JP5828386B2 - 加飾合成樹脂成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
このような加飾性を付与する方法の一つとして、インサートラベルをインサート材として予め金型内にセットし、成形品の成形と同時にこの成形品の表面に貼着する方法がある。
例えば、特許文献1には、インサートラベルに関する発明が記載されている。
このラベル111は、合成紙からなる不透明な基材層112の表面に印刷層115を形成し、この印刷層115を静電気の帯電を防止するための帯電防止剤を含有したニスコートによる保護層118で被覆しており、また裏面にはインサート成形により合成樹脂成形品の表面に接着固定する接着層116を積層している。
インサート材としてインサートラベルを成形金型内に配設した状態でインサート成形する、このラベルにより加飾した合成樹脂成形品の製造方法において、
ラベルは、透明性を有する合成樹脂フィルム製の基材層の裏面側に金属薄膜層を積層し、この金属薄膜層の裏面側に凸状模様(M)を成す印刷層(14)を積層したものであり、
さらに基材層と金属薄膜層の間に、印刷層をさけて、その周囲に着色印刷層を積層したものであり、
このラベルを、表面側を貼着面として成形品に貼着されるように成形金型内に配設した状態でインサート成形を行い、
金属薄膜層に、インサート成形の成形圧力による、印刷層の金属薄膜層を伴った基材層方向への圧入状の変位により、凸状模様が転写するようにして凹凸模様を形成する、と云うものであり、
この方法により、成形品のラベルが貼着される面と反対側から成形品が所定箇所に有する透明性領域を透して金属薄膜層による凹凸模様が現出して加飾性が発揮される構成とした加飾合成樹脂成形品が製造される。
また、「成形品の透明性領域」や「透明性を有する合成樹脂フィルム製」等、上記構成や以下の説明では「透明性」と云う用語を使用しているが、この「透明性」には無色透明性であることは勿論のこと、有色透明性、さらには半透明性であることが含まれる。
本願発明者らは基材層の裏面側に印刷層、特にスクリーン印刷法による層厚さが0.2mm程度にも及ぶ、所謂、厚盛印刷層で凸状模様を突出形成したラベルの加飾性を検討する中、このラベルの裏面側、すなわち印刷層側を金型の型面に密着させた状態で金型の型面にセットしてインサート成形を実施すると、上記したインサート成形時の温度の上昇による基材層の軟化と、ラベルを型面に押付ける力の作用により、突出形成された印刷層が基材層の裏面側に埋込まれるように圧入状に変位し、印刷層による凸状模様が基材層に転写されることを見出し、上記構成を創出するに至った。
成形品の透明性領域を透して、印刷層の凸状模様が転写するようにして金属薄膜層に形成された、メタル調の光沢を有する、あるいは凹凸により光線が反射されてきらきらと輝く凹凸模様が現出する。
また、この凹凸模様は成形品の透明性領域や透明な基材層を透して現出するため、深みのある立体的な視覚効果が発揮される。
一方、インサート成形時の高温の溶融樹脂、あるいは高温で軟化した樹脂の成形圧力により、合成樹脂フィルム製の基材層は軟化して容易に塑性変形することが可能な状態にあるため、ラベルを型面に押付ける力の作用により、印刷層の金属薄膜層を伴った基材層方向への圧入状の変位は容易に進行可能であり、基材層の裏面側に凸状模様の形状に沿って、凹凸模様を良好な再現性で転写、形成することができ、
その結果、金属薄膜層の凹凸模様についても、印刷層による凸状模様と同様に繊細で多様な模様とすることができる。
厚盛印刷層はスクリーン印刷で多数回の重ね印刷することにより、あるいは紫外線硬化型(UV)インクを使用したスクリーン印刷では1回の印刷により形成することが可能であり、通常の印刷層では層厚さが0.03mm程度であるところ、この層厚さを0.3mm程度にも大きくすることが可能である。
たとえば、着色印刷層を、透明性を有するものとすることにより、金属薄膜層による凹凸模様を着色したメタリック調とすることができる。
また着色印刷層を、凸状模様を形成する印刷層が積層される部分を避けて、この印刷層の積層部の周囲に積層することにより、加飾成形品では、突出形成される印刷層が転写して金属薄膜層に凸状に形成される文字や図柄だけを、周囲とは区別してメタリック調に現出させると云うような加飾が可能となる。
すなわち、本発明の主たる構成を有する製造方法による成形品にあっては、
