JP6500878B2 - 回転電機の冷却構造 - Google Patents

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Description

本発明は、回転軸が重力方向と交差する姿勢で載置され、ステータコアの軸方向一端側の端面から軸方向外側に突出する一端側コイルエンド部に温度センサが取り付けられた回転電機の冷却構造に関する。例えば、本発明の回転電機は、車両駆動用の電動機として車両に搭載される。
回転電機は、周知の通り、駆動に伴い、銅損や鉄損、機械損といった損失が生じ、これら損失に応じた熱が発生する。この発熱により回転電機が過度に高温になると、部品の劣化や、永久磁石の減磁等を招く。そこで、従来から、ステータコイルのうち、ステータコアよりも軸方向外側に突出するコイルエンド部に冷媒となる液体、例えば冷却油を噴射し、ステータコイル、ひいては、回転電機を冷却する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、電動モータ(回転電機)の側面部(コイルエンド部)を覆うサイドカバーを設け、当該サイドカバーに潤滑油が流れる油路と、当該潤滑油をステータの上側半円部分に向かって噴きかける複数の吐出孔と、を形成した冷却構造が開示されている。かかる技術によれば、ステータの上側半円部分に潤滑油がかかった後、重力の影響で、ステータの下側半円部分にも、潤滑油が流れていくため、ステータ全体を効果的に冷却できる。
特許第5740311号公報
ところで、回転電機の中には、ステータコイルの温度を検出するために、温度センサを取り付けたものがある。そして、この場合、温度センサで検知された温度に応じて、種々の制御パラメータを変更する。例えば、回転電機を熱から保護するために、ステータコイルの検出温度が過度に高い場合には、ステータコイルに流れる電流を制限し、銅損を低減することがある。また、ステータコイルの検出温度に応じて、冷媒液体の吐出流量を調整することもある。このように、ステータコイルの温度に応じて、通電量や冷媒の吐出流量を制御することで、回転電機をより確実に熱から保護できる。
しかし、温度センサは、通常、コイルエンド部に設けられることが多い。そのため、特許文献1等のように、コイルエンド部に冷媒を吐出すると、温度センサに冷媒がかかることがある。温度センサに、冷媒がかかると、ステータコイルの実際の温度と、温度センサによる検出温度との乖離が大きくなり、結果として、通電量や冷媒の吐出流量を適切に制御できなかった。
そこで、本発明では、ステータコイルの温度の検出精度を維持しつつ、ステータを適切に冷却できる回転電機の冷却構造を提供することを目的とする。
本願で開示する回転電機の冷却構造は、回転軸が重力方向と交差する姿勢で載置され、ステータコアの軸方向一端側の端面から軸方向外側に突出する一端側コイルエンド部に温度センサが取り付けられた回転電機の冷却構造であって、前記回転電機は、ステータと、ロータと、前記ステータおよびロータを保持する外装ケースと、を有し、前記冷却構造は、前記一端側コイルエンド部に対して軸方向に対向する前記外装ケースの面に、前記一端側コイルエンド部に向かって冷媒を吐出する複数の吐出孔を有する第1の吐出機構を備え、前記第1の吐出機構の複数の吐出孔は、回避領域を避けた領域に配されており、前記回避領域は、水平方向視でステータを左右に均等に分割する左右分割線からみて前記温度センサの配置領域と同じ領域、かつ、前記温度センサの下端より重力方向上側となる領域である、ことを特徴とする。
第1の吐出機構の複数の吐出孔を、回避領域を避けて配することで、温度センサに冷媒がかかることが防止される。その結果、ステータコイルの温度の検出精度を維持しつつ、ステータを適切に冷却できる。
前記温度センサは、水平方向視で前記ステータを上下に均等に分割する上下分割線よりも重力方向上側に取り付けられていてもよい。
温度センサを、上下分割線よりも重力方向上側に取り付けることで、回避領域が小さくなり、第1の吐出機構の吐出孔の配置可能範囲が広くなる。また、かかる配置とすることで、温度センサが、外装ケースの底に溜まった冷媒に浸かりにくくなるため、ステータコイルの温度の検出精度をより高めることができる。
