JP2008206435A - 改良されたドウ組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】味、香りなどの風味が良く、しっとり感やもちもちした食感と同時に歯切れの良い適度なさくい感を併せ持つ食品が得られるドウ組成物、及び、そのドウ組成物を加熱処理することで得られる食品を提供する。
【解決手段】セルロースを含有するドウ組成物で、セルロースは、植物細胞壁を原料とし、結晶性であり、水中で安定に懸濁する成分を30質量%以上含有し、0.5質量%水分散液とした時の損失正接が1未満であり、微細な繊維状をなしている。
【選択図】なし

Description

本発明は、物性が改良されたドウ組成物及びそれを用いた食品等に関するものである。具体的には、生地骨格が補強されて気泡安定性や保水性が高く、それを加熱して得られる食品の食感が改善されるドウ組成物等に関する。
パン類、スポンジケーキ、ドーナッツ、そば、うどん等は、小麦粉などの穀粉類と水とを主原料とするドウを用い、これに発酵、焼成、蒸し、フライ、茹でなどの加熱処理を行うことで得られる。これらの食品では、しっとり感やもちもちした食感が消費者に好まれることから、増粘多糖類や乳化剤などを配合することで、そのような食感をPRする商品が増えている。
しかしながら、増粘多糖類などによってしっとり感やもちもち感を付与した食品は、一般的に歯切れが悪く噛み切りにくい傾向にあり、特に高齢者や子供にとっては不適切な場合があった。また、乳化剤を上記の効果が出る程度に十分に配合すると、味、香りなどの風味が損なわれ好ましくない。そのため、しっとり感やもちもちした食感を持ちながら、味、香りなどの風味が良く、歯切れの良い適度なさくい感を併せ持つ食品が求められていた。
一方、ドウにセルロースを配合する技術としては、特許文献1のように食物繊維付与を目的としたものや、特許文献2のように工程での作業性改善を目的としたものが知られている。これらに用いられているセルロースは、平均粒子径が数μmから数百μmの球状もしくは棒状の比較的大きな粒子であり、ドウ組成物の物性改善の効果は不十分であった。
さらに特許文献3では、ミクロフィブリル構造を有する微生物セルロースをパン生地に配合しているが、ここで用いられる微生物セルロースは、植物細胞壁を原料としたものではなく、原料の確保やコスト的にも難しいという問題点があった。また、特許文献4には、卵白、糖類、澱粉および安定剤を含む含気組成物を小麦粉含有生地に混合する方法が記載され、安定剤の一つに微小繊維状セルロースを用いた例が記載されている。しかしながら既存の微小繊維状セルロースは、微細化の程度が十分でなく繊維が粗いため、これを用いたドウ組成物から得られた食品は、口当たりが悪く食感が重くなるという問題点があった。また特許文献3、4ともに、しっとり感やもちもちした食感と歯切れの良い適度なさくい感を併せ持つ効果や、パンをトーストして食するときの効果に関してはなんら記載がない。
特開平5−95754号公報 特開平10−262541号公報 特開平11−137163号公報 特開2005−278534号公報
本発明は、味、香りなどの風味が良く、しっとり感やもちもちした食感と同時に歯切れの良い適度なさくい感を併せ持つ食品が得られるドウ組成物、および、そのドウ組成物を加熱処理することで得られる食品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題の解決に取り組み、ドウ組成物に特定のセルロースまたはそれを用いた乾燥組成物を使用することで、特定のセルロースが形成する緻密で強固なネットワーク構造によってドウ組成物の生地骨格が補強され、気泡安定性や保水性が高まり、その結果、それを加熱して得られる食品の食感が改善されることを見出して、本発明をなすに至った。すなわち本発明は下記の通りである。
<1>セルロースを含有するドウ組成物であって、前記セルロースは、植物細胞壁を原料とし、結晶性であり、水中で安定に懸濁する成分を30質量%以上含有し、0.5質量%水分散液とした時の損失正接が1未満であり、微細な繊維状をなしていることを特徴とするドウ組成物。
<2>さらに水溶性高分子または親水性物質を含有し、前記セルロースと前記の水溶性高分子または親水性物質はいったん乾燥組成物を形成しており、前記乾燥組成物は、水中で安定に懸濁する成分を前記セルロースに対して30質量%以上含有し、かつ0.5質量%水分散液とした時の損失正接が1未満のものであることを特徴とする上記<1>に記載のドウ組成物。
<3>前記の乾燥組成物において、前記セルロースが30〜95質量%で、前記の水溶性高分子または親水性物質が5〜70質量%であることを特徴とする上記<2>に記載のドウ組成物。
<4>前記のセルロースあるいは乾燥組成物を、0.01〜5質量%含有することを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれかに記載のドウ組成物。
<5>パン生地であることを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれかに記載のドウ組成物。
<6>上記<1>〜<4>のいずれかに記載のドウ組成物を加熱して得られる食品。
