JP2020048461A - 高濃度タンパク飲料 - Google Patents

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山崎 有亮
Yusuke Yamazaki
有亮 山崎
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Abstract

【課題】本発明は、高濃度のタンパク質を含有するにもかかわらず、低粘度で、長時間、懸濁安定性に優れる飲料を提供する。【解決手段】タンパク質と、セルロース及び多糖類を含むセルロース複合体と、を含有し、飲料の全質量に対する前記タンパク質の含有量が3質量%以上であり、前記セルロース複合体に含まれるコロイド状セルロース複合体の動的光散乱法により測定されるメジアン径が0.85μm以上である、飲料。【選択図】なし

Description

本発明は、ココア、コーヒー、紅茶、牛乳等の乳飲料においてタンパク質が高濃度で配合されたものに関し、セルロース複合体の添加により、懸濁安定性と、食感、風味に優れる飲料に関する。
近年の社会システムの維持・経済成長には、いかに健康寿命を延ばすかが重要であり、“効率的な栄養摂取”と“運動”による“アクティブシニアの増加”が課題である。
そこで、ロコモ(ロコモーティブシンドローム、運動器症候群)、サルコペニア(加齢による骨格筋量の低下)、及びフレイル(健常と要介護の中間状態)を予防する食品素材として、プロテインが注目されている。従来は、(アスリート向け)要時調製パウダータイプが主流であった。一方、RTD飲料タイプは、手間なく、何時でも摂取できる利便性に加え、他の栄養成分(ビタミン・ミネラル・食物繊維等)との複合的摂取や、均質化等の加工による消化吸収の向上が期待でき、ロコモ対策食品としてはメリットが大きい。
一方で、従来、セルロースと、多糖類とのセルロース複合体が、水系媒体中においてセルロースコロイドを形成し、良好な懸濁安定性を示すことが知られており、食品、医薬品、化粧品、塗料、セラミックス、樹脂、触媒、その他工業用品等の分野において、広く用いられている。特に、懸濁安定剤、乳化安定剤、増粘安定剤等の安定剤、組織付与剤、クラウディー剤、白度向上、流動性改良、研磨剤、食物繊維、油脂代替等の目的で用いられる。例えば、飲料であるカルシウム強化牛乳においては、ミルクカルシウムや炭酸カルシウムの如く、比重の大きい水不溶性成分の懸濁安定性を目的として、セルロース複合体が添加されている(特許文献1参照。)。
国際公開第2013/022090号
本発明は、高濃度のタンパク質を含有する飲料において、低粘度で、長時間、懸濁安定性に優れる飲料を提供することを課題とする。
本発明者らは、セルロースと多糖類を高度に複合化させ、特定のメジアン径を有するコロイド状セルロース複合体を特定量含むセルロース複合体を、コーヒー、ココア、紅茶抽出物等にタンパク質が高濃度配合された飲料に少量配合することにより、低粘度で懸濁安定性に優れる飲料にできることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)タンパク質と、セルロース及び多糖類を含むセルロース複合体と、を含有し、飲料の全質量に対する前記タンパク質の含有量が3質量%以上であり、前記セルロース複合体に含まれるコロイド状セルロース複合体の動的光散乱法により測定されるメジアン径が0.85μm以上である、飲料。
(2)前記セルロース複合体は、該セルロース複合体を1質量%含有するpH6以上pH7以下の水分散体の貯蔵弾性率(G’)が0.50Pa以上である、前記(1)の飲料。
(3)前記タンパク質が、動物性と植物性の両者を含む、前記(1)又は(2)の飲料。
本発明により、低粘度で、懸濁安定性に優れる高濃度タンパク飲料を提供できる。
本発明について、以下、具体的に説明する。
なお、以降において、「X〜X」(X及びXは、X<Xである数)は、「X以上X以下」を意味する。
本発明及び本願明細書において、「懸濁安定」とは、水系媒体中に、ココア粉末やカルシウム、機能性食品素材等、セルロース複合体以外の成分を含むときに、セルロース複合体の添加効果により、それらの成分が懸濁安定化されることを意味している。具体的には、セルロースだけでなく、その他成分の粒子の分離、凝集、沈降等の発生がなく、均一な外観を呈することである。
本発明の飲料に含有させるセルロース複合体(以下、「本発明のセルロース複合体」ということがある。)は、セルロースと多糖類とを含むセルロース複合体であって、該セルロース複合体に含まれるコロイド状セルロース複合体の動的光散乱法により測定されるメジアン径が、0.85μm以上のものをいう。本発明のセルロース複合体は、該セルロース複合体を1質量%含有するpH6以上pH7以下の水分散体の貯蔵弾性率(G’)が0.50Pa以上であるものが好ましい。本発明及び本願明細書において、セルロースと多糖類との複合化とは、セルロースの表面が、水素結合等の化学結合により、多糖類で被覆されることをいう。
<セルロース>
本発明において、「セルロース」とは、セルロースを含有する天然由来の水不溶性繊維質物質である。原料としては、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。原料として、これらのうち1種の天然セルロース系物質を使用してもよく、2種以上を混合したものを使用することも可能である。
<セルロースの平均重合度>
本発明に用いるセルロースの平均重合度は、500以下の結晶セルロースが好ましい。平均重合度は、「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース、粉末セルロースの確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定できる。平均重合度が500以下ならば、多糖類との複合化の工程において、セルロース系物質が攪拌、粉砕、摩砕等の物理処理を受けやすくなり、複合化が促進されやすくなるため好ましい。より好ましくは、平均重合度は300以下、さらに好ましくは、平均重合度は250以下である。平均重合度は、小さいほど複合化の制御が容易になるため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては10以上である。
<セルロースの加水分解>
平均重合度を制御する方法としては、加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース繊維質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースや、リグニン等の不純物も、取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、混練工程等で、セルロースと多糖類に機械的せん断力を与える工程において、セルロースが機械処理を受けやすくなり、セルロースが微細化されやすくなる。その結果、セルロースの表面積が高くなり、多糖類との複合化の制御が容易になる。
加水分解の方法は、特に制限されないが、酸加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。酸加水分解の方法では、セルロース系物質を水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌させながら加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調製されるものである。例えば、2質量%以下の鉱酸水溶液を使用し、100℃以上、加圧下で、10分間以上セルロースを処理するという条件が挙げられる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース繊維内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。
<セルロースの粒子形状(L/D)>
本発明のセルロース複合体中のセルロースは、微細な粒子状の形状であることが好ましい。セルロースの粒子形状は、本発明のセルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%に純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾されたものを、原子間力顕微鏡(AFM)で計測された際に得られる粒子像の長径(L)と短径(D)とした場合の比(L/D)で表され、100個〜150個の粒子のL/Dの平均値として算出される。該L/Dは、懸濁安定性の点で20未満が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下が特に好ましく、5未満が格別に好ましく、4以下が最も好ましい。
