本発明は、ワークが有する2つの被圧入部に同時的に圧入部品を圧入する構成において、被圧入部への圧入部品の圧入に際し、圧入部品の圧入対象となる2つの被圧入部の位置関係を事前に計測することにより、その計測結果に基づいて、ワークと圧入部品との位置関係を補正することで、圧入部品の圧入不良および部品圧入時の騒音の低減を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態について説明する。
以下に説明する本発明の実施の形態では、本発明に係る部品圧入方法および部品圧入システムを、自動車のサスペンションメンバにブッシュを圧入するブッシュ圧入工程において適用した場合を例にとって説明する。すなわち、本発明の実施の形態において、ワークは自動車のサスペンションメンバであり、サスペンションメンバが有する被圧入部に、圧入部品としてのブッシュが圧入される。ただし、本発明に係る部品圧入方法および部品圧入システムは、サスペンションメンバに対するブッシュの圧入に限定されることなく、所定の部品(ワーク)が有する2つの被圧入部に対する同時的な圧入部品の圧入において広く適用することができる。
まず、図1から図3を用いて、本実施形態に係るワークとしてのサスペンションメンバ1、および圧入部品としてのブッシュ2について説明する。
本実施形態に係るサスペンションメンバ1は、自動車の前部に設けられるサスペンション装置を構成するアーム部材等を車体に対して支持する部材である。サスペンションメンバ1は、板金等により構成された一体の部材であり、車体の前部の骨格の一部を構成する。
図1に示すように、サスペンションメンバ1は、自動車において車体の略前後に延びる左右一対のサイドメンバ3と、車体の幅方向に延びて左右のサイドメンバ3の前端部同士を繋ぐフロントクロスメンバ4と、車体の幅方向に延びて左右のサイドメンバ3の後部同士を繋ぐリアクロスメンバ5とを有する。つまり、フロントクロスメンバ4は、左右のサイドメンバ3の前端部間に架設された態様で設けられ、リアクロスメンバ5は、左右のサイドメンバ3の後部間に架設された態様で設けられている。サスペンションメンバ1は、左右のサイドメンバ3、フロントクロスメンバ4、およびリアクロスメンバ5により、全体として平面視で略矩形枠状(井桁状)に構成されている。また、サスペンションメンバ1は、略左右対称に構成されている。なお、図1において、上側が車両における前側に対応し、下側が車両における後側に対応する。
本実施形態に係るサスペンションメンバ1においては、左右のサイドメンバ3は、互いの間の間隔を前側から後側にかけて徐々に狭くするように車体の前後方向に対して傾斜している。したがって、フロントクロスメンバ4の長手方向の寸法よりもリアクロスメンバ5の長手方向の寸法の方が短くなっている。
サスペンションメンバ1において、車体側へのマウント部分に、ブッシュ2が圧入される。サスペンションメンバ1において、ブッシュ2が圧入される部分には、被圧入部としての円筒状のカラー6が設けられている。このカラー6の円筒状の内周面6aにより、ブッシュ2が圧入されるブッシュ挿入孔7が形成されている。ブッシュ挿入孔7は、その中心軸方向に貫通した孔部である。
カラー6は、サスペンションメンバ1の略矩形枠状の平面視形状における四隅の部分に設けられている。つまり、サスペンションメンバ1の前後それぞれの車幅方向の両端部の4箇所に、ブッシュ2が圧入される。詳細には、カラー6は、左右のサイドメンバ3の長手方向の前端部および後端部に設けられている。また、カラー6において形成されるブッシュ挿入孔7は、自動車における略上下方向を中心軸方向とする。ブッシュ挿入孔7に対するブッシュ2の圧入方向は、ブッシュ挿入孔7の中心軸方向に沿う。
図2に示すように、ブッシュ2は、全体として略円筒状の外形を有する部材であり、内筒部11と、内筒部11に対して同軸心配置された外筒部12と、内筒部11と外筒部12との間に設けられ内筒部11と外筒部12とを一体的に繋ぐ弾性部13とを有する。ブッシュ2は、内筒部11、外筒部12および弾性部13を主要な構成とする一体的な部材である。
内筒部11および外筒部12は、例えば鉄等を材料とする金属製の部材により構成されている。弾性部13は、例えば合成ゴム等を材料とするゴム製の部分である。弾性部13は、例えば、内筒部11と外筒部12との間において加硫接着されることで設けられる。なお、図2(a)は、ブッシュ2の側面図であり、図2(b)は、ブッシュ2の縦断面図である。
ブッシュ2の中心軸部には、内筒部11の内周面によって貫通孔14が形成されている。貫通孔14は、サスペンションメンバ1の車体側への連結等に際して、ボルト等の締結具が挿入される連結用の孔部として用いられる。なお、ブッシュ2の中心軸方向の両側において、内筒部11の長手方向の両端部が外筒部12から突出している。
また、ブッシュ2において、外筒部12の中心軸方向の一側(図2の各図において下側)の端部には、鍔部15が設けられている。鍔部15は、外筒部12の外周面12aの全周にわたって設けられたフランジ状の部分である。ブッシュ2においては、鍔部15よりも上側の部分が、ブッシュ挿入孔7に対する圧入部分となる。
以上のようなサスペンションメンバ1およびこれに圧入されるブッシュ2について、サスペンションメンバ1が有する4箇所のカラー6に対して、同じ側からブッシュ2が圧入される。本実施形態では、カラー6に対してブッシュ2が圧入される側、つまりカラー6のブッシュ2の挿入を受け入れる側を、サスペンションメンバ1の下側とする。
そして、図3(a)に示すように、ブッシュ2は、外筒部12の鍔部15側と反対側(図3(a)において上側)を圧入先端側として、カラー6の下側(図3(a)において下側)の開口部(以下「カラー開口部」という。)6bからブッシュ挿入孔7に圧入される(矢印A1参照)。カラー6に対するブッシュ2の圧入構造においては、外筒部12の外周面12aが、カラー6の内周面6aに対する圧接面となる。つまり、外筒部12の外周面12aは、ブッシュ2の圧入の過程において内周面6aに対する摺動面となる。図3(b)に、カラー6にブッシュ2が圧入された状態を示す。なお、図3(a)、(b)の各図におけるカラー6の部分は、図1におけるA−A線切断部端面図に相当する。
このように、サスペンションメンバ1においては、前後2箇所ずつ、計4箇所にブッシュ2が圧入される。サスペンションメンバ1において、ブッシュ2の圧入部分により、インシュレータとして車体側へのラバーマウント部分が構成されている。
以上のようなサスペンションメンバ1に対するブッシュ2の圧入構成において、本実施形態に係る部品圧入方法および部品圧入システムでは、サスペンションメンバ1の4箇所のカラー6のうち、まず前側の2つのカラー6Aに対して同時的にブッシュ2の圧入が行われ、次に後側の2つのカラー6Bに対して同時的にブッシュ2の圧入が行われる。なお、4箇所のカラー6に対するブッシュ2の圧入の順番については、先に後側の2つのカラー6Bに対するブッシュ2の圧入が行われてもよいし、また、左右一側の2つのカラー6に対してブッシュ2の圧入が行われた後、左右他側の2つのカラー6に対してブッシュ2の圧入が行われる順番であってもよい。
そして、サスペンションメンバ1に対するブッシュ2の圧入構成において、図3(a)に示すように、理想的には、カラー6の(ブッシュ挿入孔7の)軸心C1とブッシュ2の軸心C2とが互いに一致した状態で、カラー6に対するブッシュ2の圧入が行われる。このため、サスペンションメンバ1に対するブッシュ2の圧入に際して、部品同士の位置合わせとして、カラー6の軸心C1とブッシュ2の軸心C2とを互いに一致させる軸心合わせが行われる。しかしながら、従来の軸心合わせによれば、サスペンションメンバ1の公差(製造誤差)等によるカラー6とブッシュ2の位置ズレ(軸心ズレ)に対応することが困難である。そこで、カラー6とブッシュ2との位置合わせの精度を向上すべく、以下に説明する部品圧入方法および部品圧入システムが提案される。
