以下に、本発明に係るサージ低減装置及びワイヤハーネスの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
[実施形態]
本発明に係るサージ低減装置及びワイヤハーネスの実施形態の1つを図1から図11に基づいて説明する。
図1及び図2の符号1は、本実施形態のサージ低減装置を示す。また、図1及び図2の符号WHは、そのサージ低減装置1が設けられているワイヤハーネスを示す。
サージ低減装置1は、環状に形成され、その内方の貫通孔に一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせ(以下、必要に応じて「組み合わせ電線」と称する。)を挿通させる環状コア10と、その一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2を電気接続させる導電性の電気接続部品20と、その環状コア10及び電気接続部品20を収容させる絶縁性のハウジング30と、を備える(図1から図4)。このサージ低減装置1においては、その環状コア10で一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2に流れるサージ電流を低減させる。
このサージ低減装置1は、複数の環状コア10の取り付けが可能な形態のものとして構成する。これにより、このサージ低減装置1は、少なくとも1つの環状コア10を備えることができるので、低減対象となるサージ電流の周波数帯域に応じて、環状コア10を1つだけ備えるものとして構成することもできれば、複数の環状コア10を備えるものとして構成することもできる。例えば、このサージ低減装置1は、低減対象となるサージ電流の周波数帯域が1つの場合、その周波数帯域に適応させた環状コア10を1つ又は複数備えることができる。一方、このサージ低減装置1は、低減対象となるサージ電流の周波数帯域が複数の場合、その周波数帯域毎に適応させた環状コア10(第1から第3の環状コア10A,10B,10C)を各々備えることができる。
ここで、環状コア10とは、環状の磁性体から成る磁性体コア11を有するもののことである(図5)。この環状コア10は、その磁性体コア11のみを備えるものであってもよい。また、この環状コア10は、その磁性体コア11と、この磁性体コア11を内方の空間部に収める収容体12と、を備えるものであってもよい(図5)。磁性体コア11は、強磁性材料で環状に成形される。強磁性材料としては、フェライト等が用いられる。収容体12は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。この収容体12は、例えば、内方の空間部に収容体12を収めた上で互いに嵌合可能な複数の分割体として成形されたものであってもよく、収容体12に対してインサート成形されたものであってもよい。
この環状コア10は、内方に貫通孔を有している。その貫通孔は、一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを複数組挿通可能な挿通孔10aとして利用される(図5)。ここで、ワイヤハーネスWHは、サージ電流の低減対象となる一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを少なくとも1組備えている。よって、挿通孔10aには、ワイヤハーネスWHにてサージ電流の低減対象となる組み合わせ電線が1組だけならば、その1組の組み合わせ電線が挿通させられ、ワイヤハーネスWHにてサージ電流の低減対象となる組み合わせ電線が複数組存在しているならば、その複数組の組み合わせ電線が挿通させられる。
第1分割導電体We1と第2分割導電体We2は、各々軸状に形成されており、その軸線を孔軸方向に沿わせて挿通孔10aに挿通させる。挿通孔10aにおいては、その一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2を孔軸方向に対する直交方向の内の載置壁体31に沿う方向に並べて挿通させる(図4)。その際、第1分割導電体We1は、その一端を挿通孔10aの孔軸方向における一方から他方に向けて挿通させる。また、第2分割導電体We2は、その一端を挿通孔10aの孔軸方向における他方から一方に向けて挿通させる。更に、この挿通孔10aにおいては、その一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを複数組挿通させる際に、それぞれの組み合わせを第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の配列方向に並べて挿通させる(図4)。よって、環状コア10は、その第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の配列方向を長手方向とする所謂レーストラック形状に形成されている(図5)。この環状コア10の外周面は、互いに間隔を空けて配置された半弧状の第1弧状壁面10b及び第2弧状壁面10cと、その第1弧状壁面10b及び第2弧状壁面10cを長手方向で繋ぐ第1連結壁面10d及び第2連結壁面10eと、を有している(図5)。その第1連結壁面10d及び第2連結壁面10eは、孔軸方向に平行な平面状に形成されている。
電気接続部品20は、一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせ毎に設ける。この電気接続部品20は、金属等の導電性材料で成形される。この例示の電気接続部品20は、金属板を母材にしてプレス成形された所謂バスバとして用意されている。この電気接続部品20は、第1分割導電体We1の一端に電気接続させ、かつ、第2分割導電体We2の一端に電気接続させることによって、その第1分割導電体We1と第2分割導電体We2とを電気接続させる。
ここで示す電気接続部品20は、第1分割導電体We1の一端に電気接続させる第1電気接続部21と、第2分割導電体We2の一端に電気接続させる第2電気接続部22と、第1電気接続部21及び第2電気接続部22を連結させる連結部23と、を有する(図6)。この電気接続部品20においては、第1電気接続部21を第1分割導電体We1の一端と共にハウジング30における後述する載置壁体31に固定し、かつ、第2電気接続部22を第2分割導電体We2の一端と共にその載置壁体31に固定する。連結部23は、載置壁体31に対して間隔を空けて対向配置させ、かつ、複数の環状コア10を孔軸方向で跨がせることが可能な形状に形成する。
