JPWO2017217346A1 - ポリビニルアルコール系フィルム、およびその製造方法、ならびにそのポリビニルアルコール系フィルムを用いた偏光膜 - Google Patents

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Abstract

偏光膜の原反として染色性に優れ、偏光性能に優れた偏光膜を高い生産性で製造することのできるポリビニルアルコール系フィルム、およびその製造方法、ならびにそのポリビニルアルコール系フィルムを用いた偏光膜を提供する。本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、n−ヘキサデカンの液滴の接触から1秒後の、そのn−ヘキサデカンに対する接触角θ1Sが、5〜13°であることを特徴とする。

Description

本発明は、偏光膜の原反として染色性に優れ、偏光性能に優れた偏光膜を高い生産性で製造することのできるポリビニルアルコール系フィルム、およびその製造方法、ならびにそのポリビニルアルコール系フィルムを用いた偏光膜に関する。
従来、ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を水等の溶媒に溶解し、グリセリン等の可塑剤や界面活性剤等の添加剤を配合して製膜用原液を調製した後、溶液流延法(キャスト法)により製膜して、金属加熱ロール等を使用して乾燥することにより製造されている。このようにして製造されるポリビニルアルコール系フィルムは、透明性や染色性に優れたフィルムとして多くの用途に利用されており、その有用な用途の一つに偏光膜があげられる。
偏光膜は、原反となるポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ素等の色素を用いて染色、および延伸して製造される。例えば、ポリビニルアルコール系フィルムを、水(温水を含む)で膨潤させた後、ヨウ素で染色し、ヨウ素分子を配列させるために延伸し、延伸した状態を保持するためにホウ酸などの架橋剤で架橋し、洗浄、および乾燥して製造される。かかる水膨潤、染色、延伸、ホウ酸架橋の各工程は、順序を入れ替えたり、複数の工程が同時に行われたりする。
かかる偏光膜は、携帯情報端末やテレビ等の液晶表示装置の基幹構成部品として使用されている。近年、液晶表示の高輝度化や高精細化に伴い、高い光線透過率と高い偏光度を有する偏光膜が要望されており、さらに、液晶テレビなどの大画面化や薄型化にともない、従来品より一段と幅広長尺薄型な偏光膜が要望されている。
上記要望に応えるためには、従来以上に染色性に優れ、かつ幅広長尺薄型なポリビニルアルコール系フィルムが必要である。ポリビニルアルコール系フィルムの染色性が低い場合には、充分な偏光度が得られず、また偏光ムラが発生しやすい傾向にある。かかる傾向は、特に、薄型の偏光膜の製造において顕著であった。
ポリビニルアルコール系フィルムの染色性を向上するために、特定の周期構造を有するポリビニルアルコール系フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、特定の界面活性剤を含有するポリビニルアルコール系フィルムが提案されている(例えば、特許文献2、3、4参照)。また、膨潤工程の浴温を制御する手法が提案されている(例えば、特許文献5、6参照)。
特開2006−188655号公報 特開2005−206809号公報 特開2005−206810号公報 特開2006−188656号公報 特開2006−065309号公報 特開2014−197050号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術では、フィルム内部の染色性は向上するが、フィルム表面付近の染色性が不充分となる場合があり、その点で改善の余地がある。また、上記特許文献2、3、4に開示の技術では、添加された界面活性剤が、フィルム表面にブリードアウトして充分な染色性が得られない場合があり、その点で改善の余地がある。また、上記特許文献5および6に開示の技術では、浴温により膨潤度を制御できても、原反となるポリビニルアルコール系フィルム自体の染色性が良好でなければ、均一に色素が吸着しないという問題がある。
そこで、本発明ではこのような背景下において、染色性に優れたポリビニルアルコール系フィルムであり、幅広長尺薄型化した場合においても高い偏光度を有し、偏光ムラのない偏光膜を得ることができるポリビニルアルコール系フィルムを提供する。
しかるに、本発明者らはかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、表面が特定の濡れ性を有するポリビニルアルコール系フィルムが、上記課題を解決することを見出した。そして、本発明者らは、上記特定の濡れ性が、n−ヘキサデカンに対する接触角により特定できることを見出した。なお、本発明者らは、水に対する接触角の測定も試みたが、ポリビニルアルコール系フィルムが親水性かつ水膨潤性であるため、精度よく安定的に測定することができず、上記濡れ性を特定できなかった。
すなわち、本発明の第1の要旨は、n−ヘキサデカンの液滴の接触から1秒後の、そのn−ヘキサデカンに対する接触角θ1Sが、5〜13°であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムである。
また、本発明の第2の要旨は、上記第1の要旨のポリビニルアルコール系フィルムを製造する方法であって、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を調製する調製工程と、その調製した水溶液を連続的にキャスト型に流延して製膜する製膜工程と、その製膜したフィルムをキャスト型から剥離した後、乾燥させる乾燥工程とを備えていることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法である。
そして、本発明の第3の要旨は、上記ポリビニルアルコール系フィルムが用いられている偏光膜である。
本発明の第1の要旨のポリビニルアルコール系フィルムは、n−ヘキサデカンの液滴の接触から1秒後の、そのn−ヘキサデカンに対する接触角θ1Sが5〜13°である。このことは、そのポリビニルアルコール系フィルムの表面が特定の濡れ性を有することを示している。そのため、上記ポリビニルアルコール系フィルムは、偏光膜を製造する際の染色性に優れており、そのポリビニルアルコール系フィルムを用いると、高い偏光度を有し染色ムラのない偏光膜を得ることができるという効果を奏する。
特に、上記フィルム両面の、第1の面の上記接触角θ1Sと、第2の面の上記接触角θ1S'との差δθ1S=|θ1S−θ1S'|が、2°以内である場合には、偏光膜を製造する際の染色性が、上記フィルム両面で同じ程度となり、より染色ムラのない偏光膜を得ることができるという効果を奏する。
また、上記フィルム両面の各面において、上記接触角θ1Sと、上記n−ヘキサデカンの液滴の接触から0.1秒後の、そのn−ヘキサデカンに対する接触角θ0Sとの差Δθ=|θ0S−θ1S|が、3〜7°である場合には、偏光膜を製造する際の膨潤性および染色性をより適正化することができ、より一層染色ムラのない偏光膜を得ることができるという効果を奏する。
本発明の第2の要旨の、ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を調製する調製工程と、その調製した水溶液を連続的にキャスト型に流延して製膜する製膜工程と、その製膜したフィルムをキャスト型から剥離した後、乾燥させる乾燥工程とを備えているため、流れ方向(MD方向)に長いポリビニルアルコール系フィルムを連続して製造することができるという効果を奏する。
