JP3665010B2 - 微細セルロース含有複合体を配合してなる食品組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は微細セルロース含有複合体を配合してなる食品組成物に関する。さらに詳しくは、食感や安定性が改善された低カロリーの食品や、食物繊維強化食品等に関する。
【0002】
【従来の技術】
糖尿病など近代の生活習慣病を防止する目的で、エネルギーの過剰摂取を抑制することや、お腹の調子を整えることなどに対する食品の寄与が種々検討されている。具体的にはこれまでいろいろな低カロリーあるいはノンカロリーの食品や食物繊維を強化した食品が開発されてきた。開発のポイントはエネルギーの主要因である油脂の配合量を下げ、かつ、あるいは、食物繊維、特に効果の高いといわれる水不溶性の食物繊維の強化による外観、状態、食感(テクスチャー)、味の変化を改善する事にあった。しかしながら多くの食品は「おいしくて、かつ、低カロリー/水不溶性食物繊維強化」というレベルに達していなかった。
【0003】
低油脂食品のボディやテクスチャーを補う物質、いわゆる油脂代替物のなかで、セルロース系の物質としては、古くは特公昭39−20181号公報に開示があり、その他には特表平4−507348号公報、特公平6−11793号公報などがある。これらは、ボディや外観などについては改善の効果が高かったが、油由来の「コク」を補うことができなかった。
【0004】
特表平4−502409号公報には、微結晶セルロースとガラクトマンナンガムからなる凝集体が非栄養性脂肪様増量剤として有効であることが開示されている。この物質は水中で実質上崩壊せず、乾燥粉末粒子の形状、すなわち球状を維持するという特徴が発明の本質である。キサンタンガムやマルトデキストリンの配合についても開示があるが、微結晶セルロースとガラクトマンナンガムからなる凝集体の表面を修飾することを目的として、表面に吸着させているのであり、凝集体はやはり水中で実質的に崩壊しないことにかわりはない。しかしながら、一方では、公報には高エネルギー剪断条件下で分散し、非常に細かい繊維質物質に変換して使用する記載もある。この場合、ガム(グアーガム)の含量は約15〜40%である事が必要であり、ガム含量が約1〜15%の場合には球状粒子は本質的にそれらの原形を保ち、すなわち、それらはより高度に剪断抵抗性であると記載されている。「高度な剪断抵抗性」とは41.37MPa(422kg/cm2)の圧力での高圧ホモジナイザー処理においてもサイズリダクションしないことを意味する。グアーガムは冷水可溶性であり、一方、ローカストビーンガムは冷水膨潤・温水可溶型なので、ローカストビーンガムはより一層の剪断抵抗性を有する。ガム含量が高い場合は、球状粒子もしくは繊維質物質のいずれの状態で使用しても、食品に配合すると糊状感が出る。ガム含量が低ければ(20%以下)粒子が細かく分散しないので、ボディ感が減少する。また、乾燥粉末粒子のサイズが大きい場合には、予備分散処理では粒子のサイズリダクションが起こらず、そのため食品の製造に多用されるピストン型の高圧ホモジナイザーでは、圧力の変動なしに安定的に均質化することが困難であり、場合によっては閉塞が生じることがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、油脂の配合量が少ないにもかかわらず、コクがあり、かつ、口溶けがよい低カロリー食品を提供することを課題としている。あわせて、食感および整腸作用の優れた食物繊維配合食品を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、水分散性の微細セルロース含有複合体を使用することで、課題を解決し、本発明をなすに至った。すなわち本発明は以下の通りである。
(1)微細セルロース60〜80wt%と、ローカストビーンガム2〜12wt%と、キサンタンガム0.5〜8wt%と、親水性物質0〜37.5wt%からなる粉末であって、温水に分散させたときに生じる粒子の平均粒径が60μm以下、100μm以上の粒子が30vol%以下であり、かつ、コロイド分画が30%以下であることを特徴とする微細セルロース含有複合体を配合してなる食品組成物(但し、アイスクリーム類製品を除く)。
(2)微細セルロース含有複合体が、温水に分散させたときに生じる粒子の平均粒径が40μm以下、100μm以上の粒子が25vol%以下となるものであることを特徴とする前記(2)記載の食品組成物。
(3)微細セルロース含有複合体が、温水に分散させたときに生じる粒子の平均粒径が25μm以下、100μm以上の粒子が15vol%以下となるものであることを特徴とする(1)記載の食品組成物。
