JP6638286B2 - リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池の正極集電体には、電解塩による腐食に耐えるため、表面に安定な不動態膜を形成するAlなどの金属を使用するのが一般的である。例えばAlを集電体に用いた場合、その表面にAl、AlF等の不動態膜が形成される。Alの集電体は表面に上記不動態膜が形成されるため、腐食されにくく、集電機能を保ちやすい。
近年、リチウムイオン二次電池は、高電圧使用環境下でも良好に使用できることが望まれている。高電圧使用環境下では上記不動態膜が形成されていてもAlの集電体は徐々に腐食が進行し、Alの集電体を有するリチウムイオン二次電池は保存特性やサイクル特性が低下する懸念がある。
高電圧使用環境下においてリチウムイオン二次電池の様々な電池特性を維持するために、集電体に保護層を形成する検討がされている。例えば、イオンスパッタ法や真空蒸着法などのドライプロセスによって保護層を形成することが検討されている。また、有機溶剤を用いたウエットプロセスで保護層を形成することも検討されている。さらに、ウエットプロセスで環境に優しい水系溶剤を用いて保護層を形成することが検討されている。
例えば特許文献1には、錫をドープした酸化インジウム(ITO)または酸化錫を含む保護層が記載されており、具体的には、ITO微粒子とポリエステル系の樹脂とを含む保護層が開示されている。
また特許文献2には、集電体本体の表面に導電性酸化物又は導電性窒化物からなるコート層がイオンスパッタ法で形成されている非水電解質二次電池正極用集電体が開示されている。
他方リチウムイオン二次電池は、内部短絡時に、瞬時に多量の電流が流れて、電池発熱が生じるおそれがある。そこで、従来、正極活物質として、第一正極活物質と、第一正極活物質よりも充放電電位が低く抵抗が高い第二正極活物質とを用いることで、正極内を多量の電流が急激に流れることを防止することが行われている。たとえば、特許文献3、4には、第一正極活物質として、LiNiCoMn(x+y+z=1)で表されるリチウム金属複合酸化物を用い、第二正極活物質としては、LiFePOを用いることが提案されている。
特開平10−308222号公報 WO2013/172007号公報 特表2010−517238号公報 WO2013/129182号公報
しかしながら、保護層付きの集電体と、第一正極活物質と第一正極活物質よりも充放電電位が低く抵抗が高い、球形状の第二正極活物質とを含む正極活物質層とを有する正極の電極抵抗が、保護層がない集電体と上記正極活物質層とを有する正極の電極抵抗に比べて、理由は不明であるが、大幅に高くなることが判明した。電極抵抗が高いと、リチウムイオン二次電池の本来有する出力が充分に発揮できないおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、電極抵抗が高くなるのを抑制し、良好な安全性と、良好な出力特性を両立するリチウムイオン二次電池用正極及びその正極を有するリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明の発明者等は、鋭意研究の結果、リチウムイオン二次電池用正極が、保護層として導電性粒子と導電性粒子層用バインダーとを有する導電性粒子層を有し、かつ第二正極活物質の最長部分の長さをL1とし、最長部分の長さの長さ方向に対して直交する方向の最長の長さをL2としたときのL1/L2の比率をアスペクト比とした場合、アスペクト比の平均値が3以上10以下である第二正極活物質を有することにより、リチウムイオン二次電池用正極の電極抵抗の増加を抑制できることを見いだした。
すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、集電体と、集電体の表面に配置された導電性粒子層と、導電性粒子層の表面に配置された正極活物質層と、を有し、導電性粒子層は、導電性粒子と、導電性粒子層用バインダーとを有し、導電性粒子は、酸化インジウム、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、酸化錫(II)、酸化錫(IV)、酸化錫(VI)、窒化ゲルマニウム、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ニオブ、窒化バナジウム、窒化タングステン、元素Xドープ酸化インジウム(元素XはZn、Mo、W、Ti、Zr、Sn及びHから選ばれる少なくとも一種である)、元素Yドープ酸化錫(IV)(元素YはF、W、Ta、Sb、P及びBから選ばれる少なくとも一種である)並びに元素Zドープ酸化亜鉛(元素ZはGa、Al及びBから選ばれる少なくとも一種である)から選ばれる少なくとも1つであり、正極活物質層は、第一正極活物質と第一正極活物質よりも充放電電位が低く抵抗が高い第二正極活物質とを含み、第二正極活物質の最長部分の長さをL1とし、最長部分の長さの長さ方向に対して直交する方向の最長の長さをL2としたときのL1/L2の比率をアスペクト比とした場合、アスペクト比の平均値が3以上10以下であることを特徴とする。
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、上記リチウムイオン二次電池用正極を備えたことを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、上記導電性粒子層と、アスペクト比の平均値が3以上10以下の第二正極活物質とを有することにより、電極抵抗の増加を抑制できる。その理由は、第二正極活物質と導電性粒子層との接触面積が大きくなるためであると考えられる。接触面積が大きくなることによって導電性粒子層と正極活物質層との界面抵抗が小さくなり、電極抵抗の増加を抑制すると推測される。またその正極を有するリチウムイオン二次電池は、良好な出力特性を有する。また本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、導電性粒子層が集電体の表面に配置されているため、集電体が良好に保護される。正極活物質として、第一正極活物質と、第一正極活物質よりも充放電電位が低く抵抗が高い第二正極活物質とを用いることで、短絡時に正極内を多量の電流が急激に流れることが防止でき、リチウムイオン二次電池の短絡時の電池発熱を抑制できる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極を説明する断面模式図である。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
<リチウムイオン二次電池用正極>
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、集電体と、集電体の表面に配置された導電性粒子層と、導電性粒子層の表面に配置された正極活物質層とを有する。
(集電体)
集電体は、リチウムイオン二次電池の放電または充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体をいう。
集電体の材料として、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、アルミニウム、銅などの金属または導電性樹脂を挙げることができる。特に、電気伝導性、加工性、価格の面から、アルミニウム製の集電体が好ましい。アルミニウム製であるとは、純アルミニウム又はアルミニウム合金からなることを指す。