前記第1の吐出機構の複数の吐出孔は、前記上下分割線よりも重力方向上側に配されていてもよい。
かかる配置とした場合、複数の吐出孔から吐出された冷媒は、重力により下方にも広がる。結果として、吐出孔の個数が少なくても、広い範囲に冷媒をかけることができる。
さらに、前記ステータコアの軸方向他端側の端面から軸方向外側に突出する他端側コイルエンド部に対して軸方向に対向する前記外装ケースの面に、前記他端側コイルエンド部に向かって冷媒を吐出する複数の吐出孔を有する第2の吐出機構を備え、前記第2の吐出機構の複数の吐出孔は、前記左右分割線を挟んで左右両側の領域に配されていてもよい。
温度センサが設けられていない他端側にも吐出機構を設けることで、ステータコイルをより効果的に冷却できる。
また、前記第2の吐出機構から単位時間当たりに吐出される冷媒量は、前記第1の吐出機構から単位時間当たりに吐出される冷媒量よりも多くてもよい。
温度センサを避ける必要がない第2の吐出機構の吐出流量を多くすることで、ステータ全体をより効果的に冷却できる。
前記外装ケースは、ケース本体と、前記ケース本体の一端を覆うカバーと、吐出プレートと、を備え、前記ケース本体またはカバーの内面のうち前記コイルエンド部と軸方向に対向する位置には、周方向に延びる冷却溝が形成され、前記吐出プレートは、前記複数の吐出孔を有するとともに、前記冷却溝を覆うように前記ケース本体またはカバーの内面に取り付けられてもよい。
かかる構成とした場合、冷却溝部分が、冷媒が流れる冷媒路となる。そして、冷媒路および吐出孔を、ケース本体またはカバーと、吐出プレートと、の二部材で構成することで、吐出孔および当該吐出孔に連通する冷媒路を形成するための加工が容易となる。
本発明によれば、第1の吐出機構の複数の吐出孔を、回避領域を避けて配しているため、温度センサに冷媒がかかることが防止される。その結果、ステータコイルの温度の検出精度を維持しつつ、ステータを適切に冷却できる。
実施形態である回転電機の概略縦断面図である。 図1のA−A断面図である。 図1のB−B断面図である。 図2のC−C断面図である。 第一吐出機構の吐出孔とステータとの位置関係を示す図である。 第二吐出機構の吐出孔とステータとの位置関係を示す図である。 従来の吐出機構の一例を示す図である。 従来技術におけるリード線側の吐出孔とステータとの位置関係を示す図である。 従来技術における反リード線側の吐出孔とステータとの位置関係を示す図である。 リード線側における本実施形態での検出温度と従来技術での検出温度を示す図である。 反リード線側における本実施形態での検出温度と従来技術での検出温度を示す図である。 他の吐出機構の一例を示す図である。 他の吐出機構の一例を示す図である。 他の吐出機構の一例を示す図である。 他の吐出機構の一例を示す図である。
以下、実施形態である回転電機10について図面を参照して説明する。図1は、実施形態である回転電機10の概略縦断面図である。また、図2は、図1のA−A断面図、図3は、図1のB−B断面図である。また、図4は、図2のC−C断面図である。なお、図1〜図3において、重力は、紙面の上から下に向かって作用しており、Z軸方向が重力方向、X軸方向およびY軸方向が水平方向となる。
この回転電機10は、電動車両、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される。電動車両において、当該回転電機10は、車両を走行させるための動力を発生する走行用モータとして用いられてもよいし、回生制動力やエンジンの余剰動力により発電するジェネレータとして用いられてもよい。電動車両において、回転電機10は、その回転軸12が、重力方向と略直交するような姿勢で載置されている。ただし、回転電機10は、回転軸12が重力方向と交差するのであれば、水平方向に対して傾斜して載置されていてもよい。
