JP6064740B2 - 加飾シート及び加飾樹脂成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、高い質感を有する加飾シートに関する。さらに、本発明は、当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品に関する。
従来、車両内外装部品、建材内装材、家電筐体等には、樹脂成形品の表面に加飾シートを積層させた加飾樹脂成形品が使用されている。このような加飾樹脂成形品の製造においては、予め意匠が付与された加飾シートを、射出成形によって樹脂と一体化させる成形法などが用いられている。このような加飾樹脂成形品の製造方法の代表的な例としては、例えばインサート成形法などが知られている。インサート成形法は、加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形しておき、当該加飾シートを射出成形型に挿入し、流動状態の樹脂を射出成形型内に射出することにより、樹脂と加飾シートとを一体化する方法である。
加飾樹脂成形品には、三次元曲面などの複雑な表面形状を有するものもある。このため、加飾シートには、加飾樹脂成形品の形状に十分に追従し得る三次元成形性が求められている。また、加飾シートは、加飾樹脂成形品の表面材として使用されるため、耐傷付き性などの表面特性を備えていることも要求されている。さらに、近年の消費者の高級志向に伴って、加飾樹脂成形品には、質感が高く高級感のある意匠の表出が求められている。
これまで、加飾シートの表面に凹凸形状を設けることにより、加飾シートの質感を高める技術が報告されている。加飾シートの表面に凹凸形状を設ける方法としては、例えば、透明樹脂フィルムの上に形成した着色層の上から、透明樹脂フィルム側に向かってエンボス加工を施し、着色層が透明樹脂フィルム側に突出した凹凸形状を形成する方法が知られている。このようにして形成された加飾シートにおいては、当該凹凸形状を加飾樹脂成形品の表面側に位置するようにして樹脂成形品と一体化することにより、加飾樹脂成形品の表面に凹凸形状を付与することができる。
しかしながら、従来の加飾シートにおいては、インサート成形法などにおける射出成形時、またはこれに先立つ予備成形(真空成形)時の熱と圧力によって、加飾シートに形成されていた凹凸形状が、なだらかとなったり、小さくなったりすることにより、加飾シートに表出されていた高い質感が劣化するという問題がある。
このような問題を解決する方法として、例えば特許文献1には、透明基材フィルムの上に少なくとも着色層、樹脂層及びバッカーフィルムがこの順に積層されたインサート成形用加飾シートであって、着色層から透明基材フィルムに向かってエンボス加工が施され、かつ樹脂層の厚さが該エンボス深さに対して0.3〜2.5倍としたインサート成形用加飾シートが開示されている。また、特許文献2には、着色層を含め該着色層より該透明基材フィルム側に存在する全層の可視光波長領域における全光線透過率が10〜40μmとした加飾シートが開示されている。近年、加飾シートには、従来よりもさらに高い質感が求められてきており、加飾樹脂成形品に成形された後にも、より一層高い質感を有する加飾シートの開発が望まれている。
特開2010−82912号公報 特開2012−213929号公報
本発明は、加飾樹脂成形品に成形された際にも高い質感を有する加飾シートを提供することを主な目的とする。
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層と、透明樹脂フィルム層の凹凸形状に沿って形成された着色層とを備える加飾シートであって、透明樹脂フィルム層の熱軟化点温度が90℃以上であり、かつ、当該凹凸形状が、下記式(1)で求められる平坦部の割合を有する特定の形状を有することにより、加飾樹脂成形品に成形された後においても、高い質感を有する加飾シートが得られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
(平坦部の距離の総和Y)/(計測距離X)=45〜90% (1)
[式(1)において、計測距離Xは、レーザー顕微鏡による高さ情報を含んだ画像情報から得られる断面曲線の長さ方向における計測距離である。平坦部の距離の総和Yは、前記断面曲線の高さ方向の厚みの偏差が±0.25μm以下となる部分が長さ方向に0.2mm以上連続する部分の距離の総和である。]
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層と、
透明樹脂フィルム層の凹凸形状に沿って形成された着色層と、
を備える加飾シートであって、
透明樹脂フィルム層の熱軟化点温度が90℃以上であり、
凹凸形状は、下記式(1)で求められる平坦部の割合を有する形状である、加飾シート。
(平坦部の距離の総和Y)/(計測距離X)=45〜90% (1)
[式(1)において、計測距離Xは、レーザー顕微鏡による高さ情報を含んだ画像情報から得られる断面曲線の長さ方向における計測距離である。平坦部の距離の総和Yは、当該断面曲線の高さ方向の厚みの偏差が±0.25μm以下となる部分が長さ方向に0.2mm以上連続する部分の距離の総和である。]
項2. 着色層の透明樹脂フィルム層側とは反対側の表面上に、支持フィルム層がさらに積層されており、
着色層に形成された凹凸形状の凹部が支持フィルム層によって埋められている、項1に記載の加飾シート。
