以下では、本発明の一実施形態(実施例)を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明が適用されるタイヤコード織布製織用織機(タイヤコード織機)10を含むタイヤコード製織装置1を示している。なお、ここで言うタイヤコード製織装置1とは、タイヤコード織布(以下、単に「織布」とも言う。)Wを製織するための装置全体を指すものであり、タイヤコード織布Wの製織を行うタイヤコード織機10に加え、タイヤコード織機10に対し多数本の経糸tをシート状の経糸列Tとして供給する給糸部分20と、タイヤコード織機10において製織されたタイヤコード織布Wを巻き取る布巻き装置30とを含むものである。
但し、図1では、給糸部分20については、その一部であるテンション装置21のみが示されており、経糸tとなる糸が仕掛けられるクリール装置は省略してある。すなわち、給糸部分20は、図示のテンション装置21に加え、テンション装置21よりも上流側に設けられたクリール装置であってタイヤコード織機10に供給される経糸tの本数と同じ数の給糸体が仕掛けられたクリール装置を含み、そのクリール装置における各給糸体から一斉に引き出された糸が、経糸列Tとしてタイヤコード織機10に供給される。なお、給糸部分20におけるテンション装置21は、クリール装置から引き出された多数本の糸をシート状に整列させると共に、各糸の張力を均一化するために所定の張力を付与するものであるが、その構成自体は公知であるため、その構成の説明については省略する。
このように、タイヤコード製織装置1におけるタイヤコード織機10は、通常の織機とは異なり、経糸を供給する部分及び製織された織布を巻き取る部分を含んでおらず、それらが前記の給糸部分20及び布巻き装置30として独立して存在するように構成されたものとなっている。その上で、タイヤコード製織装置1においては、前記のように給糸部分20から供給される経糸列Tを用い、タイヤコード織機10において織布Wが製織される。そして、タイヤコード織機10において製織された織布Wは、タイヤコード織機10から送り出され、タイヤコード織機10から独立した布巻き装置30によって巻き取られる。なお、この布巻き装置30は、別巻き装置とも言われ、布巻ロールに織布Wが巻かれた状態の巻布を一対のローラ上に載置して織布Wを巻き取る型式のものであるが、その構成自体は公知であるため、その構成の説明についても省略する。
タイヤコード織機10は、緯入れが行われる部分(緯入れ部)の構成(開口装置、緯入れ装置等)については通常の織機と同じであるが、前記したように経糸を供給する部分を含まないものであり、その代わりの構成として送出機構11を備えている。詳しくは、通常の織機では、搭載された送出ビームを回転駆動することによって経糸ビームに巻かれた経糸を経糸列のかたちで緯入れ部側へ向けて送り出すと共に、経糸ビームの回転を制御することによってその経糸の張力を制御することが行われている。それに対し、タイヤコード織機10では、前記のように経糸列Tは給糸部分20から供給されるものであり、タイヤコード織機10においては、その給糸部分20から供給された経糸列Tが送出機構11によって緯入れ部側へ向けて送り出されると共に、送出機構11がその経糸列Tを構成する経糸tの張力を制御するものとなっている。
具体的には、送出機構11は、巻き掛けられた経糸列Tを緯入れ部側へ向けて送り出すべく回転駆動される送出ロール11aと、その送出ロール11aの周面へ向けて経糸列Tを案内すると共に送出ロール11aとで経糸列Tを挟持すべく送出ロール11aに対し押接された状態で設けられたニップロール11bと、送出ロール11aを回転駆動する送出モータMLとを含む構成となっている(図2)。なお、ニップロール11bは、前記のように送出ロール11aに対し押接状態とされているため、送出ロール11aが送出モータMLによって回転駆動されるのに伴って従動回転する。
そして、給糸部分20から供給された経糸列Tは、ガイドロール15cによりニップロール11b側へ転向(案内)された後、ニップロール11bに巻き掛けられることでニップロール11bと送出ロール11aとによる挟持部分に導かれ、その挟持部分を経て送出ロール11aの周面に巻き掛けられている。従って、経糸列Tは、送出ロール11aが送出モータMLによって回転駆動されると共にニップロール11bが前記のように従動回転することに伴い、前記挟持部分によって送出ロール11aの周面上へ積極的に送り出され、送出ロール11aの回転に伴って緯入れ部側へ送られる。
また、送出機構11から送り出された経糸列Tは、ガイドロール15aを経由してテンションロール15bに巻き掛けられ、緯入れ部側へ導かれている。因みに、通常の織機と同様に、テンションロール15bには張力検出器15dが接続されている。その張力検出器15dは、経糸tの張力によってテンションロール15bが経糸列Tから受ける荷重を検出するものであり、その検出値に基づき、経糸列Tを構成する経糸tの張力が検出される。そして、その検出値に基づき、経糸tの張力が所望の目標張力に維持されるように、送出ロール11aを回転駆動する送出モータMLの駆動が制御される。なお、送出モータMLの駆動の制御は、後述の織機制御装置100における送出制御装置120によって行われる。
緯入れ部においては、複数毎の綜絖枠HFによって経糸列T(経糸t)に開口運動が与えられ、それによって形成された経糸開口内へ緯糸が緯入れ装置(図示略)によって緯入れされると共に、その緯入れされた緯糸が筬Rによって織前に筬打ちされることで、経糸列Tに対し緯糸が織り込まれた状態となってタイヤコード織布Wが製織される。そして、そのように製織された織布Wは、ガイドロール17aを経由して巻取機構13へ導かれている。
因みに、筬Rは、主軸MSを駆動源とする駆動機構(図示略)により、織機の1サイクル(織機1サイクル)毎に1往復するように揺動駆動される。また、各綜絖枠HFは、主軸MS(もしくは専用の駆動モータ)を駆動源とする開口駆動装置(図示略)により、予め定められた開口パターンに従った動作を行うように駆動される。但し、その駆動源である主軸MSは、主モータMMによって回転駆動されるものであり、予め設定された織機の回転数に応じた速度で回転駆動される。なお、タイヤコード織布Wは、織物の形態を為しているが、その緯糸が挿入される目的は経糸列Tの整列状態を維持するためといった程度のものであるため、その織り組織自体は単純なものとされ、一般的には、前記の開口パターンは平織りパターンとされる。そして、そのような平織りパターンに従った動作を綜絖枠HFに行わせる開口駆動装置としては、例えば、クランク開口装置が用いられる。