特に、上記調製工程において、上記ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液が、炭素数10〜30の高級脂肪酸アミド系化合物を、上記ポリビニルアルコール系樹脂に対して0.01〜0.1重量%配合した水溶液を、100〜150℃で調製して得られるものである場合には、上記高級脂肪酸アミド系化合物の溶解性および上記製膜したフィルムのキャスト型からの剥離性に優れており、透明性に優れた上記第1の要旨のポリビニルアルコール系フィルムを得ることができるという効果を奏する。
なかでも、上記調製工程において、配合した上記高級脂肪酸アミド系化合物の10〜90重量%を分解させる場合には、上記n−ヘキサデカンに対する接触角を上記範囲内に設定しやすいポリビニルアルコール系フィルムを得ることができるという効果を奏する。
また、上記調製工程において、上記ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液の調製にかける時間が、5〜40時間である場合には、上記n−ヘキサデカンに対する接触角の制御性により優れたポリビニルアルコール系フィルムを得ることができるという効果を奏する。
そして、上記ポリビニルアルコール系フィルムが、厚さ5〜45μmである場合には、偏光膜の薄型化を図ることができるという効果を奏する。
本発明の第3の要旨の偏光膜は、上記ポリビニルアルコール系フィルムが用いられているため、高い偏光度を有し、染色ムラのないものとすることができるという効果を奏する。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、n−ヘキサデカンの液滴の接触から1秒後の、そのn−ヘキサデカンに対する接触角θ1Sが、5〜13°であることを特徴とするものである。
ここで、接触角は、一般的に、液滴がポリビニルアルコール系フィルム表面に接触した直後から経時的に変化し数秒程度で安定化するが、本発明では、上記のように、液滴の接触から1秒後の接触角θ1Sが特定の値を示すものとなっている。
また、上記接触角は、23℃50%RHで24時間調湿したポリビニルアルコール系フィルムを用い、そのフィルム表面の試験する部分を触れたりこすったりせずに、JIS−R3257(1999)に準じて(θ/2法)測定した、n−ヘキサデカンに対する接触角である。
上記接触角の測定は、市販の接触角測定装置を用いて容易に行うことができ、n−ヘキサデカンを用いれば、接触直後から経時的に連続して精度よく測定できる。さらに、0.1秒刻みの断続的な測定も可能であり、接触角の時間的な変動を追うことができる。
上記ポリビニルアルコール系フィルムは、後に詳しく説明するように、特定の界面活性剤を含有させて特定の条件で調製した、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を用い、連続キャスト法により製造することができる。
そして、上記ポリビニルアルコール系フィルムは、膨潤、染色、ホウ酸架橋、延伸、洗浄、乾燥等の工程を経て、偏光膜に形成される。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、先に述べたように、そのフィルム表面にn−ヘキサデカンの液滴を接触させてから1秒後の接触角θ1Sが、5〜13°であることが必要であり、好ましくは7〜12°、特に好ましくは8〜11°である。この接触角θ1Sの値は、ポリビニルアルコール系フィルムの表面の全体における値である。
すなわち、従来、薄型広幅長尺の偏光膜が求められる中で、偏光膜に用いられるポリビニルアルコール系フィルムの接触角を制御しようという思想はなかった。そこで、本発明者らは、最適な染色性を有する薄型広幅長尺の偏光膜を得るためには、原反のポリビニルアルコール系フィルムの接触角を従来よりも小さい特定の範囲にすればよいことを見出したのである。具体的には、n−ヘキサデカンに対する上記接触角θ1Sを従来よりも小さくすると、偏光膜を製造する際の染色性に優れ、染色ムラのない偏光膜を得ることを見出したものである。
しかしながら、かかる接触角θ1Sが小さすぎるものは、ポリビニルアルコール系フィルムの親油性が高いため、水中で実施される染色工程において、ポリビニルアルコール系フィルム表面にヨウ素以外の有機成分が浸入しやすい。そのため染色ムラが発生しやすく、本発明の目的を達成することができない。例えば、膨潤工程において溶出したポリビニルアルコール系フィルム中の低分子量ポリビニルアルコール系樹脂、可塑剤、界面活性剤等の有機成分が、ポリビニルアルコール系フィルムの搬送に帯同されて、続く染色槽に持ち込まれ、染色工程においてポリビニルアルコール系フィルム表面に不均一に浸入するため、ヨウ素の均一な吸着を妨害する傾向がある。
逆に、接触角θ1Sが大きすぎるものは、ヨウ素の吸着が安定せず、そのため染色ムラが発生してしまい、本発明の目的を達成できない。
さらに、かかるθ1Sは、ポリビニルアルコール系フィルムの両面(表裏面)のどちらを測定した場合にも上記範囲を満足する。
さらに、本発明においては、上記ポリビニルアルコール系フィルムの両面の、一方の面(第1の面)の上記接触角θ1Sと、他方の面(第2の面)の上記接触角θ1S'との差δθ1S(=|θ1S−θ1S'|)が、2°以内であることが好ましく、特に好ましくは、1.5°以内、更に好ましくは1°以内である。
かかるδθ1Sの値が大きすぎると、ポリビニルアルコール系フィルムの両面でヨウ素の吸着が均一でなくなるため、偏光膜に染色ムラが発生しやすくなる傾向がある。
なお、上記接触角θ1S、θ1S'は、ポリビニルアルコール系フィルムの同一地点での両面で測定した値である。
また、本発明においては、上記ポリビニルアルコール系フィルムの一方の面(第1の面)について測定した、上記n−ヘキサデカンの液滴の接触から0.1秒後の接触角θ0Sと、その接触から1秒後の上記接触角θ1Sとの差Δθ(=|θ0S−θ1S|)が3〜7°であることが好ましく、特に好ましくは3.5〜6.5°、更に好ましくは4〜6°である。
かかるΔθの値が小さすぎると、ポリビニルアルコール系フィルムの染色性が低下する傾向があり、逆に、大きすぎても、液体に対する濡れ性が大きく変動する傾向があり、膨潤工程で一定な膨潤度が得られず、結果的に染色ムラが発生しやすい傾向がある。
さらに、かかるΔθの値は、ポリビニルアルコール系フィルムの両面のどちらについて測定した場合も上記範囲を満足することが好ましい。
ここで、本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法について説明する。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液(製膜原液)を調製する調製工程(A)と、その調製した水溶液を連続的にキャスト型に吐出および流涎して製膜する製膜工程(B)と、その製膜したフィルムをキャスト型から剥離した後、乾燥させる乾燥工程(C)とを備えている。なお、その乾燥させたフィルムを必要に応じて熱処理する熱処理工程(D)を備えていることが好ましい。
〔調製工程(A)〕
まず、前記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の調製工程(A)について詳しく説明する。
