JP2003305746A - フィルム付成形品の製造方法 - Google Patents

フィルム付成形品の製造方法

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JP2003305746A JP2002112834A JP2002112834A JP2003305746A JP 2003305746 A JP2003305746 A JP 2003305746A JP 2002112834 A JP2002112834 A JP 2002112834A JP 2002112834 A JP2002112834 A JP 2002112834A JP 2003305746 A JP2003305746 A JP 2003305746A
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徹 兵藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製品外表面の意匠性を低下させる製品不良を
防止できるとともに、成形サイクルタイムを短縮して生
産性を向上することができるフィルム付成形品の製造方
法を提案する。 【解決手段】 ゲート部8bを有するコア側金型4とキ
ャビティ側金型3との間に樹脂フィルム10を配置して
ゲート部8bから溶融樹脂を射出することにより、樹脂
フィルム10をキャビティ側金型3の壁面に密着させな
がら溶融樹脂と一体化してフィルム付成形品を製造する
方法であって、樹脂フィルム10を最終製品の外形形状
に成形してからキャビティ側金型3の凹部3aにセット
し、キャビティ側金型3を40℃以上80℃未満の温度
範囲に保つ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、樹脂フィルムを
キャビティ内に配置して射出成形することによりフィル
ム付成型品を製造する方法に関し、特に成形不良を少な
くするとともに生産性を向上することができるフィルム
付成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】携帯電話の押ボタンシート等のように複
数の突出部を有する樹脂成形品として、図5に示すよう
な、複数の突出部21がベース部22において連結され
た形状を有し、突出部21の外表面およびベース部22
が連続した樹脂フィルム23からなり、各突出部21の
内部に樹脂24が充填されているとともに、突出部21
の頂部21aの樹脂フィルム23に文字等が印刷された
フィルム付成形品が知られている。
【0003】このような成形品を製造するには、例えば
特許第3136388号公報では、図6に示すような、
キャビティ凹部25を有するキャビティ側金型26とス
プール27およびゲート部28等を配置したコア側金型
29との間に、板状或いは製品形状に応じてプレフォー
ミングされた樹脂フィルム23を配置し、ゲート部28
から溶融樹脂を射出することにより、樹脂フィルム23
を溶融樹脂の熱および射出圧で引き伸ばして変形させ、
キャビティ凹部25の内表面に密着させつつ、樹脂フィ
ルム23と樹脂24とを一体化することにより製造して
いる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな製造方法では、射出成形時に樹脂フィルム23を高
速で引き伸ばすため、樹脂フィルム23の伸びが不均一
になりやすく、例えば樹脂フィルム23に印刷された表
示部分の位置がずれたり、図7(a)に示すような表示
部分31が図7(b)のように変形する歪みが生じ易
い。また、外表面のフィルムの肉厚の厚薄による艶斑を
生じたり、さらに樹脂フィルム23が破断して外観が悪
化するなど、成形不良が出やすい。特に、携帯電話の押
ボタンシート等のように多数の突出部が狭い間隔で配置
された製品では成形不良を発生し易いという問題点があ
った。近年、図8に示すような複雑な3次元形状や鋭角
部分を有する形状、図9に示すような押ボタンの高さの
高いものがデザイン上の観点から要求されているが、こ
のような製品を製造する際には、この問題が顕著であ
る。
【0005】また、このような製造方法では、射出時の
溶融樹脂の熱と圧力により樹脂フィルムを高速で引き延
ばすため、樹脂フィルムを型内で予め加熱して軟化状態
にしてから射出成形を行う必要があって昇温操作が必要
