以下に、本発明に係るサージ低減装置及びワイヤハーネスの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
[実施形態]
本発明に係るサージ低減装置及びワイヤハーネスの実施形態の1つを図1から図11に基づいて説明する。
図1及び図2の符号1は、本実施形態のサージ低減装置を示す。また、図1及び図2の符号WHは、そのサージ低減装置1が設けられているワイヤハーネスを示す。
サージ低減装置1は、環状に形成され、その内方の貫通孔に一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせ(以下、必要に応じて「組み合わせ電線」と称する。)を挿通させる環状コア10と、その一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2を電気接続させる導電性の電気接続部品20と、その環状コア10及び電気接続部品20を収容させる絶縁性のハウジング30と、を備える(図1から図4)。このサージ低減装置1においては、その環状コア10で一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2に流れるサージ電流を低減させる。
このサージ低減装置1は、複数の環状コア10の取り付けが可能な形態のものとして構成する。これにより、このサージ低減装置1は、少なくとも1つの環状コア10を備えることができるので、低減対象となるサージ電流の周波数帯域に応じて、環状コア10を1つだけ備えるものとして構成することもできれば、複数の環状コア10を備えるものとして構成することもできる。例えば、このサージ低減装置1は、低減対象となるサージ電流の周波数帯域が1つの場合、その周波数帯域に適応させた環状コア10を1つ又は複数備えることができる。一方、このサージ低減装置1は、低減対象となるサージ電流の周波数帯域が複数の場合、その周波数帯域毎に適応させた環状コア10(第1から第3の環状コア10A,10B,10C)を各々備えることができる。
ここで、環状コア10とは、環状の磁性体から成る磁性体コア11を有するもののことである(図5)。この環状コア10は、その磁性体コア11のみを備えるものであってもよい。また、この環状コア10は、その磁性体コア11と、この磁性体コア11を内方の空間部に収める収容体12と、を備えるものであってもよい(図5)。磁性体コア11は、強磁性材料で環状に成形される。強磁性材料としては、フェライト等が用いられる。収容体12は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。この収容体12は、例えば、内方の空間部に収容体12を収めた上で互いに嵌合可能な複数の分割体として成形されたものであってもよく、収容体12に対してインサート成形されたものであってもよい。
この環状コア10は、内方に貫通孔を有している。その貫通孔は、一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを複数組挿通可能な挿通孔10aとして利用される(図5)。ここで、ワイヤハーネスWHは、サージ電流の低減対象となる一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを少なくとも1組備えている。よって、挿通孔10aには、ワイヤハーネスWHにてサージ電流の低減対象となる組み合わせ電線が1組だけならば、その1組の組み合わせ電線が挿通させられ、ワイヤハーネスWHにてサージ電流の低減対象となる組み合わせ電線が複数組存在しているならば、その複数組の組み合わせ電線が挿通させられる。
第1分割導電体We1と第2分割導電体We2は、各々軸状に形成されており、その軸線を孔軸方向に沿わせて挿通孔10aに挿通させる。挿通孔10aにおいては、その一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2を孔軸方向に対する直交方向の内の載置壁体31に沿う方向に並べて挿通させる(図4)。その際、第1分割導電体We1は、その一端を挿通孔10aの孔軸方向における一方から他方に向けて挿通させる。また、第2分割導電体We2は、その一端を挿通孔10aの孔軸方向における他方から一方に向けて挿通させる。更に、この挿通孔10aにおいては、その一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを複数組挿通させる際に、それぞれの組み合わせを第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の配列方向に並べて挿通させる(図4)。よって、環状コア10は、その第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の配列方向を長手方向とする所謂レーストラック形状に形成されている(図5)。この環状コア10の外周面は、互いに間隔を空けて配置された半弧状の第1弧状壁面10b及び第2弧状壁面10cと、その第1弧状壁面10b及び第2弧状壁面10cを長手方向で繋ぐ第1連結壁面10d及び第2連結壁面10eと、を有している(図5)。その第1連結壁面10d及び第2連結壁面10eは、孔軸方向に平行な平面状に形成されている。
