JP6645020B2 - 熱硬化性粉体塗料、塗装品、及び塗装品の製造方法 - Google Patents
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- C09D167/00—Coating compositions based on polyesters obtained by reactions forming a carboxylic ester link in the main chain; Coating compositions based on derivatives of such polymers
Description
<1>に係る発明は、
熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含む粉体粒子と、
アミノ基を有するシラン化合物を含む無機酸化物粒子と、
を有する熱硬化性粉体塗料である。
前記アミノ基を有するシラン化合物が、アミノ基を有するシランカップリング剤及びアミノ基を有するシリコーンオイルから選択される1種以上の化合物である<1>に記載の熱硬化性粉体塗料である。
前記熱硬化性樹脂が、熱硬化性ポリエステル樹脂である<1>又は<2>に記載の熱硬化性粉体塗料である。
蛍光X線分析による前記粉体粒子の炭素量CSと前記無機酸化物粒子の金属総量ISとから下記計算式(1)によって算出される含有割合Fが、70%以上である<1>〜<3>のいずれか1に記載の熱硬化性粉体塗料である。
計算式(1) F=100×IS/(IS+CS)
前記粉体粒子が、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含有する芯部と、該芯部の表面を被覆する樹脂被覆部と、を有するコア・シェル型粒子である<1>〜<4>のいずれか1に記載の熱硬化性粉体塗料である。
前記無機酸化物粒子の体積平均粒径が0.001μm以上1.0μm以下である<1>〜<5>のいずれか1に記載の熱硬化性粉体塗料である。
被塗装物の表面に、<1>〜<6>のいずれか1に記載の熱硬化性粉体塗料により形成された塗装膜を有する塗装品である。
被塗装物の表面に、<1>〜<6>のいずれか1に記載の熱硬化性粉体塗料により塗装膜を形成する塗装品の製造方法である。
本実施形態に係る熱硬化性粉体塗料(以下、「粉体塗料」とも称する)は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含有する粉体粒子と、アミノ基を有するシラン化合物を含む無機酸化物粒子(以下、「特定無機酸化物粒子」と称する)と、を有する。
例えば、塗装方法には、帯電させた粉体粒子の静電気を用いて塗装を行う静電粉体塗装という方法がある。粉体粒子を帯電させる方法としては、コロナ放電を用いた帯電(コロナ式とも呼ばれる)と摩擦帯電(トリボ式とも呼ばれる)とがあるが、このコロナ放電と摩擦といった帯電方式の違いにより、粉体粒子の種類(特に、粉体粒子中の樹脂の種類)によっては、十分な帯電量が得られず、塗装が困難となることがある。
これにより、本実施形態に係る粉体塗料は、塗装方法を選ばず塗装を実現し、且つ、流動性が高いといった効果を奏しうる。
また、本実施形態に係る粉体塗料によれば、優れた流動性を示す粉体塗料であるため、平滑性に優れた塗装膜も得られる。
本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子と特定無機酸化物粒子を有する。
粉体粒子は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤、必要に応じて、着色剤、その他の添加剤を含有する。
熱硬化性樹脂は、熱熱硬化反応性基を有する樹脂である。熱硬化性樹脂としては、従来、粉体塗料の粉体粒子で使用する様々な種類の樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、非水溶性(疎水性)の樹脂であることがよい。熱硬化性樹脂として非水溶性(疎水性)の樹脂を適用すると、粉体塗料(粉体粒子)の帯電特性の環境依存性が低減される。また、粉体粒子を凝集合一法で作製する場合、水性媒体中で乳化分散を実現する点からも、熱硬化性樹脂は、非水溶性(疎水性)の樹脂であることがよい。なお、非水溶性(疎水性)とは、25℃の水100質量部に対する対象物質の溶解量が5質量部未満であることを意味する。
熱硬化性ポリエステル樹脂に含まれる熱硬化反応性基としては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、酸無水基、ブロックイソシアネート基等が挙げられるが、合成が容易な点から、カルボキシル基、及び水酸基が好ましい。
熱硬化性ポリエステル樹脂は、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを少なくとも重縮合した重縮合体である。
熱硬化性ポリエステル樹脂の熱硬化反応性基の導入は、ポリエステル樹脂を合成する際の多塩基酸と多価アルコールとの使用量を調整することにより行う。この調整により、熱硬化反応性基として、カルボキシル基、及び水酸基の少なくとも一方を有する熱硬化性ポリエステル樹脂が得られる。
また、ポリエステル樹脂を合成した後、熱硬化性反応基を導入して、熱硬化性ポリエステル樹脂を得てもよい。
他の単量体としては、例えば、1分子中にカルボキシル基と水酸基とを併せ有する化合物(例えばジメタノールプロピオン酸、ヒドロキシピバレート等)、モノエポキシ化合物(例えば「カージュラE10(シェル社製)」等の分岐脂肪族カルボン酸のグリシジルエステル)など)、種々の1価アルコール(例えばメタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等)、種々の1価の塩基酸(例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等)、種々の脂肪酸(例えばひまし油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸の等)等が挙げられる。
