JP5969748B2 - 水不溶性成分を含有する液体調味料 - Google Patents
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Description
(1)セルロース及び親水性ガムを含むセルロース複合体であって、該セルロース複合体を1質量%含むpH4の水分散体において、貯蔵弾性率が0.06Pa以上である上記セルロース複合体と、比重が1g/cm3以下の水不溶性成分とを含有する液体調味料。
(2)前記水不溶性成分の体積平均粒子径が0.1μm以上、10nm以下である、(1)に記載の液体調味料。
(3)前記セルロース複合体が、セルロースを50〜99質量%及び親水性ガムを1〜50質量%含む、(1)又は(2)に記載の液体調味料。
(4)前記親水性ガムが、サイリウムシードガムである(1)〜(3)のいずれかに記載の液体調味料。
(5)セルロース複合体が、さらに前記親水性ガムとは異なる水溶性ガムを含み、該親水性ガムと該水溶性ガムとの質量比が30/70〜99/1である、(1)〜(4)のいずれか一つに記載の液体調味料。
(6)前記水溶性ガムが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、LMペクチン、アルギン酸ナトリウム、及びジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、(5)に記載の液体調味料。
(7)塩濃度が0.01mol/L以上である(1)〜(6)のいずれか一つに記載の液体調味料。
本願発明におけるセルロースとは、セルロースを含有する天然由来の水溶性の繊維質物質である。原料としては、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。原料として、これらのうち1種の天然系セルロースを使用してもよいし、2種以上を混合したものを使用することも可能である。
<親水性ガム>
親水性ガムとは、化学構造の一部に糖又は多糖を含む親水性高分子物質のことである。ここで親水性とは、常温の純水に、一部が溶解する特性を有することである。定量的に親水性を定義すると、この新水性ガム0.05gを、50mLの純水に、攪拌下(スターラーチップ)で、平衡まで溶解させ、目開き1μmのメンブレンフィルターで処理した際に、通過する成分が、親水性ガム中に1質量%以上含まれることである。親水性ガムとして、多糖類を用いる場合には、以下のものが好適である。
<陰イオン性多糖類>
上記の親水性ガムの中でも、水中で陽イオンが遊離し、それ自身が陰イオンとなるものを陰イオン性多糖類と呼ぶ。親水性ガムとして陰イオン性多糖類を用いることで、セルロースとの複合化がより促進され、セルロース複合体の耐酸安定性、耐塩安定性が増すため好ましい。
<分岐状の陰イオン性多糖類>
上記の陰イオン性多糖類の中でも、その化学構造中に、分岐構造を有するものを分岐状の陰イオン性多糖類と呼ぶ。本願発明におけるセルロース複合体における親水性ガムとして、分岐状の陰イオン性多糖類を用いることで、セルロース複合体の耐酸性が、より高まるため好ましい。ここでいう分岐構造とは、多糖類に含まれる六単糖中の三つの水酸基(C6位は一級アルコール)のうち、一つ以上が化学結合を介して、メチロールより高分子量の置換基に置換されている構造のことである。置換基は、エーテル結合を介した糖又は多糖構造であることが好ましい。分岐状の陰イオン性多糖類としては、以下のものが好適である。
<サイリウムシードガム>
サイリウムシードガム(PSG)とは、オオバコ科の植物(Plantago ovata Forskal)の種子の外皮から得られる多糖類(ガム類)のことである。具体的には、イサゴール、プランタゴ・オバタ種皮から得られる多糖類が挙げられる。
<貯蔵弾性率>
次に、本願発明における酸性の液体調味料に添加するセルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)について説明する。
<セルロース複合体の構造>
本願発明におけるセルロース複合体は、セルロース表面から放射状に伸びた親水性ガムの広がりが、酸性下でも充分に大きいという特徴がある。セルロース表面から伸びた親水性ガムの広がりが大きいほど、隣接するセルロース複合体の親水性ガムと絡み合いやすくなる。その結果、セルロース複合体同士の絡み合いが密に生じることで、ネットワーク構造が剛直になり、貯蔵弾性率(G’)が向上し、懸濁安定性が高くなる。この親水性ガムの広がりは、以下の方法で測定することができる。
<セルロースと親水性ガムの配合比率>
本願発明におけるセルロース複合体は、好ましくは、セルロースを50〜99質量%、及び親水性ガムを1〜50質量%含む。
<水溶性ガム>
