JP5604498B2 - 回転電機の冷却構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、回転電機(例えば、モータ、ジェネレータ)のステータ側コイルを冷却する冷却構造体に関する。
特許文献1には、電動モータ7の側面部を覆うサイドカバー82を樹脂で形成すると共に、サイドカバー82に設けた油路90の複数の吐出孔95から電動モータ7のステータ71に潤滑油を噴きかけて冷却することが開示されている(要約)。複数の吐出孔95は、ステータ71の複数の突極集中巻きコイル71cの上側半円部分にそれぞれ対応する位置に、円周方向に離間して設けられる([0069]、図2〜図5)。また、特許文献1の図5に示されるように、複数の吐出孔95は、略矩形状のインシュレータの胴部に巻回される突極集中巻きコイル71cの湾曲して折り曲げられた部分の半径方向中央部分71c1に向けて潤滑油が噴射されるように配置される([0069])。
国際公開第2012/046307号パンフレット
上記のように、特許文献1において、サイドカバー82の各吐出孔95は、特許文献1の図5に示す位置に配置される。すなわち、特許文献1の図5において、各吐出孔95は、各コイル71cの中央に対して反時計回りの方向に偏った位置に配置され、それぞれが円周方向において等間隔に配置されている。このため、例えば、特許文献1の図5において最も左側に配置された吐出孔95から吐出された潤滑油は、対向するコイル71cの比較的狭い領域にしか当たらない。特許文献1の図5において中央より左側に配置されたその他の吐出孔95についても同様である。従って、特許文献1の構成は、冷却効率の観点からすれば、未だ改善の余地がある。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、コイルの冷却効率を高めることが可能な回転電機の冷却構造体を提供することを目的とする。
本発明に係る回転電機の冷却構造体は、ステータコア、絶縁部材及び複数のコイルを有するステータと、前記複数のコイルに対して回転軸方向に離間して配置された複数の冷媒供給口と、前記複数の冷媒供給口へ冷媒を導く冷媒供給路とを備える回転電機の冷却構造体であって、前記ステータコアは、円環状のヨーク部と、前記ヨーク部から径方向に突出し、角柱状を基調とする導線巻回部を有するティースとを備え、前記複数のコイルは、前記絶縁部材を介して前記導線巻回部に導線が巻回されることで形成され、前記回転軸方向に見たとき、前記複数のコイルは円環状に配置され、前記径方向に見たとき、前記複数のコイルの各角部は円弧状に構成され、前記複数の冷媒供給口は、少なくとも円周方向に互いに離間して配列され、さらに、前記複数の冷媒供給口は、鉛直方向に沿うと共に前記回転電機の回転軸を含む仮想鉛直平面の両側において略対称に配置され、前記複数の冷媒供給口のそれぞれは、前記仮想鉛直平面の両側のいずれにおいても、鉛直方向上側の前記角部に対向する位置に配置されることを特徴とする。
本発明によれば、冷媒供給口は、各コイルの導線巻回部の角部に対向する位置に配置される。これにより、供給された冷媒をコイルの軸方向端面と円周方向端面の両方に接触させ易くすることで、コイルの冷却効率を向上することが可能となる。
また、本発明によれば、各冷媒供給口は、鉛直方向上側の角部に対向する位置に配置される。これにより、軸方向端面又は円周方向端面に接触した冷媒は、その後、重力によって軸方向端面又は円周方向端面に沿って鉛直方向下側へ流れることとなる。従って、軸方向端面又は円周方向端面において、冷媒供給口に対向して冷媒が直接当たる位置だけでなく、冷媒供給口に対向する位置よりも鉛直方向下側の位置においてもコイルに冷媒を接触させ易くすることで、コイルの冷却効率をより向上することが可能となる。
さらに、本発明によれば、複数の冷媒供給口が、鉛直方向に沿うと共に回転電機の回転軸を含む仮想鉛直平面の両側において略対称に配置されている。これにより、該仮想鉛直平面の両側において略均等にコイルを冷却することが可能となり、一部のコイルの温度が他のコイルに対して上昇してしまうことを抑制し易くなる。
