JP3811422B2 - フィルム付成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、樹脂フィルムをキャビティ内に配置して射出成形することによりフィルム付成型品を製造する方法に関し、特に成形不良を少なくするとともに生産性を向上することができるフィルム付成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話の押ボタンシート等のように複数の突出部を有する樹脂成形品として、図5に示すような、複数の突出部21がベース部22において連結された形状を有し、突出部21の外表面およびベース部22が連続した樹脂フィルム23からなり、各突出部21の内部に樹脂24が充填されているとともに、突出部21の頂部21aの樹脂フィルム23に文字等が印刷されたフィルム付成形品が知られている。
【0003】
このような成形品を製造するには、例えば特許第3136388号公報では、図6に示すような、キャビティ凹部25を有するキャビティ側金型26とスプール27およびゲート部28等を配置したコア側金型29との間に、板状或いは製品形状に応じてプレフォーミングされた樹脂フィルム23を配置し、ゲート部28から溶融樹脂を射出することにより、樹脂フィルム23を溶融樹脂の熱および射出圧で引き伸ばして変形させ、キャビティ凹部25の内表面に密着させつつ、樹脂フィルム23と樹脂24とを一体化することにより製造している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような製造方法では、射出成形時に樹脂フィルム23を高速で引き伸ばすため、樹脂フィルム23の伸びが不均一になりやすく、例えば樹脂フィルム23に印刷された表示部分の位置がずれたり、図7(a)に示すような表示部分31が図7(b)のように変形する歪みが生じ易い。また、外表面のフィルムの肉厚の厚薄による艶斑を生じたり、さらに樹脂フィルム23が破断して外観が悪化するなど、成形不良が出やすい。特に、携帯電話の押ボタンシート等のように多数の突出部が狭い間隔で配置された製品では成形不良を発生し易いという問題点があった。近年、図8に示すような複雑な3次元形状や鋭角部分を有する形状、図9に示すような押ボタンの高さの高いものがデザイン上の観点から要求されているが、このような製品を製造する際には、この問題が顕著である。
【0005】
また、このような製造方法では、射出時の溶融樹脂の熱と圧力により樹脂フィルムを高速で引き延ばすため、樹脂フィルムを型内で予め加熱して軟化状態にしてから射出成形を行う必要があって昇温操作が必要であり、一方、金型から製品を取出すためには、少なくとも樹脂フィルムが固化している必要があり、強制冷却等の金型の降温操作が必要であった。
【0006】
例えば、一般のポリカーボネートの射出成型品を得るには、樹脂を溶融する加熱筒の温度を250〜340℃、溶融樹脂を射出する金型の温度を80〜120℃に設定し、その温度を維持したまま射出するとともに射出後に放置して冷却するのが一般的である。しかし、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、またはこれらのアロイからなるプレフォーミングされていない樹脂フィルム23を外表面にし、ポリカーボネートの溶融樹脂を射出して、前記のようなフィルム付成型品を成形する場合には、樹脂フィルム23を軟化するために140℃前後の金型温度に設定しておく必要性があり、一方、射出後には120℃以下の温度まで強制冷却する必要性があった。
【0007】
そのため、従来の製造方法では、金型の昇温および降温操作が必要で、成形サイクルタイムが長くて生産性が悪く、また、金型の昇温および降温のための設備が必要で、金型構造が複雑化して設備的に大掛かりなものになってしまうという問題点を有していた。
【0008】
この発明では、製品外表面の意匠性を低下させる成形不良を防止でき、また、大掛かりな設備を用いることなく成形サイクルタイムを短縮して生産性を向上することができるフィルム付成形品の製造方法を提案することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以上のような課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、最終製品の外形形状に対応した凹部を有するキャビティ側金型と、ベースプレート、及び該ベースプレートに隣接して設けられ前記キャビティ側金型の前記凹部の周囲に対応する位置に連続したリブ状の凸部が設けられたストリッパプレートを備えたコア側金型とを備えた一対の金型間に最終製品の形状に成形した樹脂フィルムを配置し、型締めした状態で、前記キャビティ側金型と前記凸部との間で前記樹脂フィルムを挟持して前記凹部内部を密封し、前記キャビティ側金型の温度を40℃以上80℃未満に保った状態で前記ベースプレートと前記ストリッパプレートとを貫通する貫通孔に挿入されたゲートブッシュから溶融樹脂を射出することにより前記樹脂フィルムを前記凹部の壁面に密着させながら前記溶融樹脂と樹脂フィルムとを一体化してフィルム付成形品を製造することを特徴としている。