JP6692668B2 - 肉まん - Google Patents
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Description
[1] 食肉を含有する中種部と、前記中種部を包餡する生地部とを有し、
前記生地部の上部部分のみかけ密度が、0.8g/cm3以下であり、
喫食前の加熱調理後における前記中種部から厚みが5mm以上である食肉片を取り出し、当該食肉片の最大荷重を、テクスチャー・アナライザーにより、食肉片の中心温度が60±3℃、Trigger forceをAuto 5gとし、円柱状の測定プローブを1.5mm/sの速度で3mm押し込む条件で2回連続して測定した場合に、1回目に測定された最大荷重値に対する2回目に測定された最大荷重値の比([2回目に測定された最大荷重値]/[1回目に測定された最大荷重値])が1.22以上であり、
前記中種部が、結晶セルロース複合体を前記中種部に対して0.3質量%以上2.0質量%以下含有し、
前記食肉が直径7mm以上の挽き肉、又は、ブロック肉である、肉まん。
[2] 食肉を含有する中種部と、前記中種部を包餡する生地部とを有し、
前記生地部の上部部分のみかけ密度が、0.8g/cm3以下であり、
喫食前の加熱調理後における前記中種部から厚みが5mm以上である食肉片を取り出し、当該食肉片の最大荷重を、テクスチャー・アナライザーにより、食肉片の中心温度が60±3℃、Trigger forceをAuto 5gとし、円柱状の測定プローブを1.5mm/sの速度で3mm押し込む条件で2回連続して測定した場合に、1回目に測定された最大荷重値に対する2回目に測定された最大荷重値の比([2回目に測定された最大荷重値]/[1回目に測定された最大荷重値])が1.2以上であり、
前記中種部が、粒子の長径と短径の比L/Dが1.8以上2.2以下である結晶セルロースを含有し、
前記食肉が直径7mm以上の挽き肉、又は、ブロック肉である、肉まん。
[3] 前記結晶セルロースが、水溶性多糖類との複合体である、前記[2]に記載の肉まん。
[4] 前記生地部が、澱粉を含有する、前記[1]〜[3]のいずれかの肉まん。
[5] 前記澱粉が、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、もち米澱粉、及びうるち米澱粉からなる群より選択される1種以上である、前記[4]の肉まん。
[6] 中種を生地組成物で包餡した後に加熱調理して、食肉を含有する中種部と前記中種部を包餡する生地部とを有する肉まんを製造する方法において、
前記生地部の上部部分のみかけ密度が、0.8g/cm3以下であり、かつ
喫食前の加熱調理後における前記中種部から厚みが5mm以上である食肉片を取り出し、当該食肉片の最大荷重を、テクスチャー・アナライザーにより、食肉片の中心温度が60±3℃、Trigger forceをAuto 5gとし、円柱状の測定プローブを1.5mm/sの速度で3mm押し込む条件で2回連続して測定した場合に、1回目に測定された最大荷重値に対する2回目に測定された最大荷重値の比([2回目に測定された最大荷重値]/[1回目に測定された最大荷重値])が1.22以上である肉まんを製造し、
前記中種部に、結晶セルロース複合体を前記中種部に対して0.3質量%以上2.0質量%以下配合し、
前記食肉が直径7mm以上の挽き肉、又は、ブロック肉である、肉まんの製造方法。
[7] 中種を生地組成物で包餡した後に加熱調理して、食肉を含有する中種部と前記中種部を包餡する生地部とを有する肉まんを製造する方法において、
前記生地部の上部部分のみかけ密度が、0.8g/cm3以下であり、かつ
喫食前の加熱調理後における前記中種部から厚みが5mm以上である食肉片を取り出し、当該食肉片の最大荷重を、テクスチャー・アナライザーにより、食肉片の中心温度が60±3℃、Trigger forceをAuto 5gとし、円柱状の測定プローブを1.5mm/sの速度で3mm押し込む条件で2回連続して測定した場合に、1回目に測定された最大荷重値に対する2回目に測定された最大荷重値の比([2回目に測定された最大荷重値]/[1回目に測定された最大荷重値])が1.2以上である肉まんを製造し、
前記中種部に、粒子の長径と短径の比L/Dが1.8以上2.2以下である結晶セルロースを配合し、
前記食肉が直径7mm以上の挽き肉、又は、ブロック肉である、肉まんの製造方法。
[8] 前記結晶セルロースが、水溶性多糖類との複合体である、前記[7]の肉まんの製造方法。
[9] 前記生地組成物が、澱粉を含有し、
前記澱粉が、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、もち米澱粉、及びうるち米澱粉からなる群より選択される1種以上である、前記[6]〜[8]のいずれかの肉まんの製造方法。
[10] 肉まんにほぐれ性を付与する方法であって、
前記肉まんは、食肉を含有する中種部と、前記中種部を包餡する生地部とを有し、
前記生地部の上部部分のみかけ密度が、0.8g/cm3以下であり、
喫食前の加熱調理後における前記中種部から厚みが5mm以上である食肉片を取り出し、当該食肉片の最大荷重を、テクスチャー・アナライザーにより、食肉片の中心温度が60±3℃、Trigger forceをAuto 5gとし、円柱状の測定プローブを1.5mm/sの速度で3mm押し込む条件で2回連続して測定した場合に、1回目に測定された最大荷重値に対する2回目に測定された最大荷重値の比([2回目に測定された最大荷重値]/[1回目に測定された最大荷重値])が1.22以上であり、
前記中種部に、結晶セルロース複合体を前記中種部に対して0.3質量%以上2.0質量%以下配合し、
前記食肉が直径7mm以上の挽き肉、又は、ブロック肉である、方法。
[11] 肉まんにほぐれ性を付与する方法であって、
前記肉まんは、食肉を含有する中種部と、前記中種部を包餡する生地部とを有し、
前記生地部の上部部分のみかけ密度が、0.8g/cm3以下であり、
喫食前の加熱調理後における前記中種部から厚みが5mm以上である食肉片を取り出し、当該食肉片の最大荷重を、テクスチャー・アナライザーにより、食肉片の中心温度が60±3℃、Trigger forceをAuto 5gとし、円柱状の測定プローブを1.5mm/sの速度で3mm押し込む条件で2回連続して測定した場合に、1回目に測定された最大荷重値に対する2回目に測定された最大荷重値の比([2回目に測定された最大荷重値]/[1回目に測定された最大荷重値])が1.2以上であり、
前記中種部に、粒子の長径と短径の比L/Dが1.8以上2.2以下である結晶セルロースを配合し、
前記食肉が直径7mm以上の挽き肉、又は、ブロック肉である、方法。
[12] 前記結晶セルロースが、水溶性多糖類との複合体である、前記[11]の方法。
本発明及び本願明細書において、包餡食品の「ほぐれ性」とは、包餡食品を手で半分に割った際における、中種部の偏りの生じ難さを意味する。包餡食品の「ほぐれ性」は、生地部と中種部からなる包餡食品を、喫食前の加熱調理後に手で半分に割った際の中種部の割れた断面の形状に基づいて判断する。手で半分に割った際に、どちらか一方に中種部が寄っていた場合は、ほぐれ性が悪いと判断し、両方に中種部が均等に配分されて断面が均一な場合は、ほぐれ性が良いと判断する。手で半分に割った際に、中種部が均一に両側に分かれている包餡食品が、ほぐれ性が良好で好ましい。
本発明に係る包餡食品の中種部に含まれる食肉の最大荷重は、テクスチャー・アナライザーを用いた押し込み試験により測定される。テクスチャー・アナライザーとしては、例えば、TA.XT plus型(英弘精機株式会社製)を用いることができる。中種部から厚みが5mm以上である食肉片を選択的に取り出し、これを測定サンプルとする。中種部が一塊となっており、食肉を食肉以外の成分から選択的に取り出せない場合は、中種部を5mm四方にカットした中種片を測定サンプルとする。具体的には、中種部に含まれる食肉の最大荷重は、テクスチャー・アナライザー(TA.XT plus型)を用い、測定治具:P/3型(直径3mmの円柱状の治具)、Mode:Measure Force in compression、Option:Returen to start、Pre−test speed:1.5mm/s、Post−test speed:10mm/sとし、測定サンプルの温度、Trigger force、Test speed、Distanceを所望の値に設定して測定できる。本発明に係る包餡食品の中種部に含まれる食肉の最大荷重は、テクスチャー・アナライザーにより、食肉片の中心温度が60±3℃、Trigger forceをAuto 5gとし、円柱状の測定プローブを1.5mm/sの速度で3mm押し込む条件で測定した値である。ここで、Trigger forceとは、測定プローブがサンプルに接触したときに感知する力を設定した値である。測定プローブは、予め設定したPre−test speedに従って上から下に降りてくる。そして、設定したTrigger forceを感知すると、Test speedに従って設定したDistanceの距離だけ押し込み試験を開始する。本発明及び本願明細書において、最大荷重とは、上述の測定で得られた距離−応力曲線上の、応力が最大となる値である。最大荷重の値が大きいほど、硬い食感であることを表している。
