本発明によるパンの製造方法は、工程(a)として、小麦粉と、水と、α−アミラーゼ及びヘミセルラーゼのうち少なくとも1つと、を混合した後、1〜100MPaの圧力条件下で圧力処理を行って中間生地を調製する工程を含む。
本明細書において「パン」には、食パン(山型食パン等)、ロールパン(バターロール等)、菓子パン、フランスパン、冷凍生地パン等といった焼成されることにより製造されるものの他、ドーナツ、蒸しパン等も含まれる。本明細書における「パン」は、小麦粉と水とを使用して得られる生地を加熱して得られるものをすべて包含し、特に限定はない。
前述の工程(a)において用いられる小麦粉は、小麦を加工して得られる小麦粉であれば特に制限なく用いることができ、国産小麦由来の小麦粉及び外国産の小麦由来の小麦粉のいずれも用いることができる。より柔らかく老化の遅いパンを得るために、低アミロース小麦品種由来の小麦粉を用いてもよい。ここで、低アミロース小麦品種は、例えば、Wx−B1タンパク質を欠失しており、アミロース含量がやや低い小麦品種・系統であり、ハルユタカ、春のあけぼの、はるひので、春よ恋、はるきらり、キタノカオリ、ゆめちから、きたほなみ、ホクシン等の品種を例示することができる。
前述の工程(a)では、酵素としてα−アミラーゼ及びヘミセルラーゼのうち少なくとも1つが用いられる。酵素の使用については、α−アミラーゼ単独でもよいし、ヘミセルラーゼ単独でもよいし、α−アミラーゼ及びヘミセルラーゼの併用でもよい。
前述の工程(a)で用いられるα−アミラーゼとして、例えば、新日本化学工業社製のスミチームAS、天野エンザイム社製のビオザイムA、ノボザイムズジャパン社製のファンガミル等を用いることができる。α−アミラーゼの添加量としては、対小麦粉当たり50〜5000mU/gが好ましく、100〜4500mU/gがより好ましい。前述のα−アミラーゼの酵素活性ユニットの測定方法として、例えば、α−アミラーゼキット(Ceraipha,Me−gazyme Co.,Ltd.,Wicklow,Ireland)を用いる渡辺らの方法(渡辺ら:日本食品工業学会誌,41,927−932(1994))を挙げることができる。
前述の工程(a)で用いられるヘミセルラーゼとして、例えば、新日本化学工業社製のスミチームX、スミチームNX、スミチームSNX、天野エンザイム社製のヘミセルラーゼ「アマノ」90、ノボザイムズジャパン社製のペントパン等を用いることができる。ヘミセルラーゼの添加量としては、対小麦粉当たり50〜5000mU/gが好ましく、100〜4000mU/gがより好ましい。前述のヘミセルラーゼの酵素活性ユニットの測定方法として、例えば、WAX法を挙げることができ、より具体的には、小麦粉由来のアラビノキシランを基質として、pH4.5のクエン酸バッファー中で、40℃で5分間酵素反応を行い、得られた還元糖を比色法によって定量することにより行われる(この場合、ヘミセルラーゼの酵素活性ユニットは、上記条件で1分間に1μmolのキシロースに相当する還元糖を生成する酵素量が1ユニットと定義される)。
工程(a)においてα−アミラーゼとヘミセルラーゼとを併用する場合、例えば、対小麦粉当たり50〜5000mU/gのα−アミラーゼ及び対小麦粉当たり50〜5000mU/gのヘミセルラーゼが添加される。
前述の工程(a)においては、小麦粉と、水と、α−アミラーゼ及びヘミセルラーゼのうち少なくとも1つと、を混合する。なお、「水と、α−アミラーゼ及びヘミセルラーゼのうち少なくとも1つと、を混合し」たものを、本明細書において「前処理生地」と称する。前処理生地における水の添加量は、前処理生地を均一に調製する観点及び後述する圧力処理の効果を十分に発揮させる観点から、小麦粉ベースで40重量%以上が好ましい。前処理生地の混合の方法としては、例えば、ミキサーボールに前処理生地の原料(水、並びにα−アミラーゼ及びヘミセルラーゼのうち少なくとも1つ)を入れ、公知のピンミキサーを用いて、捏上温度24〜27℃にて、2〜3分間、低速にて混合する方法が挙げられる。後述する圧力処理の効果を十分に発揮させることができるように、前処理生地を均一に混合することが好ましい。
前述の工程(a)において、前述の通り、小麦粉と、水と、α−アミラーゼ及びヘミセルラーゼのうち少なくとも1つと、を混合した後、1〜100MPaの圧力条件下で圧力処理を行って中間生地を調製する。
前述の「圧力処理」とは、前処理生地に対して、1〜100MPaの圧力を加えることをいう。圧力処理の方法としては、例えば、前処理生地をプラスチック製の袋に充填し、密封した後、圧力処理装置(例えば、東洋高圧社製、まるごとエキス500ccタイプ)にセットして圧力を加える方法が挙げられる。圧力処理を施すことで、前処理生地の熟成を促進させることができる。圧力条件については、前処理生地を十分に熟成させる観点及び前処理生地中のタンパク質の変性、澱粉の膨潤、糊化等を抑制する観点から、好ましくは1〜100MPaであり、より好ましくは3〜100MPaである。また、圧力条件は、作られるパンの種類、製パンの方法(後述)等に応じて、1〜70MPaであってもよく、10〜80MPaであってもよく、20〜90MPaであってもよく、30〜100MPaであってもよい。
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明の製造方法により、上述の酵素を添加した前処理生地を圧力処理することで、上述の酵素の活性が亢進され、生地中の損傷澱粉及びペントサンが適度に分解されるため、ガス保持性の高い生地を得ることができると考えられる。したがって、α−アミラーゼ及びヘミセルラーゼを併用することで、生地中の損傷澱粉及びペントサンが効率的に分解されるため、より柔らかく老化の遅いパンを製造することができる。また、本発明の製造方法により、前処理生地を圧力処理することで、生地中のタンパク質、澱粉等が十分に水和され水を吸収している状態にできるため、老化が遅いしっとりとした食感のパンを得ることができると考えられる。
前述の工程(a)において、圧力処理時間は、前処理生地を十分に熟成させる観点及び前処理生地中のタンパク質の変性、澱粉の膨潤、糊化等を抑制する観点から、例えば、好ましくは1分間〜2時間、より好ましくは2分間〜1時間である。また、圧力処理時間は、作られるパンの種類、製パンの方法(後述)等に応じて、1〜40分間であってもよく、1〜30分間であってもよく、1〜20分間であってもよい。このように、本発明のパンの製造方法によれば、短時間で前処理生地を十分に熟成させることができる。
前述の工程(a)において、圧力処理は、前処理生地を十分に熟成させる観点及び前処理生地中のタンパク質の変性、澱粉の膨潤、糊化等を抑制する観点から、例えば、好ましくは10〜50℃の温度条件下で、より好ましくは20〜40℃の温度条件下で行われる。
工程(b)で得られる「最終生地」とは、本明細書において、工程(a)で得られた中間生地を用いて調製することで得られる生地であり、製パン過程において、「最終生地」を最終発酵させ、焼成する、揚げる、蒸す等してパンを完成させることができる。ここで、「中間生地を用いて最終生地を調製する」ことについて説明する。本発明によるパンの製造方法は、直捏法、再捏法、中種法、湯種製パン法(後述)、中種法湯種製パン法(後述)、冷凍生地法等のいずれの方法においても用いることができる。「中間生地を用いて最終生地を調製する」とは、例えば、“再捏法”においては、中間生地をピンミキサーにて捏ね上げることで最終生地とすることをいい、また、例えば、“中種法”においては、中間生地に本捏の材料(小麦粉、砂糖、食塩、ショートニング、水等)を配合しピンミキサーにて捏ね上げることで最終生地とすることをいい、また、例えば、“中種法湯種製パン法”においては、中間生地に湯種生地(後述)及び本捏の材料(上記同様)を配合しピンミキサーにて捏ね上げることで最終生地とすることをいう。
なお、中種法では、中間生地に本捏の材料を配合して最終生地を調製し、また、中種法湯種製パン法(後述)では、湯種生地(後述)及び本捏の材料を配合して最終生地を調製する。これらの場合、圧力処理の効果を十分に発揮させるために、中間生地は、例えば、最終生地中の小麦粉100重量部に対して、中間生地中の小麦粉30重量部以上の量で配合されるのが好ましい。より好ましくは、中間生地は、例えば、最終生地中の小麦粉100重量部に対して、中間生地中の小麦粉50重量部以上の量で配合される。
なお、前述の中間生地;中種法での本捏の材料;湯種製パン法(後述)での湯種生地(後述);並びに中種法湯種製パン法(後述)での湯種生地(後述)及び本捏の材料には、必要に応じて、砂糖、塩、油脂、イースト、脱脂粉乳、ショートニング、L−アスコルビン酸、バター等といった一般に製パンに用いられる種々の原料を配合させることができる。
