JP2009065836A - 液卵組成物及び卵加工食品 - Google Patents

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Abstract

【課題】均一性及び流動性が改善された取扱性及び生産性に優れる液卵組成物、並びに、風味劣化が抑制され、気泡安定性、ジューシー感や保形性及び向上し、食感が改善された卵加工食品を提供すること。
【解決手段】植物細胞壁を原料とする結晶性の繊維状セルロース、及び/又は、前記繊維状セルロース30〜95質量%と水溶性高分子及び/又は親水性物質5〜70質量%とを含むセルロース乾燥組成物を、液卵に配合する。繊維状セルロース及びセルロース乾燥組成物は、水中で懸濁する成分を30質量%以上含有し、且つ、0.5質量%水分散液としたときの損失正接が1未満であるものが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、液卵組成物及びこれを用いた卵加工食品に関し、特に、特定の繊維状セルロースを配合した液卵組成物及びこれを用いた卵加工食品に関するものである。
従来、卵を用いた卵加工食品は、数多く製造されており、我々の食生活に欠かせないものとなっている。工業的に大量の卵加工食品を製造する場合、卵の殻を取り除いた液卵は、一般的には、殺菌及び容器詰めし、さらに、容器詰めされた液卵の保存性を高めるために冷凍して用いられている。しかしながら、加熱殺菌又は冷凍した液卵は、卵の熱変性や冷凍変性等が生じて、組織が不均一となり或いは流動性が低下する傾向にあるので、その調理前に充分な攪拌作業が必要とされる。この攪拌作業は手間がかかるので、熱変性や冷凍変性等が抑制され、解凍後に攪拌作業が必要とされない、取扱性及び生産性に優れる液卵が望まれている。一方で、加熱又は冷解凍した液卵を用いて得られる卵加工食品は、風味やジューシー感や食感の劣化、及び気泡安定性や保形性の低下等が生じ易いので、これを改善するために、様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には、冷凍液卵にデキストリンアルコールを添加することにより、冷凍液卵の調理前の攪拌作業の手間を解消し、加熱調理時の焦げ付きを抑制し、さらに、卵加工食品の風味食感を改善する技術が開示されている。
また、特許文献2には、液卵に澱粉とセルロース等の水不溶性食物繊維とを配合することにより、加熱凝固卵の食感を茹で卵の黄身様に改善する技術が開示されている。
特開2001−346508号公報 特開2007−143466号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、甘みのあるデキストリンアルコールを添加するので、得られる冷凍卵加工品の風味が損なわれるばかりか、調理時に未だ焦げ付き易い傾向にあるので、適用できる卵加工食品が限られ、汎用性に劣るものであった。
また、特許文献2に記載の技術においては、冷凍保存時に液卵の冷凍変性が生じ易く、また、冷凍した後に得られる液卵の流動性が低くなる傾向にあるので、取扱性に劣るものであった。
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、均一性及び流動性が改善された取扱性及び生産性に優れる液卵組成物、及び、風味劣化が抑制され、気泡安定性、ジューシー感及び保形性が向上し、食感が改善された卵加工食品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討した結果、液卵に特定の繊維状セルロースを配合することにより、熱変性や冷凍変性が抑制されること、並びに、かかる液卵組成物を用いて得られる卵加工食品は、風味劣化が抑制され、気泡安定性、ジューシー感や保形性が向上されたものとなること、及び、食感が改善されたものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下<1>〜<5>を提供する。
<1> 液卵とセルロースとを含有する液卵組成物であって、植物細胞壁を原料とする結晶性の繊維状セルロース、及び/又は、前記繊維状セルロース30〜95質量%と水溶性高分子及び/又は親水性物質5〜70質量%とを含むセルロース乾燥組成物を含有し、前記繊維状セルロース及び前記セルロース乾燥組成物は、水中で懸濁する成分を30質量%以上含有し、且つ、0.5質量%水分散液としたときの損失正接が1未満である、液卵組成物。
<2> 前記繊維状セルロースが、長さが0.5μm〜1mm、幅が2nm〜60μm、長さと幅の比が5〜400の微細化された繊維状セルロースである、請求項1に記載の液卵組成物。
<3> 前記繊維状セルロース及び/又は前記セルロース乾燥組成物を、0.001〜10質量%含有する、<1>又は<2>に記載の液卵組成物。
<4> 前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の液卵組成物を、加熱殺菌及び/又は冷凍保存して得られる液卵組成物。
<5> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の液卵組成物を、調理加工して得られる卵加工食品。
本発明によれば、液卵組成物の均一性や流動性が改善され、攪拌作業が必須とされないので、取扱性及び生産性を高めることができ、かかる液卵組成物を用いることにより、風味劣化が抑制され、気泡安定性やジューシー感や保形性が向上し、食感が改善された卵加工食品を簡易に提供することができるので、生産性及び経済性の向上が図られる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、この実施の形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限り、種々の形態で実施することができる。