であり、一方、金型から製品を取出すためには、少なく
とも樹脂フィルムが固化している必要があり、強制冷却
等の金型の降温操作が必要であった。
【0006】例えば、一般のポリカーボネートの射出成
型品を得るには、樹脂を溶融する加熱筒の温度を250
〜340℃、溶融樹脂を射出する金型の温度を80〜1
20℃に設定し、その温度を維持したまま射出するとと
もに射出後に放置して冷却するのが一般的である。しか
し、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、
またはこれらのアロイからなるプレフォーミングされて
いない樹脂フィルム23を外表面にし、ポリカーボネー
トの溶融樹脂を射出して、前記のようなフィルム付成型
品を成形する場合には、樹脂フィルム23を軟化するた
めに140℃前後の金型温度に設定しておく必要性があ
り、一方、射出後には120℃以下の温度まで強制冷却
する必要性があった。
【0007】そのため、従来の製造方法では、金型の昇
温および降温操作が必要で、成形サイクルタイムが長く
て生産性が悪く、また、金型の昇温および降温のための
設備が必要で、金型構造が複雑化して設備的に大掛かり
なものになってしまうという問題点を有していた。
【0008】この発明では、製品外表面の意匠性を低下
させる成形不良を防止でき、また、大掛かりな設備を用
いることなく成形サイクルタイムを短縮して生産性を向
上することができるフィルム付成形品の製造方法を提案
することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】以上のような課題を解決
すべく、請求項1に記載の発明は、最終製品の外形形状
に対応した凹部を有するキャビティ側金型と該凹部を覆
うコア側金型とを備えた一対の金型間に樹脂フィルムを
配置し、溶融樹脂を射出することにより前記樹脂フィル
ムを前記凹部の壁面に密着させながら前記溶融樹脂と樹
脂フィルムとを一体化してフィルム付成形品を製造する
方法であって、前記樹脂フィルムを最終製品の外形形状
に成形して前記凹部にセットし、前記キャビティ側金型
の温度を40℃以上80℃未満に保つことを特徴として
いる。
【0010】また、請求項2に記載の発明は、請求項1
に記載の構成に加えて、前記フィルム付成形品が片面に
突出する複数の突出部を有するものであることを特徴と
している。
【0011】さらに、請求項3に記載の発明は、請求項
1または2に記載の構成に加えて、前記溶融樹脂がポリ
カーボネートからなることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を説
明する。
【0013】この実施の形態の製造方法において成形す
るフィルム付成形品は前述のような携帯電話の押ボタン
シートである。この成形品をこの実施の形態の製造方法
により製造するには、予め最終製品の外形形状に対応し
た凹部を有する樹脂フィルムを成形し、これを射出成形
金型内に配置して前記凹部に充填樹脂を充填することに
より行う。
【0014】まず、樹脂フィルムを成形する工程を説明
する。
【0015】この製造方法で使用される樹脂フィルムと
しては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレー
ト、またはこれらのアロイからなるフィルムが挙げら
れ、予めスクリーン印刷等により所定位置に押ボタンの
表示文字等の意匠が印刷されたものを使用することがで
きる。
【0016】樹脂フィルムの厚さは、樹脂の種類や成型
品の大きさ等により適宜選択できるが、例えば携帯電話
用の押ボタンシートの場合、25〜300μmの厚さ、
より好ましくは50〜125μmの厚さのフィルムが選
択される。
【0017】成形は、樹脂フィルムに凹凸を形成するた
めに通常使用されている真空成形、圧空真空成形等の成
形方法により行えばよく、この成形により、樹脂フィル
ムを最終製品の外形形状を有する外形成形体に成形す
る。ここで最終製品の外形形状とは、微細な天面の凹
凸、例えば携帯電話の「5番」ボタンに形成される突起
等を無視した形状や、成形型内に配置し易くするため
に、最終製品の外形形状より僅かに小さい形状、例えば
0.03mm以下程度のクリアランスを確保した形状を
含んでいる。
【0018】次に、このようにして得られた外形成形体
の凹部に、射出成形金型を用いて充填樹脂を充填する工