また、前述の中間生地;中種法での本捏の材料;湯種製パン法(後述)での湯種生地(後述);並びに中種法湯種製パン法(後述)での湯種生地(後述)及び本捏の材料には、パンの風味をより良好にするために、例えば、アルコール発酵風味液を添加してもよい。アルコール発酵風味液の添加量としては、例えば、好ましくは対小麦粉当たり1〜10重量%、より好ましくは対小麦粉当たり2〜8重量%である。アルコール発酵風味液の添加量は、その含有アルコール濃度、含有食塩濃度、製パン方法(直捏法、再捏法、中種法、湯種製パン法(後述)、中種法湯種製パン法(後述)、冷凍生地法等)に鑑みて、適宜変更することができる。アルコール発酵風味液としては、例えば、オリエンタル酵母工業社製のサカリッチ、ニューオリコホップス、パネトーネ、アロマアップ等、MCフードスペシャリティーズ社製のポルテ芳醇酒種、ポルテネオホップス等を用いることができる。
本発明のパンの製造方法を、“湯種製パン法”又は“中種法湯種製パン法”にて用いる場合について説明する。これらの場合、工程(b)において、中間生地に湯種生地を混合して最終生地を調製する。「湯種生地」とは、小麦粉と熱湯を混捏して作成する生地、又は温水に小麦粉を添加し加温しながら混捏する生地をいう。“湯種製パン法”においては、工程(a)で得られた中間生地に、湯種生地(必要に応じて、あら熱を除去したもの又は一晩冷所にて保存したもの)を配合し、ピンミキサーにて捏ね上げて、最終生地を調製する。また、“中種法湯種製パン法” においては、工程(a)で得られた中間生地に、湯種生地(上記同様、あら熱を除去したもの又は一晩冷所にて保存したもの)及び本捏の材料(小麦粉、砂糖、食塩、ショートニング、水等)を配合し、ピンミキサーにて捏ね上げて、最終生地を調製する。本発明のパンの製造方法を、“湯種製パン法”又は“中種法湯種製パン法”にて用いる場合、圧力処理の効果がより顕著に発揮され、より一層柔らかく老化の遅いパンを製造することができる。
また、より柔らかく老化の遅いパンを得るために、最終生地は、低アミロース小麦品種由来の小麦粉を含んでいてもよい。低アミロース小麦品種由来の小麦粉は、前述の通り、中間生地に用いられてもよい。“中種法”を採用した場合には、中間生地の他に、本捏の材料に低アミロース小麦品種由来の小麦粉を用いてもよい。また、“湯種製パン法”を採用した場合には、中間生地の他に、湯種生地に低アミロース小麦品種由来の小麦粉を用いてもよい。また、“中種法湯種製パン法” を採用した場合には、中間生地の他に、湯種生地及び本捏の材料に低アミロース小麦品種由来の小麦粉を用いてもよい。低アミロース小麦品種の詳細については、前述同様である。
また、本発明のパンの製造方法によれば、最終生地を冷凍保存し、解凍後に最終発酵させ、焼成する、揚げる、蒸す等してパンを完成させることも可能である。冷凍保存及び解凍の条件としては、例えば、−30℃、45分間で最終生地を急速冷凍させ、−20℃で1週間以上保存し、30℃、60分間で解凍を行う方法が挙げられる。最終生地を冷凍保存した場合でも、本発明のパンの製造方法によれば、柔らかく老化の遅いパンを製造することができる。
以上説明したように、本発明によるパンの製造方法では、圧力処理を行うことによって、生地の熟成を短時間に飛躍的に進ませることができるため、簡便かつ短時間に柔らかく老化の遅いパンを製造することができる。なお、従来法と異なり、本発明によるパンの製造方法における圧力条件は1〜100MPaと低圧であるため、大がかりな圧力処理装置を用いること無く、また、高圧処理のための専門の技術者を要すること無く、簡便に柔らかく老化の遅いパンを製造することができる。また、従来法では生地を十分に熟成させるために、長時間の発酵時間を必要としていたが、本発明によるパンの製造方法では、圧力処理を短時間施すことで生地を十分に熟成させることができる。また、従来法では生地を十分に熟成させるために、生地に酵素の他さまざまな添加剤を加える場合があったが、本発明によるパンの製造方法では、他の添加剤を加えること無く、前述の酵素を添加するだけで生地を十分に熟成させることができる。また、本発明によるパンの製造方法では、圧力処理されることで十分に熟成された生地を用いるため、柔らかく老化が遅いだけでなく、外観、内相、食感・風味が良好で、大きな比容積を有するパンを製造することができる。
また、中種法は、現在、日本の製パン業界において主流の製パン法となっているが、中種生地の発酵に長時間(例えば4時間)を要し、効率的な製パン方法とはいえなかった。これに対して、本発明によるパンの製造方法を用いた中種法では、短時間の圧力処理で生地を十分に熟成させることができるため、効率的にパンを製造することができる。
また、従来の長時間の発酵による製パン方法では、生地配合、イーストの種類、量、発酵温度、時間等によって、生地の熟成度合いが変化するため、一定品質のパンを安定的に製造するのが困難であった。これに対して、本発明によるパンの製造方法では、圧力処理を施すことで確実に生地を熟成させることができるため、高品質のパンを安定的に製造することができる。
本発明によるパンは、前述の本発明によるパンの製造方法により製造される。本発明による「パン」には、前述の通り、食パン(山型食パン等)、ロールパン(バターロール等)、菓子パン、フランスパン、冷凍生地パン等、焼成されることにより製造されるものの他、ドーナツ、蒸しパン等も含まれる。
本発明によるパンは、圧力処理されることで十分に熟成された生地を用いて製造されるため、柔らかく老化が遅く、また、外観、内相、食感・風味が良好で、大きな比容積を有する。
パンの柔らかさ及び老化の評価方法として、例えば、山型食パンの場合、パンをポリエチレン袋に入れて保存した後、例えば、1日後、2日後の山型食パンをスライスし、パン片のクラムの中央をカットし、そのカットクラムを半分の厚さまで1mm/sのスピードで圧縮した時の最大応力を測定し、その値をパンの硬さの値とする方法が挙げられる(この場合、パンの硬さの値が低いほど、パンが柔らかいことを表す)。
また、パンの外観、内相及び食感・風味の評価は、例えば、複数名のパネラーによって、焼成後(例えば、焼成1日後)のパンを用いて行うことができる。また、パンの比容積の測定は、例えば、焼成後(例えば、保存1時間後)のパンを用いて菜種置換法によって行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
再捏法によって山型食パンを製造するために、以下の製パン実験を行った。
図1に記載の製パン配合にて、各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例1−2、及び比較例1−2について、各々のミキサーボールに、小麦粉(市販外麦強力粉)、砂糖、食塩、ショートニング、イースト、L−アスコルビン酸及び水を入れた。製パン実施例1−2及び比較例1では、さらにα−アミラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームAS、0.03重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性4200mU/gとなる)を配合した。また、製パン実施例2では、さらにアルコール発酵風味液(MCフードスペシャリティーズ社製、ポルテ芳醇酒種、アルコール濃度:13〜14%)を2重量%配合した。なお、図1の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
製パン実施例1−2、及び比較例1−2について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、第1ミキシングを行った。より具体的には、小型ピンミキサーを用いて、捏上温度27℃にて、低速で3分間ミキシングを行い、製パン実施例1−2、及び比較例1−2の第1ミキシング生地を得た。
製パン実施例1−2の第1ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(東洋高圧社製、まるごとエキス 500ccタイプ)内に入れて、10MPaにて、30℃で20分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例1−2の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップ(登録商標)を用いて蓋をした。比較例1の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で20分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例2の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で90分間発酵を行い、発酵生地を得た。