回転電機10は、回転軸12と、当該回転軸12に固着されたロータ14と、ロータ14の外周囲に配されたステータ16と、これらを収容する外装ケース18と、を備えている。回転軸12は、軸受28を介して外装ケース18に軸支されており、自転可能となっている。ロータ14は、積層鋼板等からなるロータコアと、当該ロータコア内に埋め込まれる複数の永久磁石と、を備えた略環状部材である。ロータ14は、回転軸12に固着されており、回転軸12は、当該ロータ14と一体となって回転する。
ステータ16は、ステータコア20とステータコイル22とを備えている。ステータコア20は、積層鋼板等からなる略環状部材で、環状のヨークと、当該ヨークの内周から径方向内側に突出する複数のティースと、を備えている。各ティースには、ステータコイル22を構成する巻線が巻回されている。この巻線の巻回方法は、巻線を一つのティースに巻回する集中巻でもよいし、巻線を複数のティースに跨って巻回する分布巻でもよい。いずれにしても、ステータ16の軸方向両端には、ステータコイル22のうち、ステータコア20の軸方向端面から軸方向外側に突出した部分であるコイルエンド部22eが存在している。
ステータコイル22は、三相のコイル、すなわち、U相コイル、V相コイル、W相コイルを結線して構成される。コイルの結線態様は、特に限定されないが、本実施形態では、三相のコイルそれぞれの末端を、中性点で一括して接続したスター結線としている。回転電機10を、電動機として使用する場合は、このステータコイル22に三相交流電流を印加する。これにより、回転磁界が形成され、ロータ14が回転する。また、回転電機10を発電機として使用する場合には、車両の回生制動力やエンジンの余剰動力により、回転軸12およびロータ14が回転する。これにより、ステータコイル22に電流が誘導される。
三相のコイルそれぞれの始端は、端子台30(図1では図示せず、図2参照)に設けられた入出力端子32に接続される。端子台30は、ステータ16の軸方向一端に取り付けられる部材で、入出力端子32を有している。入出力端子32は、三相のコイルそれぞれと、外部に設けられたインバータと、を電気的に中継する。なお、以下では、回転電機10の軸方向両側のうち、この端子台30および後述する温度センサ34が設けられる側(図1における左側)を、「リード線側」と呼び、反対側(図1における右側)を「反リード線側」と呼ぶ。本実施形態における「リード線側」が請求項における「一端側」に、「反リード線側」が請求項における「他端側」に対応する。
リード線側のコイルエンド部22eには、ステータコイル22の温度を検出するための温度センサ34が、設けられている。温度センサ34は、温度に応じた電気信号を出力できるのであれば、特に限定されず、例えば、サーミスタ等からかなる。回転電機10の駆動を制御する制御部(図示せず)は、回転電機10を熱から保護するために、温度センサ34の検出温度が高い場合には、ステータコイル22に流れる電流を制限する。また、制御部は、温度センサ34の検出温度に応じて、ステータコイル22に吐出する冷却油(冷媒)の吐出流量を調整する。
ここで、図2に示す通り、水平方向視で、ステータ16を左右均等に分割する線を左右分割線Lv、ステータ16を上下均等に分割する線を上下分割線Lhとすると、端子台30および温度センサ34は、左右分割線Lvに対して20〜60度程度、傾いた位置に設けられている。換言すれば、端子台30および温度センサ34は、ステータ16の上下中心よりも上側、かつ、左右中心からずれた位置に設けられている。
外装ケース18は、ケース本体24と、カバー26と、ケース本体24およびカバー26の内面に取り付けられる二つの吐出プレート46,56に大別される。ケース本体24は、軸方向一端(本実施形態ではリード線側端部)が完全開口された略円筒形部材である。また、カバー26は、ケース本体24の開口を覆う部材で、ボルト等の固定手段により、ケース本体24に固定される。この外装ケース18の基本的な構成は、公知の従来技術を利用できるため、ここでの詳説は、省略する。以下では、主に、外装ケース18に設けられた第1の吐出機構40および第2の吐出機構42について説明する。
