以下では、図1~図4に基づき、本発明の一実施例について説明する。
図1は、本発明が適用される流体噴射式織機の1つである空気噴射式織機における緯入れ装置の一例としての緯入れ装置1について、その装置部分の主体的な部分を示している。なお、本発明の緯入れ装置は、複数の緯入れ系列を備えたものを前提としている。その上で、本実施例の緯入れ装置1は、その複数の緯入れ系列として6組の緯入れ系列(L1~L6)を備えている。但し、図1は、その緯入れ装置1を側方から視た図面である。また、緯入れ装置1は、側方から見て、その6組の緯入れ系列L1~L6が手前側と奥側とに3組ずつに分けて配置された構成となっている。そのため、図1では、手前側の3組の緯入れ系列L1~L3のみが示されている。
各緯入れ系列は、図示しない給糸スタンドのペッグに架装される給糸体2と、給糸体2の下流側に設けられた測長貯留装置4と、給糸体2と測長貯留装置4との間に備えられると共にその間での給糸切れを検知する給糸センサ3と、測長貯留装置4の下流側に配設される緯入れノズル5とを備える。また、緯入れノズル5は、図示の例では、測長貯留装置4の下流側に配設される補助メインノズル5aと、補助メインノズル5aの下流側に配設されるメインノズル5bとで構成されている。そして、メインノズル5bは、その先端が経糸開口Sを指向する向きで設けられている。
測長貯留装置4は、緯糸が巻き付けられて貯留される貯留ドラム41と、パイプ状に形成されて給糸体2からの緯糸が挿通されると共に貯留ドラム41の上流側に備えられて下流側の端部が貯留ドラム41の外周面と対向する回転ヤーンガイド42と、回転ヤーンガイド42を回転駆動するフィーダモータMと、貯留ドラム41の先端側の部分に対向して設けられると共にソレノイドによって貯留ドラム41に対し進退駆動される係止ピン44とを有している。なお、その測長貯留装置4は、製織の開始時においては、予め設定された予備巻量に応じた巻量の緯糸が貯留ドラム41に巻き付けられた(貯留された)状態とされる。また、測長貯留装置4は、その係止ピン44が進退駆動されることで、貯留ドラム41の緯糸を解舒可能な状態と解舒不能な状態とに切り替えられる。
図2、図3は、本実施例の緯入れ装置1を制御ブロック図のかたちで示したものである。図示のように緯入れ装置1は、前記した装置部分の構成に加え、本発明の制御装置としての緯入れ制御装置10と、緯入れ制御装置10に接続された入力設定器20とを備えている。また、緯入れ制御装置10は、入力設定器20に接続された主制御器14と、主制御器14に接続された記憶器12とを備えている。そして、緯入れ制御装置10は、入力設定器20により入力された緯入れパターン等の設定情報を主制御器14を介して記憶器12において記憶するように構成されている。因みに、入力設定器20は、例えば、表示器(図示略)を備え、その表示器上に表示する表示画面を操作することにより設定値等の入力が可能なタッチパネル式のものである。
また、緯入れ制御装置10は、緯入れ系列毎に設けられた給糸センサ3、フィーダモータM、係止ピン44のソレノイド、及び電磁開閉弁のそれぞれに対し接続されている。なお、これらのうちの電磁開閉弁は、エア供給源(図示略)と補助メインノズル5a及びメインノズル5bとを繋ぐ各管路中に設けられた電磁開閉弁である。そして、緯入れ制御装置10は、各緯入れ系列での緯入れにおいて、その緯入れ系列における各装置の動作を制御する。
さらに、緯入れ制御装置10は、緯入れ系列毎のフィーダモータM(Ma~Mf)に対し1対1の関係で設けられると共に主制御器14に対し接続された駆動手段18(18a~18f)も備えている。なお、その駆動手段18は、フィーダモータMの駆動を制御するためのものである。そして、駆動手段18は、主制御器14から入力される駆動指令信号であって目標とする回転ヤーンガイド42の回転速度に応じた駆動指令信号に基づき、対応するフィーダモータMの駆動を制御する。それにより、回転ヤーンガイド42は、その目標とする回転速度で回転した状態(駆動が制御された状態)とされる。