前述の中間生地及び発酵生地に対して、第2ミキシングを行った。より具体的には、製パン実施例1−2の中間生地の全量をミキサーボールに入れ、前述同様の小型ピンミキサーを用いて、捏上温度27℃にて、高速で最適時間ミキシングを行い(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に、電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った)、最終生地を得た。比較例1−2の発酵生地についても同様に第2ミキシングを行い、第2ミキシング生地を得た。
前述の製パン実施例1−2の最終生地、及び比較例1−2の第2ミキシング生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例1−2、及び比較例1−2の山型食パンを得た。
フロアタイム:30℃、15分間
分割、丸め:生地量100gずつ手で分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、15分間
成形:モルダーにて成形し、パン型に入れた。
最終発酵:38℃、湿度85%(比較例2では最終発酵を90分間行った結果、生地の体積はV1となった。製パン実施例1−2及び比較例1では、生地の体積がV1となるまで最終発酵を行った。)
焼成:180℃、25分間
図1に、“製パン結果”として、製パン時生地状態、パンの外観、内相、食感・風味及び比容積を示す。なお、製パン時生地状態、外観、内相及び食感・風味の評価基準は、◎:非常に良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る、である。「製パン時生地状態」とは、最終発酵を行う前の生地状態をいい、適度な弾力性があってべとつかない状態である場合に“◎”と評価され、生地がだれておりべとつく状態である場合に“×”と評価される。「(パンの)外観」とは、パンの形状、焼き色の度合い及び焼き色の均一性で評価され、パンが大きく膨らんでおり良好な形状で、均一かつ良好な焼き色がついた状態である場合に“◎”と評価される。「(パンの)内相」とは、パンの内部の白い部分(クラム)の状態を評価するものであり、クラムが白くかつ均一な細かい気泡からなり、気泡以外のパンの壁の部分(内相のマク)の厚さが薄い状態である場合に“◎”と評価される。評価方法については、5人のパネラーによって、製パン時生地状態、焼成1日後の外観、内相、食感・風味の評価を行った。また、焼成1時間後に菜種置換法によって比容積測定評価を行った。
図1の“製パン結果”より、製パン実施例1−2により得られた山型食パンの製パン結果は、比較例1−2により得られた山型食パンに比して良好であった。より具体的には、製パン実施例1−2の山型食パンについては、比較例1(α−アミラーゼ剤の添加有り、圧力処理無し、発酵時間20分間)及び比較例2(α−アミラーゼ剤の添加無し、圧力処理無し、発酵時間90分間)のそれに比して、製パン時生地状態、パンの外観、内相、食感・風味の評価が顕著に高く、比容積についても明らかに大きな値となった。また、アルコール発酵風味液を添加した製パン実施例2の山型食パンでは、食感・風味が特に優れていた。
また、図1に、保存後のパンの“老化の評価”として、パンをポリエチレン袋に入れて、20℃で保存した後、クラム部分の硬さ(1日後、2日後)を評価した結果を示す。パンの硬さの評価方法について、より具体的には、山型食パンを2cmにスライスし、中央部の合計3枚のパン片のクラムの中央を3cm×3cmにカットし、そのカットクラムを半分の厚さまで1mm/sのスピードで圧縮した時の最大応力を測定し、その平均値をパンの硬さの値とした。なお、パンの硬さの値が低いほど、パンが柔らかいことを表す。
図1の“老化の評価”より、製パン実施例1−2により得られた山型食パンでは、比較例1−2により得られた山型食パンに比して、明らかに保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示された。
図1の“製パン結果”及び“老化の評価”より、製パン実施例1−2により得られた山型食パンでは、比較例1−2により得られた山型食パンに比して、製パン結果に優れ、保存中の老化が遅いことが示された。従来法の再捏法による、比較例2の山型食パンでは、90分間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を施した製パン実施例1−2の山型食パンよりも劣る結果となった。また、アルコール発酵風味液を添加した製パン実施例2の山型食パンでは、特に優れた結果となった。
以上の結果から、本実施例による、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を行って製造した再捏法による山型食パンは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。
(実施例2)
中種法によって山型食パンを製造するために、以下の製パン実験を行った。
図2に記載の製パン配合にて、中種の各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例3−4、及び比較例3−4について、各々のミキサーボールに、小麦粉(市販外麦強力粉)、イースト、L−アスコルビン酸及び水を入れた。製パン実施例3−4及び比較例3では、さらにα−アミラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームAS、0.005重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性700mU/gとなる)を配合した。なお、図2の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
製パン実施例3−4、及び比較例3−4について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、中種ミキシングを行った。より具体的には、小型ピンミキサーを用いて、捏上温度24℃にて、低速で2分間ミキシングを行い、製パン実施例3−4、及び比較例3−4の中種ミキシング生地を得た。
製パン実施例3−4の中種ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(実施例1と同様)内に入れて、50MPaにて、30℃で30分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例3−4の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップを用いて蓋をした。比較例3の中種ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で30分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例4の中種ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で4時間発酵を行い、発酵生地を得た。
前述の中間生地及び発酵生地に、図2の本捏の各原料を配合し、本捏ミキシングを行った。より具体的には、製パン実施例3−4の中間生地の全量、及び図2の本捏の各原料(小麦粉、砂糖、食塩、ショートニング及び水)をミキサーボールに入れ、前述同様の小型ピンミキサーを用いて、捏上温度27℃にて、高速で最適時間ミキシングを行い(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に、電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った)、最終生地を得た。製パン実施例4では、さらにアルコール発酵風味液(実施例1と同様)を2重量%添加した。比較例3−4の発酵生地についても同様に、図2の本捏の各原料を配合して本捏ミキシングを行い、本捏ミキシング生地を得た。
前述の製パン実施例3−4の最終生地、並びに比較例3−4の本捏ミキシング生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例3−4、及び比較例3−4の山型食パンを得た。