本発明で用いられるポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、未変性のポリビニルアルコール系樹脂、すなわち、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルをケン化して製造される樹脂が用いられる。必要に応じて、酢酸ビニルと、少量(通常、10モル%以下、好ましくは5モル%以下)の酢酸ビニルと共重合可能な成分との共重合体をケン化して得られる樹脂を用いることもできる。酢酸ビニルと共重合可能な成分としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2〜30のオレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等があげられる。また、ケン化後の水酸基を化学修飾して得られる変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂として、側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。かかる側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、(i)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(ii)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化および脱炭酸する方法、(iii)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化および脱ケタール化する方法、(iv)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、10万〜30万であることが好ましく、特に好ましくは11万〜28万、更に好ましくは12万〜26万である。かかる重量平均分子量が小さすぎると偏光膜の偏光度が低下する傾向があり、大きすぎると偏光膜製造時の延伸が困難となる傾向がある。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、GPC−MALS法により測定される重量平均分子量である。
本発明で用いるポリビニルアルコール系樹脂の平均ケン化度は、通常98モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは99モル%以上、更に好ましくは99.5モル%以上、殊に好ましくは99.8モル%以上である。かかる平均ケン化度が小さすぎると偏光膜の偏光度が低下する傾向がある。
ここで、本発明における平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定されるものである。
本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂として、変性種、変性量、重量平均分子量、平均ケン化度等の異なる2種以上のものを併用してもよい。
そして、上記ポリビニルアルコール系樹脂を、水を用いて洗浄し、遠心分離機等を用いて脱水して、含水率50重量%以下のポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキとすることが好ましい。含水率が多すぎると、所望する水溶液濃度にすることが難しくなる傾向がある。
かかるポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを温水や熱水に溶解して、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調整する。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の調製方法は、特に限定されず、例えば、加熱された多軸押出機を用いて調製する方法、上下循環流発生型撹拌翼を備えた溶解缶を用いて調製する方法があげられる。後者の方法では、その溶解缶に上記ポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを投入し、その溶解缶中に水蒸気を吹き込んで、溶解および所望濃度の水溶液を調製する。
本発明においては、偏光膜の光線透過率向上の点で後者が好ましく、調製する際の上記水溶液の温度は、100〜150℃であることが好ましい。当然のことながら、その温度は、大気圧下での水の沸点以上であるため、かかる調製は加圧して行なわれる。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液には、ポリビニルアルコール系樹脂以外に、必要に応じて、可塑剤や界面活性剤を含有させることが、ポリビニルアルコール系フィルムの製膜性の点で好ましい。
本発明で使用される可塑剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等があげられる。これらの中でも、安価な点でグリセリンが好ましい。
グリセリンを使用する場合の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂に対して、5〜15重量%であることが好ましく、特に好ましくは6〜13重量%、更に好ましくは7〜12%である。かかる配合量が少なすぎると、ポリビニルアルコール系フィルムの水膨潤性が低下する傾向があり、多すぎると、ポリビニルアルコール系フィルムの染色性が低下する傾向がある。
本発明で使用される界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、およびカチオン性の少なくとも一つの界面活性剤があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液との相溶性の点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
上記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル、ポリオキシエチレンエイコシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、やし油還元アルコールエチレンオキサイド付加物、牛脂還元アルコールエチレンオキサイド付加物等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;
ヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリオキシエチレンヘキシルアミン、ポリオキシエチレンヘプチルアミン、ポリオキシエチレンオクチルアミン、ポリオキシエチレンノニルアミン、ポリオキシエチレンデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンテトラデシルアミン、ポリオキシエチレンヘキサデシルアミン、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンエイコシルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン;
カプロン酸アミド、エナント酸アミド、カプリル酸アミド、ペラルゴン酸アミド、カプリン酸アミド、ウンデシル酸アミド、ラウリン酸アミド、トリデシル酸アミド、ミリスチン酸アミド、ペンタデシル酸アミド、パルミチン酸アミド、マルガリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ノナデシル酸アミド、アラキジン酸アミド、ヘンイコシル酸アミド、ベヘン酸アミド、トリコシル酸アミド、リグノセリン酸アミド、セロチン酸アミド、モンタン酸アミド、メリシン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;
