以下、図面を参照して、本発明の実施形態のリアクトルについて説明する。
[1.第1の実施形態]
[1−1.概略構成]
図1は、本実施形態に係るリアクトルの全体構成を示す斜視図であり、図2は、その分解斜視図である。
リアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品であり、電圧の昇降圧等に使用される。本実施形態のリアクトルは、例えばハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等で使用される大容量のリアクトルである。リアクトルは、これら自動車に搭載される昇圧回路の主要部品である。
リアクトルは、リアクトル本体1と、リアクトル本体1を収容するケース4と、を備える。リアクトル本体1は、環状コア10、コイル5、樹脂部材2を備える。環状コア10は、磁性体を含み構成される。この環状コア10の一部の外周には、コイル5が装着される。環状コア10とコイル5とは、樹脂部材2により絶縁される。換言すると、環状コア10と、コイル5の間には、樹脂部材2が介在する。一方、ケース4は、内側にリアクトル本体1を収容する。つまり、ケース4は、リアクトル本体1より若干大きく、隙間を空けてリアクトル本体1が収容される。そして、この隙間に充填材が固化してなる充填樹脂部6が設けられている。
また、このリアクトル本体1には、その内部温度を検出する温度センサ9が設けられている。温度センサ9は、コイル5として設けられた一対のコイル51a、51bの間に設置される。設置方法としては、樹脂部材2の一部として延設された保持部23により保持される。保持部23は、温度センサ9の先端を挿入する挿入部24と、温度センサ9から延びるリード線92を配する溝25と、を備える。
温度センサ9は、温度検出部91と、リード線92と、コネクタ93とを含む。温度検出部91には、コネクタ93を介して検出した情報をリアクトル外部に伝送するための伝送用のリード線92が接続される。リード線92は、温度検出部91と、他の部材を電気的に繋ぐ配線である。リード線92は、金属線とそれを被覆する被覆部とからなる。金属線の材質としては、銅、ニッケル、ニッケルメッキ、アルミ、銀、金、銀メッキ、金メッキなどである。金属線は、1本のみの単線、または複数本をより合わせたより線を使用する。被覆部は、ビニール、シリコンゴム、フッ素ゴムなどの絶縁性部材で金属線を被覆する。
リード線92は、温度検出部91が検出した温度情報をリアクトル外部に伝達する。リード線92は、2本のリード線が隣り合って並列に延びる。2本のリード線は、接着材などにより、接着されても良い。また、リード線92は、他のリード線と接続する際に使用する接続用のコネクタ93と接続される。リード線92のコネクタ93側には、2本のリード線の外周を保護する被覆を設けても良い。
コネクタ93は樹脂製の部材からなり、対になる他のコネクタ(図示せず)と接続する。他のコネクタは、例えば、リアクトルの外部に設置された装置に接続するリード線と接続する。コネクタ93が、対になる他のコネクタと接続することで、温度検出部91と、リアクトルの外部に設置された装置とが電気的に繋がれる。
樹脂部材2は、樹脂体21、22を有する。樹脂体21、22は、樹脂により一体成形された部材である。すなわち、樹脂体21を構成する直線部21a、21b、連結部21c、接続部21d及び固定部38は継ぎ目なく一続きに構成されている。樹脂体22を構成する連結部22a、保持部23、及び固定部38も同様に、継ぎ目なく一続きに構成されている。
図3は、コネクタ93を固定した状態の樹脂体21を示す図であり、(a)が斜視図、(b)が側面図、(c)が正面図である。図3(a)〜(c)に示す様に、樹脂体21には、コネクタ93が接続され固定される。コネクタ93の固定は、後述するコネクタ93の接続部93aと、樹脂体の接続部21dとが嵌合及び係止することで行われる。つまり、接続部21dと接続部93aとは、互いに嵌合する形状であると共に、互いを係止する形状である。