酸価と水酸基価との合計を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上しやすくなる。数平均分子量を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上すると共に、粉体塗料の貯蔵安定性も向上しやすくなる。
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、熱硬化反応性基を有する(メタ)アクリル樹脂である。熱硬化性(メタ)アクリル樹脂への熱硬化反応性基の導入は、熱硬化反応性基を有するビニル単量体を用いることがよい。熱硬化反応性基を有するビニル単量体は、(メタ)アクリル単量体((メタ)アクリロイル基を有する単量体)であってもよいし、(メタ)アクリル単量体以外のビニル単量体であってもよい。
他のビニル単量体としては、各種のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1等)、フルオロオレフィンを除く各種のハロゲン化オレフィン(例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、各種の芳香族ビニル単量体(例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等)、各種の不飽和ジカルボン酸と炭素数1以上18以下の1価アルコールとのジエステル(例えばフマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジオクチル等)、各種の酸無水基含有単量体(例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水(メタ)アクリル酸、無水テトラヒドロフタル酸等)、各種の燐酸ステル基含有単量体(例えばジエチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジブチル−2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフォスフェート、ジオクチル−2−(メアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等)、各種の加水分解性シリル基含有単量体(例えばγ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、各種の脂肪族カルボン酸ビニル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、炭素原子数9以上11以下の分岐状脂肪族カルボン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等)、環状構造を有するカルボン酸の各種のビニルエステル(例えばシクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル等)などが挙げられる。
硬化性反応性基を有さないアクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等)、各種の(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等)、各種のアルキルカルビトール(メタ)アクリレート(例えばエチルカルビトール(メタ)アクリレート等)、他の各種の(メタ)アクリル酸エステル(例えばイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等)、各種のアミノ基含有アミド系不飽和単量体(例えばN−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)、各種のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)、各種のアミノ基含有単量体(例えばtert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピペリジニルエチル(メタ)アクリレート等)。
数平均分子量を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上しやすくなる。
なお、後述するように、粉体粒子がコア・シェル型粒子である際、樹脂被覆部の樹脂として熱硬化性樹脂を適用する場合には、上記の熱硬化性樹脂の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全熱硬化性樹脂の含有量を意味する。
熱硬化剤は、熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基の種類に応じて選択する。
ここで、熱硬化剤とは、熱硬化性樹脂の末端基である熱硬化反応性基に対して、反応可能な官能基を有している化合物を意味する。
なお、後述するように、粉体粒子がコア・シェル型粒子である際、樹脂被覆部の樹脂として熱硬化性樹脂を適用する場合には、上記の熱硬化剤の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全熱硬化性樹脂に対する含有量を意味する。
着色剤としては、例えば、顔料が挙げられる。着色剤は、顔料と共に染料を併用してもよい。
顔料としては、例えば、酸化鉄(例えばベンガラ等)、酸化チタン、チタン黄、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛、リトポン、酸化アンチモン、コバルトブルー、カーボンブラック等の無機顔料;キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、パーマネントレッド、ハンザイエロー、インダンスレンブルー、ブリリアントファーストスカーレット、ベンツイミダゾロンイエロー等の有機顔料などが挙げられる。
