以下、実施形態である回転電機10について図面を参照して説明する。図1は、実施形態である回転電機10の概略断面図である。また、図2は、図1のA−A断面図、図3は、図1のB−B断面図である。また、図4は、図1のC部拡大図、図5は図1のD部拡大図である。なお、図1から図5において、Z軸方向は垂直方向、X軸方向およびY軸方向が水平方向であり、重力は、Z方向下向きに作用している。また、Y軸方向が回転軸12の延びる方向である。
この回転電機10は、電動車両、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される。電動車両において、当該回転電機10は、車両を走行させるための動力を発生する走行用モータとして用いられてもよいし、回生制動力やエンジンの余剰動力により発電するジェネレータとして用いられてもよい。電動車両において、回転電機10は、その回転軸12は、重力方向であるZ方向と直交するY軸方向となるように載置されている。ただし、回転電機10は、回転軸12がZ方向と交差するのであれば、水平方向であるXY面に対して傾斜して載置されていてもよい。
回転電機10は、回転軸12と、当該回転軸12に固着されたロータ14と、ロータ14の外周に配されたステータ16と、これらを収容するケーシング18と、を備えている。回転軸12は、軸受28を介してケーシング18に軸支されており、自転可能となっている。ロータ14は、積層鋼板等からなるロータコアと、当該ロータコア内に埋め込まれる複数の永久磁石と、を備えた略環状部材である。ロータ14は、回転軸12に固着されており、回転軸12は、当該ロータ14と一体となって回転する。
ステータ16は、ステータコア20とステータコイル22とを備えている。ステータコア20は、積層鋼板等からなる略環状部材で、環状のヨークと、当該ヨークの内周から径方向内側に突出する複数のティースと、を備えている。各ティースには、ステータコイル22を構成する巻線が巻回されている。この巻線の巻回方法は、巻線を一つのティースに巻回する集中巻でもよいし、巻線を複数のティースに跨って巻回する分布巻でもよい。いずれにしても、ステータ16の軸方向両端には、ステータコイル22のうち、ステータコア20の軸方向端面から軸方向外側に突出した部分であるコイルエンド21a,21bが存在している。
ステータコイル22は、三相のコイル、すなわち、U相コイル、V相コイル、W相コイルを結線して構成される。コイルの結線態様は、特に限定されないが、本実施形態では、三相のコイルそれぞれの末端を、中性点で一括して接続したスター結線としている。回転電機10を、電動機として使用する場合は、このステータコイル22に三相交流電流を印加する。これにより、回転磁界が形成され、ロータ14が回転する。また、回転電機10を発電機として使用する場合には、車両の回生制動力やエンジンの余剰動力により、回転軸12およびロータ14が回転する。これにより、ステータコイル22に電流が誘導される。
三相のコイルそれぞれの始端は、端子台30(図1では図示せず、図2参照)に設けられた入出力端子32に接続される。端子台30は、ステータ16の軸方向一端に取り付けられる部材で、入出力端子32を有している。入出力端子32は、三相のコイルそれぞれと、外部に設けられたインバータとを電気的に中継する。なお、以下では、回転電機10の軸方向両側のうち、この端子台30および後述する温度センサ34が設けられる側(図1におけるY方向マイナス側)を、「リード側」と呼び、反対側(図1におけるY方向プラス側)を「反リード側」と呼ぶ。本実施形態における「リード側」が請求項における「一端側」に、「反リード側」が請求項における「他端側」に対応する。
リード側のコイルエンド21aには、ステータコイル22の温度を検出するための温度センサ34が、設けられている。温度センサ34は、温度に応じた電気信号を出力できるのであれば、特に限定されず、例えば、サーミスタ等からかなる。回転電機10の駆動を制御する制御部(図示せず)は、回転電機10を熱から保護するために、温度センサ34の検出温度が高い場合には、ステータコイル22に流れる電流を制限する。また、制御部は、温度センサ34の検出温度に応じて、ステータコイル22に吐出する冷却油(冷媒)の吐出流量を調整する。
