JP6414744B2 - 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置 - Google Patents

電気機械変換素子、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置 Download PDF

Info

Publication number
JP6414744B2
JP6414744B2 JP2014251811A JP2014251811A JP6414744B2 JP 6414744 B2 JP6414744 B2 JP 6414744B2 JP 2014251811 A JP2014251811 A JP 2014251811A JP 2014251811 A JP2014251811 A JP 2014251811A JP 6414744 B2 JP6414744 B2 JP 6414744B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
diffraction intensity
peak
plane
peaks
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014251811A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016115755A5 (ja
JP2016115755A (ja
Inventor
智 水上
智 水上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ricoh Co Ltd filed Critical Ricoh Co Ltd
Priority to JP2014251811A priority Critical patent/JP6414744B2/ja
Priority to US14/956,689 priority patent/US10112391B2/en
Publication of JP2016115755A publication Critical patent/JP2016115755A/ja
Publication of JP2016115755A5 publication Critical patent/JP2016115755A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6414744B2 publication Critical patent/JP6414744B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J2/00Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed
    • B41J2/005Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed characterised by bringing liquid or particles selectively into contact with a printing material
    • B41J2/01Ink jet
    • B41J2/135Nozzles
    • B41J2/14Structure thereof only for on-demand ink jet heads
    • B41J2/14201Structure of print heads with piezoelectric elements
    • B41J2/14233Structure of print heads with piezoelectric elements of film type, deformed by bending and disposed on a diaphragm
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10NELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10N30/00Piezoelectric or electrostrictive devices
    • H10N30/1051Piezoelectric or electrostrictive devices based on piezoelectric or electrostrictive films or coatings
    • H10N30/10513Piezoelectric or electrostrictive devices based on piezoelectric or electrostrictive films or coatings characterised by the underlying bases, e.g. substrates
    • H10N30/10516Intermediate layers, e.g. barrier, adhesion or growth control buffer layers
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10NELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10N30/00Piezoelectric or electrostrictive devices
    • H10N30/20Piezoelectric or electrostrictive devices with electrical input and mechanical output, e.g. functioning as actuators or vibrators
    • H10N30/204Piezoelectric or electrostrictive devices with electrical input and mechanical output, e.g. functioning as actuators or vibrators using bending displacement, e.g. unimorph, bimorph or multimorph cantilever or membrane benders