顔料としては、その他、光輝性顔料も挙げられる。光輝性顔料としては、例えば、パール顔料、アルミニウム粉、ステンレス鋼粉等の金属粉;金属フレーク;ガラスビーズ;ガラスフレーク;雲母;リン片状酸化鉄(MIO)等が挙げられる。
例えば、着色剤の含有量は、粉体粒子を構成する全樹脂に対して、1質量%以上70質量%以下が好ましく、2質量%以上60質量%以下がより好ましい。
粉体粒子には、2価以上の金属イオン(以下、単に「金属イオン」とも称する)を含むことがよい。この金属イオンは、後述するように、粉体粒子がコア・シェル型粒子である際には、粉体粒子の芯部及び樹脂被覆部のいずれにも含まれる成分である。
粉体粒子に2価以上の金属イオンを含むと、粉体粒子で金属イオンによるイオン架橋を形成する。例えば、熱硬化性樹脂として、熱硬化性ポリエステル樹脂を使用した場合、熱硬化性ポリエステル樹脂のカルボキシル基又は水酸基と金属イオンとが相互作用し、イオン架橋を形成する。このイオン架橋により、粉体粒子の内包物(熱硬化剤、及び熱硬化剤以外に必要に応じて添加される着色剤、その他の添加剤等)が粉体粒子の表面に析出する現象(所謂、ブリード)が抑制され、保管性が高まりやすくなる。また、このイオン架橋は、粉体塗料の塗装後、熱硬化をするときの加熱により、イオン架橋の結合が切れることで、粉体粒子の溶融粘度が低下し、平滑性の高い塗装膜を形成しやすくなる。
金属塩としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
無機金属塩重合体としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、ポリ硫酸鉄(II)、多硫化カルシウム等が挙げられる。
金属錯体としては、例えば、アミノカルボン酸の金属塩等が挙げられる。金属錯体として、具体的には、例えば、エチレンジアミン4酢酸、プロパンジアミン4酢酸、ニトリル3酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸等の公知のキレートをベースにした金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、アルミニウム塩等)などが挙げられる。
金属イオンの含有量を0.002質量%以上とすると、金属イオンによる適度なイオン架橋が形成され、粉体粒子のブリードを抑え、塗装塗料の保管性が高まるやすくなる。一方、金属イオンの含有量を0.2質量%以下とすると、金属イオンによる過剰なイオン架橋の形成を抑え、塗装膜の平滑性が高まりやすくなる。
その他の添加剤としては、粉体塗料に使用される各種の添加剤が挙げられる。
具体的には、その他の添加剤としては、例えば、発泡(ワキ)防止剤(例えば、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体等)、硬化促進剤(アミン化合物、イミダゾール化合物、カチオン重合触媒等)、表面調整剤(レベリング剤)、可塑剤、帯電制御剤、酸化防止剤、顔料分散剤、難燃剤、流動付与剤等が挙げられる。
本実施形態において、粉体粒子は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含有する芯部と、該芯部の表面を被覆する樹脂被覆部と、を有するコア・シェル型粒子であってもよい。
この際、芯部は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤の他、必要に応じて、前述した、着色剤のその他の添加剤を含有してもよい。
樹脂被覆部は、樹脂のみで構成されていてもよいし、他の成分(芯部を構成する成分として説明した熱硬化剤、その他の添加剤等)を含んでいてもよい。
但し、ブリードを低減させる点から、樹脂被覆部は、樹脂のみで構成されていることがよい。なお、樹脂被覆部が、樹脂以外の他の成分を含む場合でも、樹脂は樹脂被覆部全体の90質量%以上(好ましくは95質量%以上)を占めることがよい。
樹脂被覆部の樹脂として、熱硬化性樹脂を適用する場合、この熱硬化性樹脂としては、芯部の熱硬化性樹脂と同様なものが挙げられ、好ましい例も同様である。但し、樹脂被覆部の熱硬化性樹脂は、芯部の熱硬化性樹脂と同じ種類の樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。
なお、樹脂被覆部の樹脂として、非硬化性樹脂を適用する場合、非硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
樹脂被覆部の被覆率は、粉体粒子表面の樹脂被覆部の被覆率はXPS(X線光電子分光)測定により求められた値である。
具体的には、XPS測定は、測定装置として日本電子社製、JPS−9000MXを使用し、X線源としてMgKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を30mAに設定して実施する。
上記条件で得られたスペクトルから、粉体粒子表面の芯部の材料に起因する成分と被覆樹脂部の材料に起因する成分をピーク分離することによって、粉体粒子表面の樹脂被覆部の被覆率を定量する。ピーク分離は、測定されたスペクトルを、最小二乗法によるカーブフィッティングを用いて各成分に分離する。
分離のベースとなる成分スペクトルは、粉体粒子の作製に用いた熱硬化性樹脂、硬化剤、顔料、添加剤、被覆用樹脂を単独に測定して得られたスペクトルを用いる。そして、粉体粒子で得られた全スペクトル強度の総和に対しての被覆用樹脂に起因するスペクトル強度の比率から、被覆率を求める。
樹脂被覆部の厚さは、次の方法により測定された値である。粉体粒子をエポキシ樹脂などに包埋し、ダイヤモンドナイフなどで切削することで薄切片を作製する。この薄切片を透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察、複数の粉体粒子の断面画像を撮影する。粉体粒子の断面画像から樹脂被覆部の厚みを20か所測定して、その平均値を採用する。クリア粉体塗料などで断面画像において樹脂被覆部の観察が難しい場合は、染色を行って観察することで、測定を容易にすることもできる。
−体積粒度分布指標GSDv−