項3. 透明樹脂フィルム層の100℃における比熱が0.3cal/℃・g〜0.5cal/℃・gである、項1または2に記載の加飾シート。
項4. 透明樹脂フィルム層の100℃における比熱と、支持フィルム層の100℃における比熱との差が、0.2cal/℃・g以下である、項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
項5. 一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層と、
透明樹脂フィルム層の凹凸形状に沿って形成された着色層と、
着色層の下に形成された射出樹脂層と、
を備える加飾樹脂成形品であって、
透明樹脂フィルム層の熱軟化点温度が90℃以上であり、
凹凸形状は、下記式(1)で求められる平坦部の割合を有する形状である、加飾樹脂成形品。
(平坦部の距離の総和Y)/(計測距離X)=45〜90% (1)
[式(1)において、計測距離Xは、レーザー顕微鏡による高さ情報を含んだ画像情報から得られる断面曲線の長さ方向における計測距離である。平坦部の距離の総和Yは、当該断面曲線の高さ方向の厚みの偏差が±0.25μm以下となる部分が長さ方向に0.2mm以上連続する部分の距離の総和である。]
項6. 項1〜4のいずれかに記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を射出成形型内に射出して樹脂と成形シートとを一体化する一体化工程、
を備える、加飾樹脂成形品の製造方法。
本発明の加飾シートによれば、加飾樹脂成形品に成形された際にも高い質感を有する加飾シート、及び当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品を提供することができる。
本発明の加飾シートの一例の略図的断面図である。 本発明の加飾シートの一例の略図的断面図である。 実施例1の加飾シートの凹凸形状についての断面曲線を示すグラフである。
1.加飾シート
本発明の加飾シートは、一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層と、透明樹脂フィルム層の凹凸形状に沿って形成された着色層とを備える加飾シートであって、透明樹脂フィルム層の熱軟化点温度が90℃以上であり、かつ、当該凹凸形状が、下記式(1)で求められる平坦部の割合を有する特定の形状であることを特徴とする。
(平坦部の距離の総和Y)/(計測距離X)=45〜90% (1)
[式(1)において、計測距離Xは、レーザー顕微鏡による高さ情報を含んだ画像情報から得られる断面曲線の長さ方向における計測距離である。平坦部の距離の総和Yは、前記断面曲線の高さ方向の厚みの偏差が±0.25μm以下となる部分が長さ方向に0.2mm以上連続する部分の距離の総和である。]すなわち、本発明の凹凸形状は、レーザー顕微鏡によって計測して得られた断面曲線の長さ方向xにおける計測距離Xのうち、上記の平坦部の距離の総和Yの占める割合が、45〜90%の範囲となる特定の凹凸形状を有する。
特に、本発明の加飾シートにおいては、透明樹脂フィルム層の熱軟化点温度が90℃以上であり、かつ、上記式(1)で求められる平坦部の割合を有する特定の凹凸形状を備えていることにより、加飾樹脂成形品に成形された際にも高い質感を有する加飾シートとすることができる。より具体的には、本発明の加飾シートは、透明樹脂フィルム層の熱軟化点温度と、加飾シートに形成された凹凸形状が上記特定のものである場合に、後述のインサート成形などにおける射出成形時、またはこれに先立つ予備成形(真空成形)時の熱と圧力によっても、加飾シートの凹凸形状が保持され、加飾シートに表出されていた高い質感の劣化が効果的に抑制されている。以下、本発明の加飾シートについて詳述する。
加飾シートの積層構造
本発明の加飾シートは、少なくとも、透明樹脂フィルム層1及び着色層2が積層された積層構造を有する。透明樹脂フィルム層1は、一方の面に凹凸形状を有し、透明樹脂フィルム層1の凹凸形状に沿って着色層2が形成されている。本発明の加飾シートにおいて、加飾シートの支持体として、着色層2の透明樹脂フィルム層とは反対側の表面上に支持フィルム層3を必要に応じて設けてもよい。
図1に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、着色層/透明樹脂フィルム層が積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。図2に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、支持フィルム層/着色層/透明樹脂フィルム層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。
加飾シートの凹凸形状
本発明の加飾シートは、透明樹脂フィルム層1の一方の面に凹凸形状11を有し、当該凹凸形状11に沿って、着色層2が形成されている。着色層2は、透明樹脂フィルム層1とは反対側の表面に凹凸形状21を有している。透明樹脂フィルム層1及び着色層2の凹凸形状11,21は、例えば、加熱・加圧によるエンボス加工法によって形成することができる。当該エンボス加工法は、例えば、次のようにして行うことができる。まず、透明樹脂フィルム層1と着色層2とを積層する。次に、着色層2及び透明樹脂フィルム層1を加熱し、軟化させる。次に、着色層2側から透明樹脂フィルム層1側に向かってエンボス版を押圧する。これにより、着色層2側から透明樹脂フィルム層1側に向かう凹部が形成され、エンボス版の表面に形成された凹凸形状に対応する凹凸形状21と共に凹凸形状11が加飾シートに形成される。次に、着色層2及び透明樹脂フィルム層1を冷却して、加飾シートに形成された凹凸形状11,21を固定化する。