純度99.0%以上のアルミニウムを純アルミニウムと称し、またアルミニウムに種々の元素を添加して合金としたものをアルミニウム合金と称す。アルミニウム合金としては、例えば、Al−Cu系、Al−Mn系、Al−Fe系、Al−Si系、Al−Mg系、AL−Mg−Si系、Al−Zn−Mg系が挙げられる。またアルミニウム合金としては、例えばJIS A1085、A1N30等のA1000系合金(純アルミニウム系)、JIS A3003、A3004等のA3000系合金(Al−Mn系)、JIS A8079、A8021等のA8000系合金(Al−Fe系)が挙げられる。
集電体の形状としては、箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。集電体の形状として、例えば箔を好適に用いることができる。
集電体が箔、シート又はフィルムの場合は、集電体の厚みは、10μm〜100μmであることが好ましく、15μm〜25μmであることがさらに好ましい。
集電体は、その表面の不純物をあらかじめ取り除いておくことが好ましい。集電体の表面に例えば油脂類が付着していると、導電性粒子層の密着性が悪くなるおそれがある。そのため集電体は脱脂処理済みの集電体を使用することが好ましい。脱脂処理としては、例えば加熱処理、コロナ処理、プラズマ処理などが挙げられる。
(導電性粒子層)
導電性粒子層は、導電性粒子と、導電性粒子層用バインダーとを有する。必要に応じて導電性粒子層は、導電性粒子を分散させるための分散剤、塗膜の取り扱いを向上させるための粘度調整剤、塗液に発生する泡を管理するための消泡材などを含んでもよい。分散剤、粘度調整剤、消泡剤等は市販品を適宜使用すればよい。
導電性粒子は、酸化インジウム、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、酸化錫(II)、酸化錫(IV)、酸化錫(VI)、窒化ゲルマニウム、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ニオブ、窒化バナジウム、窒化タングステン、元素Xドープ酸化インジウム(元素XはZn、Mo、W、Ti、Zr、Sn及びHから選ばれる少なくとも一種である)、元素Yドープ酸化錫(IV)(元素YはF、W、Ta、Sb、P及びBから選ばれる少なくとも一種である)並びに元素Zドープ酸化亜鉛(元素ZはGa、Al及びBから選ばれる少なくとも一種である)から選ばれる少なくとも1つである。
上記導電性粒子は、導電性があり、有機溶剤耐性があり、酸化還元反応に対して耐腐食性があり、反応活性が低い。また上記導電性粒子は、自身が燃焼しにくく、アルミニウムと反応しにくい。上記導電性粒子は、導電性があるため、リチウムイオン二次電池の抵抗となりにくい。
集電体は表面に導電性粒子層が配置されているため、電解液と集電体とが直接接触することが抑制され、集電体の電解液及び/又は電解塩による腐食を抑制できる。
上記導電性粒子を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
導電性粒子としては、特に酸化錫(IV)にSbが添加されたアンチモンドープ酸化錫(IV)(略称ATO)が好ましい。ATOは電気伝導性が高く、かつ大気中の酸素、電解液及び電解塩に耐性があり、また高電圧においてもその耐性は発揮される。導電性粒子の電気伝導性が高い方が正極の抵抗上昇を抑制しやすく、リチウムイオン二次電池の容量が低下するのを抑制しやすい。ATOのアンチモンのドープ量の割合は0質量%より多く20質量%以下が好ましく、5質量%〜16質量%であることがさらに好ましい。アンチモンのドープ量の割合が大きい方が、ATOの電気伝導性は高い。しかしながらアンチモンのドープ量の割合が20質量%を超えると、ATOの電気伝導性はアンチモンの量に比例するようには上がらない。
導電性粒子の形状としては、球形状、扁平形状、多角形状等が挙げられる。導電性粒子の形状は、球形状であることが好ましい。導電性粒子の形状が球形状であれば、導電性粒子層の厚みを一定としやすく、導電性粒子層の集電体への被覆ムラを少なくしやすい。
導電性粒子の平均粒径D50は、10nm〜1000nmであることが好ましく、20nm〜100nmであることがより好ましく、50nm〜80nmであることがさらに好ましい。導電性粒子の平均粒径D50が小さすぎると、導電性粒子間の抵抗の上昇により、導電性粒子層が適切な導電性を有しにくいおそれがある。導電性粒子の平均粒径D50が大きすぎると、導電性粒子層が厚くなりすぎるおそれがある。平均粒径D50は粒度分布測定法によって計測できる。平均粒径D50とはレーザー回析法による粒度分布測定における体積分布の積算値が50%に相当する粒子径のことである。つまり、平均粒径D50とは、体積基準で測定したメディアン径を意味する。
導電性粒子層用バインダーは、導電性粒子同士を結着し、導電性粒子と集電体とを結着する。導電性粒子層用バインダーはリチウムイオン二次電池に用いることができるバインダーであれば特に限定されない。
導電性粒子層用バインダーとして、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(略称FEP)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸などのアクリル系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリルを例示することができる。これらの導電性粒子層用バインダーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
導電性粒子層用バインダーとして、ポリアクリル酸、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレングリコールが好ましく用いられる。これらの導電性粒子層用バインダーは、集電体への密着性に優れ、また集電体への塗工性に優れている。
導電性粒子と導電性粒子層用バインダーの配合比は、質量比で導電性粒子:導電性粒子層用バインダー=50:50〜99:1であることが好ましい。導電性粒子:導電性粒子層用バインダー=80:20〜95:5であることがさらに好ましい。この範囲内の配合比とすれば、導電性粒子層において、導電性粒子層用バインダーの割合が少なすぎると導電性粒子同士及び導電性粒子と集電体とが結着されにくくなるおそれがある。また導電性粒子層用バインダーの割合が多すぎると、導電性粒子層によって電極の抵抗が上昇するおそれがある。
導電性粒子層の厚みは10nm〜1000nmであることが好ましく、20nm〜500nmであることがより好ましく、50nm〜200nmであることがさらに好ましい。導電性粒子層の厚みが小さすぎると、導電性粒子層による集電体の保護の効果が得にくくなるおそれがある。導電性粒子層の厚みが大きすぎると、正極内において、導電性粒子層の占める体積が大きくなりすぎて活物質の量を減らさなければならなくなり、電池容量が低下するおそれがある。
導電性粒子層において、導電性粒子同士の間、導電性粒子と導電性粒子層用バインダーの間、導電性粒子と集電体との間などに空隙が形成される。導電性粒子層の空隙率は、5%〜50%が好ましく、10%〜45%がより好ましく、15%〜40%がさらに好ましい。
導電性粒子層の空隙率が少なすぎると電極の抵抗が高くなるおそれがある。また下記で説明するが、導電性粒子層の空隙率が少なすぎると、第二正極活物質と導電性粒子層との接触面積が特に高くなると考えられる針形状である第二正極活物質の一部が空隙に入り込む形態がとりにくくなるおそれがある。導電性粒子層の空隙率が多すぎると、導電性粒子層による集電体の保護の効果が得にくくなるおそれがある。
