JP6656760B2 - 加飾成形品 - Google Patents

Description

本発明は、表面に積層されたラベルで加飾された合成樹脂の加飾成形品に関する。

パッケージにおける装飾が商品力の大きな部分を占める化粧料用等の容器においては、化粧面に塗装、印刷等によるさまざまな加飾を付与することにより商品イメージを大きく向上させる手法が用いられている。
このような加飾を付与する方法の一つとして、ラベルをインサート材として予め金型内にセットし、成形品の成形と同時にこの成形品の表面に貼着させる方法がある。

特許文献１に示す加飾成形品では、キャビティ金型３３のキャビティ面３３ｓに図柄に相当する凹部３３ａが形成されており、キャビティ面３３ｓにラベル１１を密着状にセットした状態でキャビティ３４に成形品１を形成する溶融樹脂を射出、充填する。すると、凹部３３ａが位置する部分では、凹部３３ａに橋架け状に位置するラベル１１部分、特にＡＢＳ樹脂製の基材層１２部分が高温の溶融樹脂によりその柔軟性が増した状態で、溶融樹脂の充填圧力により、深絞り状に凹部３３ａの形状に沿って延伸変形し、ラベル１１が凸部２の形状に沿って積層されることで、立体的な凸状の加飾部が形成される。

特開２０１１−２１２９０４号公報

特許文献１に示す加飾成形品では、キャビティ金型３３に形成されている凹部３３ａは平坦部から成る底面を有する構成であり、凹部３３ａに基づいて成形される部分の縦断面は台形状に形成され、ラベル１１は比較的均一に延伸変形するので、立体的に加飾された凸状の加飾部にクラック等が発生する可能性は低い。

しかしながら、成形品の表面に現れる凸状の加飾部は、文字や記号に限られず多種多様な立体的形状で形成されるところ、例えば凸状の加飾部が平坦部を有さない球状の加飾部の場合において、球形部の高さ寸法が大きすぎると、ラベルの延伸量が多くなる。

特に、多数の凸状の加飾部が密集する領域では、球形部に積層されたラベルはあらゆる方向に延伸させられて局部的に薄くなることが起こり得る。そして、ラベルは上層に蒸着層を含む積層構造であることから、延伸率が大きくなる上層の蒸着層に割れ、あるいは破れが発生し、これらを通じて下地層が外部から視認され易くなり、結果として成形品の外観に品質低下を招くという問題がある。

本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、表面にラベルをインサート成形して立体的な加飾部を備える成形品において、特に球形状から成る加飾部におけるラベルの割れ、破れ等の発生を抑制し、外観的に良好な加飾成形品を創出することを課題とする。

上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、表面に球形部とそれ以外の立体的形状から成る凸部とが多数混在して成る被加飾部が設けられた射出成形品から成る成形品本体と、表面上に積層されたラベルにより被加飾部が加飾された加飾部と、を有する合成樹脂製の加飾成形品であって、ラベルが積層された加飾部は、球形部に対応する球状加飾部の高さ寸法のみが、それ以外の立体的形状から成る凸部に対応するそれ以外の凸状加飾部の高さ寸法よりも低く形成されていることを特徴とする、と云うものである。

本発明の主たる手段では、球状加飾部の高さ寸法のみを、それ以外の凸状加飾部の高さ寸法よりも低く形成することにより、ラベルの、球状加飾部での延伸量を、それ以外の凸状加飾部での延伸量と同量、又はそれ以下とすることが可能となり、球状加飾部に対応する位置でのラベルの割れや破れを防止し得る。

また本発明の他の手段は、上記手段に、加飾部の高さ寸法が０ｍｍより大きく且つ０．８ｍｍ以下である、との構成を加えたものである。

上記手段では、０ｍｍより大きくすることで成形品本体の表面に立体的な加飾部７を付与することを可能とし、また０．８ｍｍ以下とすることでラベルが必要以上に延伸させられることを抑制し得る。

また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、球状加飾部の高さ寸法は０ｍｍより大きく且つ０．４ｍｍ以下である、との構成を加えたものである。

上記手段では、球形部の直径の大きさに拘わらず、ラベルの局部的な延伸を抑制し得る。

また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、ラベルは、下層より上層に向かって順に、少なくとも接着層、第１アンカー層、フィルム基材層、第２アンカー層、蒸着層、印刷層及びクリア層を有して構成される、との構成を加えたものである。

上記手段では、加飾部にメタリック調の光沢を付与し得る。

本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
成形品本体の表面に、球状加飾部及びそれ以外の凸状加飾部による立体的な加飾を付与することができる。特に球状加飾部においては、ラベルを構成する各層の割れ、及びラベル自体の破れを抑制することができ、結果として外観的に良好な加飾成形品とすることができる。

本発明たる加飾成形品の一実施例としてのコンパクト容器の蓋部を示す斜視図である。 図１のＩＩ−ＩＩ線における縦断面図である。 ラベルの一実施例を示す拡大断面図である。 図１の加飾成形品をインサート成形するための金型構成の概略説明図である。