<7>上記<5>記載のドウ組成物を加熱して得られるパン。
本発明のドウ組成物は、それを用いて食品を製造した場合に、味、香りなどの風味が良く、しっとり感やもちもちした食感と歯切れの良い適度なさくい感を併せ持つ、優れた食品が得られる。特にドウ組成物をパン生地としてパンを製造すると、発酵に要する時間が短縮され、気泡が細かく均一なパンが得られ、トーストした後の食感にも優れたパンが得られる。
以下、本願発明について、特にその好ましい形態を中心に、具体的に説明する。本発明のドウ組成物では、特定のセルロースを配合して用いる。特定のセルロースは、植物細胞壁を原料とし、結晶性であり、水中で安定に懸濁する成分を30質量%以上含有し、0.5質量%水分散液とした時の損失正接が1未満であり、微細な繊維状をなしている。
特定のセルロースの原料として植物細胞壁を用い、これを後述の機械的な処理により微細な繊維状とする。このセルロース形状により、食品に配合した際に食感改善効果が得られる。植物細胞壁としては、各種の植物由来のセルロースを用いることができ、例えば、綿花、パピルス草、こうぞ、みつまた、ガンピなどを用いることができ、ビートパルプや果実繊維パルプなどの柔細胞由来の原料も用いることができる。
さらに、原料の安定的な確保、セルロース以外の成分の含有量が少なく高品質であること、ハンドリングが容易であることという観点から、植物細胞壁として、木材(針葉樹、広葉樹)、コットンリンター、ケナフ、マニラ麻(アバカ)、サイザル麻、ジュート、サバイグラス、エスパルト草、バガス、稲わら、麦わら、葦、竹などの天然セルロースを主成分とするパルプを用いることは好ましい。これらを用いると、工業的に許容されるコストの範囲内で製造でき、かつ原料が安定的に得られるメリットもある。
特に好ましいのは、イネ科植物の細胞壁を起源としたセルロース性物質であり、具体的にはバガスパルプ、稲わらパルプ、麦わらパルプ、竹パルプが挙げられる。これらのパルプは、極めて容易に微細化されるので、効率よく高性能のドウ組成物が得られる。
なお、植物細胞壁を原料としない微生物セルロースは、コスト面や原料確保の問題も解決できないので、特定のセルロースの原料としては好ましくない。また、再生セルロースは、繊維状のセルロース構造を持たないので、ドウ組成物の物性改善効果が充分に得られないのでやはり好ましくない。
なお、原料のセルロースの平均重合度は、400以上とするのが好ましく、また、α−セルロース含有量が60〜100質量%のものを選択するのが好ましい。より好ましくは平均重合度400〜12000で、α−セルロース含有量が60〜85質量%のものを選択することである(平均重合度およびα−セルロース含量の測定方法は後述する。)。
特定のセルロースは、食品の中で強固なネットワーク構造を形成できるようにするために、結晶性である必要がある。具体的には、X線回折法(シーゲル法)で測定されるところの結晶化度が50%を越えることが好ましい。より好ましくは55%以上である。特定のセルロースが、セルロース以外の成分を含有する場合、それらの成分は非晶性としてカウントされるから、例えば、測定の結果の結晶化度が50%であれば、セルロースの結晶化度としては50%を超えているといえる。仮に測定結果が49%となった場合は、微細な繊維状のセルロースを他の成分から分離し、改めて測定して50%を超えるか否かを判断する必要がある(結晶化度の測定方法は後述する。)。
特定のセルロースは、水中で安定に懸濁する成分を30質量%以上含有する。ここで、「水中で安定に懸濁する成分」とは、特定のセルロースを0.1質量%濃度の水分散液として、これを9800m/s2で5分間遠心分離した場合に、沈降することなく水中に安定に懸濁している性質を有する成分であり、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察・測定される長さ(長径)が0.5〜30μmであり、幅(短径)が2〜600nmであり、長さと幅の比(長径/短径比)が20〜400である繊維状のセルロースからなる。なお、安定懸濁成分の上記で測定された幅が100nm以下であると、安定性が高まるためより好ましい。幅が50nm以下であるとさらに好ましい。
この水中で安定に懸濁する成分が多いほど、食品の中でより緻密なセルロースのネットワーク構造を形成することができ、気泡安定性や保水性を高める効果を発揮することができる。特定のセルロースにおける水中安定懸濁成分の含有量は多いほど好ましいが、50質量%以上であればより好ましい。
特定のセルロースは、0.5質量%濃度の水分散液とした時に、歪み10%、周波数10rad/sの条件で測定される損失正接(tanδ)が1未満となる。これにより、ドウ組成物の性能を改善して、食品の食感を改善することができる。好ましくは損失正接は0.6未満である。
一般に、損失正接の値は、測定対象物の動的粘弾性の性質を示すものであり、値が小さいほど測定対象物がゲル的な性質をとることを意味する。この場合、例えば高分子水溶液においては、溶質(高分子鎖)が三次元的なネットワーク構造を形成し、溶媒(水)を不動化(固定化)する状態と考えられている。ゲル形成性水溶性高分子の場合、低濃度でゲルを形成しない状態では損失正接が1以上であるが、濃度が上がるにつれて値が下がり、ゲルを形成する濃度では1未満になるといわれている。