巻取機構13は、通常の織機と同様の構成であって、巻き掛けられた織布Wを所望の送り速度(単位時間当りの送り量)で送るべく回転駆動される服巻ロール13aと、服巻ロール13aとで織布Wを挟持すべく服巻ロール13aに対し押接された状態で設けられた一対のプレスロール13b、13cと、服巻ロール13aを回転駆動する巻取モータMTとを含む構成となっている。なお、プレスロール13b、13cは、前記のように服巻ロール13aに対し押接状態とされているため、服巻ロール13aが巻取モータMTによって回転駆動するのに伴って従動回転する。
そして、巻取機構13においては、織布Wは、先ず上流側のプレスロール13bに織布Wが巻き掛けられることでプレスロール13bと服巻ロール13aとによる挟持部分に導かれ、その挟持部分を経て服巻ロール13aの周面に巻き掛けられている。その後、織布Wは、服巻ロール13aの周面上における服巻ロール13aと下流側のプレスロール13cとによる挟持部分を経てプレスロール13cに巻き掛けられ、巻取機構13の下方に設けられたガイドロール17b側へ導かれている。
このように、巻取機構13においては、織布Wは、服巻ロール13aと一対のプレスロール13b、13cとによって挟持されているため、服巻ロール13aが巻取モータMTによって回転駆動されると共に両プレスロール13b、13cが前記のように従動回転することに伴い、服巻ロール13aの回転速度に応じた送り速度で送られることとなる。なお、服巻ロール13aを回転駆動する巻取モータMTの駆動の制御は、後述の織機制御装置100における巻取制御装置130によって行われる。そして、巻取機構13から送り出された織布Wは、ガイドロール17bに巻き掛けられて転向され、前記した布巻き装置30側へ送られると共に布巻き装置30上における巻布(布巻ロール)に巻き取られる。
図3は、以上のようなタイヤコード織機10における織機制御装置100を示している。図示のように織機制御装置100は、主制御装置110と、送出機構11における送出モータMLの駆動を制御する送出制御装置120と、巻取機構13における巻取モータMTの駆動を制御する巻取制御装置130とを含んでいる。また、主制御装置110は、主モータMMの駆動の制御等を行う制御器113と、その制御器113に接続された記憶部としての記憶器111と、制御器113及び記憶器111に接続された演算装置としての演算器115とを含んでいる。そして、送出制御装置120及び巻取制御装置130は、主制御装置110における制御器113に対し接続されている。
さらに、主制御装置110における記憶器111には、入力設定装置19が接続されている。その入力設定装置19は、例えば、タッチパネル式の表示画面を有するものであって、その表示画面に表示される設定画面等によって各種の設定値や条件等の製織条件を入力設定可能なものである。そして、その入力設定装置19によって入力設定された前記製織条件は、主制御装置110における記憶器111に送られ、記憶器111において記憶される。また、その入力設定装置19は、演算器115等から記憶器111送られて記憶器111に記憶された製織関連の情報等を表示画面に表示する表示器としても機能し、さらには、その表示画面に表示された操作釦等を操作することによって織機上の一部の装置を動作させる操作器としても機能する。
なお、入力設定装置19によって入力設定される製織条件は、例えば、タイヤコード織布Wに含まれる織布部分としてのスダレ織り部分及びタビー部分の緯糸密度の設定値(設定緯糸密度)や、各織布部分の製織時における主軸MSの回転数(回転速度)の設定値(設定回転数)、さらには、各織布部分の製織量(設定製織量)を含む。また、その製織条件は、送出機構11が前記のように経糸tの張力を制御するための各織布部分のための目標の張力値(設定張力値)を含む。
そして、製織中においては、主モータMMは、前記のように入力設定装置19によって入力設定されて主制御装置110における記憶器111に記憶された各織布部分用の設定回転数及び各織布部分の設定製織長量に従い、主制御装置110によってその駆動が制御される。例えば、スダレ織り部分の製織が行われる場合には、主制御装置110における制御器113が、スダレ織り部分用として設定された設定回転数を記憶器111から読み込み、主軸MSがその設定回転数で回転駆動されるように、主モータMMの駆動を制御する。それにより、タイヤコード織機10は、主軸MSがスダレ織り部分用の設定回転数で回転駆動された運転状態とされ、その状態で製織が行われる。
また、主モータMMには、主モータMMの回転量を検出するエンコーダEN1が接続されている。その上で、主モータMMの回転量に応じた回転量信号S1が、主制御装置110における演算器115に対し出力されている。なお、主モータMMの回転量と主軸MSの回転量とは所定の比率で対応している。従って、演算器115は、エンコーダEN1からの回転量信号S1に基づき、主軸MSの回転量を認識し得るものとなっている。そして、演算器115は、主軸MSの回転量に応じた信号を、制御器113に対し出力する。因みに、主制御装置110(制御器113)は、タイヤコード織機10上の他の装置(例えば、緯入れ装置)に対しても制御信号等を出力するものとなっており、制御器113は、記憶器111に記憶された製織条件に含まれる前記他の装置の作動条件等と演算器115からの主軸MSの回転量を示す信号とに基づき、その制御信号等の出力を行う。それにより、タイヤコード織機10においては、前記他の装置が所定のタイミングにおいて所定の動作(例えば、緯入れ装置における緯入れ動作)を実行する制御が行われる。
また、演算器115は、エンコーダEN1からの回転量信号S1に基づき、主モータMMの回転量が主軸MSの1回転に対応する回転量となった時点毎に、主軸MSが1回転されたことを認識し得るものとなっている。なお、その主軸MSの1回転は織機の1サイクルに相当し、さらに、織機の1サイクルは連続して行われる製織の1ステップ(1製織ステップ)に相当するとみなされる。そして、演算器115は、前記のように主軸MSが1回転されたと認識される毎に、既に求められている製織ステップの数を1だけカウントアップ(加算)する。また、そのカウントされた製織ステップの数(カウント値)は、製織によって実行された製織ステップの数として記憶器111に記憶される。また、その製織ステップのカウント値は、織布部分(スダレ織り部分、タビー部分)の切り換わりに伴ってリセットされ、切り換わり後の織布部分の製織開始に伴って新たにカウントが開始される。
