方法について説明する。λ/4法では、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibそれぞれのx方向の屈折率nia_x及び屈折率nib_xを、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibのx方向における屈折率差|Δni|を考慮して決定する。
Δniの大きさの一例は、0.02以上0.23以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.23)であり、好ましくは、0.02以上0.15以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.15)である。
設計では、s偏光成分の反射スペクトル71の反射ピーク波長λiを決定する。図6に例示したように、青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲にそれぞれ反射ピーク領域73を有する場合、λ1=460mm、λ2=540nm、λ3=640nmとし得る。
次に、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの厚さtia,tib及びスタック52iの第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの層数を次の式に基づいて決定する。
tia=λi/(4nia_x)
tib=λi/(4nib_x)
第1及び第2の光学材料層53ia,53ibのy方向及びz方向の屈折率は、屈折率nia_x及び屈折率nib_xに応じて、決定すればよい。
基本ブロック53
iの数は、スタック52
iの反射特性における最大反射率をR
i_maxとしたとき、最大反射率R
i_maxに基づいて決定され得る。基本ブロック53
iの数は、スタック52
1〜スタック52
3の間で同じである場合もあるし、異なる場合もあり得る。例えば、基本ブロック53
iの数は、以下の式(1)を利用して決定され得る。
R
i_maxを示す上記式において、Nはスタック52
iが有する第1及び第2の光学材料層53
ia,53
ibの数の総和である。すなわち、N=2Mである。この場合、基本ブロック53
iの数は、N/2である。R
i_maxを示す上記式では、一例として、バックライトBLのスタック52
iへの入射が垂直入射であること、n
ia_x>n
ib_x、及び、スタック52
iへの光の入射側及びスタック52
iから光が出射する側の光学媒体は同じであることを仮定している。式(1)は、バックライトBLの入射状態や周囲の媒体の屈折率などに応じて適宜算出すればよい。
第2の設計方法は、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの厚さtia,tib及び屈折率並びにスタック52iの第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの層数(すなわち、基本ブロック53iの数)を決定するために最適化アルゴリズムを用いる方法である。
最適化アルゴリズムにおいても、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの層数は、スタック52iの反射特性における最大反射率Ri_maxに基づいて決定され得る。各スタック52iの第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの層数もパラメータとなり得る。
しかしながら、パラメータ数を減らす観点から、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの層数、すなわち、基本ブロック53iの数は一定としておくことが好ましい。スタック52iにおける第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの層数は、例えば、50以上200以下であって、光学フィルム50全体の層の数が、150以上500以下の範囲で選択され得る。
最適化アルゴリズムでは、各スタック52iの第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの屈折率差|Δni|、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibのy方向及びz方向の屈折率、及び厚さtia,tibをパラメータとして、シミュレーションを実施して、各スタック52iの反射スペクトルの反射ピーク領域73と、波長幅Δλiに適合するように、各パラメータを最適化する。
最適化アルゴリズムを用いた場合でも、屈折率差Δniの大きさは、前述したように、一例として、0.02以上0.23以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.23)であり、好ましくは、0.02以上0.15以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.15)である。
その後、上記光学フィルム50の設計条件に基づいて、光学フィルム50を製造する。
光学フィルム50の製造において、屈折率差|Δni|は、例示したような屈折率差|Δni|、すなわち、0.02≦|Δni|≦0.23を有し得る第1及び第2の光学材料層53ia,53ibをそれぞれ準備することによって、形成してもよい。
