JP6577222B2 - 硫化物固体電解質の製造方法及び硫黄系材料 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、原料である硫化リチウム、五硫化二リン、及びヨウ化リチウムを同時に混合して製造されたLi2S−P2S5−LiI系の硫化物固体電解質が開示されている。また、特許文献2には、硫化リチウムと五硫化二リンとを混合、粉砕して得られた反応物に、ヨウ化リチウムを加えて製造されたLi2S−P2S5−LiI系の硫化物固体電解質が開示されており、特許文献3には、硫化リチウムと五硫化二リンとを混合、粉砕して得られた反応物に、臭化リチウムを加えて製造されたLi2S−P2S5−LiBr系の硫化物固体電解質が開示されている。また、特許文献2には、原料を混合する順番は特に限定されないことも記載されている。更に、非特許文献1には、硫化リチウムと臭化リチウムとを混合し、得られた混合物に、五硫化二リンを加えて製造されたLi2S−P2S5−LiBr系の硫化物固体電解質も開示されている。
一方、特許文献4及び特許文献5により、Li2S−P2S5−LiI−LiBr系の硫化物固体電解質とすることにより、従来よりもイオン伝導度を向上させることができたが、本系の硫化物固体電解質は、製造に長時間を要するという問題があった。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
[1]硫化リチウムと臭化リチウムとを混合、粉砕し、次いで、硫化リンと、ヨウ化リチウムとを加え、反応させることを含む、リチウム元素、硫黄元素、リン元素、ヨウ素元素、及び臭素元素を含む硫化物固体電解質の製造方法。
[2]前記硫化リチウムと前記臭化リチウムとを混合、粉砕した混合粉砕物の、CuKα線を用いた粉末X線回折において、該臭化リチウム由来の回折ピークが観測されない、上記[1]に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[3]前記硫化リチウムと前記臭化リチウムとを混合、粉砕した混合粉砕物の、CuKα線を用いた粉末X線回折において、該硫化リチウム由来の回折ピークが観測される、上記[1]又は[2]に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[4]前記硫化リチウムと前記臭化リチウムとを混合、粉砕した混合粉砕物が、該硫化リチウムと該臭化リチウムとの固溶体を含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[5]前記粉砕と前記反応とを、同一の有機溶媒中で行なう、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[6]リチウム元素と、硫黄元素と、臭素元素とを含み、CuKα線を用いた粉末X線回折において、硫化リチウム由来の回折ピークが観測され、臭化リチウム由来の回折ピークが観測されない、硫黄系材料。
[7]前記硫化リチウム由来の回折ピークの他に、回折ピークが観測されない、上記[6]に記載の硫黄系材料。
[8]上記[6]又は[7]に記載の硫黄系材料と、硫化リンと、ヨウ化リチウムとを反応させることを含む、リチウム元素、硫黄元素、リン元素、ヨウ素元素、及び臭素元素を含む硫化物固体電解質の製造方法。
本発明のリチウム元素、硫黄元素、リン元素、ヨウ素元素、及び臭素元素を含む硫化物固体電解質の製造方法は、硫化リチウムと臭化リチウムとを混合、粉砕し、次いで、硫化リンと、ヨウ化リチウムとを加え、反応させること(工程)を含む。
ここで、本発明における各工程の中には、本明細書中で説明した以外の工程が含まれていてもよく、それらを排除するものではない。
また、本発明では、X線回折測定においてX線回折パターンが実質的に原料由来のピーク以外のピークを示さないハローパターンである硫化物固体電解質を「硫化物ガラス」と呼ぶものとする。一方、硫化物固体電解質由来のピークが観測される硫化物固体電解質を、「硫化物ガラスセラミックス」と呼ぶものとする。なお、これらにおいて原料由来のピークの有無は問わないものとする。
以下、本発明について詳細に説明する。
上記硫化リチウム(Li2S)は、特に制限なく使用できるが、高純度のものが好ましい。硫化リチウムは、例えば、特開平7−330312号、特開平9−283156号、特開2010−163356、特願2009−238952に記載の方法により製造することができる。
具体的には、炭化水素系有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを70℃〜300℃で反応させて、水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を脱硫化水素化することにより硫化リチウムを合成できる(特開2010−163356)。