ところが、本発明で用いる特定のセルロースは、上記の条件で水分散液にして流動性があり、真性のゲルではないが、前述の測定条件により測定された損失正接が1未満である。このことは、測定条件に用いられた歪み10%、周波数10rad/sのような低周波数あるいは低歪みの条件において初めて、特定のセルロースが三次元ネットワーク構造を形成した状態になっており、その結果、流動性があるにもかかわらずゲル的性質を有する旨の測定結果になったものと解される。そして、このような性質がドウ組成物の性能を改善するために有効であることが判明した(損失正接の測定方法は後述する。)。なお、特定のセルロースの損失正接を1未満にするためには、セルロースミクロフィブリルをできるだけ微細化された状態で、かつ短繊維化させることなく取り出すことが重要である。
特定のセルロースは、「微細な繊維状」である。ここにいう「微細な繊維状」とは、光学顕微鏡および電子顕微鏡にて観察および測定されるところの、長さ(長径)が0.5μm〜1mm、幅(短径)が2nm〜60μm、長さと幅の比(長径/短径)が5〜400であることを意味する。
なお、「短繊維化」とは、セルロースミクロフィブリルの繊維長を短く切断すること、あるいは短くなった繊維の状態を意味する。また「微細化」とは、セルロースミクロフィブリルの繊維径を、引き裂くなどの作用により細くすること、あるいは細くなった繊維の状態を意味する。セルロースミクロフィブリルの「短繊維化」を最低限に抑えつつ、「微細化」を進行させるために、好ましい方法を以下に示すが、これらの方法に何ら限定されるものではない。
原料の植物細胞壁は、微細化の促進を目的として、一定の前処理を行ってから使用しても良い。前処理法の例としては、たとえば、希薄なアルカリ水溶液(たとえば、1mol/LのNaOH水溶液)に数時間浸漬したり、希薄な酸水溶液に浸漬したり、酵素処理したり、あるいは爆砕処理することなどがあげられる。
また、微細な繊維状とするために使用する装置としては、高圧ホモジナイザーが好ましい。高圧ホモジナイザーの具体例としては、エマルジフレックス(AVESTIN,Inc.製)、アルティマイザーシステム(株式会社スギノマシン製)、ナノマイザーシステム(ナノマイザー株式会社製)、マイクロフルイダイザー(MFIC Corp.製)、バルブ式ホモジナイザー(三和機械株式会社製、Invensys APV社製、Niro Soavi社製、株式会社イズミフードマシナリー製)などがある。高圧ホモジナイザーの処理圧力としては、60〜414MPa程度が好ましい。
次に、特定のセルロースに水溶性高分子または親水性物質を加えてドウ組成物に用いてもよい。さらに、特定のセルロースを、水及び水溶性高分子または親水性物質とよく混合し、いったん乾燥工程を経て乾燥組成物としてから、ドウ組成物に用いるのはより好ましい。理由は不明であるが、いったん乾燥工程を経て乾燥組成物とすることで、それから得られるドウ組成物の性能や、さらにドウ組成物から得られる食品の食感がさらに向上する。なお、水溶性高分子と親水性物質とを両方同時に用いるようにしてもよい。
水溶性高分子とは、冷水もしくは温水に溶解もしくは膨潤する高分子であり、特定のセルロースと混合した場合に、乾燥時におけるセルロースどうしの結合を妨害して角質化を防止する作用を有するものである。具体的にはアラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸およびその塩、カードラン、ガッティーガム、カラギーナン、カラヤガム、寒天、キサンタンガム、グアガム、酵素分解グアガム、クインスシードガム、ジェランガム、ゼラチン、タマリンド種子ガム、難消化性デキストリン、トラガントガム、ファーセルラン、プルラン、ペクチン、ポリデキストロース、ローカントビーンガム、水溶性大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられ、これらの1種を用いるかまたは2種以上を組み合わせて用いればよい。中でも、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムが好ましい。カルボキシメチルセルロース・ナトリウムとしては、置換度0.5〜1.5が好ましく、より好ましくは0.6〜0.8である。
親水性物質とは、冷水への溶解性が高く、粘性を殆どもたらさず、常温で固体の物質であり、水中での粒子の崩壊・分散性を良くする作用を有する。例えば、デキストリン類、水溶性糖類(ブドウ糖、果糖、庶糖、乳糖、異性化糖、キシロース、トレハロース、カップリングシュガー、パラチノース、ソルボース、還元澱粉糖化飴、マルトース、ラクツロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖など)、糖アルコール類(キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトールなど)が挙げられ、これらの1種を用いるかまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
