JP5969748B2 - 水不溶性成分を含有する液体調味料 - Google Patents

水不溶性成分を含有する液体調味料 Download PDF

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Description

本願発明は、耐酸・耐塩安定性に優れるセルロース複合体と、水不溶性成分を含有する液体調味料において、水不溶性成分の懸濁安定性(浮上抑制を含む)及び味(素材の味、風味)、流動性の向上に関するものである。
近年、消費者ニーズの多様化や、他の商品との差別化、或いは食する際の利便性を考慮して、つゆやたれ、ソースなどの液体調味料において、水不溶性成分を含有したものが多く出回るようになってきた。水不溶性成分を液体調味料中に添加することにより、手軽に栄養素、或いは食材をプラスして摂取できるという利点がある。
これまでに、液体調味料において、液体に粘度を付与して水不溶性成分を懸濁安定化させるために、増粘多糖類を添加する方法が一般的に知られている。
特許文献1には、澱粉又は寒天を沈降剤として添加することにより、混濁果汁の浮遊性分を沈降させたぽん酢醤油が開示されている。該文献によると、澱粉及び/又は寒天を添加することにより、ゆず果汁の浮遊成分を沈降させる効果が得られている。
また、増粘多糖類とセルロースを併用して添加する方法も後述のように知られている。
特許文献2には、ネイティブ型ジェランガム及びカラギナンを含有することを特徴とする分散安定剤が開示されている。該文献によると、この分散安定剤は、塩共存下やpH3〜4.5の系、加温下でも不溶性の固形分を均一に分散させている。
特許文献3には、エステル化度15%以下のペクチン、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む原料及び固形物を含むことを特徴とする固形物分散調味液組成物が開示されている。該文献によると、ごまや大根おろしを含有する調味液において、これら固形物を均一に分散させている。
特開2005−52138号公報 特開2004−357654号公報 特開2007−6730号公報
しかし、特許文献1の調味料は、浮遊成分は容器底面に沈降しただけで、液体中に均一に懸濁安定させているわけではない。また、食事のため容器から出す際、混濁果汁は、何度か容器を反転させて再分散させようとしても、再分散しにくいため、容器の場所や残り量によって味が均一にならない問題があった。
特許文献2や3では、たれやソースなどの液体調味料中に、水不溶性成分等の固形物を懸濁安定させるために、従来のように増粘多糖類を添加する方法では、水不溶性成分の浮上や沈降を抑制するためには高い添加量が必要であり、そうなると液体調味料の粘度は高くなってしまうため、容器から出す際の流動性が悪くなってしまい、どろどろと不均一に液体が出るため、出しにくいという問題があった。或いは、粘度が高くなると、水溶性の増粘多糖類は食材本来の味や風味をマスキングしてしまうため、味を損ねてしまう問題があった。
したがって、本願発明のように、耐酸・耐塩安定性に優れるセルロース複合体を、水不溶性成分を含有する液体調味料に含有させることにより、水不溶性成分の懸濁安定性(浮上抑制を含む)及び味(素材の味、風味)、流動性を向上させられるものは知られていなかった。
本願発明では、特定のセルロース複合体と、水不溶性成分を含有する液体調味料に関するものであり、従来なしえなかった、水不溶性成分の懸濁安定性(浮上抑制を含む)及び味覚(素材の味、風味)の向上、流動性を向上させた、液体調味料を提供することを課題とする。
ここで、本願明細書における水不溶性成分の懸濁安定性、流動性の定義について説明する。
「懸濁安定」とは、水系媒体中にセルロース以外の成分、たとえば、果実や野菜の成分、ごま、カルシウムや機能性食品素材等を含有するときに、セルロース複合体の添加効果により、それらの成分が懸濁安定されることによって、均一な外観を呈することを意味する。本願発明の液体調味料においては、セルロース複合体自身及び、水不溶性成分、その他液体中の構成成分に関して、分離、沈降、浮遊、凝集等の発生がなく、均一な外観を呈することを意味する。
「流動性」とは、容器に入った液体調味料等の液体を食材等にかけるとき、容器から流しだす、或いはスプーンやお玉などを用いてかける際の流しやすさ、作業のしやすさを意味する。具体的には、流動性が悪いと、ぼたぼたと不均一に出るなど、容器から出しにくく、流れにくい現象が見られる。また、飲料のように流動性が極端によすぎると、予定以上に液体が勢いよく出すぎたり、液体を出すのをやめてもまだ液がたらたらと出てしまうことを意味する。本願発明の液体調味料は、セルロース複合体が高いチキソトロピー性を有することにより、静置状態はセルロース複合体が形成するネットワーク構造により、見かけの静置粘度は高く、安定状態を保持している液体が、食材にかけようとする際に与えられる外部応力によってネットワーク構造が一旦解けて、低粘度となり、優れた流動性を有する。
本願発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定のセルロース複合体を、水不溶性成分を含有する液体調味料に添加することにより、懸濁安定性、水不溶性成分の懸濁安定性(浮上抑制を含む)及び味(素材の味、風味)の向上、流動性に優れることを見出した。
本願発明は以下のとおりである。
(1)セルロース及び親水性ガムを含むセルロース複合体であって、該セルロース複合体を1質量%含むpH4の水分散体において、貯蔵弾性率が0.06Pa以上である上記セルロース複合体と、比重が1g/cm以下の水不溶性成分とを含有する液体調味料。
(2)前記水不溶性成分の体積平均粒子径が0.1μm以上、10nm以下である、(1)に記載の液体調味料。
(3)前記セルロース複合体が、セルロースを50〜99質量%及び親水性ガムを1〜50質量%含む、(1)又は(2)に記載の液体調味料。
(4)前記親水性ガムが、サイリウムシードガムである(1)〜(3)のいずれかに記載の液体調味料。
(5)セルロース複合体が、さらに前記親水性ガムとは異なる水溶性ガムを含み、該親水性ガムと該水溶性ガムとの質量比が30/70〜99/1である、(1)〜(4)のいずれか一つに記載の液体調味料。
(6)前記水溶性ガムが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、LMペクチン、アルギン酸ナトリウム、及びジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、(5)に記載の液体調味料。
(7)塩濃度が0.01mol/L以上である(1)〜(6)のいずれか一つに記載の液体調味料。
本願発明は、水不溶性成分を含有する液体調味料に、耐酸・耐塩安定性に優れたセルロース複合体を添加することにより、水不溶性成分の懸濁安定性(浮上抑制を含む)及び味覚(素材の味、風味)の向上、流動性に優れた液体調味料を提供することができる。
セルロース複合体A(実施例1を参照)の1質量%における水分散体について、粘弾性の測定により得られた歪み−応力曲線である。 セルロース複合体J(比較例3を参照)の1質量%における水分散体について、粘弾性の測定により得られた歪み−応力曲線である。 セルロース複合体A(実施例1を参照)の水分散体(イオン交換水、中性)について、原子間力顕微鏡(AFM)で観察された像である。 セルロース複合体A(実施例1を参照)の水分散体(pH4)について、原子間力顕微鏡(AFM)で観察された像である。
以下、本願発明を実施するための形態について、具体的に説明する。以下の本実施形態は、本願発明を説明するための例示であり、本願発明は、以下の内容に限定されるものではない。
本願発明で用いるセルロース複合体は、セルロース及び親水性ガムを含むセルロース複合体であって、該セルロース複合体を1質量%含むpH4の水分散体において、貯蔵弾性率が0.06Pa以上であるものをいう。本願発明における複合体とは、セルロースの表面が、水素結合等の化学結合により、親水性ガムで被覆された形態を意味する。
本発明の液体調味料は、上記セルロース複合体と、特定の比重の水不溶成分を含有することを特徴とする。
<セルロース>
本願発明におけるセルロースとは、セルロースを含有する天然由来の水溶性の繊維質物質である。原料としては、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。原料として、これらのうち1種の天然系セルロースを使用してもよいし、2種以上を混合したものを使用することも可能である。
本願発明における酸性の液体調味料に用いる結晶セルロース(MCC)の平均重合度は、500以下のセルロースが好ましい。平均重合度は、「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)のセルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定できる。平均重合度が500以下ならば、親水性ガムとの複合化の工程において、セルロース系物質が攪拌、粉砕、摩砕等の物理処理を受けやすくなり、複合化が促進されやすくなるため好ましい。より好ましくは、平均重合度は300以下、さらに好ましくは、平均重合度は250以下である。平均重合度は、小さいほど複合化の制御が容易になるため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては10以上である。