本願発明におけるセルロース複合体は、さらに親水性ガム以外の水溶性ガムを含むことが好ましい。水溶性ガムとしては、水膨潤性が高く、セルロースと複合化しやすいガムが好ましい。
<親水性ガムと水溶性ガムの質量比>
親水性ガムと上記の水溶性ガムとの質量比は、30/70〜99/1であることが好ましい。本願発明におけるセルロース複合体において、親水性ガムと上記の水溶性ガムが前記の範囲にあることで、弱アルカリ性(pH8)から酸性(pH3)までの広いpH領域の本願発明におけるセルロース複合体を含む水分散体において、本願発明におけるセルロース複合体は懸濁安定性を示す。また、本願発明におけるセルロース複合体に水溶性ガムを添加することで、特に、該水分散体の酸性領域(pH5以下)での本願発明におけるセルロース複合体の懸濁安定性がより優れるものである。これら親水性ガムと水溶性ガムとの配合量比として、より好ましくは、40/60〜90/10であり、さらに好ましくは40/60〜80/20である。
<セルロース複合体の体積平均粒子径>
セルロース複合体の体積平均粒子径は、20μm以下であることが好ましい。ここで、該体積平均粒子径は、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径のことである。
<セルロース複合体のコロイド状成分量>
さらに、セルロース複合体は、コロイド状セルロース成分を30質量%以上含有することが好ましい。ここでいうコロイド状セルロース成分の含有量とは、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力2,000rpm(5600G※Gは重力加速度)×15分間)し、遠心後の上澄みに残存する固形分(セルロースと、親水性ガム、水溶性ガムを含む)の質量百分率のことである。コロイド状セルロース成分の大きさは10μm以下であり、より好ましくは5.0μm以下であり、特に好ましくは1.0μm以下である。ここでいう大きさは、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)のことである。コロイド状セルロース成分の含有量が30質量%以上であると、懸濁安定性がより容易に向上する。より好ましくは、40質量%以上であり、特に好ましくは、50質量%以上である。コロイド状セルロース成分含有量は、多ければ多いほど、懸濁安定性が高いため、その上限は特に制限されないが、好ましい範囲としては、90質量%以下である。
<親水性物質>
本願発明におけるセルロース複合体に、水への分散性を高める目的で、親水性ガム及び水溶性ガム以外に、さらに親水性物質を加えてもよい。親水性物質とは、冷水への溶解性が高く粘性を殆どもたらさない有機物質であり、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳糖、マルトース、ショ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン等のオリゴ糖類、ブドウ糖、果糖、ソルボース等の単糖類、マルチトール、ソルビット、エリスリトール等の糖アルコール類等が適している。これらの親水性物質は、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でも、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類が分散性の点で好ましい。
<セルロース複合体の製造方法>
次に、本願発明におけるセルロース複合体の製造方法を説明する。
水不溶性成分とは、水溶媒中に添加し、攪拌した際、溶解せずに分散、或いは浮遊、沈降する成分のことを意味する。例えば、洗いごまや煎りごま、擦りごま、皮むきごまなどのごまや、大根をはじめ、ニンジン、ニンニク、生姜、タマネギ、ナガイモ、ホウレンソウ、トマト、ネギ、シイタケ、リンゴ、ナシ、オレンジ、レモンなどの野菜や果物をすりおろしたものや、細かく刻んだもの、繊維質、乾燥粉砕したものなどを挙げることができる。そのほかにも、小豆粒やナッツ類インゲン豆やそら豆、枝豆などの豆類、或いは、ゆず、れもん、すだち、かぼす、だいだい、ライム、みかん、オレンジなどの柑橘系の果汁や、その他果物などの果汁や繊維質、コショウなどをはじめとするスパイスやハーブ、ココア、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル類や、ウコン、タンパク質(ミルクプロテイン、大豆タンパク、ホエイ、カゼインなど)、コラーゲン、コエンザイムQ10などの機能性食材、水不溶性成分であれば、食材の種類や成分としては特に限定しない。
水不溶性成分の含有量としては、特に制限は設けないが、好ましくは50質量%以下である。より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。水不溶性成分量がこの範囲であれば、セルロース複合体の添加量に対して、セルロース複合体が形成するネットワーク構造とのバランスがとれやすく、優れた懸濁安定性や流動性の効果を発揮しやすい。
