以下、本発明の電子機器の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における電子機器100を示す斜視図である。図1に示すように、実施の形態1の電子機器100は、略直方体の筐体1を有している。筐体1はカバー2で覆われており、カバー2は、複数のネジ90により筐体1に取り付けられている。筐体1の対向する側面の一方には、信号コネクタ40が取り付けられており、他方の側面には、電源コネクタ41が取り付けられている。
図2は、電子機器100のカバー2を外した状態である。筐体1の内部には、電子回路基板3が固定されている。また、図3は、カバー2と電子回路基板3を取り外した状態を示す斜視図、図4は、カバー2と電子回路基板3を取り外した状態を示す上面図である。図3及び図4に示すように、筐体1の底面1Aには、複数の支柱10が、筐体1に取付けられている。図2に示した電子回路基板3は、これらの複数の支柱10に、複数のネジ92によって固定されている。
信号コネクタ40は、筐体の側面にネジ91により固定され、電源コネクタ41は、筐体の側面にネジ93により固定されている。また、筐体1の底面1Aには、トランス5が固定されている。信号コネクタ40と電源コネクタ41及びトランス5は、それぞれ電子回路基板3に電気的に接続されている。なお、筐体1の内部及び電子回路基板3には、図示しない電子部品及び配線が収容されているが、説明は省略する。
図5は、トランス5の固定状態を示す斜視図、図6は、トランス5の固定状態を示す上面図である。図5及び図6に示すように、トランス5は、押さえバネ70によって筐体1に押圧されている。
押さえバネ70は、金属板を打ち抜き加工して形成された帯状の部材に、曲げ加工を施すことにより形成されている。金属板を打ち抜き加工した際には、片方の面にバリが発生する。バリが発生する面と反対側の面をダレ面という。押さえバネ70は、このダレ面側を、押圧側として形成されている。
筐体1には、押さえバネ70を固定する柱状の押さえバネ固定部11が形成されている。押さえバネ固定部11の上部には、2つの位置決めピン11Aが形成されている。一方、押さえバネ70には、2つの位置決め穴70Aが形成されている。押さえバネ70は、この2つの位置決め穴70Aに、押さえバネ固定部11の2つの位置決めピン11Aを嵌合させることによって位置決めされる。この2つの位置決めピン11Aにより、押さえバネ70は、筐体1の底面1Aに平行な面内での回転が規制される。そして、押さえバネ70は、ネジ95により押さえバネ固定部11に固定される。
トランス5は、トランス巻線モールド50と、上側コア60及び下側コア61を有している。トランス巻線モールド50は、金属板を打ち抜き加工して形成された、一次側接続端子20及び21と二次側接続端子22及び23とを有している。またトランス巻線モールド50は、一次側接続端子20及び21と接続された図示しない一次側巻線と、二次側接続端子22及び23と接続された図示しない二次側巻線とを有している。これら一次側接続端子20及び21と、二次側接続端子22及び23と、一次側巻線及び二次側巻線とは、インサートモールドにより形成されている。
トランス巻線モールド50と、上側コア60及び下側コア61とは、トランス巻線モールド50を、上側コア60及び下側コア61により上下から挟持し、テープ80を巻き付けることにより一体化されている。トランス5は、この状態で筐体1の底面1Aに取り付けられる。
図5に示すように、筐体1の底面1Aには、2つの柱状の固定部12が筐体1と一体に形成されている。トランス5は、この2つの固定部12の間に配置される。そして、トランス巻線モールド50の2つのネジ穴に挿入された2つのネジ94により、固定部12に取り付けられる。さらに、トランス5に巻き付けられたテープ80の上から、押さえバネ70を上側コア60に当接させる。そして、押さえバネ70は、トランス5を筐体1に対して押圧する。これにより、トランス5は、筐体1の底面1Aに対し、底面1Aに平行な方向及び垂直な方向への移動が規制される。
次に、トランス巻線モールド50と、上側コア60及び下側コア61との位置決めについて、図7〜図9を用いて説明する。図7は、図6のVII−VII線に沿う断面図であり、図8は、図6のVIII−VIII線に沿う断面図である。また、図9は、トランス5の分解図である。なお、図7では、トランス5を形成するトランス巻線モールド50、上側コア60及び下側コア61、二次側接続端子22及び23と、押さえバネ70の断面については、引き出し線を見やすくするために、ハッチングを省略している。また、図8においては、トランス巻線モールド50のハッチングを省略している。
