JP6539537B2 - ピックル液、食肉及び食肉加工品 - Google Patents

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Description

本発明は、ピックル液、該ピックル液を用いた食肉、及び該食肉の加工品に関する。
食肉製品に使用される食肉中には、部位や飼育の程度によっても異なるが、約60〜70%の水分が含まれる。この水分の一部は、調理工程や製造工程で高い熱負荷が加わった場合、蒸発してしまう。したがって、特にトンカツやからあげなど、衣がある食肉加工品では、蒸発した水分による押し上げにより衣が浮いてしまい、該食肉加工品を包丁等で切断した際、断面の外観を著しく低下させてしまう問題があった。また、増量や味付けなどを目的にピックル液と呼ばれる調味液を食肉製品に配合した場合、ピックル液自身の持つ水分により、前述の問題がより深刻化してしまっていた。そこで、ピックル液に増粘剤などを配合することで、食肉製品およびピックル液自身からの離水を抑制する技術の開発が行われてきたが、その効果は十分ではなかった。このため、調理工程や製造工程で高い熱負荷が加わった場合でも、食肉及び自身からの離水を抑制することで、衣部分の浮きを抑制し、包丁などで切断した際の断面を均一にすることができるピックル液が求められてきた。さらに、小売店の保温容器(ホットベンダー)内で販売されている食肉加工品は、高温で長時間保存していると肉中の水分や油分が浸み出してしまい、食肉自体が硬くなり、更に浸み出した水分や油分が衣部分に移行することでサクサク感が失われ、食感が著しく低下してしまう問題があった。このため、高温で保存した際でも、肉中から衣部分への水分や油分の浸み出しを抑制し、食感を維持することができるピックル液が求められてきた。
これまで、水溶性多糖類を含んだピックル液について、様々な検討がなされている。
特許文献1には、アルギン酸塩とサイリウムシードガムを含有するゲル状組成物を原料肉に添加する工程を含むことを特徴とする食肉加工品の製造方法が記載されている。
特許文献2には、天然糊料および合成糊料から選ばれる少なくとも1種の糊料とカードランを含有することを特徴とする食肉加工用ピックル液組成物が記載されている。
特開2014−187922号公報 特開平5−260927号公報
上記の通り、水溶性多糖類を含んだピックル液について様々な検討がなされている。
特許文献1には、アルギン酸塩とサイリウムシードガムを含有するゲル組成物を原料肉に添加する工程を含むことを特徴とする食肉加工品の製造方法について記載されている。しかしながらこの方法は挽肉で作られる肉惣菜にアルギン酸塩とサイリウムシードガムからなるゲル物質を混ぜ合わせる食肉加工品の製造方法であり、肉製品に打ち込んだり又は浸漬させたりして使用されるようなピックル液とは根本的に異なるものであった。後述するインジェクターと呼ばれる装置を用いて、該ゲル物質を肉に打ち込もうとしてもその高い粘度のためピックル液として用いることは不可能だった。
特許文献2には、天然糊料および合成糊料から選ばれる少なくとも1種の糊料とカードランを含有することを特徴とする食肉加工用ピックル液組成物が記載されている。天然糊料として、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム等の種子多糖類、カラギーナン、ファーセレラン等の海藻多糖類、キサンタンガム、ジェランガム等の微生物生産多糖類、アラビアガム、トラガントガム等の樹液多糖類、ペクチン等の果実多糖類を用いても良いとしている。しかしながら、特許文献2では、多糖類の粘度について十分に検討されておらず、また、加工時の離水を抑制する効果についても記載されていなかった。
したがって、本発明は、インジェクションまたは浸漬などの方法によってピックル液が配合された食肉の加工品において、調理工程、製造工程、保存工程で高い熱負荷が加わった際の、食肉およびピックル液自身からの水分や油分の浸みだしによる食肉加工品の衣部分の浮き、及び食感の低下を抑制することを課題とする。
上記課題の解決に当たって、本発明者らは、高い熱負荷による水分や油分の浸みだしに起因する、食肉加工品の衣の浮きと食感の低下のメカニズムを以下のように考察した。
つまり、理論に拘束されるわけではないが、衣の浮きは、調理工程や製造工程において油調や焼成などによって高い熱負荷が掛かることにより、食肉中、及び/又はピックル液中の水分の一部が蒸発し、蒸発した大量の水分により食肉加工品の衣部分が押し上げられることによって生じるものと推定した。
また、高温保存後の食感の低下は、ピックル液を配合した食肉加工品を高温で保存する工程において、高い熱負荷が掛かることにより、食肉中に含まれる水分や油分が浸み出すことで、食肉自体が硬化し、更にその水分や油分を衣部分が吸収することによって生じるものと推定した。
本発明者らは、上記のような推定を考慮しつつ鋭意検討した結果、インジェクションまたは浸漬などの方法によって食肉加工品に配合されるセルロース及び/又は水溶性多糖類を含むピックル液において、該ピックル液を60℃で30分間加熱した後に5℃に戻した際の粘度値Bと該ピックル液を加熱せずに5℃で測定した際の粘度値Aの比(B/A)を0.9以上とすることで、上記の問題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は下記の通りである。
(1)セルロース及び/又は水溶性多糖類を含むピックル液であって、該ピックル液の粘度値Bと粘度値Aの比(B/A)が、0.8以上である、ピックル液。
(ただし、粘度値Aは該ピックル液を加熱せず5℃で測定した際の粘度値であり、粘度値Bは該ピックル液を60℃で30分間加熱した後に5℃に戻した際の粘度値である)
(2)水溶性多糖類を少なくとも含み、該水溶性多糖類の粘度値Dと粘度値Cの比(D/C)が0.9以上であることを特徴とする、上記(1)に記載のピックル液。
(ただし、粘度値Cは該水溶性多糖類の1.0質量%水溶液を加熱せず25℃で測定した際の粘度値であり、粘度値Dは該水溶性多糖類の1.0質量%水溶液を60℃で30分間加熱した後に25℃に戻した際の粘度値である)
(3)前記水溶性多糖類がサイリウムシードガムである、上記(1)又は(2)に記載のピックル液。
(4)セルロースを少なくとも含み、前記セルロースが結晶セルロース複合体である、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のピックル液。
(5)食肉100質量部に対し、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のピックル液を1〜70質量部配合した食肉。
(6)上記(5)に記載の食肉を加工することで得られる食肉加工品。
本発明のピックル液は、該ピックル液を注入した食肉加工品の衣部分が押し上げられ、衣部分と肉部分の間に生じる隙間を抑制する効果があり、また、肉惣菜に配合した際、高温保存時の食肉部分、及びピックル液自身からの水分や油分の浸みだしを抑制する効果がある。
図1は、本発明における降伏値測定方法の概要を示す。
本発明について、具体的に説明する。
<ピックル液>
ピックル液とは、水、並びに、食塩、糖、リン酸塩、発色剤、調味料、蛋白質、油脂、増粘剤、保存料、酸化防止剤、香辛料及び乳化安定剤からなる群より選択される1種以上の成分を含む液状組成物であり、結着性(保水性)の改善を主な目的とし、その他保存性の向上、食感の改善、発色性の改善、抗菌性の向上、味付けを従たる目的として食品にインジェクション又は浸漬などの方法によって配合される溶液のことである。ピックル液の使用対象となる食品は主に食肉(ハム類や焼き豚等に加工した食肉製品も含む)である。
本実施形態は、セルロース及び/又は水溶性多糖類を含むピックル液であって、該ピックル液の粘度値Bと粘度値Aの比(B/A)が、0.8以上であることを特徴とするピックル液である。