本実施形態に係る部品圧入システム20について説明する。部品圧入システム20は、ブッシュ圧入工程において、サスペンションメンバ1に対して4箇所のカラー6にブッシュ2を圧入するためのものである。部品圧入システム20は、少なくとも2つ(本実施形態では4つ)のカラー6を有するサスペンションメンバ1およびカラー6に圧入されるブッシュ2のそれぞれをセット位置にセットした状態で、2つのカラー6に同時的にブッシュ2を圧入するための装置構成である。
図4に示すように、部品圧入システム20は、ワーク移動装置としてのロボット30と、カラー6のブッシュ挿入孔7に対するブッシュ2の圧入動作を行う一対の圧入装置40(40L,40R)と、ブッシュ2の圧入対象となる2つのカラー6それぞれに対応して設けられた形状計測センサ60と、部品圧入システム20の全体的な制御を行う制御装置80(図7参照)とを備える。以下、部品圧入システム20が備える各構成について説明する。なお、部品圧入システム20の説明においては、図4に示すように、水平面をX−Y平面、これに直交する方向をZ方向とし、X方向、Y方向およびZ方向を、それぞれ前後方向、左右方向、および上下方向に対応させる。
ロボット30は、サスペンションメンバ1を支持した状態でサスペンションメンバ1の位置および姿勢を変化させるハンドリング用途のロボットである。図4に示すように、ロボット30は、ベース部31と、ベース部31上に設けられるアーム部32とを有し、様々な位置および角度に姿勢制御されるフレキシブルなロボットアーム(多関節ロボット)として構成されている。ロボット30は、例えば、6つの関節を有する6軸ロボットである。
ロボット30においては、アーム部32の先端側に、サスペンションメンバ1が把持される。このため、アーム部32の先端側には、サスペンションメンバ1を把持するためのワーク把持部33が設けられている。ワーク把持部33は、サスペンションメンバ1を固定状態で把持するように構成されている。ロボット30は、アーム部32およびワーク把持部33の動作により、可動範囲においてサスペンションメンバ1を3次元的に任意の方向に移動させる。
ロボット30は、ワーク把持部33によりサスペンションメンバ1を把持した状態で、少なくとも次の2つの回動方向について、サスペンションメンバ1を回動可能に支持する。1つは、図1に示すように、サスペンションメンバ1の前後方向をx方向、これに直交する左右方向をy方向、x−y平面に直交する方向をz方向とした場合において、サスペンションメンバ1の平面視における中心位置を通るz方向に沿う直線(図1においては点で表される)L1回りの回動方向(以下「第1の回動方向」とする。)R1である。もう1つは、同じく図1に示すように、サスペンションメンバ1の平面視において、サスペンションメンバ1の左右方向の中央に位置する前後方向(x方向)に沿う直線L2回りの回動方向(以下「第2の回動方向」とする。)R2である。
なお、第1の回動方向R1について、直線L1の位置は、サスペンションメンバ1の前後左右中央の位置に限られない。第1の回動方向R1は、x−y平面視においてサスペンションメンバ1が傾動する回動方向であればよい。同様に、第2の回動方向R2について、直線L2の位置は、サスペンションメンバ1の左右中央の位置に限られず、第2の回動方向R2は、y−z平面視においてサスペンションメンバ1が傾動する回動方向であればよい。
また、ロボット30は、図7に示すように、ロボット制御部35に接続されており、ロボット制御部35からの制御信号を受けて動作する。ロボット制御部35は、サスペンションメンバ1のハンドリングに関し、ティーチングにより設定された所定の動作をロボット30に行わせる。ロボット30の動作により、サスペンションメンバ1の位置および姿勢が制御され、圧入装置40に対してサスペンションメンバ1を所定の姿勢で所定のセット位置に位置させること等が行われる。ロボット制御部35は、制御装置80に接続されている。
圧入装置40は、支持フレーム部41と、ブッシュ2をカラー6に圧入するための押圧力を付与するアクチュエータとしてのサーボプレス42とを有する。
図4および図5に示すように、支持フレーム部41は、サーボプレス42による押圧力を受ける部分であり、全体として略C字状の外形をなし、その開放側を前側とする向きで立設されている。支持フレーム部41は、略C字状の外形をなす部分として、前後方向に沿うように設けられた下水平部43と、下水平部43の後端部から上方に延設された鉛直状の柱部44と、柱部44の上端部から前方に向けて延設された上水平部45とを有する。
支持フレーム部41において、上水平部45の下面45aには、ブロック状の受け部46が設けられている。受け部46は、水平面に沿うとともに下側を向く面である受け面46aを有する。受け部46は、カラー6に対するブッシュ2の圧入の過程において、受け面46aにカラー6の上端面の接触を受ける。つまり、受け面46aは、カラー6に対するブッシュ2の圧入の過程において、サーボプレス42により下側から押圧力を受けるカラー6に対する受圧面となる。このように、支持フレーム部41は、受け部46においてサーボプレス42による押圧力を受ける。
サーボプレス42は、所定のセット位置にセットされたブッシュ2の上方に位置するカラー6に対し、ブッシュ挿入孔7に圧入されるブッシュ2を押し上げるための電動シリンダ式アクチュエータである。サーボプレス42は、駆動源としてのモータと、モータの回転駆動によって直線状に往復移動する移動部としてのロッド42aと、略筒状のケース42bと、モータの回転をロッド42aの往復直線運動に変換する変換機構とを有する。
サーボプレス42は、ケース42bの長手方向の一端側からロッド42aを突出させる。ロッド42aは、サーボプレス42が有するモータの回転駆動により長手方向に往復移動し、ケース42bからの突出量を変化させる。サーボプレス42が有するモータは、例えばサーボモータやステッピングモータ等である。
サーボプレス42は、図7に示すように、サーボプレスコントローラ47に接続されている。サーボプレスコントローラ47により、サーボプレス42のモータの動作が制御され、ケース42bからのロッド42aの突出量や突出タイミングが制御される。サーボプレスコントローラ47は、制御装置80に接続されている。なお、図7においてはサーボプレス42およびサーボプレスコントローラ47をそれぞれ1つずつのみ示しているが、制御装置80には、左右の圧入装置40がそれぞれ備えるサーボプレス42およびサーボプレスコントローラ47が接続される。
サーボプレス42は、ロッド42aの移動方向、つまりケース42bの長手方向を上下方向に沿わせた向きで、支持フレーム部41に固定された状態で設けられている。サーボプレス42は、ケース42bを、支持フレーム部41の下水平部43の下側に位置させるとともに、下水平部43の上側からロッド42aを突出させる。つまり、サーボプレス42は、ロッド42aを下水平部43に貫通させるとともに、下水平部43の下側においてケース42bを支持フレーム部41に対して固定させた状態で設けられ、下水平部43を貫通するロッド42aを上下方向に移動させる。
サーボプレス42のロッド42aの上端部には、円筒状の支持台部42cが設けられている。支持台部42cは、ロッド42aに対する拡径部分であって、ロッド42aと一体的に上下移動する部分である。支持台部42cの上側には、ブッシュ2をセットするためのセット台48が設けられている。セット台48は、円筒状の外形を有し、サーボプレス42のロッド42aと同軸心線上に設けられている。セット台48は、その上端面をブッシュ2がセットされるセット面48aとする。また、セット台48の中心軸部分には、セット面48aに臨んで開口する係止穴48bが設けられている。