電気接続部品20は、一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせ毎に設ける。この電気接続部品20は、金属等の導電性材料で成形される。この例示の電気接続部品20は、金属板を母材にしてプレス成形された所謂バスバとして用意されている。この電気接続部品20は、第1分割導電体We1の一端に電気接続させ、かつ、第2分割導電体We2の一端に電気接続させることによって、その第1分割導電体We1と第2分割導電体We2とを電気接続させる。
ここで示す電気接続部品20は、第1分割導電体We1の一端に電気接続させる第1電気接続部21と、第2分割導電体We2の一端に電気接続させる第2電気接続部22と、第1電気接続部21及び第2電気接続部22を連結させる連結部23と、を有する(図6)。この電気接続部品20においては、第1電気接続部21を第1分割導電体We1の一端と共にハウジング30における後述する載置壁体31に固定し、かつ、第2電気接続部22を第2分割導電体We2の一端と共にその載置壁体31に固定する。連結部23は、載置壁体31に対して間隔を空けて対向配置させ、かつ、複数の環状コア10を孔軸方向で跨がせることが可能な形状に形成する。
ハウジング30は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。このハウジング30は、孔軸方向に並べた複数の環状コア10の収容が可能で、かつ、複数の環状コア10のそれぞれの挿通孔10aに挿通させた一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを複数組収容可能で、かつ、複数の電気接続部品20の収容が可能な収容室30aを有するものとして成形される(図1から図3)。このハウジング30においては、一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2を各々挿通孔10a内での配列方向に沿って並べたまま互いに逆向きで外方に引き出させる。また、このハウジング30においては、組み合わせ電線を複数組収容する場合、そのそれぞれの組み合わせ電線における第1分割導電体We1と第2分割導電体We2を各々挿通孔10a内での配列方向に沿って並べたまま外方に引き出させる。また、このハウジング30においては、複数の電気接続部品20を収容する場合、それぞれの電気接続部品20を第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の配列方向に並べて収容させる。このハウジング30においては、箱状に成形された内方の空間が収容室30aとなる(図1から図3)。
このハウジング30は、複数の環状コア10の外周面の一部が各々載せ置かれる載置壁体31を有している(図7及び図8)。その載置壁体31には、複数の環状コア10の第1連結壁面10dが各々載せ置かれる。この例示の載置壁体31は、矩形の平板状に形成されている。
このハウジング30は、その載置壁体31の4つの辺部から各々立設させた第1から第4の側壁体32-35を有している(図7及び図8)。第1側壁体32と第2側壁体33は、矩形の平板状に形成され、かつ、互いに間隔を空けて対向配置されている。また、第3側壁体34と第4側壁体35は、方体状に形成され、かつ、互いに間隔を空けて対向配置されている。
ここで、このハウジング30においては、第1弧状壁面10bを第1側壁体32に対向配置させ、かつ、第2弧状壁面10cを第2側壁体33に対向配置させた状態で環状コア10が収容される。換言するならば、このハウジング30においては、環状コア10が、孔軸方向における一端を第3側壁体34に対向配置させ、かつ、孔軸方向における他端を第4側壁体35に対向配置させた状態で収容される。そして、このハウジング30においては、収容室30aに収容された環状コア10の孔軸方向に第1分割導電体We1と第2分割導電体We2の電線引出方向を合わせる。よって、このハウジング30においては、収容室30a内の第1分割導電体We1を第3側壁体34側から外方に引き出させ、収容室30a内の第2分割導電体We2を第4側壁体35側から外方に引き出させる。
そこで、その第3側壁体34と第4側壁体35は、載置壁体31からの突出量を第1側壁体32及び第2側壁体33よりも少なくしている。そして、第3側壁体34の突出方向側の端部には、収容室30a内の第1分割導電体We1を外方に引き出させるための第1分割導電体We1毎の引出口34aが形成されている(図7及び図8)。その引出口34aは、第3側壁体34の突出方向側の端面から第1分割導電体We1を差し込ませる形状のものであり、その第1分割導電体We1の軸線に対する直交断面が半割されたが如き形状に形成されている。また、第4側壁体35の突出方向側の端部には、収容室30a内の第2分割導電体We2を外方に引き出させるための第2分割導電体We2毎の引出口35aが形成されている(図7及び図8)。その引出口35aは、第4側壁体35の突出方向側の端面から第2分割導電体We2を差し込ませる形状のものであり、その第2分割導電体We2の軸線に対する直交断面が半割されたが如き形状に形成されている。