前記複数の冷媒供給口のそれぞれは、前記鉛直方向上側の前記角部のうち円周方向の中央部に対向する位置に配置されてもよい。これにより、供給された冷媒をコイルの軸方向端面及び円周方向端面の両方に分散させ易くすることが可能となる。また、コイル又は冷媒供給口の位置が寸法公差によって円周方向端面側に僅かにずれた場合においても、冷媒がコイル間を通り抜けてしまうことを抑制し易くなる。
前記ステータは、前記回転電機の回転軸が水平となるように鉛直方向に起立し、前記回転軸方向に見たとき、前記複数の冷媒供給口は、鉛直方向において中央よりも上側のコイルに対応して配置され、鉛直方向において前記コイルの位置が上側になるほど、対応する前記冷媒供給口の位置は径方向外側となり、鉛直方向において前記コイルの位置が中央側になるほど、対応する前記冷媒供給口の位置は径方向中央側となってもよい。
回転軸が水平となるようにステータが鉛直方向に起立し、且つコイルが円環状に配列されている構成では、鉛直方向においてコイルの位置が中央から上側に行くほど、コイルの円周方向端面は垂直に近くなる{水平面に対してなす角度が大きくなる(90°に近くなる)。}。また、鉛直方向においてコイルの位置が中央に近づくほど、その円周方向端面は水平に近くなる{水平面に対してなす角度が小さくなる(0°に近くなる)。}。従って、鉛直方向において上側のコイルでは、中央側のコイルと比較して、円周方向側面に放出(噴射を含む。)された冷媒が重力によって円周方向端面に沿って鉛直方向下側に流れ易くなる。
本発明によれば、鉛直方向においてコイルの位置が上側になるほど、対応する冷媒供給口の位置は径方向外側となる。このため、鉛直方向において上側のコイルについては、径方向外側に冷媒を放出することにより、円周方向側面における冷媒の接触面積を大きくすることが可能となる。また、本発明によれば、鉛直方向においてコイルの位置が中央側になるほど、対応する冷媒供給口の位置は径方向中央側となる。このため、鉛直方向において中央側のコイルについては、径方向中央側に冷媒を放出することにより、軸方向端面及び円周方向端面それぞれにおいて冷媒を広がり易くし、冷媒の接触面積を大きくすることが可能となる。
本発明によれば、コイルの冷却効率を向上することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る冷却構造体としての冷却システムを搭載した車両の一部を示す説明図である。 回転軸方向に見た場合のモータの概要を示す図である。 図3(A)は、前記回転軸方向に見た場合の前記モータの概要(図2と同様の内容)を示す図であり、図3(B)は、鉛直方向に見た場合において、サイドカバーから前記モータに冷媒が放出される様子を示す図である。 図2において鉛直方向に沿うと共に回転軸を含む仮想鉛直平面の右側における前記モータの一部の外観を示す斜視図である。 図5(A)は、前記回転軸方向に見た場合の前記モータの概要(図2と同様の内容)を示す図であり、図5(B)、(C)は、前記回転軸を含む前記仮想鉛直平面の左側及び右側それぞれについて径方向に見た場合の前記モータの一部の簡略的な断面を示す図である。 第3吐出孔の配置の説明図である。 コイルに対する冷媒の放出位置の説明図である。
A.一実施形態
1.全体的な構成の説明
[1−1.全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る冷却構造体としての冷却システム16を搭載した車両10の一部を示す説明図である。図1において、矢印X1、X2、Y1、Y2、Z1、Z2は、モータ12を基準とした方向を示す。具体的には、矢印X1、X2は、モータ12の前後方向(モータ12の回転軸方向)を示し、矢印Y1、Y2は、モータ12の横方向を示し、矢印Z1、Z2は、モータ12の上下方向を示す。また、図1の白抜き矢印Lは、冷媒(例えば、冷却油)の流れを示している。
図1に示すように、車両10は、冷却システム16に加え、回転電機としてのモータ12と、歯車機構としての減速機14とを有する。なお、後述するように、モータ12の一部も冷却システム16の一部を構成する。また、減速機14の一部は、モータ12の内部に入り込むように配置されている。車両10の基本的な構成は、例えば、特許文献1に示すものを用いることが可能である。
[1−2.モータ12]