<多糖類>
本発明におおて、「多糖類」は、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、グルコン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸等の糖類がα又はβ結合し、主鎖又は側鎖を構成する化合物のことをいう。例えば、天然由来では、アーモンドガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、エレミ樹脂、カラヤガム、ガッティガム、ダンマル樹脂、トラガントガム、モモ樹脂等の樹脂由来の多糖類;アマシードガム、カシアガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グアーガム酵素分解物、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、セスバニアガム、タマリンド種子ガム、タラガム、トリアカンソスガム等の豆類由来の多糖類;アルギン酸、カラギーナン、フクロノリ抽出物、ファーセルラン等の海草由来の多糖類;アロエベラ抽出物、オクラ抽出物、キダチアロエ抽出物、トロロアオイ、ペクチン等の果実類、葉、地下茎由来の多糖類;アエロモナスガム、アウレオバシジウム培養液、アゾトバクター・ビネランジーガム、ウェランガム、エルウィニア・ミツエンシスガム、エンテロバクター・シマナスガム、エンテロバクターガム、カードラン、キサンタンガム、ジェランガム、スクレロガム、デキストラン、納豆菌ガム、プルラン、マクロホモプシスガム、ラムザンガム、レバン等の微生物の発酵産物由来の多糖類が挙げられる。セルロース由来の多糖類としては、セルロース、微小繊維状セルロース、発酵セルロース、及びメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、及びそのナトリウム、カルシウム等のセルロース誘導体等が挙げられる。その他としては、酵母細胞壁、キチン、キトサン、グルコサミン、オリゴグルコサミン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸等が挙げられる。これらの多糖類は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
その中でも、本発明のセルロース複合体に用いるには、陰イオン性多糖類又は中性多糖類が、結晶セルロースと複合化しやすいため、好ましい。さらに、陰イオン性多糖類は、より複合化しやすいため、好ましい。
<陰イオン性多糖類>
水中で陽イオンが遊離し、それ自身が陰イオンとなるものを陰イオン性多糖類と呼ぶ。本発明においては、陰イオン性多糖類を用いることで、セルロースとの複合化がより促進されるため好ましい。
陰イオン性多糖類としては、以下のものが好適である。
例えば、サイリウムシードガム、カラヤガム、カラギーナン、寒天、ファーセルラン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、HMペクチン、LMペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、キサンタンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、CMC−Na)、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシエチルセルロースナトリウム、カルボキシエチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体が挙げられる。これらの陰イオン性多糖類は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
<セルロース複合体のコロイド状セルロース複合体含有量>
本発明のセルロース複合体は、コロイド状セルロース複合体を50質量%以上含有することが好ましい。ここでいうコロイド状セルロース複合体含有量とは、セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」、ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39,200m/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116,000m/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みに残存する固形分(セルロースと、多糖類を含む。また、本発明のセルロース複合体が水溶性ガムを含む場合は、さらに、水溶性ガムを含む。)の質量百分率のことである。コロイド状セルロース複合体の含有量が50質量%以上であると、懸濁安定性が向上する。さらに好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。コロイド状セルロース複合体含有量は、多ければ多いほど、懸濁安定性が高いため、その上限は特に制限されないが、好ましい範囲としては、100質量%以下である。
<複合体の多糖類の広がり ※動的光散乱法によるメジアン径>
本発明のセルロース複合体は、従来品に対し、セルロース粒子表面から放射状に伸びた多糖類の広がりが大きいという特徴がある。この多糖類の広がりは、上述のコロイド状セルロース複合体における、動的光散乱法により測定されるメジアン径で表される。本発明のセルロース複合体については、このメジアン径が0.85μm以上であることが必要である。
この動的光散乱法によるメジアン径は、以下の方法で測定することができる。まず、セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」、ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39,200m/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116,000m/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みを採取する。この上澄み液を、50mL容量のPP製サンプル管に入れて、超音波洗浄器(アズワン製、超音波洗浄器 商品名AUC−1L型)で10分間、超音波処理する。その後、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子(株)製、商品名「ELSZ−2」(バッチセル))により粒度分布(粒径値に対する散乱強度の度数分布)を測定する。
ここでいうメジアン径とは、この度数分布における散乱強度の積算50%に対応する粒径値(μm)のことである。このメジアン径が大きいほど、セルロース複合体の懸濁安定性が優れる。このため、該メジアン径は、好ましくは0.90μm以上であり、より好ましくは1.0μm以上であり、さらに好ましくは1.1μm以上であり、特に好ましくは1.2μm以上である。該メジアン径の上限については、特に制限はないが、好ましくは5.0μm以下であり、より好ましくは3.0μm以下であり、さらに好ましくは2.0μm以下であり、特に好ましくは1.5μm以下である。
<CMC−Na>
上述の陰イオン性多糖類の中でも、CMC−Naが、特にセルロースと複合化しやすいため好ましい。ここでいうCMC−Naとは、セルロースの水酸基がモノクロロ酢酸で置換されたもので、D−グルコースがβ−1,4結合した直鎖状の化学構造を持つものである。CMC−Naは、パルプ(セルロース)を水酸化ナトリウム溶液で溶かし、モノクロロ酸(或いはそのナトリウム塩)で置換して得られる。特に、置換度と粘度が特定範囲に調製されたCMC−Naを用いることが、複合化の観点から好ましい。
CMC−Naの粘度は、1質量%の純水溶液において、500mPa・s以下が好ましい。ここでいう粘度は、以下の方法で測定される。まず、CMC−Naの粉末を、1質量%として、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散し、水溶液を調製する。次に、得られた水溶液ついて、分散3時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして60秒間静置後に、30秒間回転させて測定した。但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。CMC−Naの粘度が低いほど、セルロースの多糖類との複合化が促進されやすい。そのため、CMC−Naの粘度は、200mPa・s以下がより好ましく、100mPa・s以下がさらに好ましい。CMC−Naの粘度の下限は特に制限されるものではないが、好ましい範囲としては1mPa・s以上である。