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明に使用される微細セルロース含有複合体とは、単に微細セルロースの粉末とローカストビーンガム粉末とキサンタンガム粉末を混合したものではなく、粒子1個の中に1個以上の微細セルロース粒子と他の成分を含有し、かつ、微細セルロース粒子の周囲にそれらの成分が存在しているという構造を有する粒子、およびその粒子の群からなる乾燥粉末のことを意味する。
【0008】
本発明に使用される微細セルロース含有複合体は、水中で撹拌すると、複合体の形態のまま水中に分散するのでなく、複合体は微細セルロース粒子を主体とした微粒子に崩壊するのが特徴である。その崩壊して生じる微細セルロース粒子は、サブミクロンの粒子(長さ100〜300nm、幅20〜60nm程度の棒状粒子)と、長さ約1μm以上の粒子からなる。特開昭54−54169号公報、特開昭54−55762号公報、特開昭54−157875号公報に開示されているような既存の結晶セルロース複合体もまた、後述の強分散条件(1%水懸濁液を25℃で、エースホモジナイザー15000rpmで5分間)で攪拌すると同様の微細セルロース粒子が生じるが、サブミクロンの粒子の多くは単独で存在し、自分自身および他の固体粒子成分の懸濁安定化に寄与する。ところが本発明の微細セルロース含有複合体から生じるサブミクロンの粒子は単独で存在することが少なく、数十以上の粒子が疎に凝集した構造をとる。おそらくこれは微細セルロース粒子がローカストビーンガムによって架橋されているためと推定する。
【0009】
このような懸濁安定性に寄与する粒子成分は、遠心分離してもなかなか沈降しないようなコロイダルな性質を有することから、コロイド分画と呼ばれる。既存の結晶セルロース複合体のコロイド分画は30%を越えるが、本発明の微細セルロース含有複合体のコロイド分画は30%以下である。好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。コロイド分画が30%を越えると、粘度が高くなり糊状感につながる。また、酸性で乳成分を主成分として含むような食品の場合、乳タンパクと微細セルロース粒子が凝集を起こし、離水を起こす。コロイド分画の測定条件については後述する。
【0010】
本発明に使用される微細セルロース含有複合体を水中で強分散したときに生じる固体粒子の平均粒径(レーザー回折散乱式粒度分布測定装置で測定)は、おおよそ20μm以下であることが好ましい。より好ましくは平均粒径が15μm以下であり、さらに好ましくは平均粒径が10μm以下である。粒子が小さい方が懸濁安定性が良好であり、ざらつきが少ないから食感が良好となる。水中での協分散の条件については後述する。
【0011】
本発明に使用される微細セルロース含有複合体の水中での崩壊に関する性質にはもう一つ特徴がある。それは、食品を製造する際の比較的弱い攪拌条件、すなわち温水中で、対流型の分散機を使用して攪拌したときに、速やかに複合体粒子が崩壊するという性質である。粗大粒子が少ないと、ざらつきが減るほか、食品製造中の沈殿やストレーナー詰まりなどのトラブルを生じなくなる。具体的には、100μm以上の粒子が30体積%以下、平均粒径が60μm以下に崩壊する。100μm以上の粗大粒子はより少なく、また、平均粒径もより小さい方が好ましい。100μm以上の粒子が25体積%以下、平均粒径が40μm以下であると好ましく、100μm以上の粒子が15体積%以下、平均粒径が25μm以下であるとさらに好ましい。この分散条件および測定方法の詳細は後述する。
【0012】
本発明に使用される微細セルロース含有複合体は、微細セルロース60〜80wt%を含む。微細セルロースが60wt%未満であると、水不溶性食物繊維の含有量が減るので好ましくない。また、80wt%を越えると、相対的に他の成分の配合量が少なくなり、水分散性が悪化し、強力な剪断力で分散する必要が出てくる。特に好ましい配合量は65〜75wt%である。
ローカストビーンガムは食品の増粘剤や安定剤として使用され、冷水には一部可溶であり、また、80℃以上の温水で溶解する性質を持つが、食品に配合されると糊状感が出る。これは一般的な結晶セルロース製剤と併用しても充分抑えることできない。本発明の微細セルロース含有複合体は、ローカストビーンガムを2〜12wt%含む。複合体として存在することにより、糊状感が解消される。しかしながら12wt%より多ければ糊状感が現れ、2wt%より少なければ微細セルロース粒子とローカストビーンガムの凝集構造が充分ではなく、そのためコクが低下する。特に好ましい配合量は3〜10wt%である。
【0013】