ブッシュ2は、所定のブッシュ支持治具49に支持された状態で、セット台48上にセットされる。本実施形態の部品圧入システム20においては、ブッシュ2がブッシュ支持治具49を介してセット台48上にセットされる位置が、ブッシュ2についてのセット位置となる。ブッシュ2は、セット位置にある状態で、中心軸線(軸心C2)を上下方向(鉛直方向)に沿わせる。セット位置にあるブッシュ2の中心軸線は、サーボプレス42のロッド42aと同軸心線上に位置する。なお、図4においては、ブッシュ支持治具49およびブッシュ2の図示を省略している。
ここで、ブッシュ2の支持構成について、図6を用いて説明する。図6(a)に示すように、ブッシュ支持治具49は、略円板状の基部49aと、基部49aの一方の(上側の)板面側の中心に設けられた棒状の支持棒部49bと、基部49aの他方の(下側の)板面側の中心に設けられた棒状の係止ピン部49cとを有する。支持棒部49bおよび係止ピン部49cは、ブッシュ支持治具49において同軸心上に位置する。
ブッシュ支持治具49は、基部49aの上側の面をブッシュ2に対する支持面である上支持面49dとし、上支持面49dから突出した支持棒部49bをブッシュ2の貫通孔14に対して下側から挿入した状態で、上支持面49d上にブッシュ2を位置決め支持する。また、ブッシュ支持治具49は、基部49aの下側の面をセット台48に対する支持面である下支持面49eとし、下支持面49eから突出した係止ピン部49cをセット台48の係止穴48bに挿入した状態で、セット台48上に位置決め支持される。
このような構成において、図6(b)に示すように、ブッシュ2は、ブッシュ支持治具49に位置決め支持された状態で、圧入装置40に対して搬送・供給される。そして、図6(c)に示すように、ブッシュ2を支持した状態のブッシュ支持治具49が、セット台48上にセットされる。このようにして、ブッシュ2がセット台48上にセットされる。
また、サーボプレス42のケース42bの前方には、ロッド42a(ケース42b)と平行にガイドロッド42dが設けられている。ガイドロッド42dの上端部は、水平状に配された連結アーム42eを介して支持台部42cに連結されている。ガイドロッド42dは、支持フレーム部41の下水平部43の前側に設けられたガイドブロック42fにおいて上下方向に沿って穿設されたガイド孔42gを貫通した状態で設けられており、サーボプレス42の動作にともなってロッド42aと一体的に昇降する。
サーボプレス42は、ロッド42aを、支持フレーム部41の受け部46の鉛直下方に位置させるように設けられている。したがって、ロッド42aの上方に設けられたセット台48が受け部46の鉛直下方に位置し、受け部46の受け面46aとセット台48のセット面48aとが上下方向に互いに対向する。このような配置構成によれば、サーボプレス42のロッド42aが往復移動することより、セット面48aが受け面46aに対して近接・離間することになる(図5、矢印B1参照)。
そして、カラー6に対するブッシュ2の圧入に際しては、サスペンションメンバ1が、カラー6を受け部46の受け面46aの下側に位置させるとともに、ブッシュ2がブッシュ支持治具49を介してセット台48上にセットされた状態で、サーボプレス42の動作により、ブッシュ2がロッド42aにより押し上げられ、カラー6のブッシュ挿入孔7に圧入される。つまり、カラー6およびその下方に位置するブッシュ2が、受け面46aとセット面48aにより上下に挟まれた態様で、サーボプレス42の伸長動作により押圧され、ブッシュ2がカラー6に圧入される。
このようなカラー6に対するブッシュ2の圧入において、サスペンションメンバ1は、カラー6を、セット位置にあるブッシュ2に対して同軸心配置させるようにセットされる。すなわち、本実施形態の部品圧入システム20においては、左右の圧入装置40それぞれにおいて、セット位置にあるブッシュ2に対して、左右のカラー6が同軸心上に位置するようにセットされる位置が、サスペンションメンバ1についてのセット位置となる。サスペンションメンバ1は、ロボット30の動作によってセット位置に位置させられ、ロボット30に支持された状態でセット位置に保持される。
以上のように支持フレーム部41およびサーボプレス42を有する圧入装置40は、部品圧入システム20において左右一対設けられており、各圧入装置40が、所定の方向としての左右方向(Y方向)に直線移動可能に設けられている(矢印D1参照)。本実施形態では、左右の各圧入装置40は、単軸アクチュエータである単軸ロボット50により、左右方向に直線移動可能に設けられている。
単軸ロボット50は、駆動源としてのモータと、モータの回転駆動によって直線状に往復移動する移動部としてのスライダ51と、スライダ51に対するレール部分を構成するケース状のベース部52と、モータの回転をスライダ51の往復直線運動に変換するボールネジ等の変換機構とを有する。単軸ロボット50が有するモータは、例えばサーボモータやステッピングモータ等である。
単軸ロボット50は、床面上に設けられた架台21上において、スライダ51の直線移動方向を左右方向に沿わせるように設けられている。スライダ51上には、水平状のフレーム支持板53が固定されており、フレーム支持板53上に、支持フレーム部41が固定された状態で立設されている。支持フレーム部41に対しては、上述のとおりサーボプレス42が一体的に設けられている。このような構成により、単軸ロボット50の動作、つまりスライダ51の往復移動によって、圧入装置40を構成する支持フレーム部41およびサーボプレス42が一体的に左右方向に移動する。
単軸ロボット50は、図7に示すように、例えばPLC(Programmable Logic Controller)等のロボットコントローラ54に接続されている。ロボットコントローラ54により、単軸ロボット50のモータの動作が制御され、スライダ51の移動量や移動タイミングが制御される。ロボットコントローラ54は、制御装置80に接続されている。なお、図7においては単軸ロボット50およびロボットコントローラ54をそれぞれ1つずつのみ示しているが、制御装置80には、左右の圧入装置40がそれぞれ備える単軸ロボット50およびロボットコントローラ54が接続される。
左右の圧入装置40は、単軸ロボット50による移動支持構成を含め、前後方向および上下方向の位置を共通とし、左右対称に構成されている。つまり、各圧入装置40を移動させる2つの単軸ロボット50は、左右方向に直列配置されている。また、単軸ロボット50による圧入装置40の左右方向の移動制御についても、左右の圧入装置40の動作が左右対称となるように、各単軸ロボット50の動作が制御されている。
また、スライダ51上に固定された水平状のフレーム支持板53は、架台21上において前後両側に設けられたスライダ機構部55により左右方向に移動可能に支持されている。一対のスライダ機構部55は、単軸ロボット50の前後両側において、互いに平行に設けられている。スライダ機構部55は、架台21の前後両側の縁部において、架台21の長手方向(左右方向)の略全体にわたって左右方向に延設されている。
スライダ機構部55は、架台21上において左右方向に延設された支持台22上に固設されたリニアガイド56と、フレーム支持板53側に固定されたスライダ57とを有する。リニアガイド56は、直線状のレール部材であり、支持台22の上側の支持面に対してボルト等の締結具によって固定されている。スライダ57は、リニアガイド56にスライド自在に嵌合した態様で係合し、リニアガイド56に対してその延設方向に沿って直線移動する。スライダ57は、支持フレーム部41を支持するフレーム支持板53の下面側にボルト等の締結具によって固定されている。
このように、圧入装置40を構成する支持フレーム部41は、フレーム支持板53を介して、単軸ロボット50の前後に位置するスライダ機構部55により、架台21上において左右方向に移動可能に支持されている。すなわち、圧入装置40の左右方向の移動について、その駆動力は、単軸ロボット50により得られ、サーボプレス42と一体的に移動する支持フレーム部41が、フレーム支持板53を介して、架台21上において単軸ロボット50の前後に設けられたスライダ機構部55によりスライド自在に支持されている。本実施形態では、左右の圧入装置40で、共通のリニアガイド56が用いられている。つまり、前後のスライダ機構部55のリニアガイド56のそれぞれに、右側の圧入装置40(40R)を支持するスライダ57と、左側の圧入装置40(40L)を支持するスライダ57とが設けられている。