親水性物質は、より低分子量のの方が水中での粒子の崩壊・分散性が良くなる傾向にあり、ブドウ糖、蔗糖、トレハロースなどは良好な性質を示す。しかし、製造時の乾燥性や、製品の吸湿性、経時安定性に劣る傾向があるため、これらのバランスが最も良い物質としては、DE(dextrose equivalent)が20以上のデキストリンが挙げられる。
乾燥組成物は、特定のセルロースと水溶性高分子および/または親水性物質をそれぞれ配合して水に投入し、良く混合してから乾燥することで得られる。それぞれの配合量は、質量比で、特定のセルロース:水溶性高分子および/または親水性物質=30:70〜95:5とするのが好ましく、より好ましくは40:60〜90:10であり、さらに好ましくは、50:50〜90:10である。
このようにして得られた乾燥組成物は、水性媒体の存在下で機械的な剪断力を与えた時、容易に崩壊し、微細な繊維状のセルロースがばらばらにほどけて分散する特徴がある。そのためには水溶性高分子または親水性物質の配合が必須であり、これらを配合せずに微細な繊維状のセルロース単独で水分散液としてから乾燥すると、乾燥物粒子をばらばらに水中に再分散させるのは不可能となる。水溶性高分子および/または親水性物質の配合量を増やすほど、水性媒体の存在下で粒子の崩壊・分散性が向上し、作業性や機能の面でより優れた効果が得られる。しかしその一方で、セルロース含有量が減少するとセルロースが形成するネットワーク構造が弱くなるために、上記の組成範囲とすることが好ましい。上記の組成範囲から外れてセルロース含有量が増える場合であっても、強力で長時間の剪断力を与えるなどの対処を行うことで一応の使用は可能である。また上記の組成範囲から外れてセルロース含有量が減る場合においては、ドウ組成物に配合する乾燥組成物の量を増やすことが可能である。
乾燥組成物は、水中で安定に懸濁する成分を30質量%以上含有するものである。ここにいう水中で安定に懸濁する成分とは、特定のセルロースについて上記したものと同じ意味であり、乾燥組成物を、0.1質量%濃度の水分散液として、これを9800m/s2で5分間遠心分離した場合に、沈降することなく水中に安定に懸濁しているという性質を有する成分であり、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察・測定される長さ(長径)が0.5〜30μmであり、幅(短径)が2〜600nmであり、長さと幅の比(長径/短径比)が20〜400である繊維状のセルロースからなる。
乾燥組成物には、特定のセルロース以外に水溶性高分子または親水性物質を含有しているが、特定のセルロースに関して上記したのと同様に、ドウ組成物の性能改善のためには、全セルロース中に30質量%以上の水中安定懸濁成分を含有していることが必要である。この該成分は、水溶性高分子または親水性物質を含まない値として求められる。この成分が多いほど、より緻密なセルロースのネットワーク構造を形成することができ、ドウ組成物の気泡安定性や保水性を高める効果を発揮することができる。含有量は多いほど好ましいが、50質量%以上であればより好ましい。
また、乾燥組成物は、0.5質量%濃度の水分散液とした時に、歪み10%、周波数10rad/sの条件で測定される損失正接(tanδ)が1未満となるものである。好ましくは0.6未満である。この損失正接の値に関しても、特定のセルロースに関して上記したのと同様である。つまり、水溶性高分子や親水性物質の存在にもかかわらず、特定のセルロースだけの場合と同様に、乾燥組成物を用いて特定条件で測定した損失正接が1未満となることを要する。これによりドウ組成物の特性が改善され、ドウ組成物から得られる食品の食感が改善される。
乾燥組成物は、上記方法で微細化した特定のセルロースと、水溶性高分子および/または親水性物質とを所定量配合して、適当な撹拌・混合機を選択して充分に混合し、公知の方法で乾燥することで得られる。乾燥後の水分は、取り扱い性、経時安定性を考慮すれば、15質量%以下が好ましい。より好ましくは10質量%以下である。最も好ましくは6質量%以下である。
乾燥組成物は必要に応じて粉砕する。粉砕機としてはカッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミルなどが使用され、目開き2mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕することが好ましい。より好ましくは目開き425μmの篩をほぼ全通し、かつ、平均としては10〜250μmとなるように粉砕する。この乾燥組成物は顆粒状、粒状、粉末状、鱗片状、小片状、またはシート状などを呈する。
ドウ組成物には、本発明の効果を妨げない限りにおいて、上記の成分以外に、懸濁安定性や風味、外観などの改善を目的として、デンプン類、油脂類、蛋白質類、食塩、各種リン酸塩などの塩類、乳化剤、酸味料、甘味料、香料、色素などの、食品に使用できるその他の成分を適宜配合しても良い。その他の成分のドウ組成物における配合量は、計10質量%以下が好ましく、製造性、機能、価格などを適宜考慮して決定すればよい。