更に、このハウジング30には、第1側壁体32及び第2側壁体33と第3側壁体34との間の突出量の差でできた空間部を埋める第1嵌合体38と、第1側壁体32及び第2側壁体33と第4側壁体35との間の突出量の差でできた空間部を埋める第2嵌合体39と、が取り付けられる(図1から図4及び図7)。その第1嵌合体38と第2嵌合体39は、合成樹脂等の絶縁性材料で方体状に成形される。第1嵌合体38には、収容室30a内の第1分割導電体We1を外方に引き出させるための第1分割導電体We1毎の引出口38aが形成されている(図7)。その引出口38aは、第1嵌合体38における第3側壁体34の突出方向側の端面との当接面から第1分割導電体We1を差し込ませる形状のものであり、その第1分割導電体We1の軸線に対する直交断面が半割されたが如き形状に形成されている。つまり、第1分割導電体We1は、第3側壁体34の引出口34aと第1嵌合体38の引出口38aとで挟み込まれた形で収容室30aの外に引き出される。また、第2嵌合体39には、収容室30a内の第2分割導電体We2を外方に引き出させるための第2分割導電体We2毎の引出口39aが形成されている(図7)。その引出口39aは、第2嵌合体39における第4側壁体35の突出方向側の端面との当接面から第2分割導電体We2を差し込ませる形状のものであり、その第2分割導電体We2の軸線に対する直交断面が半割されたが如き形状に形成されている。つまり、第2分割導電体We2は、第4側壁体35の引出口35aと第2嵌合体39の引出口39aとで挟み込まれた形で収容室30aの外に引き出される。
このハウジング30においては、載置壁体31と第1から第4の側壁体32-35と第1嵌合体38と第2嵌合体39とで囲まれた空間が収容室30aとして利用される。この例示の収容室30aには、最大で3つの環状コア10(第1から第3の環状コア10A,10B,10C)と、最大で3つの電気接続部品20と、最大で3組の一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせと、が収容される。
このサージ低減装置1は、複数の環状コア10を収容室30aでハウジング30に仮保持させることが可能な仮保持構造40を備える(図4及び図7から図9)。ここで、このサージ低減装置1においては、ハウジング30の収容室30aへの環状コア10と電気接続部品20と組み合わせ電線の収容が完了した後、その収容室30aに液状の絶縁性のポッティング剤が充填され、そのポッティング剤が硬化させられる。このサージ低減装置1においては、そのポッティング剤の固化物50によって、環状コア10を収容室30a内でハウジング30に固定させる(図9)。仮保持構造40とは、少なくとも液状のポッティング剤が硬化するまでの間、環状コア10を収容室30aの規定位置(設計上定められた位置)で仮保持させておくために設けられたものである。この仮保持構造40は、設置対象として選ばれた1つ又は複数の環状コア10をハウジング30に仮保持させることが可能なものであって、最大で3つの環状コア10をハウジング30に仮保持させることができるものとして構成している。
この仮保持構造40は、環状コア10をハウジング30に仮保持させる環状コア10毎の仮保持部41を備える。そして、その仮保持部41は、環状コア10を四方から各々係止する第1から第4の壁部41a-41dを備える(図7及び図8)。
具体的に、本実施形態の仮保持構造40は、3つの環状コア10(第1から第3の環状コア10A,10B,10C)をハウジング30に仮保持させるべく、3つの仮保持部41を載置壁体31に備えている。そして、本実施形態の仮保持部41は、その載置壁体31から第1から第4の壁部41a-41dを立設させている。この仮保持部41は、載置壁体31に沿ったハウジング30に対する環状コア10の相対移動を抑制させるものとして形成する。
この仮保持部41においては、ハウジング30に対する環状コア10の孔軸方向への相対移動を抑制させるべく、その環状コア10を第1壁部41aと第2壁部41bとの間に嵌入させる。よって、第1壁部41aは、環状コア10の孔軸方向における一端を孔軸方向で係止させる壁部として形成する。これに対して、第2壁部41bは、環状コア10の孔軸方向における他端を孔軸方向で係止させる壁部として形成する。その第1壁部41aと第2壁部41bは、互いの電線引出方向における間隔を環状コア10の孔軸方向における幅と同等の大きさとし、その間に嵌入させた環状コア10のハウジング30に対する相対移動が抑制されるように形成する。この第1壁部41aと第2壁部41bの間隔は、そのような相対移動の抑制が可能であるならば、第1壁部41aと第2壁部41bとの間で環状コア10を挟持させる大きさに設定してもよく、その間で環状コア10を挟持させぬ大きさに設定してもよい。