レーザー顕微鏡を用いることにより、本発明の加飾シートに形成された透明樹脂フィルム層1の凹凸形状11の断面曲線を計測することができる。本発明において、凹凸形状11は、下記式(1)で求められる平坦部の割合を有する特定の形状であることを特徴とする。
(平坦部の距離の総和Y)/(計測距離X)=45〜90% (1)
[式(1)において、計測距離Xは、レーザー顕微鏡による高さ情報を含んだ画像情報から得られる断面曲線の長さ方向における計測距離である。平坦部の距離の総和Yは、前記断面曲線の高さ方向の厚みの偏差が±0.25μm以下となる部分が長さ方向に0.2mm以上連続する部分の距離の総和である。]
より具体的には、例えば、図3に示される実施例1の加飾シートの凹凸形状11についての断面曲線を例に説明すると、図3の断面曲線の四角で囲った部分のように、高さ方向yの厚みの偏差が±0.25μm以下となる部分が長さ方向xに0.2mm以上連続する部分を平坦部Aとする。そして、加飾シートに形成された上記の凹凸形状11は、レーザー顕微鏡を用いて断面曲線を計測した距離Xのうち、当該平坦部Aの距離の総和の占める割合が45〜90%の範囲となる形状である。高さ方向yの厚みの偏差が±0.25μm以下である部分が0.2mm以上連続する場合、後述のように、光が当たった際にこの部分が視覚的に明るく見えるため、本発明においては、この部分を平坦部としている。なお、上記の凹凸形状11の平坦部の占める割合は、オリンパス社製の走査型共焦点レーザー顕微鏡「OLS1200」を用い、計測距離Xを10mmとした場合の値である。レーザー顕微鏡を用いた断面曲線の計測は、透明樹脂フィルム層1の着色層2側の表面からレーザーを照射することによって行うことができる。また、計測距離Xは、凹凸形状11,21によって表現された模様などに応じて、適宜設定することができる。
本発明においては、加飾シートに形成された凹凸形状11がこのような特定の形状であり、かつ、後述の透明樹脂フィルム層1の熱軟化点温度が90℃以上であることによって、インサート成形などにおける射出成形時、またはこれに先立つ予備成形(真空成形)時の熱と圧力によっても、加飾シートの当該凹凸形状11が保持され、加飾シートに表出されていた高い質感の劣化が効果的に抑制される。加飾シートに形成された凹凸形状11がこのような特定の形状であることにより、成形後の加飾シート質感の劣化が抑制される機序の詳細は、必ずしも明らかではないが、例えば次のように考えることができる。
すなわち、例えばエンボス加工法などによって形成される凹凸形状11,21は、例えば図1に示すように、上記したような平坦部Aと、高さ方向yに向かう傾斜部Bとによって構成される。加飾シートの凹凸形状11による視覚効果は、当該平坦部Aと傾斜部Bの光の反射の違いによって表現される。具体的には、加飾シートの凹凸形状11に光が当たった際に、平坦部Aが明るく見え、傾斜部Bが暗く見えることによって、凹凸形状11による立体意匠効果が奏される。そして、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、凹凸形状11のうち、平坦部Aの割合が45%以上、90%以下である場合に、成形時の熱及び圧力によって凹凸形状11が多少なだらかになったり、小さくなった場合にも、視覚的に高い立体意匠効果が保持されることが明らかとなった。加飾シートの成形時には、主に平坦部Aに大きな圧力が加わることになるため、平坦部Aの割合が45%未満である場合には、成形時に平坦部Aに加わる圧力が大きくなり、凹凸形状11が損なわれやすくなると考えられる。また、平坦部Aの割合が90%よりも多い場合、成形時に凹凸形状11がなだらかになったり、小さくなったりした際に、変化が僅かであったとしても、凹凸形状11による立体意匠効果が急激に損なわれると考えられる。
成形後の加飾シート質感の劣化をより効果的に抑制する観点からは、上記平坦部の割合としては、好ましくは60〜85%程度、より好ましくは65〜75%程度が挙げられる。
加飾シートの凹凸形状11,21によって表現される模様は、特に制限されず、例えば、ヘアライン、ドット、木目導管、平織、綾織などが挙げられる。
着色層2に形成された凹凸形状21の凹部の最大深さは、凹凸形状11,21による立体意匠効果が損なわれなければ、特に制限されず、凹凸形状11,21によって表現する模様によって適宜選択することができるが、具体的には3〜40μm程度が好ましく、5〜30μm程度がより好ましい。ただし、後述する透明樹脂フィルム層1及び着色層2の合計厚みに対して、凹部の深さが大きくなりすぎると、加飾シートの機械的強度が低下するおそれがある。このため、当該凹部の最大深さは、後述する透明樹脂フィルム層1及び着色層2の合計厚みの60%以内程度とすることが好ましい。
加飾シートを形成する各層の組成
[透明樹脂フィルム層1]