また、図2に示す様に、樹脂部材2は、リアクトル本体1をケース4に固定するための固定部38を有している。固定部38には、ネジ挿入穴が設けられ、この穴に金属製の円筒形状のカラー39が埋め込まれている。ネジ挿入穴にネジ40が挿入され、ネジ締結されることで、リアクトル本体1がケース4に固定される。
固定部38の数は特に限定されないが、ここでは、固定部38は、3つであり、直角三角形の各頂点に位置するように、樹脂体21の連結部21cの側部に1つ設けられ、樹脂体22の連結部22aの側部に2つ設けられている。
[1−2.詳細構成]
本実施形態のリアクトルの各部の詳細構成について、図1〜図6を用いて説明する。なお、本明細書において、各部材の構成を説明するのに、図1に示すz軸方向を「上」側、その逆方向を「下」側と称する。また、「下」を「底」とも称する。z軸方向は、リアクトルの上下方向であり、リアクトルの高さ方向である。同様に、y軸方向を「右」側、その逆方向を「左」側と称する。y軸方向は、リアクトルの左右方向であり、リアクトルの横幅方向である。
(樹脂部材)
樹脂部材2は、環状コア10の外周を樹脂により被覆している部材である。従って、樹脂部材2は、環状コア10の形状に倣って環状に形成されている。すなわち、一対の直線部分とこれら直線部分を繋ぐ連結部分とを有している。
樹脂部材2を構成する樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等が挙げられる。
本実施形態では、樹脂部材2は、二分割されて構成されており、樹脂体21と樹脂体22とを有する。すなわち、樹脂部材2は、略U字形状の樹脂体21と、略C字形状の樹脂体22とを別々に成形しておき、互いの端部を向かい合わせることで構成される。樹脂体21と樹脂体22とを別々に成形するのは、互いの端部を向かい合わせる前に環状コア10の脚部を構成するI字型コア13を樹脂体21内部に収容するため、及び、コイル5を直線部分にはめ込んで樹脂部材2にコイル5を装着するためである。
(樹脂体21)
樹脂体21は、一対の直線部21a、21bと、これら直線部21a、21bを繋ぐC字形状の連結部21cと、を有する。また、連結部21cには、リード線92と接続する接続用のコネクタ93と掛合する接続部21dが設けられる。接続部21dは、樹脂体21の側壁面に設けても良い。ここで、側壁面とは、環状コア10の中心軸に平行な面を有する樹脂体21の壁面である。連結部21cにおいて接続部21dが設けられる壁面はその1つである。樹脂体21において、直線部21a、21bはコイル5が装着される部分である。直線部21a、21bは、ボビンとも称される。連結部21cの内部には、U字型コア12がモールド成形法によって埋め込まれている。換言すれば、連結部21cは、U字型コア12の被覆部であり、連結部21cに覆われたU字型コア12の外周部分が、連結部21cの内周と密着している。但し、U字型コア12の脚部の端面は露出している。
直線部21a、21bの内部には、環状コア10の直線方向に沿って、I字型コア13、スペーサ14が交互に積層して配置されている。直線部21a、21bの先端には開口部がそれぞれ設けられており、直線部21a、21bの開口部からI字型コア13、スペーサ14が挿入される。
(接続部21dの形状)
図4は、接続部21dの構成を示す斜視図である。図5(a)(b)は、接続部21dの構成を示す側面図であり、図5(a)は、平面図であり、図5(b)は、側面図である。
図4に示す様に、接続部21dは、支持部26、係止部27、補強部28、スライド部29を有する。
支持部26は長尺板状であり、寸法Lの長辺を有する。支持部26の長辺は、リアクトルを図1の角度で配置した場合には、x方向に延びる。支持部26は、寸法Wの短辺を有する。短辺は、リアクトルを図1の角度で配置した場合には、z軸方向に延びる。寸法Lと寸法Wとでは、寸法Lの方が長い。また、寸法Lの長辺と寸法Wの短辺とで、支持部26に略長方形の面(長尺面と呼ぶ)を形成する。この長尺面の一方を支持部26の表面、他方を裏面と呼ぶ。裏面は、樹脂体21の支持部以外の他の構造物である連結部21cと対向する。