<CMC−Naの組合せ>
本発明のセルロース複合体に用いられるCMC−Naは、粘度が異なる2種を組合せたものであることが好ましい。このCMC−Naの組合せは、具体的には、2質量%水溶液の25℃における粘度が100mPa・s以上であるA成分と、100mPa・s未満であるB成分を含有し、A成分とB成分の配合比が、A成分/B成分=5/95〜95/5(質量比)であることが好ましい。
粘度は、以下の方法で測定される。まず、CMC−Naの粉末を、2質量%として、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散し、水分散体を調製する。次に、得られた水分散体を、分散3時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして60秒間静置後に、30秒間回転させてその粘度を測定する。但し、ローター種は、粘度によって適宜変更できる。
高粘度のCMC−NaであるA成分は、セルロースと複合化した際に、水分散状態でセルロース表面から放射状に広がり、隣接する複合体のCMC−Naと絡み合うことで、セルロース複合体のネットワーク構造を剛直にし、結果として水分散体の貯蔵弾性率(G’)を高める働きをする。A成分の粘度は適度な範囲に設定することで、セルロース表面からのCMC−Naの広がりが大きくなるため好ましい。A成分の粘度としては、200mPa・s以上がより好ましく、300mPa・s以上がさらに好ましく、500mPa・s以上が特に好ましい。A成分の粘度の上限としては、10,000mPa・s以下が好ましく、5,000mPa・s以下がより好ましく、2,000mPa・s以下がさらに好ましく、1,000mPa・s以下が特に好ましい。
低粘度のCMC−NaであるB成分は、セルロースと多糖類を混練する際に、混練物を固くする作用があり、混練電力が掛かりやすくなるため、所定の時間で複合化を促進する効果がある。B成分の粘度と、上述の複合化促進効果には相関がある。B成分の粘度としては、90mPa・s以下がより好ましく、70mPa・s以下がさらに好ましく、50mPa・s以下がよりさらに好ましく、30mPa・s以下が最も好ましい。B成分の粘度の下限としては、1mPa・s以上が好ましく、5mPa・s以上がより好ましく、10mPa・s以上がさらに好ましく、20mPa・s以上が特に好ましい。
上述のA成分とB成分の配合比により、セルロース複合体の製造における複合化のしやすさ、及びそれにより得られるセルロース複合体の機能が、調整できる。この配合比(質量比)としては、A成分/B成分=10/90〜90/10がより好ましく、20/80〜80/20がさらに好ましく、30/70〜70/30がよりさらに好ましく、40/60〜60/40が特に好ましい。
<CMC−Naの分子量分布>
本発明で用いるCMC−Naは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、分子量を測定した際に、得られたクロマトグラムが、二山(バイモーダル)以上のピークを有するものを用いることが好ましい。
二山(バイモーダル)以上のピークとは、GPCクロマトグラムにおいて、二つ以上の別々のピークを示す曲線の形態(ピークトップが二つ以上)をとることを意味する。この形態をとるものは、分子量分布が単分散ではなく、複数の成分が混合されることで、それぞれが補完しあい、セルロース表面からのCMC−Naの広がりが大きくなり、その結果G’が高いセルロース複合体が得られる。
ここでいうゲルパーミエーションクロマトグラフィーとは、株式会社島津製作所製の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)商品名LC−20A型に、カラムとして東ソー株式会社製 商品名TSK−GEL G5000PW型(7.8mm×30cm)一本と、商品名TSK−GEL G3000PWXL型(7.8mm×30cm)二本とを直列でつなぎ、移動層として0.05mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用い、移動層の流量を1mL/分、カラム温度30℃、RI検出器又はUV検出器(波長210nm)で測定した際に得られるクロマトグラムにおいて、二山(バイモーダル)以上のピークが検出されることである。
用いるCMC−Naは、上記の移動層と同じ溶液に、完全に溶解したものを用いることができる。CMC−Naの溶液濃度は、0.01〜1.0質量%の濃度の範囲で適宜調整され、CMC−Na溶液の打ち込み量は、5〜10μL/回で測定される。
ピークが単分散ではなく、二山(バイモーダル)以上の分子量分布を有するCMC−Naを用いることによって、セルロース複合体の表面電荷が高く、セルロース表面からのCMC−Naの広がりが大きくなる。このため、本発明のセルロース複合体には、二山(バイモーダル)以上の分子量分布を有するCMC−Naを用いることが好ましい。
<CMC−Naの置換度>
本発明のセルロース複合体に用いるCMC−Naは、高置換度のものを用いることが好ましい。CMC−Naの置換度が高いほど、セルロースと複合化しやすく、セルロース複合体の貯蔵弾性率が高まり、高塩濃度の水溶液中(例えば10質量%の塩化ナトリウム水溶液)でも高い懸濁安定性を発揮できるため好ましい。また、高置換度のCMC−Naを用いることで、乳成分等のタンパク質と過度の凝集を発生しにくいものが得られる。置換度とは、セルロース中の水酸基にカルボキシメチル基がエーテル結合した度合いのことである。具体的には、本発明のセルロース複合体に用いるCMC−Naの置換度は、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.2以上がさらに好ましく、1.3以上が特に好ましい。該置換度の上限は、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。
ここでいう置換度は、以下の方法で測定される。試料(無水物)0.5gを精密にはかり、ろ紙に包んで磁性ルツボ中で灰化する。冷却した後、これを500mL容量のビーカーに移し、水約250mLと、0.05M硫酸35mLとを加えて、30分間煮沸する。これを冷却し、フェノールフタレイン指示薬を加えて、過剰の酸を0.1M水酸化カリウムで逆滴定して、次の式で算出する。
A=((af−bf1)/試料無水物(g))−アルカリ度(又は+酸度)
置換度=(162A)/(10000−80A)
ここで、
A:試料1g中のアルカリに消費された0.05Mの硫酸の量(mL)
a:0.05M硫酸の使用量(mL)
f:0.05M硫酸の力価
b:0.1M水酸化カリウムの滴定量(mL)
f1:0.1M水酸化カリウムの力価
162:グルコースの分子量
80:CHCOONa−Hの分子量
アルカリ度(又は酸度)の測定法:試料(無水物)1gを300mLフラスコに精密に測りとり、水約200mLを加えて溶かす。これに0.05M硫酸5mLを加え、10分間煮沸した後、冷却し、フェノールフタレイン指示薬を加え、0.1M水酸化カリウムで滴定する(S(mL))。同時に空試験を行い(B(mL))、次の式で算出する。
アルカリ度=((B−S)×f)/試料無水物(g)
ここで、f:0.1M水酸化カリウムの力価である。
(B−S)×fの値が負(−)の時には、酸度とする。
<セルロースと多糖類の配合比率>
本発明のセルロース複合体は、好ましくは、セルロースを50〜99質量%、及び多糖類を1〜50質量%含有する。複合化によって、多糖類がセルロース粒子の表面を水素結合等の化学結合により被覆することで、中性の水溶液に分散した際に、セルロース複合体がもつ懸濁安定性が向上する。また、セルロースと多糖類を上記の組成とすることで、複合化が促進され、中性の水分散体における懸濁安定性が向上して、機能性食品素材等の水不溶性成分の沈降防止効果を達成することがより容易となる。本発明のセルロース複合体は、セルロースを70〜99質量%、多糖類を1〜30質量%含有することがより好ましく、セルロースを80〜99質量%、多糖類を1〜20質量%含有することがさらに好ましく、セルロースを85〜99質量%、多糖類を1〜15質量%含有することが特に好ましい。
<セルロース複合体中のセルロース芯材の粒子径 ※レーザー回折/散乱法によるメジアン径>
本発明のセルロース複合体のコロイド状セルロース複合体の、レーザー回折/散乱法により測定されるメジアン径は、1.0μm以下であることが好ましい。この方法で計測されるメジアン径は、上述の動的光散乱法によるものと異なり、セルロース複合体の中心に存在するセルロース芯材の粒子径を表すものである。このレーザー回折/散乱法によるメジアン径は、以下の方法で測定することができる。