また、水溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを10℃〜100℃で反応させて、水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を脱硫化水素化することにより硫化リチウムを合成できる(特願2009−238952)。
また、硫化リチウム中に含まれるN−メチルアミノ酪酸リチウムの含有量が0.15質量%以下であると、N−メチルアミノ酪酸リチウムの劣化物による、該硫化リチウムを用いて製造したリチウムイオン電池のサイクル性能の低下を抑えることができる。
このように不純物が低減された硫化リチウムを用いると、高Liイオン伝導性の硫化物固体電解質を得ることができる。
一方、特開2010−163356に記載の硫化リチウムの製造方法により製造した硫化リチウムは、硫黄酸化物のリチウム塩等の含有量が非常に少ないため、精製せずに用いてもよい。
好ましい精製法としては、例えば、国際公開WO2005/40039号に記載された精製法等が挙げられる。具体的には、上記のようにして得られた硫化リチウムを、有機溶媒を用い、100℃以上の温度で洗浄する。
なお、上記硫化リチウム中に含まれる水酸化リチウム含有量の下限値については、特に制限はないが、例えば、0.001重量%程度であればよい。
上記硫化リチウムの比表面積は、例えばAUTOSORB6(シスメックス株式会社製)で測定できる。また、BET法は窒素ガスを用いてもよく(窒素法)、クリプトンガスを用いてもよい(クリプトン法)。尚、比表面積が小さい場合は、通常クリプトン法により測定する。
また、上記硫化リチウムの細孔容積は比表面積と同じ装置で測定でき、相対圧P/P0が0.99以上の測定点から、0.99に内挿して求めたものを使用できる。装置の測定下限は0.001ml/gである。上記硫化リチウムの細孔容積は、好ましくは0.01ml/g以上である。細孔容積の上限は特に限定されないが、通常1.0ml/g以下である。
なお、上記硫化リチウムの純度は、例えば、電位差滴定法により測定することができる。
ここで、固溶体とは、一般的に2種類以上の金属元素が互いに溶け合い、全体が均一の固相となっているものをいう。
一方、上記硫化リチウムと上記臭化リチウムとを混合、粉砕した混合粉砕物の、CuKα線を用いた粉末X線回折において、当該硫化リチウム由来の回折ピークは観測されてもよい。
なお、上記臭化リチウム由来の回折ピークは、2θ=28.1°、32.5°、46.7°、55.4°付近に現れ、上記硫化リチウム由来の回折ピークは、2θ=26.8°、31.0°、44.6°、52.8°付近に現れる。
具体的には、Li2S及びLiBrを、有機溶媒中で粉砕しつつ反応させるステップと、Li2S及びLiBrを、有機溶媒中で反応させるステップとを交互に行う。
例えば、粉砕機中で、Li2S及びLiBrを有機溶媒中で粉砕しつつ反応させて混合粉砕物を合成し、別途、反応槽中で、Li2S及びLiBrを有機溶媒中で反応させて混合粉砕物を合成し、反応中のLi2S及びLiBrを、粉砕機と反応槽との間を循環させる。
上記硫化リン、及び上記ヨウ化リチウムは、工業的に製造され、販売されているものであれば、特に限定なく使用することができる。
以下、これらの方法を説明する。
溶融急冷法は、例えば、特開平6−279049号公報、WO2005/119706号パンフレットに記載されている。具体的には、原料を所定量乳鉢にて混合しペレット状にしたものを、カーボンコートした石英管中に入れ真空封入する。所定の反応温度で反応させた後、氷中に投入し急冷することにより、硫化物ガラスが得られる。
反応温度は、好ましくは400℃〜1000℃、より好ましくは、800℃〜900℃である。
反応時間は、好ましくは0.1時間〜12時間、より好ましくは、1〜12時間である。
上記反応物の急冷温度は、通常10℃以下、好ましくは0℃以下であり、その冷却速度は、通常1〜10000K/sec程度、好ましくは10〜10000K/secである。
MM法は、例えば、特開平11−134937号公報、特開2004−348972号公報、特開2004−348973号公報に記載されている。
具体的には、原料を所定量乳鉢にて混合し、各種ボールミル等を使用して所定時間反応させることにより、硫化物ガラスが得られる。
上記原料を用いたMM法は、室温(25℃)で反応させることができる。そのため、原料の熱分解が起らず、仕込み組成の硫化物ガラスを得ることができるという利点がある。
また、MM法では硫化物ガラスの製造と同時に、微粉末化できるという利点もある。
MM法の条件としては、例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を数十〜数百回転/分とし、0.5時間〜100時間処理すればよい。