程について説明する。
【0019】まず、充填樹脂としては、透明性が高く、
耐熱性、強靱で耐衝撃性、耐クリープ性に優れているポ
リカーボネートを用いる。
【0020】この実施の形態で使用する射出成形金型1
は、図1に示すように、キャビティ側金型部3とコア側
金型部4とからなる。
【0021】キャビティ側金型部3は、図5に示したよ
うな複数の突出部21の外形形状に対応した形状を有す
る凹部3aと各凹部3a間を連続する外表面3bとを備
えている。
【0022】コア側金型部4は、溶融樹脂の供給側と接
続されるベースプレート5、ベースプレート5に隣接し
てキャビティ側金型部3と対向するストリッパプレート
6、ベースプレート5およびストリッパプレート6とを
貫通する貫通孔7に挿入されて、一方の端部がベースプ
レート5に係止され、他方の端部がキャビティ側金型3
の凹部3a側に露出するゲートブッシュ8とを有してい
る。前記凹部3aに対向するストリッパプレート6およ
びゲートブッシュ8の端面8cが製品の底面形状に対応
していて、凹部3aを覆っている。キャビティ側金型3
の凹部3a、ならびにコア側金型4のストリッパプレー
ト6、貫通孔7およびゲートブッシュ8により囲まれる
空間がキャビティ2である。
【0023】また、ストリッパプレート6の表面には、
キャビティ側金型部3の凹部3aの周囲に対応する位置
に、連続したリブ状の凸部6aが設けられていて、型締
めした状態で、キャビティ側金型部3の外表面3bと凸
部6aとの間で樹脂フィルムを挟持して凹部3a内部を
密封できるように構成されている。
【0024】さらに、貫通孔7とゲートブッシュ8との
間には、溶融樹脂の侵入を阻止するとともに気体の侵入
を許容する間隙、例えば径方向に5〜25μm程度の幅
を有する間隙からなるエアーベントが設けられている。
【0025】また、この射出成形金型1では、キャビテ
ィ側金型部3が型開き可能であるだけでなく、ストリッ
パプレート6がベースプレート5から離れる方向に移動
可能となっている。
【0026】このような構成の射出成形金型1を用いて
射出成形するには、まず、キャビティ側金型部3並びに
コア側金型部4及びゲートブッシュ8を予熱しておく。
このとき、凹部3aを有するキャビティ側金型部3は4
0℃以上80℃未満に設定する。
【0027】一般のポリカーボネート樹脂の成形品を射
出成形する場合には、樹脂を溶融するための加熱筒の温
度を250〜340℃、樹脂を射出する金型の温度を8
0〜120℃に設定するのが一般的である。しかし、こ
の発明では充填樹脂とキャビティ側金型部3との間に樹
脂フィルムが介在し、この樹脂フィルムが断熱材として
機能することにより、キャビティ側金型部3の温度を前
記のような金型温度より低い40℃以上80℃未満に設
定することが可能となっている。
【0028】このキャビティ側金型部3の温度は、射出
容積が大きい程高く、射出容積が小さい程低く設定する
ことができる。ここでは、生産サイクルを考慮に入れ、
溶融樹脂の流動性が確保できる範囲で、できるだけ低い
温度に設定するのが好ましい。これにより射出成形後に
溶融樹脂を固化させるための冷却時間を短縮することが
できる。
【0029】なお、このキャビティ側金型部3の温度が
80℃以上の場合、例えば80〜120℃の温度では突
出部21は所定の形状に形成できるものの、金型温度が
高くなればなるほど、射出成形時に樹脂フィルムのベー
ス部22の歪み、変形が生じ易く、安定した製品形状が
得られにくくなる。また、金型温度が高くなればなるほ
ど、射出溶融樹脂の冷却に要する時間も長くなるため、
好ましくない。
【0030】特に、樹脂フィルムとしてポリカーボネー
トやポリカーボネートのアロイを用いた場合には、金型
の表面状態が転写され易く、例えばキャビティ側金型3
の凹部3aの表面に微細な粉塵等の異物が付着していた
場合に、突出部21の表面に打痕や傷などが生じる。さ
らに、樹脂フィルムとしてポリカーボネートやポリカー
ボネートのアロイのシボ調フィルムを用いた場合には、
キャビティ側金型部3の凹部3aの平滑な表面が転写さ
れて、突出部21に光沢感が生じてしまうため好ましく
ない。
【0031】一方、このキャビティ側金型部3の温度が
40℃未満では溶融樹脂の流動性が低下して、ヒケ、ウ
エルド、ジェッティング、未充填等の成形不良が発生す
ることがあり、好ましくない。