まず、セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」、ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39,200m/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116,000m/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みを採取する。この上澄み液を、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)のことである。この値が小さいほど、セルロース複合体の懸濁安定性が優れるため好ましく、より好ましくは0.7μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以下であり、よりさらに好ましくは0.3μm以下であり、特に好ましくは0.2μm以下である。
<セルロース複合体中の粗大粒子の大きさ ※レーザー回折/散乱法によるメジアン径>
本発明のセルロース複合体は、それに含まれる粗大粒子のメジアン径が小さい特徴がある。この粗大粒子の大きさは、以下の方法で測定できる。まず、セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離を経ずに、そのまま、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分間、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)のことである。該メジアン径が20μm以下であると、セルロース複合体の懸濁安定性がより容易に向上するため好ましい。また、セルロース複合体を含有する食品を食した際に、ザラツキのない、なめらかな舌触りのものを提供することができる。該メジアン径は、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下、よりさらに好ましくは8μm以下である。該メジアン径の下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては0.1μm以上である。
<セルロース複合体の貯蔵弾性率>
次に、本発明のセルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)について説明する。
本発明のセルロース複合体は、セルロース複合体を1質量%含むpH6〜7の水分散体において貯蔵弾性率(G’)が0.50Pa以上である。貯蔵弾性率とは、水分散体のレオロジー的な弾性を表現するものであり、セルロースと多糖類との複合化、又はセルロースと多糖類及びその他水溶性ガムとの複合化の程度を表すものである。貯蔵弾性率が高いほど、セルロースと多糖類との複合化、又はセルロースと多糖類及びその他水溶性ガムとの複合化が促進され、セルロース複合体の水分散体におけるネットワーク構造が、剛直であることを意味する。ネットワーク構造が剛直なほど、セルロース複合体の懸濁安定性に優れる。
本発明において、貯蔵弾性率は、セルロース複合体を純水中に分散させた水分散体(pH6〜7)の動的粘弾性測定により得られる値とした。水分散体に歪みを与えた際の、セルロース複合体ネットワーク構造内部に蓄えられた応力を保持する弾性成分が貯蔵弾性率として表される。
貯蔵弾性率の測定方法としては、まず、セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%の純水分散体を調製する。得られた水分散体を3日間室温で静置する。この水分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の範囲で掃引、水分散体は微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込み、5分間静置した後に、Dynamic Strainモードで測定を開始する)により測定する。本発明における貯蔵弾性率は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み20%の値のことである。この貯蔵弾性率の値が大きいほど、セルロース複合体が形成する水分散体の構造はより弾性的であり、セルロースと多糖類との複合化、又はセルロースと多糖類及びその他水溶性ガムが高度に複合化していることを表している。
セルロース複合体の貯蔵弾性率は、0.75Pa以上が好ましく、1.0Pa以上がより好ましく、さらに好ましくは1.3Pa以上であり、よりさらに好ましくは1.6Pa以上であり、最も好ましくは、1.8Pa以上である。
上限は、特に制限されるものではないが、飲料とした場合の飲みやすさを勘案すると、6.0Pa以下である。6.0Pa以下であると、懸濁安定性が充分に得られるセルロース複合体の添加量(飲料により異なるが、例えば、コーヒー、ココア、紅茶等の嗜好飲料、またはCa強化牛乳等の飲料では0.1〜1.0質量%)において、飲み口が軽いため好ましい。また、食感を調節するために、セルロース複合体の添加量が低い場合(例えば0.5質量%以下)でも、セルロース以外の水不溶成分と凝集等を生じにくい。
<セルロース複合体の構造>
本発明のセルロース複合体は、従来品に対し、セルロース表面から放射状に伸びた多糖類の広がりが、大きいという特徴がある。セルロース表面から伸びた多糖類の広がりが大きいほど、隣接するセルロース複合体の多糖類と絡み合いやすくなる。その結果、セルロース複合体同士の絡み合いが密に生じることで、ネットワーク構造が剛直になり、貯蔵弾性率(G’)が向上し、懸濁安定性が高くなる。この多糖類の広がりは、以下の方法で測定することができる。
まず、セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間、全量300g)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%の純水分散体を調製する。得られた水分散体を3日間以上、室温で静置する。その後、純水で20倍希釈され、サンプル液が調製される。水分散体の微細構造を壊さないよう、スポイトを使用して、5μLをゆっくりと吸出し、1cm×1cmの壁開されたマイカ上にゆっくり滴下し、エアダスターで余分な水分を吹き飛ばし、マイカ上に定着したサンプルを、AFM(島津製作所製 走査型プローブ顕微鏡SPM−9700、位相モード、オリンパス社製プローブOMCL−AC240TSを使用)にて、観察する。この観察像において、セルロース粒子は高さ2nm以上の棒状粒子として観察され、そのセルロース粒子から周囲に放射状に伸びる高さ2nm未満の多糖類が観察できる(図1)。本発明では、このセルロース粒子から周囲に放射状に伸びた多糖類の広がりを、前記コロイド状セルロース複合体における、動的光散乱法により測定されるメジアン径で表す。
多糖類は高度に複合化されると、この広がりがより大きくなるため好ましい。さらに、多糖類として、特定の置換度、粘度を有するCMC−Naを用いると、さらにこの広がりが大きくなる。特定の粘度の2種のCMC−Naを組合せることで、この広がりは、一段と大きくなる。
<セルロース複合体の水分散体の粘度>
本発明のセルロース複合体は、上述の如く、セルロース粒子からのCMC−Naの広がりが大きいため、水分散体中で、隣接する粒子と絡み合いやすい特徴がある。そのため、従来品より、高い粘度を有し、飲食品に添加した際に、コク、喉越し(飲みやすさ)等の良好な食感を付与できる。ここでいう粘度とは、以下の方法で測定することができる。
まず、セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%濃度の純水分散体を調製する。この純水分散体を、分散3時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして、30秒間静置後に、30秒間回転させてその粘度を測定する。但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用するローターは以下の通りである。すなわち、1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s以上:No3)で測定する。
セルロース複合体の水分散体の粘度の好ましい範囲としては、100mPa・s以上である。より好ましい範囲は、150mPa・s以上であり、さらに好ましくは200mPa・s以上であり、よりさらに好ましくは250mPa・s以上であり、特に好ましくは、300mPa・s以上であり、最も好ましくは350mPa・s以上である。該粘度の上限は、飲みやすさと密接に関連し、1000mPa・s以下が好ましく、700mPa・s以下がより好ましく、600mPa・s以下がさらに好ましく、500mPa・s以下が特に好ましい。