以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図１は本発明たる加飾成形品の一実施例としてのコンパクト容器の蓋部を示す斜視図、図２は図１のＩＩ−ＩＩ線における縦断面図、図３はラベルの一実施例を示す拡大断面図である。

本発明における加飾成形品１は、矩形薄皿状の成形品本体２に蝶番部６が配設されたコンパクト容器の蓋部であり、例えばＡＢＳ樹脂などから成る射出成形品であるが、ＡＢＳ樹脂に限られるものではなく、その他の合成樹脂の成形品でも良い。

成形品本体２の表面３には、凸状の被加飾部４が一体に突出形成されている。被加飾部４は、球形部４ａとそれ以外の立体的形状から成る凸部４ｂとを有して構成されている。それ以外の立体的形状から成る凸部４ｂの平面視形状は、例えば三角形、四角形、五角形、六角形・・・等の多角形状、又は楕円状、涙状等であり、頂部側に平坦部４Ａを有する構成である。そして、多数の球形部４ａと多数のそれ以外の立体的形状から成る凸部４ｂとが、成形品本体２の表面３上に混在する状態で、全体として被加飾部４が所定の形状を成すように密集配置され、あるいは不規則的に配置されている。

成形品本体２の表面３にはラベル１０が積層されている。図３に拡大して示すように、本実施例に示すラベル１０は、下層より上層に向かって順に、少なくとも接着層１１、第１アンカー層１２、フィルム基材層１３、第２アンカー層１４、アルミニウム等の金属をフィルム表面に付着させて成る蒸着層１５、印刷層１６及び無色透明のクリア層１７を有して構成されている。ラベル１０が被加飾部４を含む表面３に積層されることで、被加飾部４に対応する位置に立体的に加飾された加飾部７が形成される。

ここで、例えば印刷層１６のうち、被加飾部４と対応する範囲については無色透明又は有色透明に形成することにより、加飾部７を印刷層１６の下層に配置された蒸着層１５が有するメタリック調の光沢で加飾することができる。そして、印刷層１６のうち、被加飾部４と対応する範囲以外の範囲については成形品本体２の表面３の色と同色に形成することにより、成形品本体２の表面３上にメタリック調の加飾部７のみが現出されるようになり、加飾部７の加飾効果を更に高めることができる。

加飾部７のうち、球形部４ａに対応するのが球状加飾部７ａであり、それ以外の立体的形状から成る凸部４ｂに対応するのが凸状加飾部７ｂである。
図２に示すように、球状加飾部７ａの根元から頂部までの寸法である高さ寸法ｈは、それ以外の凸状加飾部７ｂの根元から平坦部４Ａまでの寸法である高さ寸法Ｈよりも低く形成されている（ｈ＜Ｈ）。
ここで、球形部４ａの表面積は、それ以外の凸状加飾部７ｂの表面積よりも広く、またラベル１０は球形部４ａの表面に沿ってあらゆる方向に延伸させられるため、高さ寸法を同じとした場合のラベル１０の延伸量は、凸状加飾部７ｂに比較して球状加飾部７ａの方が大きくなる傾向がある。
しかし、上記のように球状加飾部７ａの高さ寸法ｈを、それ以外の凸状加飾部７ｂの高さ寸法Ｈよりも低く抑えることにより、表面積の広い球形部４ａを積層する球状加飾部７ａでのラベル１０の延伸量を、それ以外の凸状加飾部７ｂでのラベル１０の延伸量と同量、又はそれ以下とすることが可能となり、球状加飾部７ａに対応する位置でラベル１０が局部的に薄くなってラベル１０を構成する各層に割れが発生することを防止し、あるいはラベル１０自体に破れが発生することを防止することが可能となる。

また球状加飾部７ａの高さ寸法ｈ及びそれ以外の凸状加飾部７ｂの高さ寸法Ｈを共に、０ｍｍより大きくすることは成形品本体２の表面３に立体的な加飾部７を付与することが可能となる点で好ましく、また０．８ｍｍ以下とすることはラベル１０が必要以上に延伸させられることが抑制され、割れや破れの発生を防止できる点で好ましい。

特に、球状加飾部７ａの高さ寸法ｈを０．４ｍｍ以下に抑えると、球形部４ａの直径の大きさに拘わらず、ラベル１０の局部的な延伸を抑制し、ラベル１０の特に蒸着層１５や印刷層１６に発生しやすい割れ、あるいはラベル１０自体の破れをより効果的に防止することが可能となる点で好ましい。

また加飾部７が、多数の球状加飾部７ａとそれ以外の多数の凸状加飾部７ｂとが密集配置されて成る場合において、上記同様に割れや破れを防止するには、更に球状加飾部７ａの高さ寸法ｈを、それ以外の凸状加飾部７ｂよりも低く形成することが好ましい。