    • H10N30/2047Membrane type
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10NELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10N30/00Piezoelectric or electrostrictive devices
    • H10N30/80Constructional details
    • H10N30/85Piezoelectric or electrostrictive active materials
    • H10N30/853Ceramic compositions
    • H10N30/8548Lead based oxides
    • H10N30/8554Lead zirconium titanate based
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J2202/00Embodiments of or processes related to ink-jet or thermal heads
    • B41J2202/01Embodiments of or processes related to ink-jet heads
    • B41J2202/03Specific materials used
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10NELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10N30/00Piezoelectric or electrostrictive devices
    • H10N30/01Manufacture or treatment
    • H10N30/07Forming of piezoelectric or electrostrictive parts or bodies on an electrical element or another base
    • H10N30/074Forming of piezoelectric or electrostrictive parts or bodies on an electrical element or another base by depositing piezoelectric or electrostrictive layers, e.g. aerosol or screen printing
    • H10N30/077Forming of piezoelectric or electrostrictive parts or bodies on an electrical element or another base by depositing piezoelectric or electrostrictive layers, e.g. aerosol or screen printing by liquid phase deposition
    • H10N30/078Forming of piezoelectric or electrostrictive parts or bodies on an electrical element or another base by depositing piezoelectric or electrostrictive layers, e.g. aerosol or screen printing by liquid phase deposition by sol-gel deposition

Description

本発明は、電気機械変換素子、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置に関するものである。
従来、画像形成用の液体であるインクの液滴を吐出するノズル、このノズルに連通する液室、液室内の液体に圧力を発生させる圧力発生手段などを備えた液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置が知られている。上記圧力発生手段として、液室の壁面の一部を構成する振動板上に、圧電体からなる電気機械変換膜を有するピエゾ方式の電気機械変換素子を設けたものが知られている。
特許文献1には、係る電気機械変換素子として、下部電極、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)などのペロブスカイト結晶構造を有する電気機械変換膜、上部電極などを積層させた構成のものが記載されている。また、上記ペロブスカイト結晶構造を有する電気機械変換膜において、(100)面の結晶配向性を高く(結晶配向率80[%]以上)して自発分極軸方向を揃え、その方向に電界を形成させることで上記電気機械変換素子の圧電効果による歪変位を大きくできることが記載されている。
しかしながら、特許文献1のようにしても、上記電気機械変換素子として十分に機能し得る歪変位が得られない場合のあることが分かった。
上述した課題を解決するために、本発明は、基板又は下地膜上に直接又は間接的に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された{100}面に優先配向されたペロブスカイト結晶構造を有する圧電体からなる電気機械変換膜と、前記電気機械変換膜上に形成された上部電極とを備える電気機械変換素子において、前記電気機械変換膜が、X線回折のθ−2θ法による測定で得られた回折強度のピークのうち{200}面に対応する回折強度のピークにおいて回折強度が最大となる位置(2θ)で、あおり角(χ)を振った測定により得られる回折強度のピークがピーク分離により3つのピークに分離することができ、前記3つのピークのそれぞれにおいて回折強度が最大となる位置での回折強度をそれぞれpeak1、peak2、peak3とし、前記3つのピークの半値幅をそれぞれσ1、σ2、σ3としたときに、peak1、peak2、peak3をそれぞれσ1、σ2、σ3の重みとしたσ1、σ2、σ3の加重平均FWHMstd(χ)(=(σ1×peak1+σ2×peak2+σ3×peak3)/(peak1+peak2+peak3))が12°以下であることを特徴とするものである。