カバー26のうち、リード線側のコイルエンド部22eとの対向面には、冷却油を吐出する第1の吐出機構40が設けられている。また、ケース本体24のうち、他端側(図1の右端側)のコイルエンド部22eとの対向面には、冷却油を吐出する第2の吐出機構42が設けられている。
第1の吐出機構40は、図2、図4に示すように、カバー26の内面に形成された第1の冷却溝44と、当該第1の冷却溝44を覆う第1の吐出プレート46と、で構成される。第1の冷却溝44は、カバー26のうち、コイルエンド部22eと軸方向に対向する位置において、周方向に延びる溝である。
また、第1の吐出プレート46は、第1の冷却溝44よりも十分に幅広の円弧状のプレートである。この第1の吐出プレート46は、ボルト等により、カバー26の内面に固着される。このとき、第1の吐出プレート46は、カバー26の内面に液密に密着するとともに、第1の冷却溝44を完全に覆う。そして、これにより、カバー26と第1の吐出プレート46との間に、冷却油が流れる冷媒路52が形成される。
第1の吐出プレート46には、周方向に間隔を開けて並ぶ複数の吐出孔48が形成されている。各吐出孔48は、第1の吐出プレート46を厚み方向に貫通しており、冷媒路52に流れる冷却油は、この吐出孔48を介して外部に噴出する。したがって、冷却油は、冷媒路52から吐出孔48を介して軸方向に噴出し、リード線側のコイルエンド部22eの軸方向端面に当たることになる。第1の吐出プレート46の複数の吐出孔48は、温度センサ34に冷却油がかからないような位置に配されるが、これについては、後に詳説する。
第2の吐出機構42も、第1の吐出機構40とほぼ同じ構造を有している。すなわち、図3に示すように、第2の吐出機構42は、ケース本体24の内面において周方向に延びる第2の冷却溝54と、当該第2の冷却溝54を覆う第2の吐出プレート56と、で構成される。第2の吐出プレート56は、ケース本体24の内面に液密に密着するとともに、第2の冷却溝54を完全に覆う。第2の吐出プレート56には、周方向に間隔を開けて並ぶ複数の吐出孔58が形成されている。冷却油は、冷媒路52から吐出孔58を介して軸方向に噴出し、反リード線側のコイルエンド部22eの軸方向端面に当たる。第2の吐出プレート56の複数の吐出孔58は、コイルエンド部22eの全面に冷却油がかかるような位置に配されるが、これについては、後述する。
外装ケース18の外側には、図1に示すように、冷却油を、第1の吐出機構40および第2の吐出機構42に導く冷媒通路62が設けられている。この冷媒通路62は、途中で二股に分岐する。分岐後の冷媒通路62は、第1の冷却溝44および第2の冷却溝54に連通している。また、コイルエンド部22eに吐出された冷却油は、重力により、下方に落下し、外装ケース18の底に溜まる。外装ケース18の底部には、この貯留する冷却油を回収するための回収通路(図示せず)が接続されている。回収通路を介して回収された冷却油は、自然冷却された後、再び、冷媒通路62を介して、第1、第2の吐出機構40,42に供給される。
次に、第1、第2の吐出機構40,42における複数の吐出孔48,58の配置について図5、図6を参照して説明する。図5は、第1の吐出機構40の吐出孔48とステータ16との位置関係を、図6は、第2の吐出機構42の吐出孔58とステータ16との位置関係を説明する図である。なお、図5は、図1の紙面左側からリード線側のコイルエンド部22eを、図6は、図1の紙面右側から、反リード線側のコイルエンド部22eを見ている。したがって、図2と図5、および、図3と図6は、視線の向きが反転している。そして、視線の向きが反転している関係上、図2と図5、および、図3と図6では、吐出孔48,58や温度センサ34等の位置が、左右反転して見えている。
既述した通り、リード線側のコイルエンド部22eには、温度センサ34および端子台30が取り付けられている。温度センサ34および端子台30は、上下分割線Lhより上側、かつ、左右分割線Lvからずれた位置に配されている。このように温度センサ34を上下分割線Lhより上側に配することで、外装ケース18の底に溜まった冷却油に温度センサ34が浸かりにくくなる。また、温度センサ34を、上下分割線Lhより上側に配することで、後述する回避領域を狭くでき、吐出孔48の配置可能領域が広くなる。