なお、一対の圧入装置40を左右方向に移動させるための構成は、本実施形態に限定されるものではなく、適宜周知の構成を採用することができる。本実施形態では、各圧入装置40に対して1つのスライダ51を有するいわゆるシングルスライダタイプの単軸ロボット50を設けた構成が採用されているが、圧入装置40の移動構成としては、例えば、左右の圧入装置40に対して、共通のベース部に2つのスライダを有するいわゆるマルチスライダタイプの単軸ロボットを設けた構成であってもよい。
形状計測センサ60は、カラー6のブッシュ2の挿入側(下側)の開口部であるカラー開口部6bの中心位置を測定するためのセンサである。本実施形態に係る形状計測センサ60は、レーザを計測対象物に照射し、計測対象物からの反射光を受光することで、計測対象物の2次元的な形状を計測する。
形状計測センサ60について具体的に説明する。図8に示すように、形状計測センサ60は、計測対象物をサスペンションメンバ1のカラー6とする。形状計測センサ60は、カラー6に対して、下方から上方に向けて平面的なレーザである2次元レーザ61aを照射し、その反射光61bを受光することで、カラー開口部6b側の部分の2次元的な形状を計測する。
形状計測センサ60は、略直方体状の筐体62内に、例えば可視半導体レーザ等のレーザを発振する光源と、計測対象物からの反射光を受光するCCD(Charge-Coupled Device)等の受光素子と、投光レンズおよび受光レンズとを有する。形状計測センサ60は、筐体62の一側の側面62aに、レーザを照射する投光部63aと、反射光を受光する受光部63bとを有する。このような構成により、筐体62内の光源から発振されたレーザが投光レンズを介して投光部63aから照射され、受光部63bに入射した計測対象物からの反射光が、筐体62内の受光レンズを介して受光素子により受光される。
形状計測センサ60は、受光素子により受光した反射光に基づき、カラー6の2次元的な形状を計測する。形状計測センサ60によれば、三角測距の原理で2次元レーザを用いた光切断方式により、カラー開口部6bの部分の形状プロファイルが生成される。
本実施形態では、例えば、図8および図9に示すように、形状計測センサ60により、カラー6の周方向についての所定の角度位置におけるカラー6の内周面側の下端部分(以下「内周側下端部分」という。)の外形形状つまり断面形状が計測される。かかる断面形状は、X−Y平面に対して垂直な面の断面形状となる。図8および図9において、矩形状の枠65が、形状計測センサ60による測定範囲を示す。
図9は、形状計測センサ60による測定画像の一例を示している。形状計測センサ60による検出幅、つまり測定範囲を示す枠65の幅E1は、例えば約20mmである。形状計測センサ60の測定範囲は、検出幅内(枠65内)にカラー6の内周側下端部分が含まれるように設定される。
また、形状計測センサ60によれば、図9に示すカラー6の断面形状において、ブッシュ挿入孔7を形成するカラー6の内周面6aの下端位置が、計測点67の位置として計測される。計測点67の位置は、形状計測センサ60による測定形状において内周面6aに対応する直線66aと、カラー6の下端面の内周面6a側の部分に対応する曲線66bとの交点の位置となる。
そして、形状計測センサ60により、カラー6の内周面6aの周方向について複数箇所で計測点67の位置が計測され、複数の計測点67の位置から、カラー開口部6bの中心位置68が測定される。複数の計測点67の位置に基づく中心位置68の測定方法については後述する。
形状計測センサ60は、図7に示すように、ケーブル64(図10)を介してセンサコントローラ69に接続されている。センサコントローラ69により、2次元レーザ61aの照射タイミング(計測タイミング)等、形状計測センサ60の動作が制御される。センサコントローラ69は、制御装置80に接続されている。なお、図7においては形状計測センサ60およびセンサコントローラ69をそれぞれ1つずつのみ示しているが、制御装置80には、左右の圧入装置40がそれぞれ備える形状計測センサ60およびセンサコントローラ69が接続される。
なお、カラー開口部6bの中心位置68を測定するためのセンサは、本実施形態に限定されるものではなく、適宜周知の構成のものを採用することができる。
形状計測センサ60の支持構成について、図5、図8、図10および図11を用いて説明する。形状計測センサ60は、左右の圧入装置40のそれぞれに対し、支持フレーム部41上に設けられている。支持フレーム部41の上水平部45の上面45bの前端部には、形状計測センサ60を支持するための直方体状の支持台部71が設けられている。支持台部71は、その上面を水平状の支持面71aとする。支持面71a上には、直方体状の外形を有するセンサ支持台72が固設されている。
形状計測センサ60は、センサ支持台72上において、所定の軌道に沿って移動可能に設けられている。形状計測センサ60は、所定の軌道において複数の位置で停止し、各停止位置を、上述したようなカラー6に対する計測を行う計測位置とする。本実施形態では、形状計測センサ60は、上下方向(Z方向)に沿う所定の回転軸O1を中心とするX−Y平面における円周S1に沿う円軌道に沿って移動可能に設けられている。詳細には次のとおりである。
形状計測センサ60は、センサ支持台72上において、回転軸O1を中心として回動するように設けられた回転支持部73に支持された状態で設けられている。回転支持部73は、センサ支持台72の上面72a上に設けられた支持軸部74を介して回動可能に支持されている。
支持軸部74は、センサ支持台72に対する固定部分である固定部74aと、固定部74aに対して回動する部分である回動部74bとを有する。固定部74aおよび回動部74bは、互いに同径の円板状の外形を有する部分であり、同心配置された状態で一体的な円柱状の部分をなす。
回転支持部73は、回動部74bと一体的に設けられた回転基台部75と、回転基台部75と一体的に設けられ形状計測センサ60を固定支持する支持壁部76とを有する。
回転基台部75は、略正方形状の板面形状を有する厚板状の部分であり、両側の板面を水平面に沿わせ、支持軸部74上に設けられている。
支持壁部76は、回転基台部75の一側の側面に下端部が固定された略矩形板状の部材により構成されている。支持壁部76は、回転基台部75とともに略「L」字状をなすように、回転基台部75の板面に対して直角状に設けられている。支持壁部76の内側の板面である支持壁面76aに、形状計測センサ60が固定支持されている。形状計測センサ60は、投光部63aおよび受光部63bが設けられた側面62aを上側に向けるとともに、筐体62の一側の面を支持壁部76の支持壁面76aに接触させた状態で、支持壁部76に固定支持されている。
このように形状計測センサ60を支持する回転支持部73は、回転軸O1を中心として回動するように設けられている。回転支持部73は、支持軸部74に対して設けられたセンサ移動用の駆動源としてのセンサ移動用モータ77(図7参照)により回転駆動する。センサ移動用モータ77によれば、支持軸部74の回動部74b、回転支持部73、および回転支持部73に支持された形状計測センサ60が、回転軸O1を中心として一体的に回動する。センサ移動用モータ77は、例えば、回転駆動軸を上方に向けてセンサ支持台72内に設けられ、その回転駆動軸に、回転支持部73を含む回転部分が連結される。センサ移動用モータ77は、例えば、サーボモータやステッピングモータ等である。