導電性粒子層の空隙率は、以下のようにして算出することができる。導電性粒子層の所定範囲の断面を観察し、導電性粒子層全体の面積および空隙部分の面積を算出する。空隙率は空隙部分の面積を導電性粒子層全体の面積で除し、100を掛けることにより求める。複数個の所定範囲の断面で得られた各空隙率を平均化することで、求める空隙率としてもよい。例えば、導電性粒子層の断面観察結果の幅1μmの視野を計10視野観察し、平均した数値を空隙率として算出してもよい。
断面観察結果は、正極の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、電子線後方散乱回折(EBSD)などで測定して得られる。上記断面観察結果の画像に対し、画像解析ソフトを用いて解析してもよい。
また導電性粒子層の表面は導電性粒子の配置により凹凸が形成される。この凹凸の大きさは特に限定されない。
下記で詳細に説明するが、導電性粒子層に空隙があること及び導電性粒子層の表面に凹凸があることにより、アスペクト比の平均値が3以上10以下の第二正極活物質の一部が導電性粒子層に入り込むことができる場合がある。その場合は特に導電性粒子層と正極活物質層の接触面積が大きくなるため、電極抵抗の低減効果が大きい。
集電体へ導電性粒子層を配置する方法は、特に限定されないが、以下の方法が採用できる。溶媒に導電性粒子用バインダー及び導電性粒子を混合して導電性粒子層用スラリーとする。
溶媒は水または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、エタノール、メタノール、ベンゼン、ジクロロメタンなどが使用可能である。水は少量の無機塩などを含み、pHがpH4〜pH9の範囲のものでも使用できる。しかしながら使用する集電体の腐食の観点から、水は、蒸留水やイオン交換水などの、不純物を取り除いたpHがpH6〜pH8のものが好ましい。また溶媒として有機溶媒と水を任意の比率で混合したものを用いてもよい。
ここで、導電性粒子層用スラリーにおいて導電性粒子が分散していることが好ましい。導電性粒子が分散していると、できあがった導電性粒子層において導電性粒子が導電性粒子層全体に配置されやすい。導電性粒子層用スラリーにおいて導電性粒子を分散させるには、溶媒が水である場合、有機物である導電性粒子層用バインダーの添加量を導電性粒子が凝集しないように適宜調整すればよい。
次に集電体に導電性粒子層用スラリーを塗布する。塗布方法としては、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法、グラビアコート法などの従来から公知の方法を用いればよい。
その後、導電性粒子層用スラリーを塗布した集電体を乾燥して、導電性粒子層を集電体の表面に配置する。
(正極活物質層)
正極活物質層は導電性粒子層の表面に配置される。
正極活物質層は、第一正極活物質と第一正極活物質よりも充放電電位が低く抵抗が高い第二正極活物質とを含む。正極活物質層は、必要に応じて結着剤及び導電助剤を含んでもよい。
(第一正極活物質)
第一正極活物質としては、リチウムイオン二次電池の正極活物質として機能する公知の材料を採用すればよい。第二正極活物質の充放電電位が第一正極活物質の充放電電位よりも低いため、実質的に第一正極活物質が正極の充放電の役割を担う。
第一正極活物質として、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る正極活物質を用いることができる。具体的な第一正極活物質としては、例えば、リチウム金属複合酸化物が挙げられる。
リチウム金属複合酸化物としては、層状岩塩構造を有するリチウム金属複合酸化物、スピネル構造を有するリチウム金属複合酸化物及び層状岩塩構造をもつリチウム金属複合酸化物とLiMn等のスピネル構造をもつリチウム金属複合酸化物との混合物で構成される固溶体が挙げられる。
層状岩塩構造を有するリチウム金属複合酸化物としては、式(1)で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が好ましい。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を以下NCMと称すことがある。
LiNiCoMn(1−b−c−d) (2−e)・・・・・(1)
(式(1)中、Mは、Mg、Al、B、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Zr、Mo、Sn、Ca、Sr及びWからなる群のうちの少なくとも1種を表し、a、b、c、d及びeは、0.8≦a≦1.2、0<b≦0.5、0<c≦0.5、0≦d≦0.5、b+c+d<1、−0.1≦e≦0.2の範囲内の値である。)
層状岩塩構造を有する上記化合物としては、例えば、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiCoO、LiNi0.8Co0.2、LiCoMnOが挙げられる。中でもLiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3は、熱安定性の点で好ましい。
またスピネル構造をもつリチウム金属複合酸化物としては、一般式:Lix(AyMn2-y)O4(Aは、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、Geから選ばれる少なくとも1の元素、及び遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素、0<x≦2.2、0≦y≦1)で表される化合物が挙げられる。
スピネル構造をもつリチウム金属複合酸化物の具体例としては、LiMn及びLiNi0.5Mn1.5が挙げられる。
第一正極活物質はその平均粒径D50が1μm〜20μmである粉末形状であることが好ましい。第一正極活物質の平均粒径D50が小さいと、第一正極活物質の比表面積が大きくなる。このため、第一正極活物質の平均粒径D50が小さすぎると第一正極活物質と電解液との反応面積が過度に増えることになり、その結果、電解液の分解が促進されて、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が悪くなるおそれがある。第一正極活物質の平均粒径D50が大きすぎると、リチウムイオン二次電池の抵抗が大きくなるおそれがある。リチウムイオン二次電池の抵抗が大きくなると、リチウムイオン二次電池の出力特性が下がるおそれがある。
(第二正極活物質)
第二正極活物質は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として機能できる材料であって、上記第一正極活物質よりも充放電電位が低く抵抗が高い材料である。リチウムイオン二次電池用正極に第二正極活物質が存在すると、リチウムイオン二次電池の正極と負極の短絡時であっても、リチウムイオン二次電池の発熱を抑制することができる。
例えば、第一正極活物質がリチウム金属複合酸化物の場合、第二正極活物質としては、具体的に、リチウムホスフェート系材料、リチウムシリケート系材料が挙げられる。このうち、第二正極活物質としては、リチウムホスフェート系材料が好ましい。リチウムホスフェート系材料はオリビン型構造を持つ。オリビン型構造を有するリチウムホスフェート系材料は、リンと酸素との結合が強いため高温でも酸素の脱離が起こりにくく、熱安定性が高い。またリチウムホスフェート系材料を含む正極は、リチウムイオン二次電池において短絡により電圧降下した後に電圧が復帰する傾向にある。
リチウムホスフェート系材料としては、一般式:LiMPO(MはMn,Fe,Co,Ni,Cu,Mg,Zn,V,Ca,Sr,Ba,Ti,Al,Si,B,Te及びMoから選ばれる少なくとも1の元素、0<h<2)で表される材料が挙げられる。