また、特開2010−90003号公報に記載されているように、ボールミルのボールは異なる径のボールを混合して使用してもよい。特開2009−110920号公報や特開2009−211950号公報に記載されているように、原料に有機溶媒を添加してスラリー状にし、このスラリーをMM処理してもよい。また、特開2010−30889号公報に記載のようにMM処理の際のミル内の温度を調整してもよい。MM処理時の原料温度は、60℃以上160℃以下になるようにすることが好ましい。
スラリー法は、国際公開第2004/093099号パンフレット、国際公開第2009/047977号パンフレットに記載されている。
具体的には、所定量の原料を有機溶媒中で所定時間反応させることにより、硫化物ガラスが得られる。
ここで、特開2010−140893号公報に記載されているように、反応を進行させるため、原料を含むスラリーをビーズミルと反応容器との間で循環させながら反応させてもよい。
反応温度は、好ましくは20℃以上80℃以下、より好ましくは20℃以上60℃以下である。反応時間は、好ましくは1時間以上16時間以下、より好ましくは2時間以上14時間以下である。
有機溶媒としては特に制限はないが、非プロトン性有機溶媒が特に好ましい。非プロトン性有機溶媒としては、非プロトン性の非極性有機溶媒(例えば、炭化水素系有機溶媒)、非プロトン性の極性有機化合物(例えば、アミド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物、有機イオウ化合物、環式有機リン化合物等)等が挙げられ、中でも、非プロトン性の非極性有機溶媒が好ましく、特に炭化水素系有機溶媒が好ましい。これらは、単独溶媒として、又は、混合溶媒として、好適に使用することができる。
飽和炭化水素系有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ペンタン、2−エチルヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられ、市販品としては、IPソルベント1016((株)出光興産製)、IPソルベント1620((株)出光興産製)等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
不飽和炭化水素系有機溶媒としては、例えば、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン等が挙げられる。
芳香族炭化水素系有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、デカリン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられ、市販品としては、イプゾール100((株)出光興産製)、イプゾール150((株)出光興産製)等が挙げられる。
炭化水素系有機溶媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(式中、Phは、芳香族炭化水素基であり、Rは炭素数1〜3のアルキル基である。nは1〜5から選択される整数である。)
上記Rの炭素数1〜3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
また、nは1〜5から選択される整数であり、好ましくは1又は2である。
炭化水素系有機溶媒中の水分量は、原料及び得られる硫化物固体電解質との反応を考慮して、50ppm(重量)以下であることが好ましい。水分は反応により硫化物固体電解質の変性を引き起こし、当該硫化物固体電解質の性能を悪化させる。そのため、水分量は低いほど好ましく、炭化水素系溶媒中の水分量は、より好ましくは30ppm以下であり、さらに好ましくは20ppm以下である。
また、上記Li2S、及びLiBrの混合粉砕物と、硫化リンと、ヨウ化リチウムとを反応させる方法としては、低コストの観点から、MM法、スラリー法が好ましい。中でも、上述したビーズミル等の粉砕槽と撹拌槽との間で循環させる方法を用いることが、より好ましい。
熱処理工程における熱処理温度は、通常、150℃以上である。中でも、熱処理温度は、170℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましい。一方、熱処理温度の上限値は特に限定されるものではないが、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましい。
上記硫黄系材料と、硫化リンと、ヨウ化リチウムとを反応させる方法は、硫化リチウム及び臭化リチウムの混合粉砕物と、硫化リンと、ヨウ化リチウムとを反応させる方法で説明した方法を採用することができる。
本発明の硫黄系材料は、リチウム元素と、硫黄元素と、臭素元素とを含む。当該硫黄系材料を構成する元素の種類は、例えば、ICP発光分析装置により確認できる。