(1−2−1.モータ12の全体構成)
図2は、モータ12の構成を概略的に示す正面図であり、後述するサイドカバー24の第3吐出孔78の位置P3も示している。図3(A)は、回転軸方向X2に見た場合のモータ12の概要(図2と同様の内容)を示す図であり、図3(B)は、鉛直方向Z2に見た場合において、サイドカバー24からモータ12(後述するステータ22)に冷媒が放出される様子を示す図である。但し、図3(B)で各第3吐出孔78が示されていることからもわかるように、図3(B)では、サイドカバー24は、円周方向C1、C2の断面が示されている。
図4は、図2において鉛直方向Z1、Z2に沿うと共に回転軸Axを含む仮想鉛直平面80の右側におけるモータ12の一部(後述するステータコア30、インシュレータ32及びコイル34)の外観を示す斜視図である。図5(A)は、回転軸方向X2に見た場合のモータ12の概要(図2と同様の内容)を示す図であり、図5(B)、(C)は、回転軸Axを含む仮想鉛直平面80の左側及び右側それぞれについて径方向R2に見た場合のモータ12の一部(後述するステータコア30、インシュレータ32及びコイル34)の簡略的な断面を示す図である。
モータ12は、車両10の駆動力Fを生成するための駆動源である。モータ12は、3相交流ブラシレス式であり、図示しないインバータを介して図示しないバッテリから供給される電力に基づいて車両10の駆動力Fを生成する。また、モータ12は、回生を行うことで生成した電力(回生電力Preg)[W]を前記バッテリに出力することで前記バッテリを充電する。回生電力Pregは、図示しない12ボルト系又は補機に対して出力してもよい。
図1、図2等に示すように、モータ12は、ロータ20と、ステータ22と、図示しないモータハウジングと、サイドカバー24とを有する。
(1−2−2.ロータ20)
ロータ20は、ステータ22の内部(ステータ22よりも径方向内側(R1方向))に配置され、回転シャフト26(回転軸Ax)を中心として回転可能である。なお、回転シャフト26には、冷媒(例えば、冷却油)を導入するためのシャフト内流路28が掲載されており、サイドカバー24を介して供給される冷媒の一部は、後述する第1吐出孔74からシャフト内流路28内に案内される。その後、回転シャフト26に設けられた図示しない貫通孔から放出されてロータ20等を冷却する。シャフト内流路28に冷媒が供給される構成及びその後に冷媒が循環する構成については、例えば、特許文献1に記載のものを用いることができる。
(1−2−3.ステータ22)
図1、図2、図4等に示すように、ステータ22は、ステータコア30、複数のインシュレータ32(絶縁部材)、複数のコイル34及びステータホルダ36を有する。ステータ22は、回転軸Axが水平となるように鉛直方向Z1に起立している。
ステータコア30は、いわゆる分割コアから構成されるものであり、円環状のヨーク部40(図4)と、ヨーク部40から径方向R1に突出し、四角柱状を基調とする導線巻回部44(図5(B)等)を有するティース42とを備える。ここにいう「四角柱状を基調とする」には、例えば、四角錐台状も含まれる。
インシュレータ32は、ステータコア30のティース42(導線巻回部44)と、コイル34とを絶縁する。インシュレータ32のうち導線巻回部44を覆う部位{以下「ティース被覆部46」(図5(B)等)という。}は、導線巻回部44の形状に合わせて、四角筒状を基調としている。但し、径方向R1、R2に見たとき、ティース被覆部46の角部48(以下「インシュレータ角部48」ともいう。)は、略円弧状(図5(B)等参照)又は面取り形状とされる。これにより、コイル34の角部54(後述)を略円弧状とし易くなる。なお、ここにいう「円弧」とは、真円の円弧に限らず、楕円の円弧等の滑らかな曲線であってもよい。
複数のコイル34は、インシュレータ32を介して導線巻回部44に導線(マグネットワイヤ)が巻回されることで形成される。図2に示すように、複数のコイル34は、円環状に配置される。