本発明によれば、ペロブスカイト型結晶構造を有する電気機械変換膜により十分な歪変位を得ることができる。
本実施形態に係る液滴吐出ヘッドの概略構成の一例を示す断面図。 {100}面に優先配向させたPZT膜における、X線回折のθ-2θ法による測定で得られた{200}面における回折強度のピークの一例を示すグラフ。 {100}面に優先配向させたPZT膜において、X線回折のθ-2θ法による測定で得られた回折強度のピークの形状の非対称性の度合いについて説明するグラフ。 90[°]ドメイン回転についての説明図。 {100}面に優先配向させたPZT膜のうち、あおり角を振った測定をして得られた回折強度のピークがピーク分離によって3つのピークに分離できるものの一例を示すグラフ。 {100}面に優先配向させたPZT膜のうち、あおり角を振った測定をして得られた回折強度のピークの半値幅について説明するグラフ。 {100}面に優先配向させたPZT膜において、X線回折のθ-2θ法による測定で(200)面のピークにおける回折強度が最大となる位置において、ロッキングカーブ法による測定をして得られたピークがピーク分離によって3つのピークに分離できるものの一例を示すグラフ。 分極処理装置の概略構成の一例を示す斜視図。 P−Eヒステリシス曲線を示すグラフ。 分極処理の原理の説明図。 同液体吐出ヘッドを複数個配置した構成例を示す断面図。 同液滴吐出ヘッドを用いたインクジェット記録装置の一例を示す斜視図。 同インクジェット記録装置の機構部を側面から見た説明図。
以下、本発明を画像形成装置(液滴吐出装置)としてのインクジェット記録装置に使用される液滴吐出ヘッドの一構成要素である電気機械変換素子に適用した実施形態を説明する。
なお、以下の説明において、{hkl}面は、圧電体の結晶における自発分極の方向は考慮しない対称性から(hkl)面及びその(hkl)面に等価な複数の結晶面を代表するものとして表している。また、{hkl}面は、(hkl)面及びその(hkl)面に等価な複数の結晶面のいずれか一つの結晶面であってもよいし、(hkl)面及びその(hkl)面に等価な複数の結晶面から選択された複数の結晶面であってもよい。例えば、上記ペロブスカイト結晶構造を有する電気機械変換膜において、{100}面は、(100)面とその(100)面に等価な他の5つの結晶面とを含む複数の結晶面のいずれか一つ又は複数を表している。また、本明細書において、回折強度のピークとは、X線回折の測定によって得られた回折強度曲線の凸部を指し、回折強度の最大値を指すものではない。
インクジェット記録装置は、騒音が極めて小さくかつ高速印字が可能であり、更には画像形成用の液体であるインクの自由度があり、安価な普通紙を使用できるなど多くの利点がある。そのために、インクジェット記録装置は、プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像形成装置として広く展開されている。
インクジェット記録装置において使用する液滴吐出ヘッドは、画像形成用の液滴(インク滴)を吐出するノズルと、ノズルに連通する加圧液室と、加圧液室内のインクを吐出するための圧力を発生する圧力発生手段とを備えている。本実施形態における圧力発生手段は、加圧液室の壁面の一部を構成する振動板と、その振動板を変形させる圧電体からなる薄膜の電気機械変換膜を有する電気機械変換素子と、を備えたピエゾ方式の圧力発生手段である。この電気機械変換素子は、所定の電圧が印加されることにより自らが変形し、加圧液室に対して振動板の表面を変位させることで加圧液室内の液体に圧力を発生させる。この圧力により、加圧液室に連通したノズルから液滴(インク滴)を吐出させることができる。
上記電気機械変換膜を構成する圧電体は、電圧の印加によって変形する圧電特性を有する材料である。この圧電体として、本実施形態では、ペロブスカイト結晶構造を有する三元系金属酸化物であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti1−x)O)を用いている。このPZTからなる電気機械変換膜(以下「PZT膜」という。)を有する電気機械変換素子に駆動電圧を印加したときの振動モードとしては、前述のように複数種類の振動モードがある。例えば、圧電定数d33による膜厚方向の変形を伴う縦振動モード(プッシュモード)や、圧電定数d31によるたわみ変形を伴う横振動モード(ベンドモード)がある。更には、膜の剪断変形を利用したシェアモード等もある。
上記PZT膜を有する電気機械変換素子は、後述のように、半導体プロセスやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の技術を利用し、Si基板に加圧液室及び電気機械変換素子を直接作り込むことができる。これにより、電気機械変換素子を、加圧液室内に圧力を発生させる薄膜の圧電アクチュエータとして形成することができる。
次に、本発明の一実施形態に係る電気機械変換素子としての圧電アクチュエータ400を備えた液滴吐出ヘッドの構造の一例を説明する。
図1は本実施形態に係る液滴吐出ヘッドの概略構成の一例を示す断面図である。本実施形態の液滴吐出ヘッドは、基板401、振動板402、ノズル板403、加圧液室(圧力室)404、下部電極としての第1電極405、電気機械変換膜としてのPZT膜406、上部電極としての第2電極407などを備える。加圧液室404は、基板401に形成された隔壁部401aと、振動板402と、ノズル板403とで囲まれるように形成され、ノズル板403のノズル403aに連通している。
基板401の材料としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100[μm]以上600[μm]以下の範囲の厚みを持つことが好ましい。基板401の表面としては、{100}面、{110}面、{111}面と3種あるが、半導体産業では一般的に{100}面、{111}面が広く使用されており、本実施形態においては、表面が主に{100}面である単結晶基板を主に使用した。