ハウジング30は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。このハウジング30は、孔軸方向に並べた複数の環状コア10の収容が可能で、かつ、複数の環状コア10のそれぞれの挿通孔10aに挿通させた一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを複数組収容可能で、かつ、複数の電気接続部品20の収容が可能な形状のものとして成形される。このハウジング30においては、一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2を各々挿通孔10a内での配列方向に沿って並べたまま互いに逆向きで外方に引き出させる。また、このハウジング30においては、組み合わせ電線を複数組収容する場合、そのそれぞれの組み合わせ電線における第1分割導電体We1と第2分割導電体We2を各々挿通孔10a内での配列方向に沿って並べたまま外方に引き出させる。また、このハウジング30においては、複数の電気接続部品20を収容する場合、それぞれの電気接続部品20を第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の配列方向に並べて収容させる。このハウジング30においては、箱状に成形された内方の空間が収容室30aとなり(図1から図3)、その収容室30aに環状コア10と第1分割導電体We1と第2分割導電体We2と電気接続部品20とが収容される。
このハウジング30は、複数の環状コア10の外周面の一部が各々載せ置かれる載置壁体31を有している(図7及び図8)。その載置壁体31には、複数の環状コア10の第1連結壁面10dが各々載せ置かれる。この例示の載置壁体31は、矩形の平板状に形成されている。
このハウジング30は、その載置壁体31の4つの辺部から各々立設させた第1から第4の側壁体32-35を有している(図7及び図8)。第1側壁体32と第2側壁体33は、矩形の平板状に形成され、かつ、互いに間隔を空けて対向配置されている。また、第3側壁体34と第4側壁体35は、方体状に形成され、かつ、互いに間隔を空けて対向配置されている。
ここで、このハウジング30においては、第1弧状壁面10bを第1側壁体32に対向配置させ、かつ、第2弧状壁面10cを第2側壁体33に対向配置させた状態で環状コア10が収容される。換言するならば、このハウジング30においては、環状コア10が、孔軸方向における一端を第3側壁体34に対向配置させ、かつ、孔軸方向における他端を第4側壁体35に対向配置させた状態で収容される。そして、このハウジング30においては、収容室30aに収容された環状コア10の孔軸方向に第1分割導電体We1と第2分割導電体We2の電線引出方向を合わせる。よって、このハウジング30においては、収容室30a内の第1分割導電体We1を第3側壁体34側から外方に引き出させ、収容室30a内の第2分割導電体We2を第4側壁体35側から外方に引き出させる。
そこで、その第3側壁体34と第4側壁体35は、載置壁体31からの突出量を第1側壁体32及び第2側壁体33よりも少なくしている。そして、第3側壁体34の突出方向側の端部には、収容室30a内の第1分割導電体We1を外方に引き出させるための第1分割導電体We1毎の引出口34aが形成されている(図7及び図8)。その引出口34aは、第3側壁体34の突出方向側の端面から第1分割導電体We1を差し込ませる形状のものであり、その第1分割導電体We1の軸線に対する直交断面が半割されたが如き形状に形成されている。また、第4側壁体35の突出方向側の端部には、収容室30a内の第2分割導電体We2を外方に引き出させるための第2分割導電体We2毎の引出口35aが形成されている(図7及び図8)。その引出口35aは、第4側壁体35の突出方向側の端面から第2分割導電体We2を差し込ませる形状のものであり、その第2分割導電体We2の軸線に対する直交断面が半割されたが如き形状に形成されている。
更に、このハウジング30には、第1側壁体32及び第2側壁体33と第3側壁体34との間の突出量の差でできた空間部を埋める第1嵌合体38と、第1側壁体32及び第2側壁体33と第4側壁体35との間の突出量の差でできた空間部を埋める第2嵌合体39と、が取り付けられる(図1から図4及び図7)。その第1嵌合体38と第2嵌合体39は、合成樹脂等の絶縁性材料で方体状に成形される。第1嵌合体38には、収容室30a内の第1分割導電体We1を外方に引き出させるための第1分割導電体We1毎の引出口38aが形成されている(図7)。その引出口38aは、第1嵌合体38における第3側壁体34の突出方向側の端面との当接面から第1分割導電体We1を差し込ませる形状のものであり、その第1分割導電体We1の軸線に対する直交断面が半割されたが如き形状に形成されている。つまり、第1分割導電体We1は、第3側壁体34の引出口34aと第1嵌合体38の引出口38aとで挟み込まれた形で収容室30aの外に引き出される。また、第2嵌合体39には、収容室30a内の第2分割導電体We2を外方に引き出させるための第2分割導電体We2毎の引出口39aが形成されている(図7)。その引出口39aは、第2嵌合体39における第4側壁体35の突出方向側の端面との当接面から第2分割導電体We2を差し込ませる形状のものであり、その第2分割導電体We2の軸線に対する直交断面が半割されたが如き形状に形成されている。つまり、第2分割導電体We2は、第4側壁体35の引出口35aと第2嵌合体39の引出口39aとで挟み込まれた形で収容室30aの外に引き出される。
このハウジング30においては、載置壁体31と第1から第4の側壁体32-35と第1嵌合体38と第2嵌合体39とで囲まれた空間が収容室30aとして利用される。この例示の収容室30aには、最大で3つの環状コア10(第1から第3の環状コア10A,10B,10C)と、最大で3つの電気接続部品20と、最大で3組の一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせと、が収容される。
このサージ低減装置1は、複数の環状コア10をハウジング30に保持させることが可能な保持構造40を備える(図4及び図7から図9)。その保持構造40は、環状コア10をハウジング30に保持させる環状コア10毎のコア保持部41を載置壁体31に備える。この保持構造40は、設置対象として選ばれた1つ又は複数の環状コア10をハウジング30に保持させることが可能なものであって、最大で3つの環状コア10をハウジング30に保持させることができるものとして構成している。よって、この例示の保持構造40は、3つのコア保持部41を備えている。