またリチウムホスフェート系材料としては、下記式(2)で表されるリン酸鉄リチウム化合物が好ましい。
LiFe (1−q)PO・・・・・(2)
(式(2)中、Mは、Co、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、W及Zrからなる群のうちの少なくとも1種を表す。pは、0.9≦p≦1.1の範囲内の値である。qは、0<q≦1の範囲内の値である。)
具体的には、リチウムホスフェート系材料として、LiFePO、LiMnPO、LiVPO、LiNiPO、LiCoPO、LiTePO、LiV2/3PO、LiFe2/3PO、LiMn7/8Fe1/8POが挙げられる。
第二正極活物質としては、特にリン酸鉄リチウム化合物であるLiFePOが好ましい。その理由は次のとおりである。LiFePOは放電時に比較的平坦な放電曲線を示す。そうすると、仮に、リチウムイオン二次電池の正極と負極が短絡して急激な放電が生じたとしても、LiFePOの存在箇所では放電に伴う急激な電位差が生じない。そのため、電極内の他の箇所からの電荷移動を誘起しにくく、過電流の発生を抑制することができる。その結果、リチウムイオン二次電池の発熱を好適に抑制することができる。
第二正極活物質として用いることができるリチウムシリケート系材料は、組成式:Li2+a−b1−βM’βSi1+α4+c(式中、Aは、Na、K、Rb、及びCsからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、Mは、Fe及びMnからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、M’は、Mg、Ca、Co、Al、Ni、Nb、Ti、Cr、Cu、Zn、Zr、V、Mo及びWからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素である。各添字は次のとおりである。0≦α≦0.2、0≦β≦0.5、0≦a<1,0≦b<0.2,0<c<0.3)で表される化合物が挙げられる。上記組成式は、リチウムシリケート系材料の基本組成を示す。上記組成式の中の、Li、A、M、M’、Si、Oの一部が他の元素で置換されていてもよい。不可避的に生じるLi、A、M、M’、Si又はOの欠損や化合物の酸化により、リチウムシリケート系材料の組成は上記組成式からわずかにずれてもよい。リチウムシリケート系材料としては、例えば、LiFeSiO、LiMnSiO4、LiCoSiO、LiNiSiOが挙げられる。
第二正極活物質としては、その表面を炭素材料で被覆したものを採用するのが好ましい。炭素材料として、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(登録商標)(KB)、カーボンナノチューブ、グラフェーン、炭素繊維、黒鉛等が挙げられる。
第二正極活物質の最長部分の長さをL1とし、最長部分の長さの長さ方向に対して直交する方向の最長の長さをL2としたときのL1/L2の比率をアスペクト比とした場合、アスペクト比の平均値が3以上10以下である。アスペクト比の平均値は4以上8以下であることが好ましく、4以上6以下であることがさらに好ましい。
第二正極活物質のL1やL2は、断面観察によって測定できる。個々の第二正極活物質の断面観察により、L1及びL2を測定し、L1/L2を計算する。そして複数の第二正極活物質のL1/L2から平均値を算出することによって上記アスペクト比の平均値が得られる。観察する第二正極活物質の個数は、各断面観察によって得られる画像のサイズによって適宜選択すればよい。
断面観察は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、電子線後方散乱回折(EBSD)などで測定して得られる画像に基づき、行えばよい。上記画像に対し、画像解析ソフトを用いて解析してもよい。
第二正極活物質のSEMによる断面観察では、第二正極活物質の断面形状は、例えば、棒形状、針形状、楕円形状などの形状で観察される。アスペクト比の平均値が3より小さいと、第二正極活物質の断面形状が真円形状またはそれに近い形状となり、アスペクト比が10より大きいと第二正極活物質の断面形状が繊維形状に近い形状となる。
第二正極活物質のアスペクト比の平均値が1に近づくと第二正極活物質の形状は球形状となる。第二正極活物質の形状が球形状の場合、第二正極活物質と導電性粒子層との接触は点接触になる。特に導電性粒子層の表面の凹凸や空隙の大きさより第二正極活物質の平均粒径D50が大きい場合は、導電性粒子層の凹凸や空隙に第二正極活物質が入り込むことは難しい。そのため、ほとんどの第二正極活物質は導電性粒子層の表面に点接触で接触している。また導電性粒子層の表面の凹凸や空隙の大きさより第二正極活物質の平均粒径D50が小さい場合は、球形状の第二正極活物質が導電性粒子層に入り込むことが考えられる。しかしながら、その場合、導電性粒子層に入り込んだ第二正極活物質は正極活物質層との他の成分との接触はやはり点接触になると考えられる。
一方、第二正極活物質のアスペクト比の平均値が大きすぎると、第二正極活物質の形状は繊維形状となる。そのため、第二正極活物質と導電性粒子層との接触は線接触になる。
これに対して、第二正極活物質の断面形状が、例えば、棒形状、針形状、楕円形状などの形状で観察される場合、第二正極活物質は、針形状になっていると考えられる。この場合、第二正極活物質は導電性粒子層の表面に面接触で接触している。
特に導電性粒子層の表面の凹凸や空隙の大きさよりも、針形状である第二正極活物質の一部の大きさが小さい場合は、導電性粒子層の凹凸や空隙に第二正極活物質が入り込むことができる。その場合は、特に導電性粒子層と第二正極活物質との接触面積が大きくなる。また第二正極活物質の一部が導電性粒子層に入り込んでいても第二正極活物質の他の一部は正極活物質層に含まれており、導電性粒子層と正極活物質層の他の成分との接触面積も大きい。
導電性粒子層と正極活物質層とはアスペクト比の平均値が3以上10以下である第二正極活物質を介してその界面の接触面積が大きくなり、導電性粒子層と正極活物質層の界面抵抗が小さくなると推測される。また導電性粒子層と正極活物質層の界面の接触面積が大きくなることにより、導電性粒子層と正極活物質層との結着性も高くなる。
図1に本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極を説明する断面模式図を示す。図1において、集電体1の表面に導電性粒子層2が配置されている。導電性粒子層2の表面に正極活物質層3が配置されている。導電性粒子層2には、導電性粒子21と導電性粒子層用バインダー22とが含まれる。正極活物質層3には第一正極活物質31と第二正極活物質32とが含まれる。図1において、第二正極活物質32の断面形状を細長い楕円形状で示した。導電性粒子層2の表面には導電性粒子21による凹凸が形成される。図1において、導電性粒子層2の表面の凹凸に第二正極活物質32の端部が入り込んでいる。そのため、導電性粒子層2と正極活物質層3の界面の接触面積は大きくなり、導電性粒子層2と正極活物質層3との界面は第二正極活物質32によって接触抵抗が小さくなっていると推測される。また導電性粒子層2と正極活物質層3の界面の結着性も高くなると考えられる。
第二正極活物質の平均粒径D50は第一正極活物質の平均粒径D50よりも小さいことが好ましい。