上記のように、ステータコア30の導線巻回部44は四角柱状を基調とし、インシュレータ32のティース被覆部46は、四角筒状を基調としている。このため、ティース被覆部46に巻回された導線で構成される各コイル34は、四角筒状を基調とする。以下では、各コイル34のうち回転軸方向X1、X2(以下「軸方向X1、X2」ともいう。)に面する端面を軸方向端面50(図4等)といい、各コイル34のうち円周方向C1、C2に面する端面を円周方向端面52という。
また、径方向R1、R2に見たとき、インシュレータ角部48は略円弧状又は面取り形状とされる。このため、径方向R1、R2に見たとき、コイル34の導線巻回部44の角部54(以下「コイル角部54」ともいう。)は、略円弧状とされる(図4、図5(B)等参照)。
ステータ22の基本的な構成としては、例えば、特許文献1又は特開2012−016100号公報に記載のものを用いることができる。
(1−2−4.モータハウジング)
図示しないモータハウジングは、ロータ20及びステータ22を内部に収容してロータ20及びステータ22を保護する。前記モータハウジングとしては、例えば、特許文献1に記載のものを用いることができる。
(1−2−5.サイドカバー24)
サイドカバー24は、軸方向X2に向かって前記モータハウジングに固定されてロータ20及びステータ22を保護すると共に、冷却システム16(冷却構造体)の一部としても機能する。冷却システム16の一部としてのサイドカバー24については後述する。
[1−3.減速機14]
減速機14は、モータ12が生成した駆動力Fを、図示しないドライブシャフトを介して図示しない車輪に伝達する。減速機14の基本的な構成としては、例えば、特許文献1に記載のものを用いることができる。
[1−4.冷却システム16]
(1−4−1.冷却システム16の概要)
冷却システム16は、モータ12及び減速機14を冷却するものであり、サイドカバー24に加え、図1に示すように、ストレーナ60、ポンプ62、ラジエータ(図示せず)及びパイプ64を有する。
ストレーナ60は、モータ12の筐体である前記モータハウジング内部の下方に配置された導入口66から取り込んだ冷媒(例えば、冷却油)を濾過する。ポンプ62は、サイドカバー24、パイプ64等からなる冷媒供給路68内に冷媒を循環させる。ポンプ62は、電動式又は機械式のいずれでもよい。前記ラジエータは、冷媒を放熱させる。また、図1等に示すように、サイドカバー24からモータ12のロータ20及びステータ22それぞれに対して冷媒が放出される。
(1−4−2.サイドカバー24)
図1に示すように、サイドカバー24には、単一の導入孔70、カバー内流路72、単一の第1吐出孔74、単一の第2吐出孔76及び複数の第3吐出孔78が形成されている。冷媒供給口としての第1吐出孔74、第2吐出孔76及び複数の第3吐出孔78には、パイプ64、カバー内流路72等を介してポンプ62から冷媒が供給される。
上記のように、図1等に示すように、サイドカバー24の第1吐出孔74、第2吐出孔76及び第3吐出孔78からモータ12のロータ20及びステータ22それぞれに対して冷媒が供給される。
具体的には、第1吐出孔74は、主としてロータ20の回転シャフト26に対して冷媒を放出する。第1吐出孔74は、ノズル状であり、冷媒を放出することが可能である。第1吐出孔74の位置P1及び第1吐出孔74から放出された冷媒のその後の動き等は、例えば、特許文献1と同様である。
第2吐出孔76及び第3吐出孔78は、主としてステータ22に対して冷媒を放出する。第2吐出孔76及び第3吐出孔78は、ノズル状であり、冷媒を放出することが可能である。第2吐出孔76及び第3吐出孔78の位置P2、P3(図2等)は、特許文献1の吐出孔95と異なる。
2.第2吐出孔76の配置並びにその作用及び効果
図2等に示すように、第2吐出孔76は、鉛直方向Z1、Z2において最も上側のコイル34(以下「最上位コイル34up」という。)に対応して設けられる。より具体的には、図2等に示すように、軸方向X2に見たとき、第2吐出孔76は、最上位コイル34upにおける円周方向C1、C2の中央に配置される。また、軸方向X2に見たとき、第2吐出孔76は、径方向R1、R2において最上位コイル34upの中央よりも外側(R2方向)に配置される。
このような配置とすることにより、第2吐出孔76から放出された冷媒は、軸方向端面50の広い領域に当たることとなり、最上位コイル34upを効果的に冷却することが可能となる。