<水溶性ガム>
本発明のセルロース複合体は、さらに多糖類以外の水溶性ガムを含むことが好ましい。水溶性ガムとしては、水膨潤性が高く、セルロースと複合化しやすいガムが好ましい。例えば、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、キトサン、アラビアガム、寒天、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム等のアルギン酸塩、HMペクチン、LMペクチン等のペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、キサンタンガム、カードラン、プルラン、デキストラン、ジェランガム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。これらの水溶性ガムは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
上述の水溶性ガムの中でも、セルロースとの複合化の点で、キサンタンガム、カラヤガム、ジェランガム、ペクチン、アルギン酸塩が好ましい。
<多糖類と水溶性ガムの質量比>
多糖類と上記の水溶性ガムとの質量比は、30/70〜99/1であることが好ましい。本発明のセルロース複合体において、多糖類と上記の水溶性ガムが前記の範囲にあることで、弱アルカリ性(pH8)から酸性(pH3)までの広いpH領域の本発明のセルロース複合体を含む水分散体において、本発明のセルロース複合体は懸濁安定性を示す。これら多糖類と水溶性ガムとの配合量比として、より好ましくは、40/60〜90/10であり、さらに好ましくは40/60〜80/20である。
<親水性物質>
本発明のセルロース複合体に、水への分散性を高める目的で、多糖類及び水溶性ガム以外に、さらに親水性物質を加えてもよい。親水性物質とは、冷水への溶解性が高く粘性を殆どもたらさない有機物質であり、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳糖、マルトース、ショ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン等のオリゴ糖類、ブドウ糖、果糖、ソルボース等の単糖類、マルチトール、ソルビット、エリスリトール等の糖アルコール類等が適している。これらの親水性物質は、単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でも、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類が分散性の点で好ましい。
その他の成分の配合については、組成物の水中での分散及び安定性を阻害しない程度に配合することは自由である。
<セルロース複合体の製造方法>
次に、本発明のセルロース複合体の製造方法を説明する。
本発明の特定のメジアン径を有するコロイド状セルロース複合体を特定量含むセルロース複合体は、混練工程においてセルロースと多糖類に機械的せん断力をあたえ、セルロースを微細化させるとともに、セルロース表面に多糖類を複合化させることによって得られる。また、多糖類以外の水溶性ガムや親水性物質、及び、その他の添加剤などを添加してもよい。上述の処理を経たものは、必要に応じ、乾燥される。本発明のセルロース複合体には、上述の機械的せん断を経て、未乾燥のもの及びその後乾燥されたもの等、いずれの形態でもよい。
機械的せん断力を与えるには、混練機等を用いて混練する方法を適用することができる。混練機は、ニーダー、エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ライカイ機等を用いることができ、連続式でもバッチ式でもよい。混練時の温度は成り行きでもよいが、混練の際の複合化反応、摩擦等により発熱する場合にはこれを除熱しながら混練してもよい。これらの機種を単独で使用することも可能であり、2種以上の機種を組み合わせて用いることも可能である。これらの機種は、種々の用途における粘性要求等により適宜選択すればよい。
また、混練温度は、低いほど、多糖類の劣化が抑制され、結果として得られるセルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)が高くなるため好ましい。混練温度は、80℃以下であることが好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましく、50℃以下がよりさらに好ましく、30℃以下が特に好ましく、20℃以下が最も好ましい。高エネルギー下で、上記の混練温度を維持するには、ジャケット冷却、放熱等の徐熱を工夫することも自由である。
混練時の固形分は、35質量%以上であることが好ましい。混練物の粘性が高い半固形状態で混練することで、混練物が緩い状態にならず、下記に述べる混練エネルギーが混練物に伝わりやすくなり、複合化が促進されるため好ましい。混練時の固形分は、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは55質量%以上である。上限は特に限定されないが、混練物が水分量の少ないパサパサな状態にならず、充分な混練効果と均一な混練状態が得られることを考慮して、現実的範囲は90質量%以下が好ましい。より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。また、固形分を上記範囲とするために、加水するタイミングとしては、混練工程の前に必要量を加水してもよいし、混練工程の途中で加水してもよいし、両方実施してもよい。
ここで、混練エネルギーについて説明する。混練エネルギーとは混練物の単位質量当たりの電力量(Wh/kg)で定義するものである。混練エネルギーは、50Wh/kg以上とすることが好ましい。混練エネルギーが50Wh/kg以上であれば、混練物に与える磨砕性が高く、セルロースと多糖類、又は、セルロース、多糖類、及びその他水溶性ガム等との複合化が促進され、中性のセルロース複合体の懸濁安定性は向上する。より好ましくは80Wh/kg以上であり、さらに好ましくは100Wh/kg以上であり、特に好ましくは200Wh/kg以上であり、一層好ましくは300Wh/kg以上であり、最も好ましくは400Wh/kg以上である。
混練エネルギーは、高い方が、複合化が促進されると考えられるが、混練エネルギーをあまり高くすると、工業的に過大な設備となること、設備に過大な負荷がかかることから、混練エネルギーの上限は1,000Wh/kgとするのが好ましい。
複合化の程度は、セルロースとその他の成分の水素結合の割合と考えられる。複合化が進むと、水素結合の割合が高くなり本発明の効果が向上する。また、複合化が進むことで、セルロース複合体に含まれるコロイド状セルロース複合体のメジアン径が大きくなる。
本発明のセルロース複合体を得るにあたって、前述の混練工程より得られた混練物を乾燥する場合は、棚段式乾燥、噴霧乾燥、ベルト乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。混練物を乾燥工程に供する場合には、混練物に水を添加せず、混練工程の固形分濃度を維持して、乾燥工程に供することが好ましい。
乾燥後のセルロース複合体の含水率は1〜20質量%が好ましい。含水率を20%以下とすることで、べたつき、腐敗等の問題や運搬・輸送におけるコストの問題が生じにくくなる。より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。また、1%以上とすることで、過剰乾燥のため分散性が悪化することもない。より好ましくは1.5%以上である。
セルロース複合体を市場に流通させる場合、その形状は、粉体の方が取り扱い易いので、乾燥により得られたセルロース複合体を粉砕処理して粉体状にすることが好ましい。但し、乾燥方法として噴霧乾燥を用いた場合は、乾燥と粉末化が同時にできるため、粉砕は必要ない。乾燥したセルロース複合体を粉砕する場合、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の方法を用いることができる。粉砕する程度は、粉砕処理したものが目開き1mmの篩いを全通する程度に粉砕する。より好ましくは、目開き425μmの篩いを全通し、かつ、平均粒度(重量平均粒子径)としては10〜250μmとなるように粉砕することが好ましい。これらの乾燥粉末は、セルロース複合体の微粒子が凝集し、二次凝集体を形成しているものである。この二次凝集体は、水中で攪拌すると崩壊し、上述のセルロース複合体微粒子に分散する。二次凝集体の見かけの重量平均粒子径は、ロータップ式篩振盪機(平工作所製シーブシェーカーA型)、JIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、試料10gを10分間篩分することにより得られた粒度分布における累積重量50%粒径のことである。