フロアタイム:30℃、20分間
分割、丸め:生地量100gずつ手で分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、15分間
成形:モルダーにて成形し、パン型に入れた。
最終発酵:38℃、湿度85%(比較例4では最終発酵を50分間行った結果、生地の体積はV2となった。製パン実施例3−4及び比較例3では、生地の体積がV2となるまで最終発酵を行った。)
焼成:180℃、25分間
図2に、“製パン結果”及び“老化の評価”を示す。なお、製パン結果の評価基準及び評価方法、並びに老化の評価方法については、実施例1と同様である。
図2の“製パン結果”より、製パン実施例3−4により得られた山型食パンの製パン結果は、比較例3により得られた山型食パンに比して良好であり、比較例4の従来法の中種法により得られた山型食パンと同等程度であった。より具体的には、製パン実施例3−4の山型食パンについては、比較例3(α−アミラーゼ剤の添加有り、圧力処理無し、発酵時間30分間)のそれに比して、製パン時生地状態、パンの内相、食感・風味の評価が顕著に高く、比容積についても明らかに大きな値となった。また、アルコール発酵風味液を添加した製パン実施例4の山型食パンでは、食感・風味が特に優れていた。
また、図2の“老化の評価”より、製パン実施例3−4により得られた山型食パンでは、比較例3−4により得られた山型食パンに比して、保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示された。特に、比較例4の山型食パンでは、保存1日後では柔らかさが維持されているものの、保存2日後では老化が進み硬くなっていたのに対し、製パン実施例3−4の山型食パンでは、保存2日後においても比較例3−4の山型食パンよりも柔らかさが維持されていることが示された。
図2の“製パン結果”より、製パン実施例3−4により得られた山型食パンでは、比較例3により得られた山型食パンに比して、製パン結果に優れ、比較例4のそれと同等程度であった。また、図2の “老化の評価”より、製パン実施例3−4により得られた山型食パンでは、比較例3−4により得られた山型食パンに比して、保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示された。従来法の中種法による、比較例4の山型食パンでは、4時間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を施した製パン実施例3−4の山型食パンよりも老化の点で劣る結果となった。また、アルコール発酵風味液を添加した製パン実施例4の山型食パンでは、特に優れた結果となった。
以上の結果から、本実施例による、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を行って製造した中種法による山型食パンは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。
(実施例3)
再捏法によってバターロールを製造するために、以下の製パン実験を行った。
図3に記載の製パン配合にて、各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例5−6、及び比較例5−6について、各々のミキサーボールに、小麦粉(市販外麦強力粉)、砂糖、食塩、バター、イースト、全卵、脱脂粉乳、L−アスコルビン酸及び水を入れた。製パン実施例5−6及び比較例5では、さらにα−アミラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームAS、0.01重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性1400mU/gとなる)を配合した。また、製パン実施例6では、さらにアルコール発酵風味液(実施例1と同様)を2重量%配合した。なお、図3の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
製パン実施例5−6、及び比較例5−6について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、第1ミキシングを行った。より具体的には、小型ピンミキサーを用いて、捏上温度25℃にて、低速で3分間ミキシングを行い、製パン実施例5−6、及び比較例5−6の第1ミキシング生地を得た。
製パン実施例5−6の第1ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(実施例1と同様)内に入れて、20MPaにて、25℃で10分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例5−6の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップを用いて蓋をした。比較例5の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、25℃で10分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例6の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で60分間発酵を行い、発酵生地を得た。
前述の中間生地及び発酵生地に対して、第2ミキシングを行った。より具体的には、製パン実施例5−6の中間生地の全量をミキサーボールに入れ、前述同様の小型ピンミキサーを用いて、捏上温度28℃にて、高速で最適時間ミキシングを行い(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に、電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った)、最終生地を得た。比較例5−6の発酵生地についても同様に第2ミキシングを行い、第2ミキシング生地を得た。
前述の製パン実施例5−6の最終生地、及び比較例5−6の第2ミキシング生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例5−6、及び比較例5−6のバターロールを得た。
フロアタイム:30℃、15分間
分割、丸め:生地量40gずつ手で分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、15分間
成形:バターロール形状に手成形した。
最終発酵:38℃、湿度85%(比較例6では最終発酵を40分間行った結果、生地の体積はV3となった。製パン実施例5−6及び比較例5では、生地の体積がV3となるまで最終発酵を行った。)
焼成:210℃、8分間
図3に、“製パン結果”として、製パン時生地状態、パンの外観、内相、食感・風味及び見た目のボリュームを示す。なお、評価基準は、◎:非常に良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る、である。評価方法については、8人のパネラーによって、製パン時生地状態、並びに焼成後1日後の外観、内相、食感・風味及び見た目のボリュームの評価を行った。
図3の“製パン結果”より、製パン実施例5−6により得られたバターロールの製パン結果は、比較例5−6により得られたバターロールに比して良好であった。より具体的には、製パン実施例5−6のバターロールについては、比較例5(α−アミラーゼ剤の添加有り、圧力処理無し、発酵時間10分間)及び比較例6(α−アミラーゼ剤の添加無し、圧力処理無し、発酵時間60分間)のそれに比して、パンの外観及び見た目のボリュームの評価が顕著に高かった。
また、図3に、保存後のパンの“老化の評価”として、パンをポリエチレン袋に入れて、20℃で2日間保存した後のパンの硬さを評価した結果を示す。バターロールの硬さの評価方法については、直径5mmの円形プランジャーを1mm/sのスピードで3つのバターロールの上部の山の部分に突き刺した時の最大応力を測定し、その平均値をパンの硬さの値とした。なお、パンの硬さの値が低いほど、パンが柔らかいことを表す。
図3の“老化の評価”より、製パン実施例5−6により得られたバターロールでは、比較例5−6により得られたバターロールに比して、明らかに保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示された。