図1に示すような加圧液室404を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していくが、この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは、結晶構造の複数種類の面に対してエッチング速度が互いに異なる性質を利用したものである。例えばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、{100}面に比べて{111}面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、{100}面では約54[°]の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、{110}面では深い溝をほることができるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができることが分かっている。本実施形態では、表面が{110}面である単結晶基板を使用することも可能である。但し、この場合、マスク材であるSiOもエッチングされてしまうということが挙げられるため、この点も留意して利用している。
振動板402は、PZT膜406によって発生した力を受けて変形して表面が変位することにより、加圧液室404の液体に圧力を発生させてノズル403aから液滴を吐出させるため、所定の強度を有したものであることが好ましい。振動板402の材料としては、Si、SiO、SiをCVD(Chemical Vapor Deposition)法により作製したものが挙げられる。
更に、振動板402の材料としては、第1電極405及びPZT膜406の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。特に、PZT膜406は一般的に材料としてPZTが使用される。そのため、振動板402は、線膨張係数8×10−6[1/K]に近い線膨張係数すなわち5×10−6[1/K]以上10×10−6[1/K]以下の線膨張係数を有した材料が好ましい。さらには、振動板402は、7×10−6[1/K]以上9×10−6[1/K]以下の線膨張係数を有した材料がより好ましい。
振動板402の具体的な材料は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等である。これらをスパッタ法もしくは、ゾルゲル法を用いてスピンコータにて作製することができる。膜厚としては0.1[μm]以上10[μm]以下が好ましく、0.5[μm]以上3[μm]以下がさらに好ましい。この範囲より小さいと加圧液室404の加工が難しくなり、この範囲より大きいと下地が変形変位しにくくなり、インク滴の吐出が不安定になる。
また、振動板402は引張応力あるいは圧縮応力を持つ複数の膜を減圧(LP:Low Pressure)CVDにより積層させることで構築されていることが望ましい。その理由は、次のとおりである。単層膜の振動板402の場合、材料として例えばSOIウェハが挙げられる。この場合、ウェハのコストが非常にかかり、また曲げ剛性を揃えようとしたときに任意の膜応力に設定できない。一方、積層の振動板402の場合、その積層構成を最適化することにより、振動板402の剛性と膜応力とを所望の値に設定する自由度を得ることができる。そのため、振動板402の全体の剛性と応力の制御とを、積層化と膜厚及び積層構成との組み合わせで実現できる。
従って、圧電アクチュエータ(圧電素子)を構成する電極層及び強誘電体層の材料及び膜厚に適時対応できる。そして、圧電アクチュエータ(圧電素子)の焼成温度による振動板402の剛性及び応力の変動が少なく安定した振動板402が得られることから、液滴吐出特性を高精度にでき、かつ安定した液滴吐出ヘッドを実現できる。
下部電極としての第1電極405は、金属材料の層である。金属材料としては従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金(Pt)が用いられているが、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、イリジウムや白金−ロジウムなどの白金族元素や、これら合金膜も挙げられる。白金(Pt)を使用する場合には、その下地(特にSiO)との密着性が悪いために、Ti、TiO、Ta、Ta、Ta等を先に積層することが好ましい。第1電極405の作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。第1電極405の膜厚としては、0.02[μm]以上0.1[μm]以下が好ましく、0.05[μm]以上0.1[μm]以下がさらに好ましい。また、PZT膜406の変形の経時的な疲労特性に対する懸念から、第1電極405とPZT膜406との間にルテニウム酸ストロンチウムなどの導電性酸化物からなる第1酸化物層408を積層することが好ましい。
第1酸化物層408は、その上に作製するPZT膜406の配向にも影響する。このため、PZT膜406の優先配向させたい面方位に応じて、第1酸化物層408の材料を適宜選択する必要がある。本実施形態においては、PZT膜406の{100}面に優先配向させたいため、第1酸化物層408の材料にはLaNiO、TiO、チタン酸鉛(PbTiO)などを選択する。第1酸化物層408の膜厚は、20[nm]以上80[nm]以下が好ましく、30[nm]以上50[nm]以下がさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄くなると初期変位や変位劣化において十分な特性が得られない。また、この範囲を超えると、その後で成膜するPZT膜406の絶縁耐圧が非常に悪くなりリークが起きやすくなる。
上部電極としての第2電極407も、上記第1電極405と同様に白金(Pt)などの金属材料を用い、白金の膜とPZT膜406との間に、密着性確保の目的で第2酸化物層409を設けてもよい。第2酸化物層409は、例えばルテニウム酸ストロンチウムなどの導電性酸化物を積層して構成される。