その上で、本実施例では、緯入れ制御装置10は、各緯入れ系列において、その緯入れ系列で緯入れが行われてから次にその緯入れ系列で緯入れが行われるまでの期間(待機期間)で1回の緯入れ分の巻量の緯糸が貯留ドラム41に対し巻き付けられるような態様(本発明で言う「通常の巻き付け態様」)で回転ヤーンガイドが回転駆動されるように、フィーダモータMの駆動を制御している。すなわち、緯入れ制御装置10は、基本的には、前記の待機期間と1回の緯入れ分の巻量とから求められる回転速度で、製織中において回転ヤーンガイド42が常に回転駆動されるようにフィーダモータMの駆動を制御している。例えば、1回の緯入れに4ターン分の巻量の緯糸が用いられると共に前記の待機期間が織機のNサイクルであるとしてその時間がn(min)であるとすると、前記の待機期間に回転ヤーンガイド42が4回転されることから、その回転速度は、4/n(rpm)となる。
なお、本実施例では、製織が、第1緯糸C1、第2緯糸C2及び第3緯糸C3の3種類の緯糸を使用して行われるものとする。そして、前記した6組の緯入れ系列L1~L6に対しその3種類の緯糸C1、C2、C3が仕掛けられるが、その仕掛け方は、各緯糸が2組ずつの緯入れ系列に仕掛けられるかたちとなっている。具体的には、第1緯糸C1が第1、第2緯入れ系列L1、L2に、第2緯糸C2が第3、第4緯入れ系列L3、L4に、第3緯糸C3が第5、第6緯入れ系列L5、L6にそれぞれ仕掛けられている。このように、本実施例では、2つずつの緯入れ系列が同一種類の緯糸を仕掛けられるかたちでグループ化され、その2つの緯入れ系列で1つの緯入れグループを構成している。
その上で、その製織のための緯入れは、C1→C2→C3の順序で緯糸が緯入れされるように設定された緯入れパターンに従って行われる。但し、各緯糸C1、C2、C3の緯入れは、前記した緯入れグループ毎に2つの緯入れ系列を交互に動作させるかたちで行われる。
そこで、緯入れ制御装置10における記憶器12には、前記した設定情報として、各緯糸C1、C2、C3と緯入れ系列との対応関係に関する情報、及び前記した緯入れパターンが記憶される。さらに、記憶器12には、同じく設定情報として、前記した各緯入れグループにおける緯入れ系列の選択順序に関する情報(選択情報)が記憶される。なお、その選択情報は、例えば第1緯糸C1に関しては、第1緯入れ系列L1→第2緯入れ系列L2→第1緯入れ系列L1→・・・の順番で交互に第1緯糸C1の緯入れが行われるように設定される。
以上で説明した緯入れ装置1では、製織(織機の運転)が開始されると、緯入れ制御装置10は、記憶器12から読み出した緯入れパターンに基づき、次に緯入れすべき緯糸(選択緯糸)を把握する。そして、緯入れ制御装置10は、その選択緯糸が仕掛けられた緯入れグループの選択情報に基づき、緯入れ動作を行う緯入れ系列を選択する。その上で、緯入れ制御装置10は、その選択した緯入れ系列における各装置の動作を制御し、その緯入れ系列に選択緯糸の緯入れを実行させる。なお、その緯入れは、主軸を駆動するメインモータMsに接続されるエンコーダENからの主軸角度情報に基づき、選択した緯入れ系列の電磁開閉弁を予め設定された緯入れ期間に亘って駆動し、補助メインノズル5a及びメインノズル5bからのエア噴射を制御するかたちで行われる。
また、本発明は、製織中にいずれかの緯入れ系列で給糸切れが発生した場合に、織機を停止させることなく、その緯糸の緯入れグループにおける給糸切れが発生していない緯入れ系列でその緯糸の緯入れを継続するように緯入れ装置が構成されていることを前提としている。したがって、本実施例の場合、例えば第1緯糸C1が仕掛けられた第1緯入れ系列L1、第2緯入れ系列L2で構成された緯入れグループにおいて、そのうちの第2緯入れ系列L2で給糸切れが発生した場合には、以後の第1緯糸C1の緯入れは、第1緯入れ系列L1のみで継続される。
なお、前記のように第2緯入れ系列L2で給糸切れが発生すると、第2緯入れ系列L2の給糸センサ3がその給糸切れの発生を検知して緯入れ制御装置10に対し給糸異常信号を出力する。そして、緯入れ制御装置10は、その給糸異常信号が入力されるのに伴って、第1緯糸C1が仕掛けられた緯入れグループから第2緯入れ系列L2を除外する。その上で、緯入れ制御装置10は、以後の第1緯糸C1の緯入れにおいて、前記のような選択情報に従った緯入れ系列の選択を行うのではなく、第2緯入れ系列L2が選択されないような制御を行う。