水不溶性成分の比重としては、1g/cm3以下である。比重が水と同程度、あるいは水よりも小さいものにおいて、液体調味料中での浮上を抑制し、液体中で均一に懸濁安定させる効果を発揮する。比重の下限としては、好ましくは0.4g/cm3以上、さらに好ましくは0.5g/cm3以上とすることで、すぐれた懸濁安定効果を発揮する。
水不溶性成分の大きさとしては、体積平均粒子径が0.1μm以上10mm以下が好ましい。体積平均粒子径が10mm以下であれば、セルロース複合体が形成するネットワークに対して水不溶性成分が大きすぎることもないのでバランスが崩れず、懸濁安定化するので水不溶性成分が沈降しない。また、体積平均粒子径が0.1μm以上であれば、セルロースが形成するネットワークに対して水不溶性成分が小さすぎることもなく、ネットワークに水不溶性成分が引っかかるのですり抜けて沈降、或いは浮上してしまうこともないため、好ましい。水不溶性成分の体積平均粒子径は、好ましくは、1μm以上1mm以下、さらに好ましくは5μm以上500μm以下である。
<液体調味料>
本願発明における液体調味料とは、液体状の調味液のことを意味する。つゆ、たれ、ソース、ぽん酢、スープなども含む。
つゆとしては、例えば、そうめん、うどん、そば、冷麦、冷やし中華、坦坦麺、つけめんなどの麺類用のめんつゆやかえしなどが挙げられる。たれとしては、例えば、焼肉やすきやき、しゃぶしゃぶ、焼き鳥、しょうが焼き、照り焼き、味噌カツ、からあげ、うなぎ、あなご、納豆など各種が挙げられる。スープとしては、例えば、味噌汁や澄まし汁、雑煮、粕汁、潮汁、豚汁、三平汁、けんちん汁、のっぺい汁、ブイヤベース、ヴィシソワーズ、チャウダー、クラムチャウダー、チキンスープ、オニオンスープ、ミネストローネ、アクアパッツァ、ガスパチョ、フォンデュ、ボルシチ、サムゲタン、カムジャタン、チゲ、コーンスープ、ポタージュ、トムヤムクン、パンプキンスープ、コンソメスープ、わかめスープに加え、シチューやスープカレーなど、料理の形態や国を限定せず、各種挙げられる。ソースとしては、例えば、トマトソースやケチャップ、チリソース、ホワイトソース、ブラウンソース、ベシャメル系、マヨネーズやサラダクリームなどの乳化ソース、バターソース、タルタルソース、ウスターソース、カスタードソース、チョコレートソース、醤油、甘酢あん、また、ぽん酢や漬物用の調味液、食酢類も含む。
セルロース複合体の液体調味料における添加量としては、0.03質量%以上が好ましい。セルロース複合体の添加量を0.03質量%以上とすることで、水不溶性成分の懸濁安定効果や流動性、味の向上において効果を発揮する。より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。上限は、液体調味料としての好ましい粘度範囲や喉越しを考慮すると、3質量%以下であることが好ましい。
<液体調味料の粘度>
20℃におけるB形粘度計による液体調味料の粘度が、5〜500mPa・sの範囲内であることが好ましい。ここで、粘度とは、B形粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形)を用いて、ローターを液体調味料中にセットして60秒間静置した後、6rpmで30秒間回転させた後の測定値のことをいう。測定値が5〜500mPa・sの範囲内であれば、成分の凝集、分離、沈降、浮上を抑制した優れた液体調味料を調製できる。5mPa・s以上であれば、懸濁安定性が劣ることもなく、500mPa・s以下であれば、食品を摂取した際の喉越しが悪化することもない。かかる観点より、8〜400mPa・sがより好ましく、10〜300mPa・sがさらに好ましい。
<液体調味料のTI値>
TI値とは、チキソトロピーインデックスを意味し、液体調味料のチキソトロピーの指標となる数値である。TI値は、B形粘度計にて、6rpm及び60rpmで測定して得られた値の比である。すなわち、TI値=(6rpmで測定した液体調味料の粘度値)/(60rpmで測定した液体調味料の粘度値)で算出できる。TI値が大きいほど、みかけの静置粘度は高いため懸濁安定性が高く、さらに振とう粘度は低いため、液体としての流動性が高いことを意味する。したがって、本願発明の液体調味料を食材にかける際に、流動性が高く、作業性に優れるといえる。工業的にも、容器に充填する際の作業性が向上するという点において優れる。かかる観点より、TI値は3以上であることが好ましい。上限は、6以下であることが好ましい。3以上とすることで流動性が良くなり、6以下とすることで味がマスキングされて悪化することもない。
<液体調味料のpH>