本発明及び本願明細書においては、一個の食肉片に対して、同じ条件で2回連続して最大荷重を測定し、1回目の測定値に対する2回目の測定値の比を最大荷重比という。最大荷重比は、中種部のほぐれ性の指標となる。最大荷重比が中種部のほぐれ性の指標となる理由は明らかではないが、次のように推測される。包餡食品におけるほぐれ感の強さは、中種部の肉粒や肉片同士が結着していないことに起因する。1回目の押込み時は、食肉片中の肉粒同士が凝集しておらず、肉汁が十分に含まれているため柔らかいが、2回目の押し込み時は、肉汁が1回目の押込みで外に出てしまい、肉粒や肉片同士が結着しているため、最大荷重(強度)が増加する。つまり、肉粒や肉片同士があまり決着しておらず、それらの隙間に肉汁が十分に含まれている食肉片ほど、2回目の押し込み時の最大荷重は1回目の押し込み時の最大荷重よりも大きくなり、最大荷重比が大きくなる。
本発明に係る包餡食品の中種部に含まれる食肉の破断距離は、前述した最大荷重の測定方法と同様にして行ったテクスチャー・アナライザーを用いた押し込み試験により測定される。食肉の破断距離は、上述の測定で得られた時間−応力曲線上の、原点から応力がゼロになるまでの時間に治具の動くスピード(Test−Speed:1.5mm/s)を乗じた値のことである。破断距離の値が小さいほど、ほぐれ感のある食感であるといえる。
中種部の水分値とは、加熱調理した直後又は高温保存容器から取り出した直後の包餡食品の中種部に含まれる食肉の水分値を指す。本発明に係る包餡食品の中種部の水分値は、公知の測定方法で測定することができる。例えば、赤外線水分計を用いて測定することもでき、加熱調理前後の中種部の質量を測定することによって決定することもできる。すなわち、まず中種部の質量を測定し、次いで中種部の質量変化がなくなるまで105℃で維持する。質量変化がなくなったときの中種部の質量を測定し、加熱調理後と比較して、105℃保持後に減少した質量から、中種部の水分値を決定することができる。なお、ここでいう「質量変化がなくなる」とは、105℃環境下で60秒間静置した場合における質量変化が0.01g以下であることをいう。本発明に係る包餡食品の中種部の水分値としては、50質量%以上であることが好ましく、52質量%以上であることがより好ましく、54質量%以上であることがさらに好ましく、56質量%以上であることが特に好ましい。また、本発明に係る包餡食品の中種部の水分値としては、食感を勘案すると、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。中種部の水分値を前記範囲内とすることにより、より柔らかくジューシーな食感を得ることができる。
本発明に係る包餡食品において、「中種部の加熱後の歩留り」とは、加熱調理前の中種部の質量に対する、包餡食品を2度加熱調理した後の中種部の質量の比([加熱調理後の中種部の質量]/[加熱調理前の中種部の質量])である。加熱調理前後の中種部の質量を測定することによって求めることができる。例えば、加熱調理前の中種部の質量をあらかじめ測定しておき、加熱操作を加えた直後の包餡食品から中種部を取り出して質量を測定する。これらの測定値と下記の式から加熱後の歩留りを測定できる。本発明に係る包餡食品における中種部の加熱後の歩留りは、60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、75%以上であることが特に好ましい。中種部の加熱後の歩留りを前記範囲にすることにより、柔らかくジューシーな食感を得ることができる。
本発明に係る包餡食品において、中種部とは、少なくとも食肉を配合し、その他野菜類、キノコ類、山菜類等を配合し、各種調味料で味付けをした中種(餡)からなり、生地部で包餡されているものである。中種の種類として、中華まんの具、餃子の具、シュウマイの具、春巻きの具等が挙げられる。
本発明及び本願明細書において、食肉とは、牛肉、豚肉、鶏肉、猪肉、羊肉、鹿肉、馬肉、熊肉、鰐肉、鯨肉、魚肉などの食肉全般を指す。本発明に係る包餡食品の中種部に含まれる食肉は、1種類であってもよく、2種類以上の食肉の混合物であってもよい。中種部の原料となる食肉は、動物のどの部位であってもよい。例えば豚肉であれば、肩ロース、ロース、バラ、肩、ヒレ、モモ、腕等のどの部位であってもよく、2種類以上の部位の混合物であってもよい。本発明に係る包餡食品の中種部における食肉の含有量は、味や食感の点から、中種部全体に対して、30質量%以上が好ましく、60質量%以下が好ましい。
本発明に係る包餡食品の中種部の原材料とする食肉の形状は、特に限定されるものではなく、挽き肉、ブロック肉、スライス肉などの一般的な形状のものを用いることができる。挽き肉とは、食肉を細かく粉砕した後にダイスなどを通して成形した食肉を指す。本発明に係る包餡食品の中種部は、野菜などの他食材と練り合わせて使用されることが多く、このように練り合わせて調製された中種部は一塊となり、肉団子のような形状になる。挽き肉は、成形時に使用するダイスの目の細かさにより、粗挽き、中挽き、細挽きなどに分けられる。本発明において、原材料とする挽き肉は、粗挽きが好ましい。具体的には、成形する際に通すダイス径が5mmφ以上、好ましくは7mmφ以上、より好ましくは10mmφ以上であり、かつダイスを通す回数が1回である挽き肉が好ましい。ダイス径が5mmφ以上の粗挽きの挽き肉であれば、得られた包餡食品は、喫食時に肉粒感を感じ好ましい食感となるためである。また、ブロック肉とは、立体的に切断され、最も薄い部分の厚みが2mm以上ある形状の食肉を指し、スライス肉とは、2mm以内の厚みに薄くカットした食肉を指す。ブロック肉又はスライス肉を用いた場合には、他食材と混ぜ合わせて中種部を作製した場合でも、当該中種部の中の食肉は一塊とならず、個々の肉粒や肉片が独立して存在するため、喫食時に肉粒感を強く感じる好ましい食感の包餡食品が製造できる。本発明に係る包餡食品の中種部の原材料とする食肉は、いずれの形状であってもよいが、包餡食品を手で割った時の断面の見た目、食感等を勘案すると、ブロック肉又は挽き肉が好ましく、ブロック肉がより好ましい。
本発明において用いられる食肉は、前述の通り、成形時に使用するダイスの目が小さい挽き肉よりも、ダイスの目が比較的大きな挽き肉のほうが好ましく、ブロック肉がより好ましい。これは、中種部に含まれる食肉が大きい方が、肉粒感が付与できることに加えて、食肉表面にセルロース等の多糖類が付着しやすいためである。
本発明に係る包餡食品の中種部には、食肉材料に加えて、多糖類を含有することが好ましく、β結合型多糖類を含有することがより好ましい。多糖類が食肉表面に付着した結果、加熱による食肉同士の凝集が抑制され、さらに中種部からの離水・離油が抑制されるため、適度なほぐれ性を付与できる。β結合型多糖類以外の多糖類としては、マクロホモプシスガム、寒天、ゼラチン、ペクチン、プルラン、澱粉、各種化工・加工澱粉、乾燥こんにゃく加工品等を、利用可能なものとして挙げることができる。
本発明及び本願明細書において、「β結合型多糖類」とは、多糖類の主鎖を構成する糖分子がβ結合で結合された多糖類のことである。ここでいう主鎖とは、多糖類を構成する分子鎖の中で最も炭素数が多い分子羅列構造のことである。またβ結合とは、糖構造のエクアトリアル方向(平面より上方向)で隣接する糖類などとグリコシド結合(主に糖構造中のヒドロキシル基同士が脱水縮合して形成する共有結合のこと)を形成する結合のことである。β結合型多糖類としては、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、タラガム、カードラン、ガティガム、グルコマンナン、カラヤガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、アラビアガム、カラギナン、カードラン、グルコマンナン、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、セルロース、CMC(カルボキシメチルセルロース)、MC(メチルセルロース)、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を挙げることができる。本発明に係る包餡食品の中種部に含有させるβ結合型多糖類としては、特にセルロースが好適である。
本発明に係る包餡食品の中種部には、食肉材料に加えて、セルロースを含むことが好ましい。中種部にセルロースを配合することにより、最大荷重比を1.2以上に調整することが容易になり、包餡食品にほぐれ感のある食感を付与し、手で半分に割った際に生地部と共に中種部も略二等分されるという効果を奏する。中種部にセルロースを含有させることにより、ほぐれ感を高め、手で中種部も略二等分できるように中種部のほぐれ性を改善する効果(ほぐれ性改善効果)が得られる理由は明らかではないが、微細なセルロースが肉粒又は肉片の間に入りこむことによって、肉片中のタンパク質が結着するのが防止されるためと推察される。