本実施形態の液卵組成物は、液卵と、植物細胞壁を原料とする結晶性の繊維状セルロース、及び/又は、その繊維状セルロース30〜95質量%と水溶性高分子及び/又は親水性物質5〜70質量%とを含むセルロース乾燥組成物とを含有する。
本実施形態で使用される液卵は、卵の調理特性である加熱凝固性能を有するものであり、その具体例としては、鶏や鶉等の鳥類の卵を割卵し殻を除去した成分そのままの全卵、卵黄と卵白の混合比率を変えたもの、液卵黄のみのものの他、アルコール抽出法や超臨界二酸化炭素抽出法等により脂質やコレステロールを低減したもの、及び、脱糖処理、脱塩処理等を施したもの等が挙げられる。
本実施形態で使用されるセルロースは、「微細化された繊維状」の形態を有することが好ましい。ここで、「微細化された繊維状」とは、光学顕微鏡又は電子顕微鏡にて観察され測定されるところの、長さ(長径)が0.5μm〜1mm、幅(短径)が2nm〜60μm、長さと幅の比(長径/短径)が5〜400であることを意味する。
本実施形態で使用される繊維状セルロースは、より強固なネットワーク構造を形成するために、結晶性であることが必要とされる。具体的には、X線回折法(シーゲル法)で測定されるところの結晶化度が50%を越え、好ましくは55%以上のものが、本実施形態の繊維状セルロースとして用いられる。なお、繊維状セルロース及びセルロース乾燥組成物が、繊維状セルロース以外の他の成分を含有する場合、それらの他の成分は非晶性としてカウントして測定し、その結果、結晶化度が50%であれば、セルロースの結晶化度は50%以上であるといえる。
上記の繊維状セルロースは、植物細胞壁を起源とするセルロース性物質を原料する。よって、植物細胞壁を原料としない微生物セルロースや再生セルロースは、本実施形態の原料としては含まれない。植物細胞壁を起源とするセルロース性物質は、工業的に使用可能であれば特に限定されるものではなく、その具体的としては、例えば、木材(針葉樹、広葉樹)、コットンリンター、ケナフ、マニラ麻(アバカ)、サイザル麻、ジュート、サバイグラス、エスパルト草、バガス、稲わら、麦わら、葦、及び竹等の天然セルロースを主成分とするパルプが挙げられる。これら天然セルロースを主成分とするパルプは、コストが低く且つ安定的に入手することができるので、これを原料として使用することで、製品を経済的に且つ安定して市場に供給することができる。
一方、綿花、パピルス草、こうぞ、みつまた、ガンピ等を主成分とするパルプも使用可能であるが、原料の安定的な確保が困難であること、セルロース以外の成分の含有量が多いこと、ハンドリングが難しいこと等の観点から、工業的な利用において好ましくない場合がある。ビートパルプや果実繊維パルプ等の柔細胞由来の原料もまた同様である。
特に好ましいのはイネ科植物の細胞壁を起源とするセルロース性物質であり、その具体例としては、バガスパルプ、稲わらパルプ、麦わらパルプ、竹パルプ等が挙げられる。これらのパルプは、木材パルプや麻パルプと異なり、極めて容易に微細化されるので、効率よく高性能の製品を作り得ることができる。
本実施形態で使用されるセルロース乾燥組成物は、上記の繊維状セルロースと水溶性高分子及び/又は親水性物質とを含み、水性媒体の存在下で機械的な剪断力を与えたときに、粒子が崩壊して微細化された繊維状セルロースをばらばらにほどけさせて分散させるものである。かかる観点から、このセルロース乾燥組成物においては、水溶性高分子及び/又は親水性物質を配合することが重要であり、これらを配合せずに繊維状セルロースを単独で乾燥すると、繊維状セルロースをばらばらに分散させるのが困難な傾向にある。
セルロース乾燥組成物における配合割合は、固形分換算で、繊維状セルロース:水溶性高分子及び/又は親水性物質=30〜95:5〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは、40〜90:10〜60質量%、さらに好ましくは、50〜90:10〜50質量%である。水溶性高分子及び/又は親水性物質の配合量を増やすほど、水性媒体の存在下における粒子の崩壊性及び分散性が向上し、作業性及び機能性の面でより優れた効果が発揮される傾向にあり、一方、繊維状セルロースの含有量が極端に少ないと、繊維状セルロースが形成するネットワーク構造が弱くなるので、上記の組成範囲とすることが好ましい。
本実施形態で使用される水溶性高分子は、冷水及び/又は温水に溶解或いは膨潤する高分子であり、乾燥時における繊維状セルロース同士の角質化を防止する作用を有するものであり、その具体例としては、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸及びその塩、カードラン、ガッティーガム、カラギーナン、カラヤガム、寒天、キサンタンガム、グアガム、酵素分解グアガム、クインスシードガム、ジェランガム、ゼラチン、タマリンド種子ガム、難消化性デキストリン、トラガントガム、ファーセルラン、プルラン、ペクチン、ポリデキストロース、ローカントビーンガム、水溶性大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、各々単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
これらのなかでも、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムを用いることが好ましく、とりわけ、置換度0.5〜1.5のカルボキシメチルセルロース・ナトリウムがより好ましく、さらに好ましくは置換度0.6〜0.8のカルボキシメチルセルロース・ナトリウムである。