或いは、第1の光学材料層53iaが等方性の光学材料層であり、第2の光学材料層53ibが非等方性の光学材料層である場合、第2の光学材料層53ibの非等方性は、例えば、光学フィルム50としての多層構造を形成した後に、延伸することによって付与してもよい。この場合、延伸方向がx方向となる。
上記光学フィルム50となる多層構造を構成する層にはスペーサ層S1及びスキン層S2としての層も含む。光学フィルム50となる多層構造は、基板51となる層を含んでもよい。
(2.2)背面側偏光板
図2に示したように、背面側偏光板60は、吸収軸SAを有する偏光子61と、偏光子61を保護する偏光子保護層62と、を有する。背面側偏光板60は、吸収軸SAが第1の偏光光の偏光方向と平行になるように光学フィルム50に貼合されている。
偏光子61の例は、一軸延伸された樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向されたフィルムである。偏光子61は、直線偏光特性を有する樹脂フィルムであれば特に限定されず、公知の直線偏光板に使用されるものであればよい。
偏光子61が有する樹脂フィルムの例は、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と称す場合もある)系樹脂フィルムであり、PVA系樹脂フィルムの例はPVAフィルムである。以下、特に断らない限り、偏光子61が有する樹脂フィルムはPVAフィルムとして説明する。
二色性色素は、一軸延伸された樹脂フィルムに、その延伸方向に配向して吸着している。これにより、偏光子61は、二色性色素の配向方向(すなわち、分子長軸方向)に直交する光を透過し、それと直交する方向の光を吸収する二色性、すなわち、偏光特性を有する。二色性色素の例は、ヨウ素および二色性有機染料である。偏光子61の厚さは特に限定されないが、例えば、1μm〜30μmである。
偏光子保護層62は、偏光子61を保護するための層である。偏光子保護層62は、例えば、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル樹脂からなる。一実施形態において、偏光子保護層62は、トリアセチルセルロース(以下、「TAC」とも称す)系フィルムである。TAC系フィルムの例はTACフィルムである。偏光子保護層62の厚さは特に限定されないが、例えば、10μm〜200μmである。
背面側偏光板60は、偏光子61の片面に偏光子保護層62が積層されている形態について限定されず、偏光子61の両面に偏光子保護層62が積層されていてもよい。
偏光子保護層62上には、背面側偏光板60を光学フィルム50に貼合するための粘着剤層63が設けられており、偏光子61上には、背面側偏光板60を液晶駆動基板20に貼合するための粘着剤層64が設けられている。各粘着剤層63,64の厚さの例は特に限定されないが、例えば、5μm〜30μmである。粘着剤層63,64を構成する粘着剤の例はアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤及びシリコーン系粘着剤を含む。
背面側偏光板60の視感度補正単体透過率は38%〜43%である。背面側偏光板60の視感度補正偏光度は99.98%以上である。
視感度度補正単体透過率は、波長毎に求められた単体透過率に視感度補正と呼ばれる感度補正を掛けたものである。視感度補正偏光度は、波長毎に求められた偏光度に視感度補正と呼ばれる感度補正を掛けたものである。
単体透過率及び偏光度は、下記式で定義される数値である。
式(2a)及び式(2b)中のTp(λ)は、入射する波長λnmの直線偏光光とパラレルニコルの関係で測定された背面側偏光板60の透過率(%)である。式(2a)及び式(2b)中のTc(λ)は、入射する波長λnmの直線偏光光とクロスニコルの関係で測定された背面側偏光板60の透過率(%)である。Tp(λ)及びTc(λ)は、分光光度計による紫外可視吸収スペクトルで得られる測定値である。
視感度補正とは、550nmの波長の光に対して感度が一番高い感度を有し、550nmから離れると感度が低下するという人間の目の感度を考慮した補正の概念である。このような視感度補正を考慮した視感度補正透過率及び視感度補正偏光度は、例えば、日本分光株式会社製の分光光度計(型番V7100)で測定され得る。例示した視感度補正単体透過率及び視感度補正偏光度は、視感度補正をJIS−Z8701の2度視野(C光源)に準拠して行って計算された値である。
背面側偏光板60を製造する際のパラメータ、例えば、背面側偏光板60の構成要素の材料及び厚さ並びに偏光子61を製造する際の延伸倍率などは、上述した視感度補正単体透過率及び視感度補正偏光度を有するように設定されていればよい。
光学積層体11において、背面側偏光板60は、吸収軸SAが第1の偏光光の偏光方向と平行になるように、粘着剤層63を介して光学フィルム50に貼合されている。
(3)前側偏光板
前側偏光板12は、吸収軸を有する偏光子12Aと、偏光子12Aを保護する偏光子保護層12Bと、を有する直線偏光板である。前側偏光板12は、直線偏光特性を有すれば特に限定されないが、例えば、偏光子12A及び偏光子保護層12Bの構成は、偏光子61及び偏光子保護層62の構成と同様であり得る。