ポリオキシエチレンカプロン酸アミド、ポリオキシエチレンエナント酸アミド、ポリオキシエチレンカプリル酸アミド、ポリオキシエチレンペラルゴン酸アミド、ポリオキシエチレンカプリン酸アミド、ポリオキシエチレンウンデシル酸アミド、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレントリデシル酸アミド、ポリオキシエチレンミリスチン酸アミド、ポリオキシエチレンペンタデシル酸アミド、ポリオキシエチレンパルミチン酸アミド、ポリオキシエチレンマルガリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンノナデシル酸アミド、ポリオキシエチレンアラキジン酸アミド、ポリオキシエチレンヘンイコシル酸アミド、ポリオキシエチレンベヘン酸アミド、ポリオキシエチレントリコシル酸アミド、ポリオキシエチレンリグノセリン酸アミド、ポリオキシエチレンセロチン酸アミド、ポリオキシエチレンモンタン酸アミド、ポリオキシエチレンメリシン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のポリオキシエチレン高級脂肪酸アミド;
N−エタノールウンデシル酸アミド、N−エタノールラウリン酸アミド、N−エタノールトリデシル酸アミド、N−エタノールミリスチン酸アミド、N−エタノールペンタデシル酸アミド、N−エタノールパルミチン酸アミド、N−ジエタノールマルガリン酸アミド、N−エタノールステアリン酸アミド、N−エタノールノナデシル酸アミド、N−エタノールアラキジン酸アミド、N−エタノールヘンイコシル酸アミド、N−エタノールベヘン酸アミド、N−エタノールトリコシル酸アミド、N−エタノールリグノセリン酸アミド、N−エタノールセロチン酸アミド、N−エタノールモンタン酸アミド、N−エタノールメリシン酸アミド、N−エタノールオレイン酸アミド等のN−アルカノール高級脂肪酸アミド;
N,N−ジエタノールウンデシル酸アミド、N,N−ジエタノールラウリン酸アミド、N,N−ジエタノールトリデシル酸アミド、N,N−ジエタノールミリスチン酸アミド、N,N−ジエタノールペンタデシル酸アミド、N,N−ジエタノールパルミチン酸アミド、N,N−ジエタノールマルガリン酸アミド、N,N−ジエタノールステアリン酸アミド、N,N−ジエタノールノナデシル酸アミド、N,N−ジエタノールアラキジン酸アミド、N,N−ジエタノールヘンイコシル酸アミド、N,N−ジエタノールベヘン酸アミド、N,N−ジエタノールトリコシル酸アミド、N,N−ジエタノールリグノセリン酸アミド、N,N−ジエタノールセロチン酸アミド、N,N−ジエタノールモンタン酸アミド、N,N−ジエタノールメリシン酸アミド、N,N−ジエタノールオレイン酸アミド等のN,N−ジアルカノール高級脂肪酸アミド;
ジメチルラウリルアミンオキシド、ジメチルステアリルオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド等のアミンオキシド;
等があげられる。
これらの中では、ポリビニルアルコール系フィルムの、n−ヘキサデカンに対する接触角を、目的の前記特定の範囲内に設定しやすい点から、高級脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン高級脂肪酸アミド、N−アルカノール高級脂肪酸アミド、N,N−ジアルカノール高級脂肪酸アミド等の高級脂肪酸アミド系化合物が好ましく、特に好ましくは、溶解性の点から、炭素数10〜30の高級脂肪酸アミド系化合物、更に好ましくは、製膜性の点から、炭素数15〜20の高級脂肪酸アミド系化合物である。また、上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンは、上記高級脂肪酸アミド系化合物と併用することが好ましい。
上記高級脂肪酸アミド系化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記高級脂肪酸アミド系化合物のポリビニルアルコール系樹脂水溶液中への配合量(合計量)は、ポリビニルアルコール系樹脂に対して、0.01〜0.1重量%であることが好ましく、特に好ましくは0.02〜0.07重量%である。かかる配合量が少なすぎるとキャスト面からのフィルムの剥離性が低下する傾向があり、多すぎるとフィルムが白濁する傾向がある。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの、n−ヘキサデカンに対する接触角を、目的の前記特定の範囲内に設定しやすい点から、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液中に配合された上記高級脂肪酸アミド系化合物の10〜90重量%を分解させることがより好ましく、特に好ましくは、20〜80重量%、更に好ましくは、30〜70重量%である。
かかる分解量は、調製後の水溶液中の高級脂肪酸アミド系化合物の残存量を、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)やガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)等の分析手法を用いて測定することで算出できる。
そして、上記分解による生成物と、分解されずに残った上記高級脂肪酸アミド系化合物とが相俟って、製造されるポリビニルアルコール系フィルムの表面状態に影響を与え、n−ヘキサデカンに対する接触角が前記特定の範囲内になると推測される。
また、かかる分解量は、調製温度や調製時間(調製にかける時間)で制御することができる。調製温度は、上記高級脂肪酸アミド系化合物を含有させた状態で調製する際の上記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の温度であり、本発明では、比較的高めの温度に設定される。その調製温度は、先に述べたように、100〜150℃が好ましいが、特に好ましくは110〜145℃であり、更に好ましくは120〜140℃である。調製時間は、上記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の調製にかける時間、詳しくは上記高級脂肪酸アミド系化合物を含有させてからの時間であり、本発明では、比較的長めの時間に設定される。その調製時間は、1〜50時間であることが好ましく、特に好ましくは5〜40時間、更に好ましくは10〜30時間である。
かくして得られる製膜原液であるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂濃度は、5〜60重量%であることが好ましく、特に好ましくは8〜50重量%、更に好ましくは10〜40重量%である。かかる樹脂濃度が低すぎると、乾燥負荷が大きくなるため、生産能力が低下する傾向があり、高すぎると、粘度が高くなりすぎるため、均一な流延ができにくくなる傾向がある。
〔製膜工程(B)〕
次に、前記製膜工程(B)について詳しく説明する。
上記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、まず、脱泡処理される。脱泡方法としては、静置脱泡やベントを有する多軸押出機による脱泡等の方法があげられる。ベントを有する多軸押出機としては、通常はベントを有した2軸押出機が用いられる。
脱泡処理の後、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、幅広長尺化や膜厚の均一性等に優れる点で、一定量ずつT型スリットダイに導入され、キャスト型に吐出および流延されて、キャスト法により製膜される。