3.第3吐出孔78の配置並びにその作用及び効果
第3吐出孔78の配置には、主として4つの特徴がある。それらの特徴とそれぞれの作用及び効果を以下に記載する。
[3−1.特徴1について]
図5(A)〜図5(C)等に示すように、軸方向X2に見たとき、第3吐出孔78(位置P3)は、鉛直方向Z1、Z2に沿うと共に回転軸Axを含む仮想鉛直平面80(又は鉛直方向Z1、Z2に伸びると共に回転軸Axを通る仮想鉛直線)の両側のいずれにおいても、鉛直方向上側(Z1方向)の角部54に対向する位置に配置される。
すなわち、図5(A)において、仮想鉛直平面80よりも左側の各第3吐出孔78(位置P3)は、コイル34の右側又は上側(円周方向C1)の各角部54に対応して配置される。また、図5(A)において、仮想鉛直平面80よりも右側の各第3吐出孔78は、コイル34の左側又は上側(円周方向C2)の各角部54に対応して配置される。
特徴1によれば、第3吐出孔78は、各角部54に対向する位置に配置される(図1〜図5(C)参照)。これにより、図4、図5(B)及び図5(C)に示すように、供給された冷媒をコイル34の軸方向端面50と円周方向端面52の両方に接触させ易くすることが可能となる。従って、コイル34の冷却効率を向上することが可能となる。
また、特徴1によれば、各第3吐出孔78は、鉛直方向上側(Z1方向)の角部54に対向する位置に配置される(図5(A)等参照)。これにより、軸方向端面50又は円周方向端面52に接触した冷媒は、その後、重力によって軸方向端面50又は円周方向端面52に沿って鉛直方向下側(Z2方向)へ流れることとなる(図4参照)。従って、軸方向端面50又は円周方向端面52において、第3吐出孔78に対向して冷媒が直接当たる位置だけでなく、第3吐出孔78に対向する位置よりも鉛直方向下側(Z2方向)の位置においてもコイル34に冷媒を接触させ易くすることで、コイル34の冷却効率をより向上することが可能となる。
[3−2.特徴2について]
図5(A)等に示すように、回転軸方向X2に見たとき、第3吐出孔78は、鉛直方向Z1、Z2に沿うと共に回転軸Axを含む仮想鉛直平面80(又は鉛直方向Z1、Z2に伸びると共に回転軸Axを通る仮想垂直線)の両側において略対称(線対称)に配置される。
ここにいう「略対称」とは、例えば、鉛直方向Z1、Z2において最も上側のコイル(最上位コイル34up)が1つのみであり、最上位コイル34upが仮想鉛直平面80と重なっている場合、最上位コイル34upを除き、仮想鉛直平面80を挟んで対となるコイル34が存在し、これら対となるコイル34それぞれにおいて第3吐出孔78が対称の位置に存在する状態を指す。換言すると、軸方向X2に見たとき、円環状に配置されたコイル34の位置が円周方向C1、C2に偏位し、仮想鉛直平面80を挟んでコイル34が完全に対称に配置されていなくても、仮想鉛直平面80を挟んで対となるコイル34それぞれに対応して第3吐出孔78が存在する状態を指す。
また、鉛直方向Z1、Z2において最上位コイル34upが2つあり、仮想鉛直平面80を挟んでコイル34が対称に配置されている場合(例えば、コイル34の数が偶数であり、いずれのコイル34も仮想鉛直平面80を挟んで対となる別のコイル34が存在する場合)、「略対称」とは、仮想鉛直平面80を挟んで対となるコイル34が存在し、これら対となるコイル34それぞれにおいて第3吐出孔78が対称の位置に存在する状態を指す。
特徴2によれば、複数の第3吐出孔78が、鉛直方向Z1、Z2に沿うと共に回転軸Axを含む仮想鉛直平面80の両側において略対称に配置されている(図5(A)等参照)。これにより、仮想鉛直平面80の両側において略均等にコイル34を冷却することが可能となり、一部のコイル34の温度が他のコイル34に対して上昇してしまうことを抑制し易くなる。
[3−3.特徴3について]
図6は、第3吐出孔78の配置の説明図である。図6に示すように、鉛直方向Z1、Z2においてコイル34の位置が上側になるほど、対応する第3吐出孔78の位置P3は径方向外側(R2方向)となり、鉛直方向Z1、Z2においてコイル34の位置が中央側になるほど、対応する第3吐出孔78の位置P3は径方向中央側となる。