ここで、粘度値Aは該ピックル液を加熱せず5℃で測定した際の粘度値であり、粘度値Bは該ピックル液を60℃で30分間加熱した後に5℃に戻した際の粘度値である。これらの粘度比(B/A)が0.8以上であることにより、加熱による食肉加工品、及びピックル液自身からの離水と、高温保存時の衣への水分移行が顕著に抑制され、柔らかく食感の優れる食肉製品が得られる。より好ましくは、粘度比(B/A)が0.9以上である。さらに好ましくは1.0以上であり、特に好ましくは1.1以上である。上限は特に定められるものではないが、食感を勘案すると5.0以下である。
<ピックル液の加熱による粘度変化の測定方法>
本発明におけるピックル液の加熱による粘度変化の測定方法について説明する。ピックル液を2つのガラス製ビーカーに分注する。一方のピックル液を5℃で3時間静置する。静置後、粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、ローターをピックル液に差し込んだ後、30秒間静置した後、60rpmで30秒間回転させた後の測定値を粘度値(A)とする。もう一方のピックル液を60℃に恒温したオイルバス(ADVANTEC製、OC−271)中に静置し、60℃に達温後、さらに30分間静置する。静置後、5℃に調温した後、5℃で3時間静置する。静置後、粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、ローターをピックル液に差し込んだ後、30秒間静置した後、60rpmで30秒間回転させた後の測定値を粘度値(B)とする。
本発明のピックル液においては、水溶性多糖類やセルロースを含む他の多糖類を適宜選択することで粘度比(B/A)を容易に調整することができるが、特にはサイリウムシードガムや結晶セルロース複合体を配合することで、上述のような範囲の粘度比(B/A)を容易に実現することができる。
本発明のピックル液は、セルロース及び水溶性多糖類のうち少なくとも一方を含むものであるが、まず、水溶性多糖類を少なくとも含むピックル液について詳細に説明する。
<水溶性多糖類の加熱による粘度変化>
本実施形態において、水溶性多糖類は、加熱による粘度変化の小さい水溶性多糖類が好ましい。加熱による粘度変化の小さい水溶性多糖類とは、粘度値Dと粘度値Cの比(D/C)が0.9以上となるものである。ここで、粘度値Cは該水溶性多糖類の1.0質量%水溶液を加熱せず25℃で測定した際の粘度値であり、粘度値Dは該水溶性多糖類の1.0質量%水溶液を60℃で30分間加熱した後に25℃に戻した際の粘度値である。特に好ましい水溶性多糖類としては、サイリウムシードガムが挙げられる。なお、粘度比(D/C)の上限は特に制限されるものではないが、例えば2.5以下であることが好ましい。粘度比(D/C)を2.5以下にすることにより、加熱後のピックル液の食感が好ましいものとなる。
本実施形態における粘度比(D/C)の測定方法について説明する。水溶性多糖類を高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%の水溶液を調製し、2つのガラス製ビーカーに分注する。得られた水溶液の一方を室温25℃で3時間静置する。静置後、粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、ローターを水溶液に差し込んだ後、30秒間静置した後、60rpmで30秒間回転させた後の測定値を粘度値(C)とする。もう一方の水溶液を60℃に恒温したオイルバス(ADVANTEC製、OC−271)中に静置し、60℃に達温後、さらに30分間静置する。静置後、25℃に調温した後、25℃で3時間静置する。静置後、粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、ローターを水溶液に差し込んだ後、30秒間静置した後、60rpmで30秒間回転させた後の測定値を粘度値(D)とする。
<水溶性多糖類の含有量>
ピックル液の質量を100質量%とした場合、水溶性多糖類の含有量としては、0.01質量%以上3質量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.01質量%以上2.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以上1.0質量%以下であり、最も好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下である。水溶性多糖類の含有量が上述の範囲にあると、食肉へのインジェクションが容易であり、且つ、冷解凍後のドリップが減少する傾向にある。また、歩留り及び食感(香り立ち、サクサク感)のバランスも良好である。含有量を3質量%以下とすることで、加熱による食肉加工品、及びピックル液自身からの離水と、高温保存時の衣への水分移行が顕著に抑制され、柔らかく食感の優れる食肉製品が得られる傾向にある。
<サイリウムシードガム>
サイリウムシードガム(以下PSG)とは、オオバコ科の植物(Plantago ovata Forskal)の種子の外皮から得られる多糖類(ガム類)のことである。具体的には、イサゴール、プランタゴ・オバタ種皮から得られる多糖類が挙げられる。
PSGは、上記のオオバコ科の植物(Plantago ovata Forskal)の種子の外皮から得られる多糖類(ガム類)を含むものであれば、きょう雑物を含んでいるものも該当する。例えば、当該多糖類を水等の溶媒で抽出したガムも、外皮を粉砕されたハスクも、それらを組み合わせ処理されたものも、いずれのものも含まれる。また、それらは、粉末状、塊状、ケーク状、液状のいずれの状態であってもよい。
PSGの化学構造は、非セルロース多糖類において、主鎖がキシランとして高度に枝分かれしており、側鎖がアラビノース、キシロース、ガラクツロン酸、ラムノースからなる構造である。側鎖における、その糖構成比は、D−キシロース約60質量%、L−アラビノース約20質量%、L−ラムノース約10質量%、D−ガラクツロン酸約10質量%である。これらの質量比は、PSGの原料、及びPSGの製造工程により5質量%程度前後するものである。
また、上述の構造を有していれば、粘度を調整するために、PSGを、酸、キシラナーゼ様の酵素等により加水分解してもよい。
PSGは、1質量%の純水溶液で測定した粘度が2Pa・s以上であることが好ましい。ここで、粘度とは、純水中に1質量%に調製したPSGの水溶液を200mlビーカーに充填し、25℃に温調した後、粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、ローターを60rpmで30秒間回転させた直後の測定値を指す(但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用するローターは以下の通りである。1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3)。より好ましくは2.5Pa・s以上である。その上限は、特に設定されるものではないが、工業原料として得られる範囲としては、15Pa・s以下が好ましい。上述の粘度範囲を満たすPSGを含むことにより、加熱による食肉加工品、及びピックル液自身からの離水を抑制する効果がより確実に奏されると共に、高温保存時の水分移行を抑制できる傾向にある。PSGは単独で用いても良く、他の多糖類と用いても良い。
<セルロース>
次に、セルロースを少なくとも含むピックル液について詳細に説明する。本発明において、「セルロース」とは、セルロースを含有する天然由来の水不溶性繊維質物質の粉末である。原料としては、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。原料として、これらのうち1種の天然セルロース系物質を使用してもよいし、また2種以上を混合したものを使用することも可能である。