ここで、図2に示す通り、水平方向視で、ステータ16を左右均等に分割する線を左右分割線Lv、ステータ16を上下均等に分割する線を上下分割線Lhとすると、端子台30および温度センサ34は、左右分割線Lvに対して20〜60度程度、傾いた位置に設けられている。換言すれば、端子台30および温度センサ34は、ステータ16の上下中心よりも上側、かつ、左右中心からずれた位置に設けられている。
ケーシング18は、ケース本体24と、カバー26と、ケース本体24およびカバー26の内面に取り付けられる二つの第1、第2吐出プレート46,56に大別される。ケース本体24は、軸方向一端(本実施形態ではリード側端部)が完全開口された略円筒形部材である。また、カバー26は、ケース本体24の開口を覆う部材で、ボルト等の固定手段により、ケース本体24に固定される。このケーシング18の基本的な構成は、公知の従来技術を利用できるため、ここでの詳説は、省略する。以下では、主に、ケーシング18に設けられた第1冷媒吐出機構40および第2冷媒吐出機構50について説明する。
カバー26のうち、リード側のコイルエンド21aとの対向面には、冷却油を吐出する第1冷媒吐出機構40が設けられている。また、ケース本体24のうち、反リード側のコイルエンド21bとの対向面には、冷却油を吐出する第2冷媒吐出機構50が設けられている。
第1冷媒吐出機構40は、図2、図4に示すように、カバー26の内面に形成された第1冷却溝44と、第1冷却溝44に連通する第1チャネル45と、第1冷却溝44を覆う第1吐出プレート46とで構成される。第1冷却溝44は、カバー26のうち、コイルエンド21aと軸方向に対向する位置において、周方向に延びる溝である。第1チャネル45は、第1冷却溝44から斜め上方向(Z方向プラス側)に向かって延びる孔であり、カバー26のY方向プラス側の内面には、図2、図4に示すように、パイプ70がはまり込む孔49が設けられている。パイプ70は、請求項に記載の「第1冷媒供給流路」に対応する。
また、第1吐出プレート46は、第1冷却溝44よりも十分に幅広の円弧状のプレートである。この第1吐出プレート46は、ボルト47によりカバー26の内面に固着される。このとき、第1吐出プレート46は、カバー26のY方向プラス側の内面に液密に密着するとともに、第1冷却溝44を完全に覆う。そして、これにより、カバー26と第1吐出プレート46との間に、冷却油が流れる第1冷媒路42が形成される。図2、図4に示すように、第1冷媒路42は、第1チャネル45と連通している。
第1吐出プレート46には、周方向に間隔をあけて並ぶ複数の第1吐出孔48が形成されている。各第1吐出孔48は、第1吐出プレート46を厚み方向に貫通しており、第1冷媒路42に流れる冷却油は、この第1吐出孔48を介して外部に噴出する。したがって、冷却油は、第1冷媒路42から第1吐出孔48を介して軸方向に噴出し、リード側のコイルエンド21aの軸方向端面に当たることになる。第1吐出プレート46の複数の第1吐出孔48は、温度センサ34に冷却油がかからないような位置に配されるが、これについては、後に詳説する。
第2冷媒吐出機構50も、第1冷媒吐出機構40とほぼ同じ構造を有している。すなわち、図3に示すように、第2冷媒吐出機構50は、ケース本体24のY方向マイナス側内面において周方向に延びる第2冷却溝54と、第2冷却溝54に連通する第2チャネル55と、第2冷却溝54を覆う第2吐出プレート56とで構成される。第2吐出プレート56は、ボルト57によりケース本体24の内面に固着されてケース本体24の内面に液密に密着するとともに、第2冷却溝54を完全に覆う。第2チャネル55は、第2冷却溝54から斜め上方向(Z方向プラス側)に向かって延びる孔であり、ケース本体24のY方向マイナス側の内面には、図3、図5に示すように、第1冷媒供給流路であるパイプ70がはまり込む孔59が設けられている。第2吐出プレート56には、周方向に間隔を開けて並ぶ複数の第2吐出孔58が形成されている。冷却油は、第2冷媒路52から第2吐出孔58を介して軸方向に噴出し、反リード側のコイルエンド21bの軸方向端面に当たる。第2吐出プレート56の複数の第2吐出孔58は、コイルエンド21bの全面に冷却油がかかるような位置に配されるが、これについては、後述する。