平均重合度を制御する方法としては、加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース繊維質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースや、リグニン等の不純物も、取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、混練工程等で、セルロースと親水性ガムに機械的せん断力を与える工程において、セルロースが機械処理を受けやすくなり、セルロースが微細化されやすくなる。その結果、セルロースの表面積が高くなり、親水性ガムとの複合化の制御が容易になる。
加水分解の方法は、特に制限されないが、酸加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。酸加水分解の方法では、セルロース系物質を水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌させながら、加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調製されるものである。例えば、2質量%以下の鉱酸水溶液を使用し、100℃以上、加圧下で、10分以上セルロースを処理するという条件が挙げられる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース繊維内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。
本願発明におけるセルロース複合体中のセルロースは、微細な粒子状の形状であることが好ましい。セルロースの粒子形状は、本願発明におけるセルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%に純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾されたものを、高分解能走査型顕微鏡(SEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測された際に得られる粒子像の長径(L)と短径(D)とした場合の比(L/D)で表され、100個〜150個の粒子の平均値として算出される。
L/Dは、20未満が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下が特に好ましく、5未満が格別に好ましく、4以下が最も好ましい。
<親水性ガム>
親水性ガムとは、化学構造の一部に糖又は多糖を含む親水性高分子物質のことである。ここで親水性とは、常温の純水に、一部が溶解する特性を有することである。定量的に親水性を定義すると、この新水性ガム0.05gを、50mLの純水に、攪拌下(スターラーチップ)で、平衡まで溶解させ、目開き1μmのメンブレンフィルターで処理した際に、通過する成分が、親水性ガム中に1質量%以上含まれることである。親水性ガムとして、多糖類を用いる場合には、以下のものが好適である。
例えば、サイリウムシードガム(PSG)、ローカストビーンガム、グアガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、キトサン、アラビアガム、ガッティガム、トラガントガム、寒天、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、HMペクチン、LMペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、キサンタンガム、カードラン、プルラン、デキストラン、ジェランガム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。これらの親水性ガムは1種類でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
<陰イオン性多糖類>
上記の親水性ガムの中でも、水中で陽イオンが遊離し、それ自身が陰イオンとなるものを陰イオン性多糖類と呼ぶ。親水性ガムとして陰イオン性多糖類を用いることで、セルロースとの複合化がより促進され、セルロース複合体の耐酸安定性、耐塩安定性が増すため好ましい。
陰イオン性多糖類としては、以下のものが好適である。
例えば、サイリウムシードガム(PSG)、カラヤガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、HMペクチン、LMペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、キサンタンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体が挙げられる。これらの陰イオン性多糖類は2種以上を組み合わせてもよい。
<分岐状の陰イオン性多糖類>
上記の陰イオン性多糖類の中でも、その化学構造中に、分岐構造を有するものを分岐状の陰イオン性多糖類と呼ぶ。本願発明におけるセルロース複合体における親水性ガムとして、分岐状の陰イオン性多糖類を用いることで、セルロース複合体の耐酸性が、より高まるため好ましい。ここでいう分岐構造とは、多糖類に含まれる六単糖中の三つの水酸基(C6位は一級アルコール)のうち、一つ以上が化学結合を介して、メチロールより高分子量の置換基に置換されている構造のことである。置換基は、エーテル結合を介した糖又は多糖構造であることが好ましい。分岐状の陰イオン性多糖類としては、以下のものが好適である。
例えば、サイリウムシードガム(PSG)、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガムが挙げられる。これらの陰イオン性多糖類は2種以上を組み合わせてもよい。
これらの分岐状の陰イオン性多糖類の中でも、特にサイリウムシードガム(PSG)が、セルロースと複合化した際に、セルロース複合体が持つ懸濁安定が向上するため好ましい。
<サイリウムシードガム>
サイリウムシードガム(PSG)とは、オオバコ科の植物(Plantago ovata Forskal)の種子の外皮から得られる多糖類(ガム類)のことである。具体的には、イサゴール、プランタゴ・オバタ種皮から得られる多糖類が挙げられる。
本願発明のサイリウムシードガム(PSG)は、上記のオオバコ科の植物(Plantago ovata Forskal)の種子の外皮から得られる多糖類(ガム類)を含むものであれば、きょう雑物を含んでいるものも該当する。例えば、当該多糖類を水等の溶媒で抽出されたガムも、外皮を粉砕されたハスクも、それらを組み合わせ処理されたものも、いずれのものも含まれる。また、それらは、粉末状、塊状、ケーク状、液状のいずれの状態であってもよい。
PSGの化学構造は、非セルロース多糖類において、主鎖がキシランとして高度に枝分かれしており、側鎖がアラビノース、キシロース、ガラクツロン酸、ラムノースからなる構造である。側鎖における、その糖構成比は、D−キシロース約60質量%、L−アラビノース約20質量%、L−ラムノース約10質量%、D−ガラクツロン酸約10質量%である。これらの質量比は、PSGの原料、及びPSGの製造工程により5質量%前後するものである。
また、上述の構造を有していれば、粘度を調製するために、PSGを、酸、キシラナーゼ様の酵素等により加水分解してもよい。
PSGは、1質量%の純水溶液で測定した粘度が200mPa・s以下であることが好ましい。ここで、粘度とは、純水中に1質量%に調製した水溶液を200mlビーカーに充填し、25℃に温調した後、粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、ローターを60rpmで30秒間回転させた直後の測定値を指す(但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用するロータは以下の通りである。1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3)。粘度が低いほど、セルロースとの複合化が促進されやすくなるため好ましい。また、飲料に使用した際、すっきりとしたのど越しを発現しやすくなるため好ましい。より好ましくは100mPa・s以下であり、さらに好ましくは50mPa・s以下である。その下限値は、特に設定されるものではないが、工業原料として得られる範囲としては、5mPa・s以上が好ましい。
<貯蔵弾性率>
次に、本願発明における酸性の液体調味料に添加するセルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)について説明する。
本願発明におけるセルロース複合体とは、セルロース複合体を1質量%含むpH4の水分散体の貯蔵弾性率(G’)が0.06Pa以上のものをいう。pHは、pH計(HORIBA製、pHメーターD−50)を用いて25〜30℃で測定し、表示される値が3.6〜4.4である。貯蔵弾性率とは、水分散体のレオロジー的な弾性を表現するものであり、セルロースと親水性ガムとの複合化、又はセルロースと親水性ガム及びその他水溶性ガムとの複合化の程度を表すものである。貯蔵弾性率が高いほど、セルロースと親水性ガムとの複合化、又はセルロースと親水性ガム及びその他水溶性ガムとの複合化が促進され、セルロース複合体の水分散体におけるネットワーク構造が、剛直であることを意味する。ネットワーク構造が剛直なほど、セルロース複合体は懸濁安定性に優れる。
本願発明におけるセルロースの貯蔵弾性率とは、セルロース複合体をpH4の水系媒体中に分散させた水分散体の動的粘弾性測定により得られる値とした。水分散体に歪みを与えた際の、セルロース複合体ネットワーク構造内部に蓄えられた応力を保持する弾性成分が貯蔵弾性率として表れる。