ドウ組成物を得るには、上記の特定のセルロースまたは乾燥組成物を、そのままの状態で小麦粉や他の原材料に配合して、ミキシング工程を経ればよい。乾燥組成物については、あらかじめ水あるいは温水中で撹拌して、分散液を調製してから他の原材料に配合するのがより好ましい方法である。分散液調製時の方法としては、例えば高速回転型のホモジナイザーやピストン型高圧ホモジナイザー(10MPa以上)を用いることは好ましい実施態様の一つである。このようにすることで、ドウ組成物中で微細な繊維状のセルロースが完全に分散した状態で存在し、後述する効果が充分に発揮される。
次に、ドウ組成物およびそれを加熱することで得られる食品に関して説明する。ドウ組成物は、パン、スポンジケーキ、クッキー、蒸しパン、ドーナッツなどのドウを製造するのに供する小麦粉、発泡成分(パン酵母(ドライまたはペースト状イースト)、ベーキングパウダー)、そして水を必須成分とするもので、必要に応じて食塩、砂糖、バター、ショートニング、マーガリン、卵製品、乳製品、グルテン、イーストフード、ドウコンディショナーなどを加えても良い。
または、うどんやひやむぎ、そばなどの麺類を製造するのに供する小麦粉、そば粉、米粉澱粉類、大麦粉、ライ麦粉などの穀粉類、および水を必須成分とし、食塩、かん水(かん粉)、卵製品、山芋などを加えても良い。
いずれの場合も、本発明の効果に影響を与えない範囲で、一般に使用されるその他の原料を加えても良い。すなわち、砂糖、エリスリトール、サッカリン、アスパルテーム、スクラロースなどの甘味料、ポリデキストロース、酵素分解グアガムなどの食物繊維、増粘多糖類、乳化剤、香料、酸味料、色素などを含んでも良いし、ココア粉末、抹茶粉末、カルシウム、鉄、マグネシウムなどの粉末、野菜汁、果汁などの液体、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの栄養強化剤などを含んでいても良い。
ドウ組成物を加熱することで得られる食品としては、ドウ組成物を発酵、焼成、蒸し、フライ、茹でなどの加熱処理することで得られるパン類、スポンジケーキ、ドーナッツ、クッキー、蒸しパン、そば、うどんなどが挙げられる。特にパン類とした場合に、食感改善の効果が顕著である。
ドウ組成物に配合する上記の特定のセルロース、または乾燥組成物の配合量は、食品の形態によって適宜変えることができるが、ドウ組成物に用いた穀粉類に対して0.01〜5質量%とするのが好ましい。なお、配合における小麦粉を含めた穀物類の合計量を、質量基準で100%とした場合の穀物類以外の配合量の質量割合を、以下、「対粉」と言う。
ドウ組成物をパン生地とする場合、パン生地の製造方法としては、中種法、ストレート法、冷凍生地法、冷蔵生地法など、いずれの製法も使用できる。また、パン類としては、例えば、食パン、食卓パン(テーブルロール)、菓子パン、調理パン、ペストリー(デニッシュ、クロワッサン)等が挙げられる。
ドウ組成物を用いてパン類とした場合は、パン類を食する際にトーストすることで一段と好ましい食感が得られる。つまり、パンの中はしっとり感やもちもちした食感を有しながら、外の表面はさくさく感があり歯切れの良い好ましい食感を与えることができる。ここで言うトーストとは、オーブンやトースターなどを使用した天火焼き、フライパンなどを使用した鉄板焼き、直接火で炙るなどの直火焼きなど、一般的に焼く調理方法を意味する。
特定のセルロースまたは乾燥組成物が、ドウ組成物や食品に上記の効果を与える作用は必ずしも明確ではないが、以下のように解釈している。ミキシング工程で、ドウ組成物内に不溶性の微細繊維状セルロースが緻密で強固なネットワーク構造を形成し、その中に多くの空気や水分を取り込んで、それらを均一な状態で安定に保持する。またこの不溶性の微細繊維状セルロースは熱に対して安定であり、ドウ組成物を加熱する際にも、中に取り込んだ気泡や水が逃げるのを抑制する効果があると考えられる。そのために、得られた食品は保水性がよくしっとり感やもちもちした食感を有し、さらに生地内に均一な気泡が多く存在することで、適度なさくい感のある歯切れ良い食感を付与すると考えられる。なお、本発明で用いる特定のセルロースは無味無臭であり、味、香りなど風味を損なうことがなく、また非常に微細な形状であるので、不溶性にもかかわらずザラツキや後口に残るなどの食感への悪影響もない。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、各種物性の測定は以下の通り行った。
<セルロース性物質の平均重合度>
ASTM Designation: D 1795−90「Standerd Test Method for Intrinsic Viscosity of Cellulose」に準じて行う。
<セルロース性物質のα−セルロース含有量>
JIS P8101−1976(「溶解パルプ試験方法」5.5 αセルロース)に準じて行う。
<セルロース性物質の結晶化度>
JIS K 0131−1996(「X線回折分析通則」)に規定されるX線回折装置で得られたX線回折図の回折強度値から、シーゲル法により算出したもので次式によって定義される。
結晶化度(%)={(Ic−Ia)/Ic}×100
ここで、Ic:X線回折図の回折角2θ=22.5度での回折強度、Ia:同じく回折角2θ=18.5度付近のベースライン強度(極小値強度)である。
<セルロース繊維(粒子)の形状(長径、短径、長径/短径比)>