さらに、主制御装置110は、製織によって織り上がった織布Wの織上り長を演算によって求める機能を有している。より詳しくは、織布Wは、織機1サイクル(1製織ステップ)毎に、設定された緯糸密度に相当する製織量だけ製織される。そこで、主制御装置110における演算器115は、各織布部分の製織において、前記のように主軸MSが1回転された(織機の1サイクルが実行された)と認識される毎に、織機1サイクル分の製織量(設定緯糸密度から求められる製織量)を、既に求められている織上り長に積算するものとなっている。例えば、スダレ織り部分の緯糸密度が1本/インチであるとすると、織機1サイクル分(1製織ステップ分)の製織量は1インチであり、演算器115は、主軸MSの1回転毎に、織上り長にその製織量(1インチ)を積算していく。
そして、そのように織機1サイクル分の製織量が順次積算されて求められた製織量が、製織済みの織布Wの織上り長となり、その求められた織上り長が記憶器111に記憶される。但し、その織上り長の算出については、前記のように織機1サイクル分の製織量を順次積算していくものに限らず、織上り長が要求された等の時点において、記憶器111に記憶されているそれまでの製織における製織ステップのカウント値と設定緯糸密度とから、その時点で演算によって求めるものであってもよい。
なお、記憶器111には、前記のように求められる織上り長について、製織中の織布部分の織上り長と、製織の開始時点からの全体の織上り長とが記憶される。但し、製織中の織布部分の織上り長については、製織される織布部分の切り換わりに伴ってリセットされる。そして、そのように記憶器111に記憶された織上り長は、入力設定器19の表示画面に表示可能となっており、その表示により、作業者が製織の進行状態を把握することができるものとなっている。
さらに、主制御装置110は、前記のようにして求められた織上り長に基づき、製織される織布部分の切り換えのための主軸MS(主モータMM)の回転数の変更する機能を有している。すなわち、前記のようにタイヤコード織布Wに含まれるスダレ織り部分とタビー部分とは緯糸密度が大きく異なっており、タイヤコード織機10は、その各製織部分の製織において、主軸MSの回転数を異ならせて製織を行うものとなっている。そのために、主制御装置110において、演算器115は、その求めた製織中の織布部分の織上り長と記憶器111に記憶されている製織中の織布部分に対し設定された設定製織量とを比較する機能を有している。その上で、演算器115は、例えばスダレ織り部分の製織中において、その製織中のスダレ織り部分の織上り長と記憶器111に記憶されているスダレ織り部分の設定製織量とを逐次比較し、製織中のスダレ織り部分の織上り長が前記設定製織量に達した時点で、制御器113に対し織布部分を切り換えるための切換指令信号を出力する。
そして、制御器113は、前記切換指令信号の入力に伴い、主モータMMの回転数を変更すべく、その制御状態の変更を行う。具体的には、制御器113は、スダレ織り部分の製織用の設定回転数に従って主モータMMの駆動を制御している状態において、前記切換指令信号の入力されると、記憶器111からタビー部分の製織用に設定された設定回転数を読み込み、主モータMMの制御状態をタビー部分の製織用の設定回転数に従ったものに変更する。その結果として、主軸MSは、タビー部分製織用の設定回転数と略一致する回転数で回転駆動された状態となる。
また、巻取機構13においては、服巻ロール13aは、主軸MSが前記のように回転駆動されている製織中において、その主軸MSの1回転毎に、製織中の織布部分の設定緯糸密度に応じた量だけ織布Wを送るように回転駆動されている。因みに、主軸MSの1回転毎における服巻ロール13aの回転量(巻取回転量)は、設定緯糸密度と服巻ロール13aの径とから予め求めることができる。その上で、服巻ロール13aは、主軸MSが1回転する間にそのような巻取回転量だけ回転するように、巻取モータMTによって回転駆動される。
また、前記のように、巻取モータMTは、巻取制御装置130によってその駆動が制御される。そして、巻取モータMTは、主軸MSの回転に応じて服巻ロール13aが前記のように回転駆動されるように、主軸MSを回転駆動する主モータMMの回転量に基づいてその駆動が制御される。そのために、巻取制御装置130には、エンコーダEN1から回転量信号S1が入力されている。また、巻取制御装置130には、記憶器111に記憶されている各織布部分の設定緯糸密度のうちの製織中の織布部分の設定緯糸密度が入力されている。
そして、巻取制御装置130は、エンコーダEN1から回転量信号S1と製織中の織布部分の設定緯糸密度とに基づき、主軸MSが1回転する間に服巻ロール13aが前記巻取回転量だけ回転駆動されるように、すなわち、主モータMMが主軸MSを1回転させる回転量だけ回転する間に巻取モータMTの回転量が服巻ロール13aを前記巻取回転量だけ回転駆動する駆動回転量となるように、巻取モータMTの駆動を制御する。このように、巻取モータMTは、巻取制御装置130により、主軸MSを1回転させる主モータMMの回転量毎に前記駆動回転量だけ回転するように、主モータMMの回転に比例した状態で主モータMMと同期して駆動される。
また、巻取モータMTには、巻取モータMTの回転量を検出するエンコーダEN2が接続されており、巻取モータMTの回転量に応じた回転量信号S2が、巻取モータMTの駆動を制御する巻取制御装置130に対し出力(フィードバック)されるようになっている。そして、巻取制御装置130は、製織中においては、前記のようにエンコーダEN1からの回転量信号S1と製織中の織布部分の設定緯糸密度とから巻取モータMTの基本速度を求めると共に、その基本速度に応じた駆動量とエンコーダEN2からの回転量信号S2とに基づいて巻取モータMTの駆動を制御している。
また、前記のように巻取機構13によって織布Wが送られる(移動する)結果、織前において織布Wに連なる経糸列T(経糸t)は、織布Wによって巻取機構13側へ牽引される状態となる。そこで、送出機構11においては、その牽引に応じて経糸列T(経糸t)が移動するように、経糸列Tを送り出す送出ロール11aが送出モータMLによって回転駆動される。また、前記のように、送出モータMLは、送出制御装置120によってその駆動が制御される。
そのために、送出制御装置120には、エンコーダEN1から回転量信号S1が入力されると共に、記憶器111に記憶されている各織布部分の設定緯糸密度のうちの製織中の織布部分の設定緯糸密度が入力されている。その上で、送出制御装置120は、そのエンコーダEN1からの回転量信号S1と製織中の織布部分の設定緯糸密度とに基づき、送出モータMLの駆動を制御するための基本速度を求めるものとなっている。