本実施形態において、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、粉体粒子の体積粒度分布指標GSDvは1.50以下であることが好ましく、1.40以下がより好ましく、1.30以下が更に好ましい。
また、粉体粒子の体積平均粒径D50vは、少量で平滑性の高い塗装膜を形成する点から、1μm以上25μm以下が好ましく、2μm以上20μm以下がより好ましく、3μm以上15μm以下が更に好ましい。
更に、粉体粒子の平均円形度は、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、0.96以上であることが好ましく、0.97以上がより好ましく、0.98以上が更に好ましい。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積84%となる粒径を体積粒径D84vと定義する。
そして、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2として算出される。
本実施形態における特定無機酸化物粒子は、アミノ基を有するシラン化合物を含む無機酸化物粒子である。
無機酸化物粒子としては、SiO2、TiO2、Al2O3、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe2O3、MgO、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、K2O・(TiO2)n、Al2O3・2SiO2等の粒子が挙げられる。
中でも、粉体粒子の流動性の付与能、帯電性の調整のし易さの点から、SiO2、TiO2、Al2O3が好ましく、特に、SiO2がより好ましい。
特定無機酸化物粒子に含まれるアミノ基を有するシラン化合物としては、アミノ基とケイ素原子(Si)とを含む化合物であり、製造適性の点、本実施形態におけるトリボ式への適性のために必要な帯電制御のし易さ、材料としての選択性が広い等の点から、アミノ基を有するシランカップリング剤及びアミノ基を有するシリコーンオイルから選択される1種以上の化合物が好ましい。
アミノ基を有するシラン化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、帯電付与性、特定無機酸化物粒子の製造性の点から、アミノプロピル基を有するトリメトキシシラン、アミノプロピル基を有するジメトキシシランシラン、アミノプロピル基を有するトリエトキシシラン、及びアミノプロピル基を有するジエトキシシランシランが好ましく、具体的には、ジメチル{2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル}トリメトキシシランが好ましい。
なお、アミノ基を有するシランカップリング剤は、帯電付与制御の調整剤、流動性の調整剤として、例えば、ヘキサメチルシラザン等に代表されるアミノ基を含有しないシラン化合物、アミノ基を含有しないシランカップリング剤等の公知のシラン化合物との併用も可能である。
具体的には、導入されるアミノ基を含む有機基としては、例えば、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル基、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基等が挙げられる。
市販品としては、例えば、信越化学工業社製のKF−857、KF−868、KF−865、KF−864、KF−869、KF−859、KF−393、KF−860、KF−880、KF−8004、KF−8002、KF−8005、KF−8010、KF−867、X−22−3820W、KF−869、KF−861、X−22−3939A、KF−877等が挙げられる。
また、東レ・ダウコーニング社製のBY16−205、FZ−3760、SF8417、BY16−849、BY16−892、FZ−3785、BY16−872、BY16−213、BY16−203、BY16−898、BY16−890、BY16−891、BY16−893、FZ−3789等が挙げられる。
アミノメチルトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、ジエチルアミノジメチルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメチルシラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、イソプロピルアミノメチルトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、ブチルアミノメチルトリメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメチルシラン等が挙げられる。
帯電列の制御が容易な点、また、製造が簡易な点から、アミノ基を有するシラン化合物は、無機酸化物粒子の表層部に含まれていることが好ましい。
例えば、無機酸化物粒子がSiO2であれば、ゾルゲル法等の湿式法にてSiO2粒子(シリカ粒子)を合成する際に、反応過程において、アミノ基を有するシラン化合物を用いることで、アミノ基を有するシラン化合物を内部に含む特定無機酸化物粒子が得られる。
例えば、アミノ基を有するシラン化合物がアミノ基を有するシランカップリング剤であれば、無機酸化物粒子に対しアミノ基を有するシランカップリング剤により表面処理することで、アミノ基を有するシラン化合物を表層部に含む特定無機酸化物粒子が得られる。
この表面処理としては、アミノ基を有するシラン化合物を含む表面処理剤に、無機酸化物粒子を浸漬する等して行えばよい。また、表面処理は、無機酸化物粒子ゾルの分散体に対して行われてもよい。
アミノ基を有するシラン化合物の含有量は、例えば、粉体粒子と特定無機酸化物粒子との帯電量を制御する効果の発現の点、製造適性の点から、特定無機酸化物粒子の全質量に対して、0.01質量%以上50質量%以下が好ましく0.1質量%以上20質量%以下がより好ましい。