グアーガムはガラクトマンナンの1種であり、ローカストビーンガムと同様にセルロースとインタラクションする性質を有する。グアーガムは冷水にて膨潤・溶解する性質があるので、複合体粒子の崩壊性という観点では好ましい。しかしながら、溶解しやすいが故に、食品に糊状感を与えてしまうという欠点がある。そのため本発明においては、冷水では溶解しないローカストビーンガムを使用することが必須である。
【0014】
本発明に使用される微細セルロース含有複合体はキサンタンガム0.5〜8wt%と、親水性物質を最大で37.5wt%含む。微細セルロースとローカストビーンガムはインタラクションするので、これら2種類を構成成分とする複合体は、強力な剪断力で分散しなれば、微細な粒子に分散することはなかった。そのため、食品の製造のためには食品中で強力に分散するか、あるいは水中で充分予備分散してから食品に配合しなければならなかった。本発明者らはこれらの問題点を解決しつつ、さらなる機能の向上を目指し、補助成分の配合を鋭意検討した。その結果、キサンタンガムの配合がきわめて効果的であることがわかり、本発明を完成させた。すなわちキサンタンガムを0.5wt%以上配合することによって、水分散性が格段に向上することがわかったのである。しかしながら、8wt%を超えて配合すると糊状感が現れ、また、キサンタンガムとローカストビーンガムの配合量が低い場合には水分散性が充分でない場合もあった。キサンタンガムは、8wt%以下であってもその配合量が高くなると糊状感が高くなる傾向にあるが、その場合は親水性物質を配合することにより、充分な水分散性と良好な食感を両立させることができた。キサンタンガムのより好ましい配合量は1〜5wt%であり、その量はローカストビーンガムと等量か、それ以下であることが特に好ましい。また親水性物質の好ましい配合量は0.5〜35wt%、より好ましい配合量は1〜30wt%である。キサンタンガムと親水性物質とを併用することは、水分散性と糊状感の点で好ましい実施態様である。
【0015】
本発明に使用されるローカストビーンガムとは、豆科イナゴマメの種子から得られる多糖類であり、D−マンノースを主鎖に、D−ガラクトースを側鎖に持つガラクトマンナンガムの1種である。D−マンノースとD−ガラクトースの比は約4:1である。精製タイプおよび未精製タイプのいずれ使用も可能であるが、水分散性を考慮すると精製タイプの使用が好ましい。
本発明に使用されるキサンタンガムは、グルコース残基がβ−1,4−グルコシド結合で直鎖状に連なった、セルロースと同等の分子構造の主鎖を持ち、α−D−マンノース、β−D−グルクロン酸、β−D−マンノースが結合した三糖が側鎖として、主鎖のグルコース残基ひとつおきに結合した構造を持つものである。前述の三糖類にはアセチル基とピルビン酸基が結合している。分子量は約100万以上である。
【0016】
本発明に使用される親水性物質とは冷水への溶解性が高く、粘性を殆どもたらさない物質であり、デキストリン類、水溶性糖類(ブドウ糖、果糖、庶糖、乳糖、異性化糖、キシロース、トレハロース、カップリングシュガー、パラチノース、ソルボース、還元澱粉糖化飴、マルトース、ラクツロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等)、糖アルコール類(キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール等)、低粘性水溶性食物繊維類(ポリデキストロース、難消化性デキストリン等)より選ばれた1種または2種以上の物質である。特にデキストリン類が適している。
【0017】
本発明に使用されるデキストリン類とは、澱粉を酸、酵素、熱で加水分解することによって生じる部分分解物のことであり、グルコース残基がβ−1,4結合、あるいはβ−1,4とβ−1,6結合からなり、DE(dextrose equivalent)として、2〜42程度のものが使用される。ブドウ糖や低分子オリゴ糖が除去された分枝デキストリンも使用されることができる。
本発明に使用される微細セルロース含有複合体には、微細セルロースとローカストビーンガムとキサンタンガムと親水性物質以外に、デンプン類、可溶性デンプン、油脂類、蛋白類、食塩、各種リン酸塩等の塩類、乳化剤、増粘安定剤、酸味料、甘味料、香料、色素等食品に使用できる成分を適宜配合されていても良い。特に、複合体の分散状態を調整するために、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ジェランガム等、食品に利用される増粘安定剤を、単独で、あるいは併用して配合してもよい。個々の成分の配合量は、計37.5wt%を最大とし、安定性等の機能と粘度のバランスで適宜決定されるべきものである。