透明樹脂フィルム層1は、一方の面に凹凸形状11を有する。透明樹脂フィルム層1は、加飾シートの表面に位置し、後述の着色層2と共に凹凸形状11を形成し、加飾シートに高い質感を付与する層である。透明樹脂フィルム層1は、透明樹脂フィルムにより形成されている。透明樹脂フィルムは、後述の着色層2によって形成された模様を透明樹脂フィルム層1側から観察することができる程度に透明であればよく、例えば半透明であってもよい。
本発明において、透明樹脂フィルム層1の熱軟化点温度は、90℃以上である。本発明の加飾シートにおいては、上記のような特定の凹凸形状11が形成されており、さらに透明樹脂フィルム層1の熱軟化点温度が90℃以上であることにより、インサート成形などにおける射出成形時、またはこれに先立つ予備成形(真空成形)時の熱と圧力によっても、加飾シートの当該凹凸形状11が保持され、加飾シートに表出されていた高い質感の劣化が効果的に抑制される。
加飾シートの凹凸形状11が損なわれる原因として、加飾シートの着色層2及び透明樹脂フィルム層1に対して、これらの層を構成する樹脂の融点を超える熱が加わることや、融点を超えなくても、長時間にわたって高い熱が加わることが挙げられる。加飾シートや加飾樹脂成形品の製造工程において、加飾シートの着色層2及び透明樹脂フィルム層1に対して、これらの層を構成する樹脂の融点を超える熱を加えると、加飾シートが融解してしまうため、このような高い熱が加わることは、実際上考えにくい。しかしながら、加飾シートに対して、長時間にわたって高い熱を加えることは、加飾シートや加飾樹脂成形品の製造工程においては行われ得ることである。本発明においては、透明樹脂フィルム層1の熱軟化点温度が90℃以上であることにより、耐熱性が高く、加熱によっても凹凸形状11が保持されやすい。
透明樹脂フィルム層1の耐熱性を高め、凹凸形状11を効果的に保持する観点からは、透明樹脂フィルム層1の熱軟化点温度としては、好ましくは100℃以上が挙げられる。また、透明樹脂フィルム層1の熱軟化点温度としては、例えば140℃以下、好ましくは120℃以下が挙げられる。なお、透明樹脂フィルム層1の熱軟化点温度が140℃を超える場合、加飾シートの成形時に透明樹脂フィルム層を140℃という高温に加熱して軟化させる必要があり、凹凸形状11が損なわれやすくなる。また、透明樹脂フィルム層1の熱軟化点温度が90℃未満である場合、真空成形時に加飾シートを軟化させる際の熱、射出成形時の射出樹脂からの熱などによって、凹凸形状11が損なわれやすくなる。
なお、本発明において、熱軟化点温度はJIS K7196−1991に従い、リガク社製の熱分析装置「Thermoflex TAS300」を用いて測定した値である。
透明樹脂フィルム層1を形成する樹脂としては、特に制限されないが、後述のインサート成形などによる加飾シートの成形性を高める観点からは、好ましくは熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体)、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂;ポリエチレンテレフタレート、成形性ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル樹脂を単体で又は2種以上混合して用いる。なお、本発明において(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
また、成形性ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、非晶性ポリエステルなどが挙げられる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントに高結晶で高融点の芳香族ポリエステル、ソフトセグメントにはガラス転移温度が−70℃以下の非晶性ポリエーテル等を使用したブロックポリマーなどが挙げられる。また、高結晶性で高融点の芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレートが挙げられ、当該非晶性ポリエーテルとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。また、非晶質ポリエステルとしては、例えば、エチレングリコール−1,4−シクロヘキサンジメタノール−テレフタル酸共重合体などが挙げられる。
透明樹脂フィルム層1を形成する樹脂としては、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、透明樹脂フィルム層1は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
透明樹脂フィルム層1の100℃における比熱としては、特に制限されず、好ましくは0.3cal/℃・g〜0.5cal/℃・g程度、より好ましくは0.3cal/℃・g〜0.45cal/℃・g程度が挙げられる。透明樹脂フィルム層1の100℃における比熱が0.3cal/℃未満である場合、凹凸形状11を加熱・加圧によるエンボス加工法によって形成する際に、透明樹脂フィルム層1が十分に熱を保持することができず、所望の凹凸形状11を形成することができない場合がある。一方、透明樹脂フィルム層1の100℃における比熱が0.5cal/℃を超える場合、加飾シートの真空成形後に加飾シートが長期間にわたって熱を保持し、凹凸形状11が損なわれやすくなる。
なお、本発明において、比熱はJIS K7123−1987に従い測定した値である。