但し、送出モータMLは、送出ロール11aによって送り出される経糸tの張力が、予め設定された製織中の織布部分のための目標の張力と一致するように、その駆動が制御される。そのために、送出制御装置120には、前記した張力検出器15dによる検出値を示す検出信号が入力されている。さらに、送出制御装置120には、記憶器111に記憶された各織布部分のための設定張力値のうちの製織中の織布部分のための設定張力値が入力されている。そして、送出制御装置120は、その設定張力値と張力検出器15dによる検出値から求められる検出張力値とを比較し、その比較結果に基づき、前記のように求められた基本速度を必要に応じて補正するものとなっている。
さらに、送出モータMLには、送出モータMLの回転量を検出するエンコーダEN3が接続されており、送出モータMLの回転量に応じた回転量信号S3が、送出モータMLの駆動を制御する送出制御装置120に対し出力(フィードバック)されるようになっている。そして、製織中においては、送出制御装置120は、前記の基本速度(又は補正された基本速度)に応じた駆動量とエンコーダEN3からの回転量信号S3とに基づいて送出モータMLの駆動を制御している。
以上のようなタイヤコード織機10において、スダレ織り部分の製織中に、その製織されたスダレ織り部分に前述のような織り疵(製織不良部分)が発見された場合には、織機を停止させ、前記の疵戻し操作(経送り操作)が行われる。なお、織機の停止操作は、作業者が織機の停止釦を操作することによって行われる。さらに、その疵戻し操作は、前述のように、織機を停止させた状態、すなわち、主軸MSの回転を停止させたままの状態で、送出機構11における送出ロール11a及び巻取機構13における服巻ロール13aを同時に(連動させて)逆転させることによって行われる。但し、タイヤコード織機10においては、その疵戻し操作は、製織済みのスダレ織り部分から緯糸を予め取り除き、スダレ織り部分を経糸のみの状態とし、その上で、前記のように送出ロール11a及び服巻ロール13aを逆転させて、経糸を送出機構11の側へ送る(戻す)かたちで行われる。
そこで、タイヤコード織機10は、送出ロール11a及び服巻ロール13a(以下、「各ロール」とも言う。)に同時に逆転動作を行わせるための同時逆転釦を備えている。なお、その同時逆転釦は、例えば、入力設定装置19におけるタッチパネル式の表示画面に表示される。また、その送出ロール11a及び服巻ロール13aの同時逆転は、各ロールのそれぞれに対し予め設定された回転速度で各ロールが回転するように行われる。そのために、その同時逆転時における各ロールの回転速度が主制御装置110における記憶器111に予め記憶されている。但し、その回転速度は、径の異なる送出ロール11a及び服巻ロール13aのそれぞれについて、服巻ロール13aの回転によって送られる(戻される)織布Wの単位時間当りの移動量と送出ロール11aの回転によって送られる(戻される)経糸列Tの単位時間当りの移動量とが同じとなるように設定されている。
そして、入力設定装置19において前記同時逆転釦が操作されると、入力設定器19から主制御装置110における制御器113に対し、前記の同時逆転のための同時逆転指令信号が出力される。その上で、制御器113は、同時逆転指令信号が入力されると、記憶器111から前記の回転速度を読み込み、その回転速度に応じた速度指令信号を送出制御装置120及び巻取制御装置130のそれぞれに対し出力する。なお、その同時逆転(疵戻し操作)は主軸MSが停止した状態で行われるため、送出制御装置120及び巻取制御装置130のそれぞれにおいては、主軸MSの回転量に基づいて求められる前記の基本速度は発生していない。従って、送出制御装置120は、制御器113からの速度指令信号に従って送出モータMLの駆動を制御し、巻取制御装置130は、制御器113からの速度指令信号に従って巻取モータMTの駆動を制御する。それにより、各ロールは、記憶器111に記憶された回転速度で逆転駆動される。
また、入力設定器19は、表示画面上における前記同時逆転釦がタッチ操作されている間に亘り、前記の同時逆転指令信号を制御器113へ向けて継続して出力するものとなっている。また、制御器113は、その同時逆転指令信号が入力されている間において、前記速度指令信号を送出制御装置120及び巻取制御装置130に対し出力し続ける。言い換えれば、制御器113は、入力設定器19から前記同時逆転指令信号が出力されている間(前記タッチ操作が行われている間)のみ前記速度指令信号を出力し、前記指令信号の出力が停止される(前記タッチ操作が止められる)ことに伴い、その前記速度指令信号の出力を停止するものとなっている。そして、送出制御装置120は、制御器113から前記速度指令信号が出力されている間において前記のように送出モータMLに逆転動作を行わせ、巻取制御装置130は、制御器113から前記速度指令信号が出力されている間において前記のように巻取モータMTに逆転動作を行わせる。
そのような構成によれば、作業者が入力設定器19における表示画面上の前記同時逆転釦をタッチ操作している間に亘り、送出ロール11a及び巻取ロール13aが前記のような回転速度で逆転駆動され、経糸列Tが送出機構11a側へ連続的に送られ、作業者が前記同時逆転釦から手を離すと、送出ロール11a及び巻取ロール13aの逆転駆動(経糸列Tの移動)が停止するものとなる。但し、前記タッチ操作に伴う経糸列Tを送る操作については、例えば、1回の前記タッチ操作によって予め定められた量だけ経糸列Tが送られるようにすることも可能である。
そして、以上のような疵戻し操作(経送り操作)によれば、製織不良が発見されることに伴って作業者によって戻す必要があると判断された織前からの範囲(以下、単に「戻し範囲」と言う。)に亘り、製織済みのスダレ織り部分が戻される、すなわち、タイヤコード織機10上において、製織中のスダレ織り部分が、前記戻し範囲の製織が行われる前の状態に戻される。
但し、前記のように、その経送り操作は、前記のように主軸MSを停止させたままの状態で行われる、すなわち、主軸MS(主モータMM)の逆転を伴うことなく行われる。そのため、従来のタイヤコード織機では、前記のように主軸MSの回転量に基づいて求められる織上り長(製織量の積算値)は、作業者が修正する等を行わない限りは、その疵戻し操作が行われる前の織機の停止時点までに求められた織上り長のままとなる。その結果、従来のタイヤコード織機においては、製織中のスダレ織り部分について、疵戻し操作が行われた後の実際の織上り長と織機制御装置に記憶されている織上り長とが一致していない状態となる。そして、そのように織上り長が一致していない状態となってしまうと、織布Wの織上り長の管理等が正確に行えないこととなる。
なお、疵戻し操作時において、スダレ織り部分から抜いた緯糸の本数を作業者が確認すれば、疵戻し操作によって前記のように戻される前記戻し範囲の長さ(製織量)を計算によって求めることができる。但し、前述のように、疵戻し操作によって戻される前記戻し範囲の長さは数十mにも及ぶ場合があり、その前記戻し範囲中に存在する緯糸の本数は極めて多い。従って、その緯糸を1本1本数えて確認する作業は、極めて煩雑であり、作業者にとって大きな負担となるため、通常は行われない。