【0018】
本発明に使用される微細セルロースとローカストビーンガムとキサンタンガムと親水性物質からなる複合体は、単に微細セルロースの粉末とローカストビーンガム粉末とキサンタンガム粉末と親水性物質の粉末を混合することで製造されるものではなく、微細セルロースとその他の成分を水分を含有する状態、すなわち、スラリー状、ペースト状、ゲル状、ケーク状で混合した後、乾燥して製造されるものである。水分のある状態で混合することによって、微細セルロース粒子の表面をローカストビーンガム、キサンタンガムおよび親水性物質とよくなじませることが肝要である。この後、乾燥工程を経ることによって、おそらく微細セルロース粒子とローカストビーンガムとの間に相互作用が生じ、水中で攪拌した際に、微細セルロース粒子(1μm以下)は実質的に単独で存在することなく、ローカストビーンガムと複数の微細セルロース粒子からなる成分が生じるようになるのであろう。そのため、前述したとおり、本発明の微細セルロース含有複合体はコロイド分画が30%以下であり、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。
【0019】
本発明に使用される微細セルロース含有複合体の製法について具体的に説明する。
本発明に使用される微細セルロース含有複合体は、例えば、木材パルプ、精製リンター、再生セルロース、穀物もしくは果実由来の植物繊維等のセルロース系素材を酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解、スチームエクスプロージョン分解、亜臨界水あるいは超臨界水による加水分解等、あるいはそれらの組み合わせにより解重合処理して平均重合度30〜375とし、次いで、機械的なシア(剪断力)をかけて磨砕し、微細セルロースとした後、水分を含有する状態でローカストビーンガム、キサンタンガムおよび親水性物質を添加して混合後、乾燥することによって得ることができる。微細セルロース以外の成分を水溶液で配合する場合は、予め全成分を高温で溶解した後に配合することが好ましい。微細セルロースとその他の成分を混合後に加熱しても良い。また、全成分を混合後、さらに機械的なシアをかけても良い。
【0020】
解重合処理したセルロースにローカストビーンガムとキサンタンガムと親水性物質を添加後、機械的なシアをかけて磨砕と混合を同時に行う、いわゆる湿式共磨砕した後、乾燥し、微細セルロースを含む複合体とする方法もまた好ましい方法の一つである。
湿式磨砕に使用する機械は、系に存在する水分量、セルロースの微細化の程度により自由に選択される。例えば、平均粒径が8μm以下の微細セルロースを得るような、強力な機械的シアをかける場合には、媒体攪拌ミル類(例えば、湿式振動ミル、湿式遊星振動ミル、湿式ボールミル、湿式ロールミル、湿式コボールミル、湿式ビーズミル、湿式ペイントシェーカー)や、超高圧ホモジナイザー等が用いられる。超高圧ホモジナイザーとしては、約50MPa以上の高圧で、スラリーを微細オリフィスに導き高流速で対面衝突させるタイプが効果的である。これらの磨砕機を使用した場合の最適磨砕濃度は機種により異なるが、概ね3〜25wt%程度の固形分濃度が適している。
【0021】
また、平均粒径が5〜15μmの微細セルロースを得るような機械的シアをかける場合において、おおむね固形分濃度が3〜30wt%程度であるスラリー様の系を磨砕するには、コロイドミル、砥石型磨砕機、連続式ボールミル、ホモジナイザー、ホモミキサー、プロペラ撹拌機等の磨砕機、混合機が使用できる。また、それより固形分濃度が高い、おおむね20〜60wt%程度であるケーク状のものを磨砕するには、ニーダー、ライカイ機、押出機等が使用できる。本発明の目的のためにはこれらの機種を単独で用いることもできるが、2種以上の機種を組み合わせて用いることもできる。複数回の処理もまた良好な結果が得られる。
【0022】
微細セルロース、ローカストビーンガム、キサンタンガムと親水性物資の混合物の乾燥は公知の方法を使用すればよいが、実際的には、乾燥される対象物の水分量、状態によって最適な方法を選ぶべきである。例えばスラリー状であれば、噴霧乾燥法、ドラム乾燥法等が使用できる。また、泥状物、餅様物には、棚段式乾燥法、ベルト乾燥法、流動床乾燥法、凍結乾燥法、マイクロウエーブ乾燥等が挙げられる。水中での複合体の再分散性を向上させる点からは、スラリー状にして噴霧乾燥する方法が好ましい。乾燥コスト低減の点からは、固形分含量の高い状態で乾燥できる棚段乾燥法、流動床乾燥法が好ましい。乾燥後の水分量の上限は、取り扱い性、経時安定性を考慮すれば、15wt%以下が好ましい。特に好ましくは10wt%以下である。さらに好ましくは6wt%以下である。