セルロース繊維(粒子)のサイズの範囲が広いので、一種類の顕微鏡で全てを観察することは不可能である。そこで、繊維(粒子)の大きさに応じて光学顕微鏡、走査型顕微鏡(中分解能SEM、高分解能SEM)を適宜選択し、観察(写真撮影)と測定を行う。
まず、固形分濃度が0.25質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、エースホモジナイザー(商品名、日本精機株式会社製、AM−T型)で、15000rpmで15分間分散して分散液を調製する。
次に、光学顕微鏡を使用する場合は、前記のセルロース繊維(粒子)の水分散液を適当な濃度に調整し、それをスライドガラスにのせ、さらにカバーグラスをのせて観察する。また、中分解能SEM(JSM−5510LV、日本電子株式会社製)を使用する場合は、サンプル水分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約3nm蒸着して観察する。また、高分解能SEM(S−5000、株式会社日立サイエンスシステムズ製)を使用する場合は、サンプル水分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約1.5nm蒸着して観察する。
そして、セルロース繊維(粒子)の長径、短径、長径/短径比は、撮影した写真から15本(個)以上を選択し、測定した。繊維はほぼまっすぐから、髪の毛のようにカーブしているものがあったが、糸くずのように丸まっていることはなかった。短径(太さ)は、繊維1本の中でもバラツキがあったが、平均的な値を採用した。高分解能SEMは、短径が数nm〜200nmの繊維の観察時に使用したのだが、一本の繊維が長すぎて、一つの視野に収まらなかった。そのため、視野を移動しつつ写真撮影を繰り返し、その後写真を合成して解析した。
<損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)>
(1)固形分濃度が0.5質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、エースホモジナイザー(商品名、日本精機株式会社製、AM−T型)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)25℃の雰囲気中に3時間静置する。
(3)動的粘弾性測定装置にサンプル液を入れてから5分間静置後、下記の条件で測定し、周波数10rad/sにおける損失正接(tanδ)を求める。
装置 :ARES(100FRTN1型)
(商品名、Rheometric Scientific,Inc.製)
ジオメトリー:Double Wall Couette
温度 :25℃
歪み :10%(固定)
周波数 :1→100rad/s(約170秒かけて上昇させる)
<「水中で安定に懸濁する成分」の含有量>
(1)セルロース濃度が0.1質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、エースホモジナイザー(商品名、日本精機株式会社製、AM−T型)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)サンプル液20gを遠沈管に入れ、遠心分離機にて9800m/s2で5分間遠心分離する。
(3)上層の液体部分を取り除き、沈降成分の質量(a)を測定する。
(4)次いで、沈降成分を絶乾し、固形分の質量(b)を測定する。
(5)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2) [質量%]
但し、k1およびk2は下記の式を用いて算出して使用する。
k1=0.02−b+s2
k2=k1×w2/w1
(水溶性高分子+親水性物質)/セルロース=d/f [配合比率]
w1=19.98−a+b−0.02×d/f
w2=a−b
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+w2)}
「水中で安定に懸濁する成分」の含有量が非常に多い場合は、沈降成分の重量が小さな値となるので、上記の方法では測定精度が低くなってしまう。その場合は(3)以降の手順を以下のようにして行う。
(3’)上層の液体部分を取得し、重量(a’)を測定する。
(4’)次いで、上層成分を絶乾し、固形分の重量(b’)を測定する。
(5’)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2) [質量%]
但し、k1およびk2は下記の式を用いて算出して使用する。
k1=b’−s2×w1/w2
k2=k1×w2/w1
(水溶性高分子+親水性物質)/セルロース=d/f [配合比率]
w1=a’−b’
w2=19.98−a’+b’−0.02×d/f
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+w2)}
もし、(3)の操作で上層の液体部分と沈降成分の境界が明瞭ではなく分離が難しい場合は適宜セルロース濃度を下げて操作を行う。
<ホイロ工程に要した時間>
型の85%体積まで生地が膨張する時間を測定し、比較例1で要した時間を基準として、以下の評価基準で評価した。
○:基準より短い、 −:基準と同じ、 ×:基準より長い
<食パンのキメの細かさ>