具体的に、本実施形態のコア保持部41は、載置壁体31から立設させ、環状コア10を四方から各々係止する第1から第4の壁部41a-41dを備える(図7及び図8)。
このコア保持部41においては、ハウジング30に対する環状コア10の孔軸方向への相対移動を抑制させるべく、その環状コア10を第1壁部41aと第2壁部41bとによって孔軸方向で挟み込ませる。よって、第1壁部41aは、環状コア10の孔軸方向における一端を孔軸方向で係止させる壁部として形成する。これに対して、第2壁部41bは、環状コア10の孔軸方向における他端を孔軸方向で係止させる壁部として形成する。その第1壁部41aと第2壁部41bは、互いの電線引出方向における間隔を環状コア10の孔軸方向における幅と同等の大きさとし、その間に嵌入させた環状コア10を挟持させることによって、コア保持部41からの環状コア10の脱離が抑制されるように形成する。
また、このコア保持部41においては、ハウジング30に対しての環状コア10の孔軸方向に対する直交方向で且つ載置壁体31に沿う方向に向けた相対移動(つまり、第1弧状壁面10bと第2弧状壁面10cとを繋ぐ方向でのハウジング30に対する環状コア10の相対移動)を抑制させるべく、環状コア10の第1弧状壁面10bと第2弧状壁面10cを第3壁部41cと第4壁部41dとで挟み込ませる。よって、第3壁部41cは、環状コア10の第1弧状壁面10bを孔軸方向に対する直交方向の内の載置壁体31に沿う方向で係止させる壁部として形成する。これに対して、第4壁部41dは、環状コア10の第2弧状壁面10cを孔軸方向に対する直交方向の内の載置壁体31に沿う方向で係止させる壁部として形成する。その第3壁部41cと第4壁部41dは、互いの間隔を環状コア10における第1弧状壁面10b及び第2弧状壁面10cの最大の間隔と同等の大きさとし、その間に嵌入させた環状コア10を挟持させることによって、コア保持部41からの環状コア10の脱離が抑制されるように形成する。
ここで、この例示のハウジング30は、載置壁体31から立設させた第1から第4の仕切り壁36A-36Dを有している(図7から図9)。その第1から第4の仕切り壁36A-36Dは、電線引出方向で互いに間隔を空けて対向配置させた壁体であり、各々矩形の平板状に形成されている。このハウジング30においては、第1仕切り壁36Aと第2仕切り壁36Bとの間で第3側壁体34側の環状コア10を挟み込んで係止させ、第2仕切り壁36Bと第3仕切り壁36Cとの間で真ん中の環状コア10を挟み込んで係止させ、第3仕切り壁36Cと第4仕切り壁36Dとの間で第4側壁体35側の環状コア10を挟み込んで係止させる。つまり、第1仕切り壁36Aは、第3側壁体34側に収容される環状コア10の孔軸方向における一端を係止させる第1壁部41aとして利用される。また、第2仕切り壁36Bは、第3側壁体34側に収容される環状コア10の孔軸方向における他端を係止させる第2壁部41bとして利用され、かつ、真ん中に収容される環状コア10の孔軸方向における一端を係止させる第1壁部41aとして利用される。また、第3仕切り壁36Cは、真ん中に収容される環状コア10の孔軸方向における他端を係止させる第2壁部41bとして利用され、かつ、第4側壁体35側に収容される環状コア10の孔軸方向における一端を係止させる第1壁部41aとして利用される。また、第4仕切り壁36Dは、第4側壁体35側に収容される環状コア10の孔軸方向における他端を係止させる第2壁部41bとして利用される。
ここで、この例示のハウジング30においては、複数の環状コア10に対応させたそれぞれの第3壁部41cとして第1側壁体32を利用し、かつ、複数の環状コア10に対応させたそれぞれの第4壁部41dとして第2側壁体33を利用している(図7及び図8)。
ここでは、第1から第4の壁部41a-41dとして、載置壁体31から立設させた第1から第4の仕切り壁36A-36Dと第1側壁体32と第2側壁体33とを利用している。但し、ハウジング30においては、載置壁体31の内壁面側に環状コア10毎の方体状の凹部を形成し、その凹部のそれぞれの側壁面を第1から第4の壁部41a-41dとして利用してもよい。
載置壁体31には、第1分割導電体We1の一端及び電気接続部品20の第1電気接続部21を共締め固定させるための第1締結部材51と、第2分割導電体We2の一端及び電気接続部品20の第2電気接続部22を共締め固定させるための第2締結部材52と、が電気接続部品20毎に設けられている(図4、図7及び図8)。よって、このサージ低減装置1は、その第1締結部材51と対になる第3締結部材53と、その第2締結部材52と対になる第4締結部材54と、を備えている。
その第1締結部材51及び第2締結部材52としては、ナットなどの雌螺子部材又はボルト等の雄螺子部材が利用される。この例示の第1締結部材51及び第2締結部材52は、その双方に同じ形状の雌螺子部材を用いており、載置壁体31に嵌入固定されている。よって、第3締結部材53及び第4締結部材54には、その双方に同じ形状の雄螺子部材が用いられる。
ここで、電気接続部品20においては、第1電気接続部21と第2電気接続部22とが各々片体状に形成されている。そして、その第1電気接続部21には、第3締結部材53の雄螺子部を挿通させるための貫通孔21aが形成されている(図6)。また、第2電気接続部22には、第4締結部材54の雄螺子部を挿通させるための貫通孔22aが形成されている(図6)。
更に、このサージ低減装置1においては、第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2として電線が用いられている。その第1分割導電体We1の一端と第2分割導電体We2の一端には、各々、丸型端子55が物理的且つ電気的に接続されている。
対となる第1分割導電体We1と第2分割導電体We2は、第1締結部材51と第3締結部材53で第1電気接続部21と第1分割導電体We1の一端の丸型端子55を共締め固定し、かつ、第2締結部材52と第4締結部材54で第2電気接続部22と第2分割導電体We2の一端の丸型端子55を共締め固定することによって、互いに電気接続される。
このサージ低減装置1においては、ハウジング30に固定された電気接続部品20の連結部23を環状コア10の第2連結壁面10eに対して間隔を空けて対向配置させる。ここで、電気接続部品20は、その対向配置状態の第2連結壁面10eと連結部23の間隔が、載置壁体31からの第1から第4の壁部41a-41dの突出量(ここでは、第1から第4の壁部41a-41dの内の最も高さの低いものの突出量であって、第1から第4の仕切り壁36A-36Dの内の最も高さの低いものの高さ)よりも狭くなるように形成することが望ましい。これにより、このサージ低減装置1においては、環状コア10が万が一にでもコア保持部41から抜け出ようと動いたとしても、環状コア10が連結部23で係止されるので、コア保持部41による環状コア10の保持状態を維持することができる。