T型スリットダイ出口の樹脂温度は、80〜100℃であることが好ましく、特に好ましくは85〜99℃である。かかる樹脂温度が低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると発泡する傾向がある。
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液の粘度は、吐出時に50〜200Pa・sであることが好ましく、特に好ましくは70〜150Pa・sである。かかる水溶液の粘度が、低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると流延が困難となる。
T型スリットダイからキャスト型に吐出される水溶液の吐出速度は、0.1〜5m/分であることが好ましく、特に好ましくは0.2〜4m/分、更に好ましくは0.3〜3m/分である。かかる吐出速度が遅すぎると生産性に劣る傾向があり、速すぎると流延が困難となる傾向がある。
流延に際しては、幅広化や長尺化、膜厚の均一性等の点から、キャスト型としてキャストドラムを用いることが好ましい。キャストドラムとしては、通常、鉄を主成分とするステンレス鋼(SUS)の表面に、傷つき防止のため金属メッキが施されているものが使用される。金属メッキとしては、例えば、クロムメッキ、ニッケルメッキ、亜鉛メッキ等が挙げられ、これらが単独または2層以上積層化して使用される。これらの中では、ドラム表面の耐久性の点から、最表面がクロムメッキであることが好ましい。
上記キャストドラムの幅は、好ましくは4m以上、より好ましくは5m以上である。キャストドラムの幅が小さすぎると幅広フィルムが得られにくい傾向がある。
上記キャストドラムの回転速度は、1〜50m/分であることが好ましく、特に好ましくは2〜40m/分、更に好ましくは3〜35m/分である。かかる回転速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると乾燥が不足する傾向がある。
上記キャストドラムの表面温度は、50〜100℃であることが好ましく、特に好ましくは60〜97℃である。かかる表面温度が低すぎると乾燥不良となる傾向があり、高すぎると水溶液が発泡してしまう傾向がある。
かくして、製膜が行われる。
なお、この実施の形態では、製膜に用いるキャスト型として上記キャストドラム(ドラム型ロール)を用いる場合を例にとって説明しているが、そのキャストドラムに替えてエンドレスベルト等を製膜に用いることもできる。幅広化や長尺化、膜厚の均一性に優れる点から、キャストドラムを用いることが好ましい。
〔乾燥工程(C)〕
次いで、前記乾燥工程(C)について詳しく説明する。この乾燥工程(C)は、上記製膜されたフィルムを、複数の金属製加熱ロール(以下、単に「熱ロール」と記載する。)と接触させること等により、加熱して乾燥する工程である。
キャストドラムで製膜されたフィルムの乾燥は、そのキャストドラムから剥離した後、そのフィルムの表面と裏面とを複数の熱ロールに交互に接触させることにより行なわれる。熱ロールの表面温度は特に限定されないが、通常40〜150℃、さらには50〜140℃であることが好ましい。かかる表面温度が低すぎると乾燥不良となる傾向があり、高すぎると乾燥しすぎることとなり、うねり等の外観不良を招く傾向がある。
〔熱処理工程(D)〕
次いで、前記熱処理工程(D)について詳しく説明する。この熱処理工程(D)は、上記乾燥されたフィルムを熱処理する工程である。この熱処理工程(D)は、必要に応じてなされる任意の工程である。
熱処理の方法としては、例えば、フローティングドライヤーを用いてフィルムの両面に熱風を吹き付ける方法や赤外線ランプを用いてフィルムの両面に近赤外線を照射する方法があげられるが、温度制御の点で、フローティングドライヤーで行われることが好ましい。
熱処理温度は70〜150℃が好ましく、特には80〜140℃が好ましい。熱処理温度が低すぎると、ポリビニルアルコール系フィルムの耐水性が不足する傾向にあり、高すぎると偏光膜製造時の延伸性が低下する傾向がある。なお、その熱処理温度は、上記フローティングドライヤーを用いる場合は、吹き付ける熱風の温度を意味し、上記赤外線ランプを用いる場合は、照射する近赤外線の温度を意味する。熱処理時間は、特に限定されないが、フローティングドライヤーを用いる場合、10〜100秒間であることが好ましく、特に好ましくは20〜80秒間である。
〔ポリビニルアルコール系フィルム〕
上記乾燥工程(C)の後、必要に応じて上記熱処理工程(D)を経たフィルムは、幅方向(TD)の両端部がスリットされ、流れ方向(MD)に長い本発明のポリビニルアルコール系フィルムとなる。このポリビニルアルコール系フィルムは、芯管にロール状に巻き取られることにより、フィルム巻装体に作製される。
このようにして得られた本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、先に述べたように、n−ヘキサデカンに対する接触角が特定の範囲になっている。その接触角の、従来のポリビニルアルコール系フィルムとの差異は、先に述べたように、そのフィルム内における上記高級脂肪酸アミド系化合物の分解による生成物と分解されずに残存する高級脂肪酸アミド系化合物に依存するものと推測され、そのフィルムの表面粗さに依存するものではない。本発明のポリビニルアルコール系フィルムの表面は、従来のポリビニルアルコール系フィルムの表面と同様に平滑であり、それらフィルムの表面粗さ(Ra)は、1〜50nmの範囲内である。
また、上記ポリビニルアルコール系フィルムの幅は、偏光膜の幅広化の点で4m以上であることが好ましく、特に好ましくは更なる幅広化の点から4.5m以上、更に好ましくは破断回避の点から4.5〜7mである。
上記ポリビニルアルコール系フィルムの長さは、偏光膜の大面積化の点から4km以上であることが好ましく、特に好ましくは更なる大面積化の点から4.5km以上、更に好ましくは輸送重量の点から4.5〜50kmである。
上記ポリビニルアルコール系フィルムの厚さは、偏光膜の薄型化に好適な点で、厚さが5〜45μmであることが好ましく、特に好ましくは、5〜30μm、更に好ましくは、破断回避の点から、10〜30μmである。
上記ポリビニルアルコール系フィルムは、偏光膜製造時の染色性の点で、面内位相差が50nm以下であることが好ましく、特に好ましくは40nm以下、更に好ましくは30nm以下である。
ここで、本発明のポリビニルアルコール系フィルムを用いて得られる偏光膜の製造方法について説明する。
〔偏光膜の製造方法〕
本発明の偏光膜は、上記ポリビニルアルコール系フィルムを、前記フィルム巻装体から繰り出して水平方向に搬送し、膨潤、染色、ホウ酸架橋、延伸、洗浄、乾燥等の工程を経て製造される。
膨潤工程は、染色工程の前に施される。膨潤工程により、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れを洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色ムラ等を防止する効果もある。膨潤工程において、処理液としては、通常、水が用いられる。上記処理液は、主成分が水であれば、ヨウ化化合物、界面活性剤等の添加物、アルコール等が少量入っていてもよい。膨潤浴の温度は、通常10〜45℃程度であり、膨潤浴への浸漬時間は、通常0.1〜10分間程度である。