支持部26は、長尺状の部材であると共に、樹脂体21と同一の樹脂部材である。そのため、板バネの如く、支持部26の厚み方向へ撓む。すなわち、弾性変形する。そのため、支持部26は一定以上の応力により変形するが、その応力が除去されると元の形状に復元する。支持部26は、長尺面に対し垂直方向(y軸方向)へ、弾性変形する。支持部26は、長尺面の表側(図中上側)と、長尺面の裏側(図中下側)の両方へ弾性変形する。長尺面の裏側の下方には、支持部26以外の樹脂体21の他の構造物である連結部21cが存在する。支持部26と、連結部21cとの間は、寸法h1以上離れている。この寸法h1は、後述するコネクタ93側の係止部33により支持部26が弾性変形する場合の支持部26の後退量である。
係止部27は、支持部26の長辺の先端部に設けられる。係止部27は、x方向に寸法L2の長さを有し、z軸方向に寸法Wの幅を有する。即ち、係止部27と支持部26は、z軸方向に同じ寸法Wで延びる。この係止部27は、支持部26の長尺面の表面側に突出する。係止部27を側面(z軸方向)から平面視した場合、壁面30と、平坦面31、及び傾斜面32の3面から構成される。壁面30は、長尺面の表側から垂直に所定の高さh2で立設する。平坦面31は、壁面30と隣り合い、壁面30と平坦面31とが成す角は90度である。傾斜面32は、平坦面31と隣り合い、傾斜面32と平坦面31がなす角αは90<α<180である。この傾斜面32と長尺面の表面とがなす角βは0<β<90である。
補強部28は、板状の部材であり、所定の厚さを有する。この厚さは、樹脂の種類や要求される強度によって変更することが可能である。補強部28は、支持部26と係止部27とを繋ぐ。繋ぎ方は、一体成型などにより支持部26や係止部27と補強部28を連設しても良いし、支持部26や係止部27と別体の補強部28を設けておき、それらを互いに接着しても良い。補強部28は、支持部26の側面と、係止部27の側面とを繋ぐ。図5(a)では、補強部28は、支持部26や係止部27の幅方向の両端に、それぞれ1ずつ計2つの補強部28を設ける。図5(a)の支持部26と係止部27とは、z軸方向において同じ寸法Wであり、一方の側面同士の位置を合わせると、他方の側面同士の位置も同じになる。また、支持部26と係止部27共に、z軸方向における側面から、y軸方向に垂直に側壁面が延びている。この支持部26の側壁面と係止部27の側壁面とは、同一平面であり、段差なく一続きである。補強部28は、この面一の支持部26の側壁面と係止部27の側壁面とに連なるように配置される。
また、図5(b)に示すとおり、補強部28は、支持部26の長辺の先端部から寸法L2までは、支持部26の側壁面と係止部27の側壁面と連なって配置される。この部分では、側面(z軸方向)から平面視した場合、補強部28は、支持部26の側壁面と係止部27の側壁面とを合わせた形状をしている。即ち、支持部26及び係止部27は補強部28の影になる。また、補強部28は、支持部26の長辺の先端部から寸法L2から寸法L2+寸法L3までは、支持部26の側壁面と接する。補強部28が支持部26の側壁面のみと接する部分では、壁面30から支持部26の長手方向へ離れるに従って、補強部28の高さが高さh2から徐々に低くなる。
スライド部29は、リアクトルの連結部21cに設けられる。後述するコネクタ93にもスライド部29と対応するスライド部34が設けられる。スライド部29は、スライド部34に対して擦り動く。つまり、スライド部29はスライド部34に対して擦動可能な形状である。また、スライド部29とスライド部34は、コネクタ93をリアクトルに取り付ける際のコネクタ93の動きを規制する。図4において、スライド部29となる突起は、リアクトルの表面と平行して延びる。すなわち、リアクトルを図1の角度で配置した場合に、x方向に延びる。そのため、スライド部29とスライド部34とが嵌り合った場合には、コネクタ93はリアクトルの表面と平行に、すなわち、x方向にはスライド可能となる。
また、スライド部29がスライド部34に対して、スムースに擦動を可能とするために、2つのスライド部に所定のクリアランス、所謂遊びを設けても良い。例えば、スライド部29は突起であり、スライド部34は溝である。この場合、クリアランスを設ける場合には、突起の外形に対して、溝の内形を若干大きくする。さらに、このスライド部29とスライド部34の組み合わせは、突起と溝に限らない。例えば、溝と溝との組み合わせでも良い。