食パンの気泡の大きさと均一さとを目視で判断し、比較例1のものを基準として以下の判断基準で判断した。
◎:基準より顕著に良好、 ○:基準より良好、 −:基準と同じ、 ×:基準より粗い
<食パンの官能評価(口当たり、さくさく感、口溶け、香り、味)>
健常男女各5名(計10名)による食感評価を実施し、下記の基準で点数化した。
3:基準より顕著に良好
2:基準より良好
1:基準と同じ
0:基準より悪い
得られた結果から平均点(単純平均)を求め、下記の基準で評価した。
◎:平均点>2.5
○:2.5≧平均点>1.5
−:1.5≧平均点≧1
×:1>平均点≧0
[実験例1]
特定のセルロースAの調製例。市販木材パルプ(平均重合度=1710、α−セルロース含有量=93質量%)を、6×12mm角の矩形に裁断し、水で浸してカッターミル(URSCHEL LABORATORIES,Inc.製「コミトロール」、モデル1700、マイクロカットヘッド/ブレード間隙:2.029mm、インペラー回転数:9000rpm)に1回通した。
次いで2質量%になるようにカッターミル処理品と水を量り取り、繊維の絡みがなくなるまで撹拌した。この水分散液を砥石回転型粉砕機(増幸産業株式会社製「セレンディピター」MKCA6−3型、グラインダー:MKE6−46、グラインダー回転数:1800rpm)で処理した。処理回数は4回で、グラインダークリアランスを200→60→40→40μmと変えて処理した。
次いで得られた水分散液を水で希釈して1質量%にし、高圧ホモジナイザー(MFIC Corp.製「マイクロフルイダイザー」M−110Y型、処理圧力:110MPa)で8パスした。これを35000Gで30分間遠心分離し、上澄みを捨てて得た沈降物を濾紙に挟んで脱水し、水を82質量%含む微細な繊維状である特定のセルロースAを得た。
特定のセルロースAの結晶化度は82%、損失正接は0.21だった。光学顕微鏡および中分解能SEMで観察したところ、長径が10〜400μm、短径が1〜10μm、長径/短径比が10〜300の微細な繊維状のセルロースが観察された。「水中で安定に懸濁する成分」の含有量は95質量%だった。それを高分解能SEMで観察したところ、長径が0.9〜20μm、短径が5〜100nm、長径/短径比が30〜300のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。
[実験例2]
乾燥組成物Bの調製例。市販バガスパルプ(平均重合度=1320、α−セルロース含有量=77%)を、6×16mm角の矩形に裁断した。次いでセルロース濃度が3質量%、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムの濃度が0.176質量%となるように、それぞれと水を量り取り、家庭用ミキサーで5分間撹拌した。
この水分散液を砥石回転型粉砕機(商品名「セレンディピター」MKCA6−3型、グラインダー:MKE6−46、グラインダー回転数:1800rpm)で3回処理した。
次いで得られた水分散液を水で希釈して2質量%にし、高圧ホモジナイザー(商品名「マイクロフルイダイザー」M−140K型、処理圧力110MPa)で4パスし、微細な繊維状の特定のセルロースA’を得た。
微細な繊維状のセルロースA’の結晶化度は73%以上だった。光学顕微鏡および中分解能SEMで観察したところ、長径が10〜500μm、短径が1〜25μm、長径/短径比が5〜190の微細な繊維状のセルロースが観察された。損失正接は0.32だった。「水中で安定に懸濁する成分」は99質量%だった。
セルロース:カルボキシメチルセルロース・ナトリウム=85:15(質量部)となるように、特定のセルロースA’にカルボキシメチルセルロース・ナトリウム(1質量%水溶液粘度:1700mPa・s)を添加し、15kgを攪拌型ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製、商品名、T.K.オートホモミクサー M2−40型)で、8000rpmで10分間撹拌・混合した。これをドラムドライヤーにて乾燥し、スクレーパーで掻き取り、得られたものをカッターミル(不二パウダル株式会社製、商品名「フラッシュミル」)で、目開き2mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕し、乾燥組成物Bを得た。
乾燥組成物Bの結晶化度は73%以上、損失正接は0.38、「水中で安定に懸濁する成分」は98質量%だった。「水中で安定に懸濁する成分」を高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜17μm、短径が10〜350nm、長径/短径比が20〜250のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。
[実施例1]
表1に示した配合処方に従い、通常のストレート法にて食パンを製造した。なお、表1に記載の配合量の数値は、小麦粉(強力粉)100質量%に対する質量%で表示した(以下、同じ)。また、後述の比較例1(強力粉100質量%に対して、水の配合量68質量%)の生地と同じ硬さ、つまり同じ作業性を得られる範囲で水の配合量を調整した。