染色工程は、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素または二色性染料を含有する液体を接触させることによって行なわれる。通常は、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は0.1〜2g/L、ヨウ化カリウムの濃度は1〜100g/Lが適当である。染色時間は30〜500秒間程度が実用的である。処理浴の温度は5〜50℃が好ましい。水溶液には、水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させてもよい。
ホウ酸架橋工程は、ホウ酸やホウ砂等のホウ素化合物を使用して行われる。ホウ素化合物は水溶液または水−有機溶媒混合液の形で濃度10〜100g/L程度で用いられ、液中にはヨウ化カリウムを共存させるのが、偏光性能の安定化の点で好ましい。処理時の温度は30〜70℃程度、処理時間は0.1〜20分間程度が好ましく、また必要に応じて処理中に延伸操作を行なってもよい。
延伸工程は、一軸方向〔流れ方向(MD方向)〕に3〜10倍、好ましくは3.5〜6倍延伸することが好ましい。この際、延伸方向の直角方向にも若干の延伸〔幅方向(TD方向)の収縮を防止する程度、またはそれ以上の延伸〕を行なっても差し支えない。延伸時の温度は、30〜170℃が好ましい。さらに、延伸倍率は最終的に前記範囲に設定されればよく、延伸操作は一回のみならず、偏光膜製造工程において複数回実施してもよい。
洗浄工程は、例えば、水やヨウ化カリウム等のヨウ化物水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行われ、そのポリビニルアルコール系フィルムの表面に発生する析出物を除去することができる。ヨウ化カリウム水溶液を用いる場合のヨウ化カリウム濃度は1〜80g/L程度である。洗浄処理時の温度は、通常、5〜50℃、好ましくは10〜45℃である。処理時間は、通常、1〜300秒間、好ましくは10〜240秒間である。なお、水洗浄とヨウ化カリウム水溶液による洗浄は、適宜組み合わせて行ってもよい。
乾燥工程は、例えば、上記ポリビニルアルコール系フィルムを大気中で40〜80℃で1〜10分間乾燥することが行われる。
かくして、本発明の偏光膜が得られる。かかる偏光膜の偏光度は、好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上である。偏光度が低すぎると液晶ディスプレイにおけるコントラストが低下する傾向がある。
なお、偏光度は、一般的に2枚の偏光膜を、その配向方向が同一方向になるように重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H11)と、2枚の偏光膜を、配向方向が互いに直交する方向になる様に重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H1)より、下記式にしたがって算出される。
偏光度=〔(H11−H1)/(H11+H1)〕1/2
さらに、本発明の偏光膜の単体透過率は、好ましくは44%以上である。かかる単体透過率が低すぎると液晶ディスプレイの高輝度化を達成できなくなる傾向がある。
単体透過率は、分光光度計を用いて偏光膜単体の光線透過率を測定して得られる値である。
〔偏光板の製造方法〕
このようにして得られる偏光膜は、偏光板の製造に用いられる。すなわち、その偏光板は、上記偏光膜の片面または両面に、光学等方性の高分子フィルムまたはシートを保護膜として積層接着することにより、作製される。保護膜としては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエステル、ポリ−4−メチルペンテン、ポリフェニレンオキサイド等のフィルムまたはシートがあげられる。
貼合方法は、公知の手法で行われるが、例えば、液状の接着剤組成物を、偏光膜、保護フィルム、あるいはその両方に、均一に塗布した後、両者を貼り合わせて圧着し、加熱や活性エネルギー線を照射することで行われる。
また、偏光膜の片面または両面に、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレア樹脂等の硬化性樹脂を塗布し、硬化して硬化層を形成し、偏光板とすることもできる。このようにすると、上記硬化層が上記保護フィルムの代わりとなり、薄膜化を図ることができる。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムを用いた偏光膜や偏光板は、偏光性能に優れており、携帯情報端末機、パソコン、テレビ、プロジェクター、サイネージ、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、電子ペーパー、ゲーム機、ビデオ、カメラ、フォトアルバム、温度計、オーディオ、自動車や機械類の計器類等の液晶表示装置、サングラス、防眩メガネ、立体メガネ、ウェアラブルディスプレイ、表示素子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパー等)用反射防止層、光通信機器、医療機器、建築材料、玩具等に好ましく用いられる。
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
そして、以下の実施例および比較例におけるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の特性(高級脂肪酸アミド系化合物の分解量)とポリビニルアルコール系フィルムの特性(n−ヘキサデカンに対する接触角)と偏光膜の特性(染色ムラ、偏光度、単体透過率)の測定および評価を以下のようにして行った。
<測定条件>
(1)高級脂肪酸アミド系化合物の分解量(重量%)
調製後のポリビニルアルコール系樹脂水溶液から10gのサンプルを採取し、ダイオネクス社製ASE−200(11mLセル)を用いて、高速溶媒抽出法 (Accelerated Solvent Extraction)により、高級脂肪酸アミド系化合物をメタノール/水(9/1)の溶媒に抽出した。抽出後の固形分を乾燥後、秤量してポリビニルアルコール樹脂の含有量A(g)を測定した。一方、抽出液を濃縮後、メタノールに溶解して10mLの液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)の試料とし、以下の測定装置及び測定条件で、高級脂肪酸アミド系化合物の含有量B(g)を測定した。
(液体クロマトグラフィー)
装置:Agilent社製 Agilent Technologies HP1100
カラム:YMC-Pack ODS-A 150×3.0mm φ5μm、カラム温度30℃
移動層:10mM AcONH4/MeOH=25/75(0min)→5/95(15-30min)、流量0.4mL/min
(質量分析)
装置:Thermo 社製 Thermo Electron LCQ Deca XP Max
測定モード:Positive ion mode
MS検出器:Full-Scan(m/z 100-2000) & MS/MS
得られた高級脂肪酸アミド系化合物の含有量B(g)と、上記ポリビニルアルコール樹脂の含有量A(g)から、下記式に従って、ポリビニルアルコール樹脂に対する高級脂肪酸アミド系化合物の残存量(重量%)を求めた。
残存量(重量%)=100×B(g)/A(g)
次いで、かかる高級脂肪酸アミド系化合物の残存量(重量%)と、ポリビニルアルコール樹脂に対する高級脂肪酸アミド系化合物の配合量(重量%)から、下記式に従って、高級脂肪酸アミド系化合物の分解量(重量%)を算出した。
分解量(重量%)=100×{配合量(重量%)−残存量(重量%)}/配合量(重量%)
(2)n−ヘキサデカンに対する接触角(°)