(コネクタ)
図6(a)は、コネクタ93の構成を示す斜視図である。図6(a)では、リアクトルに接続する場合に、リアクトルと対向もしくは接触するコネクタ93の面を上にした。一方、図6(b)は、コネクタ93と係止部33とに着目した側面図である。図6(b)では、コネクタ93と係止部33のみを図示している。図6(a)(b)において、コネクタ93を接続したリアクトルを図1の向きで配置した場合、x軸方向をコネクタ93の長さ方向とし、y軸方向をコネクタ93の高さ方向とし、z軸方向をコネクタの幅方向とする。また、図6(b)において、コネクタ93をリアクトルに接続する際にスライドさせる方向を方向aとし、その逆方向を方向bとする。
図6(a)に示す様に、コネクタ93は、6つの面を有する略直方体の形状である。コネクタ93は、A,B,C面を有している。コネクタのA面には、リード線92を接続する接続部37が設けられる。接続部37とリード線92は、直に接続しても良いし、リード線92に取り付けた接続用端子を介して接続しても良い。コネクタのB面には、コネクタと対になるコネクタの挿入口が設けられる。コネクタ93は、対になるコネクタ93−1(図示せず)と接続する。例えば、コネクタ93がオスである場合には、コネクタ93−1はメスである。コネクタ93とコネクタ93−1とは接続することにより、それぞれのコネクタに接続するリード線同士を電気的に接続する。その為、コネクタ93の形状は、コネクタ93−1に対応する形状である。従って、コネクタ93の挿入口の形状も、コネクタ93−1の外形に合わせた形状となる。
コネクタ93のC面には、接続部93aが設けられる。接続部93aは、係止部33とスライド部34とからなる。コネクタ93をリアクトルに接続する場合には、スライド部34がリアクトル側のスライド部29と嵌り合うと共に、係止部33とリアクトル側の係止部27とが互いに当接し互いを係止する。この際、コネクタ93の6面のうち、リアクトルに対して対向若しくは接触する面が、C面である。係止部33の形状は、リアクトル側の係止部27と対応する形状である。また、係止部33が配置される位置は、コネクタ93とリアクトルとを接続した場合に、互いの係止部が当接する位置とする。コネクタ93をリアクトルと接続する場合には、コネクタ93を方向aにスライドさせる。その場合に、係止部33は、リアクトル側の支持部26を弾性変形させると共に、復元した支持部26の先端の係止部27と当接し、互いを係止する。図6(b)に示すように係止部33は、側面(z軸方向)から平面視した場合、略三直角形の形状である。係止部33は、側面(z軸方向)から平面視した場合、壁面35、及び傾斜面36の2面から構成される。傾斜面36が、コネクタの支持部26を弾性変形させ、壁面35はリアクトル側の係止部27の壁面30と当接する。壁面30は、コネクタのC面から垂直に立設する。壁面35の高さは高さh2である。壁面35の高さは、リアクトル側の壁面30が支持部26から立設する高さと同じ高さである。傾斜面36は、壁面35とコネクタのC面と隣り合う。傾斜面36とコネクタのC面とが成す角γは、0<γ<90である。つまり、傾斜面36とコネクタ93のC面とが成す角γは、係止部27の傾斜面32と長尺面とがなす角βと同じ角度となる。これにより、コネクタ93を接続する際に、a方向にスライドさせた場合に、傾斜面36全体が傾斜面32と接触する。
スライド部34は、コネクタ93に設けられる。スライド部34は、スライド部29に対して擦動可能な形状である。スライド部34は、コネクタの長さ方向(x軸方向に延びる)。本実施形態では、スライド部34は、溝である。コネクタ93は、スライド部34とスライド部29とが嵌り合うことにより、その動きが規制される。つまり、2つのスライド部は、コネクタをスライドさせる際のガイドとなる。2つのスライド部29とスライド部34とが嵌り合った場合には、コネクタ93はリアクトルの表面と平行に、すなわち、x方向にはスライド可能となる。また、スライド部29とスライド部34とは、係止部27と係止部33の係止を補助する。すなわち、スライド部29とスライド部34により、コネクタ93はリアクトルの表面と平行(x方向)にスライド可能となる。その一方で、コネクタ93は、リアクトルの表面と垂直方向(z方向)への動きは規制され、コネクタ93は、リアクトルの表面より一定距離以上離れることができない。そのため、コネクタ93が、z方向へずれ、係止部27と係止部33の係止が不十分となることを防止することができる。