第1の吐出機構40の吐出孔48は、この温度センサ34に冷却油がかからないような位置に配されている。具体的には、吐出孔48は、回避領域Eaを避けた領域に配される。回避領域Eaとは、図5で、破線で囲った領域であり、左右分割線Lvからみて温度センサ34と同じ側、かつ、温度センサ34の下端より重力方向上側となる領域である。
本実施形態では、左右分割線Lvを挟んで温度センサ34とは逆側、かつ、上下分割線Lhよりも上側となる領域に、第1の吐出機構40の吐出孔48を設けている。吐出孔48から吐出された冷却油は、コイルエンド部22eの軸方向端面に当たった後は、重力の影響により、当該コイルエンド部22eに沿って下方に落下していく。図5において、薄墨ハッチングは、冷却油がかかる範囲を示している。
図5から明らかな通り、吐出孔48を、上下分割線Lhよりも上側に配しておけば、吐出された冷却油が重力により下方に広がるため、吐出孔48の個数が少なくても広い範囲に冷却油をかけることができる。また、左右分割線Lvからみて温度センサ34と同じ側には吐出孔48を設けていないため、温度センサ34には、冷却油は、かからない。
図6においても、薄墨ハッチングは、冷却油がかかる範囲を示している。また、図6が図示する反リード線側には、温度センサ34は設けられていないが、図6では、参考として、リード線側に配された温度センサ34の位置を二点鎖線で示している。
第2の吐出機構42の吐出孔58は、左右分割線Lvを挟んで左右両側の領域に配されている。本実施形態では、左右分割線Lvを中心として、温度センサ34と同じ領域には、五個の吐出孔58を、温度センサ34の逆側の領域には二個の吐出孔58を設けている。換言すれば、第2の吐出機構42は、7個の吐出孔58が設けられており、第1の吐出機構40の吐出孔48よりも多い。そして、吐出孔の個数が多い分、第2の吐出機構42から単位時間当たりに吐出する冷媒流量も、第1の吐出機構40のそれよりも多くなっている。また、全ての吐出孔58は、いずれも、上下分割線Lhよりも上側に配されている。
吐出孔58から噴出した冷却油は、反リード線側のコイルエンド部22eの軸方向端面に当たった後は、重力の影響により、当該コイルエンド部22eに沿って下方に落下していく。また、左右両側に吐出孔58が設けられているため、冷却油は、コイルエンド部22eの全体にかかることになる。また、本実施形態では、反リード線側において、向かって左側に配される吐出孔58を、向かって右側に配される吐出孔58よりも多く設けている。これは、反リード線側における向かって左側は、リード線側における向かって右側であり、温度センサ34が配される側だからである。リード線側において、温度センサ34が配される領域は、冷却油がかからず、冷却能力が低くなりがちである。そこで、反リード線側では、冷却油の吐出流量を増やして冷却能力を高めるため、吐出孔58の個数を多くしている。
次に、複数の吐出孔48,58を、上述のような配置とする理由について、従来技術と比較して説明する。図7は、従来の吐出機構の一例を示す概略図である。また、図8は、リード線側の吐出孔104とステータ16との位置関係を、図9は、反リード線側の吐出孔106とステータ16との位置関係を説明する図である。
従来では、コイルエンド部22eより重力方向上側に、回転軸12と平行に延びる第1、第2の配管100,102を設けていた。各配管100,102は、その始端が冷却油の供給源に接続されているとともに、その末端が完全に閉塞された配管である。配管100,102の末端近傍の周面には、吐出孔104,106が二つずつ形成されており、この吐出孔104,106から冷却油が外部に放出される。したがって、従来技術では、冷却油は、配管100,102から吐出孔104,106を介して径方向に吐出され、コイルエンド部22eの外周面に当たることになる。コイルエンド部22eの外周面に当たった冷却油は、その後、コイルエンド部22eに沿って下方に落下していく。ただし、冷却油の吐出流量にもよるが、上下分割線Lhより下側まで冷却油が到達することは難しい。通常、冷却油は、図8、図9において薄墨ハッチングで示すように、左右分割線Lvから40〜70度程度、傾斜した範囲にかかる。