図1に示すように、ケーシング18の内部には、第1冷媒吐出機構40と第2冷媒吐出機構50との間を連通するパイプ70が取り付けられている。パイプ70のリード側端は、カバー26のY方向プラス側の内面に設けられた孔49に嵌め込まれており、パイプ70の反リード側端は、ケース本体24のY方向マイナス側の内面に設けられた孔59に嵌め込まれている。パイプ70は、孔49から第1チャネル45を介して第1冷媒吐出機構40の第1冷媒路42に連通している。また、パイプ70は、孔59から第2チャネル55を介して第2冷媒吐出機構50の第2冷媒路52に連通している。このように、パイプ70は、ケーシング18の内部で第1冷媒吐出機構40と第2冷媒吐出機構50との間を連通する。
ケーシング18の外側には、図1、図3、図5に示すように、ケーシング18の外部にはケーシング18の底部に配置された冷却油溜め(図示せず)から冷却油をケース本体24に設けられた冷媒供給孔63を通して第2冷媒吐出機構50の第2冷媒路52に導く冷媒供給管62が設けられている。図5に示すように、冷却油溜めに貯留されている冷却油は、冷却ポンプ(図示せず)によって冷媒供給管62、冷媒供給孔63から第2冷媒吐出機構50の第2冷媒路52に流入する。第2冷媒路52に流入した冷却油の一部は、第2冷媒吐出機構50の第2吐出プレート56に設けられている複数の第2吐出孔58から反リード側のコイルエンド21bに向かって吐出される。また、図5に示すように、冷却油の一部は、第2冷媒路52から第2チャネル55を通ってパイプ70に流入する。図4に示すように、パイプ70に流入した冷却油は、第1冷媒吐出機構40の第1チャネル45から第1冷媒路42に流入する。そして、第1冷媒路42に流入した冷却油は、第1冷媒吐出機構40の第1吐出プレート46に設けられている複数の第1吐出孔48からリード側のコイルエンド21aに向かって吐出される。コイルエンド21a、21bに吐出された冷却油は、重力により、下方に落下し、ケーシング18の底部に配置された冷却油溜めに溜まる。冷却油溜めに溜まった冷却油は、自然冷却された後、再び、冷却ポンプ、冷媒供給管62、冷媒供給孔63を介して、第1、第2冷媒吐出機構40,50に供給される。冷媒供給管62、冷媒供給孔63は、第1冷媒供給流路であるパイプ70と連通しており、請求項に記載の「第2冷媒供給流路」を構成する。
以上説明したように、本実施形態の回転電機10は、ケーシング18の内部に配置されたパイプ70で第1冷媒吐出機構40と第2冷媒吐出機構50とを連通し、第2冷媒吐出機構50に流入した冷却油をケーシング18の内部で第1冷媒吐出機構40に供給するように構成し、1か所の冷媒供給管62から冷却油を供給する簡便な構成により、ステータコイル22を好適に冷却することができる。
以上の説明では、パイプ70のリード側端部がはまり込む孔49が設けられている第1チャネル45とパイプ70の反リード側端部がはまり込む孔59が設けられている第2チャネル55とは、それぞれ、第1冷却溝44から斜め上方向(Z方向プラス側)に向かって延びる孔、第2冷却溝54から斜め上方向(Z方向プラス側)に向かって延びる孔であるとして説明したが、第1チャネル45、第2チャネル55は、それぞれ第1冷却溝44、第2冷却溝54と連通していれば上記の配置に限定されない。例えば、第1チャネル45を周方向に延びる第1冷却溝44の周方向の延長上に配置し、第2チャネル55を周方向に延びる第2冷却溝54の周方向の延長上に配置するように構成してもよい。
次に、第1、第2冷媒吐出機構40,50における第1、第2吐出孔48,58の配置について図6、図7を参照して説明する。図6は、第1冷媒吐出機構40の第1吐出孔48とステータ16との位置関係を、図7は、第2冷媒吐出機構50の第2吐出孔58とステータ16との位置関係を説明する図である。なお、図6は、図1のリード側からコイルエンド21aを、図7は、図1の反リード側からコイルエンド21bを見ている。したがって、図2と図6、および、図3と図7は、視線の向きが反転している。そして、視線の向きが反転している関係上、図2と図6、および、図3と図7では、第1、第2吐出孔48,58や温度センサ34等の位置が、左右反転して見えている。