(樹脂体22)
一方、樹脂体22は、C字形状の連結部22aと、保持部23とを有する。連結部22aの内部には、連結部21cの場合と同様に、U字型コア11がモールド成形法によって埋め込まれている。つまり、連結部22aは、U字型コア11の被覆部となる。連結部22aに覆われたU字型コア11の外周部分では、連結部22aの内周と密着している。U字型コア11の脚部の端面は、U字型コア12と同様に露出する。
保持部23は、温度検出部91を保持する。保持部23には、温度検出部91を挿入する挿入部24が設けられる。温度検出部91は、挿入部24に挿入されることでリアクトルに保持される。また、保持部23には、温度検出部91から延びるリード線92を配線するための溝25が設けられる。この溝25にリード線92を配することで、リード線92が弛みコイル51a、51bに接触することを防止することができる。
(コイル)
コイル5は、絶縁被覆を有する導線である。本実施形態では、コイル5は、平角線のエッジワイズコイルである。但し、コイル5の線材や巻き方は平角線のエッジワイズコイルに限定されず、他の形態であっても良い。
コイル5は、左右の一対のコイル51a、51bを有し、これらの一端部がコイル51a、51bと同じ素材でなる連結線51cによって連結されている。コイル51a、51bは、エナメルなどの絶縁被覆した1本の銅線によって構成されている。コイル5は、コイル51a、51bの空芯部に環状コア10の脚部の周囲を囲うように、樹脂部材2の一対の直線部分の外周に装着されており、コイル51a、51bが互いに平行である。つまり、コイル51a、51bの巻軸方向が互いに平行である。
コイル51a、51bの端部52a、52bは、樹脂体22の連結部22aの上方を介してリアクトル本体1の外部に引き出されており、外部電源などの外部機器の配線と接続される。例えば、ケース4の側壁外部に樹脂製の端子台を設置しても良い。
端子台に設けた端子とコイル51a、51bの端部52a、52bとが溶接等により電気的に接続させる。そして、この端子台の端子を介してコイル51a、51bと外部機器の配線と電気的に接続される。外部電源から電力供給されると、コイル51a、51bに電流が流れてコイル51a、51bを突き抜ける磁束が発生し、環状コア10内に環状の閉じた磁気回路が形成される。
(ケース)
図1及び図2に示すように、ケース4は、リアクトル本体1を収容する収容部材である。ケース4は、例えばアルミニウム合金等、熱伝導性が高く軽量な金属で構成されており、放熱性を有する。
本実施形態では、ケース4は、上面に開口を備えた略直方体形状であり、主として底面とその底面の縁から立ち上がる側壁とで構成され、底面と側壁とで囲われ、リアクトル本体1を収容するスペースを有する。
ケース4の収容スペースは、リアクトル本体1の大きさより若干大きい。換言すれば、ケース4の壁は、リアクトル本体1の周囲を覆うように、リアクトル本体1より一回り大きい略矩形上に配置されている。そのため、ケース4にリアクトル本体1を収容すると、ケース4の側壁内面とリアクトル本体1の側面との間には隙間が形成される。
リアクトル本体1とケース4との隙間には、充填樹脂部6が形成されている。充填樹脂部6の形状は、上面部分がリアクトル本体1の形状になった形状であり、下面部分がケース4の底面の形状に倣った形状である。充填樹脂部6の形成方法としては、ケース4にリアクトル本体1に収容した後に、充填材を充填、固化しても良いし、予めケース4に充填材を充填しておき、その後、リアクトル本体1を収容し、充填材を固化させても良い。充填材には、リアクトルの放熱性能の確保及びリアクトルからケース4への振動伝搬の軽減のため、比較的柔らかく熱伝導性の高い樹脂が適している。