それに対し、本発明では、タイヤコード織機10における傷戻し操作としての経送り操作時において、前記のように送出機構11側へ送られる経糸列T(経糸t)の移動と共に動作する作動部材の動作量(検出動作量)により、その経送り操作に伴って前記のように戻されるスダレ織り部分の戻し長が求められるものとなっている。そこで、その求められた前記戻し長を前述した記憶器111に記憶されている製織済みのスダレ織り部分の織上り長から減算すれば、製織中のスダレ織り部分について、その経送り操作後の実際の織上り長と記憶記111に記憶されている織上り長とを一致させたものとすることができる。
そして、本実施例では、前記の作動部材を巻取機構13における服巻ロール13aとし、その服巻ロール13aを回転駆動する巻取モータMTの回転量(検出動作量としての回転量検出値)に基づき、主制御装置110における演算器115が前記戻し長を求めるものとする。従って、本実施例においては、演算器115は、経送り操作時においては、本発明による製織管理装置の一部(演算装置)として機能するものとなっている。但し、本実施例では、1回に求められる前記戻し長を織機1サイクル分(1製織ステップ分)の製織量に相当する長さと予め定めておき、その前記戻し長を求めることを経送り操作の過程で繰り返すものとする。その上で、本実施例では、演算器115が、前記戻し長を求める毎に、記憶器111に記憶されているスダレ織り部分の織上り長からその求めた前記戻し長を減算する機能を有するものとする。
また、経送り操作中における前記の巻取モータMTの回転量の検出は、製織中において巻取モータMTの駆動を制御するために巻取モータMTの回転量を検出するエンコーダEN2によって行われるものとする。従って、このエンコーダEN2も、経送り操作中においては、本発明による製織管理装置の一部(検出装置(回転検出装置)の一部)として機能する。さらに、そのエンコーダEN2において検出された巻取モータMTの回転量を示す回転量信号S2は、巻取制御装置130によって主制御装置110側へ送られるものとする。従って、巻取制御装置130も、経送り操作時においては、製織管理装置の一部として機能する。なお、巻取制御装置130は、前記のように前記同時逆転釦が操作されて主制御装置110における制御器113からの前記速度指令信号が入力されている間において、その回転量信号S2の出力を行うものとする。
また、本実施例におけるタイヤコード織機10において、各織布部分の製織は、各綜絖枠HFを前述の平織りパターンに従って駆動することによって行われるものとする。さらに、そのように各綜絖枠HFを駆動する開口駆動装置は、主軸MSを駆動源とし、主軸MSの回転に応じて各綜絖枠HFに対し所定の動作を行わせるものする。因みに、その平織りパターンは、周知のように、1繰り返し(1リピート)が2つの開口ステップで構成されると共に、織機2サイクル(2製織ステップ)で1リピートが行われるものである。
その場合において、経送り操作は前記のように主軸MSを停止させたままの状態で行われるため、その経送り操作中においては、開口駆動装置も停止したままの状態となっている。すなわち、経送り操作中における開口駆動装置の状態は、前記のような停止操作が行われて織機が停止状態となった時点における開口パターン1リピート中の位相状態となっている。一方で、経送り操作が行われた結果として、織機上における織布Wの前述の製織状態(どこまで製織されたかの状態)は、織機が停止状態となった時点と比べて変化する。そのため、例えば、前記の平織りパターンにおける2つの開口ステップを第1、第2の開口ステップとし、経送り操作前の織機の停止状態において第2の開口ステップで緯入された緯糸が最も織前側に残っている位相状態になっていたものとすると、その状態から経送り操作のために前述のように緯糸が取り除かれる結果として、開口駆動装置の前記位相状態は変化しないにも関わらず、経送り操作後のスダレ織り部分における最も織前側に残っている緯糸が、第1の開口ステップで緯入された緯糸であるといった状態と成り得る場合がある。
そして、そのような状態のままでタイヤコード織機10が再起動されると、開口駆動装置が各綜絖枠HFを駆動することによって再起動後に最初に形成される経糸開口は、そのスダレ織り部分の最も織前側に残る緯糸が織前に露出するようなものとなる。その結果、その緯糸が既に挿入されている経糸開口内へ再び緯糸が挿入(緯入れ)されることとなり、製織不良が発生するという問題が生じてしまう。なお、開口パターンが平織りパターンである場合には、取り除いた緯糸の本数が奇数本であるとそのような問題が生じてしまうため、取り除く緯糸の本数で調整するということも考えられるが、前記のように取り除かれた緯糸の本数を確認するといったことは通常は行われていないため、そのような問題が生じ得るものとなっている。
それに対し、本実施例では、経送り操作時において、前記した作動部材としての服巻ロール13aを回転駆動する巻取モータMTの回転量に基づき、主制御装置110における演算器115が、前記戻し長に対応する製織ステップの数を求める機能を有しているものとする。但し、前記したように、本実施例における前記戻し長は1製織ステップ分の製織量に相当するものであり、従って、その前記戻し長に対応する製織ステップの数は1である。すなわち、本実施例では、経送り操作中における前記戻し長が求められる時点毎に、その時点までに戻された織布Wの長さ(前記戻し長/1製織ステップ分の製織量に相当する長さ)に対応する製織ステップの数(以下、「戻しステップ数」とも言う。)が求められるものとなっている。その上で、本実施例では、演算器115が、前記戻し長が求められる毎に、その前記戻しステップ数である1を、前述した記憶器111に記憶されている製織中のスダレ織り部分の製織において実行された製織ステップのカウント値から減算する機能を有しているものとする。
そして、その構成によれば、経送り操作後において、前記のように減算された製織ステップのカウント値を入力設定装置19における表示画面に表示する等により、経送り操作後における織機上のスダレ織り部分の前記製織状態、すなわち、戻された後のスダレ織り部分に対応する実行済みの製織ステップのカウント値を、作業者がその表示によって確認できるものとなる。それにより、そのスダレ織り部分の前記製織状態が、タイヤコード織機10の再起動時点における開口駆動装置の前記位相状態に応じたものとなっているか否かが容易に把握できるものとなる。従って、前記のような製織不良の発生を未然に防止することが可能となる。
以下では、そのような本実施例における製織管理装置について、より詳細に説明する。