その後、その第2緯入れ系列L2を第1緯糸C1の緯入れグループに復帰させるべく、その復帰作業が作業者により行われる。以下では、その復帰作業の手順について説明する。なお、図4は、緯入れグループから除外された緯入れ系列を再び緯入れグループに復帰させる際に、入力設定器20の表示器上に表示させる表示画面(操作画面22)を示している。その操作画面22には、6つの緯入れ系列のそれぞれに対応するかたちで1~6の番号が付された円形の表示(円形表示)R1~R6が含まれている。そして、その各円形表示は、その番号に対応する緯入れ系列が正常な状態である場合には点灯状態となっており、一方で、給糸切れが発生した場合(その緯入れ系列が除外された場合)には点滅状態となる。したがって、前記のように第2緯入れ系列L2で給糸切れが発生した場合では、操作画面22においては、第2緯入れ系列L2に対応する円形表示R2が、点灯状態から点滅状態に変更される。
そして、その除外された第2緯入れ系列L2の復帰作業として、先ず、作業者は、その第2緯入れ系列L2の測長貯留装置4において、その給糸切れの修復を行う。そして、その給糸切れの修復の完了後、作業者は操作画面22において点滅状態となっている第2緯入れ系列L2に対応する円形表示R2をタッチし、第2緯入れ系列L2が入力設定器20において選択された状態とする。
なお、操作画面22には、そのように選択された緯入れ系列を緯入れグループに復帰させるための除外系列復帰釦24が含まれている。そこで、作業者は、前記のように第2緯入れ系列L2を選択された状態とした上で、その選択した緯入れ系列を緯入れグループに復帰させるべく除外系列復帰釦24を操作(タッチ)する。それにより、入力設定器20から緯入れ制御装置10(主制御器14)に対し、第2緯入れ系列L2を第1緯糸C1の緯入れグループに復帰させるための復帰信号が出力される。
その復帰信号が入力されると、緯入れ制御装置10は、その復帰信号が入力された時点以降における第1緯糸C1の緯入れの制御を、前記した選択情報に従った緯入れ系列の選択に基づいて行われるような制御(第2緯入れ系列L2が除外される前の制御)に戻す。その結果として、第2緯入れ系列L2は、第1緯糸C1の緯入れグループに復帰した状態となる。
因みに、緯入れ制御装置10は、その復帰信号が入力されると、操作画面22における第2緯入れ系列L2に対応する円形表示R2を点滅状態から点灯状態に変更する。そして、その円形表示R2が点灯状態となっていることを作業者が確認したことをもって、第2の緯入れ系列L2の復帰作業が完了する。
ここで、緯入れ制御装置10は、前記したように製織中において回転ヤーンガイド42が常に回転駆動されるようにフィーダモータMの駆動を制御するように構成されている。したがって、前記のように除外された緯入れ系列を緯入れグループに復帰させる、すなわち、前記のように除外系列復帰釦24が操作されると、緯入れ制御装置10は、その復帰信号が入力された時点からフィーダモータMの駆動の制御を開始する。つまり、本実施例では、前記のように除外系列復帰釦24の操作が行われた時点から回転ヤーンガイド42による緯糸の巻き付け動作が開始される。そして、回転ヤーンガイド42は、所望の巻き付け態様で緯糸が貯留ドラム41に巻き付けられるように、その回転(駆動)が制御される。なお、その回転ヤーンガイド42の駆動はフィーダモータMの駆動を制御する結果として制御されるものであることから、以下の説明では、フィーダモータMの駆動の制御及び回転ヤーンガイド42の駆動の制御を、区別すること無く総称して「回転駆動制御」と言う。
以上で説明した緯入れ装置において、本発明は、除外されていた緯入れ系列が復帰した時点からの前記回転駆動制御に関し、前記した通常の巻き付け態様で巻き付けられる緯糸に加え、予め定められる巻量(補充巻量)分の緯糸が巻き付けられるように、前記した除外系列復帰釦24が操作された時点からのその前記回転駆動制御を、通常の制御とは異なる制御(補充制御)とするものである。なお、その補充巻量は、前記した予備巻量とは異なる任意の巻量であるが、給糸切れ発生時の回転ヤーンガイド42の動作等を踏まえると、3回の緯入れ分の巻量を上限とした巻量とされる。その上で、本実施例では、その補充巻量は、前記した1回の緯入れにおいて緯入れされる長さに応じた巻量(4ターン)に定められているものとする。