上記硫黄系材料の原料としては、リチウム元素、硫黄元素、及び臭素元素を含む化合物であれば特に限定されないが、硫化リチウム、及び臭化リチウムを好ましく用いることができる。上記硫化リチウム、及び上記臭化リチウムについては、「硫化物固体電解質の製造方法」の項で説明したとおりである。
また、上記硫黄系材料は、CuKα線を用いた粉末X線回折において、硫化リチウム由来の回折ピークの他に、回折ピークが観測されないことが、本発明の効果を得る観点から好ましい。
次に、本発明により得られる硫化物固体電解質について説明する。
本発明により得られる硫化物固体電解質は、リチウム元素、硫黄元素、リン元素、ヨウ素元素、及び臭素元素を含む。上記硫化物固体電解質を構成する元素の種類は、例えば、ICP発光分析装置により確認できる。
また、上記硫化物固体電解質は、Liイオン伝導性が高いことが好ましく、常温におけるLiイオン伝導度は、1.0×10−4S/cm以上であることが好ましく、1.0×10−3S/cm以上であることがより好ましく、1.2×10−3S/cm以上であることが更に好ましい。
上記正極活物質としては、リチウムイオンの挿入脱離が可能な物質、電池分野において正極活物質として公知のものが使用できる。
例えば、V2O5、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiaCobMnc)O2(ここで、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1−YCoYO2、LiCo1−YMnYO2、LiNi1−YMnYO2(ここで、0≦Y<1)、Li(NiaCobMnc)O4(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2−ZNiZO4、LiMn2−ZCoZO4(ここで、0<Z<2)、LiCoPO4、LiFePO4、酸化ビスマス(Bi2O3)、鉛酸ビスマス(Bi2Pb2O5)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V6O13)、LixCoO2、LixNiO2、LixMn2O4、LixFePO4、LixCoPO4、LixMn1/3Ni1/3Co1/3O2、LixMn1.5Ni0.5O2等の酸化物が挙げられる。それ以外の正極活物質としては、例えば、硫化物系では、単体硫黄(S)、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、硫化鉄(FeS、FeS2)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni3S2)、硫化リチウム(Li2S)、有機ジスルフィド化合物、カーボンスルフィド化合物、硫黄等が使用できる。好ましくは、高い理論容量を有するS、Li2Sが使用できる。
導電助剤としては、炭素材料、金属粉末及び金属化合物から選択される物質や、これらの混合物が挙げられる。
導電助剤の具体例としては、炭素、ニッケル、銅、アルミニウム、インジウム、銀、コバルト、マグネシウム、リチウム、クロム、金、ルテニウム、白金、ベリリウム、イリジウム、モリブデン、ニオブ、オスニウム、ロジウム、タングステン及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む物質が挙げられ、これらが好ましい。より好ましくは、導電性が高い炭素単体、炭素、ニッケル、銅、銀、コバルト、マグネシウム、リチウム、ルテニウム、金、白金、ニオブ、オスニウム又はロジウムを含む金属単体、混合物又は化合物である。
中でも、電子伝導性が高いアセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラックが好適である。
正極層の厚さは、0.01mm以上10mm以下であることが好ましい。
また、正極層は、公知の方法により製造することができる。例えば、塗布法、静電法(静電スプレー法、静電スクリーン法等)により製造することができる。
上記負極活物質としては、リチウムイオンの挿入脱離が可能な物質、電池分野において負極活物質として公知のものが使用できる。
例えば、炭素材料、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛、及び難黒鉛化性炭素等が挙げられ、また、これらの混合物でもよい。好ましくは、人造黒鉛である。
なお、負極層の形成法や厚さは正極層の場合と同様である。
他の電解質としては、ポリマー系固体電解質、酸化物系固体電解質等が挙げられる。
ポリマー系固体電解質は、特に制限はない。例えば、特開2010−262860に開示されているように、フッ素樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレートやこれらの誘導体、共重合体等のポリマー電解質として用いられる材料が挙げられる。