また、この仮保持部41においては、ハウジング30に対しての環状コア10の孔軸方向に対する直交方向で且つ載置壁体31に沿う方向に向けた相対移動(つまり、第1弧状壁面10bと第2弧状壁面10cとを繋ぐ方向でのハウジング30に対する環状コア10の相対移動)を抑制させるべく、その環状コア10を第3壁部41cと第4壁部41dとの間に嵌入させる。よって、第3壁部41cは、環状コア10の第1弧状壁面10bを孔軸方向に対する直交方向の内の載置壁体31に沿う方向で係止させる壁部として形成する。これに対して、第4壁部41dは、環状コア10の第2弧状壁面10cを孔軸方向に対する直交方向の内の載置壁体31に沿う方向で係止させる壁部として形成する。その第3壁部41cと第4壁部41dは、互いの間隔を環状コア10における第1弧状壁面10b及び第2弧状壁面10cの最大の間隔と同等の大きさとし、その間に嵌入させた環状コア10のハウジング30に対する相対移動が抑制されるように形成する。この第3壁部41cと第4壁部41dの間隔は、そのような相対移動の抑制が可能であるならば、第3壁部41cと第4壁部41dとの間で環状コア10を挟持させる大きさに設定してもよく、その間で環状コア10を挟持させぬ大きさに設定してもよい。
ここで、この例示のハウジング30は、載置壁体31から立設させた第1から第4の仕切り壁36A-36Dを有している(図7から図9)。その第1から第4の仕切り壁36A-36Dは、電線引出方向で互いに間隔を空けて対向配置させた壁体であり、各々矩形の平板状に形成されている。このハウジング30においては、第1仕切り壁36Aと第2仕切り壁36Bとの間に第3側壁体34側の環状コア10を嵌入させ、第2仕切り壁36Bと第3仕切り壁36Cとの間に真ん中の環状コア10を嵌入させ、第3仕切り壁36Cと第4仕切り壁36Dとの間に第4側壁体35側の環状コア10を嵌入させる。つまり、第1仕切り壁36Aは、第3側壁体34側に収容される環状コア10の孔軸方向における一端を係止させる第1壁部41aとして利用される。また、第2仕切り壁36Bは、第3側壁体34側に収容される環状コア10の孔軸方向における他端を係止させる第2壁部41bとして利用され、かつ、真ん中に収容される環状コア10の孔軸方向における一端を係止させる第1壁部41aとして利用される。また、第3仕切り壁36Cは、真ん中に収容される環状コア10の孔軸方向における他端を係止させる第2壁部41bとして利用され、かつ、第4側壁体35側に収容される環状コア10の孔軸方向における一端を係止させる第1壁部41aとして利用される。また、第4仕切り壁36Dは、第4側壁体35側に収容される環状コア10の孔軸方向における他端を係止させる第2壁部41bとして利用される。
ここで、この例示のハウジング30においては、複数の環状コア10に対応させたそれぞれの第3壁部41cとして第1側壁体32を利用し、かつ、複数の環状コア10に対応させたそれぞれの第4壁部41dとして第2側壁体33を利用している(図7及び図8)。
ここでは、第1から第4の壁部41a-41dとして、載置壁体31から立設させた第1から第4の仕切り壁36A-36Dと第1側壁体32と第2側壁体33とを利用している。但し、ハウジング30においては、載置壁体31の内壁面側に環状コア10毎の方体状の凹部を形成し、その凹部のそれぞれの側壁面を第1から第4の壁部41a-41dとして利用してもよい。
載置壁体31には、第1分割導電体We1の一端及び電気接続部品20の第1電気接続部21を共締め固定させるための第1締結部材61と、第2分割導電体We2の一端及び電気接続部品20の第2電気接続部22を共締め固定させるための第2締結部材62と、が電気接続部品20毎に設けられている(図4、図7及び図8)。よって、このサージ低減装置1は、その第1締結部材61と対になる第3締結部材63と、その第2締結部材62と対になる第4締結部材64と、を備えている。
その第1締結部材61及び第2締結部材62としては、ナットなどの雌螺子部材又はボルト等の雄螺子部材が利用される。この例示の第1締結部材61及び第2締結部材62は、その双方に同じ形状の雌螺子部材を用いており、載置壁体31に嵌入固定されている。よって、第3締結部材63及び第4締結部材64には、その双方に同じ形状の雄螺子部材が用いられる。
ここで、電気接続部品20においては、第1電気接続部21と第2電気接続部22とが各々片体状に形成されている。そして、その第1電気接続部21には、第3締結部材63の雄螺子部を挿通させるための貫通孔21aが形成されている(図6)。また、第2電気接続部22には、第4締結部材64の雄螺子部を挿通させるための貫通孔22aが形成されている(図6)。