貯蔵弾性率の測定方法としては、まず、セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.8質量%の純水分散体を調製する。その水分散体と、0.2MでpH4のMcllvaine緩衝液(0.2Mのリン酸水素二ナトリウムと、0.1Mのクエン酸の水溶液)とを混合して、セルロース複合体の濃度を1質量%(全量300g、イオン濃度0.06mol/L、pH4)に調製した後、得られた水分散体を3日間室温で静置する。この水分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の範囲で掃引、水分散体は微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込み、5分間静置した後に、Dynamic Strainモードで測定を開始する)により測定する。本願発明における貯蔵弾性率は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み20%の値のことである。この貯蔵弾性率の値が大きいほど、セルロース複合体が形成する水分散体の構造はより弾性的であり、セルロースと親水性ガム、及びその他水溶性ガムが高度に複合化していることを表している。
セルロース複合体の貯蔵弾性率は、0.15以上が好ましく、0.2Pa以上がより好ましく、さらに好ましくは0.5Pa以上である。
上限は、特に設定されるものではないが、飲料とした場合の飲みやすさを勘案すると、6.0Pa以下である。6.0Pa以下であると、懸濁安定性が充分に得られるセルロース複合体の添加量(飲料により異なるが、例えば、果汁飲料では0.1〜1.0質量%)において、飲み口が軽いため好ましい。また、食感を調節するために、セルロース複合体の添加量が低い場合(例えば0.5質量%以下)でも、セルロース以外の水不溶成分と凝集等を生じにくい。
<セルロース複合体の構造>
本願発明におけるセルロース複合体は、セルロース表面から放射状に伸びた親水性ガムの広がりが、酸性下でも充分に大きいという特徴がある。セルロース表面から伸びた親水性ガムの広がりが大きいほど、隣接するセルロース複合体の親水性ガムと絡み合いやすくなる。その結果、セルロース複合体同士の絡み合いが密に生じることで、ネットワーク構造が剛直になり、貯蔵弾性率(G’)が向上し、懸濁安定性が高くなる。この親水性ガムの広がりは、以下の方法で測定することができる。
まず、セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間、全量300g)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%の純水分散体を調製する。その水分散体と、0.2MでpH3.5のMcllvaine緩衝液(0.2Mのリン酸水素二ナトリウムと、0.1Mのクエン酸の水溶液)とを混合して、セルロース複合体の濃度を0.5質量%(イオン濃度0.06mol/L、pH4.0)に調製した後、純水でセルロース複合体の濃度を0.1質量%に希釈する。得られた水分散体を3日間以上、室温で静置する。水分散体の微細構造を壊さないよう、スポイトを使用して、5μlをゆっくりと吸出し、1cm×1cmの壁開されたマイカ上に、ゆっくり滴下し、エアダスターで余分な水分を吹き飛ばし、マイカ上に定着したサンプルを、AFM(島津製作所製 走査型プローブ顕微鏡SPM−9700、位相モード、オリンパス社製プローブOMCL−AC240TSを使用)にて、観察する。この観察像において、セルロース粒子は高さ2nm以上の棒状粒子として観察され、そのセルロース粒子から周囲に放射状に伸びる高さ2nm未満の親水性ガムが観察できる。
親水性ガムとして、分岐状の陰イオン性多糖類を用いると、この広がりがより大きくなるため好ましい。また、親水性ガムとして、サイリウムシードガムを用いると、この広がりが、さらに大きくなるため、好ましい。
<セルロースと親水性ガムの配合比率>
本願発明におけるセルロース複合体は、好ましくは、セルロースを50〜99質量%、及び親水性ガムを1〜50質量%含む。
複合化によって、親水性ガムがセルロース粒子の表面を水素結合等の化学結合により被覆することで、酸性又は高塩濃度の水溶液に分散した際に、セルロース複合体が持つ懸濁安定性が向上する。
また、セルロースと親水性ガムを上記の組成とすることで、複合化が促進され、酸性又は高塩濃度の水分散体における懸濁安定性が向上して、機能性食品素材等の水不溶性成分の沈降防止効果を達成することができる。
<水溶性ガム>
本願発明におけるセルロース複合体は、さらに親水性ガム以外の水溶性ガムを含むことが好ましい。水溶性ガムとしては、水膨潤性が高く、セルロースと複合化しやすいガムが好ましい。
例えば、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、キトサン、アラビアガム、寒天、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム(以下「ARG−Na」という。)、HMペクチン、LMペクチン(以下「LMP」という。)、アゾトバクター・ビネランジーガム、キサンタンガム、カードラン、プルラン、デキストラン、ジェランガム(以下「GLG」という。)、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下「CMC−Na」という。)、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。これらの水溶性ガムは2種以上を組み合わせてもよい。
上述の水溶性ガムの中でも、CMC−Na、LMP、ARG−Na、GLGから選ばれる1種以上が好ましい。これらのガムは、セルロース及び親水性ガムと複合化しやすいため好ましい。
「CMC−Na」とは、セルロースの水酸基がモノクロロ酢酸で置換されたもので、D−グルコースがβ−1,4結合した直鎖状の化学構造を持つものである。CMC−Naは、パルプ(セルロース)を水酸化ナトリウム溶液で溶かし、モノクロロ酸(或いはそのナトリウム塩)でエーテル化して得られる。
特に、置換度と粘度が特定範囲に調製されたCMC−Naを用いることが、複合化の観点から好ましい。置換度とは、セルロース中の水酸基にカルボキシメチル基がエーテル結合した度合いのことであり、0.6〜2.0が好ましい。置換度が前記の範囲であれば、CMC−Naの分散性が十分であること、及び製造が容易であることから好ましい。より好ましくは、置換度は0.6〜1.3である。またCMC−Naの粘度は、1質量%の純水溶液において、500mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以下がより好ましく、50mPa・s以下がさらに好ましい。特に好ましくは、20mPa・s以下である。CMC−Naの粘度が低いほど、セルロース、親水性ガムとの複合化が促進されやすく、下限は特に設定されるものではないが、好ましい範囲としては1mPa・s以上である。
「LMP」とは、ガラクツロン酸を主体とする酸性多糖類(ガム類)と数種の中性糖が存在する構造をもつものをいう。この化学構造を有するものは、原料・製造方法に関係なく本願発明におけるLMPに該当する。ペクチンは、植物組織中でセルロースなどと結合し、水に不溶な成分として存在するため、高温酸性下で、他の可溶性成分とともにプロトペクチンと分離して得られる。LMPは、上述のガラクツロン酸において、メチルエステルの形と酸の2つの形で存在しているが、エステル化度(エステルの形で存在するガラクツロン酸の割合)が50%未満のものが、セルロース、親水性ガムとの複合化の観点から好ましい。
「ARG−Na」とは、α−L−グルクロン酸、β−D−マンヌロン酸が、ピラノース型で1,4−グリコシド結合した構造をもつものであり、この化学構造を有するものは、原料・製造方法に関わらず、本願発明におけるARG−Naに該当する。ARG−Naは、主にワカメ、コンブ、ヒジキに代表される褐藻に含まれる多糖類の一種である。
工業的には、アルギン酸は、アルギン酸含有量が多い、レッソニア属、マクロシスティス属、カジメ属、ダービリア属、アスコフィラム属等の原藻から得られる。前記原藻を、粉砕したものを酸処理して抽出し、これをろ過して得た沈殿物を酸処理することによりアルギン酸を得る。このアルギン酸を炭酸ナトリウム等でナトリウム化させ、乾燥、粉砕させることにより、粉体状のアルギン酸ナトリウムが得られる。
ARG−Na水溶液は、中性で、滑らかな粘性を示す。ARG−Naの粘度は、1質量%の純水溶液において300mPa・s以下が好ましい。より好ましくは、粘度は100mPa・s以下である。さらに好ましくは、粘度は30mPa・s以下である。この粘度が低いほど、セルロース、親水性ガムとの複合化が進されやすいため好ましい。
「GLG」とは、Sphingomon elodeaという微生物が菌体外に産出する微生物多糖類を脱アセチル化したものである。GLGは、直鎖状のヘテロ多糖類であり、グルコース、グルクロン酸、グルコースとL−ラムノースの4つの糖の繰り返し単位で構成されており、グルクロン酸由来のカルボキシル基を有している。GLGには、脱アシル型とネイティブ型の2種があり、その違いは、1−3結合したグルコースに存在するアセチル基とグリセリル基の有無である。脱アシル型とは、前記アセチル基とグリセリル基を除去したものである。ネイティブ型とは、グルコース残基にグリセリル基1残基と、アセチル基が平均1/2残基結合したものである。本願発明においては、脱アシル型とネイティブ型のいずれも用いることが可能であるが、脱アシル型のほうが、上述の構造を持つ故、セルロース、親水性ガムとの複合化が促進されやすく好ましい。
上述のなかでも、CMC−Na、LMPを用いることがより好ましい。複合化の観点で、最も好ましいのは、CMC−Naである。
<親水性ガムと水溶性ガムの質量比>