前側偏光板12は、偏光子12Aにおいて偏光子保護層12Bと反対側に、前側偏光板12を、液晶セル10に貼合するための粘着剤層12Cを有する。粘着剤層12Cの構成は、粘着剤層63,64と同様とし得る。
前側偏光板12は、背面側偏光板60に対してクロスニコルの関係になるようにカラーフィルタ基板30に粘着剤層12Cを介して貼合されている。具体的には、前側偏光板12が有する吸収軸が、背面側偏光板60の吸収軸SAと直交するように、前側偏光板12は、カラーフィルタ基板30に貼合されている。
以上説明した液晶表示装置1では、光源5から出力された光は、導光板4に入射され、導光板4の出射面部4bから面状の光として出射される。導光板4から出射された面状の光は、バックライトBLとして光学フィルム50に入射される。光学フィルム50では、光学フィルム50の反射スペクトルに応じてバックライトBLを反射する。その結果、バックライトBLのうちp偏光成分はほとんど光学フィルム50を透過し、青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲のs偏光成分は選択的に反射される。
光学フィルム50によって反射されたs偏光成分は、導光板4側に戻って、反射面部4c側から反射部6に向けて出射される。反射部6は、導光板4側からの光を乱反射して導光板4に戻す。この反射部6での乱反射により、光の偏光状態が擾乱される。偏光状態が擾乱された光は、導光板4から再度出射されて光学フィルム50にバックライトBLとして入射する。そして、前述したように、バックライトBLのうちs偏光成分は反射され、p偏光成分は透過する。従って、所定波長範囲である青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲のs偏光成分がリサイクルされる。
光学フィルム50を透過したp偏光成分の光は、背面側偏光板60を透過して液晶セル10に入射される。液晶セル10における液晶駆動基板20による液晶層40の駆動状態に応じて、画素毎に、液晶セル10及び前側偏光板12の透過状態が制御され、液晶パネル3に画像が表示される。
液晶表示装置1では、光学フィルム50と背面側偏光板60との積層体である光学積層体11を利用しているため、上述したように、バックライトBLのs偏光成分をリサイクル可能である。バックライトBLのうちリサイクルされるs偏光成分は、光学フィルム50の反射スペクトル71に応じて反射されている。そのため、リサイクルされるs偏光成分の光は、図5に例示した反射ピーク領域73の波長範囲の光である。その結果、光学積層体11からは反射ピーク領域73の波長範囲のp偏光成分の光が選択的により高い強度で出射される。
そのため、光学積層体11を用いることで、輝度、色再現性及びコントラストの向上を図ることが可能であり、結果として、液晶表示装置1における画像の画質を向上可能である。
光学積層体11を用いることで、輝度、色再現性及びコントラストの向上を図ることが可能である点について、輝度、色再現性及びコントラストに対する計算結果を参照して具体的に説明する。色再現性については、後述するNTSC比で評価した。
計算には、図8に示したような、液晶表示装置1の計算モデル80を使用した。計算モデル80は、光学フィルムOF、背面側偏光板PLB、液晶層LC、カラーフィルタ層CF及び前側偏光板PLFが積層された液晶パネルを有する。計算モデル80では、光学フィルムOFにバックライトBLを入射する。計算モデル80では、光学フィルムOFに対してバックライトBLの入射側に反射板Rfを設けた。図8では、説明の便宜のため、偏光板PLと液晶層LCとの間を分離すると共に、カラーフィルタ層CFと前側偏光板PLFとの間を分離して図示している。
計算モデル80において、光学フィルムOFと背面側偏光板PLBの積層体が光学積層体81を構成しており、液晶層LC及びカラーフィルタ層CFの積層体が液晶セル82を構成している。
計算モデル80は、計算のための基本モデルであり、後述する比較用の計算の一例などによっては、光学フィルムOFを設けない場合もあり得る。
計算では、背面側偏光板PLB、光学フィルムOF及びバックライトBLのそれぞれについて、異なる特性(スペクトル特性など)を想定し、それらを組み合わせて、光学フィルムOF及び背面側偏光板PLBからなる光学積層体81を評価した。背面側偏光板PLB、光学フィルムOF及びバックライトBLの光学特性(スペクトルなど)については、実測値又はシミュレーションの値を利用した。具体的に説明する。
[バックライトBL]
バックライトBLとして、次の2つのバックライトBL1,BL2を想定した。
<バックライトBL1>
バックライトBL1は、青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせた白色LEDから出力される光である。
<バックライトBL2>
バックライトBL2は、青色LED、緑色LED、赤色LEDを組み合わせたRGBタイプのLEDから出力される光である。
<光学フィルムOF>
光学フィルムOFとして、光学フィルムOF1,OF2を想定すると共に、光学フィルムF3を準備した。
[光学フィルムOF1,OF2]
光学フィルムOF1,OF2は、図3を利用して説明した光学フィルム50であり、次の仮定の下に設計されたものである。
(a)光学フィルムOF1,OF2は、基板51と、3つのスタック521,522,523を有すると共に、スタック521〜523を分離するスペーサ層S1と、を有する。光学フィルムOF1,OF2は、図3に示したスキン層を有さない。