本実施形態で使用される親水性物質は、冷水への溶解性が高く、粘性を殆どもたらさず、常温で固体の物質であり、その具体例としては、デキストリン類、水溶性糖類(ブドウ糖、果糖、庶糖、乳糖、異性化糖、キシロース、トレハロース、カップリングシュガー、パラチノース、ソルボース、還元澱粉糖化飴、マルトース、ラクツロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等)、糖アルコール類(キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール等)が挙げられる。これらは、各々単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
親水性物質は、より低分子量のものの方が水中における粒子の崩壊性及び分散性が良くなる傾向にあり、ブドウ糖、蔗糖、トレハロース等は、かかる観点で良好な性質を示すが、その一方で、これらは製造時の乾燥性や製品の吸湿性、経時安定性等が劣る傾向にある。これらのバランスが良い物質としては、DE(dextrose equivalent)が20以上のデキストリンが挙げられる。
上述した繊維状セルロース及びセルロース乾燥組成物は、繊維状セルロースと水溶性高分子と親水性物質以外に、懸濁安定性や風味、外観等の改善を目的として、デンプン類、油脂類、蛋白質類、食塩、各種リン酸塩等の塩類、乳化剤、酸味料、甘味料、香料、色素等の他の成分が適宜配合されたものであってもよい。これらの他の成分の配合量は、計10質量%以下が好ましく、製造性、機能及び価格等を考慮して適宜決定される。
上述した繊維状セルロース及びセルロース乾燥組成物は、水中で安定に懸濁する成分を含有する。本明細書において「水中で安定に懸濁する成分」とは、具体的には、0.1質量%濃度の水分散液を調整し、これを9800m/s2で5分間遠心分離したときに、沈降することなく水中に安定に懸濁している成分である。かかる「水中で安定に懸濁する成分」の主成分は、長さ(長径)が0.5〜30μmであり、幅(短径)が2〜600nmであり、長さと幅の比(長径/短径比)が20〜400である繊維状セルロースであり、これらは、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察・測定することができる。
本実施形態で使用される繊維状セルロース及びセルロース乾燥組成物は、上記の「水中で安定に懸濁する成分」を、各々の総量に対する固形分換算で30質量%以上含有する。この成分が多いほど、より緻密なセルロースのネットワーク構造が形成され、液卵の安定性が高まり、熱変性や冷凍変性が生じ難くなる傾向にあり、また、得られる卵加工食品の気泡安定性や保形性やジューシー感、保水性が高める傾向にある。上記の「水中で安定に懸濁する成分」の含有量は、多いほど好ましく、より具体的には、50質量%以上100%以下であることが好ましい。
また、本実施形態で使用される繊維状セルロース及びセルロース乾燥組成物は、0.5質量%濃度の水分散液としたときに、歪み10%、周波数10rad/sの条件下で測定される損失正接(tanδ)が1未満のものであり、好ましくは0.6未満である。
かかる損失正接の値は、水分散液の動的粘弾性を示すものであり、値が低いほどその水分散液がゲル的性質をとる。高分子水溶液におけるゲルとは、一般的に、溶質(高分子鎖)が三次元的なネットワーク構造を形成し、溶媒(水)を不動化(固定化)する状態と考えられている。一般論として、ゲル形成性水溶性高分子は、低濃度でゲルを形成しない状態では損失正接が1以上となり、濃度が上がるにつれて値が下がり、ゲルを形成する濃度では1未満となるといわれている。
本実施形態の繊維状セルロース及びセルロース乾燥組成物は、流動性があるので真性のゲルではないが、前述の測定条件において損失正接が1未満である点で、ゲル的性質を有するものと言える。すなわち、歪み10%、周波数10rad/sのような低周波数或いは低歪みにおいて、分散質(微細化された繊維状セルロース)が三次元ネットワーク構造を形成することで、分散媒(水)を固定化する性質、すなわちゲル的性質を有する、と考えられる。損失正接が1以上であると、ネットワーク構造が弱くなり、前述した液卵組成物及び卵加工食品の物性改善効果が劣る傾向にある。一方、損失正接が0.6未満であると、それらの機能がさらに高まる傾向にある。
本実施形態で使用される繊維状セルロース及びセルロース乾燥組成物の損失正接を1未満にするためには、セルロースミクロフィブリルをできるだけ微細化させた状態で、且つ、短繊維化させることなく取り出すことが重要である。ここでいう、「短繊維化」とは、セルロースミクロフィブリルの繊維長を短く切断すること、及び、短くなった繊維の状態そのものの双方を意味する。また「微細化」とは、セルロースミクロフィブリルの繊維径を、引き裂く等の作用により細くすること、及び、細くなった繊維の状態そのものの双方を意味する。
現在の技術では、セルロースミクロフィブリルを全く「短繊維化」させることなく、引き裂き作用のみを与えて「微細化」のみを進行させる技術は見出されていないが、セルロースミクロフィブリルの「短繊維化」を最低限に抑えつつ「微細化」を進行させる好適な指針を、以下に示す。
原料として植物細胞壁を起源とするセルロース性物質を選択する際に、平均重合度が400以上で、且つ、α−セルロース含有量が60〜100質量%のものを選択することが好ましく、より好ましくは平均重合度が400〜12000で、α−セルロース含有量が60〜85質量%のものを選択する。