さらに、その補充巻量分の緯糸の巻き付けは、予め定められた期間(補充期間)で行われる。但し、その補充期間は、除外されていた緯入れ系列の復帰時点を起点として定められると共に、その復帰後に巻かれた緯糸が貯留ドラム41から解舒され始める時点以前に終点が定められた期間とされる。その上で、本実施例では、その補充期間は、前記した待機期間と同じ長さの期間に定められているものとする。なお、その補充巻量及び補充期間は、入力設定器20において入力設定されることで、緯入れ制御装置10における記憶器12において記憶される。このように本実施例では、その補充巻量が本発明で言う補充情報として設定されて記憶器12に記憶されている。
また、本実施例では、緯入れ制御装置10における主制御器14は、前記した除外系列復帰釦24の操作に伴って前記の補充制御を行うかどうかを判別するために用いられる判別器16を含んでいる。すなわち、緯入れ制御装置10は、その判別器16を含むことにより、所定の条件を満たした場合にのみその補充制御を行うように構成されている。詳しくは、次の通りである。
前述のように、除外された緯入れ系列が緯入れグループに復帰していない状態において製織不良の発生等により織機が停止した場合、作業者によっては、その除外された緯入れ系列に対し予備巻をし直す場合がある。その場合、その除外された緯入れ系列は、予備巻量に応じた巻量の緯糸が貯留ドラム41上に存在する(貯留された)状態となる。そのため、除外系列復帰釦24の操作に伴って無条件に前記の補充制御が行われるように緯入れ装置が構成されていると、前記のような場合には、除外されていた緯入れ系列は、その復帰に伴って貯留ドラム41上に過剰な緯糸が巻き付けられた状態となる。そこで、本実施例においては、緯入れ制御装置10は、除外された緯入れ系列において予備巻がなされていないことを前記の所定の条件として判別を行い、その条件を満たすと判別された場合にのみ前記の補充制御を行うように構成されている。それにより、緯入れ制御装置10は、貯留ドラム41上に過剰な緯糸が巻き付けられるのを防止するものとなっている。
そのために、主制御器14は、その判別を実現するための判別器16を含んでいる。また、主制御器14は、除外された緯入れ系列が緯入れグループに復帰していない状態において前記のように予備巻がし直された場合に、すなわち、前記の条件を満たしていないと判別した場合に、前記の補充制御を不選択とするフラグ(不選択フラグ)を判別器16にセットするように構成されている。具体的には、主制御器14は、入力設定器20から予備巻を行うための予備巻信号が入力されるのに伴い、判別器16において前記の不選択フラグをセットするように構成されている。
その上で、主制御器14は、前記のように復帰信号が入力されると、その判別器16において前記の不選択フラグがセットされているかどうかを判別するように構成されている。そして、主制御器14は、その判別結果に応じて、前記回転駆動制御を、前記の補充制御、もしくは、本来の通常の巻き付け態様で回転ヤーンガイド42が回転駆動されるような制御(通常制御)とするように構成されている。
以上のような緯入れ制御装置10を備えた緯入れ装置において、前記した除外系列復帰釦24の操作に伴う前記回転駆動制御は、以下のように行われる。
前述のように、除外された緯入れ系列を復帰させるべく除外系列復帰釦24が操作されると、入力設定器20から主制御器14に対し復帰信号が出力される。そして、主制御器14は、その復帰信号の入力に伴って、前記のように緯入れ系列を緯入れグループに復帰させる。
ところで、前述のようにその緯入れ系列が除外されている状態で織機が停止した場合においてその除外された緯入れ系列に対して予備巻をし直す場合、入力設定器20における予備巻釦(図示略)が作業者により操作され、それに伴って入力設定器20から主制御器14に対し予備巻信号が出力される。そして、主制御器14は、その予備巻信号が入力されると、その緯入れ系列において予備巻をし直すように回転ヤーンガイド42を駆動すべく、駆動手段18に対し駆動指令信号を出力する。それにより、駆動手段18は、その駆動指令信号に基づいて回転ヤーンガイド42の駆動を制御する。また、主制御器14は、前記の予備巻信号が入力された場合には、判別器16において前記の不選択フラグをセットする。一方で、その予備巻がし直されない場合には、判別器16は、その不選択フラグがセットされていない状態のままとなる。