<結晶セルロース>
本発明において、「結晶セルロース」とは、天然セルロース系物質を酸で部分的に解重合して精製したものをいう。天然セルロース系物質としては、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビートなどの植物から得られるセルロース、ホヤから得られるセルロース、酢酸菌などのバクテリアから得られるセルロース等が挙げられる。原料として、これらのうちの1種の天然セルロース系物質を使用してもよいし、2種以上を混合したものを使用することも可能である。
<結晶セルロースの平均重合度>
本発明に用いる結晶セルロースは、平均重合度が500以下であることが好ましい。平均重合度は、「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定できる。平均重合度が500以下ならば、親水性ガムとの複合化の工程において、セルロース系物質が攪拌、粉砕、摩砕等の物理処理を受けやすくなり、複合化が促進されやすくなるため好ましい。より好ましくは、平均重合度は300以下、さらに好ましくは、平均重合度は250以下である。平均重合度は、小さいほど複合化の制御が容易になるため、下限は特に制限さ
れないが、好ましい範囲としては10以上である。
<結晶セルロースの製造方法>
平均重合度を制御した結晶セルロースを製造する方法としては、天然セルロース系物質の加水分解処理が挙げられる。加水分解処理によって、天然セルロース系物質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースや、リグニン等の不純物も取り除かれるため、該天然セルロース系物質内部が多孔質化した結晶セルロースが得られる。更に、そのような加水分解処理により、後の混練工程等で結晶セルロースと親水性ガムを複合化するために機械的せん断力を与える際に、結晶セルロースが機械処理を受けやすくなり、結晶セルロースが微細化されやすくなる。その結果、結晶セルロースの表面積が高くなり、親水性ガムとの複合化の制御が容易になる。
加水分解の方法は特に制限されないが、酸加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
酸加水分解の方法では、天然セルロース系物質を水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌しながら加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調製され得るものである。例えば、2質量%以下の鉱酸水溶液を使用し、100℃以上、加圧下で、10分以上セルロースを処理するという条件が挙げられる。鉱酸としては例えば塩酸が使用できる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース繊維内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。
<セルロースの粒子形状(L/D)>
本発明におけるセルロースの粒子形状(L/D)は以下の方法で測定される。エアージェットシーブ(ALPINE製、A200LS型)を用い、JIS標準篩75μmで篩過した粒子について、粒子の光学顕微鏡像を画像解析処理し((株)インタークエスト製、装置:Hyper700,ソフトウエア:Imagehyper)、粒子に外接する長方形のうち面積が最小となる長方形の長辺と短辺の比(長辺/短辺)を粒子のL/Dとした。粒子の平均L/Dとしては少なくとも粒子400個の平均値とした。但し、個々の粒子は絡まりがないように予めばらけた状態にして測定する必要がある。L/Dは、歩留りの観点で2.0以上が好ましい。L/Dが大きいほど、加熱後の歩留り向上の効果が高く好ましい。2.2以上がより好ましく、最も好ましくは2.5以上である。上限は、喫食時の食感(硬さ)を勘案すると、20以下である。
<セルロース複合体>
本発明における結晶セルロース複合体とは、結晶セルロースの表面が、水素結合等の化学結合により、親水性ガムで被覆された複合体のことである。以下、結晶セルロース複合体を単にセルロース複合体と称する。
<親水性ガム>
結晶セルロースと複合化する親水性ガムとは、化学構造の一部に糖又は多糖を含む親水性高分子物質のことである。ここで親水性とは、常温の純水に少なくとも一部が溶解する特性を有することである。定量的に親水性を定義すると、化学物質0.05gを、50mLの純水に攪拌下(スターラーチップ等)で平衡まで溶解させ、目開き1μmのメンブレンフィルターで処理した際に、通過する成分が、該化学物質中に1質量%以上含まれることである。親水性ガムとして多糖類を用いる場合には、以下のものが好適である。
親水性ガムとしては、例えば、サイリウムシードガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、キトサン、アラビアガム、ガッティガム、トラガントガム、寒天、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、HMペクチン、LMペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、キサンタンガム、カードラン、プルラン、デキストラン、ジェランガム並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。これらの親水性ガムは2種以上を組み合わせてもよい。
上述の親水性ガムの中でも、キサンタンガム、カラヤガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ジェランガムが結晶セルロースと複合化しやすく、得られたセルロース複合体の離水及び離油の抑制効果が優れる点で好ましく、その中でも特にキサンタンガムが好ましい。
<キサンタンガム>
キサンタンガムとは、トウモロコシなどの澱粉を細菌 Xanthomonas campestrisにより発酵させて作られる親水性ガムであり、その主鎖はD−グルコースがβ−1,4結合した構造を有し、この主鎖のアンヒドログルコースにD−マンノース、D−グルクロン酸、D−マンノースからなる側鎖が結合したものである。主鎖と結合しているD−マンノースの6位はアセチル化され、側鎖末端のD−マンノースがピルビン酸とアセタール結合している枝分かれの多い構造である。
本発明に用いられるキサンタンガムの粘度は、1質量%の純水溶液において、800mPa・s以下が好ましい。ここでいう粘度は、以下の方法で測定される。高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて、純水中に分散し、水溶液を調製する。次に得られた水溶液について、分散3時間後(25℃保存)に、B型粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして60秒静置後に、30秒間回転させて測定する。上記粘度は、700mPa・s以下がより好ましく、650mPa・s以下がさらに好ましい。下限は特に設定されるものではないが、好ましい範囲としては1mPa・s以上である。
<セルロース複合体における結晶セルロースと親水性ガムの配合比率>
本発明に用いるセルロース複合体は、好ましくは、結晶セルロースを30〜99質量%、及び親水性ガムを1〜70質量%含む。より好ましくは、結晶セルロースを50〜99質量%、及び親水性ガムを1〜50質量%を含む。複合化によって、親水性ガムが結晶セルロース粒子の表面を水素結合等の化学結合により被覆することで、ピックル液中に分散した際に、ネットワークを作りやすくなり、ピックル液を注入したトンカツ等において衣の浮きと水分や油分の肉から衣への移行を防止する。また、親水性ガムが崩壊剤として作用し、セルロース複合体内部で膨潤することで分散性が向上する。