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記フィルム付成形品が片面に突出する複数の突出部を有するものであることを特徴としている。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の構成に加えて、前記溶融樹脂がポリカーボネートからなることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
【0013】
この実施の形態の製造方法において成形するフィルム付成形品は前述のような携帯電話の押ボタンシートである。この成形品をこの実施の形態の製造方法により製造するには、予め最終製品の外形形状に対応した凹部を有する樹脂フィルムを成形し、これを射出成形金型内に配置して前記凹部に充填樹脂を充填することにより行う。
【0014】
まず、樹脂フィルムを成形する工程を説明する。
【0015】
この製造方法で使用される樹脂フィルムとしては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、またはこれらのアロイからなるフィルムが挙げられ、予めスクリーン印刷等により所定位置に押ボタンの表示文字等の意匠が印刷されたものを使用することができる。
【0016】
樹脂フィルムの厚さは、樹脂の種類や成型品の大きさ等により適宜選択できるが、例えば携帯電話用の押ボタンシートの場合、25〜300μmの厚さ、より好ましくは50〜125μmの厚さのフィルムが選択される。
【0017】
成形は、樹脂フィルムに凹凸を形成するために通常使用されている真空成形、圧空真空成形等の成形方法により行えばよく、この成形により、樹脂フィルムを最終製品の外形形状を有する外形成形体に成形する。ここで最終製品の外形形状とは、微細な天面の凹凸、例えば携帯電話の「5番」ボタンに形成される突起等を無視した形状や、成形型内に配置し易くするために、最終製品の外形形状より僅かに小さい形状、例えば0.03mm以下程度のクリアランスを確保した形状を含んでいる。
【0018】
次に、このようにして得られた外形成形体の凹部に、射出成形金型を用いて充填樹脂を充填する工程について説明する。
【0019】
まず、充填樹脂としては、透明性が高く、耐熱性、強靱で耐衝撃性、耐クリープ性に優れているポリカーボネートを用いる。
【0020】
この実施の形態で使用する射出成形金型1は、図1に示すように、キャビティ側金型部3とコア側金型部4とからなる。
【0021】
キャビティ側金型部3は、図5に示したような複数の突出部21の外形形状に対応した形状を有する凹部3aと各凹部3a間を連続する外表面3bとを備えている。
【0022】
コア側金型部4は、溶融樹脂の供給側と接続されるベースプレート5、ベースプレート5に隣接してキャビティ側金型部3と対向するストリッパプレート6、ベースプレート5およびストリッパプレート6とを貫通する貫通孔7に挿入されて、一方の端部がベースプレート5に係止され、他方の端部がキャビティ側金型3の凹部3a側に露出するゲートブッシュ8とを有している。前記凹部3aに対向するストリッパプレート6およびゲートブッシュ8の端面8cが製品の底面形状に対応していて、凹部3aを覆っている。キャビティ側金型3の凹部3a、ならびにコア側金型4のストリッパプレート6、貫通孔7およびゲートブッシュ8により囲まれる空間がキャビティ2である。
【0023】
また、ストリッパプレート6の表面には、キャビティ側金型部3の凹部3aの周囲に対応する位置に、連続したリブ状の凸部6aが設けられていて、型締めした状態で、キャビティ側金型部3の外表面3bと凸部6aとの間で樹脂フィルムを挟持して凹部3a内部を密封できるように構成されている。
【0024】
さらに、貫通孔7とゲートブッシュ8との間には、溶融樹脂の侵入を阻止するとともに気体の侵入を許容する間隙、例えば径方向に5〜25μm程度の幅を有する間隙からなるエアーベントが設けられている。
【0025】
また、この射出成形金型1では、キャビティ側金型部3が型開き可能であるだけでなく、ストリッパプレート6がベースプレート5から離れる方向に移動可能となっている。
【0026】
このような構成の射出成形金型1を用いて射出成形するには、まず、キャビティ側金型部3並びにコア側金型部4及びゲートブッシュ8を予熱しておく。このとき、凹部3aを有するキャビティ側金型部3は40℃以上80℃未満に設定する。