また、「セルロース原料」は、中種部の原料のうち、セルロースを含有するものである。セルロース原料は、粉末状や顆粒状の固形物であってもよく、水系媒体にセルロースを分散させた分散液であってもよい。
セルロースの平均重合度は、「第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店発行)」の確認試験(3)に記載の銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法に従って測定することができる。
セルロースの平均重合度を制御する方法としては、加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース繊維質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースやリグニン等の不純物も取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、後記のセルロース複合体を製造する場合には、セルロースと水溶性高分子に機械的せん断力を与える工程において、セルロースが機械処理を受けやすくなり、セルロースが微細化されやすくなる。その結果、セルロースの表面積が高くなり、水溶性高分子との複合化の制御が容易になる。
通常のセルロースは、草木類や微生物、動物などから得られる天然セルロースであってもよく、化学的に合成された合成セルロースであってもよい。天然セルロースの原料としては、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等のセルロースを含有する天然物由来の繊維質物質が挙げられる。本発明において原料として用いられる通常のセルロースは、これらのうち、1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。一般に入手できる通常のセルロースとしては、例えばセルロースフロックや結晶セルロース等の粉末形態である通常のセルロース(以下、「粉末セルロース」という。)が挙げられる。
本発明において原料として用いられる「粉末セルロース」とは、セルロース系素材原料を、ヘミセルロース、リグニン等の非晶領域を除くことなく機械的に粉砕したものである。例えば、「第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店発行)」に記載の「粉末セルロース」に該当するものである。当該粉末セルロースの平均重合度は、440より大きいと規定されている。当該粉末セルロースとしては、例えば、日本製紙(株)製の「KCフロックシリーズ」などが挙げられる。
セルロース原料としては、粉末セルロース、結晶セルロースのいずれも使用できるが、食肉材料とより混合しやすい点から、結晶セルロースを使用することが好ましい。
本発明において原料として用いられる「結晶セルロース」とは、例えば木材パルプ、精製リンターなどのセルロース系素材原料を、酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解などにより解重合処理して非晶領域(ヘミセルロース、リグニン等)を除いて得られるものをいう。例えば、第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店発行)に記載の「結晶セルロース」に該当するものである。結晶セルロースの平均重合度は、通常、10〜500程度である。
本発明において原料として用いられる結晶セルロースは、粉末として利用することができる。本発明及び本願明細書では、結晶セルロースが粉末化されているものを「結晶セルロース粉末」といい、前記の「粉末セルロース」とは区別される。結晶セルロース粉末は、例えば加水分解処理された天然セルロースを乾燥することにより得られる。この場合、加水分解処理により得られる反応溶液から、加水分解処理されたセルロースを含む固形分を単離し、これを適当な媒体に分散させて調製したセルロース粒子分散液を乾燥してもよく、同加水分解溶液がそのままの状態でセルロース粒子分散液を形成している場合は、この分散液を直接乾燥してもよい。
粉末セルロース、結晶セルロース、結晶セルロース粉末の長径と短径の比(L/D)は、以下の方法で測定することができる。
エアージェットシーブ(ALPINE製、A200LS型)を用い、JIS標準篩75μmで篩過した粒子について、粒子の光学顕微鏡像を画像解析処理し、粒子に外接する長方形のうち面積が最小となる長方形の長辺と短辺の比(長辺/短辺)を任意の400個の粒子について測定し、その平均値をL/Dとする。但し、個々の粒子は絡まりがないように予めばらけた状態にして測定する必要がある。粒子の光学顕微鏡像を画像解析処理は、例えば、市販されている画像解析ソフトウェア((株)インタークエスト製、装置:「Hyper700」、ソフトウェア:「Imagehyper」)を使用して実施できる。
本発明及び本願明細書において、セルロース粒子の平均粒子径とは、累積質量50%の粒子径の値をいう。粉末セルロース、結晶セルロース、結晶セルロース粉末の平均粒子径は、乾燥粉体で二次凝集体の状態で結晶セルロース粉末を篩上で振とうさせ、分画し、粒径に対する重量頻度を測定するような、公知の篩分けによる方法により行うことができる。典型的には、ロータップ式篩振蕩機(平工作所製、「シーブシェーカーA型」)、JIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、サンプル10gを10分間篩粉することにより、平均粒子径を測定することができる。
加水分解処理後乾燥前のセルロース粒子分散液中のセルロース粒子は、湿潤状態で篩過(JIS標準篩使用)したときに、75−38μm篩に残留する粒子の平均L/Dが2.0−5.5の範囲にあることが好ましく、3.2−5.2の範囲にあることがより好ましい。セルロース粒子分散液中の粒子は乾燥により凝集してL/Dが小さくなるため、乾燥前の粒子の平均L/Dを一定範囲に保つことにより、ほぐれ性改善効果の高いセルロースが得られる。加水分解反応中又はその後工程における攪拌力を特定の強さに制御することにより、乾燥前の粒子の平均L/Dを一定範囲に保つことができる。
加水分解、及び、その後必要に応じて行われる撹拌により得られたセルロース粒子分散液を乾燥することにより、セルロース粉末が得られる。セルロース粒子分散液の乾燥方法は特に制限はない。当該乾燥方法としては、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、棚段乾燥、気流乾燥、真空乾燥、及び有機溶剤と共に乾燥する乾燥方法等が挙げられる。
セルロースの比表面積は、以下の測定方法に従って測定する。動的水蒸気吸着装置DVS−1(Surface Measurement Systems Ltd.製)を用い、吸着ガスとして水蒸気を使用し、以下の測定ステップに従って0−30%RHの範囲において試料の水蒸気吸着量を求め、BET法により算出する。水の分子占有面積は8.1Åとして計算する。試料はセルロース粉末約0.10gを5cm3容サンプル管に入れ100℃、3時間真空乾燥し、試料中の水分を除去したものを0.01−0.02g上記装置に入れて測定を行う。
試料を下記の各相対湿度下に下記の測定時間だけ放置し試料の水蒸気吸着量を測定する。
セルロースとして、セルロースと水溶性高分子が複合化されたセルロース複合体を用いても、ほぐれ性改善効果を得ることができる。包餡食品の中種部への分散性は、複合体の方がセルロース単体よりも優れている。このため、セルロース複合体をセルロース原料とすることにより、セルロース単体を原料とした包餡製品よりも、中種部における食肉の凝集が抑制されており、よりほぐれ感に優れ、かつ生地部と共に中種部も、手でより綺麗に半分に割ることができる包餡食品を製造しやすい。特に、複数回の加熱調理を経て喫食される包餡食品の場合には、中種部にセルロース複合体を含有させることが好ましい。
水溶性多糖類の中でも、特に、キサンタンガムは、セルロースと複合化しやすいため好ましい。キサンタンガムとは、トウモロコシなどの澱粉を細菌 Xanthomonas campestrisにより発酵させて作られる水溶性多糖類であり、グルコース2分子、マンノース2分子、グルクロン酸の繰り返し単位からなるものである。本発明で用いられるキサンタンガムには、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩も含まれる。前記の構造を有し、食品で使用できるグレードであれば、粘度に制限なく使用できる。セルロースとの複合体において、セルロースとキサンタンガムの質量比は、99/1〜80/20が好ましく、99/1〜90/10がより好ましい。