(b)スタック521〜スタック523の第1の光学材料層531a〜第1の光学材料層533aは同じ高分子から構成されている。同様に、スタック521〜スタック523の第2の光学材料層531b〜第2の光学材料層533bは同じ高分子から構成されている。従って、屈折率に関しては、第1の光学材料層531a〜第1の光学材料層533aの屈折率を区別する必要はなく、第2の光学材料層531b〜第2の光学材料層533bの屈折率を区別する必要はない。そのため、以下では、屈折率に関する表記では、スタック521、スタック522、スタック523を区別する1,2,3の記載を省略する。
(c)第1の光学材料層53ia(iは、1,2,3のいずれかの数)は等方的な光学材料層であり、第2の光学材料層53ibは非等方的な光学材料層である。
(d)第1の光学材料層53iaと第2の光学材料層53ibとはx方向の屈折率が異なる。第2の光学材料層53ibにおいて、y方向及びz方向の屈折率は、第1の光学材料層53iaの屈折率と同じである。従って、等方的な光学材料層である第1の光学材料層53iaの屈折率をna(=na_x=na_y=na_z)とすると、次式が成立する。
na=nb_y=nb_z
(e)スタック52iへは光は、垂直に入射する。
(f)設計のための所定の反射スペクトル70が有するs偏光成分の反射スペクトル71として、図9に示したLED発光スペクトルを採用した。反射スペクトル71において、可視光の青(B)、緑(G)、赤(R)の領域に対応する3つの反射ピーク位置は、それぞれ、462.5nm、532.5nm及び632.5nmとした。p偏光成分の反射スペクトル72は400〜700nmにおける反射率が20%以下であればスペクトル形状は任意でよいため、図9では反射スペクトル72の表示は省略している。
以上の(a)〜(f)の仮定に基づいて、光学フィルムOF1,OF2のパラメータは次の記号を用いて表す。
na、Δn、t1a、t1b、t2a、t2b、t3a、t3b
これらの表記において、aとbは、基本的な光学材料層である第1の光学材料層53iaと第2の光学材料層53ibの2種の高分子を区別するために用いている。naは、第1の光学材料層53iaの屈折率である。Δnは、第1及び第2の光学材料層53ia,53ibのx方向の屈折率差の大きさである。1〜3の数字は3つのスタック521,522,523を区別するために用いている。例えばt1a、t1b、t2a、t2b、t3a、t3bはスタック521、スタック522、スタック523それぞれの基本的な光学材料層の対(基本ブロック)の2つの光学材料層(第1及び第2の光学材料層53ia,53ib)それぞれの厚さを示す。
以下、光学フィルムOF1,OF2の具体的な構成について説明する。
<光学フィルムOF1>
光学フィルムOF1は、基板51上に設置された3つのスタック521,522,523を有する。基板41の屈折率は1.5とした。各スタック52iは、第1の光学材料層53iaと第2の光学材料層53ibの対が、30対積層されて構成されている。naとnb_xの値は、全てのスタック521,522,523について具体的には例えばそれぞれ1.7と1.6である。
第1及び第2の光学材料層53ia,53ibの厚さtia,tibは次の通りである。t1a=67.65nm、t1b=71.88nm、t2a=79.41nm、t2b=84.38nm、t3a=94.12nm、t3b=100.00nm。
隣り合う各スタック52iは、屈折率1.5で厚さが270nm(=540nm/2)の光学材料層としてのスペーサ層S1で隔てられている。光学フィルムOF1の光学材料層の層数は、2枚のスペーサ層S1を含み182層とした。
<光学フィルムOF2>
光学フィルムOF2は、基板51上に設置された3つのスタック521,522,523を有する。光学フィルムOF2において、na=1.528、Δn=0.148、t1a=28.13nm、t1b=121.84nm、t2a=94.57nm、t2b=71.40nm、t3a=143.00nm、t3b=48.36nmであった。スタック521,522,523の光学材料層の数(第1の光学材料層の数と第2の光学材料層の数の和)は50とした。基板51及びスペーサ層S1の屈折率は、光学フィルムOF1の場合と同様に、1.5とした。
[光学フィルムOF3]
3M社製の商品名「Advanced Polarized Film,Version 3」を光学フィルムF3として準備した。
[背面側偏光板PLB]
背面側偏光板PLBとして次の2つの偏光板PL1,PL2を準備した。
<偏光板PL1>
偏光板PL1は、住友化学株式会社製の偏光板(型番SR0641A)である。偏光板PL1では、PVAフィルムにヨウ素が吸着配向している偏光子の片面にポリビニルアルコール系接着剤を介して厚さ40μmのTACからなる偏光子保護層が貼合されている。偏光板PL1の厚さは約70μmである。偏光板PL1は、図2に示した背面側偏光板60に対応する。
[偏光板PL2]
偏光板PL2は、住友化学株式会社製の偏光板(型番SRW062A)である。偏光板PL2では、PVAフィルムにヨウ素が吸着配向している偏光子の両面にポリビニルアルコール系接着剤を介して厚さ40μmのTACからなる偏光子保護層が貼合されている。
偏光板PL2の厚さは約110μmである。偏光板PL2は、図2に示した背面側偏光板60において、偏光子61の両面に偏光子保護層62を設けた形態に対応する。