第二正極活物質の平均粒径D50は、0.5μm以上5μm以下であることが好ましく、1μm以上3μm以下であることがより好ましく、1μm以上2μm以下であることがさらに好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極において第一正極活物質と第二正極活物質の合計質量を100質量%としたときに、第二正極活物質の配合割合は、20質量%以上40質量%以下であることが好ましい。第二正極活物質の配合割合が多すぎると、第一正極活物質の配合割合が少なくなって正極の電池容量が少なくなるおそれがあり、第二正極活物質の配合割合が少なすぎると、電池の発熱を抑制する効果が少なくなるおそれがある。第二正極活物質の配合割合は、22質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極において、正極活物質層全体を100質量%とした場合、第一正極活物質と第二正極活物質との合計質量の割合は85質量%以上99質量%以下であることが望ましく、90質量%以上99質量%以下であることがより望ましい。正極活物質層には、電池の容量を出すために、なるべく多くの正極活物質が含まれることが望ましい。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)、および各種金属粒子などが例示される。これらの導電助剤を単独または二種以上組み合わせて正極活物質層に添加することができる。
導電助剤はその形状が特に制限されるものではないが、その役割からみて、平均粒子径は小さいほうが好ましい。導電助剤の平均粒径D50は、10μm以下であることが好ましい。導電助剤の平均粒径D50は、0.01μm〜1μmであることがさらに好ましい。
正極活物質層における導電助剤の配合量を挙げると、0.5質量%〜10質量%の範囲内が好ましく、1質量%〜7質量%の範囲内がより好ましく、2質量%〜5質量%の範囲内が特に好ましい。
結着剤は、正極活物質や導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止める役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(略称FEP)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸などのアクリル系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリルが挙げられる。
正極活物質層における結着剤の配合量を挙げると、0.5質量%〜10質量%の範囲内が好ましく、1質量%〜7質量%の範囲内がより好ましく、2質量%〜5質量%の範囲内が特に好ましい。結着剤の配合量が少なすぎると組成物を正極活物質層とした場合に正極活物質層の成形性が低下するおそれがある。また、結着剤の配合量が多すぎると、正極活物質層における正極活物質の量が減少するため、電極のエネルギー密度が低くなるおそれがある。
上記導電性粒子層の表面に正極活物質層を配置するには、以下の方法が挙げられる。
まず第一正極活物質、第二正極活物質及び必要に応じて結着剤、導電助剤を含む正極活物質層形成用組成物を調製し、この組成物に適当な溶媒を加えてスラリーとする。
スラリーとするには各成分を同時にまたは順に加えて混合装置で混合すればよい。混合装置としては、混合攪拌機、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、分散機、超音波分散機、ホモジナイザー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー、遊星式攪拌脱泡装置が挙げられる。混合装置における混合速度は、組成物の各成分が好適に分散若しくは溶解できる速度を適宜設定すればよい。結着剤は、あらかじめ結着剤を溶媒に溶解させた溶液又は分散させた懸濁液としてから用いてもよい。
上記溶媒としては、水、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メタノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)が挙げられる。
上記スラリーを導電性粒子層の表面に塗布後、乾燥する。上記スラリーを塗布する方法としては、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法、リップコート法、コンマコート法、ダイコート法などが挙げられる。乾燥は、常圧条件で行ってもよいし、真空乾燥機を用いた減圧条件下で行ってもよい。乾燥温度は適宜設定すればよく、上記溶媒の沸点以上の温度が好ましい。乾燥時間は塗布量及び乾燥温度に応じ適宜設定すればよい。
正極活物質層の密度を高めるべく、乾燥後に、正極活物質層を形成させた後の集電体に対し、圧縮を加えてもよい。圧縮は、圧縮装置で行えばよい。圧縮装置としては、ロールプレス機、真空プレス機、水圧プレス機、油圧プレス機を挙げることができる。圧縮装置における圧縮圧力としては、例えば、1kN〜5000kNの範囲を挙げることができる。
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極を有する。本発明のリチウムイオン二次電池は、電池構成要素として、上記正極、負極、セパレータ、電解液を有する。
(負極)
負極は、集電体と、集電体の表面に結着させた負極活物質層を有する。負極活物質層は、負極活物質、結着剤を含み、必要に応じて導電助剤を含む。集電体、結着剤、導電助剤は正極で説明したものと同様である。
負極活物質としては、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料、リチウムと合金化可能な元素、リチウムと合金化可能な元素を有する化合物、あるいは高分子材料などを用いることができる。
炭素系材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、人造黒鉛、天然黒鉛、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭あるいはカーボンブラック類が挙げられる。ここで、有機高分子化合物焼成体とは、フェノール類やフラン類などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。
リチウムと合金化可能な元素は、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Biの少なくとも一種である。中でも、リチウムと合金化可能な元素は、珪素(Si)又は錫(Sn)であるとよい。
リチウムと合金化可能な元素を有する化合物としては、例えば、ZnLiAl、AlSb、SiB、SiB、MgSi、MgSn、NiSi、TiSi、MoSi、 CoSi、NiSi、CaSi、CrSi、CuSi、FeSi、MnSi、NbSi、TaSi、VSi、WSi、ZnSi、SiC、Si、SiO、SiO(0<v≦2)、SnO(0<w≦2)、SnSiO、LiSiO あるいはLiSnOが挙げられる。リチウムと合金化可能な元素を有する化合物としては、珪素化合物又は錫化合物が好ましい。珪素化合物としては、SiO(0.5≦x≦1.6)が好ましい。錫化合物としては、スズ合金(Cu−Sn合金、Co−Sn合金等)を例示できる。
高分子材料としては、ポリアセチレン、ポリピロールを例示できる。
負極活物質は粉末形状であることが好ましい。負極活物質が粉末形状の場合、負極活物質の平均粒径D50は0.5μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上20μm以下であることがより好ましい。負極活物質の平均粒径D50が小さすぎると、負極活物質の粉末の比表面積が大きくなり、負極活物質の粉末と電解液との接触面積が大きくなって、電解液の分解が進んでしまい、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が悪くなるおそれがある。負極活物質の平均粒径D50が大きすぎると、電極全体の導電性が不均一になり、充放電特性が低下するおそれがある。