なお、特定無機酸化物粒子中のアミノ基の含有量は、一般的な装置を用いた元素分析法により窒素原子の含有量を求めることにより推定される。
上記のように、無機酸化物粒子の表面に、アミノ基を有するシラン化合物を化学的に結合させる、又は物理的に吸着させる方法を用いて特定無機酸化物粒子を得る際には、帯電列を制御する効果を損なわない範囲において、アミノ基を有するシラン化合物以外の成分を併用してもよい。
併用される成分としては、疎水化処理剤が挙げられ、疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、アミノ基を有するシラン化合物以外のシラン系カップリング剤、アミノ基を有するシラン化合物以外のシリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−体積平均粒径−
特定無機酸化物粒子の体積平均粒径D50vは、粉体粒子の粒径との関係もあるが、0.001μm以上1.0μm以下が好ましく、0.005μm以上0.5μm以下がより好ましい。
特定無機酸化物粒子の体積平均粒径が上記範囲であることで、粉体粒子に高い流動性が付与され、更に、平滑性に優れた塗装膜を形成しうる。
なお、特定無機酸化物粒子の体積平均粒径D50vも、前記粉体塗料の体積平均粒径D50vと同様の方法で測定する。
本実施形態において、粉体粒子の炭素量CSと無機酸化物粒子の金属総量ISとから計算式(1)によって算出される特定無機酸化物粒子の含有割合Fは、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。また、この含有割合の上限値としては、95%が好ましく好ましい。
含有割合Fが70%以上であることで、粉体粒子の流動性が高められる。
計算式(1) F=100×IS/(IS+CS)
一方、特定無機酸化物粒子中の無機酸化物粒子は、MOx(Mは金属元素、xは自然数)で示され、特定無機酸化物粒子を構成する元素のうちの多くがMである。
また、蛍光X線分析は、分析対象とする測定試料の表面における元素の構成割合が測定される。
即ち、計算式(1)で求められる含有割合Fは、粉体粒子表面の特定無機酸化物粒子の被覆率を示すものであり、特定無機酸化物粒子中に含まれる酸素量等を差し引いても、計算式(1)が70%以上であれば、特定無機酸化物粒子の被覆率が十分で、粉体粒子の流動性が高められる。
試料前処理としては、粉体塗料4gを、加圧成型器で10t(10,000kg)、1分間の加圧成型を実施する。
得られた測定試料について、(株)リガク製の走査型蛍光X線分析装置ZSX Primus IIを使用して、測定条件は、定性定量測定で、管電圧60KV、管電流50mA、測定時間40deg/minにて、測定する。
ここで、特定無機酸化物粒子中の測定元素は、Si、Ti、Al、Cu、Zn、Sn、Ce、Fe、Mg、Ba、Ca、K、Na、Zr、及びCaであって、ISはこれらの元素の総量である。
本実施形態に係る粉体塗料においては、塗装方法を選ばず塗装を実現しうるといった効果を損なわない範囲において、特定無機酸化物粒子以外の他の外部添加剤を併用してもよい。
この他の外部添加剤としては、粉体塗料に用いられる公知の外部添加剤が挙げられ、例えば、無機粒子、又は無機粒子の表面を疎水化処理したものが挙げられる。
特定無機酸化物粒子と他の外部添加剤とを併用する場合、特定無機酸化物粒子と他の外部添加剤との総含有量に対して、他の外部添加剤の含有量を1質量%以下とすることが好ましい。
次に、本実施形態に係る粉体塗料の製造方法について説明する。
本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子を製造後、粉体粒子に対して特定無機酸化物粒子を外添することで得られる。
具体的には、
熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子、及び熱硬化剤が分散された分散液中で、前記第1樹脂粒子と前記熱硬化剤とを凝集して、又は、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された分散液中で、前記複合粒子を凝集して、第1凝集粒子を形成する工程(第1凝集粒子形成工程)と、
前記第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液とを混合し、前記第1凝集粒子の表面に前記第2樹脂粒子を凝集し、前記第2樹脂粒子が前記第1凝集粒子の表面に付着した第2凝集粒子を形成する工程(第2凝集粒子形成工程)と、
前記第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱し、前記第2凝集粒子を融合及び合一する工程(融合合一工程)と、
を経て、粉体粒子を製造することが好ましい。
なお、この凝集合一法により製造された粉体粒子は、第1凝集粒子が融合合一した部分が芯部となり、第1凝集粒子の表面に付着した第2樹脂粒子が融合合一した部分が樹脂被覆部となる。
そのため、第1凝集粒子形成工程で形成された第1凝集粒子を、第2凝集粒子形成工程を経ず、融合合一工程へと供し、第2凝集粒子の代わりに融合及び合一すれば、単層構造の粉体粒子が得られる。
なお、以下の説明では、着色剤を含む粉体粒子の製造方法について説明するが、着色剤は必要に応じて含有するものである。
まず、凝集合一法で使用する各分散液を準備する。
具体的には、芯部の熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子が分散された第1樹脂粒子分散液、熱硬化剤が分散された熱硬化剤分散液、着色剤が分散された着色剤分散液、樹脂被覆部の樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液を準備する。
また、第1樹脂粒子分散液、及び熱硬化剤分散液に代えて、芯部用の熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された複合粒子分散液を準備する。