PZT膜406は、ペロブスカイト結晶構造を有する圧電体であり、ジルコン酸鉛(PbZrO)とPbTiOの固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrOとPbTiOの比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53Ti0.47)O、一般PZT(53/47)と示される。PZT以外の複合酸化物としてはチタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。
これら材料は一般式ABOで記述され、A=Pb、Ba、Sr、B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O、(Pb)(Zr,Ti,Nb1−x−y)O、これはAサイトのPbを一部Baで置換した場合およびBサイトのZr、Tiを一部Nbで置換した場合である。このような置換は、2価の元素であれば可能であり、PZTの変形特性(変位特性)の応用に向けた材料改質で行なわれる。その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。作製方法としては、スパッタ法もしくは、ゾルゲル法を用いてスピンコータにて作製することができる。この場合は、パターニング化が必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
PZT膜406をゾルゲル法により作製した場合、例えば出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ均一溶液を得ことで、PZT前駆体溶液が作製できる。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定化剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどを適量添加しても良い。下地基板の全面にPZT膜を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100[nm]以下の膜厚が得られるように前駆体濃度の調整が必要になる。
PZT膜406の膜厚としては、0.5[μm]以上5[μm]以下が好ましく、さらに好ましくは1[μm]以上2[μm]以下がよい。PZT膜406の膜厚が好適な範囲より小さいと、図1に示すような加圧液室404の加工が難しくなる。また、PZT膜406の膜厚が上記好適な範囲より大きいと、下地の振動板402が変形変位しにくくなり液滴の吐出が不安定になるほか、十分な変位を発生することができなくなる。また、PZT膜406の膜厚が上記好適な範囲より大きいと、何層も積層させていくため、工程数が多くなりプロセス時間が長くなる。
ABO型のペロブスカイト構造を採るPZTの結晶の単位格子の形は、Bサイトに入る原子であるTiとZrとの比率によって変化する。Tiの比率を大きくするとPZTの結晶格子は正方晶となり、Zrの比率を大きくするとPZTの結晶格子は菱面体晶となる。また、ZrとTiとの組成比率を調整すると、X線回折のθ-2θ法による測定で得られる回折強度のピークのうち、PZT膜406の{200}面に対応する回折強度のピークにおいて回折強度が最大となる位置(2θ)が変わってくる。
θ-2θ法は、X線回折としてよく用いられる測定法の1つである。θ-2θ法では、測定する試料基板面に対しθの角度でX線を入射させ、試料から反射してくるX線のうち、入射X線方向に対して2θの角度のX線を検出し、θを変化させたときの回折強度の変化を調べる。X線による回折では、ブラッグの条件(2dsinθ=nλ(λ:X線の波長、d:結晶面間隔、n:整数))を満足するときに回折強度が高くなるが、そのときの結晶面間隔(格子定数)と上記の2θとは対応関係にある。したがって、回折強度が高くなる2θの値に基づいて、X線が入射したサンプルの結晶構造を把握することができる。
図2は、X線回折のθ-2θ法による測定で得られる回折強度のピークのうち、PZT膜406の{200}面に対応する回折強度のピークの一例を示すグラフである。基板401の裏面をエッチング等により掘り加工する場合、堀加工した箇所に拘束物がない状態において、2θの範囲が44.45[°]以上44.75[°]以下になるようにすることが好ましい。PZT膜406において、{100}面に優先配向させる場合、2θをこの範囲内にするためには、Ti/(Zr+Ti)で表されるZrとTiとの組成比率を0.45以上0.55以下にすることが好ましい。また、ZrとTiとの組成比率を0.48以上0.52以下にすることがさらに好ましい。
ZrとTiとの組成比率が上記下限値(0.45)より小さくなると、後述するドメイン回転の効果が十分でなくなるため、電気機械変換素子の歪変位を十分確保できなくなる。また、ZrとTiとの組成比率が上記上限値(0.55)より大きくなると、圧電効果が十分でなくなるため、やはり電気機械変換素子の歪変位を十分確保できなくなる。
また、ZrとTiとの組成比率により、X線回折のθ-2θ法による測定で得られる回折強度のピークの形状において、非対称が大きくなったり小さくなったりする。図3は、{100}面に優先配向させたPZT膜において、X線回折のθ-2θ法による測定で得られた回折強度のピークの形状の非対称性の度合いについて説明するグラフである。
図3(a)は、回折強度のピークの形状(図中G)の非対称性が大きい場合の一例である。この場合、PZT膜の結晶構造は、正方晶のa軸ドメイン構造と、c軸ドメイン構造と、菱面体晶、斜方晶、擬似立方晶のいずれかの構造との3つに帰属する。図中Gに示す回折強度のピークは、図中Hに示す正方晶のa軸ドメイン構造のものと、図中Jに示す正方晶のc軸ドメイン構造のものと、図中Iに示す菱面体晶、斜方晶、擬似立方晶のいずれかの構造のものを合わせたものである。正方晶のa軸ドメイン構造の回折強度のピーク位置と、正方晶のc軸ドメイン構造の回折強度のピーク位置とが大きく離れているのは、a軸とc軸の長さの差が大きいためである。また、正方晶のa軸ドメイン構造の回折強度のピークの最大値に対し、正方晶のc軸ドメイン構造の回折強度のピークの最大値が小さくなっているのは、PZT膜の膜厚方向において正方晶のa軸ドメイン構造の割合が多いからである。