(セパレータ)
セパレータは正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータは、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、あるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、又はセラミックス製の多孔質膜が使用できる。
(電解液)
電解液は、溶媒とこの溶媒に溶解された電解質とを含んでいる。
溶媒として、例えば、環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類が使用できる。環状エステル類として、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンが使用できる。鎖状エステル類として、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステルが使用できる。エーテル類として、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンが使用できる。
また上記電解液に溶解させる電解質として、例えば、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO等のリチウム塩を使用することができる。
電解液として、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの溶媒にLiClO、LiPF、LiBF、LiCFSOなどのリチウム塩を0.5mol/lから1.7mol/l程度の濃度で溶解させた溶液を使用することができる。
正極および負極にセパレータを挟装させ電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極用集電体から外部に通ずる正極タブ部及び負極用集電体から外部に通ずる負極タブ部までの間を、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、電極に含まれる活物質の種類に適した電圧範囲で充放電を実行されればよい。
上記リチウムイオン二次電池は車両に搭載することができる。
車両としては、電池による電気エネルギーを動力源の全部又は一部に使用する車両であればよく、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、電動フォークリフト、電気車椅子、電動アシスト自転車、電動二輪車が挙げられる。
以上、本発明のリチウムイオン二次電池用正極及び本発明のリチウムイオン二次電池の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
<導電性粒子層形成の準備>
厚み15μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製)を準備した。準備したアルミニウム箔を120℃大気中にて12時間加熱し、アルミニウム箔の表面の油脂類を低減させた。
導電性粒子として、平均粒径D50が30nmのアンチモンドープ酸化錫(以下ATOと称す)を準備した。このATOは、SnO/Sb=90/10(質量比)のものであり、ATO中のアンチモンのドープ量は7.5質量%であった。ATOの粉末形状は球形状であった。
導電性粒子層用バインダーとして和光純薬工業株式会社製ポリアクリル酸(以下、PAAと称す。)(重量平均分子量5000)を準備した。また粘度調整溶媒としてイオン交換水を準備した。
<導電性粒子層用スラリーの作製>
ATO:PAAの質量比が90:10となるように、ATOとPAAとイオン交換水とを混合して固形分4%の導電性粒子層用スラリーを作成した。
<集電体の準備>
(集電体A)
脱脂処理済みの厚み15μmのアルミニウム箔そのものを集電体Aとした。
(集電体B)
脱脂処理済みの厚み15μmのアルミニウム箔に、導電性粒子層用スラリーをマイクログラビアコーターを用いて塗布した。導電性粒子層用スラリーの塗布後のアルミニウム箔を100℃で乾燥した。得られた導電性粒子層の厚みは、ほぼ100nmであった。この導電性粒子層が配置された集電体を集電体Bとした。
集電体BのSEM断面観察から求めた導電性粒子層の空隙率は30%であった。断面観察結果の幅1μmの視野を計10視野観察し、平均した数値を空隙率として算出した。
<正極の作製>
第一正極活物質として、平均粒径D50が6μmのLiNi0.5Co0.2Mn0.3(以下、NCMと称す。)を準備した。第二正極活物質として、針形状のLiFePOと球形状のLiFePOを準備した。針形状のLiFePOを針形状LFP、球形状のLiFePOを球形状LFPと称す。針形状LFP及び球形状LFPは両方とも炭素材料で表面が被覆されていた。針形状LFP及び球形状LFPの平均粒径D50は両方とも1.5μmであった。
(実施例1の正極)
実施例1の正極を次のようにして作製した。第一正極活物質としてNCMと、第二正極活物質として針形状LFPと、導電助剤としてアセチレンブラックと、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、それぞれ69質量部、25質量部、3質量部、3質量部として混合し、この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて、正極活物質層用スラリーを作製した。
上記集電体Bに正極活物質層用スラリーをのせ、コンマコーターを用いてスラリーが膜状になるように塗布した。スラリーを塗布した集電体Bを90℃で5分間乾燥してNMPを揮発させて除去した。ロ−ルプレス機により、集電体と集電体上の塗布物を強固に密着接合させた。この時、正極活物質層の密度は2.9g/cmとなるようにした。ここでいう正極活物質層の密度とは、正極活物質層の質量(g)÷正極活物質層の厚み(cm)÷正極活物質層の面積(cm)とした。接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱した後、正極活物質層の厚さが90μm程度の正極とした。これを実施例1の正極とした。
(比較例1の正極)
集電体Bに換えて集電体Aを用いた以外は実施例1の正極と同様にして比較例1の正極を得た。
(比較例2の正極)
第二正極活物質として針形状LFPの代わりに球形状LFPを用いた以外は実施例1の正極と同様にして比較例2の正極を得た。
(比較例3の正極)
集電体Bに換えて集電体Aを用いた以外は比較例2の正極と同様にして比較例3の正極を得た。
<電極抵抗の測定>
実施例1及び比較例1〜3の正極の電極抵抗を測定した。
株式会社井元製作所製電極抵抗測定器IM−0240型(測定電極:φ16mm、電極荷重:5kg)を用いて各正極の厚み方向の電極抵抗を測定した。電極抵抗の測定はn=5で行い、その平均値を算出した。結果を表1に記す。
<剥離強度の測定>
実施例1及び比較例1〜3の正極の剥離強度を測定した。試験方法はJIS Z 0237に準拠した。試験方法について詳細に述べると、活物質層側を下向きにして台座に粘着テープで接着し、正極を上向きに90度の方向に引張試験機で引っ張ることにより剥離強度を測定した。剥離強度の測定はn=1で行った。結果を表1に示す。実施例1及び比較例2の正極の剥離面はどちらも正極活物質層と導電性粒子層の界面であった。比較例1及び比較例3の正極の剥離面はどちらも正極活物質層と集電体Aとの界面であった。
<第二正極活物質のアスペクト比の測定>