本願発明の液体調味料のpHは、2〜6であることが好ましい。pHは、pH計(HORIBA製、D−50)を用いて測定することができる。本願発明におけるセルロース複合体は、酸性下にて強固なネットワーク構造を形成することにより、水不溶性成分の懸濁安定性(浮上抑制を含む)及び味(素材の味、風味)、流動性の向上において優れた効果を発揮するものである。より好ましくは、pHが3〜5の範囲である。
<液体調味料の塩濃度>
本願発明の液体調味料の塩濃度は、0.01mol/L以上であることが好ましい。ここでいう塩濃度とは、種々の加工を施された上述の形態の飲食品を、流通段階において、1日以上保存する際、又は飲食に供する際の塩濃度のことを指す。塩濃度とは、上述の飲食品中の固形分を、遠心分離及び/又はろ過で除去した後、得られた水溶液中の塩分濃度のことであり、塩分計(ATAGO製 デジタル塩分計 ES−421)を用いて測定された値(質量%)を、NaClとして換算したモル濃度(mol/L)のことである。液体調味料の塩濃度は、好ましくは0.1mol/L以上であり、さらに好ましくは0.5mol/L以上である。
1.セルロース複合体の体積平均粒子径
(1)セルロース複合体を、1質量%濃度の水分散液とし、高せん断ホモジナイザー(日本精機(株)製、エクセルオートホモジナイザーED−7、処理条件;15,000rpmを5分間)を用いてイオン交換水に分散させた。
(2)得られた水分散液を、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、LA−910、前処理として超音波処理を1分、屈折率1.20)で粒度分布を測定した。ここで得られた体積頻度粒度分布における、積算50%の粒子径を体積平均粒子径とした。
2.セルロース複合体のコロイド状セルロース成分含有率
(1)セルロース複合体の1質量%濃度の水分散液を上記1.(1)と同様にして作成した。
(2)遠心分離した。(久保田商事(株)製、6800型遠心分離機、ロータータイプRA−400、処理条件:遠心力2,000rpm(5600G、Gは重力加速度)×15分間、仕込量:50g(遠沈管))
(3)遠心分離後の上澄み液をガラス製秤量瓶に導入し、60℃で15時間、その後105℃で2時間乾燥し、デシケーター内で恒量した後、重量を測定した。また、別途、未遠心の水分散体も同様に乾燥し、重量を測定した。それらの結果から、上澄みに残存するセルロース固形分の質量百分率を、以下の式より求めた。
セルロース成分含有率=(上澄み50gの固形分)/(未遠心50g中の固形分)×100
3.セルロース複合体の貯蔵弾性率の測定方法
(1)セルロース複合体の1.8量%濃度の水分散液を上記1.(1)と同様にして作成した。
(2)その分散液と、0.2MでpH4のMcllvaine緩衝液(0.2Mのリン酸水素二ナトリウムと0.1Mのクエン酸の水溶液)とを混合して、セルロース複合体の濃度が1.0質量%(全量300g、イオン濃度0.06mol/L、pH4)に調整した後、得られた水分散体を3日間室温で静置させた。
(3)この水分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の範囲で掃引)により測定した。得られた歪み−応力曲線において、歪み20%の値をセルロース複合体の貯蔵弾性率(G‘)として用いた。
4.セルロースの粒子形状
セルロース複合体を、1質量%濃度で水分散液を作成したものを、イオン交換水で0.1質量%に希釈した。これをスポイドで、マイカ上に1滴キャストした。エアダスターにて余分な水を吹き飛ばして風乾させ、サンプルを調製した。原子間力顕微鏡(Digital Instruments社製、Nano ScopeIV MM、スキャナーEV、測定モードTapping、プローブNCH型シリコン単結晶プローブ)で計測された画像をもとに、長径(L)が2μm以下の粒子の形状から、長径(L)と短径(D)を求め、その比(L/D)をセルロース粒子の形状とした。100〜150個の粒子の平均値を算出した。
5.懸濁安定性の評価方法
液体調味料の懸濁安定性について、以下の指標に基づき目視により判定した。
◎(優):分離、凝集、沈降、浮上の発生なし、○(良):分離、凝集、沈降、浮上が一部で発生、△(可):分離、凝集、沈降、浮上が部分的に発生、×(不可):分離、凝集、沈降、浮上が全面に激しく発生。
6.粘度
液体調味料の粘度を測定した。粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、以下の条件で選択したローターを試作した液体中に差込み、1分間静置した後に30秒間回転させたときの値を測定した。回転数は、6rpmで測定した。
7.TI値
流動性の指標として、液体調味料の粘度を測定して、TI値を算出した。上記で測定した6rpm及び60rpmで測定した液体調味料の粘度の値の比を、TI=(6rpmで測定した粘度値)/(60rpmで測定した粘度値)として算出した。