[前側偏光板PLF]
計算モデル80における前側偏光板PLFには、上述した偏光板PL1を想定した。
[バックライトBLのスペクトル]
バックライトBL1,BL2の分光スペクトル、すなわち、白色LED及びRGBタイプのLEDの発光スペクトルは、図10に示す通りである。図10において横軸は波長(nm)を示しており、縦軸は、相対強度を示している。相対強度は、バックライトBL1,BL2のそれぞれのスペクトルの最大強度で規格化した強度である。
[光学フィルムOF1〜OF3の反射スペクトル]
光学フィルムOF1〜OF3それぞれの反射スペクトルは、図11〜図13に示す通りである。
図11及び図12に示した光学フィルムOF1,OF2の反射スペクトルは、計算値である。具体的には、偏光方向が互いに垂直であるpモード(p偏光成分)とsモード(s偏光成分)の光が光学フィルムOF1,OF2に垂直入射した場合に対して反射スペクトルを計算した。pモードにおいては、電界は入射面(図3におけるyz面)内に偏光し、sモードにおいては、電界は入射面に垂直な面(図3におけるxz面)内で偏光している。光学フィルムOF1,OF2に対する反射スペクトルは400nm〜700nmの範囲内で60点の波長をサンプリングして計算した。光学フィルムOF1,OF2に対して入射光(バックライトBL)が入射する側の媒体は屈折率1.0の空気とした。
図13に示した光学フィルムOF3の反射スペクトルは、株式会社日本分光製の紫外可視分光光度計V7100により測定結果(透過スペクトル)に基づいて算出されたものである。
[偏光板PL1,PL2の光学特性]
株式会社日本分光製の紫外可視分光光度計V7100に偏光板PL1,PL2をそれぞれセットして、透過方向と吸収方向に対して偏光板PL1,PL2の紫外可視分光スペクトルを測定した。
偏光板PL1の視感度補正単体透過率は42.03%であり、視感度補正偏光度は99.995%であった。視感度補正単体透過率及び視感度補正偏光度は、株式会社日本分光製の紫外可視分光光度計V7100を用いて測定した値である。
偏光板PL2の視感度補正単体透過率は43.20%であり、視感度補正偏光度は99.975%であった。視感度補正単体透過率及び視感度補正偏光度は、株式会社日本分光製の紫外可視分光光度計V7100を用いて測定した値である。視感度補正単体透過率及び視感度補正偏光度は、視感度補正をJIS−Z8701の2度視野(C光源)に準拠して行い、計算にて求めた。
[クロスニコルスペクトル測定]
株式会社日本分光製の紫外可視分光光度計V7100に、偏光板PL1と偏光板PL1とのセット(第1の偏光板セット)をクロスニコル状態でセッティングし、紫外可視スペクトルを測定した。
同様に、株式会社日本分光製の紫外可視分光光度計V7100に、偏光板PL1と偏光板Pl2とのセット(第2の偏光板セット)をクロスニコル状態でセッティングし、紫外可視スペクトルを測定した。
第1及び第2の偏光板セットそれぞれの紫外可視スペクトル(透過スペクトル)は図14に示す通りであった。図14に示したスペクトルをクロスニコルスペクトルと称す。
<計算方法>
図8に示した計算モデル80を参照して、前側偏光板PLFから出射される光の特性を評価するデータの算出方法について説明する。評価用データとして、色再現性を示すNTSC比、輝度及びコントラストを算出した。
計算においては、次の点を仮定した。
(a)光学フィルムOFに入射されるバックライトBLのs波(s偏光成分)とp波(p偏光成分)の比率は1:1とした。
(b)光学フィルムOFで反射した光はバックライトBL側に位置する反射板Rfで100%の効率でリサイクルされ、再度光学フィルムOFへ入射する。その際s波とp波の比率は1:1とした。
(c)(b)でのリサイクル回数は10回
(d)光学フィルムOF/背面側偏光板PLB間、背面側偏光板PLB/液晶セル82間で光は反射しない。
(e)光学フィルムOF、背面側偏光板PLB、液晶層LC及びカラーフィルタ層CFでのロスは無い。
NTSC(全米テレビジョン放送方式標準化委員会)比、輝度及びコントラストについて説明する。
[NTSC比]
NTSC色度規格のRGB(x,y)に対するCIE1931色度図での面積をA1とし、計算モデル80を利用して計算されるRGBに対する(x,y)のCIE1931色度図における面積をA2とした場合に面積比(A2/A1)をNTSC比と定義する。NTSC比を色再現性の評価データとする。
NTSC色度規格のRGB(x,y)はそれぞれ、
R(x,y)=(0.670,0.330)
G(x,y)=(0.210,0.710)
B(x,y)=(0.140,0.080)
である。
計算モデル80で計算されるR、G及びBに対する(x,y)は次のようにして算出した。
R表示はRカラーフィルタ、G表示はGカラーフィルタ、B表示はBカラーフィルタを透過したと考えて、RGBそれぞれの表示における三刺激値X,Y,Zを式(3a)、式(3b)及び式(3c)より求める。更に、三刺激値から、CIE1931表色系におけるx及びyを式(4a)及び式(4b)にて求める。式(4a)及び式(4b)のx及びyは、CIE1931表色系で使用されるx及びyであり、図3に示したxyz座標系とは別のものである。
式(3a)、式(3b)及び式(3c)におけるT(λ)は、液晶セル82の透過スペクトルであり、カラーフィルタ層CF、液晶層LC及び前側偏光板PLFそれぞれの透過スペクトルを掛け合わせたものである。液晶層LC及び前側偏光板PLFそれぞれの透過スペクトルを掛け合わせたものを、液晶層LCの有効透過スペクトルLCeffと称す場合もある。