[1−3.作用・効果]
本実施形態のリアクトルは、環状コア10と、環状コア10の周囲を覆う樹脂部材2と、環状コア10に巻き回されるコイル51a、51bと、樹脂部材2に一体成型されたコネクタ93との接続部21dとを有する。コネクタ93は、コネクタ93の表面から突出した係止部33を備える。接続部21dは、可撓性を有し、一方向に撓む支持部26と、支持部26の先端に設けられ、係止部33と互いを係止する係止部27と、係止部27が、支持部26の撓み方向へ変形することを抑制する補強部28と、を備える。
図7〜9は、本実施形態において、コネクタ93とリアクトルとを接続する様子を示した斜視図である。図10は、コネクタ93とリアクトルが接続する際の互いの係止部の状態を示した側面図である。図7に示す様に、コネクタ93とリアクトルとをそれぞれの嵌り合う向きで対向させる。そして、図8に示す様に、コネクタ93をリアクトルの仮置き位置に載置する。仮置き位置とは、コネクタ93のスライド部34がリアクトル側のスライド部29の入口と対向する位置である。この状態では、コネクタ93のスライド部34は、リアクトル側のスライド部29と嵌合していない。その後、コネクタ93を固定位置に向けて方向aにスライドさせる。コネクタ93がスライド可能な方向は、2つのスライド部29とスライド部34により方向a若しくは方向bである。コネクタ93を仮置き位置から固定位置へスライドさせる際には、コネクタ93は方向aにスライドする。
図7〜9の様に、コネクタ93とリアクトルとが接続させる場合には、それぞれの係止部は、図10(a)〜(c)に示すように変化する。つまり、コネクタ93が仮置き位置から、固定位置へスライドすると、コネクタの係止部33が、リアクトル側の係止部27と接触する(図10(a))。接触は、それぞれの係止部の傾斜面同士が接触する。
さらに、コネクタ93が固定位置側にスライドすると、垂直方向に関しては、互いの傾斜面に応力が加わる(図10(b))。この場合、コネクタ93のスライド部34が、リアクトル側のスライド部29と嵌合している。そのため、リアクトル側の係止部27から受ける応力により上方側に浮き上がることはない。一方、リアクトル側の係止部27は、弾性変形する支持部26の先端部に設けられている。そのため、リアクトル側の係止部27にコネクタ側の係止部33から応力が加わった場合には、その応力は支持部26へ伝達する。そして、この応力により、支持部26が長尺面の裏側へ弾性変形する。
そして、コネクタ93が固定位置までスライドすると、互いの傾斜面から加わる応力が0になる(図10(c))。コネクタ93側の係止部33からの応力により、弾性変形していたリアクトル側の支持部26は、その応力が0になると、もとの位置に復元する。支持部26が復元することで、係止部27と係止部33とが当接し、互いを係止する。すなわち、図10(c)に示す様に、それぞれの係止部の壁面部同士が当接する。
以上のように、コネクタ93をリアクトルの仮位置から固定位置に移動させることにより、互いの係止部の壁面30と壁面35とを当接させることができる。これにより、コネクタ93とリアクトルとの固定を確実に行える。
また、従来では、コネクタ93に固定位置から仮位置方向へ方向bの力が加わった場合には、係止部33から、係止部27に力が加わる。この力が、係止部27を変形させる力未満であれば、係止部27の形状に変化はない(図11(a))。しかしながら、係止部27を変形させる力以上であれば、支持部26と係止部27の境界部分付近に力が加わる。そして、この力が閾値を超えると、支持部26と係止部27の境界部分付近が変形する。これにより、係止部同士の係止が不十分となる(図11(b))。
しかしながら、本実施形態では、補強部28により支持部26と係止部27とを接続する。この補強部28は、支持部26と係止部27の境界部分付近が変形することを抑制する。すなちわ、図12に示すように、補強部28は、支持部26と係止部27の相対位置を固定するように設けられる。このため方向bの力が加わり、支持部26と係止部27の境界部分付近に力が加わった場合の変形を防止することができる。これより、リアクトルにおいてコネクタの固定を確実に行うことができる。