親水性ガムと上記の水溶性ガムとの質量比は、30/70〜99/1であることが好ましい。本願発明におけるセルロース複合体において、親水性ガムと上記の水溶性ガムが前記の範囲にあることで、弱アルカリ性(pH8)から酸性(pH3)までの広いpH領域の本願発明におけるセルロース複合体を含む水分散体において、本願発明におけるセルロース複合体は懸濁安定性を示す。また、本願発明におけるセルロース複合体に水溶性ガムを添加することで、特に、該水分散体の酸性領域(pH5以下)での本願発明におけるセルロース複合体の懸濁安定性がより優れるものである。これら親水性ガムと水溶性ガムとの配合量比として、より好ましくは、40/60〜90/10であり、さらに好ましくは40/60〜80/20である。
<セルロース複合体の体積平均粒子径>
セルロース複合体の体積平均粒子径は、20μm以下であることが好ましい。ここで、該体積平均粒子径は、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径のことである。
また、セルロース複合体は、体積平均粒子径が0.01〜200μmのセルロース複合体微粒子からなることが好ましい。乾燥粉末として製造されたものは、これらの微粒子が凝集し、見かけの重量平均粒子径が10〜250μmの二次凝集体を形成している。この二次凝集体は、水中で攪拌すると崩壊し、上述のセルロース複合体微粒子に分散する。この見かけの重量平均粒子径は、ロータップ式篩振盪機(平工作所製シーブシェーカーA型)、JIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、試料10gを10分間篩分することにより得られた粒度分布における累積重量50%粒径のことである。尚、この乾燥後のセルロース複合体の二次凝集体の重量平均粒子径と、レーザー回折法による分散液中のセルロース複合体の体積平均粒子径は測定原理が全く異なるため、それぞれで得られた値は必ずしも相関するものではない。
セルロース複合体の体積平均粒子径が20μm以下であると、セルロース複合体の懸濁安定性がより容易に向上する。また、セルロース複合体を含有する食品を食した際に、ザラツキのない、なめらかな舌触りのものを提供することができる。より好ましくは、体積平均粒子径は15μm以下であり、特に好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。体積平均粒子径が小さいほど、セルロース複合体の懸濁安定性がより容易に向上するため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては0.1μm以上である。
<セルロース複合体のコロイド状成分量>
さらに、セルロース複合体は、コロイド状セルロース成分を30質量%以上含有することが好ましい。ここでいうコロイド状セルロース成分の含有量とは、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力2,000rpm(5600G※Gは重力加速度)×15分間)し、遠心後の上澄みに残存する固形分(セルロースと、親水性ガム、水溶性ガムを含む)の質量百分率のことである。コロイド状セルロース成分の大きさは10μm以下であり、より好ましくは5.0μm以下であり、特に好ましくは1.0μm以下である。ここでいう大きさは、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)のことである。コロイド状セルロース成分の含有量が30質量%以上であると、懸濁安定性がより容易に向上する。より好ましくは、40質量%以上であり、特に好ましくは、50質量%以上である。コロイド状セルロース成分含有量は、多ければ多いほど、懸濁安定性が高いため、その上限は特に制限されないが、好ましい範囲としては、90質量%以下である。
<親水性物質>
本願発明におけるセルロース複合体に、水への分散性を高める目的で、親水性ガム及び水溶性ガム以外に、さらに親水性物質を加えてもよい。親水性物質とは、冷水への溶解性が高く粘性を殆どもたらさない有機物質であり、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳糖、マルトース、ショ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン等のオリゴ糖類、ブドウ糖、果糖、ソルボース等の単糖類、マルチトール、ソルビット、エリスリトール等の糖アルコール類等が適している。これらの親水性物質は、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でも、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類が分散性の点で好ましい。
その他の成分の配合については、組成物の水中での分散及び安定性を阻害しない程度に配合することは自由である。
<セルロース複合体の製造方法>
次に、本願発明におけるセルロース複合体の製造方法を説明する。
本願発明の特定の貯蔵弾性率を満たすセルロース複合体は、混練工程においてセルロースと親水性ガムに機械的せん断力をあたえ、セルロースを微細化させるとともに、セルロース表面に親水性ガムを複合化させることによって得られる。また、親水性ガム以外の水溶性ガムや、その他の添加剤などを添加しても良い。上述の処理を経たものは、必要に応じ、乾燥される。本願発明におけるセルロース複合体には、上述の機械的せん断を経て、未乾燥のもの及びその後乾燥されたもの等、いずれの形態でもよい。
機械的せん断力を与えるには、混練機等を用いて混練する方法を適用することができる。混練機は、ニーダー、エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ライカイ機等を用いることができ、連続式でもバッチ式でもよい。混練時の温度は成り行きでもよいが、混練の際の複合化反応、摩擦等により発熱する場合にはこれを除熱しながら混練してもよい。これらの機種を単独で使用することも可能であるが、二種以上の機種を組み合わせて用いることも可能である。これらの機種は、種々の用途における粘性要求等により適宜選択すればよい。
また、混練温度は、低いほど、親水性ガムの劣化が抑制され、結果として得られるセルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)が高くなるため好ましい。混練温度は、0〜100℃が好ましく、10〜90℃がより好ましく、20〜80℃が特に好ましく、30〜70℃がさらに好ましく、40〜70℃が最も好ましい。高エネルギー下で、上記の混練温度を維持するには、ジャケット冷却、放熱等の徐熱を工夫することも自由である。
混練時の固形分は、20質量%以上とすることが好ましい。混練物の粘性が高い半固形状態で混練することで、混練物がシャバシャバな状態にならず、下記に述べる混練エネルギーが混練物に伝わりやすくなり、複合化が促進されるため好ましい。混練時の固形分は、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。上限は特に限定されないが、混練物が水分量の少ないパサパサな状態にならず、充分な混練効果と均一な混練状態が得られることを考慮して、現実的範囲は90質量%以下が好ましい。より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。また、固形分を上記範囲とするために、加水するタイミングとしては、混練工程の前に必要量を加水してもよいし、混練工程の途中で加水してもよいし、両方実施しても良い。
ここで、混練エネルギーについて説明する。混練エネルギーとは混練物の単位質量当たりの電力量(Wh/kg)で定義するものである。混練エネルギーは、50Wh/kg以上とすることが好ましい。混練エネルギーが50Wh/kg以上であれば、混練物に与える磨砕性が高く、セルロースと親水性ガム、及びその他水溶性ガム等との複合化が促進され、酸性又は高塩濃度のセルロース複合体の懸濁安定性は向上する。より好ましくは80Wh/kg以上であり、さらに好ましくは100Wh/kg以上である。
混練エネルギーは、高い方が、複合化が促進されると考えられるが、混練エネルギーをあまり高くすると、工業的に過大な設備となること、設備に過大な負荷がかかることから、混練エネルギーの上限は1000Wh/kgとするのが好ましい。
複合化の程度は、セルロースとその他の成分の水素結合の割合と考えられる。複合化が進むと、水素結合の割合が高くなり本願発明の効果が向上する。また、複合化が進むことで、セルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)が高くなる。
本願発明におけるセルロース複合体を得るにあたって、前述の混練工程より得られた混練物を乾燥する場合は、棚段式乾燥、噴霧乾燥、ベルト乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。混練物を乾燥工程に供する場合には、混練物に水を添加せず、混練工程の固形分濃度を維持して、乾燥工程に供することが好ましい。乾燥後のセルロース複合体の含水率は1〜20質量%が好ましい。含水率を20%以下とすることで、べたつき、腐敗等の問題や運搬・輸送におけるコストの問題が生じにくくなる。より好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。また、1%以上とすることで、過剰乾燥のため分散性が悪化することもない。より好ましくは1.5%以上である。