セルロース複合体におけるセルロースと水溶性高分子の配合比は、水溶性高分子の種類に応じて、適宜調整される。通常、セルロースは、セルロースと水溶性高分子の混合物全体に占める割合が99質量%以下であれば、セルロース表面の水溶性高分子の被覆が充分であり、中種部の製造工程において、食肉材料や野菜等と均一に混ぜ合わせることができ、食感の優れた包餡食品が得られる。他方、複合体中の水溶性高分子の含有量が80質量%以下であれば、生地を混練する際にべたつきが出にくく、製造しやすい。本発明において用いられるセルロース複合体としては、セルロースが20質量%〜99質量%に対し、水溶性高分子を1〜80質量%含むことが好ましく、セルロースが30〜95質量%に対し、水溶性高分子を5〜70質量%含むことがより好ましい。セルロースの含有量としては、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。また、水溶性高分子の含有量としては、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。
セルロース原料としては、セルロースのみからなるものであってもよいが、水系媒体への分散性を高める目的で、セルロースと共に高分子物質ではない親水性物質を含有するものであってもよい。当該親水性物質は、水系媒体中にセルロースを分散させた際の、崩壊剤、又は導水剤として機能する。したがって、食肉原料等の他の原料と混合させる前に、予め当該親水性物質と混合しておき、当該親水性物質で被覆されたセルロースをセルロース原料として用いることにより、セルロースが中種中でさらに分散しやすくなる。本発明において用いられるセルロース原料としては、水溶性多糖類とのセルロース複合体と高分子物質ではない親水性物質とを含むものが好ましい。
コロイド状セルロース成分の含有量とは、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(例えば、日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」)で、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(例えば、久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型を用いて、処理条件:遠心力2,000rpm(5600G※Gは重力加速度)×15分間)したときに、遠心後の上澄みに残存する固形分(セルロース、水溶性ガム、及び、親水性物質を含む)の質量百分率のことである。
セルロース複合体の長径と短径の比(L/D)は、以下のようにして測定できる。まず、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(例えば、日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザー ED−7」)で、処理条件:回転数15,000rpm×5分間で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%に純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾されたものを、高分解能走査型顕微鏡(SEM)又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測された際に得られる粒子像に外接する長方形のうち面積が最小となる長方形の長辺と短辺の比(長辺/短辺)を任意の150個の粒子について測定し、その平均値をL/Dとする。
セルロース複合体粒子の体積平均粒子径(水分散体における平均粒子径)は、次の方法で測定できる。
まず、セルロース複合体を、1.0質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(例えば、日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザー ED−7」)で、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離を経ずに、そのまま、レーザー回折/散乱法粒度分布計(例えば、堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」において超音波処理1分、屈折率1.20の条件)で測定することにより得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径を体積平均粒子径とする。
セルロース複合体は、混練工程においてセルロースと水溶性高分子に機械的せん断力を与え、セルロースを微細化させるとともに、セルロース表面に水溶性高分子を複合化させることによって製造できる。セルロースの微細化時には、水溶性高分子以外のその他の添加剤などを添加してもよい。特に親水性物質は、セルロースと水溶性高分子を複合化する工程において一緒に添加してもよく、複合体形成後に添加してもよい。上述の処理を経たものは、必要に応じ、乾燥される。本発明で用いられるセルロース複合体は、上述の機械的せん断を経ていればよく、未乾燥のもの又はその後乾燥されたもの等、いずれの形態でもよい。
本発明においては、セルロース複合体のなかでも、易分散性のものを使用することが好ましい。易分散性セルロース複合体は、中種の混練工程で微粒子状のまま中種全体に容易に均一に分散するため、当該中種を生地に包餡させて製造された包餡食品は、セルロースが全体に均一に分散した中種部を備える。つまり、易分散性セルロース複合体を使用することにより、凝集したセルロースによるざらつきが低減されており、かつ中種部全体に均一に形成されたセルロースの網目構造により肉片や肉粒同士が結着し難く、よりほぐれ感の強い包餡食品を製造できる。易分散性セルロース複合体としては、水溶性高分子とセルロースとが複合体化したセルロース複合体に、前記高分子物質ではない親水性物質を混合したものが好ましく、当該セルロース複合体に、澱粉加水分解物及び/又は加工澱粉を混合したものがより好ましい。当該澱粉加水分解物及び加工澱粉は、前記で列挙したものを使用することができる。
前記易分散性セルロース複合体は、上述のセルロース、水溶性高分子、及び、必要に応じて含まれる高分子物質ではない親水性物質に加え、崩壊剤を含んでもよい。崩壊剤は、中種中へのセルロース複合体の分散性を高める作用を有する。特に、味付けの目的で、中種に、塩分及び/又は酸を添加する際には、崩壊剤の添加効果が大きい。崩壊剤の添加量としては、セルロース複合体に対し、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が特に好ましい。崩壊剤のセルロース複合体に対する添加量の上限は、40質量%以下である。
易分散性セルロース複合体の平均粒子径とは、易分散性セルロース複合体を4質量%の濃度で純水懸濁液とし、プロペラ攪拌機(例えば、HEIDON製 商品名3−1モーター、攪拌翼カイ十字型プロペラ1段、条件:400rpm×20分間、25℃)で分散させ、遠心分離を経ずに、そのまま、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)で測定した際の体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)のことである。
易分散性セルロース複合体は、例えば、セルロース複合体と高分子物質ではない親水性物質、及び必要に応じて添加される崩壊剤等の添加剤とを水系媒体に分散させて、分散液を形成する工程と、それに続き、この分散液を均質化する工程と、さらに、均質化された分散液を乾燥する工程を経て製造することができる。
本発明に係る包餡食品の中種部には、本発明の効果に影響を与えない限りにおいて、通常の飲食品に配合される原材料を適宜配合させることができる。例えば、卵、膨張剤、水、オリゴ糖、タンパク質、増粘剤、具材、風味原料、調味料、香料、色素、乳化剤、栄養剤等の添加材料を、所定の割合で食肉材料に混合してもよい。
本発明に係る包餡食品の中種部に配合し得る風味原料としては、種子類(ピーナッツ、アーモンド、マカデミアナッツ、カシューナッツ、栗等)、豆類(小豆、エンドウマメ、大豆等)、魚介類(えび、かに、鮭、ホタテ、たらこ等)、乳類(牛乳、生クリーム、練乳、全粉乳、脱脂粉乳、チーズ、ヨーグルト等)、野菜類(にんじん、トマト、たまねぎ、ピーマン、ケール等)、果実類(イチゴ、オレンジ、レーズン、りんご、キウイ、パイナップル、梅、バナナ、イチジク、モモ、なし等)、嗜好飲料類(コーヒー、紅茶、ココア、ビール、ワイン、ウイスキー、焼酎等)、調味料(食塩、みそ、醤油、ソース、食酢等)、香辛料類(こしょう、カレー粉、シナモン等)が挙げられる。これらの原料の形態は、生、乾燥品、粉末、ペースト、ピューレ、液体等の任意の形態であってよい。包餡食品に目的とする風味を付与するために、1種又は2種以上の風味原料を配合することができる。
本発明に係る包餡食品の中種部に配合し得る栄養剤としては、ビタミン、カルシウム、鉄、DHA、EPA、セサミン、ヒアルロン酸、プラセンタエキス、マカ、ウコン、コラーゲン、オルニチン、スクワラン、コエンザイムQ10、ローヤルゼリー等が挙げられる。包餡食品には、1種又は2種以上の栄養剤を配合することができる。
本発明に係る包餡食品の中種部における多糖類の含有量は、ほぐれ性改善効果が得られる量であれば特に限定されるものではなく、使用する多糖類の種類や食肉材料の大きさや形状等を考慮して適宜調整することができる。例えば、中種部の最大荷重比が1.2以上となるように、中種に配合する多糖類の量を調整することができる。