本実施形態のハウジング30においては、第1側壁体32と第2側壁体33と第1嵌合体38と第2嵌合体39とで矩形の開口が形成される。このハウジング30は、その開口を塞ぐ蓋体が取り付けられるものであってもよい。この例示のハウジング30は、そのような蓋体が取り付けられるものではない。但し、この例示のハウジング30は、第1シールドシェル61及び第2シールドシェル62に囲われることによって、その開口が塞がれる(図1及び図2)。
第1シールドシェル61と第2シールドシェル62は、互いに組み付けられることによって、内方に空間部を形成する。ハウジング30は、その空間部に収容される。第1シールドシェル61と第2シールドシェル62は、ハウジング30の収容室30aへのノイズの侵入を抑制させるべく設けられた部品であり、金属等の導電性材料で成形されている。
以上示したサージ低減装置1において、保持構造40は、低減対象となるサージ電流の周波数帯域に応じて、それぞれのコア保持部41の内の少なくとも1つに環状コア10を保持させることができる。例えば、このサージ低減装置1は、低減対象となるサージ電流の周波数帯域が1つの場合、その周波数帯域に適応させた第1環状コア10Aを3つのコア保持部41の内の何れか1つに嵌入させ且つ保持させることによって、そのサージ電流の低減を図ることができる(図10)。また、このサージ低減装置1は、例えば、低減対象となるサージ電流の周波数帯域が低周波と中周波と高周波の3つの場合、その3つの周波数帯域に適応させた第1から第3の環状コア10A,10B,10Cをコア保持部41に1つずつ嵌入させ且つ保持させることによって、そのそれぞれの周波数帯域のサージ電流の低減を図ることができる(図1、図2及び図9)。このように、本実施形態のサージ低減装置1は、環状コア10を1つ又は複数搭載することができるので、1つの周波数帯域のサージ電流だけでなく、複数の周波数帯域のサージ電流についても低減させることができる。
更に、このサージ低減装置1は、低減対象となるサージ電流の周波数帯域が1つの場合、例えば、その周波数帯域に適応させた第1環状コア10Aを3つのコア保持部41の内の2つ又は3つのコア保持部41の全部に嵌入させ且つ保持させることによっても、そのサージ電流の低減を図ることができる(図11)。そして、この場合には、第1環状コア10Aを1つしか備えない場合と比較して、そのサージ電流の低減効果を向上させることができる。
本実施形態のサージ低減装置1は、これらの環状コア10の数量や対応周波数帯域を変更するに際して、その仕様違いの形態の間で電気接続部品20やハウジング30を流用することができる。よって、このサージ低減装置1は、電気接続部品20やハウジング30の共用化を図りつつ、低減対象となるサージ電流の周波数帯域に応じて、1つ又は複数の周波数帯域のサージ電流を低減させることができる。また、このサージ低減装置1は、その電気接続部品20やハウジング30の共用化に伴い、部品管理が容易になり、延いては原価の低減を図ることができる。
また更に、このサージ低減装置1は、第1分割導電体We1や第2分割導電体We2を環状コア10の挿通孔10aに挿通させるだけで、従来のように環状コアに電線を巻回させる必要がない。よって、本実施形態のサージ低減装置1は、そのような電線の巻回作業を省略させることができるので、組付け作業性の向上が可能になる。
ここで、環状コアを成すフェライトは、磁性を持つセラミックスであり、脆性が大きいので衝撃に弱い。このため、一般に、サージ低減装置においては、ポッティング剤を注入して、環状コアとハウジングとの間のがたつきを抑える。しかしながら、このサージ低減装置1においては、第1から第4の壁部41a-41dでハウジング30に対する環状コア10の位置決めと保持を行うことができるので、ポッティング剤の注入が不要になる。また、このサージ低減装置1においては、先に示したように、電気接続部品20の連結部23もコア保持部41による環状コア10の保持を担っているので、この点からもポッティング剤の注入が不要になる。よって、このサージ低減装置1は、ポッティング剤を注入せずとも、環状コア10とハウジング30との間のがたつきを抑えることができる。また、このサージ低減装置1は、ポッティング剤で固められていないので、それぞれの構成部品間の分解作業を容易に実施でき、メンテナンス性に優れたものとなる。
本実施形態のワイヤハーネスWHは、そのサージ低減装置1と少なくとも1組の一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを備えるものであり、そのサージ低減装置1が得られる効果を奏することができる。
[変形例1]
図12の符号2は、本変形例のサージ低減装置を示す。本変形例では、そのサージ低減装置2と少なくとも1組の一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを備えるものがワイヤハーネスWHとなる。
本変形例のサージ低減装置2は、前述した実施形態のサージ低減装置1において、保持構造40を下記の保持構造140に変更したものである(図12)。そして、本変形例のサージ低減装置2は、実施形態のサージ低減装置1において、その保持構造140への変更に伴い、環状コア10とハウジング30を各々下記の環状コア110とハウジング130に置き換えたものである(図12)。そこで、以下の説明においては、実施形態のサージ低減装置1と同じ部品や同等の機能を為す部位等について、便宜上、そのサージ低減装置1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
本変形例の環状コア110は、実施形態の環状コア10と同じように、磁性体コア11のみを備えるものであってもよく、その磁性体コア11と収容体12とを備えるものであってもよい。この環状コア110は、後述する保持構造140に関わる部位を除き、実施形態の環状コア10と同等の形状に形成されている。よって、この環状コア110は、一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを複数組挿通可能な挿通孔110aを有している(図13)。また、この環状コア110の外周面は、互いに間隔を空けて配置された半弧状の第1弧状壁面110b及び第2弧状壁面110cと、その第1弧状壁面110b及び第2弧状壁面110cを長手方向で繋ぐ第1連結壁面110d及び第2連結壁面110eと、を有している(図13)。尚、その第1連結壁面110d及び第2連結壁面110eは、孔軸方向に平行な平面状に形成されている。