前記のような織上り長の管理を行うために、主制御装置100における主制御装置110の記憶器111には、主軸MSの1回転(1製織ステップ)あたりの巻取モータMTの回転量が記憶されているものとする。すなわち、製織中においては、前述のように服巻ロール13aは、主軸MSの1回転毎に前記巻取回転量だけ回転駆動されるものであり、その服巻ロール13aを回転駆動する巻取モータMTは、主軸MSの1回転毎に(主モータMMが主軸MSを1回転させる回転量だけ回転する毎に)前記駆動回転量だけ駆動される。そして、服巻ロール13aの前記巻取回転量は、設定緯糸密度と服巻ロール13aの径とから求まるものであり、巻取モータMTの前記駆動回転量は、服巻ロール13aの前記巻取回転量と、巻取モータMTの回転を服巻ロール13aに伝達する駆動伝達機構における減速比とで求めることができる。そして、そのようにして求められる前記駆動回転量が、記憶器111に記憶されているものとする。
また、その製織管理装置のための構成として、主制御装置110は、記憶器111に記憶された前記駆動回転量と経送り操作時における巻取モータMTの回転量とを比較する比較器117を備えている。その比較器117は、記憶器111及び巻取制御装置130に接続されると共に、演算器115にも接続されている。そして、この比較器117は、経送り操作時において巻取制御装置130から出力される巻取モータMTの回転量を示す回転量信号S2と記憶器111に記憶された前記駆動回転量とを比較し、その比較結果に基づいて仮想主軸回転信号を出力するものとなっている。従って、本実施例では、巻取モータMTの前記駆動回転量が、本発明で言う単位回転量に相当する。なお、その比較器117による比較動作に関連する構成は、例えば、次のようなものとすることができる。
まず、巻取制御装置130から比較器117へ向けて出力される回転量信号S2は、巻取モータMTの単位回転量を示すパルスが連続するパルス列信号となっているものとする。その上で、比較器117は、その回転量信号S2の入力に伴い、回転量信号S2に含まれるパルスの数を逐次カウントする。一方、記憶器111に記憶されている前記駆動回転量は、前記単位回転量を1パルスとみなし上で、前記駆動回転量に相当するパルス数が設定値(設定パルス数)として設定されているものとする。
そして、比較器117は、回転量信号S2に基づくパルス数のカウント値と記憶器111に記憶されている設定パルス数とを逐次比較し、両者が一致した時点で、仮想主軸回転信号RSを演算器115に対し出力するものとなっている。但し、比較器117は、仮想主軸回転信号RSを出力した時点で前記のカウント値をリセットし、その後の回転量信号S2の入力に伴って再び1からカウントを開始するものとする。それにより、経送り操作時において、巻取モータMTが前記駆動回転量だけ逆転駆動される毎(服巻ロール13aが前記巻取回転量だけ逆転される毎)に、すなわち、経送り操作によって1製織ステップ分の織布Wが戻される毎に、比較器117から前記の仮想主軸回転信号RSが出力されることとなる。
なお、その場合、比較器117によるパルス数のカウント値が、検出動作量(回転量検出値)となる。従って、この例の場合は、比較器117も、本発明の製織管理装置における検出装置(回転検出装置)の一部として機能していることとなる。すなわち、本実施例では、巻取モータMTの回転量を検出して回転量信号S2を出力するエンコーダEN2と、その回転量信号S2に基づいて回転量検出値を求める比較器117とで、検出装置としての回転検出装置が構成されている。
そして、演算器115は、比較器117からの仮想主軸回転信号RSが入力される毎に、1製織ステップ分の織布W(スダレ織り部分)が戻されたと判断する。言い換えれば、演算器115は、エンコーダEN2によって検出される巻取モータMT(服巻ロール13a)の回転量(検出動作量としての回転量検出値)に基づいて比較器117から出力される仮想主軸回転信号RSにより、経送り操作中のその時点までに戻された織布Wの長さが本実施例における前記戻し長である1製織ステップ分の製織量となったことを求めた状態(1製織ステップ分の製織量を前記戻し長として求めた状態)となる。そして、演算器115は、前記判断に伴い、記憶器111に記憶されているスダレ織り部分の織上り長からの設定緯糸密度によって求められる前記戻し長(1製織ステップ分の製織量)の減算を実行する。
なお、前記のように、巻取制御装置130は、前記同時逆転釦が操作されている間、すなわち、経送り操作が実行されている間において、比較器117に対する回転量信号S2の出力を継続する。また、比較器117は、その回転量信号S2が入力されている間に亘って前記の比較動作を繰り返し、その比較結果に基づいて仮想主軸回転信号RSの出力を行う。そして、演算器115による記憶器111に記憶されている前記織上り長からの前記戻し長の減算が、経送り操作中において、前記の仮想主軸回転信号RSの発生毎(1製織ステップ分の製織量に相当する長さの織布Wが戻される毎)に繰り返される。それにより、経送り操作終了時点における記憶器111に記憶されている前記織上り長は、経送り操作によって戻された結果としての実際の織上り長と一致したものとなる。従って、主軸MSを停止させたままで行われる経送り操作が行われても、タイヤコード織機10の再起動時点において記憶器111に記憶されている織上り長は実際の織布Wの織上り長と一致したものとなっており、織布Wの織上り長の管理等に支障を来すことは無い。
また、演算器115は、巻取モータMTが前記駆動回転量だけ逆転駆動されたことが検出されて比較器117から仮想主軸回転信号RSが出力される毎に、すなわち、1製織ステップ分の製織量(=前記戻し長)の織布Wが戻される毎に、前述のように、前記戻しステップ数である1を、記憶器111に記憶されている製織ステップのカウント値から減算する。すなわち、演算器115は、仮想主軸回転信号RSの入力に伴い、その時点にまでに戻された織布Wの長さに対応する製織ステップの数を求めた状態となり、それに伴い、記憶器111に記憶されている製織ステップのカウント値からの前記戻しステップ数としての1の減算を実行する。それにより、経送り操作終了時点における記憶器111に記憶されている製織ステップのカウント値は、経送り操作によって戻された織布Wにおけるスダレ織り部分の前記製織状態と一致したものとなる。