この場合の原料は、微細化の促進を目的として、前処理を行ってから使用してもよい。前処理法の例としては、希薄なアルカリ水溶液(例えば、1mol/LのNaOH水溶液)に数時間浸漬したり、希薄な酸水溶液に浸漬したり、酵素処理したり、爆砕処理すること等が挙げられる。
また、微細化処理に使用する装置は、高圧ホモジナイザーが好ましく、その具体例としては、エマルジフレックス(AVESTIN,Inc.製)、アルティマイザーシステム(株式会社スギノマシン製)、ナノマイザーシステム(ナノマイザー株式会社製)、マイクロフルイダイザー(MFIC Corp.製)、バルブ式ホモジナイザー(三和機械株式会社製、Invensys APV社製、Niro Soavi社製、株式会社イズミフードマシナリー製)等が挙げられる。さらに、これら高圧ホモジナイザーを、60〜414MPa程度の処理圧力で使用することが好ましい。
本実施形態で使用されるセルロース乾燥組成物は、上記方法等にて微細化された繊維状セルロースと水溶性高分子及び/又は親水性物質とを所定量配合し、適当な撹拌・混合機を選択して充分に混合し、公知の方法で乾燥する等の手法により容易に得られる。乾燥後の水分は、特に限定されるものではないが、取扱性及び経時安定性の観点から、固形分換算で15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。
得られた乾燥組成物は、必要に応じて粉砕する。ここでは、粉砕機としてカッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等を用い、目開き2mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕することが好ましく、より好ましくは目開き425μmの篩をほぼ全通し、且つ、平均としては長径10〜250μmとなるように粉砕する。乾燥組成物の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、顆粒状、粒状、粉末状、鱗片状、小片状、又はシート状等の公知の形状を適宜選択可能である。
本実施形態の液卵組成物において、繊維状セルロース及びセルロース乾燥組成物の配合量は、適用する食品の形態によって適宜設定できるが、液卵組成物の総量に対する固形分換算で、計0.001〜10質量%とすることが好ましい。繊維状セルロース及びセルロース乾燥組成物の配合量が10質量%より多い場合には、液卵組成物の粘性が高くなり過ぎて作業性が悪化する傾向にある。一方、配合量が0.001質量%より少ない場合には、液卵組成物の均一性や流動性改善等の効果が不十分となる傾向にある。液卵組成物に対する繊維状セルロース及びセルロース乾燥組成物の配合量は、より好ましくは計0.001〜10質量%、さらに好ましくは計0.01〜5質量%、最も好ましくは計0.05〜3質量%である。
本実施形態の液卵組成物は、上記の繊維状セルロース及びセルロース乾燥組成物が無味無臭であるので、味や香り等において卵本来の風味を損なうことがなく、また、非常に微細な形状であるので、ザラツキや後口に残る等の食感への悪影響も実質的にない。
本実施形態の液卵組成物には、本発明の効果に影響を与えない範囲で、一般的に使用される水溶性高分子類、澱粉等の粘度調整剤、乳化剤、ポリリン酸塩やグリシン等の静菌剤等を必要に応じて添加してもよい。
水溶性高分子の具体例としては、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸及びその塩、カードラン、ガッティーガム、カラギーナン、カラヤガム、寒天、キサンタンガム、グアガム、酵素分解グアガム、クインスシードガム、ジェランガム、ゼラチン、タマリンド種子ガム、難消化性デキストリン、トラガントガム、ファーセルラン、プルラン、ペクチン、ポリデキストロース、ローカントビーンガム、水溶性大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、各々単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
乳化剤の具体例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、レシチン等が挙げられる。これらは、各々単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
上記のようにして得られる本実施形態の液卵組成物は、必要に応じて、バッチ式殺菌タンク、プレート式熱交換機、ジュール加熱装置等による殺菌処理を行うことができる。
また、本実施形態の液卵組成物は、冷凍保存することができ、かかる場合、冷凍変性なく長期保存が可能であるという点において、非常に優れたものとなる。冷凍方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適宜採用することができ、その具体例としては、例えば、冷凍庫に入れて冷凍する方法の他、液体窒素等を用いて冷凍する方法等が挙げられる。
本実施形態の液卵組成物を調理加工して得られる卵加工食品としては、例えば、オムレツ、厚焼き卵、スクランブルエッグ、茶碗蒸し、卵豆腐、プリン、シュー皮、カスタードクリーム等が挙げられる。なお、かかる卵加工食品は、冷凍保存することもできる。
以下、本実施形態の液卵組成物及び卵加工食品の代表的な製造方法について説明する。
まず、常法にしたがい、液卵を用意する。典型的には、全卵を用いる場合は、鳥類の卵を割卵し殻を除去した後に攪拌し、液卵黄を用いる場合は、卵黄と卵白を分離した後に卵黄を攪拌する。
次に、得られた液卵に、上述した繊維状セルロース及び/又はセルロース乾燥組成物を添加する。添加方法は、特に限定されるものではないが、そのままの状態で液卵に添加した後に一緒に攪拌を行うことができる。