本実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。例えば、次の(1)〜(11)の様々な形態で実施することが可能である。
(1)本実施形態では、支持部26の長辺の先端部に係止部27を設けたが、必ずしも長辺の先端部に設ける必要もない。また、係止部27と、係止部33が同数であれば、その数は何れであっても良い。
(2)本実施形態では、係止部27は、側面(z軸方向)から平面視した場合、壁面30と、平坦面31、及び傾斜面32の3面から構成されるとした。平坦面31を設けることで、係止部27はx方向への厚みが増す。x方向は、固定位置からスライド開始位置への方向bと同方向である。方向bに大きな力が加わった場合補強部28により支持部26と係止部27の境界部分付近の変形を抑制していても、係止部27自体が破壊される可能性がある。しかし、本実施形態のように係止部27がx方向へ十分な厚みを有していると係止部27自体の強度が高まり、係止部27自体の破損することを防止できる。また、想定される方向bの力が小さい場合や、樹脂にある程度の強度がある場合などは、係止部27を壁面30と、平坦面31、及び傾斜面32の3面で構成しなくても良い。例えば、図13(a)に示す様に、係止部27を側面(z軸方向)から平面視した場合、壁面30及び傾斜面32の2面から構成しても良い。係止部27を2面で構成する場合にでも、傾斜面32により係止部27は、x方向へ一定の厚みを確保することができる。
(3)本実施形態では、係止部27の壁面30は、支持部26より垂直に立設するとした。しかしながら、必ずしも、垂直に立設する必要はない。例えば、図13(b)に示す様に、支持部26と壁面30のなす角が鋭角ε(0<ε<90゜)となるように立設しても良い。この場合、コネクタ93側の係止部33の壁面35は、コネクタ93の表面から同じ角度εで立設する。これにより、垂直に立設する場合と同様に、壁面30と壁面35とが隙間なく当接することができる。
(4)本実施形態では、図5示す様に、補強部28の形状を板状とした。これにより、支持部26の変形強度を高くすることができると共に、加工が容易となるメリットがある。しかし、補強部28の形状は、支持部26と係止部27の境界部分付近が変形することを抑制することが可能な形状であれば、他の形状でも良い。例えば、補強部28を丸棒や角棒に代表される棒状とすることもできる。
(5)本実施形態では、補強部28を支持部26及び係止部27の幅方向における両端に設けた。しかしながら、必ずしも両端に設ける必要はない。例えば、引張強度が高い樹脂でリアクトルを形成する場合には、補強部28を支持部26及び係止部27の幅方向における1端に設けた場合でも、係止部27が、支持部26の変形方向へ変形することを抑制することが可能となる。これにより、支持部26の先端の形状の設計の自由度が上がる。また、使用する樹脂の量が低減する。さらに、補強部28を設ける位置は、係止部27の変形を抑制することができる位置ならば幅方向の側面だけに限らない。例えば、図14(a)に示す様に、補強部28を支持部26や係止部27の幅方向の中央部に設けることができる。この場合には、係止部33には、係止部27と係止できるように、補強部28を挿入する溝を設ける。係止部33に、補強部28を挿入する溝を設けることで、補強部28を支持部26や係止部27の幅方向の側面に補強部28を設けたと時と同様に、壁面30と壁面35とが、隙間なく当接することができる。
(6)本実施形態では、補強部28が支持部26や係止部27の側面に連接するように設けたが、これに限らない。例えば、図14(b)に示す様に、補強部28を支持部26の側面と係止部27の側面と同一平面になるように配置することもできる。これにより、補強部28による支持部26の幅方向の寸法の削減が可能となる。この場合でも、支持部26の変形方向へ変形することを抑制することで、リアクトルにおいてコネクタ93の固定を確実に行うことができる。