本変形例のハウジング130は、実施形態のハウジング30と同じように、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。このハウジング130は、後述する保持構造140に関わる部位を除き、実施形態のハウジング30と同等の形状に形成されている。よって、このハウジング130は、実施形態のハウジング30と同じように、複数の環状コア110の外周面の一部(第1連結壁面110d)が各々載せ置かれる載置壁体131と、その矩形で且つ平板状の載置壁体131の4つの辺部から各々立設させた第1から第4の側壁体132-135と、を有している(図14及び図15)。そして、このハウジング130には、実施形態のハウジング30と同じように、第1側壁体132及び第2側壁体133と第3側壁体134との間の突出量の差でできた空間部を埋める第1嵌合体38と、第1側壁体132及び第2側壁体133と第4側壁体135との間の突出量の差でできた空間部を埋める第2嵌合体39と、が取り付けられる。よって、このハウジング130においては、収容室130a(図17)内の第1分割導電体We1を第1嵌合体38の引出口38aと相俟って外方に引き出させるための第1分割導電体We1毎の引出口134aが第3側壁体134に形成され、かつ、収容室130a内の第2分割導電体We2を第2嵌合体39の引出口39aと相俟って外方に引き出させるための第2分割導電体We2毎の引出口135aが第4側壁体135に形成されている(図14及び図15)。このハウジング130においては、載置壁体131と第1から第4の側壁体132-135と第1嵌合体38と第2嵌合体39とで囲まれた空間が収容室130aとして利用される。
本変形例の保持構造140は、実施形態の保持構造40と同じように、複数の環状コア110をハウジング130に保持させることが可能であり、その環状コア110をハウジング130に保持させる環状コア110毎のコア保持部141を載置壁体131に備える(図12、図14及び図15)。この保持構造140は、実施形態の保持構造40と同じように、設置対象として選ばれた1つ又は複数の環状コア110をハウジング130に保持させることが可能なものであって、最大で3つの環状コア110をハウジング130に保持させることができるものとして構成している。よって、この例示の保持構造140は、3つのコア保持部141を備えている(図12)。ここでは、3つの環状コア110(例えば、3つのサージ電流の周波数帯域に各々適応させた第1から第3の環状コア110A,110B,110C)が保持されている場合について例示している。
具体的に、本変形例のコア保持部141は、実施形態の保持構造40と同じ第1から第4の壁部41a-41d(ここでは、第1から第4の仕切り壁136A-136Dと第1側壁体132と第2側壁体133)の他に、環状コア110に設けた被係合部113(図13)に係合させることで環状コア110を保持する係合部141aを備える(図14から図17)。このコア保持部141においては、その対となる被係合部113と係合部141aの組み合わせを少なくとも1組設ける。ここでは、1つのコア保持部141が、その一対の被係合部113と係合部141aの組み合わせを4組備えている。
その被係合部113と係合部141aは、その内の一方が突起部として形成され、その内の他方が突起部を嵌入接続させる貫通孔部又は溝部として形成される。この例示では、被係合部113を突起部として形成し(図13)、係合部141aを貫通孔部として形成している(図14から図17)。
この例示の被係合部113は、環状コア110の第1連結壁面110dから4つ突出させている(図13)。ここでは、矩形の第1連結壁面110dにおける4つの隅部に被係合部113を1つずつ設けている。この被係合部113は、第1連結壁面110dから突出させた矩形の平板状の片部113aと、その片部113aにおける突出方向側の端部から片部313aの平面に対する直交方向に突出させた係止部113bと、を有する。係止部113bは、その直交方向の内の一方向にのみ片部313aの平面よりも突出させている。係合部141aは、載置壁体131に形成された貫通孔であり、被係合部113の係止部113bを挿通させた上で、この係止部113bを載置壁体131の外壁面に係止させる(図17)。
このように、本変形例のサージ低減装置2において、保持構造140は、実施形態の保持構造40と同じように、それぞれのコア保持部141の内の少なくとも1つに環状コア110を保持させることができる。よって、本変形例のサージ低減装置2及びワイヤハーネスWHは、実施形態のサージ低減装置1及びワイヤハーネスWHと同様の効果を得ることができる。
更に、本変形例のサージ低減装置2及びワイヤハーネスWHは、第1から第4の壁部41a-41dでハウジング130に対する環状コア110の位置決めと保持を行うことができるだけでなく、被係合部113と係合部141aとで環状コア110をハウジング130に保持させる。よって、このサージ低減装置2及びワイヤハーネスWHは、環状コア110をハウジング130に対して効果的に保持し続けることができる。
[変形例2]
図18の符号3は、本変形例のサージ低減装置を示す。本変形例では、そのサージ低減装置3と少なくとも1組の一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを備えるものがワイヤハーネスWHとなる。
本変形例のサージ低減装置3は、前述した変形例1のサージ低減装置2において、保持構造140を下記の保持構造240に変更したものである(図18から図21)。そして、本変形例のサージ低減装置3は、変形例1のサージ低減装置2において、その保持構造240への変更に伴い、ハウジング130を下記のハウジング230に置き換えたものである(図18から図21)。本変形例の保持構造240は、変形例1と同じ環状コア110をハウジング230に保持させるものであってもよく、その環状コア110とは別形状のものをハウジング230に保持させるものであってもよい。この例示では、変形例1と同じ環状コア110をハウジング230に保持させるものとして保持構造240を構成している。そこで、以下の説明においては、変形例1のサージ低減装置2と同じ部品や同等の機能を為す部位等について、便宜上、そのサージ低減装置2と同じ符号を付し、その説明を省略する。