得られたポリビニルアルコール系フィルムから10cm×10cmの試験片を切り出し、23℃50%RHで24時間調湿後、協和界面科学社製ポータブル接触角計PCA−1を用いて、JIS−R3257(1999)に準じて、23℃50%RHにおけるn−ヘキサデカンに対する接触角を測定した(θ/2法)。n−ヘキサデカンの液滴量は1μLである。液滴とフィルムが接触してから、0.1秒後の接触角をθ0S(°)、経時的に1秒後まで測定し、1秒後の値をθ1S(°)とした。測定は、ポリビニルアルコール系フィルムのキャストドラムと接していた面を表面、逆面を裏面として、両面を測定した。
(3)染色ムラ
得られた偏光膜から、長さ30cm×幅30cmの試験片を切り出し、クロスニコル状態の2枚の偏光板(単体透過率43.5%、偏光度99.9%)の間に45°の角度で挟んだ後に、表面照度14,000lxのライトボックスを用いて、透過モードで染色ムラを観察し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○・・・全面に染色ムラが全くなし。
△・・・全面の20%未満の領域に染色ムラあり。
×・・・全面の20%以上の領域に染色ムラあり。
(4)偏光度(%)、単体透過率(%)
得られた偏光膜から、長さ4cm×幅4cmのサンプルを切り出し、自動偏光フィルム測定装置(日本分光社製:VAP7070)を用いて、偏光度(%)と単体透過率(%)を測定した。
<実施例1>
(ポリビニルアルコール系フィルムの製造)
5,000Lの溶解缶に、重量平均分子量142,000、ケン化度99.9モル%のポリビニルアルコール系樹脂1,000kg、水2,500kg、可塑剤としてグリセリン105kg、および界面活性剤としてN,N−ジエタノールラウリン酸アミド(炭素数16)0.3kg(ポリビニルアルコール系樹脂に対する配合量0.03重量%)を入れ、撹拌しながら水蒸気を吹き込んで加圧溶解し、樹脂濃度25重量%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製した。かかる調製の調製温度は140℃、調製時間は20時間である。得られた水溶液中のN,N−ジエタノールラウリン酸アミドの残存量を測定したところ、ポリビニルアルコール樹脂に対して0.009重量%であり、高級脂肪酸アミド系化合物の分解量は70重量%であった。
次に上記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、2軸押出機に供給して脱泡した後、水溶液温度を95℃にし、T型スリットダイ吐出口より、回転するキャストドラムに吐出(吐出速度1.8m/分)および流延して製膜した。その製膜したフィルムをキャストドラムから剥離し、そのフィルムの表面と裏面とを合計10本の熱ロールに交互に接触させながら乾燥を行った。次いで、上記剥離したフィルム両面から140℃の熱風を吹き付けて熱処理を行った後、幅方向(TD方向)の両端部をスリットし、ポリビニルアルコール系フィルム(厚さ45μm、幅5m、長さ5km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は下記の表1に示される通りであった。最後に、そのポリビニルアルコール系フィルムを芯管にロール状に巻き取り、フィルム巻装体を得た。
(偏光膜の製造)
得られたポリビニルアルコール系フィルムを上記フィルム巻装体から繰り出し、水平方向に搬送しながら、水温30℃の水槽に浸漬して膨潤させながら流れ方向(MD方向)に1.7倍に延伸した。次に、ヨウ素0.5g/L、ヨウ化カリウム30g/Lよりなる30℃の水溶液中に浸漬して染色しながら流れ方向(MD方向)に1.6倍に延伸し、ついでホウ酸40g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液(50℃)に浸漬してホウ酸架橋しながら流れ方向(MD方向)に2.1倍に一軸延伸した。最後に、ヨウ化カリウム水溶液で洗浄を行い、50℃で2分間乾燥して総延伸倍率5.7倍の偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は下記の表1に示される通りであった。
<実施例2>
実施例1において、調製時間を10時間とする以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は、下記の表1に示される通りであった。さらに、実施例1と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は、下記の表1に示される通りであった。
<実施例3>
実施例1において、調製温度を120℃とする以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は、下記の表1に示される通りであった。さらに、実施例1と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は、下記の表1に示される通りであった。
<実施例4>
実施例1において、調製温度を100℃とする以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は、下記の表1に示される通りであった。さらに、実施例1と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は、下記の表1に示される通りであった。
<実施例5>
実施例1において、N,N−ジエタノールラウリン酸アミドを0.5kg(ポリビニルアルコール系樹脂に対する配合量0.05重量%)とする以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は、下記の表1に示される通りであった。さらに、実施例1と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は、下記の表1に示される通りであった。
<実施例6>
実施例1において、N,N−ジエタノールラウリン酸アミド0.3kg(ポリビニルアルコール系樹脂に対する配合量0.03重量%)に加えて、ステアリン酸アミド(炭素数18)0.1kg(ポリビニルアルコール系樹脂に対する配合量0.01重量%)も用いること以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は、下記の表1に示される通りであった。さらに、実施例1と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は、下記の表1に示される通りであった。
なお、得られた水溶液中のN,N−ジエタノールラウリン酸アミドとステアリン酸アミドの残存量を測定したところ、ポリビニルアルコール系樹脂に対して、それぞれ0.021重量%と0.002重量%であり、高級脂肪酸アミド系化合物の分解量(N,N−ジエタノールラウリン酸アミドとステアリン酸アミドの合計値)は42重量%であった。
<実施例7>
実施例1において、N,N−ジエタノールラウリン酸アミド0.3kg(ポリビニルアルコール系樹脂に対する配合量0.03重量%)に加えて、ポリオキシエチレンドデシルアミン(平均炭素数28)0.2kg(ポリビニルアルコール系樹脂に対する配合量0.02重量%)も用いること以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は、下記の表1に示される通りであった。さらに、実施例1と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は、下記の表1に示される通りであった。
なお、得られた水溶液中のポリオキシエチレンドデシルアミンの残存量を測定したところ、ポリビニルアルコール樹脂に対して0.02重量%であり、分解は確認されなかった。また、N,N−ジエタノールラウリン酸アミドの残存量を測定したところ、ポリビニルアルコール系樹脂に対して0.009重量%であり、高級脂肪酸アミド系化合物(N,N−ジエタノールラウリン酸アミドのみ)の分解量は70重量%であった。