【0023】
なお、ドラム乾燥法、棚段式乾燥法、ベルト乾燥法等により得られた乾燥物は、薄片状あるいは塊状で得られるので、衝撃式粉砕機、ジェットミル粉砕機等の適切な方法で粉砕し、目開き425μmの篩をほぼ全通する程度に粉末化することが好ましい。
【0024】
本発明の食品組成物とは、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ソフトクリーム等のアイスクリーム類製品以外の食品であり、コーヒー、紅茶、抹茶、ココア、汁粉、ジュース等の嗜好飲料、生乳、加工乳、乳酸菌飲料、豆乳等の乳性飲料、カルシウム強化飲料等の栄養強化飲料並びに食物繊維含有飲料等を含む各種の飲料類、バター、チーズ、ヨーグルト、コーヒーホワイトナー、ホイッピングクリーム、カスタードクリーム、プリン等の乳製品類、マヨネーズ、マーガリン、スプレッド、ショートニング等の油脂加工食品類、各種のスープ、シチュー、ソース、タレ、ドレッシング等の調味料類、練りがらしに代表される各種練りスパイス、ジャ ム、フラワーペーストに代表される各種フィリング、各種のアン、ゼリーを含むゲル・ペースト状食品類、パン、麺、パスタ、ピザ、各種プレミックスを含むシリアル食品類、キャンディー、クッキー、ビスケット、ホッ トケーキ、チョコレート、餅等を含む和・洋菓子類、蒲鉾、ハンペン等に代表される水産練り製品、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等に代表される畜産製品、クリーム コロッケ、中華用アン、グラタン、ギョーザ等の各種の 惣菜類、塩辛、カス漬等の珍味類、経管流動食等の流動 食類およびペットフード類等のことである。これらの食品はレトルト食品、粉末食品、冷凍食品、電子レンジ用食品等のように、形態または用時調製の加工手法が異なっていても本発明に含まれる。
【0025】
本発明に使用される微細セルロース含有複合体は、油脂代替などの低カロリー化基剤、ボディ付与剤、保形剤、離水防止剤、生地改質剤、食物繊維素材として作用する。また、刺激的な酸味や油くささなどなどをまろやかにするため、食品全体の味がまとまるという効果を有する。この作用機構不明ながら、前述のとおり、食品中では数十以上の微細セルロース粒子がローカストビーンガムによって疎に凝集した構造をとっていることから、これが味蕾に何らかの作用を及ぼしたものと推定する。
【0026】
すなわち本発明の食品組成物は、適度なボディがあるにもかかわらず、さっぱりとした食感と口溶けが良好であるという特徴を有する。また、刺激的な味を抑え、全体としてまとまった味を呈する。これらの特徴は、低脂肪食品においては特に有効な効果である。
【0027】
さらに本発明の食品組成物は、水不溶性食物繊維であるセルロースを含有しながらざらつきなどの違和感がない。従来、セルロース粒子を小さくすることでざらつきの低減が図られてきたが、本発明は微細セルロース粒子とローカストビーンガムの凝集構造とすることでその課題をクリアした。この点が新規な技術である。そのため、ヨーグルトなどの乳成分を含む酸性食品に対する水不溶性食物繊維の配合が可能となった。通常それらの食品においては、セルロース微粒子と乳成分がインタラクションし、ハードヨーグルトのカード化が不十分となったり、離水したりするのを避けることが困難であった。ところが本発明に使用される微細セルロース含有複合体は単独で存在する微細なセルロース粒子が少ないため、前述のインタラクションが抑制されるものと思わる。
【0028】
本発明の食品組成物中の微細セルロース含有複合体の含有量は、食品の種類や脂肪含有量、あるいは配合したい食物繊維量によって変わるので適宜決定すべきであるが、おおむね0.05〜90wt%程度である。好ましくは0.1〜20wt%であり、特に好ましくは0.5〜10wt%である。
食品組成物は公知の方法により製造され、微細セルロース含有複合体は食品組成物の粉体原料と同時に添加するなど適当なタイミングで添加すればよい。分散あるいは均質化工程がある場合はその前に配合することが好ましい。水あるいは砂糖などの非イオン性成分の水溶液や水分散液に配合し、分散工程を経た後、他の成分と混合して製造することは、特に好ましい。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。なお、測定は以下の通り行った。また、これらの実施例が本発明を限定する意味ではなく本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定められるものである。
<微細セルロース含有複合体の温水・弱分散時における固体粒子の平均粒径および100μm以上の粒子の量>