なお、セルロース乾燥組成物の添加は、予め水又は温水中に撹拌した分散液を調製し、この分散液を液卵に配合することにより行ってもよい。かかる分散液の調製においては、例えば高速回転型のホモジナイザーやピストン型高圧ホモジナイザー(10MPa以上)等を用いて均一分散させることが好ましい。このように均一分散させることにより、液卵組成物及び卵加工食品中で微細化された繊維状セルロースを完全に分散した状態で存在させることができ、後述する効果が充分に発揮される。
上記の操作時に、必要に応じて、本発明の効果に影響を与えない範囲で、一般的に使用される水溶性高分子類、澱粉等の粘度調整剤や、ポリリン酸塩やグリシン等の静菌剤を添加してもよい。
液卵組成物を殺菌処理する場合は、例えば、バッチ式殺菌タンク、プレート式熱交換機、ジュール加熱装置等の公知の装置を用いて、常法にしたがい殺菌処理を行えばよい。また、液卵組成物を冷凍する場合は、例えば、ポリエチレン等の容器を用いて密閉した状態で、冷凍することが好ましい。かかる冷凍方法としては、従来公知の方法を採用することができ、例えば、冷凍庫に入れて冷凍する方法の他、液体窒素等を用いて冷凍する方法等を挙げることができる。
冷凍した液卵組成物(冷凍液卵)を使用するときは、常法にしたがい、例えば、容器詰めの冷凍液卵を流水中に放置する等して解凍すればよい。本実施形態の液卵組成物によれば、熱変性及び冷凍変性が抑制され、組織が均一で流動性が良いので、解凍して得られる液卵組成物は、手間のかかる攪拌作業が必要とされず、取扱性に優れたものとなる。
そして、上記のようにして得られる液卵組成物を、常法にしたがい、焼く、蒸す等の調理加工を行ない加熱凝固させることで、卵加工食品が調製される。上記の液卵組成物の冷凍前や解凍後等に、卵加工食品に必要な各種調味液を添加することもできる。
調製された卵加工食品は、冷凍保存することができる。本実施形態の卵加工食品によれば、冷凍しても解凍時にドリップが起こらずに、しっとり柔らかくて美味しく、卵本来の風味が感じられ、気泡安定性やジューシー感、保形性が向上されたものとなる。
以下、本実施形態の液卵組成物及びそれを用いて得られる卵加工食品の作用効果を説明するが、これらに特に限定されるものではない。
本実施形態で用いられる不溶性の繊維状セルロースは、液卵組成物中において、緻密で強固なネットワーク構造を形成する特徴を有し、この緻密で強固なネットワーク構造により、熱、酸及び塩等の環境要因や冷凍による組織の歪みに対する影響が軽減されると推定され、その結果、熱変性や冷凍変性等が抑制され、組織均一性や流動性の維持といった効果が奏されるものと考えられる。さらに、かかる液卵組成物は、内部構造中に取り込んだ気泡や成分や水を均一な状態で安定に保持し得るので、この液卵組成物を用いて得られる卵加工食品は、解凍時にドリップが起こらずにしっとり柔らかくて美味しく、気泡安定性、ジューシー感や保形性に優れたものとなる。
以下、実験例、実施例及び比較例を挙げて、本実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれらに特に限定されるものではない。
なお、各種測定は、以下の方法で各々行った。
<繊維状セルロースの平均重合度>
ASTM Designation: D 1795−90「Standerd Test Method for Intrinsic Viscosity of Cellulose」に準じて行う。
<繊維状セルロースのα−セルロース含有量>
JIS P8101−1976(「溶解パルプ試験方法」5.5 αセルロース)に準じて行う。
<繊維状セルロースの結晶化度>
JIS K 0131−1996(「X線回折分析通則」)に規定されるX線回折装置で得られたX線回折図の回折強度値から、シーゲル法により算出する。なお、繊維状セルロースの結晶化度は、次式によって定義される。
結晶化度(%)={(Ic−Ia)/Ic}×100
ここで、Ic:X線回折図の回折角2θ=22.5度での回折強度、Ia:同じく回折
角2θ=18.5度付近のベースライン強度(極小値強度)である。
<繊維状セルロース(粒子)の形状(長径、短径、長径/短径比)>
繊維状セルロース(粒子)のサイズの範囲が広いと、一種類の顕微鏡で全てを観察することは不可能であるので、繊維(粒子)の大きさに応じて光学顕微鏡、走査型顕微鏡(中分解能SEM、高分解能SEM)を適宜選択し、以下で調整されるサンプル水分散液を観察・測定する。
固形分濃度が0.25質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、エースホモジナイザー(商標、日本精機株式会社製、AM−T型)を用いて、15000rpmで15分間分散して、サンプル水分散液を調製する。
光学顕微鏡を使用する場合は、前記のサンプル水分散液を適当な濃度に調整し、それをスライドガラスにのせ、さらにカバーグラスをのせて観察する。
また、中分解能SEM(JSM−5510LV、日本電子株式会社製)を使用する場合は、前記のサンプル水分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約3nm蒸着して観察する。
高分解能SEM(S−5000、株式会社日立サイエンスシステムズ製)を使用する場合は、前記のサンプル水分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約1.5nm蒸着して観察する。
これらの外観測定においては、繊維状セルロース(粒子)の長径、短径、長径/短径比は、撮影した写真から15本(個)以上を選択して測定する。なお、短径(太さ)は、繊維の長さ方向にバラツキがあるものについては、平均的な値を採用した。