既述した通り、リード側のコイルエンド21aには、温度センサ34および端子台30が取り付けられている。温度センサ34および端子台30は、上下分割線Lhより上側、かつ、左右分割線Lvからずれた位置に配されている。このように温度センサ34を上下分割線Lhより上側に配することで、ケーシング18の底に溜まった冷却油に温度センサ34が浸かりにくくなる。また、温度センサ34を、上下分割線Lhより上側に配することで、後述する回避領域Eaを狭くでき、第1吐出孔48の配置可能領域が広くなる。
第1冷媒吐出機構40の第1吐出孔48は、この温度センサ34に冷却油がかからないような位置に配されている。具体的には、第1吐出孔48は、回避領域Eaを避けた領域に配される。回避領域Eaとは、図6で、破線で囲った領域であり、左右分割線Lvからみて温度センサ34と同じ側、かつ、温度センサ34の下端より重力方向上側となる領域である。
本実施形態では、左右分割線Lvを挟んで温度センサ34とは逆側、かつ、上下分割線Lhよりも上側となる領域に、第1冷媒吐出機構40の第1吐出孔48を設けている。第1吐出孔48から吐出された冷却油は、コイルエンド21aの軸方向端面に当たった後は、重力の影響により、コイルエンド21aに沿って下方に落下していく。図6において、薄墨ハッチングは、冷却油がかかる範囲を示している。
図6から明らかな通り、第1吐出孔48を、上下分割線Lhよりも上側に配しておけば、吐出された冷却油が重力により下方に広がるため、第1吐出孔48の個数が少なくても広い範囲に冷却油をかけることができる。また、左右分割線Lvからみて温度センサ34と同じ側には第1吐出孔48を設けていないため、温度センサ34には、冷却油は、かからない。
図7においても、薄墨ハッチングは、冷却油がかかる範囲を示している。また、図7が図示する反リード側には、温度センサ34は設けられていないが、図7では、参考として、リード側に配された温度センサ34の位置を二点鎖線で示している。
第2冷媒吐出機構50の第2吐出孔58は、左右分割線Lvを挟んで左右両側の領域に配されている。本実施形態では、左右分割線Lvを中心として、温度センサ34と同じ領域には、五個の第2吐出孔58を、温度センサ34の逆側の領域には二個の第2吐出孔58を設けている。換言すれば、第2冷媒吐出機構50は、7個の第2吐出孔58が設けられており、第1冷媒吐出機構40の第1吐出孔48よりも多い。そして、吐出孔の個数が多い分、第2冷媒吐出機構50から単位時間当たりに吐出する冷媒流量も、第1冷媒吐出機構40のそれよりも多くなっている。また、全ての第2吐出孔58は、いずれも、上下分割線Lhよりも上側に配されている。
第2吐出孔58から噴出した冷却油は、反リード側のコイルエンド21bの軸方向端面に当たった後は、重力の影響により、コイルエンド21bに沿って下方に落下していく。また、左右両側に第2吐出孔58が設けられているため、冷却油は、コイルエンド21bの全体にかかることになる。また、本実施形態では、反リード側において、向かって左側に配される第2吐出孔58を、向かって右側に配される第2吐出孔58よりも多く設けている。これは、反リード側における向かって左側は、リード側における向かって右側であり、温度センサ34が配される側だからである。リード側において、温度センサ34が配される領域は、冷却油がかからず、冷却能力が低くなりがちである。そこで、反リード側では、冷却油の吐出流量を増やして冷却能力を高めるため、第2吐出孔58の個数を多くしている。
次に、複数の第1、第2吐出孔48,58を、上述のような配置とする理由について、従来技術と比較して説明する。図8は、従来の吐出機構の一例を示す概略図である。また、図9は、リード側の吐出孔104とステータ16との位置関係を、図10は、反リード側の吐出孔106とステータ16との位置関係を説明する図である。
従来では、コイルエンド21a、21bより重力方向上側に、回転軸12と平行に延びる第1、第2の配管100,102を設けていた。各配管100,102は、その始端が冷却油の供給源に接続されているとともに、その末端が完全に閉塞された配管である。配管100,102の末端近傍の周面には、吐出孔104,106が二つずつ形成されており、この吐出孔104,106から冷却油が外部に放出される。したがって、従来技術では、冷却油は、配管100,102から吐出孔104,106を介して径方向に吐出され、コイルエンド21a、21bの外周面に当たることになる。コイルエンド21a、21bの外周面に当たった冷却油は、その後、コイルエンド21a、21bに沿って下方に落下していく。ただし、冷却油の吐出流量にもよるが、上下分割線Lhより下側まで冷却油が到達することは難しい。通常、冷却油は、図9、図10において薄墨ハッチングで示すように、左右分割線Lvから40〜70度程度、傾斜した範囲にかかる。