【0027】
一般のポリカーボネート樹脂の成形品を射出成形する場合には、樹脂を溶融するための加熱筒の温度を250〜340℃、樹脂を射出する金型の温度を80〜120℃に設定するのが一般的である。しかし、この発明では充填樹脂とキャビティ側金型部3との間に樹脂フィルムが介在し、この樹脂フィルムが断熱材として機能することにより、キャビティ側金型部3の温度を前記のような金型温度より低い40℃以上80℃未満に設定することが可能となっている。
【0028】
このキャビティ側金型部3の温度は、射出容積が大きい程高く、射出容積が小さい程低く設定することができる。ここでは、生産サイクルを考慮に入れ、溶融樹脂の流動性が確保できる範囲で、できるだけ低い温度に設定するのが好ましい。これにより射出成形後に溶融樹脂を固化させるための冷却時間を短縮することができる。
【0029】
なお、このキャビティ側金型部3の温度が80℃以上の場合、例えば80〜120℃の温度では突出部21は所定の形状に形成できるものの、金型温度が高くなればなるほど、射出成形時に樹脂フィルムのベース部22の歪み、変形が生じ易く、安定した製品形状が得られにくくなる。また、金型温度が高くなればなるほど、射出溶融樹脂の冷却に要する時間も長くなるため、好ましくない。
【0030】
特に、樹脂フィルムとしてポリカーボネートやポリカーボネートのアロイを用いた場合には、金型の表面状態が転写され易く、例えばキャビティ側金型3の凹部3aの表面に微細な粉塵等の異物が付着していた場合に、突出部21の表面に打痕や傷などが生じる。さらに、樹脂フィルムとしてポリカーボネートやポリカーボネートのアロイのシボ調フィルムを用いた場合には、キャビティ側金型部3の凹部3aの平滑な表面が転写されて、突出部21に光沢感が生じてしまうため好ましくない。
【0031】
一方、このキャビティ側金型部3の温度が40℃未満では溶融樹脂の流動性が低下して、ヒケ、ウエルド、ジェッティング、未充填等の成形不良が発生することがあり、好ましくない。
【0032】
コア側金型部4は、携帯電話の押ボタンシートのように突出部21が小さい場合等にはキャビティ側金型部3と同じ温度に設定すればよく、その場合、ゲートブッシュ8を溶融樹脂の流動性等が確保できる温度に設定してもよい。
【0033】
このような射出成形型1の温度は射出成形前に設定され、射出成形中及びその後も保つ必要がある。この場合、少なくとも各金型3、4の温度が前述の条件を満たす範囲内に維持するように調整すればよいが、好ましくは一定の温度に維持する。
【0034】
次に、このように温度設定された射出成形型1を、図2に示すように、キャビティ側金型部3とコア側金型部4との間のパーティングラインで開き、予め最終製品形状に成形された外形成形体10の複数の突出部分をキャビティ側金型部3の複数の凹部3aに挿入してセットする。このとき、外形成形体10が最終製品形状に成形されているため、凹部3aの壁面3cに沿って配置される。そして、この状態で型締めする。
【0035】
その後、射出成形金型1に図示しない樹脂供給部のノズルから溶融樹脂を供給し、ゲートブッシュ8内のスプール部8aおよびゲート部8bを通してキャビティ2内の外形成形体10の凹部10aに溶融樹脂を射出する。溶融樹脂の射出圧および温度が、外形成形体10の一方面側に加わることにより、他方面側がキャビティ側金型部3の凹部3aの壁面3cに密着しながら、凹部10a内に溶融樹脂が充満される。
【0036】
射出終了後、凹部10a内に充満させた溶融樹脂を取り出し可能な程度に固化させる。このとき、キャビティ側金型部3が40℃以上80℃未満の温度範囲に設定されていて、樹脂フィルムが外表面形状を保てる程度に固化されるため、凹部10a内の充填樹脂が完全に固化していない状態であってもよい。
【0037】
そして、固化後、図3に示すように、キャビティ側金型部3とコア側金型部4との間のパーティングラインで型開きし、これにより成形品をコア側金型部4と連結した状態でキャビティ側金型部3から取り出す。次に、図4に示すように、ストリッパプレート6をベースプレート5から型開き方向に移動させて開くと、ストリッパプレート6の外表面6aがベースプレート5およびゲートブッシュ8から相対的に前進し、成形品の底面がゲート部8bから離れ、切断される。これにより成形品が射出成形金型1から取り出され、押ボタンシートが得られる。
【0038】
以上のようにして製造すれば、予め樹脂フィルムを製品である押ボタンシートの最終製品の外形形状を有する外形成形体10に成形した後、コア側金型部4と40℃以上80℃未満の温度範囲に保たれたキャビティ側金型部3との間に配置して成形するので、キャビティ2内で樹脂フィルムを過剰に軟化状態にして引き伸ばす必要がない。そのため、従来のように樹脂フィルムを不均一に伸ばすことがなく、印字などの表示部分の位置ズレや、艶斑、フィルムの破断等が起きにくく、成形不良を防止できる。