実験例1で得られた微細な繊維状の特定のセルロースAを、そのまま他の原材料と一緒に混練してパン生地を調製し、一次発酵、二次発酵、ベンチ、ホイロ工程を経て焼成し、食パンを製造した。ホイロ工程では型の85%体積まで生地を膨張させた。得られた食パンのキメの評価、および官能評価の結果を表2に示した。
表2から、特定のセルロースAを配合することで、無添加系と比較して生地の吸水量が増加し、さらにホイロ工程で型の85%体積まで生地を膨張させるのに要する時間が短縮され、食パンのキメが細かくなる(気泡の数が多く、サイズが小さい)効果が得られた。これはセルロースのネットワーク構造により、生地の吸水性が高まり、生地に多くの空気を均一に取り込み、かつ気泡を安定に保持する能力が向上したためと思われる。
また表2の食パンの官能評価結果より、微細な繊維状のセルロースAを配合することで、無添加系と比較して食パンの味、香りを損なうことなく、しっとりしてもちもちした食感、歯切れ良さを付与する効果が得られた。さらにトースト後の食パンは、中はしっとりもちもちして表面はさくさくした良好な食感となった。これらの食パンは保水性に優れるため、室温で3日保存後でもしっとりもちもちした良好な食感を維持していた。
[実施例2]
特定のセルロースAに代えて、実験例2で得られた乾燥組成物Bを粉体のまま他の原材料と一緒に混練して生地を調製した以外は、実施例1と同様にして食パンを製造した。得られた食パンのキメの評価、および官能評価の結果を表2に示した。表2から、乾燥組成物Bを配合することで、実施例1を上回る優れた効果が得られることがわかる。
[実施例3]
実験例2で得られた乾燥組成物Bを、あらかじめ水中に分散させた後に、表1に記載の配合量で他の原材料と一緒に混練して生地を調製し、実施例1と同様にして食パンを製造した。すなわち、水中で回転型ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製、商品名T.K.ホモミクサー MARK II)6000rpmで10分間(25℃)撹拌し、セルロース乾燥組成物Bの1質量%水分散液を調製して、これを用いた。得られた食パンのキメの評価、および官能評価の結果を表2に示した。表2から、乾燥組成物Bをあらかじめ分散する工程を設けることで、さらに食パンの特性が改善されることがわかる。
[比較例1]
特定のセルロースAを配合しない以外は、表1の配合量に従って実施例1と同様にして食パンを製造し、実施例評価の基準とした。
[比較例2]
特定のセルロースAを配合せずに、代わりに微生物セルロース「プリマセル」を配合して、それ以外は表1の配合量に従って実施例3と同様にして食パンを製造した。すなわち、水中で回転型ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製、商品名T.K.ホモミクサー MARK II)6000rpmで10分間(25℃)撹拌し、「プリマセル」の1質量%水分散液を調製して、これを用いた。得られた食パンのキメの評価、および官能評価の結果を表2に示した。
表2から、無添加系と比較して「プリマセル」を配合した系は、生地の吸水量は増加するが、ホイロ工程で型の85%体積まで生地を膨張させるのに要する時間は変わらず、食パンのキメも差が見られなかった。さらに表2の食パンの官能評価結果より、無添加系と比較して、しっとりしてもちもちした食感はあるものの、食パンの味や歯切れが悪くなる結果となった。詳しい理由は分からないが、本発明の特定のセルロースとは原料や形状が異なる為に、パン生地において異なる働きをするものと考えられる。
Figure 2008206435
Figure 2008206435

Claims (7)

  1. セルロースを含有するドウ組成物であって、前記セルロースは、植物細胞壁を原料とし、結晶性であり、水中で安定に懸濁する成分を30質量%以上含有し、0.5質量%水分散液とした時の損失正接が1未満であり、微細な繊維状をなしていることを特徴とするドウ組成物。
  2. さらに水溶性高分子または親水性物質を含有し、前記セルロースと前記の水溶性高分子または親水性物質はいったん乾燥組成物を形成しており、前記乾燥組成物は、水中で安定に懸濁する成分を前記セルロースに対して30質量%以上含有し、かつ0.5質量%水分散液とした時の損失正接が1未満のものであることを特徴とする請求項1に記載のドウ組成物。
  3. 前記の乾燥組成物において、前記セルロースが30〜95質量%で、前記の水溶性高分子または親水性物質が5〜70質量%であることを特徴とする請求項2に記載のドウ組成物。
  4. 前記のセルロースあるいは乾燥組成物を、0.01〜5質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドウ組成物。
  5. パン生地であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のドウ組成物。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のドウ組成物を加熱して得られる食品。
  7. 請求項5記載のドウ組成物を加熱して得られるパン。
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