(1)サンプル(固形分)20.0gに85℃の蒸留水を入れ、全量を2000gとする。
(2)サンプル水懸濁液の温度を85℃に維持しつつ、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型)にて8000rpmで5分間分散する。
(3)レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−910型)を用いて、屈折率「1.20−0.00i」、データの取り込み回数「10回」に設定し、超音波分散処理することなく、粒度分布を測定する。平均粒径は積算体積50%の粒径で表す。また、100μm上の粒子の量はvol%で表す。
【0030】
<微細セルロース含有複合体の強分散時における固体粒子の平均粒径>
(1)サンプル(固形分)3.0gに25℃の蒸留水を入れ、全量を300gとする。
(2)エースホモジナイザー(日本精機製AM−T)にて15000rpmで5分間分散する。
(3)レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−910型)を用いて、屈折率「1.20−0.00i」、データの取り込み回数「10回」に設定し、1分間超音波処理した後、粒度分布を測定する。平均粒径は積算体積50%の粒径で表す。
【0031】
<微細セルロース含有複合体のコロイド分画>
(1)サンプル(固形分)3.0gに蒸留水を入れ、 全量を300gとする。
(2)エースホモジナイザー(日本精機製AM−T)にて15000rpmで2分間分散する。
(3)分散液10mlを正確に秤量瓶にとり重量を精秤する。
(4)残りの分散液40mlを50ml容のポリプロピレンコポリマー製遠沈管に移し、2000rpmで15分間遠心分離する((株)久保田製作所製:インバータ・マルチパーパス高速冷却遠心機6930型:RA−400アングルロータ使用、約480×g)。その上層液10mlを正確に秤量瓶にとり重量を精秤する。
【0032】
(5)遠心分離の条件を、15100×gで30分間とする以外は(4)と同様に操作する。
(6)(3)、(4)、(5)の秤量瓶を105℃の乾燥機で10時間加熱し、内容物を蒸発乾固する。
(7)(3)の固形分重量を精秤する。(Ag)
(8)(4)の固形分重量を精秤する。(Bg)
(9)(5)の固形分重量を精秤する。(Cg)
(10)次式によりコロイド分画を算出する。
コロイド分画(%)=(B−C)/(A−C)×100
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明する。
【0033】
【実施例1〜7】
市販DPパルプを裁断後、7%塩酸中で105℃で20分間加水分解して得られた酸不溶性残渣をろ過、洗浄し、加水分解セルロースのウェットケーク(固形分含量46wt%)を得た。そして、この加水分解セルロースに、ローカストビーンガムとキサンタンガムとデキストリンを、表1の組成になるように配合し、必要に応じて加水し、ニーダーにて3時間混練した。次に60℃の熱風乾燥機で乾燥した後、粉砕して、微細セルロース含有複合体A〜Gを得た。この微細セルロース含有複合体の物性を表1に示す。なお、複合体A〜Eは精製タイプのローカストビーンガムを使用し、複合体FおよびGは未精製タイプのローカストビーンガムを使用した。
【0034】
次いで、微細セルロース含有複合体A〜Gを用い、ハーフタイプのマヨネーズ風ドレッシングを調製した。すなわち、まず微細セルロース含有複合体5重量部と水36.7重量部を混合し、家庭用ミキサーで20分間撹拌し、次いでホバートミキサーに移して150rpmで撹拌しつつ、キサンタンガム0.4重量部、卵黄10重量部、水1.9重量部を添加し、その後5分間撹拌した。それからサラダ油35重量部を約20g/分の速度で添加し、添加終了後から10分間撹拌した。引き続き、食塩2.6重量部、砂糖0.9重量部、からし粉0.4重量部、グルタミン酸ナトリウム0.1重量部の混合粉末と、食酢7重量部を添加し、5分間撹拌した。ここまでの操作の間、ホバートミキサーは止めることなく、150rpmで連続撹拌した。最後にコロイドミル(クリアランス:10mil、回転数:3000rpm)で1回処理することにより、目的のドレッシングを調製した。
【0035】
ドレッシングの粘度(回転粘度計にて測定。ずり速度は50s-1。温度は25℃。)および官能評価(ボディ感、口溶けの良さ、ざらつき、味のまとまり)の結果を表1に示す。官能評価の基準は下記の通り。
<食感/ボディ感>
a:比較例9よりもボディ感がある
b:比較例9と同程度
<食感/口溶けの良さ>
a:比較例9よりも口溶けがよい
b:比較例9と同程度
c:比較例9よりも口溶けが悪い(糊状感がある)