フッ素樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)や、これらの誘導体等を構成単位として含むものが挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のホモポリマーや、VdFとHFPとの共重合体等の2元共重合体や3元共重合体等が挙げられる。
酸化物系固体電解質には、LiN、LISICON類、Thio−LISICON類、La0.55Li0.35TiO3等のペロブスカイト構造を有する結晶や、NASICON型構造を有するLiTi2P3O12、さらにこれら結晶化させた電解質等を用いることができる。
また、電解質層は、硫化物固体電解質の板状体であってもよい。なお、硫化物固体電解質粒子の一部又は全部が溶解し、板状体になっている場合も含む。
電解質層の厚さは、0.001mm以上1mm以下であることが好ましい。
なお、実施例で得られた硫化物固体電解質のLiイオン伝導度は、以下の方法により測定した値である。
実施例で得られた硫化物固体電解質を断面10mmφ(断面積S=0.785cm2)、高さ(L)0.1〜0.3cmの形状に成形し、試料片を作成した。該試料片の上下から電極端子を取り、交流インピーダンス法により測定し(周波数範囲:5MHz〜0.5Hz、振幅:10mV)、Cole−Coleプロットを得た。高周波側領域に観測される円弧の右端付近で、−Z’’(Ω)が最小となる点での実数部Z’(Ω)を電解質のバルク抵抗R(Ω)とし、下記式に従い、Liイオン伝導度σ(mS/cm)を計算した。
R=ρ(L/S)
σ=1/ρ
本願ではリードの距離を約60cmとして測定した。
600mlセパラブルフラスコに、窒素気流下でトルエン(広島和光(株)製試薬)270gを加え、続いて無水水酸化リチウム(本荘ケミカル(株)製)30gを投入し、フルゾーン撹拌翼300rpmで撹拌しながら、95℃に保持した。
上記反応により得られたスラリー溶液中に、硫化水素((株)巴商会製)を供給速度300ml/分で吹き込みながら104℃まで昇温した。上記セパラブルフラスコからは、水とトルエンとの共沸ガスが連続的に排出された。この共沸ガスを、系外のコンデンサで凝縮させることにより脱水した。この間、留出するトルエンと同量のトルエンを連続的に供給し、上記スラリー溶液の量を一定に保持した。
凝縮液中の水分量は徐々に減少し、硫化水素導入後6時間で水の留出は認められなくなった(水分量は総量で22mlであった)。尚、反応の間は、トルエン中に固体が分散して撹拌された状態であり、トルエンから分層した水分はなかった。
この後、硫化水素を窒素に切り替え300ml/分で1時間流通した。
次いで、上記スラリー溶液をろ過処理した。ろ過後、200℃で真空乾燥を行い、硫化リチウムを得た。
得られた硫化リチウムの純度は97.7重量%、比表面積は13.2m2/g、細孔容積は0.137ml/gであった。
なお、上記硫化リチウムの純度は電位差滴定により測定し、比表面積は窒素吸着法(BET法)により測定し、細孔容積は窒素吸着法(BET法)により測定した。
(Li2SとLiBrとの混合粉砕)
図1に示す装置を用いた。製造装置1は、原料を粉砕しつつ反応させるビーズミル10と、原料を反応させる反応槽20とを備える。反応槽20は容器22と撹拌翼24からなる。撹拌翼24はモータ(M)により駆動される。
ビーズミル10には、ミル10の周りに温水を通すことのできるヒータ30が設けられている。反応槽20は、オイルバス40に入っている。オイルバス40は容器22内の原料と溶媒を所定温度に加熱する。反応槽20には気化した溶媒を冷却して液化する冷却管26が設けられる。
ビーズミル10と反応槽20とは、第1の連結管50と第2の連結管52とで連結されている。第1の連結管50は、ビーズミル10内の原料と溶媒を反応槽20に移動させ、第2の連結部52は、反応槽20内の原料及び溶媒をビーズミル10内に移動させる。原料等を連結管50,52を通して循環させるために、ポンプ54(例えばダイアフラムポンプ)が、第2の連結管52に設けられている。
ビーズミルとして、アシザワ・ファインテック(株)製ビーズミルLMZ015を用い、直径0.5mmのジルコニアボール456gを仕込んだ。反応槽として、撹拌機付き1.5リットルガラス製反応器を使用した。上記ビーズミルには、一端から他端に、反応器を経由する循環経路を設けてある。
製造例1で製造した硫化リチウム29.7g、無水臭化リチウム(アルドリッチ社製)15.0gをシュレンク瓶にそれぞれ秤量し、さらに脱水トルエン1200mlを追加して、窒素シールしたまま、これを図1に記載の装置の反応槽とビーズミルに投入した。
ビーズミルに投入したスラリーを、ポンプを用いて400ml/分の流量で循環させ、ビーズミルの運転を開始した後、脱水ジブチルエーテル7.2mlを添加した。ビーズミル本体は、液温が60℃に保持できるよう外部循環により温水を通水し、周速8m/sの条件で6時間運転して混合粉砕し、スラリーを得た。