図3の“製パン結果”及び“老化の評価”より、製パン実施例5−6により得られたバターロールでは、比較例5−6により得られたバターロールに比して、製パン結果に優れ、保存中の老化が遅いことが示された。従来法の再捏法による、比較例6のバターロールでは、60分間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を施した製パン実施例5−6のバターロールよりも特に老化の評価において劣る結果となった。
以上の結果から、本実施例による、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を行って製造した再捏法によるバターロールは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。
(実施例4)
中種法湯種製パン法によって山型食パンを製造するために、以下の製パン実験を行った。
図4に記載の製パン配合にて、中種の各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例7−8、及び比較例7−8について、各々のミキサーボールに、小麦粉、L−アスコルビン酸及び水を入れた。配合された小麦粉について、製パン実施例7では、“国産小麦粉ブレンド粉1”として、ゆめちから粉ときたほなみ粉との7:3のブレンド粉を用い、製パン実施例8では、“国産小麦粉ブレンド粉2”として、ゆめちから粉とキタノカオリ粉との7:3のブレンド粉を用い、比較例7−8では、市販外麦強力粉を用いた。製パン実施例7−8及び比較例7では、さらにα−アミラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームAS、0.01重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性1400mU/gとなる)を配合した。また、比較例7−8では、さらに図4に記載された量のイーストを添加し、製パン実施例7−8では、さらにアルコール発酵風味液(実施例1と同様)を2重量%配合した。なお、図4の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
製パン実施例7−8、及び比較例7−8について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、中種ミキシングを行った。より具体的には、小型ピンミキサーを用いて、捏上温度24℃にて、低速で2分間ミキシングを行い、製パン実施例7−8、及び比較例7−8の中種ミキシング生地を得た。
製パン実施例7−8の中種ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(実施例1と同様)内に入れて、100MPaにて、30℃で3分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例7−8の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップを用いて蓋をした。比較例7の中種ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で3分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例4の中種ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で4時間発酵を行い、発酵生地を得た。
また、以下の方法により、湯種生地1〜3を調製した。調製後の湯種生地1〜3を各々冷蔵庫で一晩保存して、製パンに用いた。
・湯種生地1:ゆめちから粉ときたほなみ粉との7:3のブレンド粉100重量部に、温水300重量部を添加し、攪拌機を用いて均一に混合しながら80℃±1℃に昇温した。この状態で水分蒸発が起こらないように容器を十分密閉し、15分保持して、湯種生地1を得た。
・湯種生地2:ゆめちから粉とキタノカオリ粉との7:3のブレンド粉を用いて、湯種生地1と同様に調製し、湯種生地2を得た。
・湯種生地3:市販強力粉100重量部に、98℃の熱水100重量部を、ミキサーで混捏しながら徐々に添加した。その後3分間混捏して、湯種生地3を得た。
以下の通り配合し、本捏ミキシングを行った。
・製パン実施例7:前述の中間生地の全量+湯種生地1+図4記載の本捏の各原料
・製パン実施例8:前述の中間生地の全量+湯種生地2+図4記載の本捏の各原料
・比較例7:前述の発酵生地+湯種生地3+図4記載の本捏の各原料
・比較例8:前述の発酵生地+湯種生地3+図4記載の本捏の各原料
前述同様の小型ピンミキサーを用いて、捏上温度27℃にて、高速で最適時間ミキシングを行い(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に、電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った)、製パン実施例7−8の最終生地を得た。比較例7−8の発酵生地についても同様に本捏ミキシングを行い、本捏ミキシング生地を得た。
前述の製パン実施例7−8の最終生地、及び比較例7−8の本捏ミキシング生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例7−8、及び比較例7−8の山型食パンを得た。
フロアタイム:30℃、15分間
分割、丸め:生地量100gずつ手で分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、20分間
成形:モルダーにて成形し、パン型に入れた。
最終発酵:38℃、湿度85%(比較例8では最終発酵を60分間行った結果、生地の体積はV4となった。製パン実施例7−8及び比較例7では、生地の体積がV4となるまで最終発酵を行った。)
焼成:180℃、25分間
図4に、“製パン結果”及び“老化の評価”を示す。なお、製パン結果の評価基準及び評価方法、並びに老化の評価方法については、実施例1と同様である。
図4の“製パン結果”より、製パン実施例7−8により得られた山型食パンの製パン結果は、比較例7−8により得られた山型食パンに比して良好であった。より具体的には、製パン実施例7−8の山型食パンについては、比較例7(α−アミラーゼ剤の添加有り、圧力処理無し、発酵時間3分間)及び比較例8(α−アミラーゼ剤の添加無し、圧力処理無し、発酵時間4時間)のそれに比して、製パン時生地状態、パンの外観、内相及び食感・風味の評価が顕著に高く、比容積についても明らかに大きな値となった。
また、図4の“老化の評価”より、製パン実施例7−8により得られた山型食パンでは、比較例7−8により得られた山型食パンに比して、保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示され、特に、保存1日後及び保存2日後の両方において比較例7−8に比して柔らかさが維持されていることが示された。
図4の“製パン結果”より、製パン実施例7−8により得られた山型食パンでは、比較例7−8により得られた山型食パンに比して、製パン結果に優れ、保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示された。従来法の中種法湯種製パン法による、比較例8の山型食パンでは、4時間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を施した製パン実施例7−8の山型食パンよりも、製パン結果及び老化の両点で劣る結果となった。また、製パン実施例7−8では、Wx−B1タンパク質を欠失しているアミロース含量がやや低い澱粉を含有する国内小麦品種由来の小麦粉を用いているが、本実施例による中種法湯種製パン法によって、これらの品種の優れた特性が引き出された結果、製パン結果に優れ、柔らかさが維持される山型食パンが得られたことが考えられる。また、長時間の発酵時間をとっている比較例8の山型食パンに比して、3分間という短時間の圧力処理を行った製パン実施例7−8の山型食パンにおいて良好な結果が得られた。
以上の結果から、本実施例による、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を行って製造した中種法湯種製パン法による山型食パンは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。
(実施例5)
再捏法によって国産小麦粉(キタノカオリ小麦粉)を用いてバターロールを製造するために、以下の製パン実験を行った。