乾燥したセルロース複合体を水中で攪拌した際、容易に分散し、セルロースが均一に分散した、なめらかな組織を持つザラツキの無い安定なコロイド分散体が形成される。特に、中性において、セルロースが凝集や分離を起こさず、安定なコロイド分散体を形成するため、安定剤等として優れた機能を奏する。
<低温による高度複合化>
上述のように、本発明のセルロース複合体を得るには、多糖類として、CMC−Naを使用する場合に、粘度の異なる2成分を、特定の比率で混ぜ合わせることが好ましい。
一方、本発明では、CMC−Naとして粘度の異なる2成分を用いずとも、上記の製造方法における混練温度を、さらに低温にすることで、低粘度のCMC−Na単独の使用でも、懸濁安定性が優れたセルロース複合体が得られる。
ここで用いるCMC−Naの粘度は、100mPa・s以下が好ましく、90mPa・s以下がより好ましく、70mPa・s以下がさらに好ましく、50mPa・s以下がよりさらに好ましく、30mPa・s以下が最も好ましい。該粘度の下限としては、1mPa・s以上が好ましく、5mPa・s以上がより好ましく、10mPa・s以上がさらに好ましく、20mPa・s以上が特に好ましい。
ここでいう粘度は、以下の方法で測定される。まず、CMC−Naの粉末を、2質量%として、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散し、水分散体を調製する。次に、得られた水分散体を、分散3時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして60秒間静置後に、30秒間回転させてその粘度を測定する。但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。
さらに、混練温度は、低いほど、複合体の貯蔵弾性率(G’)が高くなるため、好ましい。具体的には、混練温度は、0〜50℃が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましく、20℃以下がよりさらに好ましく、10℃以下が最も好ましい。20℃以下で混練する場合は、CMC−Naが水に膨潤するまでの間(混練開始から、電力量が30Wh/kgに到達するまで)は、室温以上とすることもできる。
<用途>
本発明のセルロース複合体は、種々の飲料に使用できる。例を挙げると、コーヒー、紅茶、抹茶、ココア、汁粉、ジュース等の嗜好飲料;生乳、加工乳、乳酸菌飲料、豆乳等の乳性飲料;カルシウム強化飲料等の栄養強化飲料;並びに食物繊維含有飲料等である。
本発明のセルロース複合体は、これらの用途において、懸濁安定剤、乳化安定剤、増粘安定剤、泡安定剤、クラウディー剤、流動性改善剤、として作用するものである。また、上記の飲料がRTD飲料、粉末飲料等の形態又は用時調製の加工手法が異なっていても本発明の効果は発揮される。特に、加熱環境、高濃度環境においても機能を発揮する点が、従来のセルロース系の素材と異なる。
本発明のセルロース複合体を飲料に使用する場合、各飲料の製造で一般に行われている方法と同様の機器を使用して、主原料の他、必要に応じて、香料、pH調整剤、増粘安定剤、塩類、糖類、油脂類、蛋白類、乳化剤、酸味料、色素等と配合して、混合、混練、撹拌、乳化、加熱等の操作を行えばよい。
特に、本発明のセルロース複合体は、貯蔵弾性率(G’)が高く、少量の添加でも、低粘度で懸濁安定性に優れる。このため、特に、コーヒー、ココア、紅茶抽出物等の成分が高濃度配合されたリッチテイスト飲料の懸濁安定剤として好適である。
<セルロース複合体の添加方法>
飲料に、本発明のセルロース複合体を添加する方法としては、次の方法が挙げられる。主原料或いは着色料、香料、酸味料、増粘剤等の成分と同時に、本発明のセルロース複合体を水に分散させることにより添加できる。
また、セルロース複合体の乾燥粉末を、水系媒体に分散する場合には、セルロース複合体を一旦、水に分散した後、目的とする食品形態に添加する方が、セルロース複合体の懸濁安定性が向上するため好ましい。セルロース複合体が乾燥粉末の場合、水への分散方法としては、食品等の製造工程で通常使用される各種の分散機・乳化機・磨砕機等の混練機を使用して分散することができる。混練機の具体例としては、プロペラ攪拌機、高速ミキサー、ホモミキサー、カッター等の各種ミキサー;ボールミル、コロイドミル、ビーズミル、ライカイ機等のミル類;高圧ホモジナイザー、ナノマイザー等の高圧ホモジナイザーに代表される分散機・乳化機;プラネタリーミキサー、ニーダー、エクルトルーダー、タービュライザー等に代表される混練機等が使用できる。混練機は、単独で使用してもよく、2種以上の混練機を組み合わせて使用してもよい。加温しながら行ったほうが、セルロース複合体の水系媒体への分散は容易である。
<飲料への添加量>
飲料に対するセルロース複合体の添加量としては、特に制限はないが、例えば、コーヒー、ココア、牛乳等の飲料において、0.01質量%以上が好ましい。セルロース複合体の添加量を0.01質量%以上とすることで、分散、懸濁安定性が増し、乳化安定、離水防止の効果が優れる。該添加量は、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。セルロース複合体の添加量を5質量%以下とすることで、凝集や分離を引き起こすこともなく、また、飲料の飲みやすさ(のど越し、舌のざらつき)の点からも5質量%以下が好ましい。
<水不溶性成分>
本発明のセルロース複合体は、特に、水不溶性成分を含む中性の飲料に好適である。水不溶性成分とは、水に溶けない成分のことで、本発明においては、10mmの目開きの篩を通過するものをいう。より好適には、5mmの篩いを通過するものであり、さらに好適には2mmの篩いを通過するものである。水不溶性成分は、中性において不安定となるが、本発明のセルロース複合体を添加することで、優れた懸濁安定性が得られる。
水不溶性成分としては、密度が1.0g/mL以上のものが好ましい。密度が高いことで、炭水化物、ミネラル等の栄養素が豊富である。この密度は、イオン交換水中に分散させ、遠心沈降(120,00G×60分間、ここでGは重力加速度)処理した後に、全分散液の体積増加と、質量増加の比から求められる(質量増加/体積増加)。密度が高いほど、栄養素を摂取しやすいため好ましく、1.1g/mL以上がより好ましく、1.2g/mL以上がさらに好ましく、1.5g/mL以上が特に好ましい。該密度の上限は、咀嚼しやすさの点で、3g/mL以下が好ましい。
水不溶性成分としては、ココア粉、穀物粉、食物・飲料中のタンパクや、果実くず、乳酸菌飲料等に含有される乳酸菌、野菜果汁飲料中のパルプ分等、ミルクカルシウム、炭酸カルシウム、マグネシウム、亜鉛、又はその塩、ベータグルカン、プロテイン(大豆タンパク、ミルクプロテイン、コラーゲン)、ウコン、レイシ等の水より比重が大きい機能性食品素材等、コエンザイムQ10等のユビデカレノン化合物、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、又はそのエステル等のオメガ3化合物、セラミド化合物等の水より比重が軽い機能性食品素材等が挙げられる。また、本発明で使用する水不溶性成分としては、特に、穀物を配合することが好ましい。
上記した機能性食品素材は、飲料の一日摂取量と、素材の効果効能にもよるが、飲料に対して、0.01質量%以上添加することが、好ましい。より好ましくは、0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。
<飲料の粘度>
本発明の飲料の粘度は、25℃におけるB型粘度計による粘度が3〜700mPa・sであるのが好ましい。この範囲内であれば、成分の凝集・沈殿を抑制し、飲みやすい中性飲料が調製できる。かかる観点より、10〜400mPa・sがより好ましく、20〜200mPa・sがさらに好ましい。
<飲料の粘弾性>
本発明の飲料は、水系媒体にセルロース複合体と水不溶性成分とを含み、その粘弾性において、損失正接tanδ(損失弾性率G’’/貯蔵弾性率G’)が1.5以上であることが好ましい。この損失正接が高いほど、該飲料を飲用した際に、コク等の風味が良好になるため、好ましい。また、水不溶性成分の密度は、好ましくは1.0g/mL以上である。