セルロース複合体を市場に流通させる場合、その形状は、粉体の方が取り扱い易いので、乾燥により得られたセルロース複合体を粉砕処理して粉体状にすることが好ましい。但し、乾燥方法として噴霧乾燥を用いた場合は、乾燥と粉末化が同時にできるため、粉砕は必要ない。乾燥したセルロース複合体を粉砕する場合、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の方法を用いることができる。粉砕する程度は、粉砕処理したものが目開き1mmの篩いを全通する程度に粉砕する。より好ましくは、目開き425μmの篩いを全通し、かつ、平均粒度(重量平均粒子径)としては10〜250μmとなるように粉砕することが好ましい。
乾燥したセルロース複合体を水中で攪拌した際、容易に分散し、セルロースが均一に分散した、なめらかな組織を持つザラツキの無い安定なコロイド分散体が形成される。特に、酸性又は高塩濃度において、セルロースが凝集や分離を起こさず、安定なコロイド分散体を形成するため、安定剤等として優れた機能を奏する。
<水不溶性成分>
水不溶性成分とは、水溶媒中に添加し、攪拌した際、溶解せずに分散、或いは浮遊、沈降する成分のことを意味する。例えば、洗いごまや煎りごま、擦りごま、皮むきごまなどのごまや、大根をはじめ、ニンジン、ニンニク、生姜、タマネギ、ナガイモ、ホウレンソウ、トマト、ネギ、シイタケ、リンゴ、ナシ、オレンジ、レモンなどの野菜や果物をすりおろしたものや、細かく刻んだもの、繊維質、乾燥粉砕したものなどを挙げることができる。そのほかにも、小豆粒やナッツ類インゲン豆やそら豆、枝豆などの豆類、或いは、ゆず、れもん、すだち、かぼす、だいだい、ライム、みかん、オレンジなどの柑橘系の果汁や、その他果物などの果汁や繊維質、コショウなどをはじめとするスパイスやハーブ、ココア、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル類や、ウコン、タンパク質(ミルクプロテイン、大豆タンパク、ホエイ、カゼインなど)、コラーゲン、コエンザイムQ10などの機能性食材、水不溶性成分であれば、食材の種類や成分としては特に限定しない。
<水不溶性成分の含有量>
水不溶性成分の含有量としては、特に制限は設けないが、好ましくは50質量%以下である。より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。水不溶性成分量がこの範囲であれば、セルロース複合体の添加量に対して、セルロース複合体が形成するネットワーク構造とのバランスがとれやすく、優れた懸濁安定性や流動性の効果を発揮しやすい。
<水不溶性成分の比重>
水不溶性成分の比重としては、1g/cm以下である。比重が水と同程度、あるいは水よりも小さいものにおいて、液体調味料中での浮上を抑制し、液体中で均一に懸濁安定させる効果を発揮する。比重の下限としては、好ましくは0.4g/cm以上、さらに好ましくは0.5g/cm以上とすることで、すぐれた懸濁安定効果を発揮する。
<水不溶性成分の大きさ>
水不溶性成分の大きさとしては、体積平均粒子径が0.1μm以上10mm以下が好ましい。体積平均粒子径が10mm以下であれば、セルロース複合体が形成するネットワークに対して水不溶性成分が大きすぎることもないのでバランスが崩れず、懸濁安定化するので水不溶性成分が沈降しない。また、体積平均粒子径が0.1μm以上であれば、セルロースが形成するネットワークに対して水不溶性成分が小さすぎることもなく、ネットワークに水不溶性成分が引っかかるのですり抜けて沈降、或いは浮上してしまうこともないため、好ましい。水不溶性成分の体積平均粒子径は、好ましくは、1μm以上1mm以下、さらに好ましくは5μm以上500μm以下である。
<液体調味料>
本願発明における液体調味料とは、液体状の調味液のことを意味する。つゆ、たれ、ソース、ぽん酢、スープなども含む。
つゆとしては、例えば、そうめん、うどん、そば、冷麦、冷やし中華、坦坦麺、つけめんなどの麺類用のめんつゆやかえしなどが挙げられる。たれとしては、例えば、焼肉やすきやき、しゃぶしゃぶ、焼き鳥、しょうが焼き、照り焼き、味噌カツ、からあげ、うなぎ、あなご、納豆など各種が挙げられる。スープとしては、例えば、味噌汁や澄まし汁、雑煮、粕汁、潮汁、豚汁、三平汁、けんちん汁、のっぺい汁、ブイヤベース、ヴィシソワーズ、チャウダー、クラムチャウダー、チキンスープ、オニオンスープ、ミネストローネ、アクアパッツァ、ガスパチョ、フォンデュ、ボルシチ、サムゲタン、カムジャタン、チゲ、コーンスープ、ポタージュ、トムヤムクン、パンプキンスープ、コンソメスープ、わかめスープに加え、シチューやスープカレーなど、料理の形態や国を限定せず、各種挙げられる。ソースとしては、例えば、トマトソースやケチャップ、チリソース、ホワイトソース、ブラウンソース、ベシャメル系、マヨネーズやサラダクリームなどの乳化ソース、バターソース、タルタルソース、ウスターソース、カスタードソース、チョコレートソース、醤油、甘酢あん、また、ぽん酢や漬物用の調味液、食酢類も含む。
特に、高い塩濃度であるそうめん、うどん、そば、冷やし中華、坦坦麺などの麺用のつゆや、焼肉、しゃぶしゃぶ、焼き鳥のたれ、或いはぽん酢、トマトソース、ケチャップなどの酸性のものにおいて、懸濁安定や流動性、味の向上などの効果を発揮しやすいため好ましい。
<セルロース複合体の添加量>
セルロース複合体の液体調味料における添加量としては、0.03質量%以上が好ましい。セルロース複合体の添加量を0.03質量%以上とすることで、水不溶性成分の懸濁安定効果や流動性、味の向上において効果を発揮する。より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。上限は、液体調味料としての好ましい粘度範囲や喉越しを考慮すると、3質量%以下であることが好ましい。
<液体調味料の粘度>
20℃におけるB形粘度計による液体調味料の粘度が、5〜500mPa・sの範囲内であることが好ましい。ここで、粘度とは、B形粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形)を用いて、ローターを液体調味料中にセットして60秒間静置した後、6rpmで30秒間回転させた後の測定値のことをいう。測定値が5〜500mPa・sの範囲内であれば、成分の凝集、分離、沈降、浮上を抑制した優れた液体調味料を調製できる。5mPa・s以上であれば、懸濁安定性が劣ることもなく、500mPa・s以下であれば、食品を摂取した際の喉越しが悪化することもない。かかる観点より、8〜400mPa・sがより好ましく、10〜300mPa・sがさらに好ましい。
<液体調味料のTI値>
TI値とは、チキソトロピーインデックスを意味し、液体調味料のチキソトロピーの指標となる数値である。TI値は、B形粘度計にて、6rpm及び60rpmで測定して得られた値の比である。すなわち、TI値=(6rpmで測定した液体調味料の粘度値)/(60rpmで測定した液体調味料の粘度値)で算出できる。TI値が大きいほど、みかけの静置粘度は高いため懸濁安定性が高く、さらに振とう粘度は低いため、液体としての流動性が高いことを意味する。したがって、本願発明の液体調味料を食材にかける際に、流動性が高く、作業性に優れるといえる。工業的にも、容器に充填する際の作業性が向上するという点において優れる。かかる観点より、TI値は3以上であることが好ましい。上限は、6以下であることが好ましい。3以上とすることで流動性が良くなり、6以下とすることで味がマスキングされて悪化することもない。
<液体調味料のpH>
本願発明の液体調味料のpHは、2〜6であることが好ましい。pHは、pH計(HORIBA製、D−50)を用いて測定することができる。本願発明におけるセルロース複合体は、酸性下にて強固なネットワーク構造を形成することにより、水不溶性成分の懸濁安定性(浮上抑制を含む)及び味(素材の味、風味)、流動性の向上において優れた効果を発揮するものである。より好ましくは、pHが3〜5の範囲である。
<液体調味料の塩濃度>
本願発明の液体調味料の塩濃度は、0.01mol/L以上であることが好ましい。ここでいう塩濃度とは、種々の加工を施された上述の形態の飲食品を、流通段階において、1日以上保存する際、又は飲食に供する際の塩濃度のことを指す。塩濃度とは、上述の飲食品中の固形分を、遠心分離及び/又はろ過で除去した後、得られた水溶液中の塩分濃度のことであり、塩分計(ATAGO製 デジタル塩分計 ES−421)を用いて測定された値(質量%)を、NaClとして換算したモル濃度(mol/L)のことである。液体調味料の塩濃度は、好ましくは0.1mol/L以上であり、さらに好ましくは0.5mol/L以上である。
本願発明を、以下の実施例により説明する。ただし、これらは本願発明の範囲を制限するものではない。
1.セルロース複合体の体積平均粒子径
(1)セルロース複合体を、1質量%濃度の水分散液とし、高せん断ホモジナイザー(日本精機(株)製、エクセルオートホモジナイザーED−7、処理条件;15,000rpmを5分間)を用いてイオン交換水に分散させた。
(2)得られた水分散液を、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、LA−910、前処理として超音波処理を1分、屈折率1.20)で粒度分布を測定した。ここで得られた体積頻度粒度分布における、積算50%の粒子径を体積平均粒子径とした。
2.セルロース複合体のコロイド状セルロース成分含有率
(1)セルロース複合体の1質量%濃度の水分散液を上記1.(1)と同様にして作成した。
(2)遠心分離した。(久保田商事(株)製、6800型遠心分離機、ロータータイプRA−400、処理条件:遠心力2,000rpm(5600G、Gは重力加速度)×15分間、仕込量:50g(遠沈管))