更に、このサージ低減装置1においては、第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2として電線が用いられている。その第1分割導電体We1の一端と第2分割導電体We2の一端には、各々、丸型端子65が物理的且つ電気的に接続されている。
対となる第1分割導電体We1と第2分割導電体We2は、第1締結部材61と第3締結部材63で第1電気接続部21と第1分割導電体We1の一端の丸型端子65を共締め固定し、かつ、第2締結部材62と第4締結部材64で第2電気接続部22と第2分割導電体We2の一端の丸型端子65を共締め固定することによって、互いに電気接続される。
このサージ低減装置1においては、ハウジング30に固定された電気接続部品20の連結部23を環状コア10の第2連結壁面10eに対して間隔を空けて対向配置させる。ここで、電気接続部品20は、その対向配置状態の第2連結壁面10eと連結部23の間隔が、載置壁体31からの第1から第4の壁部41a-41dの突出量(ここでは、第1から第4の壁部41a-41dの内の最も高さの低いものの突出量であって、第1から第4の仕切り壁36A-36Dの内の最も高さの低いものの高さ)よりも狭くなるように形成することが望ましい。これにより、このサージ低減装置1においては、環状コア10が仮保持部41から抜け出ようと動いたとしても、環状コア10が連結部23で係止される。つまり、電気接続部品20は、載置壁体31に対する交差方向に向けたハウジング30に対する環状コア10の相対移動を抑制させるものとなっている。よって、このサージ低減装置1においては、その電気接続部品20によって、仮保持部41による環状コア10の仮保持状態を維持することができる。
本実施形態のハウジング30においては、第1側壁体32と第2側壁体33と第1嵌合体38と第2嵌合体39とで矩形の開口が形成される。このハウジング30は、その開口を塞ぐ蓋体が取り付けられるものであってもよい。この例示のハウジング30は、そのような蓋体が取り付けられるものではない。但し、この例示のハウジング30は、第1シールドシェル71及び第2シールドシェル72に囲われることによって、その開口が塞がれる(図1及び図2)。
第1シールドシェル71と第2シールドシェル72は、互いに組み付けられることによって、内方に空間部を形成する。ハウジング30は、その空間部に収容される。第1シールドシェル71と第2シールドシェル72は、ハウジング30の収容室30aへのノイズの侵入を抑制させるべく設けられた部品であり、金属等の導電性材料で成形されている。
以上示したサージ低減装置1において、ハウジング30の収容室30aには、環状コア10が仮保持構造40によって仮保持された状態で収容され、かつ、電気接続部品20と一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせとが載置壁体31に共締め固定された状態で収容される。このサージ低減装置1においては、その収容室30aに液状の絶縁性のポッティング剤が充填される。その液状のポッティング剤は、収容室30aで仮保持構造40による仮保持状態の環状コア10の一部と仮保持構造40の一部との間に介在するまで充填させる。この例示のハウジング30においては、引出口34a,35aから漏れ出る手前まで液状のポッティング剤を充填させることによって、そのポッティング剤が第1から第4の仕切り壁36A-36D(第1壁部41aと第2壁部41b)を乗り越えて仮保持状態の環状コア10にまで到達する。このサージ低減装置1においては、その液状のポッティング剤を硬化させることによって、そのポッティング剤の固化物50が形成される。このサージ低減装置1においては、その液状のポッティング剤が充填されている最中にも、仮保持構造40による環状コア10の仮保持状態を保つことができるので、その仮保持状態にあった環状コア10が仮保持構造40と共にポッティング剤の固化物50によってハウジング30の収容室30a内に固定される。
このように、本実施形態のサージ低減装置1においては、仮保持構造40で環状コア10をハウジング30に仮保持させておくことによって、収容室30aに充填した液状のポッティング剤が硬化するまでの間、そのハウジング30に対する環状コア10の位置ずれを抑えることができる。故に、このサージ低減装置1においては、そのポッティング剤が硬化して固化物50となったときに、その固化物50によって環状コア10が規定位置のままハウジング30の収容室30aに固定されている。換言するならば、このサージ低減装置1は、ハウジング30に対する環状コア10の位置ずれを液状のポッティング剤が硬化するまで抑えておくことが可能な仮保持構造40と、仮保持構造40による仮保持状態の環状コア10の一部と仮保持構造40の一部との間に介在するまで充填させ且つ硬化させたポッティング剤の固化物50と、を備えている。よって、このサージ低減装置1は、液状のポッティング剤が硬化した後も、環状コア10を規定位置のままハウジング30の収容室30aに固定しておくことができ、そのハウジング30に対する環状コア10の位置ずれを抑えることができる。従って、本実施形態のサージ低減装置1は、所期のサージ低減機能を発揮させることができる。