一方、図3(b)は、回折強度のピークの形状(図中K)の非対称性が小さい場合の一例である。この場合、PZT膜の結晶構造は、正方晶のaドメインと、c軸ドメイン構造との2つに帰属する。図中Gに示す回折強度のピークは、図中Kに示す正方晶のa軸ドメイン構造のものと、図中Lに示す正方晶のc軸ドメイン構造のものを合わせたものである。正方晶のa軸ドメイン構造の回折強度のピーク位置と、正方晶のc軸ドメイン構造の回折強度のピーク位置とが近くなっているのは、a軸とc軸の長さの差が小さいためである。また、正方晶のa軸ドメイン構造の回折強度のピークの最大値と正方晶のc軸ドメイン構造の回折強度のピークの最大値とがほぼ同じになっているのは、PZT膜の膜厚方向において正方晶のa軸ドメイン構造と正方晶のc軸ドメイン構造との比率がほぼ同じためである。
図4は、PZT膜の結晶構造の一例を模式的に表した図である。図中矢印は分極の向きを示している。図4(a)に示すように、実際の結晶は、方位の異なる分極を持つ領域からなる。図中において、図中の垂直方向に電界が形成されるとすると、分極方向が、図中の垂直方向である領域が正方晶のa軸ドメイン、水平方向である領域が正方晶のc軸ドメインである。なお、正方晶は、a軸とb軸の長さが等しくc軸のみ異なる。正方晶においては、a軸方向とb軸方向とは等価なので[100]方向および[010]方向とその逆方向の自発分極からなるドメインをa軸ドメインと呼び、[001]方向とその逆方向の自発分極からなるドメインをc軸ドメインと呼ぶ。
ドメインとドメインとの境界は、ドメイン壁と呼ばれる。このドメイン壁には、c軸ドメイン同士がドメイン壁によって隔てられた境界を有する180[°]ドメイン壁と、a軸ドメインとc軸ドメインとがドメイン壁によって隔てられた境界を有する90[°]ドメイン壁が存在する。図4(a)において、図中点線Sで示す領域は、180[°]ドメイン壁構造である。また、図中点線Rで示す領域は、90[°]ドメイン壁構造である。180[°]ドメイン壁構造の領域では、電圧を印加して電界を形成したときに、a軸ドメインの分極の向きが反転(180[°]ドメイン回転)する。
図4(b)は、図4(a)の図中点線Rで示す領域を拡大したものである。90[°]ドメイン壁構造の領域では、正方晶のc軸ドメインに対してa軸方向に電界を形成すると、c軸ドメインの分極方向がa軸方向に変化し、ドメイン方向が90°回転する(90[°]ドメイン回転)という現象が生じる。c軸ドメインが90°回転してa軸ドメインになるので、a軸ドメインとc軸ドメインとの境界であるドメイン壁が移動する。
c軸方向からa軸方向への90[°]ドメイン回転は、c軸ドメインがa軸ドメインに接している90[°]ドメイン壁構造の領域でないと起こらない。つまり、c軸ドメイン同士が接している領域に対し、a軸方向に電界を形成しても90[°]ドメイン回転は起こらない。これは、電圧を印加して電界を形成した時には、まず、a軸ドメインが圧電効果による歪を生じ、この歪が90[°]ドメイン壁を介して隣接するc軸ドメインに伝わることでc軸ドメインの分極方向が電界形成方向に回転するからである。
圧電効果による歪に比べて、90°ドメイン回転などの非180[°]ドメイン回転による歪は大きくなる。つまり、電気機械変換素子において非180[°]ドメイン回転を効率よく生じさせることができれば、電気機械変換素子の歪変位を向上させることができる。なお、本明細書において、単に「ドメイン回転の効果」という場合は、非180[°]ドメイン回転の効果のことを指す。
図3(a)に示すような回折強度のピークの形状の非対称性が大きいPZT膜を用いた場合には、図3(b)に示すような非対称性が小さいPZT膜を用いた場合と比べて、電気機械変換素子の歪変位が大きくなることが分かっている。これは、正方晶と菱面体晶との異なる結晶構造を混在させることで、非180[°]ドメイン壁の密度を高くし、非180[°]ドメイン回転を効率よく生じさせることができるためと考えられている。
θ-2θ法は、測定する膜の基板面上のある点での膜厚方向において、結晶面の間隔がどのように分布しているかを判断するために用いる。このため、上記基板面上のある点から基板面水平方向に微小に移動した点では、膜厚方向において結晶面の間隔がどのように分布しているか判断することはできない。これを判断するためには、さらにロッキングカーブ法による測定を行う必要がある。なお、ロッキングカーブ法は、X線の入射角度と検出器の角度(2θ)はθ-2θ法による測定で回折強度が最大となる位置に固定し、試料基板面と入射X線の角度(ω)のみをθ付近で微小に変化させて回折強度を測定するものである。
また、測定する膜の結晶成長方向は、膜の基板面に対し垂直になっているとは限らない。膜の結晶成長方向が膜の基板面に対し垂直ではない場合、結晶面は基板面に対して傾く。この傾きの程度を判断するためには、θ-2θ法による測定で回折強度が最大となる位置(2θ)において、さらにあおり角(χ)を振った測定を行う必要がある。なお、「あおり角」とは、電気機械変換膜に含まれる結晶の(lmn)(l、m、nは、0又は1)面が、(lmn)面と平行な面に対して傾きを有する際、(lmn)面と傾きを有する面との間でなす角度を指すものとする。
{100}面に優先配向させたPZT膜において、図3(a)に示すようにX線回折のθ-2θ法による測定で得られた回折強度のピークの形状の非対称性が大きくなったものについて、さらにあおり角を振った測定を行った。θ-2θ法による測定で得られた回折強度のピークのうち、{200}面に対応する回折強度のピークの回折強度が最大となる位置(2θ)で、あおり角を振った。図5は、このようなPZT膜のうち、あおり角を振った測定をして得られた回折強度のピークがピーク分離によって3つのピークに分離できるものの一例を示すグラフである。図中、あおり角(χ)を横軸に、測定面から反射されてくる回折X線の回折強度を縦軸にしている。
図5(a)に示す回折強度のピークでは、複数の結晶面に対応するピークが重なり合って1つのピークのようになっている。図5(a)に示す回折強度のピークは、ピーク分離によって、図5(b)に示す3つのピーク(図中のA,B,C)に分離することができる。
図中A、B、Cで示す各ピークにおいて、回折強度が最大となる位置での回折強度をそれぞれpeak1、peak2、peak3とする。図中A、B、Cで示す各ピークにおいて、回折強度が最大となるあおり角をそれぞれχ1、χ2、χ3とする。また、図中A、B、Cで示す各ピークにおける半値幅(半値幅(χ))をそれぞれσ1、σ2、σ3とする。ここで、半値幅(χ)とは、あおり角(χ)を振ったときに得られた回折強度のピークにおいて、回折強度が最大値の半分の値になるχの幅をいう。