中種部を構成する中種(餡)は、食肉材料をはじめとする材料を混合し、常法により製造することができる。中種は、配合する全ての材料を一度に混合して調製してもよく、材料を複数回に分けて混合して調製してもよい。また、中種全体に均一にセルロースが分散されるように、食肉材料、セルロース原料、及びその他の材料を含む混合物は、生地部に包餡させる前に混練しておくことが好ましい。また、中種は、生地に包餡させる前に加熱調理を施してもよく、未加熱の中種を生地に包餡させてもよい。
本発明において、中種部にセルロース等の多糖類を含有させる方法に限定はなく、例えば、多糖類を粉体状のまま直接中種部の原材料と混ぜ合わせる方法、多糖類を調味料などの粉末原料と共に粉末状でブレンドする方法、多糖類を水や調味料等の液体原料と共に分散してから混合する方法、中種部の原材料をセルロース分散液等の多糖類の水分散液に浸漬させる方法、多糖類の水分散液を食肉に直接インジェクションする方法等の方法で中種部に添加することができる。また、これらの各方法を組み合わせて、多段階で添加してもよい。ただし、ゲル化剤などを用いて多糖類をゼリー状等にしてから添加すると十分な効果が得られない場合があるため、粉体の状態で添加することが好ましい。本発明においては、中種部中に均一に多糖類が分散されることが好ましく、このため、多糖類を粉体状のまま直接中種部の原材料と混ぜ合わせる場合には、多糖類が全体に均一に分散されるまで充分に混合することが好ましい。
本発明に係る包餡食品において、生地部とは、小麦粉などの穀粉にぬるま湯、イーストを加え混練した生地組成物を発酵させた後に加熱調理したものであり、中種部を包餡している。本発明に係る包餡食品の生地部の形状は、通常の菓子の製造で使用できる成形機で製造可能なものであれば、どのような形状でもよく、任意の形状を選択することができる。例えば、立方体、直方体、棒状、円形、球状、円錐状、三角錐状、星形であってもよく、ある特定の動物、食物、乗り物等の形状であってもよい。
本発明に係る包餡食品の生地部のみかけ密度は、加熱時に中種部よりも上部に存在する生地部から、生地部表面及び中種部が付着している部分を除き、1cm四方の生地片を切りだし、当該生地片の質量と体積を測定し、質量を体積で除することによって求める。質量は精密天秤で測定し、体積は各辺を例えばノギスで測定し、底面積と高さを乗ずることにより算出できる。
本発明に係る包餡食品の生地部の厚みは、10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることがさらに好ましい。生地部の厚みを10mm以上にすることによって、ふんわりとした食感を付与することができる。本発明に係る包餡食品において「生地部の厚み」とは、生地部において最も厚い部分の厚みのことを指す。生地部の厚みの測定方法は、加熱調理後の包餡食品を、包丁等を使って又は手で半分に割って断面をむき出しにした後に、最も厚い部分をノギス等を使用して測定する。
本発明に係る包餡食品の生地部は、中華まん等の製造において一般に公知の方法で製造することができる。当該公知の方法としては、ストレート法(直捏法)、中種製法、液種製法、湯種製法等が挙げられる。具体的には、例えば、水等の水分を含む原料とイーストを小麦粉などの粉末原料と混合して生地組成物を製造する工程、当該生地組成物を発酵させる工程、発酵後の生地組成物を成型する工程、及び成型した生地組成物を加熱調理する工程を経て製造することができる。なお、生地組成物の製造においては、穀粉以外の粉体原料と穀粉を混ぜ合わせるブレンド工程、粉体原料を篩にかける篩粉工程があってもよく、発酵後成型前や成型後に、生地組成物を冷却又は冷凍する工程があってもよい。また、発酵工程の回数は2回以上であってもよい。
生地部を形成するための生地組成物が含有する粉末原料は、穀粉を主原料とする。穀粉とは、イネ科穀物類(小麦、大麦、ライ麦、米、とうもろこし、テフ、ひえ)、豆類(大豆、ヒヨコマメ、エンドウマメ等)、擬穀類(蕎麦、アマランサス等)、イモ類・根菜類(片栗、馬鈴薯、葛、タピオカ等)、木の実(栗、どんぐり)等を挽いて作られた粉末のことである。原料として、これらのうち1種類の穀粉を使用しても、2種類以上を混合したものを使用してもよい。生地部が穀粉を含むことにより、充分な栄養価を持つ包餡食品が製造できる。また、穀粉は水分と反応してグルテンの網目構造を形成し、加熱調理時の熱により膨張した構造を支えることができる。
小麦粉とは、小麦を挽いて作られた粉末のことである。小麦粉は、そこに含まれるタンパク質の割合と形成されるグルテンの性質によって、薄力粉、中力粉、強力粉、浮き粉、全粒粉、グラハム粉、セモリナ粉等に分類される。強力粉はタンパク質の割合が12質量%以上の小麦粉であり、中力粉はタンパク質の割合が11.9〜8.6質量%の小麦粉であり、薄力粉はタンパク質の割合が8.5質量%以下の小麦粉である。本発明に係る包餡食品の生地部の原料としては、これらのいずれの小麦粉を用いてもよい。生地の延性の観点から、本発明に係る包餡食品の生地部の原料としては、強力粉、中力粉、又は薄力粉が好ましい。小麦粉中のタンパク質の割合が大きいと延性が悪くなるためである。本発明に係る包餡食品の生地部の原料としては、1種類の小麦粉を使用してもよく、2種類以上を混合したものを使用してもよい。
生地部の食感改良や物性改良のため、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限度で、生地部に増粘剤を添加することができる。当該増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、タマリンドシードガム、タラガム、カードラン、ラムザンガム、ガティガム、グルコマンナン、カラヤガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、アラビアガム、マクロホモプシスガム、カラギーナン、寒天、ゼラチン、ペクチン、カードラン、グルコマンナン、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、澱粉、各種化工・加工澱粉、CMC、MC、HPC、HPMC、乾燥こんにゃく加工品等を、利用可能なものとして挙げることができる。
本発明に係る包餡食品の生地部には、加熱時の膨張性を向上させる目的で、膨張剤を適宜配合しても良い。膨張剤としては、市販の任意の膨張剤が使用可能であり、ベーキングパウダー、重曹、重炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸マグネシウム、ミョウバンの中から1種又は2種以上を併用することができる。味の観点から好ましくは、ベーキングパウダー、重曹、重炭酸アンモニウムであるが、最も好ましくは膨張剤を配合しないことである。
本発明に係る包餡食品は、生地部に澱粉を含むことが好ましい。生地部に澱粉を配合することによって、モチモチとした好ましい食感を付与することが出来る。
澱粉の原料としては、小麦、トウモロコシ、モロコシ、モチ種トウモロコシ(ワキシーコーンスターチ)、馬鈴薯、モチ種馬鈴薯、キャッサバ(タピオカ)、うるち米、もち米、さつまいも、さごやし、わらび、蓮根、葛、緑豆、その他豆類等が挙げられる。これらの中でも、食感の観点からモチ種トウモロコシ、キャッサバ、米、もち米、馬鈴薯が好ましく、より好ましくはキャッサバである。
タピオカ澱粉とは、キャッサバの根茎から製造した澱粉である。タピオカ澱粉を包餡食品の生地部に配合することによって、生地部によりモチモチとした食感を付与できるため好ましい。生地部に配合するタピオカ澱粉には、各種加工処理、α化処理、部分α化処理を施してもよい。
本発明に係る包餡食品の生地部の澱粉の含有量は、生地組成物を構成する粉体原料全量の0.5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。生地組成物の澱粉の含有量は、食感等を勘案すると、粉体原料全量の60質量%以下が好ましい。
本発明に係る包餡食品の複合食品の生地組成物には、本発明の効果に影響を与えない限りにおいて、通常の飲食品に配合される原材料を適宜配合させることができる。例えば、卵、膨張剤、水、オリゴ糖、タンパク質、増粘剤、具材、風味原料、調味料、香料、色素、乳化剤等より選択された添加材料を、所定の割合で穀粉に混合してもよい。
本発明に係る包餡食品は、中華まん等の製造に用いられている一般に公知の方法で製造することができる。当該公知の方法としては、生包餡法と加熱包餡法が挙げられる。生包餡法とは、具材を生で混ぜ合わせて中種を製造した後に、得られた生の中種を生地組成物で包み込んで成形した後に加熱する方法である。一方、加熱包餡法とは、加熱しながら具材を混ぜ合わせて中種を製造した後に、得られた加熱調理した中種を、生の生地組成物で包み込んで成形した後又は加熱調理された生地部の内部に注入した後に、再度加熱する方法である。中種を加熱調理する方法及び中種を生地組成物(又は生地)で包餡したものを加熱調理する方法は、蒸し(スチーム加熱)、焼成、フライ、煮る、赤外加熱、マイクロウェーブ加熱等のいずれの加熱方法でもよい。本発明に係る包餡食品の製造においては、加熱調理後の食感に優れていることから、蒸し(スチーム加熱)が最も好ましい。加熱温度は70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましい。