8.塩濃度
液体調味料の塩濃度は、以下に調製した。
ごまぽん酢:1.5 mol/L
ゆずぽん酢:1.4 mol/L
焼肉のたれ:0.9 mol/L
ポタージュ:0.15 mol/L
味噌汁 :0.25 mol/L
9.官能評価
液体調味料を、年齢や性別の異なる10人のパネラーがブラインドで試食して評価を行い、1〜5段階で点数をつけてもらった。そのうち、一番高い点数と低い点数を一人ずつ除外し、8人の点数の平均値を採用した。点数は最高点を5点とし、以下4、3、2、1として点数をつけてもらった。評価の基準は、「味がおいしい」、「素材の味が生きている」、「素材の風味が生きている」、「喉越しがよい」という4つの観点から総合的に判断してもらった。どれも際立って優れているものを5点、以下、4項目のうちいずれか1項目にて物足りなさを感じた場合は4点、2項目にて物足りなさを感じたら3点、3項目全てにて物足りなさを感じたら2点、すべてにおいて物足りなさを感じたら1点として、それぞれ点数をつけてもらった。
10.セルロース複合体の構造:セルロースからの親水性ガムの広がりの観察
(1)セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間、全量300g)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%の純水分散体を調製した。
(2)上記水分散体と、0.2MでpH3.5のMcllvaine緩衝液(0.2Mのリン酸水素二ナトリウムと、0.1Mのクエン酸の水溶液)とを混合して、セルロース複合体の濃度を0.5質量%(イオン濃度0.06mol/L、pH4.0)に調製した後、純水でセルロース複合体の濃度を0.1質量%に希釈した。
(3)(1)及び(2)で得られた水分散体を、3日間以上、室温で静置した。水分散体の微細構造を壊さないよう、スポイトを使用して、5μlをゆっくりと吸出し、1cm×1cmの壁開されたマイカ上に、ゆっくり滴下し、エアダスターで余分な水分を吹き飛ばし、マイカ上に定着したサンプルを、AFM(島津製作所製 走査型プローブ顕微鏡SPM−9700、位相モード、オリンパス社製プローブOMCL−AC240TSを使用)にて、観察した。
(実施例1)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロース(MCC)を作製した(平均重合度は220であった)。
また、AFMの観察像において、セルロース粒子は高さ2nm以上の棒状粒子として観察され、イオン交換水(中性)で調製した水分散体(図3)及びpH4に調製した水分散体(図4)のいずれにおいても、そのセルロース粒子から周囲に放射状に伸びる高さ2nm未満の親水性ガムが観察された。
(実施例2)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が90/3/7、固形分40質量%の条件でセルロース水分散体を調製した。このセルロース水分散体を、実施例1と同様の装置で混練し、セルロース複合体Bを得た。混練エネルギーは、0.1kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
(実施例3)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/GLG(CPケルコ製、ケルコゲル、Lot070628、1質量%溶解液の粘度1222mPa・s)との質量比が90/9/1となるよう秤量し、固形分が49.5質量%となるように加水した後、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Cを得た。混練エネルギーは、0.5kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
(実施例4)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が50/25/25となるよう秤量し、固形分49質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Dを得た。混練エネルギーは、0.6kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/ARG−Na((株)キミカ製、キミカアルギン SKAT−UVL、1%溶解液の粘度4.1mPa・s)との質量比が95/2.5/2.5、となるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Eを得た。混練エネルギーは、0.6kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