<分散液中のセルロース複合体の体積平均粒子径>
セルロース複合体は、分散液中では、体積平均粒子径が0.01〜200μmのセルロース複合体微粒子からなることが好ましい。セルロース複合体の体積平均粒子径は、20μm以下であることがより好ましい。ここで、該体積平均粒子径は、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径のことである。
セルロース複合体の体積平均粒子径が20μm以下であると、セルロース複合体の分散安定性、懸濁安定性がより向上する。また、セルロース複合体を含有する食品を食した際に、ザラツキのない、なめらかな舌触りのものを提供することができる。より好ましくは、体積平均粒子径は15μm以下であり、特に好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。体積平均粒子径が小さいほど、セルロース複合体の分散安定性、懸濁安定性がより容易に向上するため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては0.1μm以上である。
<乾燥粉末としてのセルロース複合体の重量平均粒子径>
乾燥粉末として製造されたセルロース複合体は、上述のセルロース複合体微粒子が凝集し、見かけの重量平均粒子径が10〜250μmの二次凝集体を形成している。この二次凝集体は、水中で攪拌すると崩壊し、上述のセルロース複合体微粒子に分散する。この見かけの重量平均粒子径は、ロータップ式篩振盪機(平工作所製シーブシェーカーA型)、JIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、試料10gを10分間篩分することにより得られた粒度分布における累積重量50%粒径のことである。尚、この乾燥後のセルロース複合体の二次凝集体の重量平均粒子径と、レーザー回折法による分散液中のセルロース複合体の体積平均粒子径は測定原理が全く異なるため、それぞれで得られた値は必ずしも相関するものではない。
<結晶セルロース複合体の粒子形状(L/D)>
セルロース複合体中の結晶セルロースは、微細な粒子状の形状であることが好ましい。結晶セルロースの粒子形状は、セルロース複合体を1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%に純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾されたものを高分解能走査型顕微鏡(SEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測した際に得られる粒子像の長径(L)と短径(D)の比(L/D)で表され、100個〜150個の粒子の平均値として算出される。
L/Dは、懸濁安定性の点で20未満が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下が特に好ましく、5未満が格別に好ましく、4以下が最も好ましい。L/Dの下限はその定義より1である。
<セルロース複合体のコロイド状セルロース成分>
さらに、セルロース複合体は、コロイド状セルロース成分を30質量%以上含有することが好ましい。ここでいうコロイド状セルロース成分の含有量とは、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力2,000rpm(5600G、但しGは重力加速度)×15分間)し、遠心後の上澄みに残存する固形分(結晶セルロースと、親水性ガムを含む)の質量百分率のことである。
コロイド状セルロース成分の含有量が30質量%以上であると、分散安定性、懸濁安定性がより容易に向上する。より好ましくは、40質量%以上であり、特に好ましくは、50質量%以上である。コロイド状セルロース成分含有量は、多ければ多いほど、分散安定性が高いため、その上限は特に制限されないが、好ましい範囲としては、100質量%以下である。
<セルロース複合体の貯蔵弾性率>
次に、本発明に使用することのできるセルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)について説明する。本発明に使用することのできるセルロース複合体は、セルロース複合体を2質量%含む水分散体の貯蔵弾性率(G’)が0.50Pa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率とは、水分散体のレオロジー的な弾性を表現するものであり、セルロースと親水性ガムとの複合化の程度を表すものである。貯蔵弾性率が高いほど、セルロースと親水性ガムとの複合化が促進され、セルロース複合体の水分散体におけるネットワーク構造が、剛直であることを意味する。ネットワーク構造が剛直なほど、セルロース複合体の分散安定性、懸濁安定性に優れる。
貯蔵弾性率の測定方法としては、まず、セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、2.0質量%の純水分散体を調製し、得られた水分散体を3日間室温25℃で静置する。この水分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の範囲で掃引、水分散体は微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込み、5分間静置した後に、Dynamic Strainモードで測定を開始する)により測定する。本発明における貯蔵弾性率は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み20%の値のことである。この貯蔵弾性率の値が大きいほど、セルロース複合体が形成する水分散体の構造はより弾性的であり、結晶セルロースと親水性ガムが高度に複合化していることを表している。セルロース複合体の貯蔵弾性率は0.80Pa以上がより好ましく、1.0Pa以上がさらに好ましく、3.0Pa以上が最も好ましい。貯蔵弾性率の上限は、特に設定されるものではない。
<セルロース複合体の粘度>
次に、本発明に使用することのできるセルロース複合体の粘度について説明する。セルロース複合体を1質量%の分散液で測定した粘度が10mPa・s以上であることが好ましい。ここで、粘度とは、純水中に1質量%に調製した水溶液を200mlビーカーに充填し、25℃に温調した後、粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、ローターを分散液に差し込んだ後、30秒間静置した後、60rpmで30秒間回転させた後の測定値を指す(但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用するローターは以下の通りである。1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3)。より好ましくは30mPa・s以上であり、さらに好ましくは40mPa・s以上である。その上限値は、特に設定されるものではないが、300mPa・s以下である。
<親水性物質>