透明樹脂フィルム層1は、後述の着色層2との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。透明樹脂フィルム層1の表面処理として行われる酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、透明樹脂フィルム層1の表面処理として行われる凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、透明樹脂フィルム層1を構成する樹脂成分の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
透明樹脂フィルム層1には、透明樹脂フィルム層1に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候性改善剤、安定剤、可塑剤、着色剤、体質顔料等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。
透明樹脂フィルム層1の厚さは、特に制限されず、加飾シートの用途等に応じて適宜設定されるが、通常30〜300μm程度、好ましくは40〜200μm程度、さらに好ましくは50〜150μm程度が挙げられる。透明樹脂フィルム層1の厚さが上記範囲内であると、加飾シートに対してより一層優れた三次元成形性、意匠性などを備えさせることができる。なお、透明樹脂フィルム層1の厚さとは、エンボス加工法などによって形成された上記の凹部以外の部分の厚さをいう。
[着色層2]
着色層2は、透明樹脂フィルム層1の凹凸形状11に沿って形成されている。すなわち、着色層2の透明樹脂フィルム層1側の形状は、透明樹脂フィルム層1の凹凸形状11に対応する。
着色層2は、絵柄層及び全面ベタ印刷層の少なくとも1層により構成されている。着色層2は、加飾シートに装飾性を付与する目的で設けられる層である。絵柄層及び全面ベタ印刷層は、例えばインキ組成物を用いて形成される。
インキ組成物としては、例えば、バインダー樹脂に、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
インキ組成物に含まれるバインダー樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキ組成物に含まれる着色剤としては、特に制限されないが、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
絵柄層によって形成される模様についても、特に制限されないが、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等が挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様であってもよい。これらの模様は、通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成されるが、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成することができる。
着色層2は、例えば、上記のインキ組成物を用い、上記の透明樹脂フィルム層1の上にグラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の印刷法、又はロールコート等の公知の塗工法等の公知の形成方法により形成することができる。また、着色層2は、金属顔料であるアルミニウム、インジウム、スズなどをスパッタリングなどの蒸着法によって設けることもできる。この場合の着色層12の厚さは、10〜100nmの範囲であることが好ましい。
着色層2の厚さは、上記の凹部を形成できる程度の厚さがあれば、特に制限されず、例えば0.5〜20μm程度、好ましくは0.7〜15μm程度、さらに好ましくは1〜10μm程度が挙げられる。なお、着色層2の厚さとは、エンボス加工法などによって形成された上記の凹部以外の部分の厚さをいう。
[支持フィルム層3]
支持フィルム層3は、加飾シートの支持体として、必要に応じて設けられる樹脂フィルムにより形成された層である。支持フィルム層3は、例えば図3に示されるように、着色層2の透明樹脂フィルム層1側とは反対側の表面上に積層されている。樹脂フィルムとしては、特に制限されず、例えば、ABS樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの樹脂により形成されたフィルムが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、好ましくはポリプロピレン樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、ABS樹脂及びポリプロピレン樹脂が特に好ましい。また、後述の射出樹脂がABS樹脂である場合は、ABS樹脂が好ましく、射出樹脂がポリプロピレン樹脂である場合はポリプロピレン樹脂が好ましい。
本発明の加飾シートにおいては、着色層2に形成された上記の凹部が支持フィルム層1によって埋められていることが好ましい。これにより、本発明の加飾シートに形成された凹凸形状11の強度が高められ、成形時の熱や圧力によって凹凸形状11が損なわれることを、より効果的に抑制することが可能となる。