【0039】
また、樹脂フィルムからなる外形成形体10が押ボタンシートの最終製品の外形形状を有していて、射出成形時に外形成形体10を十分に軟化する必要がないので、外形成形体10をキャビティ2内に配置して型締めした後、樹脂フィルムを十分な軟化温度まで昇温させる必要がない。そのため、成形時の昇温時間を無くすことができる。
【0040】
さらに、キャビティ側金型3が、通常の冷却温度以下に設定されているため、取り出しても押ボタンシートの外表面形状を維持できる程度に短時間で固化することができ、強制冷却の必要がなくなり、射出成形金型1から取り出す際の冷却時間を短縮することができる。
【0041】
したがって、金型の昇温及び降温のための大掛かりな設備を用いなくても、繰り返し成形する際に、昇温時間、強制冷却による降温時間を無くし、冷却時間を短縮することにより、成形サイクルタイムを短縮することが可能となり、生産性を向上することができる。
【0042】
また、この実施の形態では、複数のボタンが突出して設けられた押ボタンシートを製造しているが、外形成形体10に複数の突出部が最終製品の外形形状を有する状態で形成されているので、このように複数の突出部21が狭い間隔で配置された成形品を製造する場合であっても、射出時に各突出部21の樹脂フィルム同士が相互に引張り合うことがなく、樹脂フィルムの位置ズレを生じにくい。
【0043】
さらに、キャビティ側金型部3に連続したリブ状の凸部6aを設けてコア側金型4との間で挟持して射出成形したので、突出部21の周囲のベースプレート22に充填樹脂が付着することがなく、そのため、得られた押ボタンシートのボタンの操作感が低下することがない。
【0044】
なお、上記実施の形態では、携帯電話の押ボタンシートを製造する例を示したが、他のフィルム付成形品の製造にも同様に適用することができる。
【0045】
さらに、多数の突出部を有する成形品を製造したが、1つの突出部を有する成形品であってもよい。
【0046】
【実施例】
[実施例1]
正方形で高さ5mmの押ボタンが、3行4列に2mm間隔で配置された携帯電話の押ボタンシートを、図1に示す射出成形金型を用いて製造した。
【0047】
樹脂フィルムとして、厚さ125μmのシボ調を有するポリカーボネートフィルム(マクロロン2407 95/023:(株)バイエル製)を用い、充填樹脂として、ポリカーボネート樹脂(ユーピロンS3000R:三菱マテリアル社製)を用いた。
【0048】
製造は、まず、樹脂フィルムの所定位置に表示文字を含む意匠をスクリーン印刷し、この樹脂フィルムを押ボタンシートの各ボタン形状より各寸法が0.03mm小さく、微細な凹凸(例えば携帯電話の「5番」ボタンに形成される直径 0.6mm、高さ0.3mmの突起)を無視した形状に真空成形により成形して外形成形体を得、これを射出成形金型のキャビティに配置し、射出成形することにより行った。
【0049】
射出成形時の溶融樹脂の温度は290℃であり、コア側金型部の温度及びキャビティ側金型部の温度は55℃に保つように制御した。
【0050】
この製造により、各ボタンの表示文字を含む意匠が所定の位置に、歪みを生じることなく所定の形状で配置され、艶斑やフィルムの破断がなく、キャビティ側金型の凹部の平滑な表面を転写することがなくシボ調を維持し、外観の優れた押ボタンシートが得られた。このとき成形サイクルタイムは、2秒の射出時間及び10秒の冷却時間を含めて、20秒以下に設定することができた。
【0051】
[比較例1]
コア側金型及びキャビティ側金型の温度を90℃に設定する他は、実施例1と全く同一条件にて押ボタンシートを製造した。
【0052】
その結果、冷却時間は実施例1より2秒程度長くなる範囲で収まったものの、得られた押ボタンシートには、キャビティ側金型の凹部の平滑な表面が転写されてしまい、意図に反して光沢感が生じた。また、押ボタンシートのベース部の歪み、変形が生じ易くなり、製品の歩留まりが低下した。
【0053】
[比較例2]
コア側金型及びキャビティ側金型の温度をそれぞれ30℃に保つように制御した他は、実施例1と全く同一条件にて押ボタンシートを製造したところ、得られた押ボタンシートには、溶融樹脂の流動性が悪化し、ウエルド、ジェッティング、ヒケ、未充填などの成形不良が生じていた。
【0054】
[比較例3]
樹脂フィルムを予め最終製品の外形形状に成形することなく、板状のシートのまま射出成形金型のキャビティに配置し、さらに射出成形金型全体を140℃に保つ他は、実施例1と全く同一条件にて押ボタンシートを作成した。
【0055】
その結果、樹脂フィルムの伸びが不均一になり、表示文字を含む意匠自体が歪み、また、その意匠の位置精度が悪く、樹脂フィルムが溶融樹脂により溶けて破れが生じ、突出部の天面の外表面に溶融樹脂が流れ込んでしまうこともあり、歩留まりが低下した。