<実施例8>
実施例1において、吐出速度1.25m/分としてフィルム厚を30μmとする以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は、下記の表1に示される通りであった。さらに、実施例1と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は、下記の表1に示される通りであった。
<比較例1>
実施例1において、調製温度を160℃とする以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は、下記の表2に示される通りであった。さらに、実施例1と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は、下記の表2に示される通りであった。
<比較例2>
実施例1において、N,N−ジエタノールラウリン酸アミド0.3kg(ポリビニルアルコール系樹脂に対する配合量0.03重量%)に代えて、ポリオキシエチレンドデシルアミン0.2kg(ポリビニルアルコール系樹脂に対する配合量0.02重量%)を用いること以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は、下記の表2に示される通りであった。さらに、実施例1と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は、下記の表2に示される通りであった。
なお、得られた水溶液中のポリオキシエチレンドデシルアミンの残存量を測定したところ、ポリビニルアルコール樹脂に対して0.02重量%であり、分解は確認されなかった。
<比較例3>
実施例1において、調製温度を100℃、調製時間を1時間とする以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は、下記の表2に示される通りであった。さらに、実施例1と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は、下記の表2に示される通りであった。
Figure 2017217346
Figure 2017217346
実施例1〜8のポリビニルアルコール系フィルムは、n−ヘキサデカンに対する接触角が、本発明の特定の範囲内であるため、それらポリビニルアルコール系フィルムを用いた偏光膜は、染色ムラが無く、偏光性能に優れていることがわかる。それに対し、比較例1〜3のポリビニルアルコール系フィルムは、本発明の特定の範囲外であるため、それらポリビニルアルコール系フィルムを用いた偏光膜は、染色ムラが有り、偏光性能に劣ることがわかる。
なお、偏光度は、実施例1〜8が99.84%以上、比較例1〜3が99.75〜99.76と、数値上は大きな差ではないが、この差は、上記偏光膜を液晶ディスプレイに用いると、その液晶ディスプレイにおけるコントラストの点で、実施例1〜8の方が大きな優位性を有する。
上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムを用いた偏光膜や偏光板は、偏光性能に優れており、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、パソコン、携帯情報端末機、テレビ、プロジェクター、サイネージ、電子ペーパー、ゲーム機、ビデオ、カメラ、フォトアルバム、温度計、オーディオ、自動車や機械類の計器類等の液晶表示装置、サングラス、防眩メガネ、立体メガネ、ウェアラブルディスプレイ、表示素子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパー等)用反射防止膜、光通信機器、医療機器、建築材料、玩具、光通信機器、医療機器、建築材料、玩具等に好ましく用いられる。

Claims (11)

  1. n−ヘキサデカンの液滴の接触から1秒後の、そのn−ヘキサデカンに対する接触角θ1Sが、5〜13°であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
  2. 上記フィルム両面の、第1の面の上記接触角θ1Sと、第2の面の上記接触角θ1S'との差δθ1S=|θ1S−θ1S'|が、2°以内であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルム。
  3. 上記フィルム両面の各面において、上記接触角θ1Sと、上記n−ヘキサデカンの液滴の接触から0.1秒後の、そのn−ヘキサデカンに対する接触角θ0Sとの差Δθ=|θ0S−θ1S|が、3〜7°であることを特徴とする請求項1または2記載のポリビニルアルコール系フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系フィルムを製造する方法であって、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を調製する調製工程と、その調製した水溶液を連続的にキャスト型に流延して製膜する製膜工程と、その製膜したフィルムをキャスト型から剥離した後、乾燥させる乾燥工程とを備えていることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
  5. 上記調製工程において、上記ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液が、炭素数10〜30の高級脂肪酸アミド系化合物を、上記ポリビニルアルコール系樹脂に対して0.01〜0.1重量%配合した水溶液を、100〜150℃で調製して得られるものであることを特徴とする請求項4記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
  6. 上記調製工程において、配合した上記高級脂肪酸アミド系化合物の10〜90重量%を分解させることを特徴とする請求項5記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
  7. 上記調製工程において、上記ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液の調製にかける時間が、5〜40時間であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
  8. 請求項4〜7のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法により製造されることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
  9. 偏光膜の製造に用いることを特徴とする請求項1〜3、8のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系フィルム。
  10. 厚さ5〜45μmであることを特徴とする請求項1〜3、8、9のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系フィルム。
  11. 請求項1〜3、8〜10のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系フィルムが用いられていることを特徴とする偏光膜。
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