【0032】コア側金型部4は、携帯電話の押ボタンシ
ートのように突出部21が小さい場合等にはキャビティ
側金型部3と同じ温度に設定すればよく、その場合、ゲ
ートブッシュ8を溶融樹脂の流動性等が確保できる温度
に設定してもよい。
【0033】このような射出成形型1の温度は射出成形
前に設定され、射出成形中及びその後も保つ必要があ
る。この場合、少なくとも各金型3、4の温度が前述の
条件を満たす範囲内に維持するように調整すればよい
が、好ましくは一定の温度に維持する。
【0034】次に、このように温度設定された射出成形
型1を、図2に示すように、キャビティ側金型部3とコ
ア側金型部4との間のパーティングラインで開き、予め
最終製品形状に成形された外形成形体10の複数の突出
部分をキャビティ側金型部3の複数の凹部3aに挿入し
てセットする。このとき、外形成形体10が最終製品形
状に成形されているため、凹部3aの壁面3cに沿って
配置される。そして、この状態で型締めする。
【0035】その後、射出成形金型1に図示しない樹脂
供給部のノズルから溶融樹脂を供給し、ゲートブッシュ
8内のスプール部8aおよびゲート部8bを通してキャ
ビティ2内の外形成形体10の凹部10aに溶融樹脂を
射出する。溶融樹脂の射出圧および温度が、外形成形体
10の一方面側に加わることにより、他方面側がキャビ
ティ側金型部3の凹部3aの壁面3cに密着しながら、
凹部10a内に溶融樹脂が充満される。
【0036】射出終了後、凹部10a内に充満させた溶
融樹脂を取り出し可能な程度に固化させる。このとき、
キャビティ側金型部3が40℃以上80℃未満の温度範
囲に設定されていて、樹脂フィルムが外表面形状を保て
る程度に固化されるため、凹部10a内の充填樹脂が完
全に固化していない状態であってもよい。
【0037】そして、固化後、図3に示すように、キャ
ビティ側金型部3とコア側金型部4との間のパーティン
グラインで型開きし、これにより成形品をコア側金型部
4と連結した状態でキャビティ側金型部3から取り出
す。次に、図4に示すように、ストリッパプレート6を
ベースプレート5から型開き方向に移動させて開くと、
ストリッパプレート6の外表面6aがベースプレート5
およびゲートブッシュ8から相対的に前進し、成形品の
底面がゲート部8bから離れ、切断される。これにより
成形品が射出成形金型1から取り出され、押ボタンシー
トが得られる。
【0038】以上のようにして製造すれば、予め樹脂フ
ィルムを製品である押ボタンシートの最終製品の外形形
状を有する外形成形体10に成形した後、コア側金型部
4と40℃以上80℃未満の温度範囲に保たれたキャビ
ティ側金型部3との間に配置して成形するので、キャビ
ティ2内で樹脂フィルムを過剰に軟化状態にして引き伸
ばす必要がない。そのため、従来のように樹脂フィルム
を不均一に伸ばすことがなく、印字などの表示部分の位
置ズレや、艶斑、フィルムの破断等が起きにくく、成形
不良を防止できる。
【0039】また、樹脂フィルムからなる外形成形体1
0が押ボタンシートの最終製品の外形形状を有してい
て、射出成形時に外形成形体10を十分に軟化する必要
がないので、外形成形体10をキャビティ2内に配置し
て型締めした後、樹脂フィルムを十分な軟化温度まで昇
温させる必要がない。そのため、成形時の昇温時間を無
くすことができる。
【0040】さらに、キャビティ側金型3が、通常の冷
却温度以下に設定されているため、取り出しても押ボタ
ンシートの外表面形状を維持できる程度に短時間で固化
することができ、強制冷却の必要がなくなり、射出成形
金型1から取り出す際の冷却時間を短縮することができ
る。
【0041】したがって、金型の昇温及び降温のための
大掛かりな設備を用いなくても、繰り返し成形する際
に、昇温時間、強制冷却による降温時間を無くし、冷却
時間を短縮することにより、成形サイクルタイムを短縮
することが可能となり、生産性を向上することができ
る。
【0042】また、この実施の形態では、複数のボタン
が突出して設けられた押ボタンシートを製造している
が、外形成形体10に複数の突出部が最終製品の外形形
状を有する状態で形成されているので、このように複数
の突出部21が狭い間隔で配置された成形品を製造する
場合であっても、射出時に各突出部21の樹脂フィルム
同士が相互に引張り合うことがなく、樹脂フィルムの位
置ズレを生じにくい。