更に、本実施形態のサージ低減装置1においては、電気接続部品20の連結部23によっても、仮保持構造40で仮保持されている環状コア10のハウジング30に対する位置ずれを抑えることができる。つまり、このサージ低減装置1においては、その電気接続部品20にも仮保持構造40の仮保持機能の一端を担わせている。従って、本実施形態のサージ低減装置1は、収容室30aに充填した液状のポッティング剤が硬化するまでの間、ハウジング30に対する環状コア10の位置ずれをより効果的に抑えることができる。
ここで、仮保持構造40は、仮保持部41に環状コア10を嵌入させるだけの簡便な構造を採っている。従って、本実施形態のサージ低減装置1は、組付け作業性に優れている。
また、環状コアを成すフェライトは、磁性を持つセラミックスであり、脆性が大きいので衝撃に弱い。本実施形態のサージ低減装置1においては、環状コア10をポッティング剤の固化物50でハウジング30に固定しているので、環状コア10とハウジング30との間のがたつきを抑えることができる。従って、本実施形態のサージ低減装置1は、環状コア10の保護が可能になっており、かつ、その環状コア10とハウジング30との間での打音の発生を抑えることができる。
また更に、本実施形態のサージ低減装置1においては、低減対象となるサージ電流の周波数帯域に応じて、それぞれの仮保持部41の内の少なくとも1つに環状コア10を仮保持させることができるので、その環状コア10を仮保持位置のままポッティング剤の固化物50でハウジング30に固定させることができる。例えば、このサージ低減装置1においては、低減対象となるサージ電流の周波数帯域が2つの場合、それぞれの周波数帯域に適応させた第1環状コア10Aと第3環状コア10Cを3つの仮保持部41の内の2つに仮保持させることによって、その第1環状コア10Aと第3環状コア10Cが仮保持位置のままハウジング30に固定される(図10)。よって、このサージ低減装置1は、その2つの周波数帯域のサージ電流を低減させることができる。また、このサージ低減装置1においては、例えば、低減対象となるサージ電流の周波数帯域が低周波と中周波と高周波の3つの場合、その3つの周波数帯域に適応させた第1から第3の環状コア10A,10B,10Cを仮保持部41に1つずつ仮保持させることによって、その第1から第3の環状コア10A,10B,10Cが仮保持位置のままハウジング30に固定される(図1、図2及び図9)。よって、このサージ低減装置1は、その3つの周波数帯域のサージ電流を低減させることができる。このように、本実施形態のサージ低減装置1は、環状コア10を1つ又は複数搭載することができるので、1つの周波数帯域のサージ電流だけでなく、複数の周波数帯域のサージ電流についても低減させることができる。
また更に、このサージ低減装置1においては、低減対象となるサージ電流の周波数帯域が1つの場合、例えば、その周波数帯域に適応させた第1環状コア10Aを3つの仮保持部41の内の2つ又は3つの仮保持部41の全部に仮保持させることによって、それぞれの第1環状コア10Aが仮保持位置のままハウジング30に固定される。よって、このサージ低減装置1は、その1つの周波数帯域のサージ電流を低減させることができるだけでなく、第1環状コア10Aを1つしか備えない場合と比較して、そのサージ電流の低減効果を向上させることができる。
本実施形態のサージ低減装置1は、これらの環状コア10の数量や対応周波数帯域を変更するに際して、その仕様違いの形態の間で電気接続部品20やハウジング30を流用することができる。よって、このサージ低減装置1は、電気接続部品20やハウジング30の共用化を図りつつ、低減対象となるサージ電流の周波数帯域に応じて、1つ又は複数の周波数帯域のサージ電流を低減させることができる。また、このサージ低減装置1は、その電気接続部品20やハウジング30の共用化に伴い、部品管理が容易になり、延いては原価の低減を図ることができる。
また更に、このサージ低減装置1は、第1分割導電体We1や第2分割導電体We2を環状コア10の挿通孔10aに挿通させるだけで、従来のように環状コアに電線を巻回させる必要がない。よって、本実施形態のサージ低減装置1は、そのような電線の巻回作業を省略させることができるので、この点からも、組付け作業性の向上が可能になる。
本実施形態のワイヤハーネスWHは、そのサージ低減装置1と少なくとも1組の一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを備えるものであり、そのサージ低減装置1が得られる効果を奏することができる。
[変形例]
図12の符号2は、本変形例のサージ低減装置を示す。本変形例では、そのサージ低減装置2と少なくとも1組の一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを備えるものがワイヤハーネスWHとなる。