ここでいう損失正接tanδは、飲料の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置により測定される貯蔵弾性率G’と、損失弾性率G’’から、以下の式で、算出される。
Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の範囲で掃引、飲料中のセルロース複合体の微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込み、5分間静置した後に、Dynamic Strainモードで測定を開始する。
式:損失正接tanδ=損失弾性率G’’/貯蔵弾性率G’。
本発明の飲料の損失正接tanδは、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み200%の貯蔵弾性率、損失弾性率の値から得られる。上記飲料の損失正接tanδは、1.6以上が好ましく、1.7以上がより好ましく、さらに好ましくは1.8以上であり、よりさらに好ましくは1.9以上であり、最も好ましくは2以上である。
なお、本発明において、水系媒体とは、60質量%〜100質量%の水と0質量%〜40重量%の水溶性有機溶媒とからなる媒体を意味する。より好ましくは、70質量%〜100質量%の水と0質量%〜30重量%、さらに好ましくは、80質量%〜100質量%の水と0質量%〜20重量%の水溶性有機溶媒とからなり、特に好ましくは、90質量%〜100質量%の水と0質量%〜10重量%の水溶性有機溶媒とからなる。水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ポリエチレングリコール等が挙げられ、エタノール等の経口摂取可能なアルコール類が好適に使用でき、ポリエチレングリコール等の他の有効成分の吸収性を改善するものも好適に使用できる。
<高濃度タンパク飲料>
本発明のセルロース複合体を使用することで、高濃度のタンパク飲料において、沈降、分離、凝集がなく十分な懸濁安定性を得ることが可能となる。本発明の飲料におけるタンパク質は、3質量%以上配合することが必要である。タンパク質を3質量%配合することで、500mLの飲料を1日、1本摂取した場合に、そこに含まれるタンパク質は15gとなる。これは、成人男女の1日必要摂取量の13〜20gが摂取できることを意味する。懸濁安定性が高く、均一な濃度を呈することで、1本を分割して摂取する際にも、タンパク質の濃度むらが小さくなり、適量を摂取できる。
飲料のタンパク質濃度は、高いほど好ましく、具体的には、4質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。該タンパク質濃度の上限は、特に制限されるものではないが、低粘度で飲用しやすい粘度を保つには、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
<タンパク質>
本発明でいうタンパク質とは、20種類存在するL−アミノ酸が鎖状に多数連結(重合)してできた高分子化合物であり、生物の重要な構成成分のひとつである。構成するアミノ酸の数や種類、結合の順序等によって種類が異なり、分子量約4,000前後のものから、数千万から億単位になるものを含む。連結したアミノ酸の個数が少ない場合にはペプチドと言い、これが直線状に連なったポリペプチド(分子量1,000〜2,000)も、本願でいうタンパク質に含まれる。
本願では、肉や魚など動物から摂ることができるタンパク質のことを動物性タンパク質という。工業的に入手可能なものとして「ホエイ」、「カゼイン」,4、「卵白」が、動物性タンパク質に分類される。また、植物に含まれるタンパク質のことを植物性タンパク質という。工業的に入手可能なものとして「大豆たんぱく」、「小麦たんぱく」が植物性タンパク質に分類される。
本願では、動物性と植物性のタンパク質をバランスよく配合することが好ましい。それにより栄養価が優れることに加え、食感、コク味が優れたものを得ることが可能となる。その比率は、タンパク質総量に占める質量比として、動物性/植物性=10/90〜90/10が好ましく、20/80〜20/80がより好ましく、30/70〜70/30がさらに好ましく、40/60〜60/40が特に好ましく、50/50が最も好ましい。
本発明を下記の実施例により説明する。ただし、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
<セルロースの平均重合度>
セルロースの平均重合度は、「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定された。
<CMC−Naの粘度>
(1)CMC−Naの粉末を、2質量%として、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散し、水溶液を調製した。
(2)得られた水溶液ついて、分散3時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして60秒間静置後に、30秒間回転させて測定した。但し、ローターは、粘度によって適宜変更した。
<セルロース複合体の水分散体の粘度>
セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%濃度の純水分散体を調製した。この純水分散体を、分散3時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして、30秒間静置後に、30秒間回転させてその粘度を測定した。但し、ローターは、粘度によって適宜変更した。使用したローターは以下の通りである。すなわち、1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s以上:No3)で測定した。
<セルロース複合体の貯蔵弾性率の測定法>
(1)セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%濃度の純水分散体を調製した。得られた水分散体を3日間室温で静置した。
(2)この水分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型)、ジオメトリー:Double Wall Couette型、ひずみを1→794%の範囲で掃引)により測定した。本発明において、貯蔵弾性率(G’)は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み20%の値を用いた。
<セルロース複合体のコロイド状セルロース複合体含有量>
(1)セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散した。
(2)この分散液を、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39,200m/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116,000m/sで45分間遠心処理する。)した。
(3)遠心後の上澄みは、ガラス製秤量ビンに導入し、60℃で15時間、その後、105℃で2時間乾燥し、デシケータ内で恒量した後、重量を測定した。また、別途、未遠心の水分散体も同様に乾燥し、重量を測定した。それらの結果から、上澄みに残存するセルロース固形分の質量百分率を以下の式から求めた。
コロイド状セルロース複合体含有量の計算式:(上澄み50gの固形分)/(未遠心50g中の固形分)×100
<コロイド状セルロース複合体の動的光散乱法によるメジアン径>
(1)セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散し、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39,200m/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116,000m/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みを採取した。
(2)この上澄み液を、50mL容量のPP製サンプル管に入れて、超音波洗浄器(アズワン製 超音波洗浄器 商品名AUC−1L型)で10分間、超音波処理した。
(3)その後、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子(株)製 商品名「ELSZ−2」(バッチセル))により粒度分布(粒径値に対する散乱強度の度数分布)を測定した。ここでいうメジアン径とは、この度数分布における散乱強度の積算50%に対応する粒径値(μm)のことである。