本発明に係る包餡食品は、喫食されるまでの間保存することができる。包餡食品の保存温度は特に限定されるものではなく、常温保存、冷蔵保存、チルド保存、冷凍保存のいずれであってもよい。中種部からの離水等を勘案すると、本発明に係る包餡食品の保存方法としては、チルド保存又は冷凍保存が好ましい。
本発明に係る包餡食品は、喫食される前に再度加熱することが好ましい。再加熱する場合の加熱調理方法としては、蒸し(スチーム加熱)、焼成、フライ、煮る、赤外加熱、マイクロウェーブ加熱等のいずれの加熱方法でもよい。本発明に係る包餡食品の喫食前の再加熱調理としては、加熱調理後の食感に優れていることから、蒸し(スチーム加熱)が最も好ましい。加熱温度は70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましい。
以下の実施例等において、物性評価に用いた肉まんは、次のようにして製造した。
まず、強力粉及び薄力粉の混合物に40℃の温水を加え、プラネタリーミキサーを用いて126rpmで1分間混練した。得られた混練物に、砂糖、塩、ドライイーストを投入し、プラネタリーミキサーを用いて126rpmで5分間混練した後、さらにラードを添加し、再度プラネタリーミキサーを用いて126rpmで3分間混練し、生地組成物を得た。得られた生地組成物を、湿度80%、30℃に調整した恒温恒湿機に投入し、1時間発酵させた。
まず、豚ひき肉(肩肉、7mmφ)に食塩を練り込み、ねばりを出した後、精製ラードとゴマ油を練り込んだ。次いで、得られた混練物に、砂糖、塩、胡椒を練り込んだ後、さらに醤油、みりん、おろし生姜、おろしにんにくを練り込み、最後にたまねぎ、ねぎ、たけのこを練り込んだ。練り込みは全て、プラネタリーミキサーを用いて126rpmで1分間混練することにより行った(遂次混合)。
発酵させた生地組成物60gに、中種40gを包餡して、中種を生地組成物で包み込んだ成形物を製造した。当該成型物を、湿度80%、温度40℃に調整した恒温恒湿機に投入し、生地組成物を発酵させた。次いで、当該成型物を、ウォーターオーブン(SHARP(株)製、商品名:「HEALSIO AX−PX3」)を用いて、100℃で20分間蒸し上げた後、冷凍庫(−20℃)で24時間保存した。その後、再度ウォーターオーブンを用いて、当該成型物を80℃で50分間蒸し上げて、肉まんを得た。
セルロースを4質量%の濃度で純水懸濁液とし、プロペラ攪拌機(HEIDON製 商品名3−1モーター、攪拌翼カイ十字型プロペラ1段、条件:400rpm×20分間、25℃)で分散させ、遠心分離を経ずに、そのまま、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)で測定した際の体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)を平均粒子径とした。
以下の実施例等において、肉まんの中種部の最大荷重比は、以下のようにして測定した。
製造直後の肉まんから中種部を取りだし、中種部に含まれる食肉を5mm四方にカットした後に、最大荷重を、テクスチャー・アナライザー(英弘精機株式会社製、TA.XT plus型、測定治具:P/3型、温度:60.0℃、Mode:Mesure Force in Compression、Option:Return to Start,Pre−TestSpeed:1.5mm/s,Test−Speed:1.5mm/s,Post−Test Speed:10mm/s,Distance:3mm,Trigger force:Auto 5g)により測定した。その後、時間を置かず、同条件でもう一度測定を行い、以下の式に従って最大荷重比を算出した。同様の操作を無作為に抽出した3個の肉まんから、肉まん1個当たり食肉片を5個取りだし、この連続した2回の測定を食肉片1個当たり1回ずつ行い、各食肉片について最大荷重比を算出した。5個の食肉片の最大荷重比の平均値を、肉まんの中種部の最大荷重比とした。
[最大荷重比]=[2回目測定時の最大荷重値]/[1回目測定時の最大荷重値]
以下の実施例等において、肉まんの中種部の破断距離は、以下のようにして測定した。
製造直後の肉まんから中種部を取りだし、中種部に含まれる食肉を5mm四方にカットした後に、食肉片をテクスチャー・アナライザーに設置し、前記<中種部の最大荷重比>と同じ条件で測定し、破断距離を求めた。無作為に抽出した3個の肉まんの中種部から、肉まん1個当たり食肉片を5個取り出し、食肉片1個当たり1回ずつ測定を行い、その平均値を破断距離とした。
以下の実施例等において、肉まんの中種部の水分値は、以下のようにして測定した。
作製直後の肉まんから中種部を取りだし、中種部に含まれる食肉を、赤外線水分計(秤と加熱装置が一体になっており、装置に試料をセットすると質量が測定され、赤外線ヒーターによって質量変化がなくなるまで加熱され、加熱後の質量を測定した上で、プログラムにより水分が算出されるもの)(株式会社ケツト科学研究所(kett)製、型番:FD−240)を用いて、まず中種部の質量を測定し、次いで中種部を質量変化がなくなるまで105℃で保持した。質量変化がなくなったときの質量を測定し、作製直後の肉まんと比較して、105℃保持後に減少した質量から水分値を決定した。
以下の実施例等において、肉まんの中種部の加熱後の歩留りは、以下のようにして測定した。
まず、中種を生地組成物で包み込んだ成形物について、発酵後、ウォーターオーブンで蒸し上げる前に、その中種部の質量を測定した。次いで、当該成形物をウォーターオーブンで2回蒸し上げて肉まんを製造した。作製直後の肉まんから中種部を取りだし、質量を測定し、下記の式に従って加熱後の歩留りを測定した。
[歩留り(%)]=[加熱直後の中種部の質量]/[加熱前の中種部の質量]×100
以下の実施例等において、肉まんのほぐれ性は、以下のようにして評価した。
肉まんを、両手で一定の力を加えて半分に割り、割れた断面の均一さを目測で評価した。評価基準は、以下の通りとした。
○:中種部が均一に両側に分かれている。
△:中種部の一部がどちらか片一方に寄っている。
×:中種部が完全にどちらか片一方に寄っている。
以下の実施例等において、肉まんの生地部のみかけ密度は、以下のようにして評価した。
肉まんの生地部の上部部分から、生地部表面及び中種部が付着している部分を除き、1cm四方の生地片を切りだし、当該生地片の質量と体積を測定し、質量を体積で除することによって、生地部のみかけ密度を求めた。質量は精密天秤で測定し、体積は各辺をノギスで測定し、底面積と高さを乗ずることにより算出した。
以下の実施例等において、肉まんの官能評価は、以下のようにして行った。
26歳から64歳までの男女11名のパネルが肉まんを実際に食し、生地部の「もちもち感」、「ふんわり感」、「べたべた感」、及び中種部の「ほぐれ感」、「もさもさ感」について、官能評価を実施した。なお、中種部の「もさもさ感」とは、「口当たり」、より具体的には「口腔内で咀嚼中に繊維質の存在の感じかた」を意味する。口腔内で咀嚼中に、繊維質の存在が感じられないものを、もさもさ感が優れていると評価し、繊維質の存在が強く感じられるものを、もさもさ感が劣っていると評価した。具体的には、各評価項目について、各パネルが、1点刻みで5〜0点の点数をつけ(劣っている:0点、非常に優れている:5点)、全パネルによる評点の平均点に基づいて、以下の基準で評価した。
◎: 平均3.5点以上。
○: 平均3点以上、3.5点未満。
△: 平均2点以上、3点未満。
×: 平均2点未満。
生地組成物を、全仕込み量500gに対し、強力粉19質量%、薄力粉43質量%、ぬるま湯33.95質量%、ドライイースト0.9質量%、砂糖0.9質量%、塩0.2質量%、ラード2質量%となるように配合して製造し、中種を、全仕込量350gに対し、豚ひき肉35質量%、食塩0.5質量%、精製ラード5質量%、ごま油3質量%、砂糖3質量%、胡椒0.1質量%、醤油4.2質量%、みりん3質量%、おろし生姜1.0質量%、おろしにんにく0.2質量%、たまねぎ(みじん切り)25質量%、ねぎ(みじん切り)10質量%、たけのこ9.5質量%、粉末セルロース(日本製紙ケミカル(株)製、商品名:「W−300G」)0.5質量%配合して製造した以外は、前記<肉まんの製造方法>と同様にして、肉まんを製造した。
粉末セルロースを以下の結晶セルロースAに変更した以外は、実施例1と同様にして肉まんを製造した。