ここで、リード線側において、温度センサ34は、左右分割線Lvに対して、20度〜70度程度、傾いた位置に設けられているため、従来技術では、温度センサ34の配置範囲と冷却油がかかる範囲とが重複する。したがって、従来技術では、温度センサ34に冷却油がかかりやすかった。この場合、温度センサ34の温度が低下するため、ステータコイル22の実際の温度と、温度センサ34による検出温度との乖離が大きくなっていた。
ここで、既述した通り、回転電機10の制御部は、回転電機10を熱から保護するために、温度センサ34の検出温度に基づいて、通電量や冷却油の流量等を制御している。したがって、温度センサ34に冷却油がかかり、実際のコイル温度よりも低い温度が検出されると、回転電機10を熱から適切に保護することができない。
かかる問題を避けるために、温度センサ34を、上下分割線Lhよりも下側に配することも考えられる。かかる配置とすれば、従来技術でも、温度センサ34に、吐出孔104から吐出された冷却油がかからなくなる。しかし、外装ケース18の下部には、落下した冷却油が貯留していることがあり、温度センサ34をステータ16の下部に設けると、この貯留している冷却油に温度センサ34が浸るおそれがある。この場合でも、温度センサ34の検出精度が低下する。つまり、検出温度の精度を維持するためには、温度センサ34は、上下分割線よりも重力方向上側に設けられることが望ましい。
また、従来技術では、吐出孔104がステータ16の上側にのみ設けられているため、冷却油のかかる範囲が小さく、ステータコイル22の冷却効率が悪かった。本実施形態では、吐出孔48,58を、周方向に間隔を開けて複数設けているため、コイルエンド部22eの広い範囲に冷却油をかけることができる。結果として、本発明によれば、ステータ16を効率的に冷却できる。
また、本実施形態では、リード線側において、左右分割線Lvからみて温度センサ34と反対側にのみ冷却油を掛けているため、実際のコイル温度と、温度センサ34での検出温度との乖離を小さく抑えることができる。
図10、図11は、本実施形態と従来技術におけるステータコイル22の温度を測定した実験結果である。実験では、本実施形態および従来技術の回転電機10を駆動し、そのときのステータコイル22の温度を検出した。ステータコイル22の温度検出には、サーミスタからなる温度センサ34と、熱電対と、を用いた。温度センサ34は、リード線側のコイルエンド部22eのうち、左右分割線Lvから45度、傾斜した位置に設けた。熱電対は、リード線側では、45度間隔で8個、反リード線側では、45度間隔で7個設けた。各熱電対は、冷却油がかからないように、コイルエンド部22eの内部に設けている。したがって、熱電対の検出温度のほうが、温度センサ34の検出温度よりも、実際のコイル温度に近いと言える。
図10は、リード線側における温度測定結果を、図11は、反リード線側における温度測定結果を示している。また、図10において、黒四角は、従来技術における温度センサ34の検出温度を、白四角は、本実施形態における温度センサ34の検出温度を示している。また、図10、図11において、破線は、従来技術における熱電対の検出温度を、実線は、本実施形態における熱電対の検出温度を示している。また、図10、図11における径方向の目盛Kは、温度を示しており、隣接する目盛の差分値(Kn+1−K)は、nの値に関わらず一定の固定値である。
図10、図11から明らかな通り、従来技術では、温度センサ34の検出温度(黒四角)は、K程度であるのに対し、熱電対の検出温度(破線)は、コイルエンド部22eの下側半分、特に、反リード線側の下側半分では、高くなっており、Kを超えている。一方、本実施形態では、温度センサ34の検出温度(白四角)は、K程度となっている。また、熱電対の検出温度(実線)は、温度センサ34が配されているリード線側の右半分では高くなっており、Kと超えている。