そして、その記憶器111に記憶されている製織ステップのカウント値を、例えば、入力設定装置19における表示画面に表示するものとすれば、その表示により、経送り操作によって戻された織布Wにおけるスダレ織り部分の前記製織状態を作業者が把握できるものとなる。従って、タイヤコード織機10の再起動前において、その時点の開口駆動装置の前記位相状態に対し織機上における織布Wのスダレ織り部分の前記製織状態が対応したものとなっているかどうか、言い換えれば、再起動後に最初に実行される前記平織りパターンの開口ステップとスダレ織り部分の最も織前側に残っている緯糸が緯入れされた開口ステップとが異なっているか否かを、作業者が判別できることとなる。
それにより、例えば、その両開口ステップが同じであると判別された場合には、織布Wを更に1製織サイクル分だけ戻す等の操作を行って両開口ステップを異なるものとすることにより、前述のような製織不良の発生を未然に防止することができる。すなわち、記憶器111に記憶されている製織ステップのカウント値を経送り操作によって戻された織布Wにおけるスダレ織り部分の前記製織状態と一致したものとし、そのカウント値を作業者が確認できるようにすることは、前記製織不良を防止するための情報を作業者に提供することとなる。
以上では、本発明の一実施形態(実施例)について説明したが、本発明は前記実施例において説明したものに限定されるものではなく、以下のような実施形態(変形例)での実施も可能である。
(1)前記実施例では、巻取機構13における服巻ロール13aを本発明で言う作動部材(経送り操作時に経糸列の移動に伴って動作する部材)と想定し、作動部材の動作量の検出を、服巻ロール13aを回転駆動する巻取モータMTの回転量を検出することで行う実施形態となっている。しかし、本発明は、そのような実施形態に限られるものではなく、例えば、服巻ロール13aを作動部材とする場合であっても、作動部材の動作量の検出を巻取モータMTの回転量の検出によって行うのではなく、服巻ロール13aの回転量を直接に検出するものとしてもよい。すなわち、服巻ロール13aの回転量を検出する検出装置としての回転検出装置を新たに設け、その回転検出装置により、検出動作量としての回転量検出値を求めるものとしてもよい。また、その場合、比較器は、服巻ロール13aの前記巻取回転量と回転検出装置による回転量検出値とを比較するものとなり、記憶部(記憶器111)には、その服巻ロール13aの前記巻取回転量が記憶される。
また、作動部材について、経送り操作時において巻取機構13と同時に逆転駆動される送出機構11における送出ロール11aを作動部材と想定し、エンコーダEN3による送出モータMLの回転量の検出によって作動部材の動作量を検出するものとしたり、前記の服巻ロール13aの場合と同様に、送出ロール11aの回転量を直接に検出するものとしたりしてもよい。さらには、作動部材は、前記のような服巻ロール13aや送出ロール11aに限らず、巻取機構13において服巻ロール13aに対し従動回転するプレスロール13b(又は13c)や送出機構11において送出ロール11aに対し従動回転するニップロール11bであってもよく、また、経糸列Tや織布Wの移動に応じて従動回転する他のロール(例えば、ガイドロール15a、ガイドロール17b等)であってもよい。但し、これらのロールのいずれかを作動部材とする場合も、その回転量を検出する回転検出装置が検出装置として新たに設けられることとなる。
さらに、作動部材は、以上のようなタイヤコード織機10における既存のロール等に限らず、本発明による製織管理装置のための専用の部材として設けられたものであってもよい。例えば、テンションロール15bと綜絖枠HFとの間で、経糸列Tの一部の経糸tを上下方向においてニップするように一対のロールを設ける構成とする。但し、その一対のロールは、回転自在に支持されており、経糸tの移動に対し従動回転するように設けられているものとする。その上で、その一対のロールのうちの一方を本発明で言う作動部材とし、その回転量を回転検出器で検出する構成とすればよい。なお、その一対のロールは、製織中及び織機停止中を問わず前記の経糸tをニップするように設けられたものであってもよいし、製織中は離間しており、経送り操作時にのみ前記の経糸tをニップするように構成されたものであってもよい。
以上のように、本発明においては、タイヤコード織機10上に設けられると共に経送り操作時における経糸列T及び織布Wの移動に伴って回転する複数のロール(回転部材)のうちのいずれかを、作動部材として設定することができる。そして、服巻ロール13a以外の前記回転部材を作動部材として設定する場合には、製織中における1製織ステップ(主軸MSの1回転)あたりのその回転部材の回転量が予め求められて記憶部に記憶されると共に、比較器がその記憶部に記憶された回転量と回転検出器による回転量検出値とを比較するものとなる。
但し、本発明における作動部材は、前記のように経糸列T(織布W)の移動に伴って回転する前記回転部材に限らず、例えば、織布W又は経糸列Tにおける経糸tを作動部材として設定することも可能である。具体的には、織布W又は経糸tに接触させた状態で設置されてその移動を検出する検出器(摺動センサ)を設け、その検出器を用い、経送り操作時において経糸列T(織布W)が移動している間の時間(移動時間)を求めるものとする。その上で、予め求められた経糸列T(織布W)の移動速度と前記移動時間とから、経送り操作時において移動した経糸列T(織布W)の移動量、すなわち、経送り操作によって戻された織布Wの長さを求めるものとしてもよい。
(2)前記実施例では、演算装置としての演算器115によって求められる前記戻し長を織機1サイクル分(1製織ステップ分)の製織量に相当する長さとし、経送り操作時において、その長さ分の織布Wが戻された時点(戻された織布Wの長さがその前記戻し長である1製織ステップ分の製織量に相当する長さに達した時点)を求め、その時点において記憶器111に記憶されている織上り長から1製織ステップ分の製織量を減算する実施形態となっている。しかし、本発明は、そのような実施形態に限らず、例えば、次のようなものであってもよい。
まず、作動部材の動作量(前記実施例の場合の服巻ロール13aの回転量)の検出については、経送り操作の開始時点から終了時点までの全期間の作動部材の動作量が検出されるものとする。そして、演算装置が、その検出された動作量(検出動作量)と記憶器に記憶された1製織ステップの作動部材の動作量及び1製織ステップ分の製織量とから、経送り操作によって戻された織布Wの範囲(前記戻し範囲)全体の長さを一括で前記戻し長として求めるものとする。その上で、その求められた前記戻し範囲全体の長さ(前記戻し長)を、経送り操作後に、記憶部に記憶されている織上り長から減算するものとしてもよい。