<損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)>
(1)固形分濃度が0.5質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、エースホモジナイザー(商標、日本精機株式会社製、AM−T型)を用いて、15000rpmで15分間分散して、サンプル水分散液を調整する。
(2)サンプル水分散液を、25℃の雰囲気中に3時間静置する。
(3)動的粘弾性測定装置にサンプル水分散液を入れ、5分間静置後、下記の条件下で、周波数10rad/sにおける損失正接(tanδ)を測定する。
装置 : ARES(100FRTN1型)
(商標、Rheometric Scientific,Inc.製)
ジオメトリー: Double Wall Couette
温度 : 25℃
歪み : 10%(固定)
周波数 : 1→100rad/s(約170秒かけて上昇させる)
<「水中で安定に懸濁する成分」の含有量>
(1)セルロース濃度が0.1質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、エースホモジナイザー(商標、日本精機株式会社製、AM−T型)を用いて、15000rpmで15分間分散して、サンプル水分散液を調整する。
(2)サンプル水分散液20gを遠沈管に入れ、遠心分離機にて9800m/s2で5分間遠心分離する。
(3)上層の液体部分を取り除き、沈降成分の質量(a)を測定する。
(4)次いで、沈降成分を絶乾し、固形分の質量(b)を測定する。
(5)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2) [質量%]
但し、k1及びk2は下記の式を用いて算出したものを使用する。
k1=0.02−b+s2
k2=k1×w2/w1
w1=19.98−a+b−0.02×d/f
w2=a−b
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+w2)}
d/f=(水溶性高分子+親水性物質)/セルロース [配合比率]
なお、上記の方法では、「水中で安定に懸濁する成分」の含有量が非常に多い場合は、沈降成分の重量が小さな値となり測定精度が低くなるので、かかる場合は、(3)以降の手順を、以下の手順に置き換えて行う。
(3’)上層の液体部分を取得し、重量(a’)を測定する。
(4’)次いで、上層成分を絶乾し、固形分の重量(b’)を測定する。
(5’)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2) [質量%]
但し、k1及びk2は下記の式を用いて算出して使用する。
k1=b’−s2×w1/w2
k2=k1×w2/w1
d/f=(水溶性高分子+親水性物質)/セルロース [配合比率]
w1=a’−b’
w2=19.98−a’+b’−0.02×d/f
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+w2)}
なお、上記(3)の操作において、上層の液体部分と沈降成分の境界が明瞭ではなく分離が難しい場合は、適宜セルロース濃度を下げて操作を行う。
実施例で使用する、微細化された繊維状セルロースA、及びセルロース乾燥組成物Bについて、実験例1及び2に示す。
[実験例1]微細化された繊維状セルロースAの調製
まず、市販木材パルプ(平均重合度=1710、α−セルロース含有量=93質量%)を、6×12mm角の矩形に裁断し、水で浸してカッターミル(URSCHEL LABORATORIES,Inc.製「コミトロール」、モデル1700、マイクロカットヘッド/ブレード間隙:2.029mm、インペラー回転数:9000rpm)に1回通した。
次に、カッターミル処理品が2質量%になるように上記のカッターミル処理品と水を量り取り、繊維の絡みがなくなるように撹拌して水分散液を調整した。得られた水分散液を、砥石回転型粉砕機(増幸産業株式会社製「セレンディピター」MKCA6−3型、グラインダー:MKE6−46、グラインダー回転数:1800rpm)で処理した。このグラインダー処理においては、処理回数を4回とし、グラインダークリアランスを200→60→40→40μmと順次変えて処理した。
次いで、グラインダー処理した水分散液を、水で希釈して1質量%にし、得られた希釈物を高圧ホモジナイザー(MFIC Corp.製「マイクロフルイダイザー」M−110Y型、処理圧力:110MPa)で8パスの処理を行った。そして、この希釈物を35000Gで30分間遠心分離し、上澄みを捨てて得た沈降物を濾紙に挟んで脱水することで、水を82質量%含む微細化された繊維状セルロースAを得た。
微細化された繊維状セルロースAの結晶化度は82%、損失正接は0.21だった。光学顕微鏡及び中分解能SEMで観察したところ、長径が10〜400μm、短径が1〜10μm、長径/短径比が10〜300の微細化された繊維状セルロースが観察された。「水中で安定に懸濁する成分」の含有量は95質量%だった。これを高分解能SEMで観察したところ、長径が0.9〜20μm、短径が5〜100nm、長径/短径比が30〜300の極めて微細な繊維状セルロースが観察された。
[実験例2]セルロース乾燥組成物Bの調製
まず、市販バガスパルプ(平均重合度=1320、α−セルロース含有量=77質量%)を、6×16mm角の矩形に裁断し、次いで、セルロース濃度が3質量%、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムの濃度が0.176質量%となるように、各々と水を量り取り、家庭用ミキサーで5分間撹拌して水分散液を調整した。