ここで、リード側において、温度センサ34は、左右分割線Lvに対して、20度〜70度程度、傾いた位置に設けられているため、従来技術では、温度センサ34の配置範囲と冷却油がかかる範囲とが重複する。したがって、従来技術では、温度センサ34に冷却油がかかりやすかった。この場合、温度センサ34の温度が低下するため、ステータコイル22の実際の温度と、温度センサ34による検出温度との乖離が大きくなっていた。
ここで、既述した通り、回転電機10の制御部は、回転電機10を熱から保護するために、温度センサ34の検出温度に基づいて、通電量や冷却油の流量等を制御している。したがって、温度センサ34に冷却油がかかり、実際のコイル温度よりも低い温度が検出されると、回転電機10を熱から適切に保護することができない。
かかる問題を避けるために、温度センサ34を、上下分割線Lhよりも下側に配することも考えられる。かかる配置とすれば、従来技術でも、温度センサ34に、吐出孔104から吐出された冷却油がかからなくなる。しかし、ケーシング18の底部には、落下した冷却油を貯留する冷却油溜めが設けられているので、温度センサ34をステータ16の下部に設けると、冷却油溜めに溜まっている冷却油に温度センサ34が浸るおそれがある。この場合でも、温度センサ34の検出精度が低下する。つまり、検出温度の精度を維持するためには、温度センサ34は、上下分割線Lhよりも重力方向上側に設けられることが望ましい。
また、従来技術では、吐出孔104がステータ16の上側にのみ設けられているため、冷却油のかかる範囲が小さく、ステータコイル22の冷却効率が悪かった。本実施形態では、第1、第2吐出孔48,58を、周方向に間隔を開けて複数設けているため、コイルエンド21a、21bの広い範囲に冷却油をかけることができる。結果として、本発明によれば、ステータ16を効率的に冷却できる。
また、本実施形態では、リード側において、左右分割線Lvからみて温度センサ34と反対側にのみ冷却油をかけているため、実際のコイル温度と、温度センサ34での検出温度との乖離を小さく抑えることができる。
図11、図12は、本実施形態と従来技術におけるステータコイル22の温度を測定した実験結果である。実験では、本実施形態および従来技術の回転電機10を駆動し、そのときのステータコイル22の温度を検出した。ステータコイル22の温度検出には、サーミスタからなる温度センサ34と、熱電対とを用いた。温度センサ34は、リード側のコイルエンド21aのうち、左右分割線Lvから45度、傾斜した位置に設けた。熱電対は、リード側では、45度間隔で8個、反リード側では、45度間隔で7個設けた。各熱電対は、冷却油がかからないように、コイルエンド21aの内部に設けている。したがって、熱電対の検出温度のほうが、温度センサ34の検出温度よりも、実際のコイル温度に近いと言える。
図11は、リード側における温度測定結果を、図12は、反リード側における温度測定結果を示している。また、図11において、黒四角は、従来技術における温度センサ34の検出温度を、白四角は、本実施形態における温度センサ34の検出温度を示している。また、図11、図12において、破線は、従来技術における熱電対の検出温度を、実線は、本実施形態における熱電対の検出温度を示している。また、図11、図12における径方向の目盛Knは、温度を示しており、隣接する目盛の差分値(Kn+1−Kn)は、nの値に関わらず一定の固定値である。
図11、図12から明らかな通り、従来技術では、温度センサ34の検出温度(黒四角)は、K2程度であるのに対し、熱電対の検出温度(破線)は、コイルエンド21a、21b下側半分、特に、反リード側の下側半分では、高くなっており、K4を超えている。一方、本実施形態では、温度センサ34の検出温度(白四角)は、K3程度となっている。また、熱電対の検出温度(実線)は、温度センサ34が配されているリード側の右半分では高くなっており、K4を超えている。