また、その場合、記憶部に記憶されている織上り長からの前記戻し長の減算は、前記実施例と同様に、演算装置(演算器115)によって自動的に行われるものであってもよいが、作業者がその減算を実行するものであってもよい。すなわち、演算装置は前記戻し長を求めるまでとし、その求められた前記戻し長が、入力設定装置19における表示画面に表示されるものとする。その上で、前記減算については、作業者が、その表示を見た上で、入力設定装置19を操作して行うものであってもよい。このように、本発明の製織管理装置においては、演算装置は、前記実施例のように前記減算を行う機能を有しているものに限らず、本発明に関し前記戻し長を求める機能のみを有するものであってもよい。
また、演算装置が、予め定められた時間間隔毎に、その間に戻された織布Wの長さを前記戻し長として求める動作を実行するものとし、その動作が実行される毎に、その求めた前記戻し長を記憶部に記憶されている織上り長から減算するものとしてもよい。さらには、経送り操作において、前記戻し範囲分の織布Wを1回の操作で戻すのではなく、断続的に行われる複数回の操作によって前記戻し範囲分の織布Wが戻される場合であって、その1回の操作における経糸列Tの移動(作業者による前記同時逆転釦の操作)が任意の時間で行われる場合には、その1回の操作毎に、その1回の操作によって戻される織布Wの長さを前記戻し長として求めるものとしてもよい。
なお、これらの例の場合、前記実施例の構成における仮想主軸回転信号RSを出力するための比較器は不要であり、代わりに、作動部材の動作量を検出する検出器(前記実施例の場合の服巻ロール13aの回転量を検出するエンコーダEN)からの検出信号(前記実施例の場合の回転量信号S2)に基づいて前記の検出動作量を求める動作量検出器を設け、前記のように前記戻し長を求める時点で、その動作量検出器が演算装置に対し検出動作量を出力するものとすればよい。また、動作量検出器に相当する機能が、演算装置又は巻取制御装置130に備えられているものとしてもよい。
(3)前記実施例では、経送り操作時において、1製織ステップ分の製織量に相当する長さの織布Wが戻される毎に、記憶器111に記憶されている製織ステップのカウント値から、その製織ステップの数である1を減算する実施形態となっている。すなわち、予め定められた前記戻し長が求められる毎に、その前記戻し長に対応する製織ステップの数を記憶部に記憶されている製織ステップのカウント値から減算する実施形態となっている。しかし、本発明においては、その記憶部に記憶されている製織ステップのカウント値からの前記戻しステップ数の減算は必須ではなく、例えば、織機上で織布Wの製織状態と開口駆動装置の前記位相状態とを確認して両者が対応しているかどうかを判断できる場合には、演算装置が、前記戻し製織ステップ数を求める機能やその減算を実行する機能を有していないものであってもよい。
また、演算装置が、前記戻しステップ数を求める機能を有する場合において、その演算装置による求め方は、前記実施例のようなものに限らず、例えば、前記のように予め定められた時間間隔毎に、その間に戻された織布Wの長さを前記戻し長として求める場合において、その前記戻し長が求められる毎に、その前記戻し長に対応する製織ステップの数を前記戻しステップ数として求めるものとしてもよい。そして、演算装置が、その求めた前記戻しステップ数を、記憶部に記憶されている製織ステップのカウント値から減算するものとしてもよい。
また、その求め方について、経送り操作によって戻される織布Wの全範囲である前記戻し範囲の長さから、その前記戻し範囲の長さに対応する製織ステップの数を経送り操作の終了時点以降に一括して求めるものであってもよい。なお、その場合において、その求められた前記戻しステップ数の前記減算が演算装置によって行われることは必須ではなく、前記減算が行われた結果としての製織ステップのカウント値ではなく、その求められた前記戻し長が、入力設定装置19における表示画面に表示されるものとしてもよい。そして、その場合は、作業者がその表示を見た上で、入力設定装置19を操作して前記減算を行うものとすればよい。因みに、経送り操作後の織布Wの製織状態と開口駆動装置の前記位相状態との対応関係が前記戻しステップ数の表示のみで判別できる場合であって、記憶部に記憶されている製織ステップのカウント値と経送り操作後の織布Wにおける実行済みの製織ステップの数とが一致していなくても問題が生じない場合には、前記減算自体を省略することが可能である。
(4)前記実施例では、製織のための製織条件等が記憶される単一の記憶器117が、本発明の製織管理装置における記憶部としても機能するものとなっている。但し、その記憶部については、例えば、織機制御装置100(主制御装置110)が、製織のための製織条件等の設定値や製織に伴う情報等が記憶される記憶器とは別に、織上り長や製織ステップのカウント値が記憶される記憶器を備え、その別の記憶器が記憶部として機能するものであってもよい。また、織上り長と製織ステップのカウント値とがそれぞれ別の記憶器に記憶され、その2つの記憶器で本発明における記憶部が構成されるものとしてもよい。
また、前記実施例では、比較器117がパルス列信号である回転量信号のパルス数をカウントすることで回転量検出値(検出動作量)が求められるものとなっているが、これに代えて、比較器117と巻取制御装置130との間に計数器(カウンタ)を設け、その計数器がパルス数をカウントすると共にパルス列信号におけるパルスの入力毎にそのカウント値を比較器に向けて出力するものとすることも可能である。そして、その場合は、その計数器とエンコーダEN2とで回転量検出装置が構成されることとなる。また、その計数器に相当する機能を巻取制御装置130が有している構成とすることも可能である。
また、前記実施例では、比較器117は、仮想主軸回転信号RSの出力毎に前記のカウント値をリセットするものとしたが、そのリセット動作が行われず、経送り操作中に亘って前記のパルス数のカウントが継続的に行われるものであってもよい。そして、その場合には、そのカウント値が前記の設定パルス数だけ増加する毎にその増加したことを判別し、その判別毎に仮想主軸回転信号RSが出力されるようにすればよい。また、この場合においては、判別される検出動作量が単位動作量分だけ増加した時点が、本発明で言う検出動作量と単位動作量とが一致した時点に相当する。
また、前記実施例では、巻取モータMT(作動部材としての服巻ロール13a)の回転量を検出するエンコーダEN2が出力する回転量信号S2をパルス列信号とし、回転量検出値をパルス数のカウント値としたが、本発明においては、検出装置(回転検出装置)によって検出される検出動作量(回転量検出値)は、そのようなパルス数のカウント値に限らず、動作量(回転量)の絶対値であってもよい。すなわち、検出装置(回転検出装置)が、作動部材の動作量の絶対値を検出するものであってもよい。
なお、本発明は上記のいずれの実施形態にも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。