そこで、主制御器14は、前記のように入力設定器20から出力される復帰信号が入力されると、判別器16に前記の不選択フラグがセットされているかどうかを判別する。そして、その不選択フラグがセットされていると判別された場合(予備巻がし直された場合)には、主制御器14は、復帰させる緯入れ系列における前記回転駆動制御を前記した通常制御で行わせるべくその通常制御に応じた駆動指令信号を駆動手段18に対して出力する。それにより、駆動手段18は、その駆動指令信号に基づいて、回転ヤーンガイド42の駆動を通常制御で制御する。なお、その場合、その緯入れ系列の復帰後において、回転ヤーンガイド42は、前記した通常の巻き付け態様(前記の待機期間で4回転するような回転速度(4/n(rpm)))で回転駆動される。
一方、前記の不選択フラグがセットされていないと判別された場合(予備巻がし直されていない場合)には、主制御器14は、前記回転駆動制御を前記した補充制御で行わせるべくその通常制御に応じた駆動指令信号を駆動手段18に対して出力する。
詳しくは、主制御器14は、前記の不選択フラグがセットされていないと判別した場合には、前記した補充巻量及び補充期間に基づき、通常制御で巻き付けられる緯糸に加えて補充巻量分の緯糸が巻き付けられるような回転ヤーンガイド42の回転速度(補充回転速度)を算出する。具体的には、主制御器14は、記憶器12に記憶された前記の補充巻量及び補充期間に基づき、通常制御による回転速度に対し増速すべき回転速度を求め、その求められた回転速度を通常制御による回転速度に加算することにより、その補充回転速度を求める。なお、本実施例では、前述のように補充巻量は4ターン分であり、補充期間が前記した待機期間と同じ長さの期間(Nサイクル=n(min))であることから、その増速すべき回転速度は4/n(rpm)として求められる。そして、通常制御による回転速度が4/n(rpm)であることから、その補充回転速度は、8/n(rpm)となる。
そして、主制御器14は、前記の補充期間においては、その補充回転速度で回転ヤーンガイド42が駆動されるような駆動指令信号を駆動手段18に対して出力する。それにより、駆動手段18は、その駆動指令信号に基づき、その補充期間において回転ヤーンガイド42の駆動を補充制御で行う。すなわち、回転ヤーンガイド42は、通常制御で巻き付けられる緯糸に加えて補充巻量分の緯糸が補充期間に亘って巻き付けられるように、その補充回転速度で回転駆動される。
なお、図示は省略するが、主制御器14は、復帰信号が入力された時点からの織機のサイクル数(主軸の回転数)をカウントするカウンタ、及びそのカウント値と補充期間に相当するサイクル数とを比較する比較器とを含んでいる。そして、主制御器14は、復帰信号が入力された時点からそのカウンタにおいて織機のサイクル数のカウントを開始し、比較器においてその両者が一致した時点、すなわち、前記のように復帰信号が入力された時点からの織機のサイクル数が補充期間として設定されたサイクル数に達した時点で、それ以降の前記回転駆動制御が通常制御で行われるように、駆動手段18に対し出力する駆動指令信号を補充制御に応じたものから通常制御に応じたものに切り換える。それにより、回転ヤーンガイド42は、補充期間の終点以降においては、通常の巻き付け態様で回転駆動される。因みに、主制御器14は、前記のように駆動指令信号を通常制御に応じたものに切り換えた時点でカウンタのカウント値をリセットする。そして、そのカウンタは、し、次回の織機のサイクル数のカウントに備えて待機した状態となる。
以上のように、本実施例の緯入れ装置によれば、前記した除外系列復帰釦24の操作に伴って開始される前記回転駆動制御が前記した補充制御とされることにより、設定された補充巻量分の緯糸が補充期間において通常制御の場合よりも多く貯留ドラム41上に巻き付けられる。言い換えれば、復帰後の補充期間においては、回転ヤーンガイド42は、通常制御で巻き付けられる緯糸よりも補充巻量分の緯糸がその補充期間内で多く貯留ドラム41上に巻き付けられるような通常とは異なる態様(補充態様)で回転駆動される。