なお、粉体塗料の製造方法の各工程において、第1樹脂粒子、第2樹脂粒子、及び複合粒子を、総じて「樹脂粒子」と称し、これらの樹脂粒子の分散液を「樹脂粒子分散液」と称して説明する。
水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水性媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を水性媒体中に粒子状に分散する方法である。
例えば、樹脂粒子分散液が、ポリエステル樹脂粒子が分散されたポリエステル樹脂粒子分散液の場合、かかるポリエステル樹脂粒子分散液は、原料単量体を加熱溶融及び減圧下重縮合した後、得られた重縮合体を、溶剤(例えば酢酸エチル等)を加えて溶解し、更に、得られた溶解物に弱アルカリ性水溶液を加えながら撹拌、及び転相乳化することによって得られる。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
次に、第1樹脂粒子分散液と、熱硬化剤分散液と、着色剤分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、第1樹脂粒子と熱硬化剤と着色剤とをヘテロ凝集させ、目的とする粉体粒子の径に近い径を持つ、第1樹脂粒子と熱硬化剤と着色剤とを含む第1凝集粒子を形成する。
なお、凝集終了後、凝集剤の金属イオンと錯体又は類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。このキレート剤の添加により、凝集剤を過剰に添加した場合、粉体粒子の金属イオンの含有量の調整が実現される。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下がよく、0.1質量部以上3.0質量部未満が好ましい。
次に、得られた第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、第2樹脂粒子分散液とを混合する。
なお、第2樹脂粒子は第1樹脂粒子と同種であってもよいし、異種であってもよい。
そして、混合分散液のpHを、例えば6.5以上8.5以下程度の範囲にすることにより、凝集の進行を停止させる。
次に、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して、例えば、第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、第2凝集粒子を融合合一し、粉体粒子を形成する。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流式乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
この際、粉体粒子と特定無機酸化物粒子との混合比としては、例えば、上記の含有割合Fの範囲となるように設定されればよい。例えば、粉体粒子に対する特定無機酸化物粒子の混合比としては、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
なお、上記の混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディーゲミキサー等によって行うことがよい。
更に、必要に応じて、振動師分機、風力師分機等を使って粉体粒子の粗大粒子を取り除いてもよい。
本実施形態に係る塗装品は、被塗装物の表面に、本実施形態に係る粉体塗料により形成された塗装膜を有する塗装品である。そして、本実施形態に係る塗装品の製造方法は、被塗装物の表面に、本実施形態に係る粉体塗料により塗装膜を形成する塗装品の製造方法である。
粉体塗料による塗装膜の厚みは、例えば、30μm以上50μm以下がよい。
加熱温度(焼付温度)は、例えば、90℃以上250℃以下が好ましく、100℃以上220℃以下がより好ましく、120℃以上200℃以下が更に好ましい。なお、加熱時間(焼付時間)は、加熱温度(焼付温度)に応じて調節する。
なお、粉体塗料の塗装、及び加熱(焼付)は、一括して行ってもよい。
撹拌装置、温度計、ディーン・スタークトラップ付きの還流管、及び滴下ロートを装備した反応容器に、二酸化ケイ素(SiO2)ゾルとして日本アエロジル社製AEROSIL 300(体積平均粒径7.0nm)30部と、メチルイソブチルケトン100部と、を入れ、これらを撹拌しつつ、ジメチル{2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル}トリメトキシシラン10部を更に加え、加熱して80℃で8時間保持し、シランカップリング剤による処理を行った。
その後、溶剤成分を、温度40℃、真空度15以上20mmHg以下で1時間減圧留去し、更に、60℃に加熱して、30分間減圧留去を続けることで、アミノ基を有するシランカップリング剤により表面処理されたシリカ粒子(特定無機酸化物粒子A)を得た。
特定無機酸化物粒子Aの製造に使用した、ジメチル{2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル}トリメトキシシラン10部に代えて、信越化学工業社製の変性シリコーンオイルKF−857を1.0部用いた以外は同様な処理を行い、アミノ基を有するシリコーンオイルより表面処理されたシリカ粒子(特定無機酸化物粒子B)を得た。
撹拌装置、温度計、ディーン・スタークトラップ付きの還流管、及び滴下ロートを装備した反応容器に、メタノール200部と、ジメチル{2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル}トリメトキシシラン10部と、を加え撹拌しつつ、1.0N塩酸水溶液を1.0部添加し、pHを1.0−2.0とし室温にて5hr撹拌を行い、ジメチル{2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル}トリメトキシシランゾル化合物を合成した。