本変形例のハウジング230は、変形例1のハウジング130と同じように、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。このハウジング230は、後述する保持構造240に関わる部位を除き、変形例1のハウジング130と同等の形状に形成されている。よって、このハウジング230は、変形例1のハウジング130と同じように、複数の環状コア110の外周面の一部(第1連結壁面110d)が各々載せ置かれる載置壁体231と、その矩形で且つ平板状の載置壁体231の4つの辺部から各々立設させた第1から第4の側壁体232-235と、を有している(図19及び図20)。そして、このハウジング230には、変形例1のハウジング130と同じように、第1側壁体232及び第2側壁体233と第3側壁体234との間の突出量の差でできた空間部を埋める第1嵌合体38と、第1側壁体232及び第2側壁体233と第4側壁体235との間の突出量の差でできた空間部を埋める第2嵌合体39と、が取り付けられる。よって、このハウジング230においては、収容室230a(図21)内の第1分割導電体We1を第1嵌合体38の引出口38aと相俟って外方に引き出させるための第1分割導電体We1毎の引出口234aが第3側壁体234に形成され、かつ、収容室230a内の第2分割導電体We2を第2嵌合体39の引出口39aと相俟って外方に引き出させるための第2分割導電体We2毎の引出口235aが第4側壁体235に形成されている(図19及び図20)。このハウジング230においては、載置壁体231と第1から第4の側壁体232-235と第1嵌合体38と第2嵌合体39とで囲まれた空間が収容室230aとして利用される。
本変形例の保持構造240は、変形例1の保持構造140と同じように、複数の環状コア110をハウジング230に保持させることが可能であり、その環状コア110をハウジング230に保持させる環状コア110毎のコア保持部241を載置壁体231に備える(図18から図21)。この保持構造240は、変形例1の保持構造140と同じように、設置対象として選ばれた1つ又は複数の環状コア110をハウジング230に保持させることが可能なものであって、最大で3つの環状コア110をハウジング230に保持させることができるものとして構成している。よって、この例示の保持構造240は、3つのコア保持部241を備えている。ここでは、3つの環状コア110(第1から第3の環状コア110A,110B,110C)が保持されている場合について例示している。
具体的に、本変形例のコア保持部241は、環状コア110に設けた被係合部113に係合させることで環状コア110を保持する係合部241aを備える(図19から図21)。このコア保持部241においては、その対となる被係合部113と係合部241aの組み合わせを少なくとも1組設ける。ここでは、1つのコア保持部241が、その一対の被係合部113と係合部241aの組み合わせを4組備えている。
その被係合部113と係合部241aは、その内の一方が突起部として形成され、その内の他方が突起部を嵌入接続させる貫通孔部又は溝部として形成される。この例示では、突起部として形成された被係合部113に合わせて、変形例1の係合部141aと同じように、係合部241aを貫通孔部として形成している(図19から図21)。
このように、本変形例のコア保持部241は、変形例1のコア保持部141において、第1から第4の壁部41a-41dを取り除いたものに相当する。但し、この例示のハウジング230には、変形例1の第1仕切り壁136Aと第4仕切り壁136Dに相当する第1仕切り壁236Aと第2仕切り壁236Dが設けられている。よって、第1仕切り壁236Aは、変形例1の第1仕切り壁136Aと同じように、第1環状コア110Aの孔軸方向における一端を孔軸方向で係止させる第1壁部41aとして利用してもよい。また、第2仕切り壁236Dは、変形例1の第4仕切り壁136Dと同じように、第3環状コア110Cの孔軸方向における他端を孔軸方向で係止させる第2壁部41bとして利用してもよい。更に、この例示のハウジング230においては、第1側壁体232を複数の環状コア110に対応させたそれぞれの第3壁部41cとして利用してもよく第2側壁体233を複数の環状コア110に対応させたそれぞれの第4壁部41dとして利用してもよい。
ここで、本変形例のハウジング230は、変形例1のハウジング130に設けた第2仕切り壁136Bと第3仕切り壁136Cとを備えていない。そして、載置壁体231の内壁面においては、それぞれの環状コア110の第1連結壁面110dの載置される部分(つまり、それぞれのコア保持部241における4つの係合部241aを設ける部分)が1つの平面を成すものとして形成されている。本変形例の保持構造240においては、そのような第2仕切り壁136Bと第3仕切り壁136Cとを備えておらずとも、変形例1の保持構造140と同じように、それぞれのコア保持部241の内の少なくとも1つに環状コア110を保持させることができる。図18及び図21は、それぞれのコア保持部241に環状コア110が1つずつ保持されている状態を例示したものである。よって、本変形例のサージ低減装置3及びワイヤハーネスWHは、変形例1のサージ低減装置2及びワイヤハーネスWHと同様の効果を得ることができる。
一方、本変形例の保持構造240においては、載置壁体231の内壁面におけるそれぞれの環状コア110の第1連結壁面110dの載置される部分が1つの平面を成しているので、環状コア110よりも孔軸方向で体格の大きい環状コア210を保持させることもできる(図22及び図23)。その環状コア210は、例えば、全てのコア保持部241に跨がって保持される大きさのものである。この環状コア210には、例えば、全てのコア保持部241の内の或る1つにおける少なくとも1つの係合部241aに係合させる被係合部213と、これとは別のコア保持部241における少なくとも1つの係合部241aに係合させる被係合部213と、を設ける(図23)。その被係合部213は、先の被係合部113と同形状のものであり、載置壁体231の外壁面に係止させる係止部213bを有している。この例示では、全てのコア保持部241の内の両端のものにおける少なくとも1つの係合部241aに被係合部213を係合させる。ここでは、全てのコア保持部241の内の配列方向における一端側のものの2つの係合部241aと、その内の配列方向における他端側のものの2つの係合部241aと、に被係合部213を1つずつ係合させる。