(3)遠心分離後の上澄み液をガラス製秤量瓶に導入し、60℃で15時間、その後105℃で2時間乾燥し、デシケーター内で恒量した後、重量を測定した。また、別途、未遠心の水分散体も同様に乾燥し、重量を測定した。それらの結果から、上澄みに残存するセルロース固形分の質量百分率を、以下の式より求めた。
セルロース成分含有率=(上澄み50gの固形分)/(未遠心50g中の固形分)×100
3.セルロース複合体の貯蔵弾性率の測定方法
(1)セルロース複合体の1.8量%濃度の水分散液を上記1.(1)と同様にして作成した。
(2)その分散液と、0.2MでpH4のMcllvaine緩衝液(0.2Mのリン酸水素二ナトリウムと0.1Mのクエン酸の水溶液)とを混合して、セルロース複合体の濃度が1.0質量%(全量300g、イオン濃度0.06mol/L、pH4)に調整した後、得られた水分散体を3日間室温で静置させた。
(3)この水分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の範囲で掃引)により測定した。得られた歪み−応力曲線において、歪み20%の値をセルロース複合体の貯蔵弾性率(G‘)として用いた。
4.セルロースの粒子形状
セルロース複合体を、1質量%濃度で水分散液を作成したものを、イオン交換水で0.1質量%に希釈した。これをスポイドで、マイカ上に1滴キャストした。エアダスターにて余分な水を吹き飛ばして風乾させ、サンプルを調製した。原子間力顕微鏡(Digital Instruments社製、Nano ScopeIV MM、スキャナーEV、測定モードTapping、プローブNCH型シリコン単結晶プローブ)で計測された画像をもとに、長径(L)が2μm以下の粒子の形状から、長径(L)と短径(D)を求め、その比(L/D)をセルロース粒子の形状とした。100〜150個の粒子の平均値を算出した。
5.懸濁安定性の評価方法
液体調味料の懸濁安定性について、以下の指標に基づき目視により判定した。
◎(優):分離、凝集、沈降、浮上の発生なし、○(良):分離、凝集、沈降、浮上が一部で発生、△(可):分離、凝集、沈降、浮上が部分的に発生、×(不可):分離、凝集、沈降、浮上が全面に激しく発生。
6.粘度
液体調味料の粘度を測定した。粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、以下の条件で選択したローターを試作した液体中に差込み、1分間静置した後に30秒間回転させたときの値を測定した。回転数は、6rpmで測定した。
7.TI値
流動性の指標として、液体調味料の粘度を測定して、TI値を算出した。上記で測定した6rpm及び60rpmで測定した液体調味料の粘度の値の比を、TI=(6rpmで測定した粘度値)/(60rpmで測定した粘度値)として算出した。
8.塩濃度
液体調味料の塩濃度は、以下に調製した。
ごまぽん酢:1.5 mol/L
ゆずぽん酢:1.4 mol/L
焼肉のたれ:0.9 mol/L
ポタージュ:0.15 mol/L
味噌汁 :0.25 mol/L
9.官能評価
液体調味料を、年齢や性別の異なる10人のパネラーがブラインドで試食して評価を行い、1〜5段階で点数をつけてもらった。そのうち、一番高い点数と低い点数を一人ずつ除外し、8人の点数の平均値を採用した。点数は最高点を5点とし、以下4、3、2、1として点数をつけてもらった。評価の基準は、「味がおいしい」、「素材の味が生きている」、「素材の風味が生きている」、「喉越しがよい」という4つの観点から総合的に判断してもらった。どれも際立って優れているものを5点、以下、4項目のうちいずれか1項目にて物足りなさを感じた場合は4点、2項目にて物足りなさを感じたら3点、3項目全てにて物足りなさを感じたら2点、すべてにおいて物足りなさを感じたら1点として、それぞれ点数をつけてもらった。
10.セルロース複合体の構造:セルロースからの親水性ガムの広がりの観察
(1)セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間、全量300g)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%の純水分散体を調製した。
(2)上記水分散体と、0.2MでpH3.5のMcllvaine緩衝液(0.2Mのリン酸水素二ナトリウムと、0.1Mのクエン酸の水溶液)とを混合して、セルロース複合体の濃度を0.5質量%(イオン濃度0.06mol/L、pH4.0)に調製した後、純水でセルロース複合体の濃度を0.1質量%に希釈した。
(3)(1)及び(2)で得られた水分散体を、3日間以上、室温で静置した。水分散体の微細構造を壊さないよう、スポイトを使用して、5μlをゆっくりと吸出し、1cm×1cmの壁開されたマイカ上に、ゆっくり滴下し、エアダスターで余分な水分を吹き飛ばし、マイカ上に定着したサンプルを、AFM(島津製作所製 走査型プローブ顕微鏡SPM−9700、位相モード、オリンパス社製プローブOMCL−AC240TSを使用)にて、観察した。
(実施例1)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロース(MCC)を作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウエットケーキ状のMCC、PSG((株)MRCポリサッカライド製、PG020、1質量%溶解液の粘度40mPa・s)、CMC−Na(第一工業製薬(株)、F−7A、1%溶解液の粘度11mPa・s)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)にMCC/PSG/CMC−Naの質量比が90/5/5となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Aを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、0.6kWh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
得られたセルロース複合化物Aの貯蔵弾性率(G’)は0.48Paであった。また、セルロース複合体Aの体積平均粒子径は6.2μmであり、コロイド状セルロース成分は55質量%、粒子L/Dは1.6であった。
また、AFMの観察像において、セルロース粒子は高さ2nm以上の棒状粒子として観察され、イオン交換水(中性)で調製した水分散体(図3)及びpH4に調製した水分散体(図4)のいずれにおいても、そのセルロース粒子から周囲に放射状に伸びる高さ2nm未満の親水性ガムが観察された。
このセルロース複合体Aを用いて次のようにしてごま強化ぽん酢を作成した。
まず、イオン交換水を、TKホモミキサーで5,000rpmで攪拌しながら、全量に対してセルロース複合体Aが5質量%となるよう、少しずつ粉を添加し、全量投入してから5分間攪拌し、水分散液を作成した。市販のごま強化ぽん酢(フンドーキン醤油(株)、商品名ごま風味ぽん酢甘口)90質量%に対し、セルロース複合体Aの5質量%の水分散液を全量に対し、0.3質量%となるよう添加し、残りはイオン交換水でメスアップした。これらを、TKホモジナイザーを用いて、4,000rpmで5分間攪拌させた。その後、脱泡コンディショニングミキサー((株)シンキー、商品名あわとり錬太郎AR−250)に入れ、脱泡モードで3分間運転して、脱泡処理した後、容器に入れて保存した。
これを室温で静置し、評価を実施した。評価項目は、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例2)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が90/3/7、固形分40質量%の条件でセルロース水分散体を調製した。このセルロース水分散体を、実施例1と同様の装置で混練し、セルロース複合体Bを得た。混練エネルギーは、0.1kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
貯蔵弾性率(G’)は0.2Pa、体積平均粒子径は6.8μm、コロイド状セルロース成分は45質量%、粒子L/Dは2.0であった。
また、このセルロース複合体Bを用いて実施例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例3)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/GLG(CPケルコ製、ケルコゲル、Lot070628、1質量%溶解液の粘度1222mPa・s)との質量比が90/9/1となるよう秤量し、固形分が49.5質量%となるように加水した後、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Cを得た。混練エネルギーは、0.5kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
得られたセルロース複合化物Cの貯蔵弾性率(G’)は0.18Pa、体積平均粒子径は7.5μm、コロイド状セルロース成分は53質量%、粒子L/Dは1.6であった。
また、このセルロース複合体Cを用いて実施例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例4)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が50/25/25となるよう秤量し、固形分49質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Dを得た。混練エネルギーは、0.6kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