なお、一般的な測長貯留装置4は、回転ヤーンガイド42の回転に伴い、前述のように貯留ドラム41上に緯糸を巻き付けると共にその巻き付けられた緯糸を回転ヤーンガイド42の回転量に応じて係止ピン側へ送るように構成されている。したがって、前記の補充態様で回転ヤーンガイド42が回転駆動されると、復帰後にその緯入れ系列において貯留ドラム41上に巻き付けられる緯糸(前述の後側巻糸)は、通常制御の場合と比べ、より多く係止ピン側へと送られることとなる。そして、その結果として、前述の前側巻糸が全て緯入れされた時点での後側巻糸の貯留ドラム41上での位置は、通常制御の場合よりも係止ピン側の位置となる。それにより、後側巻糸の緯入れ時において緯糸に掛かる解舒抵抗が大きくなるということが無いため、前述のような緯入れ不良の発生が未然に防止される。
また、本実施例では、前記の補充制御が、主制御器14の判別器16において前記した不選択フラグがセットされていない場合にのみ行われる。すなわち、前記した補充巻量分の緯糸の巻き付けは、予備巻がし直されていない場合にのみ行われる。それにより、復帰された緯入れ系列において、貯留ドラム41上に過剰な巻量の緯糸が巻き付けられた状態となることが防止される。
以上では、本発明による緯入れ装置の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は前記実施例において説明したものに限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
(1)補充情報としての補充巻量について、前記実施例では、補充巻量を1回の緯入れ分の巻量に定めている。しかし、本発明において、補充巻量は、前記実施例の巻量に限定されず、前述のように給糸切れ発生時の回転ヤーンガイド42の動作等を踏まえて適当な巻量に定めれば良い。例えば、前述のように3回の緯入れ分の巻量を上限として定め、その範囲内で任意の巻量に定めれば良い。但し、その補充巻量は、回転ヤーンガイド42の1回転単位、すなわち、1ターン単位で定められる。
(2)前記実施例において補充巻量と共に設定される補充期間について、前記実施例では、その補充期間は、織機のサイクル数(主軸の回転数)で設定されている。しかし、その補充期間は、そのような織機のサイクル数に限らず、時間で設定しても良い。
具体的には、その補充期間として、例えば前記実施例の補充期間(待機期間)に相当する時間を設定し、緯入れ制御装置10における記憶器12に記憶させておく。また、主制御器14を、除外されていた緯入れ系列の復帰時点から計時を開始するタイマーを備えるように構成されたものとする。但し、そのタイマーは、主制御器14に対する復帰信号の入力によって計時を開始すると共に、記憶器12に記憶された補充期間としての時間に達した時点で切替信号を発生するように構成されているものとする。その上で、緯入れ制御装置10を、前述のように復帰信号が入力された時点からの前記回転駆動制御を前記の補充制御で行うと共に、タイマーが切替信号を発生した時点で前記回転駆動制御を補充制御から通常制御に切り替えるように構成すれば良い。因みに、補充期間を時間で設定した場合であっても、前記した補充回転速度は、その補充期間と補充巻量とに基づいて算出される。
また、前記実施例では、その補充期間は、前記した待機期間と同じ期間に定められている。しかし、補充期間が設定される場合であっても、その補充期間は、前記実施例の期間に限定されず、前述のように除外されていた緯入れ系列の復帰時点を起点とした上で、復帰後に巻かれた緯糸が貯留ドラム41から解舒され始める時点までの範囲において適当な期間に定めれば良い。但し、その補充期間は、緯入れされる緯糸の糸種等を踏まえてその期間の下限を定めた上で、その下限以上の期間に定められる。詳しくは、補充巻量分の緯糸を多く巻き付けるための補充回転速度は、その補充期間が短くなると必然的に速い速度となる。そして、そのように速い速度で緯糸の巻き付けを行った場合、給糸切れが発生する場合がある。但し、その給糸切れを生じる速度は、巻き付けられる(緯入れされる)緯糸の糸種等によって異なる。そこで、その補充期間は、その緯糸の糸種等を踏まえ、給糸切れが発生しない補充回転速度となるように下限を定めた上で、その下限以上の期間に定められる。