【0043】さらに、キャビティ側金型部3に連続した
リブ状の凸部6aを設けてコア側金型4との間で挟持し
て射出成形したので、突出部21の周囲のベースプレー
ト22に充填樹脂が付着することがなく、そのため、得
られた押ボタンシートのボタンの操作感が低下すること
がない。
【0044】なお、上記実施の形態では、携帯電話の押
ボタンシートを製造する例を示したが、他のフィルム付
成形品の製造にも同様に適用することができる。
【0045】さらに、多数の突出部を有する成形品を製
造したが、1つの突出部を有する成形品であってもよ
い。
【0046】
【実施例】[実施例1]正方形で高さ5mmの押ボタン
が、3行4列に2mm間隔で配置された携帯電話の押ボタ
ンシートを、図1に示す射出成形金型を用いて製造し
た。
【0047】樹脂フィルムとして、厚さ125μmのシ
ボ調を有するポリカーボネートフィルム(マクロロン2
407 95/023:(株)バイエル製)を用い、充
填樹脂として、ポリカーボネート樹脂(ユーピロンS3
000R:三菱マテリアル社製)を用いた。
【0048】製造は、まず、樹脂フィルムの所定位置に
表示文字を含む意匠をスクリーン印刷し、この樹脂フィ
ルムを押ボタンシートの各ボタン形状より各寸法が0.
03mm小さく、微細な凹凸(例えば携帯電話の「5
番」ボタンに形成される直径0.6mm、高さ0.3m
mの突起)を無視した形状に真空成形により成形して外
形成形体を得、これを射出成形金型のキャビティに配置
し、射出成形することにより行った。
【0049】射出成形時の溶融樹脂の温度は290℃で
あり、コア側金型部の温度及びキャビティ側金型部の温
度は55℃に保つように制御した。
【0050】この製造により、各ボタンの表示文字を含
む意匠が所定の位置に、歪みを生じることなく所定の形
状で配置され、艶斑やフィルムの破断がなく、キャビテ
ィ側金型の凹部の平滑な表面を転写することがなくシボ
調を維持し、外観の優れた押ボタンシートが得られた。
このとき成形サイクルタイムは、2秒の射出時間及び1
0秒の冷却時間を含めて、20秒以下に設定することが
できた。
【0051】[比較例1]コア側金型及びキャビティ側
金型の温度を90℃に設定する他は、実施例1と全く同
一条件にて押ボタンシートを製造した。
【0052】その結果、冷却時間は実施例1より2秒程
度長くなる範囲で収まったものの、得られた押ボタンシ
ートには、キャビティ側金型の凹部の平滑な表面が転写
されてしまい、意図に反して光沢感が生じた。また、押
ボタンシートのベース部の歪み、変形が生じ易くなり、
製品の歩留まりが低下した。
【0053】[比較例2]コア側金型及びキャビティ側
金型の温度をそれぞれ30℃に保つように制御した他
は、実施例1と全く同一条件にて押ボタンシートを製造
したところ、得られた押ボタンシートには、溶融樹脂の
流動性が悪化し、ウエルド、ジェッティング、ヒケ、未
充填などの成形不良が生じていた。
【0054】[比較例3]樹脂フィルムを予め最終製品
の外形形状に成形することなく、板状のシートのまま射
出成形金型のキャビティに配置し、さらに射出成形金型
全体を140℃に保つ他は、実施例1と全く同一条件に
て押ボタンシートを作成した。
【0055】その結果、樹脂フィルムの伸びが不均一に
なり、表示文字を含む意匠自体が歪み、また、その意匠
の位置精度が悪く、樹脂フィルムが溶融樹脂により溶け
て破れが生じ、突出部の天面の外表面に溶融樹脂が流れ
込んでしまうこともあり、歩留まりが低下した。
【0056】そして、繰り返し製造するには、金型温度
を昇温したり、少なくとも120℃以下に強制冷却して
降温する必要があり、サイクルタイムとしては50秒程
度となった。
【0057】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1乃至3に
記載の発明によれば、樹脂フィルムを最終製品の外形形
状に成形してからキャビティ側金型の凹部にセットし、
このキャビティ側金型を40℃以上80℃未満の温度範
囲に保って成形するので、射出時に樹脂フィルムを過剰
に軟化状態にして引き伸ばす必要がなく、そのため不均
一な伸びによるズレや歪みなどの変形や、艶斑や破断等
が起きにくく、複雑な形状の製品でも成形不良を防止す
ることができる。また、樹脂フィルムを軟化状態にして
成形する必要がないので、型締め後に樹脂フィルムが軟
化するまで昇温させる必要がなく、成形時の昇温時間を