半値幅(χ)は、電気機械変換素子の歪変位の大小を判断するための1つの指標となる。しかし、複数の結晶面に対応するピークが重なり合って1つのピークのようになったものをピーク分離せずに1つのピークとして扱ってしまうと、電気機械変換素子の歪変位の大小を正確に判断できない。ピーク分離によっても複数のピークに分離できないピーク同士を比較する場合、半値幅(χ)が小さい方が、電気機械変換素子における圧電効果による歪変位が大きくなることが実験により分かっている。
複数の結晶面に対応するピークが重なり合って1つのピークのようになったものについては、そのピークの半値幅(χ)を電気機械変換素子の歪変位の大小を判断する指標とすることはできない。電気機械変換素子の歪変位の大小を判断する指標として、ピーク分離により得られた3つのピークに対応する半値幅σ1、σ2、σ3を加重平均したFWHMstd(χ)(=(σ1×peak1+σ2×peak2+σ3×peak3)/(peak1+peak2+peak3))を用いる必要がある。
図6は、{100}面に優先配向させたPZT膜のうち、あおり角を振った測定をして得られた回折強度のピークの半値幅について説明するグラフである。図6(a)は、あおり角を振った測定をして得られた回折強度のピークをピーク分離しても複数のピークに分離できないものの例を示す。また、図6(b)は、あおり角を振った測定をして得られた回折強度のピークをピーク分離して3つのピークに分離できるものの例を示す。
図6(b)に示すピーク(ピークD)に対する半値幅σ4の方が、図6(b)に示すピーク分離する前のピーク(ピークE)に対する半値幅σ5よりも小さい。しかし、ピークEの特徴を持つPZT膜を適用した電気機械変換素子では、ピークDの特徴を持つPZT膜を適用した電気機械変換素子よりも、圧電効果による歪変位が大きくなった。ピークEをピーク分離して得られたピークA,B,Cそれぞれの半値幅σ1,σ2,σ3を平均化して求めた半値幅FWHMstd(χ)は、図6(b)に示すピークに対する半値幅σ4よりも小さくなった。
上記指標として、半値幅σ1、σ2、σ3の算術平均ではなく上記加重平均を用いたのは、回折強度peak1、peak2、peak3が、それらの回折強度に対応するそれぞれの結晶面の、電気機械変換素子の歪変位への寄与度に影響するからである。例えば、図5(b)中のAで示すピークに対応する回折強度peak1の値が、他のピークに対応する回折強度peak2、peak3の値に対し非常に小さくなっている電気機械変換膜を用いた電気機械変換素子を考える。この電気機械変換素子では、図5(b)中のAで示すピークに対応する結晶面の割合が他のピークに対応する結晶面の割合よりも低くなっている。このため、図5(b)中のAで示すピークの半値幅が他のピーク以上になっていたとしても、上記電気機械変換素子の歪変位に対する、図5(b)中のAで示すピークに対応する結晶面の寄与度は、他のピークに対応する結晶面の寄与度よりも小さくなる。
FWHMstd(χ)は、12[°]以下になるようにする。8[°]以下であることがさらに好ましい。FWHMstd(χ)が12[°]以下よりも大きくなると圧電効果による歪変位が十分に得られなくなる。
図5(b)中のBで示すピークは、基板面に対しほぼ垂直に成長している結晶面に対応するものである(χ2≒0)。図5(b)中のA、Cで示すピークは、基板面に垂直な方向から傾斜した方向に結晶成長した結晶面に対応するものである。図5(b)中のAで示すピークに対応する結晶面の結晶成長方向の、基板面に垂直な方向に対する傾斜角度はχ2−χ1で表せる。同様に、図5(b)中のCで示すピークに対応する結晶面の結晶成長方向の、基板面に垂直な方向に対する傾斜角度はχ3−χ2で表せる。基板面に垂直な方向に対する結晶成長方向の傾斜角度が大きければ大きいほど、その結晶面におけるドメイン回転の効果による歪変位は大きくなる。
χ2−χ1およびχ3−χ2について算術平均したものをχstd(=((χ2−χ1)+(χ3−χ2))/2)とする。χstdが1°以上5°以下であることが好ましく、1.5[°]以上3[°]以下であることがさらに好ましい。
χstdが、上で規定した下限値(1[°])よりも小さくなると、上記電気機械変換膜における結晶構造のゆがみが小さくなる。このため、ドメイン回転の効果が小さくなり、上記電気機械変換素子において十分な歪変位が得られない。一方、χstdが、上で規定した上限値(5[°])よりも大きくなると、上記電気機械変換素子の歪変位は非常に大きくなるが、上記電気機械変換膜の結晶構造のゆがみが大きくなったことに起因するクラック等の欠陥が発生する可能性も高くなる。このため、上記電気機械変換素子を圧電アクチュエータとして連続駆動させたときに、初期の歪変位に対し駆動後の歪変位が低下する。
χstdを上記範囲とすることで、上記電気機械変換素子の初期の歪変位を十分に大きくできるとともに、連続駆動させた後も歪変位が大きく低下しないようにすることができる。
{100}面に優先配向させたPZT膜において、図3(a)に示すようにX線回折のθ-2θ法による測定で得られた回折強度のピークの形状の非対称性が大きくなったものについて、ロッキングカーブ法による測定を行った。図7は、このようなPZT膜において、X線回折のθ-2θ法による測定で(200)面のピークにおける回折強度が最大となる位置において、ロッキングカーブ法による測定をして得られたピークが、ピーク分離によって3つのピークに分離できるものの一例を示すグラフである。図7(a)は、PZT膜において、{200}面でロッキングカーブ法による測定をして得られた回折強度のピークの例である。図中、PZT膜の測定面へのX線入射角を横軸に、測定面から反射されてくる回折X線の回折強度を縦軸にしている。
図7(a)に示すピーク曲線においては、照射面積による影響により入射角ωが低角度側では高角度側に比べて照射面積が大きくなるので、上記ピーク曲線にsinωを掛けて(もしくは、cosωで割って)照射面積による影響を補正(以下、「照射面積補正」という)する必要がある。図7(b)は、図7(a)に示すピーク曲線を照射面積補正したものを示す。図7(a)に示すようにピーク曲線の形状に非対称性が見られていても、照射面積補正後のピーク曲線の形状には図7(b)に示すように非対称性が見られなくなる場合がある。