貯蔵弾性率(G’)は0.2Pa、体積平均粒子径は5.8μm、コロイド状セルロース成分は36質量%、粒子L/Dは1.6であった。
また、このセルロース複合体Dを用いて実施例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例5)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/ARG−Na((株)キミカ製、キミカアルギン SKAT−UVL、1%溶解液の粘度4.1mPa・s)との質量比が95/2.5/2.5、となるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Eを得た。混練エネルギーは、0.6kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
貯蔵弾性率(G’)は0.5Pa、体積平均粒子径は7.8μm、コロイド状セルロース成分は43質量%、粒子L/Dは1.6であった。
また、このセルロース複合体Eを用いて実施例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
参考例6)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSGとの質量比が90/10、となるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Fを得た。混練エネルギーは、0.5kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
貯蔵弾性率(G’)は0.15Paで、体積平均粒子径は7.4μm、コロイド状セルロース成分は56質量%、粒子L/Dは1.6であった。
また、このセルロース複合体Fを用いて実施例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例7)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/LMP(ユニテックフーズ(株)製、LNSN325)との質量比が90/5/5なるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Gを得た。混練エネルギーは、0.5kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
貯蔵弾性率(G’)は0.17Paで、体積平均粒子径は7.2μm、コロイド状セルロース成分は54質量%、粒子L/Dは1.6であった。
また、このセルロース複合体Gを用いて実施例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを得た。このセルロース複合体Aの5%の水分散液を全量に対して1質量%添加して、セルロース複合体の濃度が0.05質量%となるよう添加して、実施例1と同様にしてごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを得た。このセルロース複合体Aの6質量%の水分散液を全量に対して10質量%添加して、セルロース複合体の濃度が3質量%となるよう添加して、実施例1と同様にしてごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例1を参考にして、ゆず果汁ぽん酢を試作した。まず、実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを作成し、イオン交換水中に分散させて、5質量%の水分散液を準備した。
市販のゆずぽん酢(馬路村農業共同組合、商品名ぽん酢しょうゆ・ゆずの村)90質量%に対し、セルロース複合体Aの水分散液を4質量%添加し、全量に対し、0.2質量%となるよう添加し、残りはイオン交換水でメスアップした。これらを、TKホモジナイザーを用いて、4,000rpmで5分間攪拌させた。その後、脱泡コンディショニングミキサーに入れ、脱泡モードで3分間運転して、脱泡処理した後、容器に入れて保存した。
室温で静置し、5分後及び1日後のゆず果汁成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例11)
実施例1を参考にして、焼肉のたれを試作した。まず、実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを作成し、イオン交換水に分散させて、5質量%の水分散液を準備した。
市販の焼肉のたれ(エバラ食品工業(株)、商品名黄金の味中辛)90質量%に対し、セルロース複合体Aの水分散液を4質量%添加し、全量に対し、0.2質量%となるよう添加した。これらを、TKホモジナイザーを用いて、4,000rpmで5分間攪拌させて、焼肉のたれを試作した。これを容器に入れて保存した。
室温で静置し、5分後及び1日後の水不溶性成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例12)
実施例1を参考にして、ポタージュスープを試作した。まず、実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを作成し、イオン交換水中に分散させて、5質量%の水分散液を準備した。
市販のカップスープ(味の素(株)、商品名きのこのポタージュ)の粉末を容器に入れ、5質量%のセルロース複合体Aの水分散液9gと90℃のイオン交換水140gを混ぜ合わせた分散液を添加し、スプーンで1分間攪拌させた。これに、パセリのみじんぎり1g(全量に対して0.15質量%)を入れて、さらにスプーンで1分間攪拌させた(セルロース複合体の添加量:0.3質量%)。
これを室温で静置し、5分後及び1日後のポタージュスープ中のパセリの懸濁安定状態について、目視観察して評価した。また、1日保存後に、粘度、及びTI値、pH、官能評価について評価した。評価結果を表1に示す。
(実施例13)
実施例1を参考にして、ねぎ入り味噌汁を試作した。まず、実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを作成し、イオン交換水中に分散させて、5質量%の水分散液を準備した。
市販の味噌汁((株)永谷園、あさげ)の粉末を容器に入れ、5質量%のセルロース複合体Xの水分散液9gと90℃のイオン交換水144gを混ぜ合わせた分散液を添加し、スプーンで1分間攪拌させた(セルロース複合体の添加量:0.3質量%)。
これを容器に入れて室温で静置し、5分後及び1日後の味噌汁中のねぎの懸濁安定状態について、目視観察して評価した。また、1日保存後に、粘度、及びTI値、pH、官能評価について評価した。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が80/0/20となるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Hを得た。混練エネルギーは0.5kWh/kgであり、混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
セルロース複合体Hの貯蔵弾性率(G’)は0.02Pa、体積平均粒子径は8.8μm、コロイド状セルロース成分は35質量%、粒子L/Dは1.6であった。
また、このセルロース複合体Hを用いて実施例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表3に示す。
(比較例2)
市販DPパルプを裁断後、比較例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が90/5/5となるよう秤量し、固形分28質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Iを得た。混練エネルギーは0.04kWh/kgであり、混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
セルロース複合体Iの貯蔵弾性率(G’)は0.01Pa、体積平均粒子径は13.5μm、コロイド状セルロース成分は28質量%、粒子L/Dは2.4であった。
また、このセルロース複合体Iを用いて比較例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表3に示す。
(比較例3)
市販DPパルプを裁断後、10質量%塩酸中で105℃、20分間加水分解して得られた酸不溶性残渣をろ過、洗浄した後、固形分10質量%のセルロース水分散体を調製した(平均重合度は200であった)。この加水分解セルロースの平均粒径は17μmであった。このセルロース水分散体を媒体攪拌湿式粉砕装置(コトブキ技研工業株式会社製アペックスミル、AM−1型)で、媒体として直径1mmφのジルコニアビーズを用いて、攪拌翼回転数1800rpm、セルロース水分散体の供給量0.4L/minの条件にて2回通過で粉砕処理を行い、微細セルロースのペースト状物を得た。
ペースト状微細セルロース/PSG/CMC−Na(置換度0.90、粘度7mPa・s)との質量比が80/0/20、となるよう秤量し、総固形分濃度が11質量%となるよう純水で調製し、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製、MARKII)を用いて8,000rpmで20分間分散してペースト状水分散体を調製した(アペックスミルと、TKホモジナイザーの消費電力と処理量から混練エネルギーを算出したところ、0.03kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった)。