得られた水分散液を、砥石回転型粉砕機(商標、「セレンディピター」MKCA6−3型、グラインダー:MKE6−46、グラインダー回転数:1800rpm)で3回処理した。
次いで、グラインダー処理した水分散液を、水で希釈して2質量%にし、得られた希釈物を高圧ホモジナイザー(商標、「マイクロフルイダイザー」M−140K型、処理圧力110MPa)で4パスの処理を行い、微細化された繊維状セルロースA’を得た。
微細化された繊維状セルロースA’の結晶化度は73%以上だった。光学顕微鏡及び中分解能SEMで観察したところ、長径が10〜500μm、短径が1〜25μm、長径/短径比が5〜190の微細な繊維状セルロースが観察された。損失正接は0.32だった。「水中で安定に懸濁する成分」は99質量%だった。これを高分解能SEMで観察したところ、長径が0.5〜10μm、短径が20〜100nm、長径/短径比が15〜20の極めて微細な繊維状セルロースが観察された。
そして、微細化された繊維状セルロースA’にカルボキシメチルセルロース・ナトリウム(1質量%水溶液粘度:3400mPa・s)とデキストリン(DE:28)とを、セルロース:カルボキシメチルセルロース・ナトリウム:デキストリン:ナタネ油=64:17:18.7:0.3(質量比)となるように添加した、総量15kgの配合物を、攪拌型ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製、商品名、T.K.オートホモミクサー M2−40型)を用いて、8000rpmで10分間撹拌・混合した後、さらに、前述の高圧ホモジナイザーを用いて、20MPaの条件下、1パス処理した。
得られた混合物を、ドラムドライヤーにて乾燥し、スクレーパーで掻き取り、次いで、得られた乾燥物を、カッターミル(不二パウダル株式会社製、商品名、「フラッシュミル」)を用いて、目開き2mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕することで、セルロース乾燥組成物Bを得た。
セルロース乾燥組成物Bの結晶化度は54%以上、損失正接は0.50、「水中で安定に懸濁する成分」は100質量%だった。前述した方法により、光学顕微鏡にて観察したところ、長径が10〜800μm、短径が1〜25μm、長径/短径比が5〜200の繊維状セルロースが観察された。また、「水中で安定に懸濁する成分」を高分解能SEMで観察したところ、長径が0.5〜10μm、短径が20〜100nm、長径/短径比が15〜200の極めて微細な繊維状セルロースが観察された。
[実施例1]
鶏卵を割り、殻を取り除いた全卵を用意し、液全卵とする。液全卵450gに、実験例1で得られた微細化された繊維状セルロースA(固形分18質量%)13.9gと、水36.1gとを加え、液全卵が均一になるまで充分攪拌して、500gの液卵組成物aを得た(微細化された繊維状セルロースAを固形分として0.5質量%含む)。
得られた液卵組成物aを、65℃の温浴につけて10分間撹拌しながら殺菌し、直ちに10℃以下に冷却して殺菌液卵bを得た。次いで、殺菌液卵bを−20℃で冷凍保存し、1ヶ月経過したものを流水中で解凍して冷解凍液卵cを得た。液卵組成物a、殺菌液卵b、及び冷解凍液卵cの状態を、それぞれ目視にて観察した。結果を表1に示す。
液卵組成物aと比較して、殺菌液卵b及び冷解凍液卵cは、均一性及び流動性が維持されており、攪拌作業を省くことができる扱い易い状態であった。
[実施例2]
実験例2で得られたセルロース乾燥組成物Bに水を加え、フードカッターで10分間撹拌して、固形分3質量%の分散液を得た。液全卵450gに、このセルロース乾燥組成物Bの分散液33.3gと水16.7gとを加え、液全卵が均一になるまで充分攪拌して、500gの液卵組成物dを得た(セルロース乾燥組成物Bを固形分として0.2質量%含む)。
その後、実施例1と同様に殺菌処理及び冷凍処理を行って、殺菌液卵e及び冷解凍液卵fを得た。液卵組成物d、殺菌液卵e、及び冷解凍液卵fの状態を、それぞれ目視にて観察した。結果を表2に示す。
液卵組成物dと比較して、殺菌液卵e及び冷解凍液卵fは、均一性及び流動性が維持されており、攪拌作業を省くことができる扱い易い状態であった。
[比較例1]
液全卵450gに、水50gを加えて液全卵が均一になるまで充分攪拌して、500gの液卵組成物gを得たこと以外は、実施例1と同様に処理して、殺菌液卵h及び冷解凍液卵iを得た。それぞれの状態を目視にて観察した結果を、表3に示す。
殺菌液卵hは、部分的に卵黄部が凝固した様子が見られ、また、液卵組成物gと比較して、見た目が不均一であり、流動性が悪くドロっとした状態であった。また、冷解凍液卵iも、見た目が不均一であり、殺菌液卵hと比較して、さらに流動性が悪化し、ドロドロとした状態であった。そのため、殺菌液卵h及び冷解凍液卵iは、いずれも攪拌作業が必要とされ、扱い難いものであった。
[比較例2]
結晶セルロースとカルボキシメチルセルロース・ナトリウムからなる結晶セルロース組成物(旭化成ケミカルズ株式会社製 セオラスRC−591、損失正接は2.45)に水を加え、フードカッターで10分間撹拌して、固形分5質量%の分散液を得た。液全卵450gに、この分散液50gを加えて、液全卵が均一になるまで充分攪拌して、500gの液卵組成物jを得た(結晶セルロース組成物を固形分として0.5質量%含む)。
その後、実施例1と同様に殺菌処理及び冷凍処理を行って、殺菌液卵k及び冷解凍液卵lを得た。それぞれの状態を目視にて観察確認した結果を、表4に示す。
殺菌液卵kは、卵黄部が凝固した様子は見られないものの、液卵組成物jと比較して、見た目がやや不均一であり、流動性が悪くドロっとした状態であった。また、冷解凍液卵lは、殺菌液卵kと比較して、さらに流動性が悪化し、ドロドロとした状態であった。そのため、殺菌液卵k及び冷解凍液卵lは、いずれも攪拌作業が必要とされ、扱い難いものであった。