(7)本実施形態では、係止部27は支持部26より所定の高さで立設する壁面30を有している。補強部28は、壁面30と繋がる部分の支持部26からの高さが、壁面30と同とした。また、補強部28は壁面30から支持部26の長手方向へ離れるに従って、その高さが低くなる。このような補強部28の形状とすることで、効率良く支持部26と係止部27の境界部分付近が変形を抑制することができる。
(8)本実施形態では、壁面30は、支持部26から垂直に立設する。また、壁面30と壁面35とは、同じ角で支持部26の長尺面やコネクタ93のC面より立設する。コネクタ93をリアクトルに嵌め合わせた場合には、支持部26の長尺面とコネクタ93のC面とは平行になる。このため、壁面30と壁面35とが、同じ角度で立設する場合は、互いの壁面は隙間なく当接することができる。そのため、コネクタ93とリアクトルとの固定を確実に行うことができる。また、その際の角度γを90°とすることで、コネクタを係止位置以上にスライドさせることなく、互いの壁面部を当接することが可能となる。これにより、リアクトルにおいてコネクタ93の固定を確実に行うことができる。
(9)本実施形態では、樹脂部材2は、環状コア10の中心に平行な側壁面を有する。そして、接続部21dは、側壁面に設けられる。リアクトルを各種機器に搭載する場合に、環状コア10の中心軸方向にインバータや昇圧回路などが配置されることが多く、コネクタ93を配置するスペースが無いことが多い。一方で、環状コア10の外縁方向には、固定部38が設けられる。固定部38をネジ40で固定するためには、一定のスペースが必要であるため環状コア10の外縁方向には、コネクタ93を配置するスペースがあることが多い。環状コア10の外縁方向にある、環状コア10の中心軸に平行な側壁面に接続部21dを設けることで、スペースを有効に活用することができ、小型のリアクトルを実現することが可能となる。
(10)本実施形態では、支持部26の変形方向には、支持部26が位置するための空間を有する。これにより、コネクタ側の係止部33の壁面30の高さが高いものでも、支持部が大きく撓むことにより、少ない力で取り付け可能となる。
(11)支持部26、係止部27及び補強部28は、継ぎ目なく一続の樹脂部材である。これにより、コアを樹脂モールドする際に一緒に作製することができる構成であるので、補強部28を別体として形成した後、接着剤等で支持部26や係止部27に接着する場合と比べて、製造の工数及び製造コストを削減することができる。そのため、
[2.他の実施形態]
本発明は、第1の実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、第1の実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
(1)第1の実施形態では、支持部26の長辺の先端部から寸法L2から寸法L2+寸法L3において、側面(z軸方向)から平面視した場合、補強部28は直線であった。しかしながら、支持部26と係止部27の境界部分付近が変形を抑制できる形状であれば、補強部28の形状はこれに限らない。例えば、図15(b)に示すように、寸法L2から寸法L2+寸法L3における補強部の形状を、側面(z軸方向)から平面視した場合に、曲線となるようにしても良い。
(2)また、本実施形態では、補強部28は、壁面30から支持部26の長手方向へ離れるに従って、その高さが低くなるとした。しかしながら、支持部26と係止部27の境界部分付近が変形を抑制できる形状であれば、補強部28の形状はこれに限らない。例えば、図15(a)に示すように、補強部28は、壁面30から支持部26の長手方向へ離れても、その高さを一定とすることができる。これにより、係止部27の形状を複雑にすることなく、リアクトルにおいてコネクタの固定を確実に行うことができる。
(3)第1の実施形態では、環状コア10をコア部材としてU字型コア11、12、I字型コア13により構成したが、コア部材の形状はこれらに限定されない。環状形状を構成できるのであれば、E字型コア、T字型コア、J字型コア、円柱コアなどを用いても良い。
(4)第1の実施形態では、環が1つの環状コア10を用いたが、E字型コアのように脚部を3本以上備えたコアを用いて、環が2つのθ形状に形成された環状コア10を用いても良い。