支持フィルム層3を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、支持フィルム層3を形成する樹脂フィルムを加熱軟化させて、着色層2の凹部に対して押圧する方法や、Tダイ押出しなどの方法により、上記樹脂フィルムを着色層2の凹部が形成された側に押し出し、ラミネートする方法などが挙げられる。押し出す樹脂としては、上記したものから、透明性や接着性を考慮して適宜選定すればよく、特にアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが好ましい。これらの方法によって支持フィルム層3を形成することにより、着色層2の凹部を支持フィルム層3で埋めることが可能である。
加飾シートの真空成形後の歪みなどを抑制する観点からは、透明樹脂フィルム層1の100℃における比熱と、支持フィルム層3の100℃における比熱との差としては、好ましくは0.2cal/℃・g以下、より好ましくは0.1cal/℃・g以下、さらに好ましくは0.05cal/℃・g以下が挙げられる。透明樹脂フィルム層1の100℃における比熱と、支持フィルム層3の100℃における比熱との差が0.2cal/℃・gを超えると、真空成形時に、これらのフィルム層間の温度差が大きくなり、相対的に比熱の小さい側の層が収縮し、加飾シートに歪みが生じる場合がある。
支持フィルム層3の厚さは、加飾シートを補強できる厚さであれば、特に制限されず、例えば50〜700μm程度、好ましくは80〜600μm程度、さらに好ましくは100〜500μm程度が挙げられる。なお、支持フィルム層3の厚さとは、エンボス加工法などによって形成された上記の凹部以外の部分の厚さをいう。
2.加飾樹脂成形品
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに射出樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、一方の面に凹凸形状11を有する透明樹脂フィルム層1と、透明樹脂フィルム層1の凹凸形状11に沿って形成された着色層と、着色層2の下に形成された射出樹脂層とを備える加飾樹脂成形品であって、透明樹脂フィルム層1の熱軟化点温度が90℃以上であり、凹凸形状11は、下記式(1)で求められる平坦部の割合を有する形状であることを特徴とする。
(平坦部の距離の総和Y)/(計測距離X)=45〜90% (1)
[式(1)において、計測距離Xは、レーザー顕微鏡による高さ情報を含んだ画像情報から得られる断面曲線の長さ方向における計測距離である。平坦部の距離の総和Yは、前記断面曲線の高さ方向の厚みの偏差が±0.25μm以下となる部分が長さ方向に0.2mm以上連続する部分の距離の総和である。]
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートを用いて、例えば、インサート成形法、射出樹脂同時加飾法などにより作製される。
インサート成形法では、まず、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を射出成形型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する一体化工程。
インサート成形法における真空成形工程では、加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚さなどによって適宜選択すればよい。
また、射出成形同時加飾法では、本発明の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に本発明の加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含む射出成形同時加飾法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、加飾シートの基材層の表面が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する予備成形工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂を射出、充填して固化させることにより樹脂成形体を形成し、樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる一体化工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す取出工程。
射出成形同時加飾法の予備成形工程において、加飾シートの加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚さなどによって適宜選択すればよい。
本発明の加飾樹脂成形品において、射出樹脂層は、用途に応じた樹脂を選択して形成すればよい。射出樹脂層を形成する射出樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の加飾樹脂成形品は、高い成形性及び耐傷付き性を有し、さらに加飾樹脂成形品に成形された際にも高い質感を有するので、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
<実施例1〜8及び比較例1〜7>
(加飾シートの作製)