従来技術と本実施形態とを比較すると、熱電対の検出温度の最高値は、従来技術と本実施形態でほぼ同じであるが、温度センサ34の検出温度は、本実施形態に比べて従来技術では、低くなっている。つまり、実際のコイル温度に近い熱電対の検出温度と、温度センサ34の検出温度との乖離は、従来技術のほうが大きいことが分かる。
ここで、回転電機10の制御部は、回転電機10を熱から保護するため、温度センサ34の検出温度が高くなれば、通電量を減らしたり、冷却油の流量を増やしたりする。温度センサ34の検出温度と実際のコイル温度との乖離が大きくなると、本来で、電流制限や冷却油量の増加が必要であるにも関わらず、それらが行われず、回転電機10が熱から十分に保護されないおそれがある。
本実施形態では、リード側の第1吐出孔48を、温度センサ34に冷却油がかからない位置に配しているため、従来技術に比して、温度センサ34の検出温度と、実際のコイル温度との乖離が小さい。その結果、ステータコイル22の通電量や冷却油の流量を適切に制御できる。一方で、本実施形態では、リード側であって、温度センサ34が配置される側の冷却が不足しがちになる。そこで、本実施形態では、リード側での冷却能力の低下を補うべく、反リード側における第2吐出孔58の数を多くし、第2冷媒吐出機構50から単位時間当たりに吐出される冷却油量を、第1冷媒吐出機構40から単位時間当たりに吐出される冷却油量より多くしている。これにより、反リード側における冷却能力を高めることができ、ステータコイル22の温度増加をより抑制できる。
さらに、本実施形態では、反リード側のうち、左右分割線Lvからみて温度センサ34と同じ領域に配される第2吐出孔58の個数(五個)を、温度センサ34の反対側に配される第2吐出孔58の個数(二個)より多くしている。これにより、リード側における冷却不足を、反リード側で補うことができ、ステータコイル22の温度のバラツキをより低減できる。
また、本実施形態では、コイルエンド21a、21bと軸方向に対向する面に形成された複数の第1、第2吐出孔48,58から冷却油を吐出している。したがって、コイルエンド21a、21bの重力方向上側の吐出孔104,106から冷却油を吐出する従来技術に比べて、広い範囲に冷却油をかけることができ、ステータコイル22をより効果的に冷却できる。特に、温度センサ34が設けられていない反リード側では、本実施形態では、コイルエンド21b全体に冷却油をかけることができるため、従来技術に比べて、コイルエンド21bの温度を全体的に低減できる。
また、これまでの説明で明らかな通り、本実施形態では、第1、第2吐出孔48,58を全て、上下分割線Lhよりも重力方向上側に設けている。かかる構成とすることで、重力を利用して、第1、第2吐出孔48,58より下側にも冷却油をかけることができる。したがって、本実施形態によれば、上下分割線Lhよりも下側にのみ吐出孔を設ける場合に比して、ステータコイル22を効果的に冷却できる。
また、従来技術では、ケース本体24、カバー26の両側にそれぞれ配管100、102を取り付けて冷却油をケーシング18の内部に導入しているので、冷却油の配管構造が複雑になっていた。これに対して、本実施形態の回転電機10は、ケーシング18の内部に配置されたパイプ70で第1冷媒吐出機構40と第2冷媒吐出機構50とを連通し、第2冷媒吐出機構50に流入した冷却油をケーシング18の内部で第1冷媒吐出機構40に供給するように構成し、1か所の冷媒供給管62から冷却油を供給する簡便な構成としている。これにより、冷却油の導入配管を簡素化し、組立や加工を簡素化することができる。
なお、本実施形態の回転電機10では、ケース本体24に冷媒供給孔63を設け、冷媒供給管62をケース本体24に取り付けて冷却油を冷媒供給管62から第2冷媒吐出機構50に供給することとして説明したが、第2冷媒供給流路を構成する冷媒供給管62、冷媒供給孔63が第1冷媒供給流路であるパイプ70と連通する構成であれば、他の構成としてもよい。例えば、カバー26に冷媒供給孔63を設け、冷媒供給管62をカバー26に取りつけて冷却油を冷媒供給管62から第1冷媒吐出機構40に供給し、第1冷媒吐出機構40に流入した冷却油をケーシング18の内部に配置されたパイプ70を通して第2冷媒吐出機構50に供給するように構成してもよい。また、冷媒供給管62、冷媒供給孔63とパイプ70を連通させる内部配管を設け、冷媒供給管62、冷媒供給孔63からパイプ70に冷却油を供給し、パイプ70を通して第1冷媒吐出機構40、第2冷媒吐出機構50に冷却油を供給するようにしてもよい。