図４は図１の加飾成形品をインサート成形するための金型構成の概略説明図である。
金型２０はキャビティ金型２１とコア金型２２から構成され、キャビティ金型２１の型面には、成形品本体２の表面３に被加飾部４である球形部４ａを形成するための複数の凹部２１ａ及びそれ以外の立体的形状から成る凸部４ｂを形成するための複数の凹部２１ｂが設けられている。

上記のような金型２０を使用し、図示しないバキューム機構で吸着する方法により、図中に示されるようにキャビティ金型２１の型面にラベル１０をセットした状態で、コア金型２２の成形品本体２の裏面の中央位置に対応する位置に配設されたセンターゲート２３から溶融樹脂を射出する。
そして、凹部２１ａ，２１ｂを有する部分では、凹部２１ａに橋架け状に位置するラベル１０部分、特にフィルム基材層１３の部分が高温の溶融樹脂によりその柔軟性が増した状態で、溶融樹脂の充填圧力により、深絞り状に凹部２１ａの形状に沿って延伸変形し、ラベル１０を図２に示したように球形部４ａ及びそれ以外の立体的形状から成る凸部４ｂの各形状に沿って積層することができる。

この際、センターゲート２３から周縁部に向かって放射状に流動する溶融樹脂によりラベル１０をあらゆる方向に引っ張るような作用が発揮され、上記した凹部２１ａに橋架け状に位置するラベル１０部分の凹部２１ａ，２１ｂの内面形状に沿う延伸変形をスムーズに達成することができる。

特に、球形部４ａを形成するための凹部２１ａは、成形後の球状加飾部７ａの高さ寸法が０．４ｍｍとなるように、その深さ寸法を他の凹部２１ｂの深さ寸法よりも浅く形成されており、ラベル１０自体の局部的な延伸も少なくなるため、特に上層側に位置する蒸着層１５や印刷層１６に割れや破れが発生することを抑制することが可能となる。

以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果を説明したが、本発明の加飾成形品はこれら実施例に限定されるものではない。
例えば、上記実施例では成形品を射出成形品としたが、インサート成形が適用可能なブロー成形や熱成形品とすることもできる。

また、これまで随所で説明したように、フィルム基材層１３が延伸変形できる範囲であれば加飾部７の形状はその他の形状とすることができる。

またラベル１０の層構成も図３に示した基本的な層構成をベースとして、加飾目的に応じてさらなる加飾のための層や、必要な機能を有する層を積層する構成とすることもできる。

本発明の加飾成形品は、ラベルを積層した凸状の加飾部により立体的な加飾を実現でき、今までにない高級感のある高度な加飾効果を現出するものであり、化粧料容器分野等における用途展開を更に広い領域で図ることができる。

１ ： 加飾成形品
２ ： 成形品本体
３ ： 表面
４ ： 被加飾部
４Ａ ： 平坦部
４ａ ： 球形部
４ｂ ： 凸部
７ ： 加飾部
７ａ ： 球状加飾部
７ｂ ： 凸状加飾部
１０ ： ラベル
１１ ： 接着層
１２ ： 第１アンカー層
１３ ： フィルム基材層
１４ ： 第２アンカー層
１５ ： 蒸着層
１６ ： 印刷層
１７ ： クリア層
２０ ： 金型
２１ ： キャビティ金型
２２ ： コア金型
２１ａ： 凹部（球形部用）
２１ｂ： 凹部（凸部用）
２３ ： センターゲート

Claims (4)

1. 表面（３）に球形部（４ａ）とそれ以外の立体的形状から成る凸部（４ｂ）とが多数混在して成る被加飾部（４）が設けられた射出成形品から成る成形品本体（２）と、該表面（３）上に積層されたラベル（１０）により前記被加飾部（４）が加飾された加飾部（７）と、を有する合成樹脂製の加飾成形品であって、
   前記ラベル（１０）が積層された前記加飾部（７）は、前記球形部（４ａ）に対応する球状加飾部（７ａ）の高さ寸法のみが、前記それ以外の立体的形状から成る凸部（４ｂ）に対応するそれ以外の凸状加飾部（７ｂ）の高さ寸法よりも低く形成されていることを特徴とする加飾成形品。
2. 加飾部（７）の高さ寸法が０ｍｍより大きく且つ０．８ｍｍ以下である請求項１記載の加飾合成樹脂成形品。
3. 球状加飾部（７ａ）の高さ寸法は０ｍｍより大きく且つ０．４ｍｍ以下である請求項１又は２記載の加飾合成樹脂成形品。
4. ラベル（１０）は、下層より上層に向かって順に、少なくとも接着層（１１）、第１アンカー層（１２）、フィルム基材層（１３）、第２アンカー層（１４）、蒸着層（１５）、印刷層（１６）及びクリア層（１７）を有して構成される請求項１乃至３のいずれか一項に記載の加飾合成樹脂成形品。
   

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