カラーフィルタ層CFの透過スペクトルとしては標準的なカラーフィルタとして、図15に示したスペクトルを使用した。図15において、横軸は、波長(nm)を示し、縦軸は、相対強度(任意単位)を示している。図15には、カラーフィルタ層CFが備える赤色カラーフィルタ(Rカラーフィルタ)のスペクトルR(λ)、緑色カラーフィルタ(Gカラーフィルタ)のスペクトルG(λ)、青色カラーフィルタ(Bカラーフィルタ)のスペクトルB(λ)を示している。
液晶層LCの有効透過スペクトルLCeffとしては、標準的な液晶層の複屈折効果および偏光板の透過スペクトルを仮定し、図16のスペクトルを使用した。図16のスペクトルの計算では前側偏光板PLFの透過率を50%と仮定した。図16において、横軸は、波長(nm)を示し、縦軸は、透過率(%)を示している。
たとえばR表示におけるT(λ)は式(5)で表される。
式(5)中のR(λ)は図15に示したスペクトルであり、LC
eff(λ)は図16に示したスペクトルである。
S(λ)は液晶セル82に入射する光のスペクトルであり、バックライトBLのスペクトル、光学フィルムOFの透過・反射スペクトル及び背面側偏光板PLBの透過スペクトルを掛け合わしたものである。
式(3a),(3b),(3c)のx(λ)、y(λ)、z(λ)はそれぞれ2度視野における等色関数である。式(3a),(3b),(3c)のKはバックライトBLのセルからの出射エネルギーを輝度に規格化する定数であり、K=1366cd/m2として計算した。
[輝度]
式(3a),(3b),(3c)及び式(4a),式(4b)から算出されるRGBそれぞれの輝度を合計したものを白輝度(輝度)とした。
[コントラスト]
上記式(3a)、式(3b)及び式(3c)におけるS(λ)に、バックライトBLのスペクトルと、光学フィルムOFの透過・反射スペクトルと、図14に示したクロスニコルスペクトルとを元に計算したスペクトルを代入し、計算によって算出されたRGBそれぞれの輝度を合計したものを黒輝度とした。そして、コントラストは白輝度/黒輝度によって求めた。
以下、バックライトBL、光学フィルムOF及び背面側偏光板PLBの組み合わせに基づいた実施例及び比較例について説明する。バックライトBLとしてバックライトBL1を使用している実施例1,2及び比較例1〜4について説明する。
(実施例1)
実施例1では、図8に示した計算モデル80において、光学フィルムOFに光学フィルムOF1を使用し、背面側偏光板PLBに偏光板PL1を使用した。実施例1では、偏光板PL1から出射される光の分光スペクトル、NTSC比、輝度及びコントラストをそれぞれ計算した。コントラストの計算において、クロスニコルスペクトルは、図14に示した第1の偏光板セットのスペクトルを使用した。
(実施例2)
実施例1において、光学フィルムOF1の代わりに光学フィルムOF2を使用した点以外は、実施例1と同様にして、偏光板PL1から出射される光の分光スペクトル、NTSC比、輝度及びコントラストをそれぞれ計算した。
(比較例1)
実施例1において、光学フィルムOFを使用しない、すなわち、バックライトBL1が偏光板PL1に直接入射される点以外は、実施例1と同様にして、偏光板PL1から出射される光の分光スペクトル、NTSC比、輝度及びコントラストをそれぞれ計算した。比較例1では、光学フィルムOFを使用していないため、s偏光光のリサイクルは0として計算した。
(比較例2)
実施例1において、光学フィルムOF1の代わりに光学フィルムOF3を用いた点以外は、実施例1と同様にして、偏光板PL1から出射される光の分光スペクトル、NTSC比、輝度及びコントラストを計算した。
(比較例3)
実施例1において、偏光板PL1の代わりに偏光板PL2を使用した点以外は、実施例1と同様にして、NTSC比、輝度及びコントラストを計算した。偏光板PL2を使用しているため、コントラストの計算においては、クロスニコルスペクトルとして、図14に示した第2の偏光板セットのスペクトルを使用した。
(比較例4)
実施例2において、偏光板PL1の代わりに偏光板PL2を使用した点以外は、実施例2と同様にして、NTSC比、輝度及びコントラストを計算した。比較例3の場合と同様に、偏光板PL2を使用しているため、コントラストの計算においては、クロスニコルスペクトルとして、図14に示した第2の偏光板セットのスペクトルを使用した。
次に、バックライトBLとしてバックライトBL2を使用した場合の実施例3,4及び比較例5〜8について説明する。
[実施例3,4及び比較例5〜8]
実施例3、実施例4、比較例5、比較例6、比較例7及び比較例8のそれぞれは、バックライトBL1の代わりにバックライトBL2を使用した点以外は、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3及び比較例4と同様にして、NTSC比、輝度及びコントラストを計算した。実施例3、実施例4、比較例5及び比較例6では、実施例1,2、比較例1及び比較例2の場合と同様に、偏光板PL1から出射される光の分光スペクトルも計算した。
[計算結果及び評価]
実施例1,2及び比較例1,2において計算した偏光板PL1から出射される光の分光スペクトルは、図17に示した通りである。図17では、参考のために、バックライトBL1の分光スペクトルも例示している。図17の横軸は、波長(nm)を示し、縦軸は、バックライトBL1の最大強度に対して規格化した相対強度を示している。