d:比較例9よりもかなり糊状感がある
【0036】
<食感/ザラツキ>
a:ザラツキを感じない(比較例9とかわりがない)
b:わずかザラツキを感じる
<味/まとまり>
a:鋭い酸味や油臭さが無く、卵黄のコクを感じる。
b:鋭い酸味や油臭さを少し感じる。
c:鋭い酸味や油臭さを強く感じる。 (比較例9と同程度)
【0037】
【比較例1〜3】
実施例1と同様にして得られた加水分解セルロースのウェットケークに、ローカストビーンガムとキサンタンガムとデキストリンを、表2の組成になるように配合し、必要に応じて加水し、ニーダーにて3時間混練した。次に60℃の熱風乾燥機で乾燥した後、粉砕して、微細セルロース含有複合体H、I、Jを得た。この微細セルロース含有複合体の物性を表2に示す。なお、複合体H、Jは精製タイプのローカストビーンガムを使用し、複合体Iは未精製タイプのローカストビーンガムを使用した。
【0038】
次いで、微細セルロース含有複合体としてAのかわりにH、I、Jを用い、粘度が2.5〜4.2Pa・sになるように適宜キサンタンガムと水の配合量を調整する以外は全て実施例1と同様にしてハーフタイプのマヨネーズ風ドレッシングを調製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0039】
【比較例4〜5】
特開昭54−54169号公報開示の方法に準じて微細セルロース含有複合体を調製した。すなわち、まず、市販DPパルプを裁断後、0.8%塩酸中で110℃で90分間加水分解して得られた酸不溶性残渣をろ過、洗浄し、加水分解セルロースのウェットケーク(固形分含量51wt%)を得た。そして、この加水分解セルロースに、キサンタンガムとデキストリン、あるいは精製ローカストビーンガムとショ糖とグルコースを、表2の組成になるように配合し、必要に応じて加水し、ニーダーにて3時間混練した。次に80℃の熱風乾燥機で乾燥した後、粉砕して、微細セルロース含有複合体KおよびLを得た。この微細セルロース含有複合体の物性を表2に示す。
【0040】
次いで、微細セルロース含有複合体としてAのかわりにKとLを用い、粘度が2.5〜4.2Pa・sになるように適宜キサンタンガムと水の配合量を調整する以外は全て実施例1と同様にしてハーフタイプのマヨネーズ風ドレッシングを調製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0041】
【比較例6】
特開昭54−55762号公報開示の方法に準じて微細セルロース含有複合体を調製した。すなわち、まず、精製リンターを、9.1%塩酸中で105℃で15分間加水分解して得られた酸不溶性残渣をろ過、洗浄し、加水分解セルロースのウェットケーク(固形分含量49wt%)を得た。そして、この加水分解セルロースに、グアーガムとデキストリンを、表2の組成になるように配合し、必要に応じて加水し、ニーダーにて90分間混練した。次に風乾した後、粉砕して、微細セルロース含有複合体Mを得た。この微細セルロース含有複合体の物性を表2に示す。
【0042】
次いで、微細セルロース含有複合体としてAのかわりにMを用い、粘度が2.5〜4.2Pa・sになるように適宜キサンタンガムと水の配合量を調整する以外は全て実施例1と同様にしてハーフタイプのマヨネーズ風ドレッシングを調製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0043】
【比較例7】
特開昭54−157875号公報開示の方法に準じて微細セルロース含有複合体を調製した。すなわち、比較例4と同様にして得られた加水分解セルロースのウェットケークに、精製ローカストビーンガムとデキストリンを、表2の組成になるように配合し、必要に応じて加水し、ニーダーにて3時間混練した。次に80℃の熱風乾燥機で乾燥した後、粉砕して、微細セルロース含有複合体Nを得た。この微細セルロース含有複合体の物性を表2に示す。
【0044】
次いで、微細セルロース含有複合体としてAのかわりにNを用い、粘度が2.5〜4.2Pa・sになるように適宜キサンタンガムと水の配合量を調整する以外は全て実施例1と同様にしてハーフタイプのマヨネーズ風ドレッシングを調製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0045】
【比較例8】