図7及び図9に示すように、トランス巻線モールド50は、上面に2つの位置決めピン50Aを有している。さらに、トランス巻線モールド50は、下面側に2つの位置決めピン50Bを有している。一方、上側コア60は、トランス巻線モールド50の2つの位置決めピン50Aと対応する位置に、2つの位置決め穴60Aを有している。また、下側コア61は、トランス巻線モールド50の2つの位置決めピン50Bと対応する位置に、2つの位置決め穴61Aを有している。
トランス巻線モールド50は、2つの位置決めピン50Aを、上側コア60の2つの位置決め穴60Aに挿入することにより、上側コア60と位置決めされる。また、トランス巻線モールド50は、2つの位置決めピン50Bを、下側コア61の2つの位置決め穴61Aに挿入することにより、下側コア61と位置決めされる。このようにして、トランス巻線モールド50は、上側コア60及び下側コア61に位置決めされて、挟持される。
このように、実施の形態1による電子機器100によれば、筐体1の底面1Aに、固定部12と、押さえバネ70とを有している。そして、トランス5を構成するトランス巻線モールド50を、ネジ94により固定部12に固定することにより、トランス巻線モールド50が筐体1から浮き上がること及び筐体1の底面1Aに平行な方向への位置ずれを防止している。また、トランス5を構成する上側コア60を、押さえバネ70によって押圧することにより、下側コア61が、筐体1から浮き上がることを防止している。
これにより、電子機器100に振動が加えられた場合であっても、上側コア60と押さえバネ70との接触面の擦れによるコア粉の発生を抑制することができる。よって、コア粉による電子部品への影響が抑制され、電子機器100の信頼性が向上する。
また、実施の形態1による電子機器100によれば、トランス巻線モールド50の上部に位置決めピン50Aを形成し、下部に位置決めピン50Bを形成している。また、上側コア60に位置決め穴60Aを形成し、下側コア61に位置決め穴61Aを形成している。そして、トランス巻線モールド50の位置決めピン50Aを、上側コア60の位置決め穴60Aに嵌合させて、トランス巻線モールド50と上側コア60とを互いにずれないように位置決めしている。また、トランス巻線モールド50の位置決めピン50Bを、下側コア61の位置決め穴61Aに嵌合させて、トランス巻線モールド50と下側コア61とを互いにずれないように位置決めしている。そして、トランス巻線モールド50に対する、上側コア60及び下側コア61の、底面1Aに平行な方向への移動を規制するとともに、位置ずれを防止している。
これにより、電子機器100に振動が加えられた場合であっても、上側コア60と押さえバネ70との接触面及び下側コア61と筐体1との接触面の擦れによるコア粉の発生を抑制することができる。よって、コア粉による電子部品への影響が抑制され、電子機器100の信頼性が向上する。
また、実施の形態1による電子機器100によれば、上側コア60及び下側コア61には、テープ80が巻き付けられている。そして、押さえバネ70は、テープ80を介して上側コア60と接触し、下側コア61は、テープ80を介して筐体1の底面1Aと接触する。これにより、上側コア60と押さえバネ70との接触面及び下側コア61と筐体1の底面1Aとの接触面の擦れがさらに抑制され、コア粉の発生をさらに抑制することができる。よって、電子機器100の信頼性をさらに向上させることができる。
なお、押さえバネ70は、打ち抜き加工時のダレ面側をテープ80に当接させている。これにより、押さえバネ70の打ち抜き加工時のバリによって、テープ80を損傷させることが防止される。また、テープ80の幅は、押さえバネ70の幅より広いものを使用している。よって、押さえバネ70の当接位置がテープ80からずれた場合であっても、押さえバネ70と上側コア60とが擦れることがない。これにより、押さえバネ70と上側コア60とが擦れることによるコア粉の発生を、さらに抑制することができる。よって、電子機器100の信頼性をさらに向上させることができる。
なお、実施の形態1では、トランス巻線モールド50の位置決めピン50A及び50Bを、トランス巻線モールド50と一体に成形していたが、これに限るものではない。例えば、位置決めピン50A及び50Bは、トランス巻線モールド50と一体に成形せずに、別途製作して、トランス巻線モールド50に圧入してもよい。さらに、実施の形態1では、トランス巻線モールド50の上部と下部に、それぞれ2つの位置決めピン50A及び50Bを形成していたが、位置決めピン50A及び50Bの数は、これに限るものではない。例えば、位置決めピン50A及び50Bの数は、それぞれ3つ以上であってもよい。