図17に示したように、偏光板PL1に、直接バックライトBL1を入射させた比較例1では、バックライトBL1の分光スペクトルに対して強度の大幅な低下が生じている。これは、s偏光成分をリサイクルしていないからと考えられる。また、比較例1と、光学フィルムOF3を介してバックライトBL1を入射させた比較例2とでは、偏光板PL1からは、バックライトBL1とほぼ同様のスペクトル形状の分光スペクトルを有する光が出射されている。そのため、例えば、青色領域より高い波長では、ほとんど波長選択性が生じていない。
一方、偏光板PL1に、光学フィルム50に対応する光学フィルムOF1,OF2を介してバックライトBL1を入射させた実施例1,2では、図11及び図12に示した光学フィルムOF1,OF2の反射スペクトルに応じて、青色領域、緑色領域及び赤色領域にピーク部分を有する分光スペクトルが得られている。これは、図11及び図12に示した光学フィルムOF1,OF2の反射スペクトルにおいて、s偏光成分(sモード)の光がリサイクルされたからと考えられる。
そして、実施例1,2において計算された分光スペクトルの青色領域におけるピーク部分は、比較例2の対応するピーク部分に比べて、よりシャープな形状になっている。そして、前述したように、比較例2では、緑色領域及び赤色領域ではピーク部分が現れていないのに対して、実施例1,2では、緑色領域及び赤色領域にピーク部分が現れている。すなわち、実施例1,2の光学積層体81は、より高い波長選択性を有する。
実施例3,4及び比較例5,6において計算した偏光板PL1から出射される光の分光スペクトルは、図18に示した通りである。図18では、参考のために、バックライトBL2の分光スペクトルも例示している。図18の横軸は、波長(nm)を示し、縦軸は、バックライトBL2の最大強度に対して規格化した相対強度を示している。
図18に示したように、実施例3,4及び比較例5,6の何れにおいても、偏光板PL1からは、バックライトBL2とほぼ同様のスペクトル形状の分光スペクトルを有する光が出射されている。偏光板PL1に直接バックライトBL2を入射させた比較例5では、大幅な強度の低下が生じている。これは、バックライトBL2のうちs偏光成分がリサイクルされていないからである。
また、実施例3,4及び比較例6を比較すれば、実施例3,4において計算された分光スペクトルの青色領域、緑色領域及び赤色領域におけるピーク部分は、比較例6の対応するピーク部分に比べて、よりシャープな形状になっている。換言すれば、実施例3,4における上記青色領域、緑色領域及び赤色領域におけるピーク部分は、比較例6の対応するピーク部分の内側に位置している。すなわち、実施例3,4の光学積層体11もより高い波長選択性を有する。
従って、図17及び図18の結果より、光学積層体11に対応する、光学フィルムOF1,OF2と偏光板PL1とからなる光学積層体81は、高い波長選択性を有し、且つ、その選択された波長の光を高い強度で出射可能であることがわかる。
実施例1,2及び比較例1〜4のNTSC比、輝度及びコントラストの計算結果は、図19に示す図表の通りである。図19中、NTSC比、輝度及びコントラストの欄における括弧内に、比較例1に対する、実施例1,2及び比較例1〜4のNTSC比、輝度及びコントラストの計算結果の比、すなわち、光学フィルムOFを備えない場合の計算結果に対する比を示している。図19中の評価欄では、比較例1の計算結果を基準としてNTSC比、輝度及びコントラストが全て向上しているものを○と評価し、それ以外を×と評価した。
実施例3,4及び比較例5〜8のNTSC比、輝度及びコントラストの計算結果は、図20に示す図表の通りである。図20中、NTSC比、輝度及びコントラストの欄における括弧内に、比較例5に対する、実施例3,4及び比較例5〜8のNTSC比、輝度及びコントラストの計算結果の比、すなわち、光学フィルムOFを備えない場合の計算結果に対する比を示している。図20中の評価欄では、図19の場合と同様に、比較例5の計算結果を基準としてNTSC比、輝度及びコントラストが全て向上しているものを○と評価し、それ以外を×と評価した。
図19に示されているように、光学積層体81が光学積層体11に対応する実施例1,2では、NTSC比、輝度及びコントラストが、光学フィルム50に対応する光学フィルムOF1,OF2を介さずに偏光板PL1に直接バックライトBLが入射される比較例1に対して全て向上している。
更に、光学フィルムOF1,OF2の代わりに光学フィルムOF3を使用した比較例2では、輝度及びコントラストの点では、比較例1より向上が図れているが、NTSC比、すなわち、色再現性の向上が比較例1に対して図れていない。これに対して、実施例1,2では、光学積層体11を備えることで、NTSC比、輝度及びコントラストの全てが、比較例1に対して向上している。
更に、光学フィルムOF1,OF2を有していても、視感度補正偏光度が99.98%より小さい偏光板PL2を使用した比較例3,4では、コントラストの向上が図れていない。よって、視感度補正偏光度が99.98%以上である偏光板PL1を使用することで、NTSC比、輝度及びコントラストの全ての向上を図ることが可能である。
図20に示した結果から理解されるように、実施例3,4と、比較例5〜8との対比結果は、実施例1,2と、比較例1〜4との対比結果と同様である。