センサ移動用モータ77は、図7に示すように、モータコントローラ78に接続されている。モータコントローラ78により、センサ移動用モータ77の動作が制御され、形状計測センサ60の移動動作が制御される。モータコントローラ78は、制御装置80に接続されている。なお、図7においてはセンサ移動用モータ77およびモータコントローラ78をそれぞれ1つずつのみ示しているが、制御装置80には、左右の形状計測センサ60に対して設けられたセンサ移動用モータ77およびモータコントローラ78が接続される。
以上のような形状計測センサ60の支持構成によれば、形状計測センサ60は、回転軸O1を中心とする回転支持部73の回動にともない、筐体62の支持壁面76aに対する接触側と反対側の面62bを回転軸O1側に向け、回転軸O1に対する向きを一定として、円周S1に沿う円軌道に沿って移動する。これにより、形状計測センサ60の移動経路におけるいずれの位置(角度位置)においても、被計測位置にあるサスペンションメンバ1のカラー6の内周側下端部分に対する投光部63aおよび受光部63bの相対的な位置関係が一定となり、カラー6の周方向についての所定の角度位置におけるカラー6の内周側下端部分の外形形状が形状計測センサ60により計測される。
したがって、形状計測センサ60の円軌道の半径、つまり形状計測センサ60の回転半径は、カラー6の内径(ブッシュ挿入孔7の孔径)に対応した回転半径となる。そして、形状計測センサ60は、円周S1に沿う移動経路における複数の位置(角度位置)をカラー6に対する計測位置とする。また、本実施形態では、左右の形状計測センサ60(60L,60R)は、互いに同期して移動し、回転軸O1回りの角度位置を共通とする。
以上のように、形状計測センサ60は、円周S1に沿う所定の円軌道に沿って移動可能に設けられている。そして、形状計測センサ60は、所定の被計測位置に位置したサスペンションメンバ1に対して移動することにより、カラー開口部6bの周方向について複数の計測位置でカラー開口部6bの開口縁部の外形形状を計測し、計測した外形形状における所定の計測点67の位置を計測する。
本実施形態では、カラー開口部6bの開口縁部の外形形状は、上述したカラー6の内周側下端部分の外形形状である。形状計測センサ60は、計測したカラー6の内周側下端部分の外形形状における所定の計測点67の位置として、カラー6の内周面6aの下端位置、つまり直線66aと曲線66bとの交点の位置を計測する(図9参照)。このように形状計測センサ60により複数の計測位置で計測された計測点67の位置から、カラー開口部6bの中心位置68が測定される。
そして、本実施形態では、形状計測センサ60による複数の計測位置が、次のような角度位置として予め設定されている。すなわち、形状計測センサ60は、カラー開口部6bの周方向について90°間隔の4箇所の計測位置で計測点67の位置を計測する。詳細には次のとおりである。
図8および図11に示すように、回転軸O1回りの形状計測センサ60の角度位置について、形状計測センサ60が回転軸O1の後方に位置し、支持壁面76aが左右方向と平行となる位置、つまり筐体62の長手方向が左右方向に平行となる位置を、0°の位置とする。この0°の位置を基準として、左回りに、0°の位置、90°の位置、180°の位置、および270°の位置の4箇所の位置が、形状計測センサ60による計測位置となる。
このような形状計測センサ60による計測位置によれば、4箇所の計測位置のうち、0°の位置と180°の位置において計測されるカラー6の内周側下端部分の外形形状は、X−Z平面の断面形状となり、90°の位置と270°の位置において計測されるカラー6の内周側下端部分の外形形状は、Y−Z平面の断面形状となる。
以下の説明では、形状計測センサ60の各計測位置について、0°の位置(符号60A参照)を第1計測位置、90°の位置(符号60B参照)を第2計測位置、180°の位置(符号60C参照)を第3計測位置、270°の位置を第4計測位置(符号60D参照)とする。また、第1計測位置において計測される計測点67を第1計測点67Aとし、第2計測位置において計測される計測点67を第2計測点67Bとし、第3計測位置において計測される計測点67を第3計測点67Cとし、第4計測位置において計測される計測点67を第4計測点67Dとする。
制御装置80は、形状計測センサ60からの入力に基づいて、ロボット30の動作制御および圧入装置40のY方向についての移動制御を行う。圧入装置40のY方向についての移動制御は、単軸ロボット50の動作制御により行われる。
制御装置80においては、センサ移動用モータ77により回転軸O1を中心とする円軌道に沿って移動するように設けられた形状計測センサ60の位置情報が加味され、形状計測センサ60による計測点67の位置の計測結果に基づき、計測点67の位置として3次元的な座標が測定される。制御装置80は、形状計測センサ60による計測点67の位置についての計測値に基づき、ロボット30および単軸ロボット50の動作制御における補正を行う。
制御装置80は、その演算制御部において、プログラム等を格納する格納部、プログラム等を展開する展開部、プログラム等に従って所定の演算を行う演算部、演算部による演算結果等を保管する保管部等を有する。具体的には、演算制御部としては、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続された構成や、ワンチップのLSI等からなる構成が用いられる。演算制御部としては、専用の装置や、市販のパーソナルコンピュータやワークステーション等に上記プログラム等が格納されたものが用いられる。
また、制御装置80は、入力部および表示部を備える。入力部は、サスペンションメンバ1に対するブッシュ2の圧入制御に関する種々の情報・指示等を入力するための構成であり、例えば、キーボード、マウス、ボタン等である。表示部は、部品圧入システム20の各部の動作状況や入力部による入力内容、圧入の結果等を表示するための構成であり、例えば、液晶ディスプレイ等である。
制御装置80は、ロボット30によりサスペンションメンバ1を所定の被計測位置に位置させた状態で、形状計測センサ60によりカラー開口部6bの中心位置68を測定する。
ここで、サスペンションメンバ1についての被計測位置は、サスペンションメンバ1の前側または後側の左右2箇所のカラー6のそれぞれが左右の圧入装置40上に設けられた各形状計測センサ60の上方に位置する位置である。また、被計測位置に位置するサスペンションメンバ1の姿勢は、カラー6の中心軸が形状計測センサ60の回転軸O1と一致するように水平状態に保持される。
制御装置80は、ロボット30によってサスペンションメンバ1を被計測位置に保持した状態において、形状計測センサ60により複数の計測位置で計測された計測点67の位置から、カラー開口部6bの中心位置68を測定する。本実施形態では、制御装置80は、上述のとおり、第1〜第4計測位置の4箇所の計測位置で計測された計測点67の位置から、中心位置68を測定する。
中心位置68の測定について、図12を用いて具体的に説明する。図12は、カラー6を形状計測センサ60により計測される側つまり下側から見た場合の模式図である。図12に示すように、4箇所の計測位置にて計測点67の計測を行う形状計測センサ60によれば、回転軸O1回りに90°の角度間隔で、第1計測点67A、第2計測点67B、第3計測点67C、および第4計測点67Dの4つの計測点67の位置が計測される。
これら4つの計測点67に関し、180°位相が異なる第1計測点67Aおよび第3計測点67Cを通る直線F1と、同じく180°位相が異なる第2計測点67Bおよび第4計測点67Dを通る直線F2とが求められる。そして、直線F1と直線F2との交点G1の位置が、カラー開口部6bの中心位置68として測定される。
このように、制御装置80は、180°位相が異なる2箇所の計測位置で計測された計測点67を通る直線を、2箇所の計測位置ごとに、つまり第1の計測位置および第3の計測位置の組合せ、および第2の計測位置および第4の計測位置の組合せの各組合せについて求める。そして、求めた2本の直線F1,F2の交点G1の位置を、中心位置68とする。