特表平4−502409号公報開示の方法に準じて微細セルロース含有複合体を調製した。すなわち、まず、実施例1と同様にして得られた加水分解セルロースのウェットケークをニーダーにて3時間混練した。次に固形分比でセルロース:ローカストビーンガム=8:2、固形分濃度10wt%となるように、純水中にこの混練物と精製ローカストビーンガムを投入し、プロペラ攪拌および対流型ホモミキサーによって均質なスラリーとした。次いでマントンゴーリン型ホモジナイザーで、17MPaで均質化し、噴霧乾燥して微細セルロース含有複合体Oを得た。この微細セルロース含有複合体の物性を表2に示す。なお、特表平4−4502409号公報の技術は水中での剪断力にて崩壊しないことを主目的としているので、リン酸等の酸を添加する技術を推薦している。しかしながら本発明の微細セルロース含有複合体は崩壊する性質を有しているので、比較を明確にするために、リン酸は添加しなかった。
【0046】
次いで、微細セルロース含有複合体としてAのかわりにOを用い、粘度が2.5〜4.2Pa・sになるように適宜キサンタンガムと水の配合量を調整する以外は全て実施例1と同様にしてハーフタイプのマヨネーズ風ドレッシングを調製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0047】
【比較例9】
微細セルロース含有複合体を含まない、通常のマヨネーズを調製した。すなわち、まず水14重量部と卵黄10重量部をホバートミキサーに入れ、150rpmで3分間撹拌した。それからサラダ油65重量部を約20g/分の速度で添加し、添加終了後から10分間撹拌した。引き続き、食塩2.6重量部、砂糖0.9重量部、からし粉0.4重量部、グルタミン酸ナトリウム0.1重量部の混合粉末と、食酢7重量部を添加し、5分間撹拌した。ここまでの操作の間、ホバートミキサーは止めることなく、150rpmで連続撹拌した。最後にコロイドミル(クリアランス:10mil、回転数:3000rpm)で1回処理することにより、マヨネーズを調製した。粘度は2.8Pa・sだった。また、官能評価したところボディ感は少な目で、口溶けは比較的良好であり、ざらつきはなかったが、酢の刺激的な酸味が感じられ、口中を覆うような油臭さを感じた。
【0048】
【実施例8〜10】
水不溶性食物繊維強化ヨーグルトを調製した。すなわち、水84.72重量部、生クリーム(雪印乳業(株)製「雪印フレッシュ」:乳脂肪40.0%、無脂乳固形分4.5%)5重量部、脱脂粉乳(雪印乳業(株)製「雪印フレッシュ」)8.28重量部、微細セルロース含有複合体A、B、F2重量部を80℃で30分間プロペラ撹拌した。これをピストン型のホモジナイザーで均質化(1段:9.8MPa、2段:4.9MPa)した。次いで30℃になるまでプロペラ撹拌しながら放冷し、100cm3容のプラスチック製カップに充填し、38℃で17時間発酵させた。これを5℃で5時間保存し、評価した。
【0049】
サンプルはカード化し、いわゆるハードヨーグルトの外観、硬さを有していた。離水分離はなく、食したところざらつきのない比較例11のサンプルと同等の食感であった。
【0050】
【比較例10】
微細セルロース含有複合体としてAのかわりにKを用い、あとは実施例8と同様にしてハードヨーグルトの調製をこころみた。しかしながら、カード化せず、細かい凝集状態となり、離水も発生した。
【0051】
【比較例11】
微細セルロース含有複合体を含まず、その分水を増やした以外は実施例8と同様にしてハードヨーグルトを調製した。できたものは、離水のない、カード化したハードヨーグルトだった。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【発明の効果】
本発明は、特定の微細セルロース含有複合体を使用することにより、油脂の配合量が少ないにもかかわらず、コクがあり、かつ、口溶けがよい低カロリー食品を提供することができる。かつ、食感および整腸作用の優れた食物繊維配合食品を提供することができる。
Claims (3)
- 微細セルロース60〜80wt%と、ローカストビーンガム2〜12wt%と、キサンタンガム0.5〜8wt%と、親水性物質0〜37.5wt%からなる粉末であって、温水に分散させたときに生じる粒子の平均粒径が60μm以下、100μm以上の粒子が30vol%以下であり、かつ、コロイド分画が30%以下であることを特徴とする微細セルロース含有複合体を配合してなる食品組成物(但し、アイスクリーム類製品を除く)
- 微細セルロース含有複合体が、温水に分散させたときに生じる粒子の平均粒径が40μm以下、100μm以上の粒子が25vol%以下となるものであることを特徴とする請求項1記載の食品組成物。
- 微細セルロース含有複合体が、温水に分散させたときに生じる粒子の平均粒径が25μm以下、100μm以上の粒子が15vol%以下となるものであることを特徴とする請求項1記載の食品組成物。
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