例えば、回転軸Axを中心とし、鉛直方向Z1、Z2において最も上側(図6において最も上側)の第3吐出孔78(以下「最上位吐出孔78up」という。)を通過する円を円90とするとき、最上位吐出孔78up以外の第3吐出孔78は、円90上ではなく、円90内に配置される。
本実施形態のように、回転軸Axが水平となるようにステータ22が鉛直方向Z1に起立し、且つコイル34が円環状に配列されている構成では、鉛直方向Z1、Z2においてコイル34の位置が中央から上側に行くほど(コイル34が上側に位置するほど)、コイル34の円周方向端面52は垂直に近くなる{水平面に対してなす角度が大きくなる(90°に近くなる)。}。また、鉛直方向Z1、Z2においてコイル34の位置が中央に近づくほど、その円周方向端面52は水平に近くなる{水平面に対してなす角度が小さくなる(0°に近くなる)。}。従って、鉛直方向Z1、Z2において上側のコイル34では、中央側のコイル34と比較して、円周方向端面52に放出された冷媒が重力によって円周方向端面52に沿って鉛直方向下側(Z2方向)に流れ易くなる。
特徴3によれば、鉛直方向Z1、Z2においてコイル34の位置が上側になるほど、対応する第3吐出孔78の位置は径方向外側(R2方向)となる。このため、鉛直方向Z1、Z2において上側のコイル34(例えば、最上位コイル34up)については、径方向外側(R2方向)に冷媒を放出することにより、円周方向端面52における冷媒の接触面積を大きくすることが可能となる。また、特徴3によれば、鉛直方向Z1、Z2においてコイル34の位置が中央側になるほど、対応する第3吐出孔78の位置は径方向中央側となる(中央に近づく)。このため、鉛直方向Z1、Z2において中央側のコイル34については、径方向中央側に冷媒を放出することにより、軸方向端面50及び円周方向端面52それぞれにおいて冷媒を広がり易くし、冷媒の接触面積を大きくすることが可能となる。
[3−4.特徴4について]
図7は、コイル34に対する冷媒の放出位置の説明図である。図7では、径方向R2に見た場合のステータコア30のティース42(導線巻回部44)、インシュレータ32(ティース被覆部46)及びコイル34の簡略的な断面が示されている。図7において、本実施形態の放出位置又は放出方向は、矢印A2で示されている。矢印A1、A3は、第1比較例及び第2比較例に係る放出位置又は放出方向を示す。
第1比較例(矢印A1)の場合、コイル34の円周方向端面52を直接狙って冷媒を放出するように各第3吐出孔78を配置する。また、第2比較例(矢印A3)の場合、円周方向C1、C2におけるコイル34の軸方向端面50の中央を狙って冷媒を放出するように各第3吐出孔78を配置する。
一方、本実施形態の場合、径方向R2に見たとき、各第3吐出孔78は、鉛直方向上側(Z1方向)の角部54のうち円周方向C1、C2の中央部100(図7)に対向する位置に配置される。ここにいう中央部100は、次のように定義される。すなわち、第3吐出孔78から対向するコイル34を見たときにおける角部54の幅を幅Wとするとき、中央部100は、幅Wを二等分する位置にある。
特徴4によれば、例えば、第1比較例(矢印A1)及び第2比較例(矢印A2)と比較して、供給された冷媒をコイル34の軸方向端面50及び円周方向端面52の両方に分散させ易くすることが可能となる。また、第1比較例(矢印A1)と比較して、コイル34又は第3吐出孔78の位置が寸法公差によって僅かに円周方向端面52側にずれた場合においても、冷媒がコイル34間を通り抜けてしまうことを抑制し易くなる。
B.変形例
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
1.適用対象
上記実施形態では、冷却システム16を車両10に搭載したが、これに限らず、モータ12等の回転電機を用いる別の用途に適用することができる。例えば、上記実施形態では、車両10の駆動用に用いるモータ12に対して冷却システム16を用いたが、車両10におけるその他の用途(例えば、電動パワーステアリング、エアコンディショナ、エアコンプレッサ等)に用いる回転電機に冷却システム16を用いてもよい。或いは、産業機械、家電製品等の機器に用いる回転電機に冷却システム16を用いることもできる。