市販SPパルプを裁断した後、0.14N塩酸中で121℃、1時間、低速型攪拌機(池袋琺瑯工業(株)製、30LGL反応器、翼径30cm)を用いて撹拌(撹拌速度:30rpm)しながら加水分解した。加水分解後、水洗、濾過、及び中和反応を行い、得られた反応物を、90L容の樹脂製バケツに入れ、スリーワンモーター(HEIDEN製、タイプ1200G、8M/M、翼径:5cm)で撹拌(撹拌速度:500rpm)しながら、固形分濃度が17質量%のセルロース粒子分散液を調製した。得られたセルロース粒子分散液を噴霧乾燥(液供給速度:6L/h、入口温度:180〜220℃、出口温度:70℃)して結晶セルロースA(L/D=1.7)を得た。結晶セルロースAの平均重合度は220であった。
粉末セルロースを以下の結晶セルロースBに変更した以外は、実施例1と同様にして肉まんを製造した。
結晶セルロースAを、ジェットミル(ホソカワミクロン(株)製、製品名:「スパイラルジェットミルAS」)を用いて、平均粒子径が20μmになるまで粉砕を行い、結晶セルロースBを得た。
粉末セルロースを以下の結晶セルロースCに変更した以外は、実施例1と同様にして肉まんを製造した。
市販SPパルプを裁断した後、4N塩酸中で40℃、48時間、低速型攪拌機(池袋琺瑯工業(株)製、30LGL反応器、翼径:30cm)を用いて撹拌(撹拌速度:5rpm)しながら加水分解した。加水分解後、水洗、濾過、及び中和反応を行い、得られた反応物を、90L容の樹脂製バケツに入れ、スリーワンモーター(HEIDEN製、タイプ1200G、8M/M、翼径:5cm)で撹拌(撹拌速度:50rpm)しながら、固形分濃度が12質量%のセルロース粒子分散液を調製した。得られたセルロース粒子分散液を噴霧乾燥(液供給速度:6L/h、入口温度:180〜220℃、出口温度:50〜70℃)して結晶セルロースA(L/D=2.6)を得た。結晶セルロースCの平均重合度は220であった。
粉末セルロースを以下の結晶セルロースDに変更した以外は、実施例1と同様にして肉まんを製造した。
市販SPパルプ(平均重合度:790、レベルオフ重合度:220)を裁断した後、4N塩酸中で60℃、48時間、低速型攪拌機(池袋琺瑯工業(株)製、30LGL反応器、翼径:約30cm)で攪拌(攪拌速度:5rpm)しながら加水分解した。得られた酸不溶解残渣はヌッチェを使用して濾過し、濾過残渣をさらに70Lの純水で4回洗浄し、続いてアンモニア水で中和した後、90L容の樹脂製バケツに入れて純水を加え、スリーワンモーター(HEIDON製、タイプ1200G、8M/M、翼径:約5cm)で攪拌(攪拌速度:50rpm)しながら、固形分濃度が12質量%のセルロース粒子分散液(pH:6.5、IC:40μS/cm)を調製した。得られたセルロース粒子分散液を噴霧乾燥(液供給速度:6L/h、入口温度:180〜220℃、出口温度:50〜70℃)してセルロース粉末D(L/D=2.2)を得た。
粉末セルロースを以下の結晶セルロース複合体Aに変更した以外は、実施例1と同様にして肉まんを製造した。
市販SPパルプを裁断した後、2.5N塩酸中で105℃、15分間加水分解した。加水分解後、水洗及び濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーク状の結晶セルロースを作製した。当該結晶セルロースの平均重合度は220であった。
次に、ウェットケーク状の結晶セルロースと市販キサンタンガム(三栄源FFI製、商品名:「ビストップD−712」)と市販デキストリン(三和澱粉製、商品名:「サンデック♯30」、以下、「Dex」ともいう。)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、「5DM−03−R」、撹拌羽根はフック型を使用)の容器に、セルロース/キサンタンガム/デキストリンの質量比が75/5/20となるように投入し、固形分濃度が52質量%となるように加水して、混錬した。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、70Wh/kgであった。混練温度の制御は、ジャケット冷却の調整で行われ、熱伝対を用いて混練物の温度が直接測定された。当該温度は、混練を通して20〜65℃であった。得られた混練物をペレット化した後、乾燥、粉砕、篩い分けを行い、結晶セルロース複合体Aを得た。
粉末セルロースを以下の易分散性結晶セルロース複合体Aに変更した以外は、実施例1と同様にして肉まんを製造した。
デキストリン(三和澱粉製、商品名:「サンデック#100」)180g、ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製、商品名:「デリカWH」)95g、及び実施例6で製造した結晶セルロース複合体A225gを、湿潤状態で分散させた後、乾燥、粉砕、篩い分けを行い、易分散性結晶セルロース複合体A(セルロースの平均重合度:190、セルロースの粒子L/D:1.8)を得た。
易分散性結晶セルロースAの配合量を0.3質量%、たけのこの配合量を9.7質量%にした以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
易分散性結晶セルロースAの配合量を0.1質量%、たけのこの配合量を9.9質量%にした以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
易分散性結晶セルロースAの配合量を0.05質量%、たけのこの配合量を9.95質量%にした以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
易分散性結晶セルロースAの配合量を3質量%、たけのこの配合量を7質量%にした以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
易分散性結晶セルロースAの配合量を2質量%、たけのこの配合量を8質量%にした以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
易分散性結晶セルロースAの配合量を1質量%、たけのこの配合量を9質量%にした以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
豚ひき肉(7mmφ)を5mmφの豚ひき肉に変更した以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
豚ひき肉(7mmφ)を10mmφの豚ひき肉に変更した以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
豚ひき肉(7mmφ)を豚ブロック肉(肩肉、5mm四方)に変更した以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
薄力粉の配合量を43質量%から23質量%とし、馬鈴薯α化澱粉(日本澱粉工業(株)製、製品名:「アミコールHF」)20質量%を配合するように変更した以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
薄力粉の配合量を43質量%から23質量%とし、モチ種トウモロコシヒドロキシプロピル澱粉(三和澱粉工業(株)製、製品名:「デリカWH」)20質量%を配合するように変更した以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
薄力粉の配合量を43質量%から23質量%とし、もち米α化澱粉(上越スターチ(株)製、製品名:「モチールアルファー」)20質量%を配合するように変更した以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
薄力粉の配合量を43質量%から23質量%とし、うるち米澱粉(上越スターチ(株)製、製品名:「ファインスノウ」)20質量%を配合するように変更した以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
薄力粉の配合量を43質量%から23質量%とし、タピオカヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉(王子コーンスターチ(株)製、製品名:「てんじん」)20質量%を配合するように変更した以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
豚ひき肉(5mmφ)を豚ブロック肉(肩肉、7mm四方)に変更した以外は、実施例21と同様にして肉まんを製造した。
薄力粉の配合量を43質量%から38質量%とし、強力粉を無配合(0質量%)とし、タピオカヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉(王子コーンスターチ(株)製、製品名:「てんじん」)5質量%を配合するように変更した以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
強力粉の配合量を19質量%とし、薄力粉を無配合(0質量%)とし、タピオカヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉(王子コーンスターチ(株)製、製品名:「てんじん」)50質量%を配合するように変更した以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