反応液を50℃に加熱、2hr反応を行った後反応液を減圧濃縮し、スプレードライ装置で乾燥を行い、アミノ基を有するシラン化合物を内部に含有するシリカ粒子(特定無機酸化物粒子C)を得た。
特定無機酸化物粒子Aの製造に使用したAEROSIL 300の代わりに、AEROSIL OX−50(日本アエロジル製:体積平均粒径40nm)を用いた以外は同様に処理を行い、アミノ基を有するシランカップリング剤により表面処理されたシリカ粒子(特定無機酸化物粒子D)を得た。
特定無機酸化物粒子Aの製造に使用した、ジメチル{2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル}トリメトキシシランの代わりに、2−アミノエチルアミノメチルトリメチルシランを用いた以外は同様の処理を行い、アミノ基を有するシランカップリング剤により表面処理されたシリカ粒子(特定無機酸化物粒子E)を得た。
特定無機酸化物粒子Aの製造に使用したAEROSIL 300の代わりに、日本アエロジル社製AEROXIDE Alu 130(アルミナ粒子)を使用した以外は同様の処理を行い、アミノ基を有するシランカップリング剤により表面処理されたアルミナ粒子(特定無機酸化物粒子F)を得た。
疎水化無機酸化物粒子aとして、疎水化シリカ粒子:AEROSIL R 9200(ジメチルジクロロシランにて処理したもの)を準備した。
上記のようにして得られた特定無機酸化物粒子A〜F及び疎水化無機酸化物粒子aの体積平均粒径D50vを、前述の方法で測定した。
結果を表1に示す。
〔ポリエステル樹脂・熱硬化剤複合分散液(1)〕
−ポリエステル樹脂(PES1)の調製−
撹拌機、温度計、窒素ガス導入口、及び精留塔を備えた反応容器に、下記組成の原料を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌を行いながら240℃に昇温し、重縮合反応をおこなった。
・テレフタル酸 742部(100モル%)
・ネオペンチルグリコール 312部(62モル%)
・エチレングリコール 59.4部(20モル%)
・グリセリン 90部(18モル%)
・ジ−n−ブチル錫オキサイド 0.5部
得られた重合物(ポリエステル樹脂(PES1))のガラス転移温度は55℃、酸価(Av)は8mgKOH/g、水酸基価(OHv)は70mgKOH/g、Mw26000、Mn8000であった。
コンデンサー、温度計、水滴下装置、及びアンカー翼を備えたジャケット付き3リットル反応槽(東京理化器械株式会社製:BJ−30N)を水循環式恒温槽にて40℃に維持しながら、該反応槽に、酢酸エチル180部とイソプロピルアルコール80部との混合溶剤を投入し、これに下記組成物を投入した。
・ポリエステル樹脂(PES1) 240部
・ブロックイソシアネート熱硬化剤 60部
(VESTAGONB1530、EVONIK社製)
・ベンゾイン 3部
・アクリルオリゴマー(アクロナール4F BASF社) 3部
投入後、スリーワンモーターを用い150rpmで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。
この攪拌されている油相に、10%アンモニア水溶液の1部と5%水酸化ナトリウム水溶液の47部との混合液を5分間で滴下し、10分間混合した後、更にイオン交換水900部を毎分5部の速度で滴下して転相させ、乳化液を得た。
すぐに、得られた乳化液800部とイオン交換水700部とを2リットルのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械株式会社製)にセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。
溶剤回収量が1100部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。
得られた分散液に溶剤臭は無かった。この分散液における樹脂粒子の中心径は150nmであった。
その後、アニオン性界面活性剤(ダウケミカル製、Dowfax2A1、有効成分量45%)を、分散液中の樹脂分に対して有効成分として2%添加混合し、イオン交換水を加えて固形分濃度が20%になるように調整した。
これをポリエステル樹脂・熱硬化剤複合分散液(1)とした。
ポリエステル樹脂・熱硬化剤複合分散液(1)の調製において、ポリエステル樹脂(PES1)を300部とし、ブロックイソシアネート熱硬化剤、ベンゾイン、及びアクリルオリゴマーを加えない以外は同様の方法で、ポリエステル樹脂分散液を調製した。
これをポリエステル樹脂分散液(2)とした。
・カーボンブラック 50部
(オリエントエンジニアドカーボン社製Nipex35)
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンR) 5部
・イオン交換水 200部
上記の材料を混合し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー(スギノマシン社製HJP30006)を用いて1時間分散処理を行い、着色剤分散液(K)を得た。着色剤分散液(K)は、着色剤粒子の平均粒径190nm、固形分量20%であった。
・ポリエステル樹脂・熱硬化剤複合分散液(1) 260部
・着色剤分散液(K) 32.7部
・カチオン性界面活性剤(花王社製サニゾールB50) 1.5部
・ポリ塩化アルミニウム 0.36部
・イオン交換水 1000部
上記の材料を丸型ステンレス製フラスコに収容して、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて混合し分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で30分保持した後、光学顕微鏡にて凝集粒子が形成されていることを確認した。
ここにポリエステル樹脂分散液(2)を130部追加した。その後、濃度0.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で液のpHを8.0に調整した後、フラスコを密閉し、攪拌軸のシールを磁力シールして攪拌を継続しながら90℃まで加熱し、更に3時間保持した。