2.モータ12(回転電機)
[2−1.モータ12全体]
上記実施形態では、モータ12は、3相交流方式としたが、冷却システム16により冷却される回転電機の観点からすれば、その他の交流方式又は直流方式であってもよい。上記実施形態では、モータ12をブラシレス式としたが、ブラシ式としてもよい。上記実施形態では、ステータ22がロータ20の径方向外側(R2方向)に配置されていたが(図1等参照)、これに限らず、ステータ22がロータ20の径方向内側(R1方向)に配置されてもよい。この場合、ティース42は、ヨーク部40に対して径方向外側(R2方向)に突出させることができる。
上記実施形態では、モータ12を用いたが、冷却システム16により冷却される回転電機の観点からすれば、モータ12以外の回転電機(例えば、ジェネレータ)であってもよい。
[2−2.ステータ22]
上記実施形態では、ステータ22は、回転軸Axが水平となるように鉛直方向Z1に起立したが、上記特徴1〜4の観点からすれば、必ずしもステータ22は、回転軸Axが水平となるように鉛直方向Z1に起立していなくてもよく、回転軸Axが鉛直方向Z1に近づくようにステータ22を傾斜させることも可能である。
[2−3.コイル34]
上記実施形態では、ステータコア30の導線巻回部44は四角柱状を基調とし、インシュレータ32のティース被覆部46は四角筒状を基調とすることで、各コイル34は、四角筒状を基調とした。しかしながら、上記特徴1〜4の観点からすれば、コイル34の形状は、四角筒状以外の角筒状(例えば、六角筒状又は八角筒状)を基調とすることも可能である。この場合、目標とするコイル34の形状に合わせて、ステータコア30の導線巻回部44及びインシュレータ32のティース被覆部46の形状を変更すればよい。
3.冷却システム16
[3−1.冷媒]
上記実施形態では、冷媒(冷却流体)として冷却油を用いたが、冷却機能の観点からすれば、冷却油以外の冷却流体(例えば、水等)であってもよい。但し、減速機14の潤滑目的での使用ができなくなる可能性がある。
[3−2.サイドカバー24]
(3−2−1.第1吐出孔74及び第2吐出孔76)
上記実施形態では、サイドカバー24に第1吐出孔74及び第2吐出孔76を設けたが、第3吐出孔78に着目すれば、第1吐出孔74及び第2吐出孔76の少なくとも一方を設けない構成も可能である。
(3−2−2.第3吐出孔78)
上記実施形態では、全てのコイル34のうち鉛直方向上側(図2等において上側)のコイル34に対応して第3吐出孔78を配置し、鉛直方向下側(図2等において下側)のコイル34に対応して第3吐出孔78を配置しなかった(但し、鉛直方向下側のコイル34のうち最も上側のものを除く。)。しかしながら、上記特徴1〜4の少なくとも1つに着目すれば、第3吐出孔78の位置は、これに限らない。例えば、全てのコイル34のうち鉛直方向上側のコイル34に加え又はこれらに代えて、鉛直方向下側のコイル34に対応して第3吐出孔78を設けることも可能である。
なお、全てのコイル34のうち鉛直方向下側(図2等において下側)のコイル34に対応して第3吐出孔78を設ける場合、上記特徴3の観点からすれば、例えば、鉛直方向Z1、Z2においてコイル34の位置が下側になるほど、対応する第3吐出孔78の位置は径方向内側(R1方向)としてもよい。
上記実施形態では、回転軸方向X2に見たとき、鉛直方向Z1、Z2に沿うと共に回転軸Axを含む仮想鉛直平面80(又は鉛直方向Z1、Z2に伸びると共に回転軸Axを通る仮想鉛直線)の両側のいずれにおいても、各第3吐出孔78は、鉛直方向上側(Z1方向)の角部54に対向する位置に配置した(特徴1)。しかしながら、上記特徴2〜4の観点からすれば、必ずしもこれに限らない。例えば、一部の第3吐出孔78は、鉛直方向下側(Z2方向)の角部54に対向する位置に配置してもよい。
上記実施形態では、回転軸方向X2に見たとき、第3吐出孔78は、鉛直方向Z1、Z2に沿うと共に回転軸Axを含む仮想鉛直平面80の両側において略対称に配置した(特徴2)。しかしながら、上記特徴1、3、4の観点からすれば、必ずしもこれに限らない。例えば、各第3吐出孔78は、仮想鉛直平面80(又は回転軸Axを通る仮想鉛直線)の両側において略対称に配置しないことも可能である。