従って、光学積層体81が、光学積層体11に対応する実施例1〜4では、NTSC比、輝度及びコントラストの向上を図ることが可能である。すなわち、光学フィルム50に背面側偏光板60が積層された光学積層体11によって、色再現性、輝度及びコントラストを改善できる。
以上、本発明の種々の実施形態及び実施例について説明した。しかしながら、本発明は上述した種々の実施形態及び実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば、光学フィルム50は、所定方向(第1の偏光光の偏光方向)の屈折率が互いに異なる第1及び第2の光学材料層(第1及び第2の層)が積層された基本対を複数有する、少なくとも一つのスタックを備えてればよい。そして、スタックの個数、及び、少なくとも一つのスタックそれぞれにおける、第1の光学材料層と第2の光学材料層との所定方向の屈折率差、第1及び第2の光学材料層の厚さ、基本対の数は、少なくとも一つのスタック全体による反射スペクトルが、光学フィルムが有するべき反射スペクトルに合致するように設定されていればよい。
また、上記実施形態などの例では、光学フィルム50が有する反射スペクトルの一例として、反射スペクトル71が青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲に反射ピーク領域73を有するとした。しかしながら、前述したように、反射スペクトル71は、50%以上の反射率を有するスペクトル領域73aであって波長幅が20〜60nmであるスペクトル領域73aを含む反射ピーク領域73を少なくとも一つ有すればよい。
更に、光学フィルム50が有する反射スペクトル70は、400〜700nmの波長範囲におけるs偏光成分(第1の偏光光)に対する反射スペクトル71において、スペクトル領域73aを含む反射ピーク領域73を少なくとも一つ有し、かつ、400〜700nmの波長範囲におけるp偏光成分(第2の偏光光)に対する反射スペクトル72において、反射率Rが20%以下であるスペクトルであればよい。
また、第1及び第2の光学材料層(第1及び第2の層)において、屈折率差が生じる所定方向は、光学フィルム50に入射される光におけるs偏光成分の偏光方向に限らず、p偏光成分の偏光方向であってもよい。更に、上記所定方向は、第1及び第2の光学材料層(第1及び第2の層)の面内(例えば、厚さ方向に直交する面内)の方向あるが、例示したx方向に限定されない。
光学フィルム50が備えるスタックの数は、上述したように、少なくとも一つ備えていればよく、具体的には、反射スペクトルにおける反射ピーク領域の数以上であればよい。スタックの数が、反射ピーク領域の数以上である形態では、反射ピーク領域それぞれに対して少なくともスタックを一つ割り当てられるので、光学フィルム50による反射スペクトルを所定の反射スペクトルに合致したものにしやすい。反射ピーク領域の数よりスタック数が多い場合は、例えば、いずれかの波長ピーク領域に応じた反射スペクトルを2個のスタックで実現すればよい。
図2に例示した光学積層体11では、偏光子61の片面に積層された偏光子保護層62は、偏光子61に対して光学フィルム50側に配置されている。しかしながら、偏光子61の片面に偏光子保護層62を設ける場合、光学フィルム50と反対側(液晶セル10側)に偏光子保護層62を配置してもよい。偏光子61の片面又は両面に偏光子保護層62が配置される場合において、偏光子61に対して液晶セル10側に配置される偏光子保護層62は、位相差板としての機能を有してもよい。
液晶パネル及び液晶表示装置において、光学積層体11が有する偏光子61と、液晶セル10との間には、位相差板が更に設けられてもよい。これにより、液晶パネル及び液晶表示装置では、例えば、視野角の拡大を図ることが可能である。位相差板は、例えば、光学積層体11と、液晶セル10との間に配置されていてもよいし、光学積層体11に含まれていてもよい。
光学積層体11に位相差板が含まれる形態では、位相差板は、偏光子61に対して光学フィルム50と反対側に設けられていればよい。光学積層体11が、偏光子61に対して光学フィルム50と反対側(図2において液晶セル10側)に配置される偏光子保護層62を含む形態では、偏光子61と液晶セル10との間の偏光子保護層62が位相差板としての機能を有していてもよい。
液晶パネル3は、液晶セル10に対して、光学積層体11が積層されていればよい。そのため、前側偏光板12を備えない構成であってもよい。この場合、例えば、液晶パネル3を備えた液晶表示装置を製造する際に、前側偏光板をセッティングすればよい。
光学積層体11が有する背面側偏光板60は、粘着剤層を備えているが、粘着剤層を備え無くてもよい。この場合、例えば、光学フィルム50側及び液晶セル10側に粘着剤層等が設けられていればよい。
図1に示した形態では、面発光素子として導光板が例示された。しかしながら、面発光素子としては、いわゆる拡散板であってもよい。この場合、拡散板の背面側に光源が設けられた直下型の面光源装置2或いは液晶表示装置1である。
また、液晶セル10の構成は、図2を利用して説明した形態に限定されず、液晶パネルで、通常、使用される液晶セルであればよい。
更に、光学積層体11は、液晶表示装置に対して使用される場合に限定されず、輝度、色再現性及びコントラストの向上が求められる画像表示装置に適用可能である。