また、その環状コア210は、図示しないが、隣り合う2つのコア保持部241に跨がって保持される大きさのものであってもよい。この場合の環状コア210には、隣り合う2つのコア保持部241の内の一方における少なくとも1つの係合部241aに係合させる被係合部213と、その内の他方における少なくとも1つの係合部241aに係合させる被係合部213と、を設ければよい。
このように、本変形例の保持構造240は、載置壁体231の内壁面におけるそれぞれの環状コア110の第1連結壁面110dの載置される部分が1つの平面を成している。よって、本変形例のサージ低減装置3及びワイヤハーネスWHは、低減対象となるサージ電流に応じて、体格の異なる環状コア110,210を使い分けることができる。そして、本変形例のサージ低減装置3及びワイヤハーネスWHは、環状コア110の数量や対応周波数帯域を変更するに際して、その仕様違いの形態の間で電気接続部品20やハウジング230を流用することができるだけでなく、体格の異なる環状コア110,210を使い分けるに際しても、その仕様違いの形態の間で電気接続部品20やハウジング230を流用することができる。
[変形例3]
図24の符号4は、本変形例のサージ低減装置を示す。本変形例では、そのサージ低減装置4と少なくとも1組の一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを備えるものがワイヤハーネスWHとなる。
本変形例のサージ低減装置4は、前述した変形例1のサージ低減装置2において、保持構造140を下記の保持構造340に変更したものである(図24)。そして、本変形例のサージ低減装置4は、変形例1のサージ低減装置2において、その保持構造340への変更に伴い、環状コア110とハウジング130を各々下記の環状コア310とハウジング330に置き換えたものである(図24)。そこで、以下の説明においては、変形例1のサージ低減装置2と同じ部品や同等の機能を為す部位等について、便宜上、そのサージ低減装置2と同じ符号を付し、その説明を省略する。
本変形例の環状コア310は、実施形態の環状コア10と同等のものとして形成された環状コア部材311を備える(図24及び図25)。よって、その環状コア部材311は、実施形態の環状コア10と同じように、磁性体コア11のみを備えるもの又は磁性体コア11と収容体12とを備えるものとして構成されている。また、この環状コア部材311は、実施形態の環状コア10と同じように、一対の第1分割導電体We1及び第2分割導電体We2の組み合わせを複数組挿通可能な挿通孔311aと、互いに間隔を空けて配置された半弧状の第1弧状壁面311b及び第2弧状壁面311cと、その第1弧状壁面311b及び第2弧状壁面311cを長手方向で繋ぐ第1連結壁面311d及び第2連結壁面311eと、を有している(図25)。尚、その第1連結壁面311d及び第2連結壁面311eは、孔軸方向に平行な平面状に形成されている。
更に、本変形例の環状コア310は、環状コア部材311を収容し且つ保持すると共に、ハウジング330に保持させる絶縁性の収容部材312を備える(図24及び図25)。その収容部材312は、環状コア部材311とハウジング330との間に介在させ且つ環状コア部材311及びハウジング330よりも柔軟性を持たせた部材である。この収容部材312は、環状コア部材311及びハウジング330よりも柔軟性を持たせると共に、絶縁性を持たせるべく、弾性を有し且つ絶縁性を有する高分子材料(例えば、天然ゴムや合成ゴム等のゴム材料)を用いて成形される。ここで示す収容部材312は、環状コア部材311の外周面を同じ孔軸上で覆う環状に成形されている。この収容部材312は、環状コア部材311とは別に成形された別部材で、その環状コア部材311を内方の貫通孔312aに嵌入固定させるものであってもよく、その環状コア部材311の外周面に対してインサート成形されたものであってもよい。この収容部材312の外周面は、互いに間隔を空けて配置された半弧状の第1弧状壁面312b及び第2弧状壁面312cと、その第1弧状壁面312b及び第2弧状壁面312cを長手方向で繋ぐ第1連結壁面312d及び第2連結壁面312eと、を有している(図25)。その第1連結壁面312d及び第2連結壁面312eは、孔軸方向に平行な平面状に形成されている。本変形例の環状コア310においては、後述するように、この収容部材312に保持構造340に関わる部位を設けている。
本変形例のハウジング330は、変形例1のハウジング130と同じように、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。このハウジング330は、後述する保持構造340に関わる部位を除き、変形例1のハウジング130と同等の形状に形成されている。よって、このハウジング330は、変形例1のハウジング130と同じように、複数の環状コア310の外周面の一部(第1連結壁面312d)が各々載せ置かれる載置壁体331と、その矩形で且つ平板状の載置壁体331の4つの辺部から各々立設させた第1から第4の側壁体332-335と、を有している(図26及び図27)。そして、このハウジング330には、変形例1のハウジング130と同じように、第1側壁体332及び第2側壁体333と第3側壁体334との間の突出量の差でできた空間部を埋める第1嵌合体38と、第1側壁体332及び第2側壁体333と第4側壁体335との間の突出量の差でできた空間部を埋める第2嵌合体39と、が取り付けられる。よって、このハウジング330においては、収容室330a(図29)内の第1分割導電体We1を第1嵌合体38の引出口38aと相俟って外方に引き出させるための第1分割導電体We1毎の引出口334aが第3側壁体334に形成され、かつ、収容室330a内の第2分割導電体We2を第2嵌合体39の引出口39aと相俟って外方に引き出させるための第2分割導電体We2毎の引出口335aが第4側壁体335に形成されている(図26及び図27)。このハウジング330においては、載置壁体331と第1から第4の側壁体332-335と第1嵌合体38と第2嵌合体39とで囲まれた空間が収容室330aとして利用される。
本変形例の保持構造340は、変形例1の保持構造140と同じように、複数の環状コア310をハウジング330に保持させることが可能であり、その環状コア310をハウジング330に保持させる環状コア310毎のコア保持部341を載置壁体331に備える(図24及び図26から図29)。この保持構造340は、変形例1の保持構造140と同じように、設置対象として選ばれた1つ又は複数の環状コア310をハウジング330に保持させることが可能なものであって、最大で3つの環状コア310をハウジング330に保持させることができるものとして構成している。よって、この例示の保持構造340は、3つのコア保持部341を備えている。ここでは、3つの環状コア310(例えば、3つのサージ電流の周波数帯域に各々適応させた第1から第3の環状コア310A,310B,310C)が保持されている場合について例示している。