従来技術と本実施形態とを比較すると、熱電対の検出温度の最高値は、従来技術と本実施形態でほぼ同じであるが、温度センサ34の検出温度は、本実施形態に比べて従来技術では、低くなっている。つまり、実際のコイル温度に近い熱電対の検出温度と、温度センサ34の検出温度との乖離は、従来技術のほうが大きいことが分かる。
ここで、回転電機10の制御部は、回転電機10を熱から保護するため、温度センサ34の検出温度が高くなれば、通電量を減らしたり、冷却油の流量を増やしたりする。温度センサ34の検出温度と実際のコイル温度との乖離が大きくなると、本来で、電流制限や冷却油量の増加が必要であるにも関わらず、それらが行われず、回転電機10が熱から十分に保護されないおそれがある。
本実施形態では、リード線側の吐出孔48を、温度センサ34に冷却油がかからない位置に配しているため、従来技術に比して、温度センサ34の検出温度と、実際のコイル温度との乖離が小さい。その結果、ステータコイル22の通電量や冷却油の流量を適切に制御できる。一方で、本実施形態では、リード線側であって、温度センサ34が配置される側の冷却が不足しがちになる。そこで、本実施形態では、リード線側での冷却能力の低下を補うべく、反リード線側における吐出孔58の数を多くし、第2の吐出機構42から単位時間当たりに吐出される冷却油量を、第1の吐出機構40から単位時間当たりに吐出される冷却油量より多くしている。これにより、反リード線側における冷却能力を高めることができ、ステータコイル22の温度増加をより抑制できる。
さらに、本実施形態では、反リード線側のうち、左右分割線Lvからみて温度センサ34と同じ領域に配される吐出孔58の個数(五個)を、温度センサ34の反対側に配される吐出孔58の個数(二個)より多くしている。これにより、リード線側における冷却不足を、反リード線側で補うことができ、ステータコイル22の温度のバラツキをより低減できる。
また、本実施形態では、コイルエンド部22eと軸方向に対向する面に形成された複数の吐出孔48,58から冷却油を吐出している。したがって、コイルエンド部22eの重力方向上側の吐出孔104,106から冷却油を吐出する従来技術に比べて、広い範囲に冷却油をかけることができ、ステータコイル22をより効果的に冷却できる。特に、温度センサ34が設けられていない反リード線側では、本実施形態では、コイルエンド部22e全体に冷却油を掛けることができるため、従来技術に比べて、コイルエンド部22eの温度を全体的に低減できる。
また、これまでの説明で明らかな通り、本実施形態では、吐出孔48,58を全て、上下分割線Lhよりも重力方向上側に設けている。かかる構成とすることで、重力を利用して、吐出孔48,58よりも下側にも冷却油を掛けることができる。したがって、本実施形態によれば、上下分割線Lhよりも下側にのみ吐出孔を設ける場合に比して、ステータコイル22を効果的に冷却できる。
ところで、これまで説明した構成は、一例であり、少なくとも、リード線側に設けられる吐出孔48が、回避領域Ea(左右分割線Lvからみて温度センサ34と同じ側、かつ、温度センサ34の下端より重力方向上側となる領域)を避けて配されるのであれば、他の構成でもよい。
例えば、図12に示すように、リード線側に配される第1の吐出機構40を、下側に凸の略C字状とし、一部の吐出孔48を、左右分割線Lvからみて温度センサ34と同じ側かつ温度センサ34の下端より下側の位置に配してもよい。
また、吐出機構40,42の個数は、一つでもよいし、複数でもよい。したがって、図13に示すように、図13に示すように、温度センサ34を挟んで、左右両側に、第1の吐出機構40を設けてもよい。また、温度センサ34の位置も、適宜、変更されてもよく、図13に示すように、温度センサ34を、左右分割線Lv上に配し、温度センサ34の両側に第1の吐出機構40を配してもよい。また、冷却溝44,54および吐出プレート46,56の形状も特に限定されず、図14に示すように、直線上でもよい。