反応終了後、冷却し、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。固形分を30℃のイオン交換水1000部に再分散し、攪拌翼によって300rpmで15分間攪拌し、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。この再分散と吸引濾過を繰り返し、濾液が電気伝導度10.0μS/cmt以下となったところで洗浄を終了した。
次いで真空乾燥機に仕込んで12時間継続して乾燥し、粉体粒子(1)を得た。
粉体粒子(1)は、コア・シェル型粒子であって、体積平均粒径D50vは5.8μmであった。
粉体粒子(1)の作製において、ポリエステル樹脂・熱硬化剤複合分散液(1)を400部として、かつ、ポリエステル樹脂分散液(2)100部の追加を行わない以外は、同様にして、粉体粒子(2)を作製した。
この粉体粒子(2)は、単層構造の粒子であって、その粒径をコールターカウンターで測定したところ、体積平均粒径D50vが6.5μmであり、体積平均粒度分布指標GSDvが1.30であった。シスメックス社製フロー式粒子像分析装置「FPIA−1000」を用いて測定した平均円形度は、0.98とほぼ球形状であった。
<粉体塗料(1)の作製>
得られた粉体粒子(1)100部に対して0.8部の特定無機酸化物粒子Aを外部添加剤として混合して、粉体塗料(1)を得た。
得られた粉体粒子(1)100部に対して0.8部の特定無機酸化物粒子Bを外部添加剤として混合して、粉体塗料(2)を得た。
得られた粉体粒子(1)100部に対して1.0部の特定無機酸化物粒子Cを外部添加剤として混合して、粉体塗料(3)を得た。
得られた粉体粒子(1)100部に対して1.5部の特定無機酸化物粒子Dを外部添加剤として混合して、粉体塗料(4)を得た。
得られた粉体粒子(1)100部に対して0.8部の特定無機酸化物粒子Eを外部添加剤として混合して、粉体塗料(5)を得た。
得られた粉体粒子(1)100部に対して0.6部の特定無機酸化物粒子Fを外部添加剤として混合して、粉体塗料(6)を得た。
得られた粉体粒子(1)100部に対して0.72部の特定無機酸化物粒子Aを外部添加剤として混合して、粉体塗料(7)を得た。
得られた粉体粒子(1)100部に対して0.68部の特定無機酸化物粒子Aを外部添加剤として混合して、粉体塗料(8)を得た。
得られた粉体粒子(2)100部に対して0.6部の特定無機酸化物粒子Aを外部添加剤として混合して、粉体塗料(9)を得た。
得られた粉体粒子(1)100部に対して0.8部の疎水化無機酸化物粒子aを外部添加剤として混合して、粉体塗料(C1)を得た。
各例で得られた粉体塗料について、前述の方法で蛍光X線分析を行い、含有割合Fを、前述の計算式(1)により算出した。
結果を表1に示す。
(流動性の評価)
各例で得られた粉体塗料について、以下のようにして流動性を評価した。
得られた粉体塗料の流動性は、安息角の測定により評価した。評価には、ホソカワミクロン製パウダテスタPT−Xを行い、評価基準は以下のようにした。
結果を表1に示す。
−評価基準−
G1:安息角が30°以下
G2:安息角が30°を超え40°以下
G3:安息角が40°を超える
−塗装の可否について−
コロナ式の静電塗装装置(旭サナック社製XR4−110C)と、トリボ式の静電塗装装置(旭サナック社製MTR100VT−mini)と、の2つの装置を用いて、各例で得られた粉体塗料の塗装を行った。
被塗装物には、リン酸亜鉛処理鋼板のテストパネルを使用した。
以下の評価基準に沿って、塗装の可否を判定した。
−評価基準−
G1:塗装が実現でき、形成された塗装膜(焼付け前)の平滑性も問題ない
G2:塗装は実現できたが、形成された塗装膜(焼付け前)の平滑性がやや低い
G3:塗装ができなかった
上記の方法で塗装ができたものについて、加熱温度180℃、加熱時間1時間で加熱(焼付け)を行って、厚みが30μmの塗装膜試料を得た。
塗装膜試料の表面に対して、表面粗さ測定器(SURFCOM 1400A(株)東京精密)を用いて、中心線平均粗さ(以下、「Ra」と記す。単位:μm)を測定した。Raの数字が大きいほど表面平滑性が低いことを示す。
評価基準は以下の通りである。評価結果を表1に示す。なお、表1中の「−」は平滑性の測定を行っていないことを示す。
G1:Raが0.4μm以下である
G2:Raが0.4μmを超え0.5μm以下である
G3:Raが0.5μmを超える
Claims (5)
- 熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含む芯部と、該芯部の表面を被覆し且つ層状の樹脂層で構成された樹脂被覆部と、を有するコア・シェル型粒子である粉体粒子と、
アミノ基を有するシラン化合物を含む無機酸化物粒子と、
を有し、
前記熱硬化性樹脂が熱硬化性ポリエステル樹脂であり、
前記アミノ基を有するシラン化合物を含む無機酸化物粒子が、アミノ基を有するシランカップリング剤及びアミノ基を有するシリコーンオイルからなる群より選択される1種以上の化合物を、内部及び表層の少なくとも一方に含む無機酸化物粒子である、
熱硬化性粉体塗料。 - 蛍光X線分析による前記粉体粒子の炭素量CSと前記無機酸化物粒子の金属総量ISとから下記計算式(1)によって算出される含有割合Fが、70%以上である請求項1に記載の熱硬化性粉体塗料。
計算式(1) F=100×IS/(IS+CS) - 前記無機酸化物粒子の体積平均粒径が0.001μm以上1.0μm以下である請求項1又は請求項2に記載の熱硬化性粉体塗料。
- 被塗装物の表面に、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料により形成された塗装膜を有する塗装品。
- 被塗装物の表面に、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料により塗装膜を形成する塗装品の製造方法。
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