また、前記実施例では、前記の補充制御は、設定された補充期間及び補充情報としての補充巻量に基づいて行われている。しかし、本発明においては、補充制御を行う上で、その補充期間が設定されていることは必須ではない。例えば、緯入れ系列の復帰時点からの前記の補充回転速度を予め求めて設定すると共に、その補充回転速度で回転ヤーンガイド42が回転駆動される回転回数(補充回転回数)を設定し、それらに基づいて補充制御が行われるようにしても良い。
なお、その補充回転回数は、補充制御を行う時間を定めた上で、その時間での通常制御による回転ヤーンガイド42の回転回数に対して予め定められた補充巻量に応じた回転回数を加算した回転回数として求められる。そして、その補充回転回数は、前記のように補充巻量に基づいて求められるものであるから、本発明で言う補充情報に相当する。また、補充回転速度は、その定めた時間で回転ヤーンガイド42が補充回転回数だけ回転するような速度として求められる。そして、そのようにして求められた補充回転速度で補充回転回数だけ回転ヤーンガイド42が回転駆動されると、前記時間において、通常制御で回転ヤーンガイド42を回転駆動した場合の巻量に対し補充巻量分の緯糸が貯留ドラム41に対し多く巻き付けられた状態となる。
その上で、緯入れ制御装置10を、復帰信号が入力された時点からの回転ヤーンガイド42の回転駆動を前記のようにして求められた補充回転速度で行うと共に、回転ヤーンガイド42の回転回数が設定した補充回転回数に達した時点で回転ヤーンガイド42の回転速度を通常制御に応じた速度に切り替えるように構成すれば良い。なお、回転ヤーンガイド42の回転回数は、例えば、貯留ドラム41の周面に対向して配置されて緯糸の通過を検知するセンサを測長貯留装置4が備えるものとし、そのセンサによる緯糸の検知回数を回転ヤーンガイド42の回転回数としてカウントするといったかたちで計数される。
(3)前記回転駆動制御を復帰信号が入力された時点から補充制御で開始すると共に補充巻量分の緯糸の巻き付けが完了した時点で通常制御に切り替える制御装置としての緯入れ制御装置の構成について、前記実施例では、主制御器14が、復帰信号の入力に伴って補充制御に応じた駆動指令信号を駆動手段18に出力すると共に、補充期間の終点以降においては通常制御に応じた駆動指令信号を出力するように構成されている。しかし、前記回転駆動制御を切り替えるための緯入れ制御装置の構成は、そのような前記実施例の構成に限らず、以下のような構成としても良い。
例えば、緯入れ制御装置において、主制御器を、通常制御に応じた駆動指令信号の出力のみを行うように構成されたものとする。その上で、補充制御の際には、その主制御器から出力される駆動指令信号を補充制御に応じたものに補正するように、その緯入れ制御装置を構成しても良い。
なお、その構成の場合、緯入れ制御装置は、前記実施例の構成に加え、前記補正のための補正器であって、主制御器に接続される補正器を備えるように構成される。さらに、主制御器は、前記の判別器において不選択フラグがセットされていない場合に、復帰信号の入力に伴ってその補正器に対して補正開始信号を出力するように構成される。加えて、主制御器は、補充巻量分の緯糸の巻き付けが完了した時点(前記実施例で言う補充期間が終了した時点)において、補正器に対して補正終了信号を出力するように構成される。また、補正器は、主制御器からの補正開始信号の入力に伴い、例えば前記実施例と同様に通常制御による回転速度に対して増速すべき回転速度を記憶器に記憶された補充情報等に基づいて算出するように構成される。そして、補正器は、その算出した回転速度に応じた補正信号を、主制御器と駆動手段との間に設けられた加え合わせ点に出力すると共に、主制御器からの補正終了信号の入力に伴ってその補正信号の出力を停止するように構成される。