実施例1及び比較例2の正極の断面観察を走査型電子顕微鏡(以下、SEMと称す。)で行い、そのSEM断面写真から針形状LFPと球形状LFPのアスペクト比を測定した。針形状LFPのアスペクト比は1.5〜10であり、アスペクト比の平均値は5であった。球形状LFPのアスペクト比は1〜3であり、アスペクト比の平均値は2であった。
<断面観察>
実施例1の正極のSEM断面写真から、実施例1の正極の断面では、導電性粒子層の導電性粒子間にできた空隙や凹凸に第二正極活物質の先端部分が入り込んで、導電性粒子層に第二正極活物質が食い込んでいる様子が観察された。比較例2の正極の断面観察では、導電性粒子層に第二正極活物質が食い込む様子は観察されなかった。導電性粒子層の表面の凹凸の大きさよりも第二正極活物質の粒径が大きかったため導電性粒子層に第二正極活物質は食い込めなかったと考えられる。
Figure 0006638286
表1の結果から、比較例2と比較例3の正極の電極抵抗を比較すると比較例2の正極の電極抵抗が大きかった。つまり、球形状の第二正極活物質を用い、導電性粒子層を配置した集電体を用いると電極抵抗が大幅に増加した。導電性粒子層は集電体そのものと比べて高抵抗となることから、球形状の第二正極活物質と導電性粒子層との接触面積と球形状の第二正極活物質と集電体との接触面積とが同等であるため、比較例2の正極の電極抵抗が増加したと推測される。
それに対して比較例1と実施例1の正極の電極抵抗を比べると、実施例1の正極の電極抵抗が比較例1の正極の電極抵抗に比べて大幅に小さかった。実施例1の正極では、導電性粒子層と針形状の第二正極活物質の間で接触面積が増加したことにより、良好な導電パスが形成され、電極抵抗が小さくなったことが推測される。
また剥離強度を見ると、実施例1の正極の剥離強度が比較例1〜3の正極の剥離強度に比べて大幅に大きくなった。上記したように実施例1の正極のSEM断面写真によれば、実施例1の正極では第二正極活物質が導電性粒子層に食い込んでいるところが観察された。このことから導電性粒子層と針形状の第二正極活物質の間で接着面積が増加し、剥離強度が大幅に大きくなったものと考えられる。一方、比較例2と比較例3の正極では、剥離強度は同等の値を示した。そのため、比較例2及び比較例3の正極では、正極活物質層と導電性粒子層の接着面積と正極活物質層と集電体Aとの接着面積がほとんど変わらないと考えられる。
この剥離強度の結果は、電極抵抗における接触面積の結果を支持する結果である。実施例1の正極の電極抵抗と比較例2の正極の電極抵抗とを比べると、実施例1の正極の電極抵抗が大幅に低い。実施例1の正極の剥離強度が比較例2の正極の剥離強度よりも大幅に大きいことから、実施例1の正極では導電性粒子層と針形状の第二正極活物質との接触面積が大きく、比較例2の正極では導電性粒子層と球形状の第二正極活物質との接触面積が小さいために電極抵抗に違いが出たことを裏付ける結果となっている。実施例1の正極の剥離強度が高かったことから、この実施例1の正極を用いたリチウムイオン二次電池は寿命特性が高くなると推測される。
<ラミネート型リチウムイオン二次電池作製>
(正極)
(実施例1Aの正極)
集電体の両面にコンマコーターで塗膜を形成し、所定の形状(正極活物質層面積40mm×80mmの矩形状)に切り取り、正極活物質層の厚さが片面90μm程度の正極とした以外は実施例1の正極と同様の条件で実施例1Aの正極を得た。
(比較例1Aの正極)
集電体Bに換えて集電体Aを用いた以外は実施例1Aの正極と同様にして比較例1Aの正極を得た。
(比較例2Aの正極)
第二正極活物質として針形状LFPの代わりに球形状LFPを用いた以外は実施例1Aの正極と同様にして比較例2Aの正極を得た。
(比較例3Aの正極)
集電体Bに換えて集電体Aを用いた以外は比較例2Aの正極と同様にして比較例3Aの正極を得た。
(負極の作製)
負極活物質として、平均粒子径D50が4μmのSiO及び平均粒子径D50が20μmの天然黒鉛を準備した。バインダー樹脂としてポリアミドイミドを準備した。導電助剤としてアセチレンブラックを準備した。
上記負極活物質、導電助剤及びバインダー樹脂を、SiO:黒鉛:導電助剤:バインダー樹脂=32:50:8:10の質量比で混合した。上記混合物に、溶媒としてNMPを適量入れて調整して、負極活物質層用スラリーとした。
負極用集電体として20μmの銅箔を準備し、銅箔の両面にコンマコーターを用いて、上記負極活物質層用スラリーを膜状に塗布した。負極活物質層用スラリーが塗布された銅箔を80℃で5分間乾燥してNMPを揮発させて除去した後、ロ−ルプレス機により、プレスして接合物を得た。この時、片面の負極活物質層の密度は1.6g/cmとなるようにした。ここでいう負極活物質層の密度とは、負極活物質層の質量(g)÷負極活物質層の厚み(cm)÷負極活物質層の面積(cm)とした。接合物を200℃で2時間、真空乾燥機で加熱した後、所定の形状(負極活物質層面積44mm×84mmの矩形状)に切り取り、負極活物質層の厚さが片面40μmの負極とした。
(実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池の作成)
上記の正極1A30枚および負極31枚を用いて、ラミネート型リチウムイオン二次電池を製作した。詳しくは、各正極および各負極の間に、セパレータとしてポリエチレンからなる矩形状シート(48mm×88mm、厚さ25μm)を挟装して30組積層して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに電解液を注入した。電解液としてエチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)をEC:EMC:DMC=3:3:4(体積比)で混合した溶媒にLiPF6を1モル/lとなるように溶解した溶液を用いた。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたラミネート型リチウムイオン二次電池を得た。なお、正極および負極は外部と電気的に接続可能なタブ部を備え、このタブ部の一部はラミネート型リチウムイオン二次電池の外側に延出している。以上の工程で、実施例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例1のリチウムイオン二次電池)
実施例1Aの正極の代わりに比較例1Aの正極を用いた以外は実施例1のリチウムイオン二次電池と同様にして比較例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例2のリチウムイオン二次電池)
実施例1Aの正極の代わりに比較例2Aの正極を用いた以外は実施例1のリチウムイオン二次電池と同様にして比較例2のリチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例3のリチウムイオン二次電池)
実施例1Aの正極の代わりに比較例3Aの正極を用いた以外は実施例1のリチウムイオン二次電池と同様にして比較例3のリチウムイオン二次電池を作製した。
<リチウムイオン二次電池の容量測定>
実施例1及び比較例1〜3のリチウムイオン二次電池の電池容量を測定した。充電は、25℃において0.33Cレート、電圧4.5VでCCCV充電、CV時間3時間(定電流定電圧充電)をした。放電の際は2.5Vまで、0.33CレートでCC放電を行った。この時の放電容量を測定し、電池容量とした。結果を表2に示す。
<セル抵抗評価>
実施例1及び比較例1〜3のリチウムイオン二次電池のセル抵抗を測定した。セル抵抗(mΩ)は、電圧3.6Vにおいて、1Cレートである6.5A、10秒放電にて測定した。実施例及び各比較例は同じ構成の電池を各2個ずつ作成し、各電池の抵抗を測定し、その平均値を計算した。