制御装置80は、その演算制御部の格納部に格納された所定のプログラムに従って所定の演算等を行うことにより、中心位置68を測定するための所定の機能部を機能させ、左右の形状計測センサ60の計測結果を用いて、左右のカラー6のそれぞれについての中心位置68(68L,68R)の測定を行う。中心位置68としては、形状計測センサ60の位置情報も含めて3次元的な座標が測定される。制御装置80において測定された2箇所の中心位置68は、演算制御部における格納部等に記憶される。
次に、制御装置80は、測定した2つのカラー6それぞれの中心位置68(68L,68R)を通る直線である中心位置直線H1を求める。すなわち、図13および図14に示すように、左側の形状計測センサ60の計測値に基づいて測定された左側のカラー6について求められた中心位置68Lと、右側の形状計測センサ60の計測値に基づいて測定された右側のカラー6について求められた中心位置68Rとの2点が中心位置直線H1を定める測定点となり、2つの測定点から、中心位置直線H1が算出される。中心位置直線H1は、略左右方向に沿う直線となる。
制御装置80は、その演算制御部の格納部に格納された所定のプログラムに従って所定の演算等を行うことにより、中心位置直線H1を求めるための所定の機能部を機能させ、左右の中心位置68(68L,68R)から、中心位置直線H1の算出を行う。制御装置80において求められた中心位置直線H1は、演算制御部における格納部等に記憶される。
そして、制御装置80は、左右の形状計測センサ60により測定した左右の中心位置68(68L,68R)、および中心位置直線H1のそれぞれを用いて、圧入装置40の移動制御(単軸ロボット50の動作制御)における圧入装置40の位置についての補正、およびサスペンションメンバ1を把持した状態で移動させるロボット30の動作制御におけるサスペンションメンバ1の姿勢についての補正を行う。以下の説明では、前者の補正を「圧入装置位置補正」とし、後者の補正を「ワーク姿勢補正」とする。以下、各補正について説明する。
まず、圧入装置位置補正について説明する。制御装置80は、圧入装置位置補正として、測定した2つのカラー6それぞれの中心位置68(68L,68R)間のY方向の距離に基づき、圧入装置40のY方向の移動制御により、ブッシュ2のセット位置を補正する。制御装置80は、その演算制御部の格納部に格納された所定のプログラムに従って所定の演算等を行うことにより、所定の機能部を機能させて圧入装置位置補正を行う。
圧入装置位置補正においては、まず、図13および図14に示すように、左側のカラー6の中心位置68Lと、右側のカラー6の中心位置68Rとの間のY方向の距離(以下「中心位置間距離」という。)J1が測定される。そして、左右の各圧入装置40におけるブッシュ2の中心位置間のY方向の距離(以下「圧入装置間距離」という。)J2(図4参照)が、中心位置間距離J1となるように、単軸ロボット50の制御により、圧入装置40のY方向の位置が補正される。ここで、圧入装置間距離J2を規定するための各圧入装置40における位置は、圧入装置40にセットされるブッシュ2との関係で、Y方向について位置がブッシュ2の中心位置と同じとなる位置である。かかる位置としては、例えば、各圧入装置40におけるセット台48の中心軸の位置が用いられる。
圧入装置位置補正において、中心位置間距離J1の比較対象となる圧入装置間距離J2としては、圧入装置位置補正の補正時における左右の圧入装置40間の距離が用いられてもよいし、左右の圧入装置40間の距離として予め設定した規定の距離が用いられてもよい。後者の場合、圧入装置間距離J2は、サスペンションメンバ1の前側の左右のカラー6に対するブッシュ2の圧入を行う場合と、後側の左右のカラー6に対するブッシュ2の圧入を行う場合とで、それぞれ予め設定された一定の値となる。
圧入装置位置補正において、単軸ロボット50の動作制御による圧入装置40の移動としては、左右の圧入装置40を対称的に移動させてもよいし、左右いずれか一方の圧入装置40のみを移動させてもよい。図13および図14に示すように、圧入装置位置補正における補正量としての左右の圧入装置40の移動量は、圧入装置間距離J2に対する中心位置間距離J1の差ΔYとなる。そして、圧入装置位置補正において左右の圧入装置40を対称的に移動させる場合は、各圧入装置40がΔY/2の移動量で移動させられる。また、圧入装置位置補正において左右いずれか一方の圧入装置40のみを移動させる場合は、いずれか一方の圧入装置40がΔYの移動量で移動させられる。
図13および図14においては、中心位置間距離J1が圧入装置間距離J2よりも大きい場合を示している。この場合、左右の圧入装置40の間隔は広げられることになる。逆に、中心位置間距離J1が圧入装置間距離J2よりも小さい場合は、左右の圧入装置40の間隔は狭められることになる。なお、図13および図14においては、圧入装置間距離J2に対する中心位置間距離J1の差ΔYを誇張して示している。
次に、ワーク姿勢補正について説明する。制御装置80は、ワーク姿勢補正として、求めた中心位置直線H1が予め設定した規定の直線である基準直線H0に一致するように、ロボット30の動作制御により、サスペンションメンバ1のセット位置における姿勢を補正する。制御装置80は、その演算制御部の格納部に格納された所定のプログラムに従って所定の演算等を行うことにより、所定の機能部を機能させてワーク姿勢補正を行う。
図13および図14に示すように、ワーク姿勢補正においては、ロボット30が把持するサスペンションメンバ1について形状計測センサ60の計測値に基づいて求められた中心位置直線H1が、一点鎖線で示す基準直線H0に対して傾いている場合(ずれている場合)、その傾き(ずれ)がロボット30の動作により補正される。基準直線H0は、Y方向に沿う直線であり、例えば、各部の寸法が規定の寸法であるサスペンションメンバ1が基準ワークとして用いられ、この基準ワークにおける左右のカラー開口部6bの中心位置68を通る直線として設定される。
具体的には、例えば、図13に示すように、X−Y平面視において、中心位置直線H1が基準直線H0に対して角度θ1傾いている場合、角度θ1が0となるように、つまり中心位置直線H1が基準直線H0に一致するように、ロボット30によってサスペンションメンバ1が上下方向に沿う直線回りに回動させられる。すなわち、ロボット30の動作により、サスペンションメンバ1が上下方向に沿う直線L1回りの第1の回動方向R1(図1参照)に回動させられ、X−Y平面視におけるサスペンションメンバ1の角度θ1の傾きが補正される。
図13に示す例では、サスペンションメンバ1は、ロボット30により右回りに回動させられることで、角度θ1の傾きに対する補正が行われる。これにより、二点鎖線で示すように、サスペンションメンバ1のX−Y平面視における姿勢が補正される。
また、例えば、図14に示すように、Y−Z平面視において、中心位置直線H1が基準直線H0に対して角度θ2傾いている場合、角度θ2が0となるように、つまり中心位置直線H1が基準直線H0に一致するように、ロボット30によってサスペンションメンバ1が前後方向に沿う直線回りに回動させられる。すなわち、ロボット30の動作により、サスペンションメンバ1が前後方向に沿う直線L2回りの第2の回動方向R2(図1参照)に回動させられ、Y−Z平面視におけるサスペンションメンバ1の角度θ2の傾きが補正される。
図14に示す例では、サスペンションメンバ1は、ロボット30により右回りに回動させられることで、角度θ2の傾きに対する補正が行われる。これにより、二点鎖線で示すように、サスペンションメンバ1のY−Z平面視における姿勢が補正される。