この水分散体を、ドラムドライヤー(楠木機械製作所(株)製、KDD−1型)で、水蒸気圧力2Kg/cm2、回転数0.6rpmで乾燥し、スクレーパーで掻き取り出し、フラッシュミル(不二パウダル(株)製)で粗砕し、薄片状、鱗片状のセルロース複合体Jを得た。混練エネルギーは0.03kWh/kgであり、セルロース複合体Jの貯蔵弾性率(G’)は0.01Pa、体積平均粒子径は3.4μm、コロイド状セルロース成分は40質量%、粒子L/Dは2.4であった。
また、このセルロース複合体Jを用いて比較例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表3に示す。
(比較例4)
市販のDPパルプを裁断後、10質量%の塩酸中で105℃、20分間、加水分解して得られた酸不溶性残渣をろ過、洗浄して水分60質量%のウェットケーキ状のセルロースを得た(平均重合度は200)。固形分45質量%となるように加水し、これを実施例1と同様の条件で、プラネタリーミキサーにて2時間処理を行った。この摩砕処理物に、水を加え、固形分を7質量%として、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた。その後に、2500Gの遠心力で、10分間遠心分離し、上層部として、固形分4質量%のMCC水分散体を得た。
次に、MCC水分散体に、PSGとCMC−Naを、実施例1の組成になるように仕込み、プロペラ式攪拌機を用いて、均一混合し、水分散体を調製した(この際の固形分は4〜5質量%)。この水分散体を、ドラムドライヤー((株)楠木機械製作所製KDD−1型)で、ドラム表面をシリコーン離型剤で処理した後、水蒸気圧力0.12MPa、回転数1.0rpmで乾燥してフィルム状のセルロース複合体Kを得た。
混練エネルギーは、総量として0.08kWh/kgであった(プラネタリーミキサーが0.08kWh/kgであり、その他は総量としても0.005kWh/kg未満であった)。親水性ガムとの共存下での、混練温度(プロペラ攪拌)は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
体積平均粒子径は3.5μm、コロイド状セルロース成分は72質量%粒子L/Dは1.6であった(体積平均粒子径の測定で得られた粒度分布における10μm以上の粒子の割合は2.5%であった)。実施例1と同様の操作で、貯蔵弾性率を測定した結果、0.01Paであった。
比較例4は、セルロースにかけた混練エネルギーとしては、本願発明の好ましい範囲に入るものであるが、混練エネルギーの大部分を占めるプラネタリーミキサーの処理においてPSG、CMC−Naが存在しなかったので、MCCとPSG、CMC−Naとの複合化は当然進まず、貯蔵弾性率が本願発明の範囲を外れたと考えられる。
また、このセルロース複合体Kを用いて比較例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表3に示す。
(比較例5)
平均粒径の異なる2種類のセルロース複合体を併用して添加した。比較例2で作成したセルロース複合体Iと、比較例4で作成したセルロース複合体Kを1:1の割合で混合し、全量で0.3質量%となるよう添加し、ごま強化ぽん酢を作成した。分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
異なる平均粒径を持つ2種類のセルロス複合体を併用して添加したが、相乗効果は得られず、本願発明の範囲を外れたと考える。
(比較例6)
キサンタンガム(三栄源FFI(株)製、商品名ビストップD−3000)を用いて、ごま強化ぽん酢を試作した。
あらかじめ、キサンタンガムを、イオン交換水に対し1質量%用意し、TKホモミクサーを用いて4,000rpmで攪拌させながら、徐々に添加し、全量入れた後10分間攪拌して、1質量%の水溶解液を準備する。
市販のごま強化ぽん酢90質量%に対し、キサンタンガム1質量%水溶解液を3質量%添加し、全量に対し、0.03質量%となるよう添加し、残りはイオン交換水でメスアップした。これらを、TKホモジナイザーを用いて、4,000rpmで5分間攪拌させた。その後、脱泡コンディショニングミキサーに入れ、脱泡モードで3分間運転して、脱泡処理した後、容器に入れて保存した。
室温で静置し、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例7)
比較例5と同様にして、キサンタンガム入りごま強化ぽん酢を作成した。キサンタンガム1%水溶液は10質量%添加し、全量の0.1%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例8)
比較例5と同様にして、ジェランガム及びカラギナン入りごま強化ぽん酢を作成した。ネイティブジェランガム及びイオタカラギナンを2/1の割合で混合し、これの1.5質量%の水溶液を作成し、これを10質量%添加して、全量に対して0.15質量%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例9)
比較例5と同様にして、タマリンドシードガム(DSP五協フード&ケミカル(株)、グリエイト)及び微結晶セルロース製剤(旭化成ケミカルズ(株)、セオラスCL−611)入りごま強化ぽん酢を作成した。タマリンドシードガム5質量%及び微結晶セルロース製剤4質量%をあらかじめ粉混合したものの水分散液を作成し、この混合水分散液を10質量%添加して、全量に対して0.9質量%となるよう添加した。作成したごま強化ぽん酢を室温で静置し、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例10)
比較例5と同様にして、ペクチン入りごま強化ぽん酢を作成した。ペクチン(三栄源エフ・エフ・アイ(株)、商品名ビストップD−1382)水溶解液は、70℃下で、10質量%のペクチン水溶解液を10質量%添加し、全量に対し1質量%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例11)
実施例11を参考にして、ゆず果汁入りぽん酢を作成した。キサンタンガム2%水溶液は10質量%添加し、全量の0.2質量%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のゆず成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例12)
比較例9と同様にして、ゆず果汁入りぽん酢を作成した。澱粉は5質量%水溶解液を10質量%添加し、全量に対し0.5質量%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のゆず成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例13)
実施例12を参考にして、焼肉のたれを作成した。キサンタンガム1%水溶液は10質量%添加し、全量の0.1%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後の水不溶性成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
〔粘弾性測定の評価〕
セルロース複合体A(実施例1)と、セルロース複合体J(比較例3)の粘弾性測定の結果を図1、2に示す。
図1から、セルロース複合体Aは、純水分散体と比較して、酸性の水分散体における歪み20%付近の貯蔵弾性率が高いことが分かる(純水:0.02Pa→pH4:0.58Pa)。また、図2から、セルロース複合体J(特許文献3の実施例に準拠した製法で得られたセルロース複合体)は、純水分散体と比較して、酸性の水分散体における歪み20%付近の貯蔵弾性率が低いことが分かる(純水:0.24Pa→pH4:0.01Pa)。
通常のエネルギーで混練したセルロース複合体では、酸性での貯蔵弾性率は純水中に比べて低下し、懸濁安定性が低くなる。それに対して、高いエネルギーで混練したセルロース複合体では、酸性での貯蔵弾性率が上昇し、懸濁安定性が向上することがわかる。
本願発明は、耐酸・耐塩安定性に優れるセルロース複合体を、水不溶性成分を含有する液体調味料に含有させることにより、従来なしえなかった、水不溶性成分の懸濁安定性(浮上抑制を含む)及び味覚(素材の味、風味)の向上、流動性を向上させることができるため、商品価値を高めるのに有用である。

Claims (4)

  1. セルロース及びサイリウムシードガムを含むセルロース複合体であって、
    該セルロース複合体が、さらにカルボキシメチルセルロースナトリウム、LMペクチン、アルギン酸ナトリウム、及びジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも1種である水溶性ガムを含み、該親水性ガムと該水溶性ガムとの質量比が30/70〜99/1であり、
    該セルロース複合体を1質量%含むpH4の水分散体において、貯蔵弾性率が0.06Pa以上である上記セルロース複合体と、比重が1g/cm以下の水不溶性成分とを含有する液体調味料。
  2. 前記水不溶性成分の体積平均粒子径が0.1μm以上、10mm以下である、請求項1に記載の液体調味料。
  3. 前記セルロース複合体が、セルロースを50〜99質量%及びサイリウムシードガムを1〜50質量%含む、請求項1又は請求項2に記載の液体調味料。
  4. 塩濃度が0.01mol/L以上である請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の液体調味料。
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