また、実施の形態1による電子機器100では、トランス巻線モールド50に、位置決めピン50A及び50Bを形成し、上側コア60及び下側コア61に、それぞれ位置決め穴60A及び61Aを形成していたが、これに限るものではない。例えば、図10に示すように第1変形例のトランス巻線モールド51に示すように、トランス巻線モールド51に、一対の位置決め穴51A及び一対の位置決め穴51Bを形成してもよい。この場合、上側コア62の、トランス巻線モールド51の一対の位置決め穴51Aに対応する位置に、一対の位置決めピン62Aを形成し、さらに、下側コア63に、トランス巻線モールド51の一対の位置決め穴51Bに対応する位置に、一対の位置決めピン63Aを形成すればよい。
第1変形例のトランス巻線モールド51と上側コア62及び下側コア63によっても、実施の形態1の電子機器100と同様に、トランス巻線モールド51に対する、上側コア62及び下側コア63の位置ずれを抑制することができる。これにより、電子機器100に振動が加えられた場合であっても、上側コア62及び下側コア63の、筐体1及びトランス巻線モールド51に対する位置ずれ及び浮きを抑制することができる。よって、上側コア62と押さえバネ70との接触面及び下側コア63と筐体1との接触面の擦れが抑制でき、コア粉の発生を抑制することができる。さらに、コア粉による電子部品への影響が抑制され、電子機器100の信頼性が向上する。
なお、第1変形例における、上側コア62及び下側コア63の位置決めピン62A及び63Aは、上側コア62及び下側コア63と一体に成形してもよいし、別途作成して上側コア62及び下側コア63に圧入するようにしてもよい。
また、実施の形態1では、トランス巻線モールド50に、トランス巻線モールド50の上面及び下面から突出する位置決めピン50A及び50Bを形成したが、これに限るものではない。例えば、図11の第2変形例に示すトランス巻線モールド52のように、トランス巻線モールド52の上部及び下部から突出しない一対の位置決め凸部52Aを形成してもよい。この場合、上側コア64には、トランス巻線モールド52の一対の位置決め凸部52Aに対応する位置に、一対の位置決め凹部64Aを形成する。そして、下側コア65にも、一対の位置決め凸部52Aに対応する位置に、一対の位置決め凹部65Aを形成する。
第2変形例のトランス巻線モールド52と上側コア64及び下側コア65によっても、実施の形態1の電子機器100と同様に、トランス巻線モールド52に対する、上側コア64及び下側コア65の位置ずれを抑制することができる。これにより、電子機器100に振動が加えられた場合であっても、上側コア64及び下側コア65の、筐体1及びトランス巻線モールド52に対する位置ずれ及び浮きを抑制することができる。よって、上側コア64と押さえバネ70との接触面及び下側コア65と筐体1との接触面の擦れが抑制でき、コア粉の発生を抑制することができる。さらに、コア粉による電子部品への影響が抑制され、電子機器100の信頼性が向上する。
なお、実施の形態1では、電子機器100にトランス5を固定する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、トランス5は、金属板を打ち抜き加工して形成された導体を、樹脂と一体に成形したインサートモールドと上側コア及び下側コアを有するリアクトルであってもよい。
また、実施の形態1では、トランス5を、片持ちの押さえバネ70により筐体1に対して押圧していたが、これに限るものではない。例えば、図12及び図13に示す変形例の押さえバネ71のように、両持ちとして、筐体1に形成した2つの押さえバネ固定部11に固定してもよい。なお、押さえバネ70及び押さえバネ71の形状は一例であり、トランス5の上側コア60を押圧できる形状であれば、どのような形状であっても構わない。
また、実施の形態1では、支柱10を、筐体1に取り付けた形態としたが、支柱10は筐体1に一体に形成されていてもよい。
本発明の実施の形態1による電子機器100は、特に、いわゆる電気自動車である、EV(Electric Vehicle)、又はプラグインハイブリッド車である、PHV (Plug−in Hybrid Vehicle)及びプラグインハイブリッド電気自動車である、PHEV (Plug−in Hybrid Electric Vehicle)に搭載される、車載用電力変換機器、車載用DC/DCコンバータ及び車載用充電器などの電子機器として適用可能である。