無くすことができる。さらに、樹脂フィルムが過剰に軟
化されていないため外表面形状を維持しやすく、また、
金型の温度も低いので、金型から成形品を取り出す際の
降温時間を短縮することができる。そのため昇温及び降
温のための大掛かりな設備を用いることなく成形サイク
ルタイムを短縮することができ、生産性を向上すること
ができる。
【0058】また、請求項2に記載の発明によれば、こ
の発明の製造方法を複数の突出部を有する製品に適用す
るため、樹脂フィルムに複数の突出部が製品形状の状態
で成形されていて、樹脂フィルムを射出時に引き延ばし
ながら複数の突出部を形成する必要がない。そのため、
射出時に各突出部の樹脂フィルム同士が相互に引張り合
うことがなくて、複数の突出部を有していても製品不良
を防止することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態の製造方法において使
用する射出成形金型の断面図である。
【図2】 図1の射出成形金型に外形成形体を配置した
状態を示す断面図である。
【図3】 成形後の図1の射出成形金型のキャビティ側
金型部を開いた状態を示す断面図である。
【図4】 成形後の図1の射出成形金型のストリッパプ
レートを開いた状態を示す断面図である。
【図5】 複数の突出部を有する樹脂成形品の断面図で
ある。
【図6】 従来の射出成形によりフィルム付き樹脂成形
品を製造する状態を説明する断面図である。
【図7】 樹脂成型品の表示部分の正面図であり、
(a)は正規の形状を示し、(b)は歪んだ状態を示
す。
【図8】 複雑な形状を有する樹脂成形品の斜視図であ
る。
【図9】 高さの高い突出部を有する樹脂成形品の断面
図である。
【符号の説明】
1 射出成形金型 2 キャビティ 3 キャビティ側金型部 3a 凹部 3b 壁面 4 コア側金型部 5 ベースプレート 6 ストリッパプレート 8 ゲートブッシュ 10 外形成形体
フロントページの続き (72)発明者 兵藤 徹 埼玉県児玉郡神川町大字元原字豊原300番 地5 信越ポリマー株式会社内 Fターム(参考) 4F202 AA28 AD05 AD08 AG03 AG05 AG28 AH33 AR06 CA11 CB01 CB13 CK11 CL02 CQ01 4F206 AA28 AD04 AD08 AG03 AG05 AG28 AH33 AR064 JA07 JB13 JF05 JL02 JM04 JN11 JN43 JQ81

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 最終製品の外形形状に対応した凹部を有
    するキャビティ側金型と該凹部を覆うコア側金型とを備
    えた一対の金型間に樹脂フィルムを配置し、溶融樹脂を
    射出することにより前記樹脂フィルムを前記凹部の壁面
    に密着させながら前記溶融樹脂と樹脂フィルムとを一体
    化してフィルム付成形品を製造する方法であって、 前記樹脂フィルムを最終製品の外形形状に成形して前記
    凹部にセットし、前記キャビティ側金型の温度を40℃
    以上80℃未満に保つことを特徴とするフィルム付成形
    品の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記フィルム付成形品が、複数の突出部
    を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の
    フィルム付成形品の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記溶融樹脂が、ポリカーボネートから
    なることを特徴とする請求項1または2に記載のフィル
    ム付成形品の製造方法。
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JP2017213746A (ja) * 2016-05-31 2017-12-07 株式会社吉野工業所 加飾成形品
WO2021193809A1 (ja) * 2020-03-26 2021-09-30 三菱瓦斯化学株式会社 フィルムインサート成形品およびフィルムインサート成形品の製造方法

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