<コロイド状セルロース複合体のレーザー回折/散乱法によるメジアン径(セルロース複合体のセルロース芯材の粒子径)>
(1)セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39,200m/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116,000m/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みを採取した。
(2)この上澄み液を、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分間、屈折率1.20)により測定し、体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)を求めた。
<粗大粒子のレーザー回折/散乱法によるメジアン径>
(1)セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散した。
(2)分散液を、そのまま、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分間、屈折率1.20)により測定し、体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)として求めた。
<セルロースの粒子形状(L/D)>
セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1質量%に純水で希釈し、スポイトを使用し、マイカ上に1滴キャストした。エアダスターにて、余剰の水分を吹き飛ばし、風乾し、サンプルを調製した。原子間力顕微鏡(装置Digital Instruments社製 Nano ScopeIV MM、スキャナーEV、測定モードTapping、プローブNCH型シリコン単結晶プローブ)で計測された画像を基に、長径(L)が2μm以下の粒子の形状から、長径(L)と短径(D)のを求め、その比(L/D)がセルロース粒子の形状であり、100〜150個の粒子の平均値として算出した。
(製造例1)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した。得られたセルロースの平均重合度は220であった。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、A成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度620mPa・s、置換度0.7〜0.8)、B成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度25mPa・s、置換度0.7〜0.8)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、セルロース(以下MCC)/CMC−Na(A成分+B成分)の質量比が90/10(CMC−Naの構成:A成分/B成分=50/50)となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Aを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、390Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜40℃であった。
得られたセルロース複合体Aの貯蔵弾性率(G’)は、5.5Paであった。また、セルロース複合体Aの粒子L/Dは1.6、コロイド状セルロース複合体含有量は、78質量%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は2.5μmであり、レーザー回折/散乱法メジアン径は、0.13μmであり、粗大粒子のメジアン径は、6.5μmであった。また、セルロース複合体Aの水分散体の粘度は、383mPa・sであった。
(実施例、比較例:高濃度タンパク飲料)
上記のセルロース複合体Aを使用(比較例は、セルロース複合体を無添加)し、以下の操作により飲料を作製し、評価を行った。乳たんぱく濃縮物を128g、低エルカ酸菜種油を96g、グリセロールを96g、コーン由来マルトデキストリンを64g、果糖を64g、アルカリ処理ココアを56g、大豆たんぱくを40g、コーン油を32g、フラクトオリゴ糖を32g、クエン酸カリウムを21.6g、リン酸マグネシウムを5.76g、実施例1のセルロース複合体Aを5.6g、塩化ナトリウムを5.6g、塩化コリンを1.6g、ビタミンCを0.96g、モノ/ジグリセリド脂肪酸を0.80g、大豆レシチンを0.80g、CMC−Naを0.69g、カラギーナンを0.48gに、さらに80℃の温めたイオン交換水を加え4000gにした。ここで動物性タンパク質と植物性タンパク質の質量比は、76/24であった。その後、プロペラで攪拌(500rpm、10分間)し、ピストン型ホモジナイザーにて均質化処理(10MPa)行い、200mL容のガラス製耐熱ビンに充填し高濃度ミルクココアを得た。これを加熱殺菌処理(121℃、30分間)し、水道水で1時間冷却した後、容器を上下に10回軽く振盪した後、5℃の雰囲気にて1ヶ月間静置保存し、目視にて外観を観察した。評価方法は、以下の通りとした。
<懸濁安定性:飲食品の外観観察>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)において、以下の4項目に関し、基準を定め、目視により判定した。
(分離)耐熱ビン入り飲料上部の色が薄い層の体積で評価した。
◎(優):分離なし、○(良):分離10%未満、△(可):分離30%未満、×(不可):分離30%以上
(沈降)耐熱ビン入り飲料底面の堆積物の量で評価した。
◎(優):沈降なし、○(良):部分的に薄く沈降、△(可):一面に薄く沈降、×(不可):全体的に濃く沈降
(凝集)耐熱ビン入り飲料全体において、不均一な部分の量で評価した。
◎(優):均一、○(良):僅かに一部不均一、△(可):一部不均一、×(不可):全体的に不均一
(オイルリング)耐熱ビン入り飲料の上部において、ビンの淵に沿って確認されたリング状オイル固化物の量で評価した。
◎(優):なし、○(良):僅かに一部発生、△(可):不完全なリング状に発生、×(不可):完全なリング状に発生
<飲料の粘度 ※飲料以外の食品では、この評価基準は該当しない。>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)を、製造1時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして30秒間静置後に、30秒間回転させて測定した。但し、ローターは、粘度によって適宜変更した。使用するローターは以下の通りであった。1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3)で測定した。測定結果は、以下の基準で分類した。
(粘度)◎(優):1〜10、○(良):10〜20、△(可):20〜50、×(不可):50〜[mPa・s]
<食感>
食感は、以下の評価基準とした。
◎(優):のど越しが軽く、適度なボディがある。
○(良):のど越しに、やや糊状感がある。
△(可):のど越しが重く糊状感がある。
×(不可):のど越しがよいが、水くさく感じる。
<味:コク>
食感は、以下の評価基準とした。
◎(優):良好なコクがある。
○(良):コクがある。
△(可):僅かにコクがある。
×(不可):コクがない。
実施例の飲料は、分離が〇、沈降が◎、凝集が〇、オイルリングが〇、粘度が〇、食感が〇、コクが◎であったのに対し、比較例の飲料は、分離が×、沈降が×、凝集が×、オイルリングが×、粘度が〇、食感が×、コクが△であった。
本発明は、ココア、コーヒー、紅茶、牛乳等の乳飲料などにタンパク質が高濃度配合された飲料に関し、特定のセルロース複合体の添加により、懸濁安定性と、食感、風味に優れる飲料を提供できる。

Claims (3)

  1. タンパク質と、セルロース及び多糖類を含むセルロース複合体と、を含有し、
    飲料の全質量に対する前記タンパク質の含有量が3質量%以上であり、
    前記セルロース複合体に含まれるコロイド状セルロース複合体の動的光散乱法により測定されるメジアン径が0.85μm以上である、飲料。
  2. 前記セルロース複合体は、該セルロース複合体を1質量%含有するpH6〜7の水分散体の貯蔵弾性率(G’)が0.50Pa以上である、請求項1に記載の飲料。
  3. 前記タンパク質が、動物性と植物性の両者を含む、請求項1又は2に記載の飲料。
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