図5に記載の製パン配合にて、各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例9−11、及び比較例9−11について、各々のミキサーボールに、小麦粉(キタノカオリ小麦粉)、砂糖、食塩、バター、イースト、全卵、脱脂粉乳、L−アスコルビン酸及び水を入れた。製パン実施例9−11及び比較例9−10では、さらにヘミセルラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームSNX、0.01重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性は1400mU/gになる)を配合し、製パン実施例11及び比較例10では、さらにα−アミラーゼ剤(天野エンザイム社製、ビオザイムA、0.003重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性は1200mU/gになる)を配合した。また、製パン実施例10−11では、さらにアルコール発酵風味液(オリエンタル酵母工業社製、サカリッチ、アルコール濃度:約13%、食塩:約3%)を2重量%配合した。なお、図5の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
製パン実施例9−11及び比較例9−11について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、実施例3と同様に第1ミキシングを行い、製パン実施例9−11及び比較例9−11の第1ミキシング生地を得た。
製パン実施例9−11の第1ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(実施例1と同様)内に入れて、5MPaにて、30℃で15分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例9−11の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップを用いて蓋をした。比較例9−10の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で15分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例11の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で80分間発酵を行い、発酵生地を得た。
前述の中間生地及び発酵生地に対して、実施例3と同様に第2ミキシングを行い、製パン実施例9−11の最終生地及び比較例9−10の第2ミキシング生地を得た。
前述の製パン実施例9−11の最終生地、及び比較例9−11の第2ミキシング生地について、実施例3と同様の条件で発酵(ただし、比較例11では最終発酵を40分間行った結果、生地の体積はV5となった。製パン実施例9−11及び比較例9−10では、生地の体積がV5となるまで最終発酵を行った。)、焼成して、製パン実施例9−11、及び比較例9−11のバターロールを得た。
図5に、“製パン結果”及び“老化の評価”を示す。製パン結果の評価基準及び評価方法並びに老化の評価方法については、実施例3と同様である。
図5の“製パン結果”より、製パン実施例9−11により得られたバターロールの製パン結果は、比較例9−11により得られたバターロールに比して良好であった。また、図5の“老化の評価”より、製パン実施例9−11により得られたバターロールは、比較例9−11により得られたバターロールに比して保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示された。特に、ヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤の両方を配合した製パン実施例11では、製パン結果において顕著に優れていただけでなく、保存2日後の柔らかさの維持の点でも優れていた。
図5の“製パン結果”及び“老化の評価”より、製パン実施例9−11により得られたバターロールでは、比較例9−11により得られたバターロールに比して、製パン結果に優れ、保存中の老化が遅いことが示された。従来法の再捏法による、比較例11のバターロールでは80分間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、ヘミセルラーゼ剤(又はヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤の両方)を添加し、圧力処理を施した製パン実施例9−11のバターロールよりも劣る結果となった。
以上の結果から、本実施例による、ヘミセルラーゼ剤(又はヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤の両方)を添加し、圧力処理を行って製造した再捏法によるバターロールは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。
(実施例6)
中種法湯種製パン法によって山型食パンを製造するために、以下の製パン実験を行った。
図6に記載の製パン配合にて、中種の各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例12−14、及び比較例12−14について、各々のミキサーボールに、小麦粉、L−アスコルビン酸及び水を入れた。配合された小麦粉について、製パン実施例12では、“国産小麦粉ブレンド粉1”として、ゆめちから粉ときたほなみ粉との6:4のブレンド粉を用い、製パン実施例13−14では、“国産小麦粉ブレンド粉2”として、ゆめちから粉とキタノカオリ粉との6:4のブレンド粉を用い、比較例12−14では、市販外麦強力粉を用いた。製パン実施例12−14及び比較例12−13では、さらにヘミセルラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームSNX、0.01重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性は4200mU/gになる)を配合し、製パン実施例14及び比較例13では、さらにα−アミラーゼ剤(天野エンザイム社製、ビオザイムA、0.001重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性は400mU/gになる)を配合した。また、比較例12−14では、さらに図6に記載された量のイーストを添加し、製パン実施例13−14では、さらにアルコール発酵風味液(実施例5と同様)を2重量%配合した。なお、図6の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
製パン実施例12−14及び比較例12−14について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、実施例4と同様に中種ミキシングを行い、製パン実施例12−14及び比較例12−14の中種ミキシング生地を得た。
製パン実施例12−14の中種ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(実施例1と同様)内に入れて、80MPaにて、30℃で5分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例12−14の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップを用いて蓋をした。比較例12−13の中種ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で5分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例14の中種ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で4時間発酵を行い、発酵生地を得た。
また、小麦粉のブレンドが異なる以外は実施例4と同様の方法により、湯種生地1〜3を調製した。小麦粉のブレンドについて、具体的には、湯種生地1について、ゆめちから粉ときたほなみ粉との6:4のブレンド粉を用い、湯種生地2について、ゆめちから粉とキタノカオリ粉との6:4のブレンド粉を用いた。湯種生地3については市販外麦強力粉を用いた。
以下の通り配合し、本捏ミキシングを行った。
・製パン実施例12:前述の中間生地の全量+湯種生地1+図6記載の本捏の各原料
・製パン実施例13:前述の中間生地の全量+湯種生地2+図6記載の本捏の各原料
・製パン実施例14:前述の中間生地の全量+湯種生地2+図6記載の本捏の各原料