具体的に、本変形例のコア保持部341は、変形例1の保持構造140と同じ第1から第4の壁部41a-41d(ここでは、第1から第4の仕切り壁336A-336Dと第1側壁体332と第2側壁体333)の他に、環状コア310に設けた被係合部313(図25)に係合させることで環状コア310を保持する係合部341aを備える(図26から図29)。
本変形例の第1壁部41aは、変形例と同じように環状コア310の孔軸方向における一端を孔軸方向で係止させる壁部であり、環状コア部材311と収容部材312における双方の孔軸方向の一端を係止させる。また、本変形例の第2壁部41bは、変形例と同じように環状コア310の孔軸方向における他端を孔軸方向で係止させる壁部であり、環状コア部材311と収容部材312における双方の孔軸方向の他端を係止させる。一方、本変形例の第3壁部41cは、環状コア310における収容部材312の第1弧状壁面312bを孔軸方向に対する直交方向の内の載置壁体331に沿う方向で係止させる。また、本変形例の第4壁部41dは、環状コア310における収容部材312の第2弧状壁面312cを孔軸方向に対する直交方向の内の載置壁体331に沿う方向で係止させる。
このコア保持部341においては、対となる被係合部313と係合部341aの組み合わせを少なくとも1組設ける。ここでは、1つのコア保持部341が、その一対の被係合部313と係合部341aの組み合わせを1組備えている。
その被係合部313と係合部341aは、その内の一方が突起部として形成され、その内の他方が突起部を嵌入接続させる貫通孔部又は溝部として形成される。この例示では、被係合部313を突起部として形成し(図25及び図29)、係合部341aを貫通孔部として形成している(図26、図27及び図29)。
この例示の被係合部313は、環状コア310における収容部材312の第1連結壁面312dの中央部分から突出させている(図25)。この被係合部313は、第1連結壁面312dから突出させた矩形の平板状の片部313aと、その片部313aにおける突出方向側の端部から片部313aの平面に対する直交方向に突出させた係止部313bと、を有する。係止部113bは、その直交方向における双方に向けて片部313aの平面よりも突出させている。係合部341aは、載置壁体331に形成された貫通孔であり、被係合部313の係止部313bを挿通させた上で、この係止部313bを載置壁体331の外壁面に係止させる(図29)。この例示では、載置壁体331の外壁面に対して係合部341a毎の凹部331aが形成されており、その凹部331aの中に被係合部313が収まり、かつ、その被係合部313が凹部331aの底面に係止されるように構成している(図28及び図29)。
ここで、本変形例の電気接続部品20の連結部23は、電気接続部品20がハウジング330に固定されているときに、載置壁体331との間で環状コア310を挟持させるものとして形成する。
以上示したように、本変形例のサージ低減装置4において、保持構造340は、変形例1の保持構造140と同じように、それぞれのコア保持部341の内の少なくとも1つに環状コア310を保持させることができる。よって、本変形例のサージ低減装置4及びワイヤハーネスWHは、変形例1のサージ低減装置2及びワイヤハーネスWHと同様の効果を得ることができる。
更に、本変形例のサージ低減装置4においては、環状コア部材311とハウジング330との間に環状コア部材311及びハウジング330よりも柔軟性を持たせた収容部材312を介在させ、その収容部材312を介して環状コア部材311をハウジング330に保持させる。よって、このサージ低減装置4においては、車両走行等に伴って振動等の外部入力が作用した際に、その収容部材312が緩衝部材として機能して外部入力を吸収するので、その外部入力の環状コア部材311への伝達を抑えることができる。例えば、このサージ低減装置4においては、ハウジング330に作用する外部入力が収容部材312で吸収されるので、その外部入力の環状コア部材311への伝達が抑制される。従って、本変形例のサージ低減装置4は、外部入力が作用しても、環状コア部材311に対して過荷重が加わり難くなっているので、環状コア部材311の保護が可能になり、この環状コア部材311の耐久性を向上させることができる。特に、この例示のサージ低減装置4においては、弾性を有するゴム材料等の高分子材料で収容部材312が成形されており、その収容部材312の緩衝部材としての機能を高めることができるので、環状コア部材311を適切に保護することができる。
また更に、本変形例のサージ低減装置4においては、電気接続部品20の連結部23とハウジング330の載置壁体331との間に、環状コア310を挟持させている。よって、このサージ低減装置4においては、外部入力が作用した際に、電気接続部品20やハウジング330に対する環状コア310のがたつきが抑えられる。また、このサージ低減装置4においては、収容部材312が環状コア部材311とは別部品の場合、外部入力が作用した際に、その収容部材312に対する環状コア部材311のがたつきが抑えられる。従って、本変形例のサージ低減装置4は、この点からも環状コア部材311の保護が可能になっており、かつ、これらの部品間での打音の発生を抑えることができる。特に、この例示のサージ低減装置4においては、収容部材312が柔軟性を有するものとして成形されているので、連結部23と載置壁体331との間で発生させる挟持力の設定を容易に行うことができ、環状コア部材311への過大な挟持力の印加を抑えることができる。これ故に、本変形例のサージ低減装置4は、環状コア部材311の保護機能を高めることができる。
ここで、本変形例の保持構造340は、前述した変形例2の保持構造240と同じように、ハウジング330から第1から第4の壁部41a-41dを取り除いてもよい。そして、そのハウジング330における載置壁体331の内壁面は、変形例2の載置壁体231の内壁面と同じように、それぞれの環状コア310の第1連結壁面312dの載置される部分(つまり、載置壁体331の内壁面におけるそれぞれのコア保持部341の係合部341aを設ける部分)が1つの平面を成すものとして形成されていてもよい。これにより、このサージ低減装置4及びワイヤハーネスWHは、変形例2のサージ低減装置3及びワイヤハーネスWHと同様の効果を得ることができる。