セルロース複合体に、水への分散性を高める目的で、親水性ガム以外に、さらに親水性物質を加えてもよい。親水性物質とは、冷水への溶解性が高く粘性を殆どもたらさない有機物質であり、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳糖、マルトース、ショ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン等のオリゴ糖類、ブドウ糖、果糖、ソルボース等の単糖類、マルチトール、ソルビット、エリスリトール等の糖アルコール類等が適している。これらの親水性物質は、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でも、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類が分散性の点で好ましい。セルロース複合体中の、親水性物質の配合比率は60質量%以下が好ましい。より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下であり、最も好ましくは20質量%以下である。
上述の「溶解性が高く粘性をほとんどもたらさない」とは、1質量%の純水溶液において、好ましくは100mPa・s以下の粘度であることを意味する。ここでいう粘度は、以下の方法で測定される。高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて、純水中に分散し、水溶液を調製する。次に得られた水溶液について、分散3時間後(25℃保存)に、B型粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして60秒静置後に、30秒間回転させて測定する。上記粘度は、80mPa・s以下がより好ましく、50mPa・s以下がさらに好ましい。
<その他の成分>
pH調整剤、防腐剤、油脂類、アミノ酸類、塩類、各種リン酸塩類、乳化剤、酸味料、香料、保存料、色素などのその他の成分の配合については、セルロース複合体の水中での分散及び安定性を阻害しない程度に配合することは自由である。
<セルロース複合体の製造方法>
本発明に使用することができるセルロース複合体の製造方法を説明する。セルロース複合体は、混練工程において結晶セルロースと親水性ガムに機械的せん断力をあたえ、結晶セルロースを微細化させるとともに、結晶セルロース表面に親水性ガムを複合化させることによって得られる。また、親水性ガムや、その他の添加剤などを添加しても良い。上述の処理を経たものは、必要に応じ、乾燥される。本発明に使用することができるセルロース複合体は、上述の機械的せん断を経て、未乾燥のもの及びその後乾燥されたもの等、いずれの形態でもよい。
機械的せん断力を与えるには、混練機等を用いて混練する方法を適用することができる。混練機は、ニーダー、エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ライカイ機等を用いることができ、連続式でもバッチ式でもよい。混練時の温度は成り行きでもよいが、混練の際の複合化反応、摩擦等により発熱する場合にはこれを除熱しながら混練してもよい。これらの機種を単独で使用することも可能であるが、二種以上の機種を組み合わせて用いることも可能である。これらの機種は、種々の用途における粘性要求等により適宜選択すればよい。
混練時の固形分は、20質量%以上とすることが好ましい。混練物の粘性が高い半固形状態で混練することで、下記のように混練エネルギーが混練物に伝わりやすくなり、複合化が促進されるため好ましい。混練時の固形分は、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。上限は特に限定されないが、混練物が水分量の少ないパサパサな状態にならず、充分な混練効果と均一な混練状態が得られることを考慮して、現実的範囲は90質量%以下が好ましい。より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。また、固形分を上記範囲とするために、加水するタイミングとしては、混練工程の前に必要量を加水してもよいし、混練工程の途中で加水してもよいし、両方実施してもよい。
ここで、混練エネルギーについて説明する。混練エネルギーとは混練物の単位質量当たりの電力量(Wh/kg)で定義するものである。混練エネルギーは、50Wh/kg以上とすることが好ましい。混練エネルギーが50Wh/kg以上であれば、混練物に与える磨砕性が高く、結晶セルロースと親水性ガムとの複合化が促進され、酸性又は高塩濃度のセルロース複合体の分散安定性、懸濁安定性は向上する。より好ましくは80Wh/kg以上であり、さらに好ましくは100Wh/kg以上である。
混練エネルギーは、高い方が、複合化が促進されると考えられるが、混練エネルギーをあまり高くすると、工業的に過大な設備となること、設備に過大な負荷がかかることから、混練エネルギーの上限は1000Wh/kgとするのが好ましい。
複合化の程度は、結晶セルロースとその他の成分の水素結合の割合と考えられる。複合化が進むと、水素結合の割合が高くなり本発明の効果が向上する。また、複合化が進むことで、セルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)も高くなる。
本発明に使用することができるセルロース複合体を得るにあたって、前述の混練工程より得られた混練物を乾燥する場合は、棚段式乾燥、噴霧乾燥、ベルト乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。混練物を乾燥工程に供する場合には、混練物に水を添加せず、混練工程の固形分濃度を維持して、乾燥工程に供することが好ましい。乾燥後のセルロース複合体の含水率は1〜20質量%が好ましい。含水率を20質量%以下とすることで、べたつき、腐敗等の問題や運搬・輸送におけるコストの問題が生じにくくなる。より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。また、1質量%以上とすることで、過剰乾燥のため分散性が悪化することもない。より好ましくは1.5質量%以上である。
セルロース複合体を市場に流通させる場合、その形状は、粉体の方が取り扱い易いので、乾燥により得られたセルロース複合体を粉砕処理して粉体状にすることが好ましい。但し、乾燥方法として噴霧乾燥を用いた場合は、乾燥と粉末化が同時にできるため、粉砕は必要ない。乾燥したセルロース複合体を粉砕する場合、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の方法を用いることができる。粉砕する程度は、粉砕処理したものが目開き1mmの篩いを全通する程度に粉砕する。より好ましくは、目開き425μmの篩いを全通し、かつ、平均粒度(重量平均粒子径)としては10〜250μmとなるように粉砕することが好ましい。
乾燥したセルロース複合体を水中で攪拌した際、容易に分散し、セルロースが均一に分散した、なめらかな組織を持つザラツキの無い安定なコロイド分散体が形成され、安定剤等として優れた機能を奏する。
<ピックル液におけるセルロースの含有量>
ピックル液の質量を100質量%として、配合するセルロースの含有量としては、0.05質量%以上が好ましい。セルロースの含有量を0.05質量%以上とすることで、ピックル液を配合した食肉加工品からの加熱による離水を抑制する効果と高温保存時の水分移行を抑制する効果が得られる。より好ましくは0.1質量%以上であり、最も好ましくは0.2質量%以上である。上限は、ピックル液の食肉へ配合の容易さ、咀嚼時の香り立ちを勘案すると5.0質量%以下が好ましい。なお、ここでいうセルロースの含有量は、セルロース単独の素材の場合は、その素材自体の重量より算出され、セルロース複合体を用いた場合は、該セルロース複合体の重量から算出される(該セルロース複合体中のセルロース含量ではない)。
<食肉加工品>
食肉は、牛肉、豚肉、鶏肉、猪肉、羊肉、鹿肉、馬肉、鯨肉、魚肉などの食肉全般のことであり、これらの2種類以上の混合物であってもよい。ここで、本発明の食肉は、上述した本発明のピックル液が配合された食肉であり、食肉100質量部に対して該ピックル液を1〜70質量部配合した食肉であることが好ましい。また、食肉加工品とは、上述の食肉が加熱処理工程を経て得られる食品全般のことである。特に、フライ(揚げ)工程を経て得られる食品、及び/又は作製後に高温保存工程を経ることが想定される食品のことである。なお、これら食肉加工品は、冷凍、冷蔵、その他調理工程を経ていても構わない。ここで、本発明の食肉加工品は、上述した本発明の食肉を加工することで得られる食肉加工品である。