・比較例12:前述の発酵生地+湯種生地3+図6記載の本捏の各原料
・比較例13:前述の発酵生地+湯種生地3+図6記載の本捏の各原料
・比較例14:前述の発酵生地+湯種生地3+図6記載の本捏の各原料
実施例4と同様に本捏ミキシングを行い、製パン実施例12−14の最終生地及び比較例12−14の本捏ミキシング生地を得た。
前述の製パン実施例12−14の最終生地、及び比較例12−14の本捏ミキシング生地について、実施例4と同様の条件で発酵(ただし、比較例14では最終発酵を60分間行った結果、生地の体積はV6となった。製パン実施例12−14及び比較例12−13では、生地の体積がV6となるまで最終発酵を行った。)、焼成して、製パン実施例12−14及び比較例12−14の山型食パンを得た。
図6に、“製パン結果”及び“老化の評価”を示す。なお、製パン結果の評価基準及び評価方法、並びに老化の評価方法については、実施例1と同様である。
図6の“製パン結果”より、製パン実施例12−14により得られた山型食パンの製パン結果は、比較例12−14により得られた山型食パンに比して良好であった。また、図6の“老化の評価”より、製パン実施例12−14により得られた山型食パンは、比較例12−14により得られた山型食パンに比して保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示された。特に、ヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤の両方を配合した製パン実施例14では、製パン結果において顕著に優れていただけでなく、保存後の柔らかさの維持の点でも優れていた。
図6の“製パン結果”及び“老化の評価”より、製パン実施例12−14により得られた山型食パンでは、比較例12−14により得られた山型食パンに比して、製パン結果に優れ、保存中の老化が遅いことが示された。従来法による、比較例14の山型食パンでは4時間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、ヘミセルラーゼ剤(又はヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤の両方)を添加し、圧力処理を施した製パン実施例12−14の山型食パンよりも劣る結果となった。また、製パン実施例12−14では、Wx−B1タンパク質を欠失しているアミロース含量がやや低い澱粉を含有する国内小麦品種由来の小麦粉を用いているが、本実施例による中種法湯種製パン法によって、これらの品種の優れた特性が引き出された結果、製パン結果に優れ、柔らかさが維持される山型食パンが得られたことが考えられる。また、長時間の発酵時間をとっている比較例14の山型食パンに比して、5分間という短時間の圧力処理を行った製パン実施例12−14の山型食パンにおいて良好な結果が得られた。
以上の結果から、本実施例による、ヘミセルラーゼ剤(又はヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤の両方)を添加し、圧力処理を行って製造した再捏法による山型食パンは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。
(実施例7)
冷凍生地再捏法によって山型食パンを製造するために、以下の製パン実験を行った。
図7に記載の製パン配合にて、各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例15−16、及び比較例15−16について、各々のミキサーボールに、小麦粉、砂糖、食塩、ショートニング、冷凍耐性イースト(日本甜菜製糖社製、FRイースト)、L−アスコルビン酸及び水を入れた。配合された小麦粉について、製パン実施例15−16では、北海道産超強力小麦「ゆめちから」をパン用に製粉した小麦及び北海道産強力小麦「キタノカオリ」をパン用に製粉した小麦を用い、比較例15−16では、市販外麦強力粉を用いた。製パン実施例15−16及び比較例15では、さらにヘミセルラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームSNX、0.001重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性140mU/gとなる)及びα−アミラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームAS、0.001重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性140mU/gとなる)を配合した。また、製パン実施例16では、さらにアルコール発酵風味液(実施例1と同様)を3重量%配合した。なお、図7の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
製パン実施例15−16、及び比較例15−16について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、第1ミキシングを行った。より具体的には、小型ピンミキサーを用いて、捏上温度27℃にて、低速で4分間ミキシングを行い、製パン実施例15−16、及び比較例15−16の第1ミキシング生地を得た。
製パン実施例15−16の第1ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(実施例1と同様)内に入れて、75MPaにて、30℃で5分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例15−16の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップを用いて蓋をした。比較例15の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で5分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例16の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で60分間発酵を行い、発酵生地を得た。
前述の中間生地及び発酵生地に対して、第2ミキシングを行った。より具体的には、製パン実施例15−16の中間生地の全量をミキサーボールに入れ、前述同様の小型ピンミキサーを用いて、捏上温度27℃にて、高速で最適時間ミキシングを行い(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に、電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った)、最終生地を得た。比較例15−16の発酵生地についても同様に第2ミキシングを行い、第2ミキシング生地を得た。
前述の最終生地及び第2ミキシング生地について、以下の条件で常法により分割及び成形した。
分割、丸め:生地量100gづつ手分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、20分間
成形:モルダーにて成形
前述の通り成形した各生地ついて、冷凍処理をしない生地と、冷凍処理をする生地と、に分けた。冷凍処理をする生地については、さらに、冷凍保存1週間の生地と、冷凍保存2週間の生地と、に分け、以下の条件で常法により急速冷凍、冷凍保存及び解凍を行った。
急速冷凍:−30℃、45分
冷凍保存:−20℃、1週間又は2週間
解凍:30℃、60分間
前述の通り得られた各生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例15−16、及び比較例15−16の山型食パンを得た。
最終発酵:38℃、湿度85%、60分間
焼成:180℃、25分間
図7に、“製パン結果”として、冷凍処理をしない生地(図7において、“冷凍無”)と、冷凍保存1週間の生地(図7において、“1週間後”)と、冷凍保存2週間の生地(図7において、“2週間後”)と、におけるパンの外観、内相、食感・風味及び比容積を示す。なお、製パン結果の評価基準については、実施例1と同様である。評価方法については、6人のパネラーによって、焼成1日後の外観、内相、食感・風味の評価を行った。また、焼成1時間後に菜種置換法によって比容積測定評価を行った。