【0056】
そして、繰り返し製造するには、金型温度を昇温したり、少なくとも120℃以下に強制冷却して降温する必要があり、サイクルタイムとしては50秒程度となった。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1乃至3に記載の発明によれば、最終製品の外形形状に対応した凹部を有するキャビティ側金型と、ベースプレート、及びベースプレートに隣接して設けられキャビティ側金型の凹部の周囲に対応する位置に連続したリブ状の凸部が設けられたストリッパプレートを備えたコア側金型とを備えた一対の金型において、樹脂フィルムを最終製品の外形形状に成形してからキャビティ側金型の凹部にセットして凹部内部を密封し、このキャビティ側金型を40℃以上80℃未満の温度範囲に保った状態でベースプレートとストリッパプレートとを貫通する貫通孔に挿入されたゲートブッシュから溶融樹脂を射出することにより樹脂フィルムを凹部の壁面に密着させながら溶融樹脂と樹脂フィルムとを一体化してフィルム付成形品を製造するので、射出時に樹脂フィルムを過剰に軟化状態にして引き伸ばす必要がなく、そのため不均一な伸びによるズレや歪みなどの変形や、艶斑や破断等が起きにくく、複雑な形状の製品でも成形不良を防止することができる。また、樹脂フィルムを軟化状態にして成形する必要がないので、型締め後に樹脂フィルムが軟化するまで昇温させる必要がなく、成形時の昇温時間を無くすことができる。さらに、樹脂フィルムが過剰に軟化されていないため外表面形状を維持しやすく、また、金型の温度も低いので、金型から成形品を取り出す際の降温時間を短縮することができる。そのため昇温及び降温のための大掛かりな設備を用いることなく成形サイクルタイムを短縮することができ、生産性を向上することができる。
【0058】
また、請求項2に記載の発明によれば、この発明の製造方法を複数の突出部を有する製品に適用するため、樹脂フィルムに複数の突出部が製品形状の状態で成形されていて、樹脂フィルムを射出時に引き延ばしながら複数の突出部を形成する必要がない。そのため、射出時に各突出部の樹脂フィルム同士が相互に引張り合うことがなくて、複数の突出部を有していても製品不良を防止することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態の製造方法において使用する射出成形金型の断面図である。
【図2】 図1の射出成形金型に外形成形体を配置した状態を示す断面図である。
【図3】 成形後の図1の射出成形金型のキャビティ側金型部を開いた状態を示す断面図である。
【図4】 成形後の図1の射出成形金型のストリッパプレートを開いた状態を示す断面図である。
【図5】 複数の突出部を有する樹脂成形品の断面図である。
【図6】 従来の射出成形によりフィルム付き樹脂成形品を製造する状態を説明する断面図である。
【図7】 樹脂成型品の表示部分の正面図であり、(a)は正規の形状を示し、(b)は歪んだ状態を示す。
【図8】 複雑な形状を有する樹脂成形品の斜視図である。
【図9】 高さの高い突出部を有する樹脂成形品の断面図である。
【符号の説明】
1 射出成形金型
2 キャビティ
3 キャビティ側金型部
3a 凹部
3b 壁面
4 コア側金型部
5 ベースプレート
6 ストリッパプレート
8 ゲートブッシュ
10 外形成形体
Claims (3)
- 最終製品の外形形状に対応した凹部を有するキャビティ側金型と、ベースプレート、及び該ベースプレートに隣接して設けられ前記キャビティ側金型の前記凹部の周囲に対応する位置に連続したリブ状の凸部が設けられたストリッパプレートを備えたコア側金型とを備えた一対の金型間に最終製品の形状に成形した樹脂フィルムを配置し、
型締めした状態で、前記キャビティ側金型と前記凸部との間で前記樹脂フィルムを挟持して前記凹部内部を密封し、
前記キャビティ側金型の温度を40℃以上80℃未満に保った状態で前記ベースプレートと前記ストリッパプレートとを貫通する貫通孔に挿入されたゲートブッシュから溶融樹脂を射出することにより前記樹脂フィルムを前記凹部の壁面に密着させながら前記溶融樹脂と樹脂フィルムとを一体化してフィルム付成形品を製造することを特徴とするフィルム付成形品の製造方法。 - 前記フィルム付成形品が、複数の突出部を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のフィルム付成形品の製造方法。
- 前記溶融樹脂が、ポリカーボネートからなることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム付成形品の製造方法。
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