次に、図13、図14を参照しながら他の実施形態の回転電機110について説明する。先に図1から図5を参照して説明した実施形態の回転電機10と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
図13、図14に示す実施形態の回転電機110は、図1から図5を参照して説明した回転電機10の第1冷媒吐出機構40に代えて、カバー26のY方向プラス側の内面とコイルエンド21aとの間にリード側冷媒吐出機構80を配置したものである。
図13、図14に示すように、リード側冷媒吐出機構80は弓型で平板状の本体81と、本体81のY方向プラス側の面に取り付けられたリード側吐出プレート86とで構成されている。
図14に示すように、本体81は、Y方向プラス側の面に配置された周方向に延びる弓型の冷却溝82と、本体81から斜め上方向(Z方向プラス側)に向かって延びる突出部85と、突出部85の内部に設けられ、冷却溝82と連通するチャネル83と、本体81の周方向の両端部で半径方向外側に突出するリブ85aとを有している。
リード側吐出プレート86は、冷却溝82より幅広の円弧状のプレートである。このリード側吐出プレート86は、ボルト87により、本体81のY方向プラス側の内面に固着される。このとき、リード側吐出プレート86は、本体81のY方向プラス側の内面に液密に密着するとともに、冷却溝82を完全に覆う。そして、これにより、本体81の冷却溝82とリード側吐出プレート86との間に、冷却油が流れる冷媒路82aが形成される。チャネル83は、突出部85の中に配置され、冷却溝82に連通して冷却溝82から斜め上方向に向かって延びる孔である。図13、図14に示すように、冷媒路82aは、チャネル83と連通している。また、突出部85のY方向プラス側の面には、第1冷媒供給流路であるパイプ70がはまり込む孔84が設けられている。
リード側吐出プレート86は、先に、図1から図5を参照して説明した回転電機10の第1吐出プレート46と同様に、周方向に間隔を開けて並ぶ複数の吐出孔88が形成されている。各吐出孔88は、リード側吐出プレート86を厚み方向に貫通しており、冷媒路82aに流れる冷却油は、この吐出孔88を介して外部に噴出する。したがって、冷却油は、冷媒路82aから吐出孔88を介して軸方向に噴出し、リード側のコイルエンド21aの軸方向端面に当たることになる。リード側吐出プレート86の複数の吐出孔88は、温度センサ34に冷却油がかからないような位置に配されている。
本体81から半径方向外側に突出した2つのリブ85aには、本体81をステータコア20の端面に固定する取り付け部材89が固定されている。このように、リード側冷媒吐出機構80は、ステータコア20によって支持されている。
先に、図1から図5を参照して説明した回転電機10と同様、冷媒供給管62、冷媒供給孔63から第2冷媒吐出機構50の第2冷媒路52に流入した冷却油の一部は、第2冷媒路52から第2チャネル55を通ってパイプ70に流入する。そして、図13に示すように、パイプ70に流入した冷却油は、リード側冷媒吐出機構80のチャネル83から冷媒路82aに流入する。そして、冷媒路82aに流入した冷却油は、リード側冷媒吐出機構80のリード側吐出プレート86に設けられている複数の第1吐出孔88からリード側のコイルエンド21aに向かって吐出される。
本実施形態の回転電機110は、先に図1から図5を参照して説明した回転電機10と同様の効果を奏する。
以上の説明では、パイプ70のリード側端部がはまり込む孔84および冷却溝82と連通するチャネル83が設けられている突出部85は、本体81から斜め上方向(Z方向プラス側)に向かって延びていることとして説明したが、突出部85の配置はこれに限定されない。例えば、突出部85は、周方向に延びる本体81の周方向に向かって突出する位置に配置してもよい。この場合、パイプ70の反リード側端部がはまり込む孔59が設けられる第2チャネル55も周方向に延びる第2冷却溝54の周方向の延長上に配置する。