図7の“製パン結果”より、製パン実施例15−16により得られた山型食パンの製パン結果は、比較例15−16により得られた山型食パンに比して良好であった。より具体的には、製パン実施例15−16の山型食パンについては、冷凍保存1週間後及び2週間後のいずれにおいても、比較例15(酵素の添加有り、圧力処理無し、発酵時間5分間)及び比較例15(酵素の添加無し、圧力処理無し、発酵時間60分間)のそれに比して、パンの外観、内相、食感・風味の評価が顕著に高く、比容積についても明らかに大きな値となった。また、製パン実施例15−16の山型食パンにおいては、比較例15−16に比して、冷凍処理無しの生地と、冷凍保存1週間後及び2週間後の生地と、の間の製パン結果の差が小さく、製パン実施例15−16では、冷凍による生地の劣化が低減されたことが示された。
図7の“製パン結果”より、製パン実施例15−16により得られた山型食パンでは、比較例15−16により得られた山型食パンに比して、製パン結果に優れることが示された。従来法による、比較例16の山型食パンでは、60分間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、ヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を施した製パン実施例15−16の山型食パンよりも劣る結果となった。
以上の結果から、本実施例による、ヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を行って製造した冷凍生地再捏法による山型食パンは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。このように、本実施例により得られた最終生地は冷凍保存が可能であり、解凍後焼成させても、柔らかく老化が遅いパンを製造することができる。
(実施例8)
冷凍生地再捏法によってバターロールを製造するために、以下の製パン実験を行った。
図8に記載の製パン配合にて、各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例17−18、及び比較例17−18について、各々のミキサーボールに、小麦粉、砂糖、食塩、バター、冷凍耐性イースト(実施例7と同様)、全卵、脱脂粉乳、L−アスコルビン酸及び水を入れた。配合された小麦粉について、製パン実施例17−18では、北海道産超強力小麦「ゆめちから」をパン用に製粉した小麦及び北海道産中力小麦「きたほなみ」をパン用に製粉した小麦を用い、比較例17−18では、市販外麦準強力粉を用いた。製パン実施例17−18及び比較例17では、さらにヘミセルラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームSNX、0.02重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性2800mU/gとなる)及びα−アミラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームAS、0.01重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性1400mU/gとなる)を配合した。また、製パン実施例18では、さらにアルコール発酵風味液(実施例1と同様)を3重量%配合した。なお、図8の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
製パン実施例17−18、及び比較例17−18について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、第1ミキシングを行った。より具体的には、小型ピンミキサーを用いて、捏上温度25℃にて、低速で5分間ミキシングを行い、製パン実施例17−18、及び比較例17−18の第1ミキシング生地を得た。
製パン実施例17−18の第1ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(実施例1と同様)内に入れて、35MPaにて、25℃で20分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例17−18の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップを用いて蓋をした。比較例17の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、25℃で20分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例18の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、25℃で60分間発酵を行い、発酵生地を得た。
前述の中間生地及び発酵生地に対して、第2ミキシングを行った。より具体的には、製パン実施例17−18の中間生地の全量をミキサーボールに入れ、前述同様の小型ピンミキサーを用いて、捏上温度28℃にて、高速で最適時間ミキシングを行い(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に、電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った)、最終生地を得た。比較例17−18の発酵生地についても同様に第2ミキシングを行い、第2ミキシング生地を得た。
前述の最終生地及び第2ミキシング生地について、以下の条件で常法により分割及び成形した。
分割、丸め:生地量40gづつ手分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、15分間
成形:バターロール形状に手成形した。
前述の通り成形した各生地ついて、冷凍処理をしない生地と、冷凍処理をする生地と、に分けた。冷凍処理をする生地については、さらに、冷凍保存1週間の生地と、冷凍保存2週間の生地と、に分け、以下の条件で常法により急速冷凍、冷凍保存及び解凍を行った。
急速冷凍:−30℃、30分
冷凍保存:−20℃、1週間又は2週間
解凍:30℃、60分
前述の通り得られた各生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例17−18、及び比較例17−18のバターロールを得た。
最終発酵:38℃、湿度85%、50分間
焼成:210℃、7分間
図8に、“製パン結果”として、冷凍処理をしない生地(図8において、“冷凍無”)と、冷凍保存1週間の生地(図8において、“1週間後”)と、冷凍保存2週間の生地(図8において、“2週間後”)と、におけるパンの外観、内相、食感・風味及び見た目のボリュームを示す。なお、製パン結果の評価基準については、実施例1と同様である。評価方法については、7人のパネラーによって、焼成1日後の外観、内相、食感・風味及び見た目のボリュームの評価を行った。
図8の“製パン結果”より、製パン実施例17−18により得られたバターロールの製パン結果は、比較例17−18により得られたバターロールに比して良好であった。より具体的には、製パン実施例17−18のバターロールについては、冷凍保存1週間後及び2週間後のいずれにおいても、比較例17(酵素の添加有り、圧力処理無し、発酵時間20分間)及び比較例18(酵素の添加無し、圧力処理無し、発酵時間60分間)のそれに比して、パンの外観、内相、食感・風味及び見た目のボリュームの評価が顕著に高かった。また、製パン実施例17−18のバターロールについて、冷凍保存1週間後及び2週間後のいずれにおいても、冷凍処理無しの生地と同等程度又はそれに近い製パン結果が得られた。
図8の“製パン結果”より、製パン実施例17−18により得られたバターロールでは、比較例17−18により得られたバターロールに比して、製パン結果に優れることが示された。従来法による、比較例18のバターロールでは、60分間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、ヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を施した製パン実施例17−18のバターロールよりも劣る結果となった。
以上の結果から、本実施例による、ヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を行って製造した冷凍生地再捏法によるバターロールは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。このように、本実施例により得られた最終生地は冷凍保存が可能であり、解凍後焼成させても、柔らかく老化が遅いパンを製造することができる。