得られたスラリーの一部を抜出し、真空乾燥を行い、乾燥粉末を回収した。回収物のXRDスペクトルを確認したところ、硫化リチウムの回折ピークは残存していたが、臭化リチウムの回折ピークは消失していた。
上記で得られたスラリーに、ヨウ化リチウム(アルドリッチ社製)15.4g、五硫化二リン(アルドリッチ社製)47.9gを加えた。その後、内容物をポンプを用いて400ml/分の流量で循環させ、ビーズミルの運転を開始した。ビーズミル本体は、液温が60℃に保持できるよう外部循環により温水を通水し、周速8m/sの条件で運転した。運転中、数時間毎にスラリーの一部につきサンプリングを行い、X線回折(XRD)装置(SmartLab装置、(株)リガク製)を用いて粉末X線回折を行なった。原料のXRDスペクトルを確認したところ、いずれの回折ピークも観測されず、原料が消失していることを確認した。反応は8時間で終了した。
上記反応終了後の粉末2gを窒素下、採取し、200℃、2時間、真空下、加熱処理を行い、硫化物ガラスセラミックスであるLi2S−P2S5−LiI−LiBr系の硫化物固体電解質を得た。また、得られた硫化物固体電解質のイオン伝導度は、1.45×10−3S/cmであった。
製造例1で製造した硫化リチウム29.7g、臭化リチウム(アルドリッチ社製)15.0g、ヨウ化リチウム(アルドリッチ社製)15.4g、五硫化二リン(アルドリッチ社製)47.9g、および、脱水トルエン1200mlをシュレンク瓶内に投入し、一括して図1の装置に投入した。ビーズの充填量、循環経路は実施例1と同様である。
ビーズミルに投入したスラリーを、ポンプを用いて400ml/分の流量で循環させ、ビーズミルの運転を開始した後、脱水ジブチルエーテル7.2mlを添加した。ビーズミル本体は、液温が60℃に保持できるよう外部循環により温水を通水し、周速8m/sの条件で運転した。
運転中、数時間毎にスラリーの一部につきサンプリングし、粉末X線回折を行ない、原料のXRDスペクトルを確認したところ、いずれの回折ピークも確認されず、原料が消失していることを確認した。反応終了に25時間を要した。
製造例1で製造した硫化リチウム1.19g、臭化リチウム(アルドリッチ社製)0.81gをアルゴン雰囲気下において45ccのジルコニア製ポットに秤取った。さらに4mmφジルコニアボール500ケ(約100g)を同じポットに入れ、密閉した。したがって、ポット内の雰囲気は窒素である。上記ポットを遊星ボールミル(フリッチュ社製:型番P−7)に取付け500rpmで10時間粉砕を実施し、白色粉末を回収した。回収物のXRDスペクトルを確認したところ、図2に示すように、硫化リチウム、臭化リチウムともに原料の回折ピークが残存していた。
硫化リチウムを1.35g、臭化リチウムを0.65gとした以外は参考例1と同様に粉砕を実施した。回収物のXRDスペクトルを確認したところ、図2に示すように、硫化リチウム、臭化リチウムともに原料の回折ピークが残存していた。
10 ビーズミル
20 反応槽
22 容器
24 攪拌翼
26 冷却管
30 ヒータ
40 オイルバス
50 第一の連結管
52 第二の連結管
54 ポンプ
Claims (5)
- 硫化リチウムと臭化リチウムとを混合、粉砕し、次いで、硫化リンと、ヨウ化リチウムとを加え、反応させることを含み、前記硫化リチウムと前記臭化リチウムとを混合、粉砕した混合粉砕物が、該硫化リチウムと該臭化リチウムとの固溶体を含み、前記混合粉砕物の、CuKα線を用いた粉末X線回折において、前記臭化リチウム由来の回折ピークが観測されない、
リチウム元素、硫黄元素、リン元素、ヨウ素元素、及び臭素元素を含む硫化物固体電解質の製造方法。 - 前記硫化リチウムと前記臭化リチウムとを混合、粉砕した混合粉砕物の、CuKα線を用いた粉末X線回折において、該硫化リチウム由来の回折ピークが観測される、請求項1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記粉砕と前記反応とを、同一の有機溶媒中で行なう、請求項1又は2に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 硫化リチウムと臭化リチウムとを用いてなる固溶体を含み、リチウム元素と、硫黄元素と、臭素元素とを含み、CuKα線を用いた粉末X線回折において、硫化リチウム由来の回折ピークが観測され、臭化リチウム由来の回折ピークが観測されない、硫化物固体電解質の製造に用いられる硫黄系材料。
- 請求項4に記載の硫黄系材料と、硫化リンと、ヨウ化リチウムとを反応させることを含む、
リチウム元素、硫黄元素、リン元素、ヨウ素元素、及び臭素元素を含む硫化物固体電解質の製造方法。
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