<ピックル液を配合した食肉の冷凍による硬度変化>
本発明におけるピックル液を配合した冷凍による食肉の硬度変化とは、以下の方法によって求められる。ピックル液を配合した食肉を5℃で一日保存した後に、20mm四方にカットしたテストピースの最大荷重をテクスチャー・アナライザー(英弘精機株式会社製、TA.XT plus型、測定治具:P−20N型、温度:25.0℃、Mode:Mesure Force in Compression、Option:Return to Start,Pre−Test Speed:1.0mm/s,Test−Speed:1.0mm/s,Post−Test Speed:10mm/s,Distance:5mm,Triger Type:Auto 5g)により測定し、この値を最大荷重(A)とする。次に、このテストピースを−25℃で1ヶ月間冷凍保存し、5℃で一日解凍した後に、冷凍前と同様の方法で最大荷重を測定し、この値を最大荷重(B)とする。本発明における冷凍による食肉の硬度変化とは、「最大荷重(B)/最大荷重(A)」で求められる数値のことであり、1.3以下であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、冷凍によるドリップを抑制し、調理後は冷凍前と同等の食感の食肉製品が得られるため好ましい。より好ましくは1.2以下であり、最も好ましくは1.1以下である。
<結着性(保水性)>
本発明における結着性とは、食肉製品中の肉組織同士の接着性のことである。結着性の発現により、外部からの力に対して一定の抵抗力を持ち、肉組織内部に水を保持する保水性が発現する。この保水性は、食肉中に水分を留める性質だけではなく、肉の柔らかさ、色、さらには加熱後の歩留りに大きな影響を与える。
<食肉へのピックル液の配合方法>
本発明における食肉加工品へのピックル液の配合方法は従来の公知の方法で行われる。例えば、インジェクターと呼ばれる機械を用いて、食肉中にピックル液を注入するピックルインジェクション法である。インジェクターには単針インジェクターと多針インジェクターがあり、どちらも先端の注射針を食肉に差し込み、加圧することによって、ピックル液を食肉中に強制的に注入する。この際、ピックル液が注入された食肉中ではピックル液の濃度にムラが生じてしまう。このため、円筒形の容器にピックル液が配合された食肉及び同重量のピックル液を投入し、回転運動を加え、食肉同士又は食肉と容器の壁面を衝突させることにより、食肉中のピックル液を内部に均等に分散させる。このような操作を行う機械はタンブラーと呼ばれ、この操作をタンブリングと呼ぶ。また、このタンブリング工程のみで食肉中にピックル液を配合しても良い。ピックル液の配合量は、食肉100質量に対して1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、20質量部以上が最も好ましい。上限は、味や食感の観点から70質量部以下が好ましく、50質量部以下がさらに好ましい。
また、ピックル液中にセルロール(特にはセルロース複合体)及び水溶性多糖類(特にはPSG)を配合することで、水溶性多糖類を単独で配合した場合と比較して、ピックルインジェクション法における食肉へのピックル液配合の容易性が向上する効果が得られる。この効果は、セルロースによりピックル液中の蛋白類の凝集を抑制し、さらに不溶成分の沈殿を抑制することでインジェクター中の詰まりが防止されるためである。また、凝集物等の粗大粒子の減少により、タンブリング法における肉中への浸漬性も向上する効果が得られる。
<ピックル液の降伏値>
ピックル液は、それを配合した食肉加工品からの加熱による離水を抑制する効果と高温保存時の水分移行を抑制する効果の観点から、一定値以上の降伏値を有することが好ましい。特に、ピックル液の降伏値が0.2Pa以上であることが好ましく、0.4Pa以上であることがより好ましく、1.0Pa以上であることが更に好ましい。上限は特に設定されるものではない。
<ピックル液の降伏値測定方法>
降伏値の測定方法は、作製したピックル液を試料として、せん断速度を変化させた時の応力を粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、最終せん断速度:200 s−1、ゾーン時間: 60s、試験前待ち時間: 600s、ピックル液は微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込む)により測定する。具体的に、せん断速度(Shear Rate)を0[1/s]から200[1/s]まで、せん断速度を1[1/s]ずつ増加させていった際の各せん断速度でのせん断応力(stress[Pa])をプロットし、次にせん断速度を200[1/s]から1[1/s]ずつ減少させて、最終的に0[1/s]まで変化させた際の各せん断速度でのせん断応力(stress[Pa])を同様にプロットする。この時、0[1/s]から200[1/s]までのプロットで得られた応力曲線と、200[1/s]から0[1/s]までのプロットで得られた応力曲線が異なったものになり、0[1/s]から200[1/s]までの応力曲線上に、上に凸の部分が現れた場合、当該凸部の極大点のせん断応力の値を降伏値とする(図1を参照。)。また、上に凸の極大点が現れなかった場合には、降伏値はないものとする。
<ピックル液の製法>
本発明におけるピックル液は、原料を攪拌する工程(攪拌工程)、混合した原料の粒子を微粒化する工程(微粒化工程)を経ることにより製造される。上記製造工程において、原料とはピックル液を構成する原料を言い、前述のセルロース及び水溶性多糖類以外に単糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、澱粉類、加工澱粉類、油脂類、アミノ酸類、食塩、各種リン酸塩類、乳化剤、ゲル化剤、増粘安定剤、酸味料、pH調整剤、香料、香辛料、保存料、色素などの食品に使用できる成分を適宜配合してもよい。水溶性多糖類、セルロースは、攪拌工程において、その他の粉末原料と共に投入する、あらかじめ水に水溶性多糖類、セルロースを分散させた分散液を投入する、または水分を含む原料と共に投入する、微粒化工程において投入する、のうちいずれの方法で添加してもよい。特に微粒化工程より前の攪拌工程で投入することにより、セルロースの分散、水溶性多糖類の溶解が促進されるため好ましい。上記撹拌工程で使用することのできる装置としては、高速攪拌機等が挙げられる。また、微粒化工程は、高圧ホモジナイザー、石臼式磨砕器等の装置を使用して、撹拌工程で得られた原料の水性撹拌物中の原料粒子を微粒化することにより達成できる。
<増粘安定剤>
本発明のピックル液に対して、更に増粘安定剤を添加することも好適な態様である。本発明における増粘安定剤とは、水に溶解又は分散して粘稠性を生じる高分子物質のことであり、以下のものが好適である。なお、本発明における増粘安定剤には、セルロースが除かれる。