以上のように構成された緯入れ制御装置によれば、復帰信号の入力に伴って主制御器から出力される通常制御に応じた駆動指令信号が、補正器から出力される補正信号により、主制御器と駆動手段との間に設けられた加え合わせ点において補正される。それにより、補正器から補正信号が出力されている間においては、駆動手段に対し入力される駆動指令信号は、補充制御に応じたものとなる。その結果として、回転ヤーンガイド42は、緯入れ系列の復帰時点から補充期間の終点までの間において、その補充制御による補充回転速度で回転駆動される。また、補充期間の終点以降では、補正器からの補正信号の出力が行われないため、通常制御に応じた駆動指令信号が補正されること無く駆動手段へ入力される。すなわち、回転ヤーンガイド42の前記回転駆動制御は、補充期間の終点において補充制御に応じたものから通常制御に応じたものに切り替えられる。したがって、回転ヤーンガイド42は、その終点以降において通常制御による回転速度で回転駆動される。
(4)回転ヤーンガイド42による緯糸の巻き付け態様について、前記実施例では、その巻き付け態様が、前記した待機期間で1回の緯入れ分の巻量の緯糸が貯留ドラム41に対し巻き付けられるような態様とされている。しかし、その巻き付け態様は、緯入れパターン等によっては、前記実施例の態様とは異なる態様とされる場合もある。具体的には、1回の緯入れ分の緯糸の巻き付けが前記の待機期間よりも短い期間で完了するように、通常の巻き付け態様が設定される場合がある。そして、その場合、通常の巻き付け態様では、待機期間中の前記巻き付けの完了後は、測長貯留装置4において回転ヤーンガイド42による緯糸の巻き付け動作が行われない状態となる。
なお、通常の巻き付け態様がそのような態様に設定されている場合、作業者が除外系列復帰釦24を操作するタイミングによっては、除外されていた緯入れ系列の復帰時点で回転ヤーンガイド42が停止した状態となっている場合がある。そして、その場合には、本発明で言う(復帰時点の)通常の巻き付け態様は、回転ヤーンガイド42が停止した状態(回転速度=0)を指すことになる。したがって、その場合には、例えば前記実施例と同様に補充回転速度が算出で求められる場合においてその求められる補充回転速度は、通常の巻き付け態様による回転速度(=0)に対して増速(付加)すべき回転速度として補充情報等に基づいて算出される回転速度そのものとなる。
また、上記のように通常の巻き付け態様が設定されている場合において、その操作のタイミングによっては、補充巻量分の緯糸の巻き付け動作が完了するよりも前に、通常の巻き付け態様による回転ヤーンガイド42の巻き付け動作が開始される場合もある。そして、その場合には、その通常の巻き付け態様による巻き付け動作の開始時点以降における補充回転速度は、その通常の巻き付け態様による回転ヤーンガイド42の回転速度に対して前記の増速すべき回転速度を加算して求められる回転速度となる。
(5)緯入れパターンについて、前記実施例では、製織が第1緯糸C1、第2緯糸C2及び第3緯糸C3の3種類の緯糸を使用して行われるものとした上で、C1→C2→C3の順序で緯糸が緯入れされるような緯入れパターンが設定されている。すなわち、前記実施例の緯入れパターンは、使用される複数種類の緯糸について同一種類の緯糸が連続しない順番で緯入れされるように設定されている。しかし、一般的な織機において行われる製織は1種類には限らず、本発明が適用される流体噴射式織機も同様である。したがって、その流体噴射式織機における緯入れ装置に設定される緯入れパターンは、前記実施例に例示されたもの以外に、1以上の同一種類の緯糸が連続して緯入れされるように設定される場合もある。因みに、そのような緯入れパターンとしては、例えば、前記実施例と同様に3種類の緯糸で製織が行われる場合で言えば、C1→C1→C2→C3、C1→C1→C2→C2→C3→C3等の順序で緯糸が緯入れされるような緯入れパターンが挙げられる。
また、本発明が適用される流体噴射式織機(緯入れ装置)について、前記実施例では、3種類の緯糸を用いて製織を行う(3種類の緯糸の緯入れを行う)ものとなっている。しかし、本発明による緯入れ装置は、そのように複数種類の緯糸を用いて製織を行うものに限らず、単一種類の緯糸を用いて製織を行うものであっても良い。
また、本発明が適用される流体噴射式織機について、前記実施例では空気噴射式織機としたが、本発明は、水噴射式織機にも適用可能である。
なお、本発明は、上記のいずれの実施形態にも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。