実施例1及び比較例1〜3のリチウムイオン二次電池のセル抵抗の平均値の結果を表2に示す。
<釘刺し試験>
実施例1および比較例1〜3のリチウムイオン二次電池について、釘刺し試験による安全性の評価をおこなった。詳しくは、各電池を電流値3.0Aで4.5Vに達するまで定電流(CC)充電した。その後、4.5V±0.02V以内に電圧を維持するようにひきつづき充電を続け、全充電時間が5時間になったら充電を停止した。
上記の充電処理をおこなった各リチウムイオン二次電池を、径20mmの孔を有する拘束板上に配置した。上部に釘が取り付けられたプレス機に拘束板を配置した。釘が拘束板上のリチウムイオン二次電池を貫通して、釘の先端部が拘束板の孔内部に位置するまで、釘を上部から下部に20mm/秒の速度で移動させた。リチウムイオン二次電池には、表面温度を測定可能な温度測定装置を取り付けた。釘はステンレススチール(JIS G 4051で規定するS45C)製、直径φ8mmかつ釘の先端角度60°であった。釘刺し試験は、室温かつ大気中でリチウムイオン二次電池の表面温度を測定しつつ行った。この釘刺し試験によって、リチウムイオン二次電池の正極と負極とが短絡した。
内部短絡時の各リチウムイオン二次電池の表面温度を測定し、電池の様子を観察した。釘貫通後の各リチウムイオン二次電池の表面温度は、いずれも一旦上昇した後に、徐々に低下した。表2には、観測された表面温度のうち、最高温度を記載した。
Figure 0006638286
表2の電池容量より、実施例1のリチウムイオン二次電池の電池容量は比較例1〜3のリチウムイオン二次電池の電池容量より若干高かった。また各リチウムイオン二次電池のセル抵抗は、表1に示した各正極の電極抵抗の傾向と同じ傾向の結果となった。実施例1のリチウムイオン二次電池のセル抵抗は比較例1〜3のリチウムイオン二次電池のセル抵抗よりも小さかった。実施例1のリチウムイオン二次電池のセル抵抗が小さかったので、実施例1のリチウムイオン二次電池の電池容量が若干高くなったと思われる。
また釘刺し試験結果から、実施例1及び比較例1〜3のリチウムイオン二次電池は、いずれも釘刺し試験時に内部短絡しても高い温度に発熱しないことが確認された。正極活物質層内に第一正極活物質と、第一正極活物質よりも充放電電位が低く抵抗が高い第二正極活物質とが含まれることで、短絡時に正極内を大量の電流が急激に流れることが抑制されたと考えられる。実施例1及び比較例1〜3のリチウムイオン二次電池の釘刺し試験の到達温度を比較すると、針形状の第二正極活物質を有する実施例1及び比較例1のリチウムイオン二次電池のほうが、球形状の第二正極活物質を有する比較例2及び比較例3のリチウムイオン二次電池よりも低かった。このことから針形状の第二正極活物質を有するリチウムイオン二次電池のほうが、安全性が高いことがわかった。
以上の結果から、針形状の第二正極活物質を有し、導電性粒子層を有する正極を備えた実施例1のリチウムイオン二次電池は、比較例のリチウムイオン二次電池に比較して、電池容量が高くかつ安全性も高いことが実証された。
1:集電体、2:導電性粒子層、3:正極活物質層、21:導電性粒子、22:導電性粒子層用バインダー、31:第一正極活物質、32:第二正極活物質。

Claims (8)

  1. 集電体と、
    前記集電体の表面に配置された導電性粒子層と、
    前記導電性粒子層の表面に配置された正極活物質層と、
    を有し、
    前記導電性粒子層は、導電性粒子と、導電性粒子層用バインダーとを有し、
    前記導電性粒子は、酸化インジウム、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、酸化錫(II)、酸化錫(IV)、酸化錫(VI)、窒化ゲルマニウム、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ニオブ、窒化バナジウム、窒化タングステン、元素Xドープ酸化インジウム(元素XはZn、Mo、W、Ti、Zr、Sn及びHから選ばれる少なくとも一種である)、元素Yドープ酸化錫(IV)(元素YはF、W、Ta、Sb、P及びBから選ばれる少なくとも一種である)並びに元素Zドープ酸化亜鉛(元素ZはGa、Al及びBから選ばれる少なくとも一種である)から選ばれる少なくとも1つであり、
    前記正極活物質層は、第一正極活物質と前記第一正極活物質よりも充放電電位が低く抵抗が高い第二正極活物質とを含み、
    前記第二正極活物質の最長部分の長さをL1とし、該最長部分の長さの長さ方向に対して直交する方向の最長の長さをL2としたときのL1/L2の比率をアスペクト比とした場合、前記アスペクト比の平均値が3以上10以下であり、
    前記導電性粒子層の表面は、前記導電性粒子の配置による凹凸を有し、
    かつ、前記導電性粒子層は、空隙を有し、
    少なくとも一部の前記凹凸及び/又は前記空隙には、前記第二正極活物質の一部が入り込んでいることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極。
  2. 前記導電性粒子の平均粒径D50は10nm以上1000nm以下である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  3. 前記導電性粒子層の厚みは10nm以上1000nm以下である請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  4. 前記第二正極活物質の平均粒径D50は、0.5μm以上5μm以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  5. 前記導電性粒子層の空隙率は5%以上50%以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  6. 前記第二正極活物質は表面の少なくとも一部が導電性物質で被覆されている請求項1〜5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  7. 前記第一正極活物質は、下記式(1)で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物であり、
    LiNiCoMn(1−b−c−d) (2−e)・・・・・(1)
    (式(1)中、Mは、Mg、Al、B、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Zr、Mo、Sn、Ca、Sr及びWからなる群のうちの少なくとも1種を表し、a、b、c、d及びeは、0.8≦a≦1.2、0<b≦0.5、0<c≦0.5、0≦d≦0.5、b+c+d<1、−0.1≦e≦0.2の範囲内の値である。)
    前記第二正極活物質は、下記式(2)で表されるリン酸鉄リチウム化合物である請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
    LiFe (1−q)PO・・・・・(2)
    (式(2)中、Mは、Co、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、W及Zrからなる群のうちの少なくとも1種を表す。pは、0.9≦p≦1.1の範囲内の値である。qは、0<q≦1の範囲内の値である。)
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極を備えたリチウムイオン二次電池。
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