[実施例3]
実施例2で得られた液卵組成物d及び冷解凍液卵fを用いて、それぞれ厚焼き卵m及びnを調製した。ここでは、液卵組成物d(冷解凍液卵f)80質量%、出し汁14.5質量%、砂糖5質量%、塩0.5質量%の配合で各々を混ぜ合わせ、得られた卵液を、通常の方法にしたがい、加熱凝固するまで加熱して、厚焼き卵m(厚焼き卵n)を得た(セルロース乾燥組成物Bを固形分として0.16質量%含む)。
次に、得られた厚焼き卵m及びnを、−20℃の冷凍庫にて冷凍保管し、1ヶ月経過したものを電子レンジで再加熱して、再加熱後の厚焼き卵m及びnについて、それぞれ官能評価と破断強度測定を行った。結果を表5に示す。
厚焼き卵m及びnともに、ドリップが殆どなく、しっかりと形状を維持し、ふんわりとしたやわらかい食感で、卵の風味の引き立った美味しいものであった。
官能評価では、以下の通りに判定した。
○:ふんわりとしたやわらかい食感
△:ぼそぼそしているがやわらかい食感
×:ぼそぼそとしたかたい食感
破断強度の測定条件は以下の通りとした。
装置:レオメータ(RE−33005−1型)(株式会社山電製)
モード:破断強度解析
ロードセル:20kg
押し込み速度:1mm/sec
押し込み治具:30mmΦ円柱状
[比較例3]
比較例1で得られた液卵組成物g及び冷解凍液卵iを用いて、それぞれ厚焼き卵o及びpを調製した。ここでは、液卵組成物g(冷解凍液卵i)80質量%、出し汁14.5質量%、砂糖5質量%、塩0.5質量%の配合で各々を混ぜ合わせ、得られた卵液を、通常の方法にしたがい、加熱凝固するまで加熱して、厚焼き卵o(厚焼き卵p)を得た。
次に、得られた厚焼き卵o及びpを、−20℃の冷凍庫にて冷凍保管し、1ヶ月経過したものを電子レンジで再加熱して、再加熱後の厚焼き卵o及びpについて、実施例3と同様に、それぞれ官能評価と破断強度測定を行った。結果を表5に示す。
厚焼き卵o及びpともに、ドリップが発生し、全体的に形状が収縮し、ぼそぼそとした食感で、卵の風味に劣るものであった。特に、冷解凍液卵iを用いた厚焼き卵pは、かたい食感であった。
[実施例4]
実施例2で得られた液卵組成物d及び冷解凍液卵fを用いて、それぞれ茶碗蒸しq及びrを調製した。ここでは、液卵組成物d(冷解凍液卵f)40質量%、出し汁58質量%、みりん1質量%、醤油0.6質量%、食塩0.4の配合で各々を混ぜ合わせ、得られた卵液を、85℃、30分間スチーマーで蒸すことで、茶碗蒸しq(茶碗蒸しr)を得た(セルロース乾燥組成物Bを固形分として0.08質量%含む)。得られた茶碗蒸しq及びrについて、それぞれ官能評価を行った。結果を表6に示す。
茶碗蒸しq及びrともに、程良いかたさがあり、卵の風味が感じられる美味しいものであった。
官能評価では、以下の通りに判定した。
<卵の風味>
○:卵の風味がしっかり感じられる
△:卵の風味が少し感じられる
×:卵の風味があまり感じられない
<かたさ>
○:茶碗蒸しとして十分なかたさがある
△:茶碗蒸しとして少しかたさが足りない
×:茶碗蒸しとしてやわらかすぎる
[比較例4]
比較例1で得られた液卵組成物g及び冷解凍液卵iを用いて、それぞれ茶碗蒸しs及びtを調製した。ここでは、液卵組成物g(冷解凍液卵i)40質量%、出し汁58質量%、みりん1質量%、醤油0.6質量%、食塩0.4の配合で各々を混ぜ合わせ、得られた卵液を、85℃、30分間スチーマーで蒸すことで、茶碗蒸しs(茶碗蒸しt)を得た。得られた茶碗蒸しs及びtについて、実施例4と同様に、それぞれ官能評価を行った。結果を表6に示す。
茶碗蒸しsは、程良いかたさと卵の風味が感じられたが、冷解凍液卵iを用いた茶碗蒸しtは、茶碗蒸しとしてはやわらかすぎる食感であり、卵の風味もあまり感じられなかった。
Figure 2009065836
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本発明の液卵組成物及び卵加工食品は、熱変性や冷凍変性が抑制され、均一性及び流動性が改善され、しかも、調理前の攪拌作業を省くことができ、その上さらに、風味劣化が抑制され、気泡安定性やジューシー感や保形性が向上し、食感が改善されたものとなり、取扱性、生産性及び経済性に優れるので、卵加工食品及びその原材料として、広く且つ有効に利用可能である。

Claims (5)

  1. 液卵とセルロースとを含有する液卵組成物であって、
    植物細胞壁を原料とする結晶性の繊維状セルロース、及び/又は、前記繊維状セルロース30〜95質量%と水溶性高分子及び/又は親水性物質5〜70質量%とを含むセルロース乾燥組成物を含有し、
    前記繊維状セルロース及び前記セルロース乾燥組成物は、水中で懸濁する成分を30質量%以上含有し、且つ、0.5質量%水分散液としたときの損失正接が1未満である、
    液卵組成物。
  2. 前記繊維状セルロースが、長さが0.5μm〜1mm、幅が2nm〜60μm、長さと幅の比が5〜400の微細化された繊維状セルロースである、請求項1に記載の液卵組成物。
  3. 前記繊維状セルロース及び/又は前記セルロース乾燥組成物を、0.001〜10質量%含有する、
    請求項1又は2に記載の液卵組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の液卵組成物を、加熱殺菌及び/又は冷凍保存して得られる液卵組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の液卵組成物を、調理加工して得られる卵加工食品。
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