本変形例のサージ低減装置2及びワイヤハーネスWHは、前述した実施形態のサージ低減装置1及びワイヤハーネスWHと同様の効果を得るべく、そのサージ低減装置1及びワイヤハーネスWHにおいて、仮保持構造40を下記の仮保持構造140に変更したものである(図12)。そして、本変形例のサージ低減装置2及びワイヤハーネスWHは、サージ低減装置1及びワイヤハーネスWHにおいて、その仮保持構造140への変更に伴い、環状コア10とハウジング30を各々下記の環状コア110とハウジング130に置き換えたものである(図12)。そこで、以下の説明においては、実施形態のサージ低減装置1と同じ部品や同等の機能を為す部位等について、便宜上、そのサージ低減装置1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
本変形例の環状コア110は、実施形態の環状コア10と同じように、磁性体コア11のみを備えるものであってもよく、その磁性体コア11と収容体12とを備えるものであってもよい。この環状コア110は、後述する仮保持構造140に関わる部位を除き、実施形態の環状コア10と同等の形状に形成されている。よって、この環状コア110は、一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを複数組挿通可能な挿通孔110aを有している(図13)。また、この環状コア110の外周面は、互いに間隔を空けて配置された半弧状の第1弧状壁面110b及び第2弧状壁面110cと、その第1弧状壁面110b及び第2弧状壁面110cを長手方向で繋ぐ第1連結壁面110d及び第2連結壁面110eと、を有している(図13)。その第2連結壁面110eは、実施形態の環状コア10と同じように、孔軸方向に平行な平面状に形成されている。一方、第1連結壁面110dは、後述する複数の凸部142を有しているので、山と谷が交互に連なる凹凸壁面となっている。
本変形例のハウジング130は、実施形態のハウジング30と同じように、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。このハウジング130は、後述する仮保持構造140に関わる部位を除き、実施形態のハウジング30と同等の形状に形成されている。よって、このハウジング130は、実施形態のハウジング30と同じように、複数の環状コア110の外周面の一部(第1連結壁面110d)が各々載せ置かれる載置壁体131と、その矩形で且つ平板状の載置壁体131の4つの辺部から各々立設させた第1から第4の側壁体132-135と、を有している(図14及び図15)。そして、このハウジング130には、実施形態のハウジング30と同じように、第1側壁体132及び第2側壁体133と第3側壁体134との間の突出量の差でできた空間部を埋める第1嵌合体38と、第1側壁体132及び第2側壁体133と第4側壁体135との間の突出量の差でできた空間部を埋める第2嵌合体39と、が取り付けられる。よって、このハウジング130においては、収容室130a(図17)内の第1分割導電体We1を第1嵌合体38の引出口38aと相俟って外方に引き出させるための第1分割導電体We1毎の引出口134aが第3側壁体134に形成され、かつ、収容室130a内の第2分割導電体We2を第2嵌合体39の引出口39aと相俟って外方に引き出させるための第2分割導電体We2毎の引出口135aが第4側壁体135に形成されている(図14及び図15)。このハウジング130においては、載置壁体131と第1から第4の側壁体132-135と第1嵌合体38と第2嵌合体39とで囲まれた空間が収容室130aとして利用される。
本変形例の仮保持構造140は、実施形態の仮保持構造40と同じように、複数の環状コア110を収容室130aでハウジング130に仮保持させることが可能なものである。そして、本変形例の仮保持構造140は、実施形態の仮保持構造40と同じように、少なくとも液状のポッティング剤が硬化するまでの間、環状コア110を収容室130aの規定位置(設計上定められた位置)で仮保持させておくものである。ここで示す仮保持構造140は、設置対象として選ばれた1つ又は複数の環状コア110をハウジング130に仮保持させることが可能なものであって、最大で3つの環状コア110をハウジング30に仮保持させることができるものとして構成している。ここでは、3つの環状コア110(例えば、3つのサージ電流の周波数帯域に各々適応させた第1から第3の環状コア110A,110B,110C)が仮保持されている場合について例示している(図12及び図16)。
この仮保持構造140は、実施形態の仮保持構造40と同じように、載置壁体131に沿ったハウジング130に対する環状コア110の相対移動を抑制させるものとして構成する。そこで、この仮保持構造140は、ハウジング130と環状コア110の内の一方に設けた凹部141(図12、図14、図15及び図17)と、その内の他方に設け、その凹部141に嵌入させる凸部142(図13及び図17)と、を備えている。