また、これまでの説明では、吐出機構40,42を、ケース本体24またはカバー26と、吐出プレート46,56と、で構成しているが、コイルエンド部22eの軸方向端面に冷却油を吐出する吐出孔48,58が得られるのであれば、適宜、異なる構成でもよい。例えば、図15に示すように、第1の吐出プレート46を廃止し、替わりに、カバー26の外面に第1の冷却溝44を、内面に吐出孔48を設けてもよい。この場合、カバー26の外面には、第1の冷却溝44を覆う被覆部材60を取り付ければよい。
10 回転電機、12 回転軸、14 ロータ、16 ステータ、18 外装ケース、20 ステータコア、22 ステータコイル、22e コイルエンド部、24 ケース本体、26 カバー、28 軸受、30 端子台、32 入出力端子、34 温度センサ、40 第1の吐出機構、42 第2の吐出機構、44 第1の冷却溝、46 第1の吐出プレート、48,58,104,106 吐出孔、52 冷媒路、54 第2の冷却溝、56 第2の吐出プレート、60 被覆部材、62 冷媒通路、100 第1の配管、102 第2の配管。

Claims (6)

  1. 回転軸が重力方向と交差する姿勢で載置され、ステータコアの軸方向一端側の端面から軸方向外側に突出する一端側コイルエンド部に温度センサが取り付けられた回転電機の冷却構造であって、
    前記回転電機は、ステータと、ロータと、前記ステータおよびロータを保持する外装ケースを有し、
    前記冷却構造は、
    前記一端側コイルエンド部に対して軸方向に対向する前記外装ケースの面に、前記一端側コイルエンド部に向かって冷媒を吐出する複数の吐出孔を有する第1の吐出機構を備え、
    前記第1の吐出機構の複数の吐出孔は、回避領域を避けた領域に配されており、
    前記回避領域は、水平方向視でステータを左右に均等に分割する左右分割線からみて前記温度センサの配置領域と同じ領域、かつ、前記温度センサの下端より重力方向上側となる領域である、
    ことを特徴とする回転電機の冷却構造。
  2. 請求項1に記載の回転電機の冷却構造であって、
    前記温度センサは、水平方向視で前記ステータを上下に均等に分割する上下分割線よりも重力方向上側に取り付けられている、ことを特徴とする回転電機の冷却構造。
  3. 請求項1または2に記載の回転電機の冷却構造であって、
    前記第1の吐出機構の複数の吐出孔は、前記上下分割線よりも重力方向上側に配されている、ことを特徴とする回転電機の冷却構造。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の回転電機の冷却構造であって、さらに、
    前記ステータコアの軸方向他端側の端面から軸方向外側に突出する他端側コイルエンド部に対して軸方向に対向する前記外装ケースの面に、前記他端側コイルエンド部に向かって冷媒を吐出する複数の吐出孔を有する第2の吐出機構を備え、
    前記第2の吐出機構の複数の吐出孔は、前記左右分割線を挟んで左右両側の領域に配されている、
    ことを特徴とする回転電機の冷却構造。
  5. 請求項4に記載の回転電機の冷却構造であって、
    前記第2の吐出機構から単位時間当たりに吐出される冷媒量は、前記第1の吐出機構から単位時間当たりに吐出される冷媒量よりも大きい、ことを特徴とする回転電機の冷却構造。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の回転電機の冷却構造であって、
    前記外装ケースは、ケース本体と、前記ケース本体の一端を覆うカバーと、吐出プレートと、を備え、
    前記ケース本体またはカバーの内面のうち前記コイルエンド部と軸方向に対向する位置には、周方向に延びる冷却溝が形成され、
    前記吐出プレートは、前記複数の吐出孔を有するとともに、前記冷却溝を覆うように前記ケース本体またはカバーの内面に取り付けられる、
    ことを特徴とする回転電機の冷却構造。
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