透明樹脂フィルム層として、それぞれ表1に記載の樹脂フィルム(厚さ125μm)を用いた。この透明樹脂フィルム層の片面に、アクリル樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂をバインダーとし、これに平均粒子径11μmのアルミフレーク状顔料を分散させたインキをグラビア印刷し、さらに黒色インキを用いてグラビア印刷して着色層を形成した。着色層の厚さは5μmとした。次に、着色層上に表1に記載の凹凸形状のパターンを有するエンボス版(エンボス深さ40μm)を用いてエンボス加工を行った。得られたエンボスフィルムに厚さ300μmの支持フィルムを貼付し、支持フィルム層を形成した。具体的には、実施例3及び8を除き、支持フィルムとして黒色ABS樹脂フィルムを用い、支持フィルムを赤外線ヒーターによって200℃に加熱し、軟化させた状態でエンボスフィルムのエンボス加工面と接触するように貼付、室温まで冷却し加飾シートを得た。実施例3においては、得られたエンボスフィルムにTダイ法(ラミネート法)を用いて、黒色ABS樹脂フィルム(厚さ300μm)を積層した。また、実施例8においては、支持フィルムを設けなかった。
(比熱の測定)
実施例1〜8及び比較例1〜7の加飾シートについて、透明樹脂フィルム層及び支持体フィルム層の100℃における比熱を測定した。結果を表1に示す。なお、比熱は、JIS K7123−1987に従い測定した値である。
(透明樹脂フィルム層の熱軟化点温度の測定)
実施例1〜8及び比較例1〜7の加飾シートについて、透明樹脂フィルム層の熱軟化温度を測定した。結果を表1に示す。なお、透明樹脂フィルム層の熱軟化温度は、JIS K7196−1991に従い、リガク社製の熱分析装置「Thermoflex TAS300」を用いて測定した値である。
(凹凸形状の平坦部の割合の計測)
実施例1〜8及び比較例1〜7の加飾シートにおいて、透明樹脂フィルム層に形成された凹凸形状について、レーザー顕微鏡を用い、下記式(1)により、断面曲線における平坦部の距離の総和Yの占める割合を求めた。なお、実施例8を除き、計測は支持フィルム層との積層前に行なった。結果を表1に示す。実施例1の加飾シートについて、凹凸形状における当該平坦部を求めた際の断面曲線を図3に示す。上述の通り、当該断面曲線のうち、四角で囲った部分のように、高さ方向yの厚みの偏差が±0.25μm以下となる部分が長さ方向xに0.2mm以上連続する部分を平坦部としている。なお、凹凸形状の平坦部の割合の計測は、オリンパス社製の走査型共焦点レーザー顕微鏡「OLS1200」を用い、計測距離を10mmとした場合の測定値である。
(平坦部の距離の総和Y)/(計測距離X)=45〜90% (1)
[式(1)において、計測距離Xは、レーザー顕微鏡による高さ情報を含んだ画像情報から得られる断面曲線の長さ方向における計測距離である。平坦部の距離の総和Yは、前記断面曲線の高さ方向の厚みの偏差が±0.25μm以下となる部分が長さ方向に0.2mm以上連続する部分の距離の総和である。]
なお、実施例1及び3、比較例1及び2の加飾シートにおいて、それぞれエンボス加工面の算術表面粗さRaを計測したところ、いずれも1.3〜1.6μmであり、差が小さかった。また、これらの加飾シートの凹凸形状の高低差も15〜20μmであり、差は小さかった。
(真空成形前の加飾シートの立体意匠効果)
白色光の蛍光灯下の水平面に、実施例1〜8及び比較例1〜7の加飾シートを置いた。次に、加飾シートから約500mm離れ、水平面に対して45°、60°、90°(真上)の方向から目視で観察し、加飾シートの立体意匠効果を以下の評価基準に従い評価した。結果を表1に示す。
○:全ての角度で立体的な意匠を感じられた。
△:90°では立体感は僅かに低かったが、45°及び60°では奥行きのある意匠感を得た。
×:全ての角度で平坦で立体的意匠は全く得られなかった。
(真空成形後の加飾シートの立体意匠効果)
実施例1〜7及び比較例1〜7の加飾シートを表面温度が150℃になるまで加熱した後、金型を用い、縦80mm、横100mm、高さ8mm、立方体形状(最大延伸倍率100%)まで真空成形した。次に、上記と同様にして、加飾シートを目視で観察し、真空成形後の加飾シートの立体意匠効果を以下の評価基準に従い評価した。結果を表1に示す。
◎:全ての角度で真空成形前と同等の立体感、奥行きのある意匠感を得た
○:真空成形前より僅かに劣るが、全ての角度で立体的で奥行きのある意匠感を得た
△:90°では立体感は僅かに低かったが、45°及び60°では奥行きのある意匠感を得た
×:全ての角度で平坦で立体的意匠は全く得られなかった
(射出成形後の加飾シートの立体意匠効果)
実施例1〜7及び比較例1〜7について、上記の真空成形後の加飾シートをトリミングした後、インサート成形により射出樹脂と一体化して加飾樹脂成形品を得た。射出樹脂としては、ABS樹脂を用い、金型温度60℃、射出樹脂圧50kg/cm2、樹脂温度230℃で射出成形した。また、実施例8について、射出成形同時加飾により射出樹脂と一体化して加飾樹脂成形品を得た。予備成形を射出成形用の金型内で行なった点、及びトリミングを射出成形後に行なった点を除き、加熱温度、成形した形状、射出成形などの条件は実施例1〜7及び比較例1〜7の場合と同様とした。
得られた加飾樹脂成形品の表面に位置する加飾シートについて、目視で観察し、真空成形後の加飾シートの立体意匠効果を以下の評価基準に従い評価した。結果を表1に示す。
◎:全ての角度で真空成形前と同等の立体感、奥行きのある意匠感を得た