成形品の透明性領域を透して、印刷層の凸状模様が転写するようにして金属薄膜層に形成された、メタル調の光沢を有する、あるいは凹凸により光線が反射されてきらきらと輝く凹凸模様が現出し、深みのある立体的な今までにない視覚効果が発揮される。
また、凹凸模様は金型の型面を刻設加工することなく、立体的な視覚効果をインサートラベルの層構成で実現するものであり、低コスト、高い生産性で多様な製品に適用することができる。
図1、2は本発明の製造方法による加飾合成樹脂成形品の一参考例を示すもので、図1は平面図、図2(a)は図1中のA−A線に沿って示す断面図、図2(b)は図2(a)中、円で囲った部分の拡大図である。
この成形品1は矩形薄皿状のコンパクト容器の蓋材で、透明性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製の射出成形品であり、頂壁2の下面側にインサート成形によるインサートラベル11が貼付されている。
この成形品1では、ラベル11が貼付されている領域を透明性領域Tpとして残し、その他の部分を、表面を不透明状に塗装した非透明領域Pとている。(図2(a)参照)
このラベル11は図4に示されるように、表面側から裏面側(図中では上から下)に向けて、接着層16/着色印刷層15/基材層12/アンカー層17/金属薄膜層13/保護層18/印刷層14、と云う積層構造を有する。
ここで、着色印刷層15の層厚さは0.03mm程度、基材層12の層厚さは0.2mm、印刷層14の最大の層厚さは0.15mmで、その他の層の層厚さはそれぞれ数ミクロン程度である。
最裏面側に積層される印刷層14は、UV硬化型のインクを使用したスクリーン印刷により1回の印刷で形成した厚盛印刷層14aで、この厚盛印刷層14aにより図3に示されるような雪の結晶を図案化した凸状模様Mを突出形成し、その突出高さ、すなわち厚盛印刷層14aの最大の層厚さは前述したように0.15mmである。
なお、厚盛印刷層14aはUV硬化型のインクを使用しないスクリーン印刷の場合でも数回の重ね印刷をすることにより形成することが可能である。
また、ラベル11の最表面側に積層されている、成形品1に接着固定するための接着層16は、耐熱性の観点からエチレン・塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂製としている。
なお、接着層16、アンカー層17、保護層18はいずれ数ミクロン程度の層厚さで無色透明であるが、図2、後述する図5、図6で示すラベル11の層構成では、簡略化のためこれら3つの層を省略してその層構成を示している。
図2(b)に示される成形品1の下面側に貼付されているインサートラベル11の積層構造と図4に示されるラベル11の積層構造を比較すれば分かるように、
図4のラベル11の最裏面側に突出形成された厚盛印刷層14aが、インサート成形により後述するように、金属薄膜層13を伴って基材層12の裏面側に圧入状に変位し、その結果、図3に示される印刷層14aによる雪の結晶を図案化した凸状模様Mが転写するようにして、金属薄膜層13に凹凸模様Maが形成されている(図1も参照)。
なお、図2に示した例では、金属薄膜層13を伴った厚盛印刷層14aの基材層12中への圧入状の変位に伴い、基材層12自体も成形品1の頂壁2に向けて凸状に塑性変形し、頂壁2に圧入している。
この凹凸模様Maは、メタル調の光沢を有し、凹凸模様Maが光線を反射してきらきらと輝き、さらに透明性領域Tpや透明な基材層12を透して現出するため、雪の結晶が透明な成形品1の頂壁2の中に浮かぶような、またきらきらと光るような、今までにない深みのある立体的な視覚効果、そして加飾効果が発揮される。
なお、図1の加飾成形品の加飾態様は、前述した図3に示すラベル11の上区画Ra1、中区画Rb、下区画Ra2の3つの区画によって3つの区画に分かれ、上区画Rma1,下区画Rma2は着色印刷層15により着色加飾され、中区画Rmbは全体として金属薄膜層13によりメタリック調に加飾され、その中に上記した凹凸模様Maが現出するように構成されている。
図5(a)は射出成形用の金型31の型面にラベル11をセットした状態を示す。金型31はキャビティ金型33とコア金型32から構成され、ラベル11をバキュームにより吸着する方法により、図中に示されるようにコア金型32の型面に密着状にセットし、キャビティ34に成形品1を形成する溶融樹脂(本実施例ではPET樹脂)を射出、充填する。
樹脂Jの充填前では、図5(b)で示されるようにラベル11は裏面側に突出形成された厚盛印刷層14aが型面に密着した状態にあり、