(参考例6)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSGとの質量比が90/10、となるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Fを得た。混練エネルギーは、0.5kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/LMP(ユニテックフーズ(株)製、LNSN325)との質量比が90/5/5なるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Gを得た。混練エネルギーは、0.5kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
(実施例8)
実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを得た。このセルロース複合体Aの5%の水分散液を全量に対して1質量%添加して、セルロース複合体の濃度が0.05質量%となるよう添加して、実施例1と同様にしてごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを得た。このセルロース複合体Aの6質量%の水分散液を全量に対して10質量%添加して、セルロース複合体の濃度が3質量%となるよう添加して、実施例1と同様にしてごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例1を参考にして、ゆず果汁ぽん酢を試作した。まず、実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを作成し、イオン交換水中に分散させて、5質量%の水分散液を準備した。
(実施例11)
実施例1を参考にして、焼肉のたれを試作した。まず、実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを作成し、イオン交換水に分散させて、5質量%の水分散液を準備した。
(実施例12)
実施例1を参考にして、ポタージュスープを試作した。まず、実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを作成し、イオン交換水中に分散させて、5質量%の水分散液を準備した。
(実施例13)
実施例1を参考にして、ねぎ入り味噌汁を試作した。まず、実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを作成し、イオン交換水中に分散させて、5質量%の水分散液を準備した。
(比較例1)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が80/0/20となるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Hを得た。混練エネルギーは0.5kWh/kgであり、混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
(比較例2)
市販DPパルプを裁断後、比較例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が90/5/5となるよう秤量し、固形分28質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Iを得た。混練エネルギーは0.04kWh/kgであり、混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
(比較例3)
市販DPパルプを裁断後、10質量%塩酸中で105℃、20分間加水分解して得られた酸不溶性残渣をろ過、洗浄した後、固形分10質量%のセルロース水分散体を調製した(平均重合度は200であった)。この加水分解セルロースの平均粒径は17μmであった。このセルロース水分散体を媒体攪拌湿式粉砕装置(コトブキ技研工業株式会社製アペックスミル、AM−1型)で、媒体として直径1mmφのジルコニアビーズを用いて、攪拌翼回転数1800rpm、セルロース水分散体の供給量0.4L/minの条件にて2回通過で粉砕処理を行い、微細セルロースのペースト状物を得た。
(比較例4)
市販のDPパルプを裁断後、10質量%の塩酸中で105℃、20分間、加水分解して得られた酸不溶性残渣をろ過、洗浄して水分60質量%のウェットケーキ状のセルロースを得た(平均重合度は200)。固形分45質量%となるように加水し、これを実施例1と同様の条件で、プラネタリーミキサーにて2時間処理を行った。この摩砕処理物に、水を加え、固形分を7質量%として、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた。その後に、2500Gの遠心力で、10分間遠心分離し、上層部として、固形分4質量%のMCC水分散体を得た。