本発明における増粘安定剤としては、例えばカラヤガム、λ―カラギーナン、κ―カラギーナン、ι―カラギーナン、寒天、ファーセルラン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、HMペクチン、LMペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、キサンタンガム、ジェランガム並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシエチルセルロースナトリウム及びカルボキシエチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体が挙げられる。これらの陰イオン性多糖類は2種以上を組み合わせてもよい。これら陰イオン性多糖類を配合することで、高温保存時の水分又は油分の浸みだしを抑制する効果が得られる。配合量は食感の観点から、1.0質量%以下が好ましい。より好ましくは0.8質量%以下であり、最も好ましくは0.5質量%以下である。下限は特に設定されるものではない。
<フライ工程>
本発明におけるフライ工程とは、油の有無に関わらず、食品を高温物に接触させることで、食品の表面の水分を瞬間的に蒸発させ、高温物と直接接触した食品部分を硬化させる調理方法のことである。具体的には食品の表面積の50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%が同時に高温物に接触する調理方法のことである。一般的に高温の油に食品を接触させ行われる。使用する油は、食用の油脂であれば制限はなく、例えばサラダ油、白絞油、コーン油、大豆油、ごま油、菜種油、こめ油、糠油、椿油、サフラワー油、ヤシ油、綿実油、ひまわり油、エゴマ油、アマニ油、オリーブオイル、ピーナッ
ツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、ウォルナッツオイル、グレープシードオイル、マスタードオイル、レタス油、魚油、これらの硬化油、エステル化油などが挙げられる。これらを2種類以上混合してもよい。フライの温度や時間は、製品の大きさや形状により適宜調整されるものであり、特に制限はない。
<加熱後の歩留り>
本発明における加熱後の歩留りとは、加熱前の食肉の重量に対する加熱後の食肉の重量の割合のことであり、下記の計算式で算出される。ここでいう加熱前、及び加熱後の食肉の重量とは、加熱前後における食肉のみの重量のことであり、その他の食品と複合食品を形成している場合は、食肉以外の複合部分を除いた重量である。加熱後の歩留りは、食肉の食感を勘案すると、75質量%以上が好ましい。より好ましくは、78質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、最も好ましくは、82質量%以上である。上限は特に定まられるものではない。
加熱後の歩留り(質量%)=(加熱後の肉の重量(g)/加熱前の肉の重量(g))×100
<高温保存工程>
本発明における高温保存工程とは、食肉加工品を作製後、時間が経過しても作製直後に近い温度や味や食感等を維持するため、50〜80℃の比較的高温状態を保った容器で食品を保存する工程のことである。保存容器の種類、保存時間の制限は特にない。
本発明を下記の実施例により説明する。ただし、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
ピックル液の試作方法、各種物性の評価方法を説明する。なお、ピックル液の物性評価には、トンカツを用いた。
<ピックル液の試作方法>
1)粉末状大豆蛋白、ホエー蛋白、砂糖をポリ袋に投入し粉混合した。
2)5℃に冷却した水に、セルロース及び/又は水溶性多糖類を投入し、さらに1)で粉混合したものを投入し、高速攪拌機(TOKUSHU KIKA KOGYO製 商品名:TKホモミキサーMARKII)を用いて攪拌した。(8000rpm×10分)。
3)クエン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウム、L−グルタミン酸ナトリウムをポリ袋に投入し粉混合した。
4)2)に3)で粉混合したものを投入し、さらに食塩を投入し、高速攪拌機(TOKUSHU KIKA KOGYO製 商品名:TKホモミキサーMARKII)を用いて攪拌した。(5000rpm×10分)。
5)4)を高圧ホモジナイザー(APV(株)圧力式ホモジナイザー)を用いて微粒化し(10+5MPa)、ピックル液を得た。
<ピックル液の加熱による粘度変化の測定>
上記方法で作製したピックル液を2つのガラス製ビーカーに分注する。一方のピックル液を5℃で3時間静置する。静置後、粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、ローターをピックル液に差し込んだ後、30秒間静置した後、60rpmで30秒間回転させた後の測定値を粘度値(A)とする。もう一方のピックル液を60℃に恒温したオイルバス(ADVANTEC製、OC−271)中に静置し、60℃に達温後、さらに30分間静置する。静置後、5℃に調温した後、5℃で3時間静置する。静置後、粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、ローターをピックル液に差し込んだ後、30秒間静置した後、60rpmで30秒間回転させた後の測定値を粘度値(B)とする。加熱による粘度変化は、粘度比(B/A)により測定を行った。
<インジェクションの容易性>
単針インジェクター(ヴァコナ(株)製ハンドインジェクター)を用いて、上記方法で作製したピックル液を2barの圧力で食肉中へ注入する際の容易性(インジェクション時の詰まり発生の有無)を評価するため、流量を測定し、以下の基準で容易性の評価を行った。
流量が40ml/s以上:○
流量が20ml/s以上40ml/s未満:△
流量が20ml/s未満(詰まりが発生):×
<ピックル液を配合した食肉の冷凍による硬度変化>
ピックル液を配合した食肉を5℃で一日保存した後に、20mm四方にカットしたテストピースの最大荷重をテクスチャー・アナライザー(英弘精機株式会社製、TA.XT plus型、測定治具:P−20N型、温度:25.0℃、Mode:Mesure Force in Compression、Option:Return to Start,Pre−Test Speed:1.0mm/s,Test−Speed:1.0mm/s,Post−Test Speed:10mm/s,Distance:5mm,Triger Type:Auto 5g)により測定し、この値を最大荷重(A)とした。次に、このテストピースを−25℃で1ヶ月間冷凍保存し、5℃雰囲気下に1日静置し解凍した後に、冷凍前と同様の方法で最大荷重を測定し、この値を最大荷重(B)とした。「最大荷重(B)/最大荷重(A)」により硬度変化の値を算出し、評価を行った。
<トンカツの試作方法>
1)国産豚ロース肉塊100質量部に単針インジェクター(ヴァコナ(株)製ハンドインジェクター)を用いて上述手順で作製したピックル液を20質量部打ち込んだ。
2)次に1)で得られた肉塊を厚さ約250mm、重さ約200gになるように包丁でカットした。
3)カットした肉を急速冷凍器(菱豊フリーズシステムズ(株)製プロトン凍結器Pr.C−15)を用いて急速冷凍(−35℃×8hr)を行った。
4)冷凍後、凍結した肉を市販のバッター粉(ダイショー(株)製、厨房王スーパーバッターたまご入り)を水に溶いたものに通し、さらに全体にパン粉をまぶした。
5)再び急速冷凍器を用いて急速冷凍を行った(−35℃×3hr)。
6)凍結した状態のまま、200℃に加熱したサラダ油に投入し、約10分間フライを行い、トンカツを得た。
<衣の浮き抑制の評価>
フライ工程を行った直後のトンカツを包丁を用いて切断し、断面の衣部分と食肉部分の隙間の有無を観察し、衣部分と食肉部分の間に1mm以上の隙間があった場合、浮きが発生しているものとした。なお、衣部分と食肉部分の隙間はノギスを用いて測定した。一つのサンプルにつき、10検体ずつ評価を行い、隙間が生じた検体数をカウントし「衣の浮き発生数」とした。「衣の浮き発生数」が少ない程、衣の浮きを抑制できるものとした。
<フライ後の歩留り評価>