上記実施形態では、鉛直方向Z1、Z2においてコイル34の位置が上側になるほど、対応する第3吐出孔78の位置P3を径方向外側(R2方向)とし、鉛直方向Z1、Z2においてコイル34の位置が中央側になるほど、対応する第3吐出孔78の位置P3を径方向中央側とした(特徴3)。しかしながら、上記特徴1、2、4の観点からすれば、必ずしもこれに限らない。例えば、各第3吐出孔78は、回転軸Axを中心とする同一の円(例えば、図6の円90)上に配置してもよい。
上記実施形態では、径方向R2に見たとき、各第3吐出孔78は、鉛直方向上側(Z1方向)の角部54のうち円周方向C1、C2の中央部100に対向する位置に配置した(特徴4)。しかしながら、上記特徴1〜3の観点からすれば、必ずしもこれに限らない。例えば、各第3吐出孔78は、角部54のうち中央部100以外の位置{例えば、図7の第1比較例(矢印A1)の位置}に配置してもよい。
上記実施形態では、第3吐出孔78の放出方向(中心軸線)を軸方向X2と平行にすることを想定していたが(図1等参照)、コイル34に対する冷媒の放出位置に着目すれば、必ずしもこれに限らない。例えば、第3吐出孔78の放出方向(中心軸線)は、軸方向X2に見たとき、上方、下方、左方、右方等に傾斜していてもよい。換言すると、上記特徴1の観点からすれば、第3吐出孔78が鉛直方向上側(Z1方向)の角部54に対向するとは、第3吐出孔78から放出される冷媒が鉛直方向上側(Z1方向)の角部54に直接当たることを意味する。
12…モータ(回転電機) 16…冷却システム(冷却構造体)
22…ステータ 30…ステータコア
32…インシュレータ(絶縁部材) 34…コイル
40…ヨーク部 42…ティース
44…導線巻回部 54…導線巻回部の角部
68…冷媒供給路 78…第3吐出孔(冷媒供給口)
80…仮想鉛直平面 100…中央部
Ax…回転軸 C1、C2…円周方向
R1、R2…径方向 X1、X2…回転軸方向
Z1、Z2…鉛直方向

Claims (3)

  1. ステータコア、絶縁部材及び複数のコイルを有するステータと、
    前記複数のコイルに対して回転軸方向に離間して配置された複数の冷媒供給口と、
    前記複数の冷媒供給口へ冷媒を導く冷媒供給路と
    を備える回転電機の冷却構造体であって、
    前記ステータコアは、円環状のヨーク部と、前記ヨーク部から径方向に突出し、角柱状を基調とする導線巻回部を有するティースとを備え、
    前記複数のコイルは、前記絶縁部材を介して前記導線巻回部に導線が巻回されることで形成され、前記回転軸方向に見たとき、前記複数のコイルは円環状に配置され、前記径方向に見たとき、前記複数のコイルの各角部は円弧状に構成されており、
    前記複数の冷媒供給口は、少なくとも円周方向に互いに離間して配列されており、
    さらに、前記複数の冷媒供給口は、鉛直方向に沿うと共に前記回転電機の回転軸を含む仮想鉛直平面の両側において略対称に配置され、
    前記複数の冷媒供給口のそれぞれは、前記仮想鉛直平面の両側のいずれにおいても、鉛直方向上側の前記角部に対向する位置に配置される
    ことを特徴とする回転電機の冷却構造体。
  2. 請求項1記載の回転電機の冷却構造体において、
    前記複数の冷媒供給口のそれぞれは、前記鉛直方向上側の前記角部のうち円周方向の中央部に対向する位置に配置される
    ことを特徴とする回転電機の冷却構造体。
  3. 請求項1又は2記載の回転電機の冷却構造体において、
    前記ステータは、前記回転電機の回転軸が水平となるように鉛直方向に起立し、
    前記回転軸方向に見たとき、前記複数の冷媒供給口は、鉛直方向において中央よりも上側のコイルに対応して配置され、
    鉛直方向において前記コイルの位置が上側になるほど、対応する前記冷媒供給口の位置は径方向外側となり、鉛直方向において前記コイルの位置が中央側になるほど、対応する前記冷媒供給口の位置は径方向中央側となる
    ことを特徴とする回転電機の冷却構造体。
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