(比較例5)
平均粒径の異なる2種類のセルロース複合体を併用して添加した。比較例2で作成したセルロース複合体Iと、比較例4で作成したセルロース複合体Kを1:1の割合で混合し、全量で0.3質量%となるよう添加し、ごま強化ぽん酢を作成した。分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例6)
キサンタンガム(三栄源FFI(株)製、商品名ビストップD−3000)を用いて、ごま強化ぽん酢を試作した。
(比較例7)
比較例5と同様にして、キサンタンガム入りごま強化ぽん酢を作成した。キサンタンガム1%水溶液は10質量%添加し、全量の0.1%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例8)
比較例5と同様にして、ジェランガム及びカラギナン入りごま強化ぽん酢を作成した。ネイティブジェランガム及びイオタカラギナンを2/1の割合で混合し、これの1.5質量%の水溶液を作成し、これを10質量%添加して、全量に対して0.15質量%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例9)
比較例5と同様にして、タマリンドシードガム(DSP五協フード&ケミカル(株)、グリエイト)及び微結晶セルロース製剤(旭化成ケミカルズ(株)、セオラスCL−611)入りごま強化ぽん酢を作成した。タマリンドシードガム5質量%及び微結晶セルロース製剤4質量%をあらかじめ粉混合したものの水分散液を作成し、この混合水分散液を10質量%添加して、全量に対して0.9質量%となるよう添加した。作成したごま強化ぽん酢を室温で静置し、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例10)
比較例5と同様にして、ペクチン入りごま強化ぽん酢を作成した。ペクチン(三栄源エフ・エフ・アイ(株)、商品名ビストップD−1382)水溶解液は、70℃下で、10質量%のペクチン水溶解液を10質量%添加し、全量に対し1質量%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例11)
実施例11を参考にして、ゆず果汁入りぽん酢を作成した。キサンタンガム2%水溶液は10質量%添加し、全量の0.2質量%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のゆず成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例12)
比較例9と同様にして、ゆず果汁入りぽん酢を作成した。澱粉は5質量%水溶解液を10質量%添加し、全量に対し0.5質量%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のゆず成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例13)
実施例12を参考にして、焼肉のたれを作成した。キサンタンガム1%水溶液は10質量%添加し、全量の0.1%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後の水不溶性成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
〔粘弾性測定の評価〕
セルロース複合体A(実施例1)と、セルロース複合体J(比較例3)の粘弾性測定の結果を図1、2に示す。
Claims (4)
- セルロース及びサイリウムシードガムを含むセルロース複合体であって、
該セルロース複合体が、さらにカルボキシメチルセルロースナトリウム、LMペクチン、アルギン酸ナトリウム、及びジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも1種である水溶性ガムを含み、該親水性ガムと該水溶性ガムとの質量比が30/70〜99/1であり、
該セルロース複合体を1質量%含むpH4の水分散体において、貯蔵弾性率が0.06Pa以上である上記セルロース複合体と、比重が1g/cm3以下の水不溶性成分とを含有する液体調味料。 - 前記水不溶性成分の体積平均粒子径が0.1μm以上、10mm以下である、請求項1に記載の液体調味料。
- 前記セルロース複合体が、セルロースを50〜99質量%及びサイリウムシードガムを1〜50質量%含む、請求項1又は請求項2に記載の液体調味料。
- 塩濃度が0.01mol/L以上である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の液体調味料。
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