上述のトンカツ試作方法の手順4)終了後に、フライ前の肉の重量(衣、バッターなし)を測定した。その後、手順通りにトンカツを試作した後に、衣部分を取り除き、フライ後の肉の重量を測定した。下記の計算式に従って、歩留りを評価した。
フライ後の歩留り(質量%)=(フライ後の肉の重量(g)/フライ前の肉の重量(g))×100
<香り立ち及び食感の官能評価>
パネル10名を対象にトンカツの咀嚼時の香り立ち(肉本来の風味を感じることができるか)について5段階評価で官能評価を行い、その平均値を「香り立ち」の評価結果とした。評点は以下の基準で評価し、平均値を試験結果とした。
1点:香り立ちが悪い
2点:香り立ちがやや悪い
3点:普通
4点:香り立ちがやや良い
5点:香り立ち良い
パネル10名を対象に60℃で3時間保存後のトンカツの食感(サクサクとした食感を感じることが出来るか)について5段階評価で官能評価を行い、その平均値を「食感」の評価結果とした。評点は以下の基準で評価し、平均値を試験結果とした。
1点:食感が悪い
2点:食感がやや悪い
3点:普通
4点:食感がやや良い
5点:食感が良い
(実施例1)
上述のピックル液の試作方法において、全量仕込み量4000gに対して、大豆蛋白を4質量%、ホエー蛋白を2質量%、食塩を4質量%、L−グルタミン酸ナトリウムを0.5質量%、砂糖を4質量%、クエン酸三ナトリウムを2.5質量%、炭酸ナトリウムを0.125質量%、サイリウムシードガム(シキボウ(株)、製品名:P−100、粘度:2.8Pa・s、加熱による粘度変化値[粘度比(D/C)]:1.2)を3質量%、残りを水として仕込みピックル液を試作した。
上記の配合で試作したピックル液を使用し、上述のトンカツの試作方法にてトンカツを得た。得られたトンカツについて上述の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1のピックル液の試作方法において、サイリウムシードガムの配合量を2質量%に変更した以外は、同様にピックル液を作製した。上述のトンカツ試作方法にてトンカツを試作し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1のピックル液の試作方法において、サイリウムシードガムの配合量を1質量%に変更した以外は、同様にピックル液を作製した。上述のトンカツ試作方法にてトンカツを試作し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1のピックル液の試作方法において、サイリウムシードガムの配合量を0.5質量%に変更した以外は、同様にピックル液を作製した。上述のトンカツ試作方法にてトンカツを試作し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例4のピックル液試作方法において、更に粉末セルロース(日本製紙ケミカル(株)、製品名:W−400G)を0.2質量%配合した(水と置き換えた)以外は同様にピックル液を作製した。上述のトンカツ試作方法にてトンカツを試作し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例4のピックル液試作方法において、更に結晶セルロース(旭化成ケミカル(株)、製品名:ST−100、粒子形状(長辺L/短辺D):2.7)を0.2質量%配合した(水と置き換えた)以外は同様にピックル液を作製した。上述のトンカツ試作方法にてトンカツを試作し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例4のピックル液試作方法において、更に結晶セルロース複合体(旭化成ケミカル(株)、製品名:RC−N30、貯蔵弾性率3.4Pa、降伏値1.8Pa、粘度:49.2mPa・s)を0.1質量%配合した(水と置き換えた)以外は同様にピックル液を作製した。上述のトンカツ試作方法にてトンカツを試作し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例7のピックル液試作方法において、結晶セルロース複合体(旭化成ケミカル(株)、製品名:RC−N30、貯蔵弾性率3.4Pa、降伏値1.8Pa、粘度:49.2mPa・s)の配合量を0.2質量%に変更した以外は同様にピックル液を作製した。上述のトンカツ試作方法にてトンカツを試作し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例4のピックル液試作方法において、サイリウムシードガムのグレードを三菱化学フーズ(株)製、製品名:PG−200(粘度:2.1Pa、加熱による粘度変化値[粘度比(D/C)]:1.1)に変更した以外は同様にピックル液を作製した。上述のトンカツ試作方法にてトンカツを試作し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例4のピックル液試作方法において、サイリウムシードガム0.5質量%を結晶セルロース複合体(旭化成ケミカル(株)、製品名:RC−N30、貯蔵弾性率3.4Pa、降伏値1.8Pa、粘度:49.2mPa・s)0.3質量%に置き換えた以外は同様にピックル液を作製した。上述のトンカツ試作方法にてトンカツを試作し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1のピックル液試作方法において、サイリウムシードガムを無配合にした以外は、同様にピックル液を作製した。上述のトンカツの試作方法にてトンカツを試作し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例2)
実施例4のピックル液の試作方法において、サイリウムシードガムをキサンタンガム(粘度:744mPa・s、加熱による粘度変化値:0.7)に変更した以外は、同様にピックル液を作製した。上述のトンカツの試作方法にてトンカツを試作し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例3)
実施例1のピックル液の試作方法において、サイリウムシードガムを無配合に変更し、カードラン(粘度:83mPa・s、加熱による粘度変化値:0.8)を2.0質量%、キサンタンガムを0.05質量%配合した以外は、同様にピックル液を作製した。上述のトンカツの試作方法にてトンカツを試作し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0006539537
Figure 0006539537
本発明は、食品工業においてピックル液に利用できる。

Claims (5)

  1. 水溶性多糖類を少なくとも含み、更にセルロースを含んでもよいピックル液であって、
    該水溶性多糖類がサイリウムシードガムであり、
    該ピックル液の粘度値Bと粘度値Aの比(B/A)が、0.8以上である、ピックル液。
    (ただし、粘度値Aは該ピックル液を加熱せず5℃で測定した際の粘度値であり、粘度値Bは該ピックル液を60℃で30分間加熱した後に5℃に戻した際の粘度値である)
  2. 前記水溶性多糖類の粘度値Dと粘度値Cの比(D/C)が0.9以上であることを特徴とする、請求項1に記載のピックル液。
    (ただし、粘度値Cは該水溶性多糖類の1.0質量%水溶液を加熱せず25℃で測定した際の粘度値であり、粘度値Dは該水溶性多糖類の1.0質量%水溶液を60℃で30分間加熱した後に25℃に戻した際の粘度値である)
  3. セルロースを少なくとも含み、前記セルロースが結晶セルロース複合体である、請求項1又は2に記載のピックル液。
  4. 食肉100質量部に対し、請求項1〜のいずれか1項に記載のピックル液を1〜70質量部配合した食肉。
  5. 請求項に記載の食肉を加工することで食肉加工品が得られる食肉加工品の製造方法
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