次に図15から図19を参照しながら、他の実施形態の回転電機120について説明する。先に図1から図5を参照して説明した回転電機10と同様の部分には、同様の符号を付して説明は省略する。
図15から図19に示すように、本実施形態の回転電機120は、先に図1から図5を参照して説明した回転電機10の円弧状の第1冷却溝44を円弧状部分144aとパイプ70のリード側端部が配置される位置に突出した突出部145とを含む第1冷却溝144とし、円弧状の第1吐出プレート46に代わって第1冷却溝144を覆うように円弧部と円弧部から突出した突出部146aとから構成される第1吐出プレート146としたものである。第1冷媒供給流路であるパイプ70は、第1吐出プレート146に設けられた孔149に嵌め込まれている。
また、実施形態の回転電機120は、先に図1から図5を参照して説明した回転電機10の円弧状の第2冷却溝54を円弧状部分154aとパイプ70のリード側端部が配置される位置に突出した突出部155とを含む第2冷却溝154とし、円弧状の第2吐出プレート56に代わって第2冷却溝154を覆うように円弧部と円弧部から突出した突出部156aとから構成される第2吐出プレート156としたものである。パイプ70は、第2吐出プレート156に設けられた孔159に嵌め込まれている。
本実施形態の回転電機120では、図19に示すように、冷却油は、冷媒供給管62、冷媒供給孔63から第2冷媒吐出機構150の第2冷媒路152に流入する。第2冷媒路152に流入した冷却油の一部は、第2冷媒吐出機構150の第2吐出プレート156に設けられている複数の第2吐出孔158から反リード側のコイルエンド21bに向かって吐出される。また、図19に示すように、冷却油の一部は、第2冷媒路152から第2冷却溝154の突出部155を通ってパイプ70に流入する。図18に示すように、パイプ70に流入した冷却油は、第1冷媒吐出機構140の第1冷却溝144の突出部145から第1冷媒路142に流入する。そして、第1冷媒路142に流入した冷却油は、第1冷媒吐出機構140の第1吐出プレート146に設けられている複数の第1吐出孔148からリード側のコイルエンド21aに向かって吐出される。コイルエンド21a、21bに吐出された冷却油は、重力により、下方に落下し、ケーシング18の底部に配置された冷却油溜めに溜まる。冷却油溜めに溜まった冷却油は、自然冷却された後、再び、冷却ポンプ、冷媒供給管62、冷媒供給孔63を介して、第1、第2冷媒吐出機構140,150に供給される。
本実施形態の回転電機120は、先に図1から図5を参照して説明した回転電機10と同様の効果を奏する。
また、本実施形態の回転電機120も先に図1から図5を参照して説明した回転電機10と同様、第1冷却溝144の突出部145、第2冷却溝154の突出部155をそれぞれ、周方向に延びる第1冷却溝144、第2冷却溝154の周方向の延長上に配置するようにしてもよい。
次に、図20を参照しながら他の実施形態の回転電機130について説明する。先に図1から図5を参照して説明した実施形態の回転電機10と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
本実施形態の回転電機130は、図1から図5を参照して説明した回転電機10のパイプ70に代えて、ケース本体24、カバー26の内部に内部流路270、271を配置したものである。内部流路270、271は、第1冷媒供給流路を構成する。図20に示すように、ケース本体24に設けられた内部流路270は、第2冷媒吐出機構50の第2冷媒路52と連通している。また、カバー26に設けられた内部流路271は、第1冷媒吐出機構40の第1冷媒路42と連通している。
本実施形態の回転電機130では、図20に示すように、冷媒供給管62、冷媒供給孔63から第2冷媒吐出機構50の第2冷媒路52に流入した冷却油の一部は、第2冷媒路52からケース本体24に設けられた内部流路270、カバー26に設けられた内部流路271を通って第1冷媒吐出機構40の第1冷媒路42に流入する。そして、第1冷媒路42に流入した冷却油は、第1冷媒吐出機構40の第1吐出プレート46に設けられている複数の第1吐出孔48からリード側のコイルエンド21aに向かって吐出される。
本実施形態の回転電機130は、先に図1から図5を参照して説明した回転電機10と同様の効果を奏する。