この仮保持構造140は、その一対の凹部141と凸部142を互いに嵌め合わせることによって、ハウジング130に対する環状コア110の孔軸方向への相対移動又はその孔軸方向に対する直交方向で且つ載置壁体131に沿う方向に向けたハウジング130に対する環状コア110の相対移動を抑制させる。例えば、前者の仮保持構造140は、互いに嵌め合わされた凹部141と凸部142とでハウジング130に対する環状コア110の孔軸方向への相対移動を抑制させる一方、実施形態の仮保持構造40と同じ第3壁部41cと第4壁部41dとを備えることによって、孔軸方向に対する直交方向で且つ載置壁体131に沿う方向に向けたハウジング130に対する環状コア110の相対移動を抑制させる。また、後者の仮保持構造140は、互いに嵌め合わされた凹部141と凸部142とで孔軸方向に対する直交方向で且つ載置壁体131に沿う方向に向けたハウジング130に対する環状コア110の相対移動を抑制させる一方、実施形態の仮保持構造40と同じ第1壁部41aと第2壁部41bとを備えることによって、ハウジング130に対する環状コア110の孔軸方向への相対移動を抑制させる。ここでは、前者を示している。従って、ここで示す仮保持構造140においては、複数の環状コア110に対応させたそれぞれの第3壁部41cとして第1側壁体132が利用され、かつ、複数の環状コア110に対応させたそれぞれの第4壁部41dとして第2側壁体133が利用される。
この仮保持構造140は、その一対の凹部141と凸部142の組み合わせを環状コア110毎に少なくとも1組ずつ備えている。この例示では、ハウジング130に凹部141が形成され、かつ、環状コア110に凸部142が形成されている。
この例示では、ハウジング130における載置壁体131の内壁面に凹部141が形成され(図14及び図15)、かつ、環状コア110の第1連結壁面110dが凸部142として形成されている(図13)。載置壁体131の内壁面には、環状コア110の孔軸方向(つまり、収容室130aにおけるそれぞれの環状コア110の配列方向)に沿い、かつ、少なくとも収容室130a内のそれぞれの環状コア110の第1連結壁面110dに対向配置される部分に亘って、断面三角形の山と谷が交互に形成されている。この載置壁体131の内壁面においては、その谷の部分が凹部141として利用される。また、環状コア110の第1連結壁面110d側には、環状コア110の孔軸方向に沿って、断面三角形の山と谷が交互に形成されている。ここでは、その山と谷が交互に連なる凹凸壁面が第1連結壁面110dとなっており、その山の部分が凸部142として利用される。ここで、これらの断面三角形とは、環状コア110の孔軸方向(つまり、収容室130aにおけるそれぞれの環状コア110の配列方向)に対する直交方向の内の第2連結壁面110eや載置壁体131に沿う方向に対しての直交断面形状のことを示している。
この仮保持構造140においては、全ての凹部141を同じ形状に形成すると共に、
全ての凸部142を同じ形状に形成する。これにより、この仮保持構造140においては、凸部142を何処の凹部141に対しても嵌入させることができる。
この仮保持構造140においては、環状コア110を収容室130aに収容していくことによって、環状コア110の凸部142がハウジング130の凹部141に嵌入されていく。そして、この仮保持構造140においては、第3壁部41cとしての第1側壁体132と第4壁部41dとしての第2側壁体133との間に環状コア110が嵌入される。よって、環状コア110は、この仮保持構造140によって、第2連結壁面110eや載置壁体131の平面方向に沿ったハウジング130に対する相対移動が抑制される。また、電気接続部品20の連結部23は、実施形態と同じように、電気接続部品20がハウジング130に固定されているときに、載置壁体131との間で環状コア110を挟持させるものとして形成する。よって、環状コア110は、ハウジング130に対する収容室130bからの脱離方向への相対移動についても抑制される。
このサージ低減装置2においても、液状のポッティング剤は、収容室130aで仮保持構造140による仮保持状態の環状コア110の一部と仮保持構造140の一部との間に介在するまで充填させる。この例示では、仮保持構造140を沈み込ませる位置まで液状のポッティング剤が充填されている。そして、このサージ低減装置2においても、環状コア110は、収容室130aに充填された液状のポッティング剤が硬化するまでの間、仮保持構造140によって、ハウジング130に対する位置ずれが抑制される。よって、このサージ低減装置2においては、そのポッティング剤の固化物50によって、環状コア110が仮保持構造140と共に規定位置のままハウジング130の収容室130aに固定されている。従って、本変形例のサージ低減装置2及びワイヤハーネスWHは、実施形態のサージ低減装置1及びワイヤハーネスWHと同様の効果を得ることができる。