中種部調製時に、フードプロセッサーを用いて原料を一括で300秒間混合した(一括混合)以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
中種部調製時のフードプロセッサーによる混合時間を10秒間に変更した以外は、実施例25と同様にして肉まんを製造した。
易分散性結晶セルロース複合体AをCMC−Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)(ダイセルファインケム(株)製、商品名:「F−SH」)に変更した以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
易分散性結晶セルロース複合体Aをネイティブ型ジェランガム(三栄源FFI(株)販売、CPケルコ製、商品名:「ケルコゲルLT−100」)に変更した以外は、実施例10と同様にして肉まんを製造した。
結晶セルロースAを無配合(0質量%)とした以外は、実施例1と同様にして肉まんを製造した。
易分散性結晶セルロース複合体Aを無配合(0質量%)とした以外は、実施例17と同様にして肉まんを製造した。
生地部を市販の餃子の皮(みかけ密度:1.1g/cm3)とした以外は、実施例7と同様にして肉まんを製造した。
結晶セルロースAを無配合(0質量%)とし、あらかじめ作成したゼリー状調味料20質量%を配合し、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ(株)、商品名:「UF−711F」)1.6質量%外割で配合し、たまねぎの配合量を15質量%、ねぎの配合量を5質量%、及びたけのこの配合量を5質量%に変更した以外は、実施例2と同様にして肉まんを製造した。
実施例1〜28及び比較例1〜4において製造された肉まんについて、中種部の最大荷重比、中種部の破断距離(mm)、中種部の水分値(%)、及び中種部の加熱後の歩留り(%)を測定し、ほぐれ性を評価し、生地部及び中種部の官能評価を行った。原料として用いたセルロースの平均粒子径(μm)、水蒸気吸着による比表面積(m2/g)、L/D、生地部のみかけ密度(g/cm3)の結果を表2に示す。また、各肉まんの測定と評価の結果を、使用した食肉の形状及び混練方法と共に、表3〜8に示す。なお、実施例1、2、4、9〜11、14、26〜28は、参考例である。
Claims (12)
- 食肉を含有する中種部と、前記中種部を包餡する生地部とを有し、
前記生地部の上部部分のみかけ密度が、0.8g/cm3以下であり、
喫食前の加熱調理後における前記中種部から厚みが5mm以上である食肉片を取り出し、当該食肉片の最大荷重を、テクスチャー・アナライザーにより、食肉片の中心温度が60±3℃、Trigger forceをAuto 5gとし、円柱状の測定プローブを1.5mm/sの速度で3mm押し込む条件で2回連続して測定した場合に、1回目に測定された最大荷重値に対する2回目に測定された最大荷重値の比([2回目に測定された最大荷重値]/[1回目に測定された最大荷重値])が1.22以上であり、
前記中種部が、結晶セルロース複合体を前記中種部に対して0.3質量%以上2.0質量%以下含有し、
前記食肉が直径7mm以上の挽き肉、又は、ブロック肉である、肉まん。 - 食肉を含有する中種部と、前記中種部を包餡する生地部とを有し、
前記生地部の上部部分のみかけ密度が、0.8g/cm3以下であり、
喫食前の加熱調理後における前記中種部から厚みが5mm以上である食肉片を取り出し、当該食肉片の最大荷重を、テクスチャー・アナライザーにより、食肉片の中心温度が60±3℃、Trigger forceをAuto 5gとし、円柱状の測定プローブを1.5mm/sの速度で3mm押し込む条件で2回連続して測定した場合に、1回目に測定された最大荷重値に対する2回目に測定された最大荷重値の比([2回目に測定された最大荷重値]/[1回目に測定された最大荷重値])が1.2以上であり、
前記中種部が、粒子の長径と短径の比L/Dが1.8以上2.2以下である結晶セルロースを含有し、
前記食肉が直径7mm以上の挽き肉、又は、ブロック肉である、肉まん。 - 前記結晶セルロースが、水溶性多糖類との複合体である、請求項2に記載の肉まん。
- 前記生地部が、澱粉を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の肉まん。
- 前記澱粉が、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、もち米澱粉、及びうるち米澱粉からなる群より選択される1種以上である、請求項4に記載の肉まん。
- 中種を生地組成物で包餡した後に加熱調理して、食肉を含有する中種部と前記中種部を包餡する生地部とを有する肉まんを製造する方法において、
前記生地部の上部部分のみかけ密度が、0.8g/cm3以下であり、かつ
喫食前の加熱調理後における前記中種部から厚みが5mm以上である食肉片を取り出し、当該食肉片の最大荷重を、テクスチャー・アナライザーにより、食肉片の中心温度が60±3℃、Trigger forceをAuto 5gとし、円柱状の測定プローブを1.5mm/sの速度で3mm押し込む条件で2回連続して測定した場合に、1回目に測定された最大荷重値に対する2回目に測定された最大荷重値の比([2回目に測定された最大荷重値]/[1回目に測定された最大荷重値])が1.22以上である肉まんを製造し、
前記中種部に、結晶セルロース複合体を前記中種部に対して0.3質量%以上2.0質量%以下配合し、
前記食肉が直径7mm以上の挽き肉、又は、ブロック肉である、肉まんの製造方法。 - 中種を生地組成物で包餡した後に加熱調理して、食肉を含有する中種部と前記中種部を包餡する生地部とを有する肉まんを製造する方法において、
前記生地部の上部部分のみかけ密度が、0.8g/cm3以下であり、かつ
喫食前の加熱調理後における前記中種部から厚みが5mm以上である食肉片を取り出し、当該食肉片の最大荷重を、テクスチャー・アナライザーにより、食肉片の中心温度が60±3℃、Trigger forceをAuto 5gとし、円柱状の測定プローブを1.5mm/sの速度で3mm押し込む条件で2回連続して測定した場合に、1回目に測定された最大荷重値に対する2回目に測定された最大荷重値の比([2回目に測定された最大荷重値]/[1回目に測定された最大荷重値])が1.2以上である肉まんを製造し、
前記中種部に、粒子の長径と短径の比L/Dが1.8以上2.2以下である結晶セルロースを配合し、
前記食肉が直径7mm以上の挽き肉、又は、ブロック肉である、肉まんの製造方法。 - 前記結晶セルロースが、水溶性多糖類との複合体である、請求項7に記載の肉まんの製造方法。
- 前記生地組成物が、澱粉を含有し、
前記澱粉が、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、もち米澱粉、及びうるち米澱粉からなる群より選択される1種以上である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の肉まんの製造方法。 - 肉まんにほぐれ性を付与する方法であって、
前記肉まんは、食肉を含有する中種部と、前記中種部を包餡する生地部とを有し、
前記生地部の上部部分のみかけ密度が、0.8g/cm3以下であり、
喫食前の加熱調理後における前記中種部から厚みが5mm以上である食肉片を取り出し、当該食肉片の最大荷重を、テクスチャー・アナライザーにより、食肉片の中心温度が60±3℃、Trigger forceをAuto 5gとし、円柱状の測定プローブを1.5mm/sの速度で3mm押し込む条件で2回連続して測定した場合に、1回目に測定された最大荷重値に対する2回目に測定された最大荷重値の比([2回目に測定された最大荷重値]/[1回目に測定された最大荷重値])が1.22以上であり、
前記中種部に、結晶セルロース複合体を前記中種部に対して0.3質量%以上2.0質量%以下配合し、
前記食肉が直径7mm以上の挽き肉、又は、ブロック肉である、方法。 - 肉まんにほぐれ性を付与する方法であって、
前記肉まんは、食肉を含有する中種部と、前記中種部を包餡する生地部とを有し、
前記生地部の上部部分のみかけ密度が、0.8g/cm3以下であり、
喫食前の加熱調理後における前記中種部から厚みが5mm以上である食肉片を取り出し、当該食肉片の最大荷重を、テクスチャー・アナライザーにより、食肉片の中心温度が60±3℃、Trigger forceをAuto 5gとし、円柱状の測定プローブを1.5mm/sの速度で3mm押し込む条件で2回連続して測定した場合に、1回目に測定された最大荷重値に対する2回目に測定された最大荷重値の比([2回目に測定された最大荷重値]/[1回目に測定された最大荷重値])が1.2以上であり、
前記中種部に、粒子の長径と短径の比L/Dが1.8以上2.2以下である結晶セルロースを配合し、
前記食肉が直径7mm以上の挽き肉、又は、ブロック肉である、方法。 - 前記結晶セルロースが、水溶性多糖類との複合体である、請求項11に記載の方法。
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