このように、ワーク姿勢補正においては、ロボット30の動作制御によって、サスペンションメンバ1についての中心位置直線H1を基準直線H0に対して3次元的に一致させる補正が行われる。なお、ワーク姿勢補正としては、中心位置直線H1の基準直線H0に対する傾きのうち、X−Y平面視での傾きおよびY−Z平面視での傾きのいずれか一方のみの傾きについての補正が行われてもよい。なお、図13および図14においては、基準直線H0に対する中心位置直線H1の傾きとしての角度θ1,θ2を誇張して示している。
以上のような圧入装置位置補正およびワーク姿勢補正が行われることで、ブッシュ2が前者の補正によって補正されたセット位置に位置させられるとともに、後者の補正によって姿勢が補正されたサスペンションメンバ1がロボット30によりセット位置に位置させられる。かかる状態で、サーボプレス42の動作により、カラー6に対するブッシュ2の圧入が行われる。なお、圧入装置位置補正およびワーク姿勢補正の両補正が行われる順番は特に限定されず、また、両補正は同時的に行われてもよい。
以下では、図15から図17を用いて、本実施形態に係るブッシュ圧入工程における部品圧入システム20の一連の動作について、本実施形態に係る部品圧入法とともに説明する。ここでは、サスペンションメンバ1が有する4箇所のカラー6のうち前側の2箇所のカラー6Aに対するブッシュ2の圧入を行った後、後側の2箇所のカラー6Bに対するブッシュ2の圧入を行う場合を例にとって説明する。ただし、左右のカラー6に対するブッシュ2の圧入の順番は、前後逆であってもよい。
本実施形態に係る部品圧入方法は、4つのカラー6を有するサスペンションメンバ1およびカラー6に圧入されるブッシュ2のそれぞれをセット位置にセットした状態で、2つのカラー6に同時的にブッシュ2を圧入するための方法である。この部品圧入方法について、本実施形態に係る部品圧入システム20により行われる場合について説明する。
図15に示すように、本実施形態に係るブッシュ圧入工程においては、まず、サスペンションメンバ1を被計測位置にセットすることが行われる(S10)。ステップS10では、図16(a)に示すように、所定の待機位置にあるサスペンションメンバ1が、ロボット30により把持・搬送され、左右の圧入装置40それぞれの上側に設けられた形状計測センサ60に対する被計測位置に移動させられる。ここでのサスペンションメンバ1の被計測位置は、サスペンションメンバ1が、前側の左右のカラー6Aを、それぞれ形状計測センサ60の上方に位置させる位置である。また、サスペンションメンバ1は、形状計測センサ60による一連の計測が完了するまで、ロボット30により把持された状態で被計測位置にて保持される。
次に、サスペンションメンバ1が被計測位置に位置した状態で、左右の形状計測センサ60それぞれにより、各カラー6に対する4箇所の計測点67の計測が行われる(図15、S20)。ステップS20では、上述した形状計測センサ60の第1〜第4計測位置の4箇所の計測位置での計測点67の計測が行われる。4箇所の計測点67の計測において、形状計測センサ60は、例えば次のように動作する。なお、左右の形状計測センサ60は、上述のとおり互いに同期して移動する。
形状計測センサ60は、その回動動作の中心線となる回転軸O1に対して後方の位置である第1計測位置(図8、図11、符号60A参照)を初期位置とする。そこで、図17(a)に示すように、形状計測センサ60は、まず、初期位置である第1計測位置(0°の位置)にて、第1計測点67Aの計測を行い、かかる計測を行った後、左回りに90°回動し、第2の計測位置(90°の位置)に移動する(矢印K1参照)。
第2の計測位置に移動した形状計測センサ60は、第2の計測位置にて第2計測点67Bの計測を行う。形状計測センサ60は、第2計測点67Bの計測を行った後、図17(b)に示すように、左回りに90°回動し、第3の計測位置(180°の位置)に移動する(矢印K2参照)。
第3の計測位置に移動した形状計測センサ60は、第3の計測位置にて第3計測点67Cの計測を行う。形状計測センサ60は、第3計測点67Cの計測を行った後、図17(c)に示すように、左回りに90°回動し、第4の計測位置(270°の位置)に移動する(矢印K3参照)。
第4の計測位置に移動した形状計測センサ60は、第4の計測位置にて第4計測点67Dの計測を行う。形状計測センサ60は、第4計測点67Dの計測を行った後、図17(d)に示すように、右回りに回動し、初期位置である第1の計測位置に戻る(矢印K4参照)。なお、4箇所の計測点67の計測における形状計測センサ60の動作は、上記の例に限定されるものではなく、4箇所の計測点67の計測の順番も特に限定されるものではない。
左右のカラー6それぞれについて形状計測センサ60によって4箇所の計測点67の計測が行われた後、カラー開口部6bの中心位置68の測定が行われる(図15、S30)。ステップS30では、上述したように、4つの計測点67に関し、第1計測点67Aおよび第3計測点67Cを通る直線F1と、第2計測点67Bおよび第4計測点67Dを通る直線F2とが求められ、直線F1と直線F2との交点G1の位置が中心位置68として測定される(図12参照)。
このように、ステップS20およびステップS30が、本実施形態に係る部品圧入方法において、2つのカラー6のブッシュ2の挿入側のカラー開口部6bの中心位置68を測定する第1のステップに相当する。
そして、本実施形態に係る部品圧入方法は、第1のステップでは、所定の被計測位置に位置したサスペンションメンバ1に対して移動可能に設けられた形状計測センサ60により、カラー開口部6bの周方向について複数の(本実施形態では4箇所の)計測位置でカラー開口部6bの開口縁部の外形形状を計測し、計測した外形形状における所定の計測点67の位置を計測し、計測した4つの計測点67の位置から、中心位置68を測定する。
特に、本実施形態に係る部品圧入方法は、第1のステップでは、形状計測センサ60により、カラー開口部6bの周方向について90°間隔の4箇所の計測位置で計測点67の位置を計測し、180°位相が異なる2箇所の計測位置で計測した計測点67を通る直線(直線F1,F2)を、2箇所の計測位置ごとに求め、求めた2本の直線の交点G1の位置を、中心位置68とする。
左右のカラー6についての中心位置68の測定が行われた後、中心位置直線H1の算出が行われる(図15、S40)。ステップS40では、上述したように、左側のカラー6について測定された中心位置68Lと、右側のカラー6について測定された中心位置68Rとの2点を通る直線として中心位置直線H1が算出される(図13、図14参照)。
このように、ステップS40が、本実施形態に係る部品圧入方法において、第1のステップにより測定した2つのカラー6それぞれの中心位置68を通る直線である中心位置直線H1を求める第2のステップに相当する。
中心位置直線H1が求められた後、上述した圧入装置位置補正が行われる(図15、S50)。すなわち、ステップS50が、本実施形態に係る部品圧入方法において、第1のステップにより測定した2つのカラー6それぞれの中心位置68間の所定の方向(Y方向)の距離に基づき、ブッシュ2のセット位置を補正するステップに相当する。
圧入装置位置補正が行われた後、上述したワーク姿勢補正が行われる(図15、S60)。すなわち、ステップS60が、第2のステップにより求めた中心位置直線H1が予め設定した基準直線H0に一致するように、サスペンションメンバ1のセット位置における姿勢を補正するステップに相当する
なお、ステップS50およびステップS60の順序は逆であってもよいし、これらのステップが同時的に行われもよい。
そして、圧入装置位置補正およびワーク姿勢補正が行われ、サスペンションメンバ1およびブッシュ2がそれぞれセット位置に位置した状態で、左右のカラー6に対するブッシュ2の圧入が行われる(図15、S70)。ステップS70では、図16(b)に示すように、ロボット30の動作によって被計測位置からセット位置に移動させられたサスペンションメンバ1に対し、左右の圧入装置40それぞれにおいてセット位置に位置するブッシュ2が、サーボプレス42の動作によって圧入される。