樹脂Jが充填されると、この樹脂Jの成形圧力により、図5(c)中、黒矢印で示されるようにラベル11を成形金型の型面に押付ける力が作用する。
そして、この押付力により、厚盛印刷層14aが金属薄膜層13を伴って、基材層12の裏面側に圧入状に変位し、前述したように厚盛印刷層14aによる凸状模様Mが転写されるようにして、金属薄膜層13に凹凸模様Maが形成される。
なお、本実施例の場合、上記した厚盛印刷層14aの圧入状の変位に伴って、基材層12自体も成形品1の頂壁2に向けて凸状に塑性変形しながら頂壁2に圧入している。
たとえば上記実施例では成形品を射出成形品としたが、インサート成形が適用可能なブロー成形や熱成形品とすることもでき、使用する合成樹脂もなんら限定されるものではない。
また、上記実施例ではラベル11を矩形状の蓋体の頂壁と云う平坦な部位に貼着する例を説明したが、成形品の形状についても特に限定されものではなく、たとえば円筒状の容器の周壁等の曲面状の部位にも使用することができる。
図6はラベル11の他の層構成を示すもので、図6(a)は基材層12の表面側に透明性を有する着色印刷層15を積層したもので、加飾成形品では金属薄膜層13による凹凸模様Maを着色したメタリック調に現出させることができる。
図6(b)は基材層12と金属薄膜層13の間に、図6(c)にも示されるように、凸状模様Mを形成する印刷層14をさけて、その周囲(図中、黒く塗潰した部分)に着色印刷層15を積層したもので、加飾成形品では着色印刷層15で着色した領域の中に、金属薄膜層13によるメタリック調の凹凸模様Maを現出させることができる。
なお、スクリーン印刷によれば、上記のように印刷層14をさけて着色印刷層15を印刷、積層することは比較的容易に実施することができる。
また、基材層12に使用する透明性を有する合成樹脂フィルムとしてはポリエステル系樹脂フィルムの他にも、インサート成形における凸状模様を形成する印刷層の圧入状の変位性、すなわち凸状模様の転写性を考慮しながら、AS樹脂フィルム等のポリスチレン系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム等の他の合成樹脂製のフィルムを選択、使用することができる。
2 ;頂壁
11、111;(インサート)ラベル
12、112;基材層
13;金属薄膜層
14;印刷層
14a;厚盛印刷層
15、115;着色印刷層
16、116;接着層
17;アンカー層
18、118;保護層
M ;凸状模様
Ma;凹凸模様
J ;樹脂
Tp;透明性領域
P ;非透明領域
Ra1,Rb,Ra2;区画
Rma1、Rmb、Rma2;区画
31;金型
32;コア金型
33;キャビティ金型
34;キャビティ
Claims (3)
- インサート材としてインサートラベル(11)を成形金型内に配設した状態でインサート成形する、該インサートラベル(11)により加飾した合成樹脂成形品の製造方法であって、前記インサートラベル(11)は、透明性を有する合成樹脂フィルム製の基材層(12)の裏面側に金属薄膜層(13)を積層し、該金属薄膜層(13)の裏面側に凸状模様(M)を形成する印刷層(14)を積層したものであり、さらに前記基材層(12)と前記金属薄膜層(13)の間に、前記印刷層(14)をさけて、その周囲に着色印刷層(15)を積層したものであり、前記インサートラベル(11)を、表面側を貼着面として成形品(1)に貼着されるように成形金型内に配設した状態でインサート成形を行い、前記金属薄膜層(13)に、インサート成形の成形圧力による前記印刷層(14)の該金属薄膜層(13)を伴った基材層(12)方向への圧入状の変位により、前記凸状模様(M)が転写するようにして凹凸模様(Ma)を形成する、前記成形品(1)のインサートラベル(11)が貼着される面と反対側から前記成形品(1)が所定箇所に有する透明性領域(Tp)を透して前記金属薄膜層(13)による凹凸模様(Ma)が現出して加飾性が発揮される構成とした加飾合成樹脂成形品の製造方法。
- 印刷層(14)を、スクリーン印刷により形成し、層厚さの最大値を0.1mm以上の厚盛印刷層(14a)とした請求項1記載の加飾合成樹脂成形品の製造方法。
- インサート成形の成形圧力による金属薄膜層(13)を伴った印刷層(14)の基材層(12)中への圧入状の変位に伴い、該基材層(12)を成形品(1)に圧入させる請求項1または2記載の加飾合成樹脂成形品の製造方法。
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