○:成形前より僅かに劣るが、全ての角度で立体的で奥行きのある意匠感を得た
△:90°では立体感は僅かに低いが、45°及び60°では奥行きのある意匠感を得た
×:全ての角度で平坦で立体的意匠は全く得られなかった
(真空成形後の加飾シートの形状の歪み)
実施例1〜7及び比較例1〜7について、上記の真空成形した加飾シートをトリミングした後、水平な場所に室温で1日放置した後、加飾シートの形状の歪みを以下の評価基準に従い評価した。結果を表1に示す。
◎:トリミングした加飾シートの真空成形品に歪みが無く、射出成形金型と形状が一致し良好な射出成形品が得られた
○:真空成形品に軽微な歪みが確認されたが、射出成形金型には問題なくセットでき、良好な射出成形品が得られた
△:真空成形品に歪みが確認され、射出成形金型にセットした際に一部真空成形品と射出成形金型の形状が異なる部分があったが、射出成形品は良品が得られた。
×:真空成形品は大きく歪み、射出成形金型にセットできず無理矢理射出成形した結果、シワが入った
表1に示されるように、透明樹脂フィルム層の熱軟化点温度が90℃以上であり、上記した平坦部の割合が45〜90%の範囲にある実施例1〜7の加飾シートにおいては、真空成形前後、さらには射出成形後においても、立体意匠効果に優れており、高い質感を有していた。また、実施例1〜7の加飾シートでは、真空成形後の形状も問題なかった。また、支持フィルム層を設けなかった実施例8の加飾シートにおいても、真空成形前及び射出成形後の立体意匠効果に優れており、高い質感を有していた。一方、透明樹脂フィルム層の熱軟化点温度が90℃よりも低い比較例1及び4の加飾シートでは、真空成形後及び射出成形後の立体意匠効果の点で劣っていた。また、上記した平坦部の割合が45%よりも小さい比較例2、6、7の加飾シートでは、射出成形後の立体意匠効果の点で劣っていた。上記した平坦部の割合が90%よりも大きい比較例3、5の加飾シートでは、射出成形後の立体意匠効果の点で劣っており、比較例3では、真空成形後の立体意匠効果でも劣っており、真空成形後の形状の歪みも大きかった。
1…透明樹脂フィルム層
2…着色層
3…支持フィルム層
11,21…凹凸形状
A…平坦部
B…傾斜部

Claims (6)

  1. 一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層と、
    前記透明樹脂フィルム層の前記凹凸形状に沿って形成された着色層と、
    を備える加飾シートであって、
    前記透明樹脂フィルム層の熱軟化点温度が90℃以上であり、
    前記凹凸形状は、下記式(1)で求められる平坦部の割合を有する形状である、加飾シート。
    (平坦部の距離の総和Y)/(計測距離X)=45〜90% (1)
    [式(1)において、計測距離Xは、レーザー顕微鏡による高さ情報を含んだ画像情報から得られる断面曲線の長さ方向における計測距離である。平坦部の距離の総和Yは、前記断面曲線の高さ方向の厚みの偏差が±0.25μm以下となる部分が長さ方向に0.2mm以上連続する部分の距離の総和である。]
  2. 前記着色層の前記透明樹脂フィルム層側とは反対側の表面上に、支持フィルム層がさらに積層されており、
    前記着色層に形成された凹凸形状の凹部が前記支持フィルム層によって埋められている、請求項1に記載の加飾シート。
  3. 前記透明樹脂フィルム層の100℃における比熱が0.3cal/℃・g〜0.5cal/℃・gである、請求項1または2に記載の加飾シート。
  4. 前記透明樹脂フィルム層の100℃における比熱と、前記支持フィルム層の100℃における比熱との差が、0.2cal/℃・g以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
  5. 一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層と、
    前記透明樹脂フィルム層の前記凹凸形状に沿って形成された着色層と、
    前記着色層の下に形成された射出樹脂層と、
    を備える加飾樹脂成形品であって、
    前記透明樹脂フィルム層の熱軟化点温度が90℃以上であり、
    前記凹凸形状は、下記式(1)で求められる平坦部の割合を有する形状である、加飾樹脂成形品。
    (平坦部の距離の総和Y)/(計測距離X)=45〜90% (1)
    [式(1)において、計測距離Xは、レーザー顕微鏡による高さ情報を含んだ画像情報から得られる断面曲線の長さ方向における計測距離である。平坦部の距離の総和Yは、前記断面曲線の高さ方向の厚みの偏差が±0.25μm以下となる部分が長さ方向に0.2mm以上連続する部分の距離の総和である。]
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
    前記真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
    前記成形シートを射出成形型に挿入し、前記射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を前記射出成形型内に射出して前記樹脂と前記成形シートとを一体化する一体化工程、
    を備える、加飾樹脂成形品の製造方法。
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