詳細には、図16(c)に示すように、サーボプレス42のロッド42aが上方に延び出ることで、ロッド42aと一体的にセット台48、並びにこれにセットされたブッシュ2およびブッシュ支持治具49が上昇し(矢印M1参照)、サーボプレス42の押圧力により、ブッシュ2がカラー6に対して下側から圧入される(矢印M2参照)。そして、図16(d)に示すように、ブッシュ2の圧入が完了した後、サーボプレス42がロッド42aをケース42b内に収め入れるように下降させることで、ブッシュ2を載置していたブッシュ支持治具49がセット台48上にセットされた状態のまま下降する(矢印M3参照)。その後、セット台48上に残ったブッシュ支持治具49は、図示せぬ回収装置により回収される。なお、ブッシュ2は、カラー6に対する圧入に際し、所定のタイミングで、ブッシュ支持治具49にセットされた状態で図示せぬロボット等の部品供給装置により圧入装置40に供給され、セット台48にセットされる。
以上のようにしてサスペンションメンバ1の前側の2箇所のカラー6Aに対するブッシュ2の圧入が行われた後、サスペンションメンバ1がロボット30によって前後反転させられ、前側の2箇所のカラー6Aに対するブッシュ2の圧入と同様の手順により、後側の2箇所のカラー6Bに対するブッシュ2の圧入が行われる。そして、サスペンションメンバ1が有する4箇所全てのカラー6に対するブッシュ2の圧入が完了した後、ブッシュ2の圧入を受けたサスペンションメンバ1は、ロボット30によって所定の搬出位置へと移動させられる。これにより、1つのサスペンションメンバ1についてのブッシュ圧入工程が終了する。
以上のような本実施形態に係る部品圧入システム20および部品圧入方法によれば、被圧入部としてのカラー6を有するサスペンションメンバ1とブッシュ2との位置合わせの精度を向上することができ、ブッシュ2の圧入不良および部品圧入時の騒音を低減することができるとともに、高い汎用性を得ることができる。
すなわち、本実施形態に係る部品圧入技術によれば、サスペンションメンバ1ごとに形状計測センサ60によってブッシュ2の圧入対象となるカラー6の開口中心の位置関係が測定され、かかる位置関係に基づいてサスペンションメンバ1の姿勢およびブッシュ2のセット位置の位置関係が補正される。これにより、サスペンションメンバ1にブッシュ2を圧入する際に、カラー6の左右ピッチや軸心合わせを容易に行うことができるので、サスペンションメンバ1の公差(製造誤差)等によるカラー6(ブッシュ挿入孔7)とブッシュ2の位置ズレに対応することが容易となり、ブッシュ2の圧入に際して高い精度でのサスペンションメンバ1とブッシュ2の位置合わせが可能となる。したがって、ブッシュ2の圧入不良やブッシュ2の圧入時における強干渉による騒音の発生を抑制することができ、作業環境を改善することができる。
また、本実施形態に係る部品圧入技術によれば、実ワークにおけるカラー6の左右ピッチや傾き等を測定してブッシュ2の圧入位置の左右幅やワークの姿勢が調整され、ブッシュ2のセット位置およびサスペンションメンバ1の姿勢について各ワーク個体に対応した補正が行われる。このため、車種等により形状や寸法等が異なるワークおよびブッシュであっても、専用のアクチュエータ等を備えることなく、左右同時圧入が可能となる。これにより、高い汎用性を得ることができ、設備投資を削減することができる。
このように、本実施形態に係る部品圧入技術によれば、サスペンションメンバ1においてブッシュ2が圧入される位置を形状計測センサ60で測定し、その測定値をロボット30および圧入装置40にフィードバックすることで、実ワークにおけるカラー6の左右ピッチや傾き等に対応して、ブッシュ2のカラー6のセンターへの位置補正が可能となる。
また、本実施形態に係る部品圧入技術によれば、被計測位置に位置したサスペンションメンバ1に対して移動可能に設けられた形状計測センサ60により、カラー開口部6bの周方向について複数の計測位置でカラー開口部6bの開口縁部の外形形状が計測され、計測された外形形状における所定の計測点67の位置から中心位置68が測定される。これにより、形状計測センサ60による計測に際し、形状計測センサ60に対してサスペンションメンバ1を移動させる構成と比べて、作業スペースをコンパクトにすることが可能となる。また、形状計測センサ60によりカラー開口部6bの周方向の複数箇所で計測される計測点67に基づいて中心位置68が測定されることから、中心位置68を精度良く測定することが可能となり、ブッシュ2のセット位置およびサスペンションメンバ1の姿勢の補正を簡単な方法でありながら高い精度で行うことができる。
また、本実施形態に係る部品圧入技術によれば、形状計測センサ60による中心位置68の測定において、カラー開口部6bの周方向について90°間隔で計測した4箇所の計測点67の位置から求めた2本の直線の交点の位置が中心位置として求められる。これにより、簡単かつ正確に中心位置68を測定することが可能となるため、サスペンションメンバ1とブッシュ2との位置合わせについて十分な精度を得ながら、ブッシュ圧入工程におけるサイクルタイムの短縮化を図ることができる。
また、本実施形態に係る部品圧入システム20においては、ブッシュ2をカラー6に圧入するための押圧力を付与するアクチュエータとして、サーボプレス42が採用されている。このような構成によれば、数値設定等によるサーボプレス42の駆動制御によってロッド42aの位置をその動作範囲で任意の位置に調整することができるので、車種やワークにおける圧入位置等によって大きさや形状が異なる複数種類のブッシュ2の圧入に容易に対応することができる。つまり、アクチュエータとしてサーボプレス42を採用することにより、部品圧入システム20の汎用性を向上することができる。ただし、上記のアクチュエータとしては、エアシリンダや油圧シリンダ等の周知の構成のものを採用することができる。
また、本実施形態に係る部品圧入システム20においては、圧入装置40を構成するサーボプレス42のロッド42aの中心軸の位置、つまりセット位置にあるブッシュ2の中心軸線と、形状計測センサ60の円軌道に沿う回動中心となる回転軸O1の位置とが同軸上に配置されている。このような構成によれば、形状計測センサ60による計測値に基づくブッシュ2のセット位置およびサスペンションメンバ1の姿勢の補正についての補正値の演算誤差を省くことが可能となる。
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係る部品圧入方法および部品圧入システムは、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
上述した実施形態では、形状計測センサ60が、圧入装置40を構成する支持フレーム部41の上側に支持されているが、このような構成に限定されることなく、形状計測センサ60を移動可能に支持するための構成を圧入装置40とは独立して設けた構成であってもよい。ただし、本実施形態に係る部品圧入システム20のように、形状計測センサ60を、圧入装置40を構成する支持フレーム部41の上側に設けた構成によれば、サスペンションメンバ1の左右のカラー6の間隔に応じてY方向に移動する圧入装置40とともに形状計測センサ60を移動させることができる。これにより、形状計測センサ60を移動可能に支持するための構成を別途設ける必要がなくなるので、部品圧入システム20を稼動させるためのエネルギーの効率を向上させることができるとともに、スペースを有効活用することができ、装置構成をシンプルなものとすることができる。
また、上述した実施形態においては、形状計測センサ60は、所定の回転軸O1を中心とする円軌道に沿って移動可能に設けられているが、形状計測センサ60の移動の態様は特に限定されるものではない。また、形状計測センサ60による計測位置や計測箇所についても、上述した実施形態に特に限定されず、カラー開口部6bの中心位置68を測定できるものであればよい。