図7(c)は、図7(b)に示す照射面積補正後のピーク曲線の形状に対し、ピーク分離を行ったものである。ピーク分離により3つのピークに分離することができる。前記3つのピークのそれぞれにおいて、回折強度が最大となる位置での回折強度をそれぞれpeak1’、peak2’、peak3’とし、上記3つのピークの半値幅(半値幅(ω))をそれぞれσ1’、σ2’、σ3’とする。ここで、半値幅(ω)とは、入射角(ω)を振ったときに得られた回折強度のピークにおいて、回折強度が最大値の半分の値になるωの幅をいう。
上述した半値幅(χ)と同様に、半値幅(ω)は、電気機械変換素子の歪変位の大小を判断するための1つの指標となる。しかし、複数の結晶面に対応するピークが重なり合って1つのピークのようになったものをピーク分離せずに1つのピークとして扱ってしまうと、電気機械変換素子の歪変位の大小を正確に判断できない。ピーク分離によっても複数のピークに分離できないピーク同士を比較する場合、半値幅(ω)が小さい方が、電気機械変換素子における圧電効果による歪変位が大きくなることが実験により分かっている。
複数の結晶面に対応するピークが重なり合って1つのピークのようになったものについては、そのピークの半値幅(ω)を電気機械変換素子の歪変位の大小を判断する指標とすることはできない。電気機械変換素子の歪変位の大小を判断する指標として、ピーク分離により得られた3つのピークに対応する半値幅σ1’、σ2’、σ3’を加重平均したFWHMstd(ω)(=(σ1’×peak1’+σ2’×peak2’+σ3’×peak3’)/(peak1’+peak2’+peak3’))を用いる必要がある。
FWHMstd(ω)が10°以下であるのが好ましく、6°以下にしておくことがさらに好ましい。FWHMstd(ω)が10[°]以下よりも大きくなると圧電効果による歪変位が十分に得られなくなる。
上記3つのピークのそれぞれにおいて回折強度が最大となる試料基板面と入射X線の角度をω1、ω2、ω3としたときに、これらの算術平均をωstd(=((ω2−ω1)+(ω3−ω2))/2)とすると、ωstdが1°以上5°以下であることが好ましく、1.5[°]以上3[°]以下であることがさらに好ましい。
ωstdが、上で規定した下限値(1[°])よりも小さくなると、上記電気機械変換膜における結晶構造のゆがみが小さくなる。このため、ドメイン回転の効果が小さくなり、上記電気機械変換素子において十分な歪変位が得られない。一方、ωstdが、上で規定した上限値(5[°])よりも大きくなると、上記電気機械変換素子の歪変位は非常に大きくなるが、上記電気機械変換膜の結晶構造のゆがみが大きくなったことに起因するクラック等の欠陥が発生する可能性も高くなる。このため、上記電気機械変換素子を圧電アクチュエータとして連続駆動させたときに、初期の歪変位に対し駆動後の歪変位が低下する。
ωstdを上記範囲とすることで、上記電気機械変換素子の初期の歪変位を十分に大きくできるとともに、連続駆動させた後も歪変位が大きく低下しないようにすることができる。
第1電極として適用するPt膜の成膜温度、及びPt膜上に形成するPZT膜の下地とする材料が、作製したPZT膜の特徴を決める上で重要であることが分かっている。Pt膜の成膜温度を300[℃]以上とし、PZT膜の下地層にPbTiOを用いることなどにより、回折強度のピークが図5や図7を用いて説明した特徴を有するPZT膜の作製が可能となる。また、振動板として適用するSiO膜と第1電極として適用するPt膜との間の密着層として、Ti膜を熱酸化したTiO膜を適用する場合、このTiO膜の厚みも重要になってくる。
I{hkl}を、ある{hkl}面に対応する回折強度のピークにおける回折強度とする。また、ΣIを、回折強度のピークが得られる各面にそれぞれ対応する回折強度のピークにおける回折強度を合計したもの(全回折強度)とする。ΣIに対するI{hkl}の比率ρ{hkl}(=I{hkl}/ΣI)は、{hkl}面における配向度を示している。ρ{hkl}は、0.75以上であることが好ましく、0.85以上であることがさらに好ましい。ρ{hkl}が0.75よりも小さくなると、圧電効果による歪変位が十分得られないので電気機械変換素子の変位量が十分に確保できなくなる。
作製された圧電素子に対し分極処理装置を用いて分極処理を行った。図8は、分極処理装置の概略構成を示す図である。分極処理装置は、コロナ電極600とグリッド電極601、およびサンプルをセットするステージ602などを具備している。コロナ電極600にはコロナ電源603、グリッド電極601にはグリッド電極電源604が接続されている。ステージ602には温調機能が付加されている。この温調機能によって、最大350[℃]くらいまで温度をかけながら分極処理を行うことが出来る。また、ステージ602は接地されている。コロナ電極600に高い電圧を印加したときに、コロナ放電600により発生するイオンや電荷等が下部に設置されたサンプルに効率よく降り注ぐように、グリッド電極601にはメッシュ加工が施されている。コロナ電極600やグリッド電極601に印加される電圧や、サンプルと各電極との間の距離を変えることによって、コロナ放電の強弱を調整することが可能である。
分極処理による分極の状態については、図9に示すP−Eヒステリシスループから判断している。電気機械変換膜に±150[kV/cm]の電界強度かけてヒステリシスループを測定する。図9において、最初の0[kV/cm]時の分極をPindとし、+150[kV/cm]の電圧印加後0[kV/cm]まで戻したときの0[kV/cm]時の分極をPrとする。PrからPindを引いた値(Pr−Pind)を分極率と定義し、この分極率から分極状態の良し悪しを判断している。
図9(a)に示すように、分極処理を行う前は、分極率が約15[μC/cm]であるが、図9(b)に示すように、分極処理を行った後は、分極率が約2[μC/cm]となっている。分極率が10[μC/cm]以下となっていることが好ましく、5[μC/cm]以下となっていることがさらに好ましい。分極率が10[μC/cm]以上であると、電気機械変換素子を圧電アクチュエータとして連続駆動させたときに、初期の歪変位に対して駆動後の歪変位が徐々に低下してしまうなど、耐久性の点での問題がある。上述した方法でコロナ放電の強弱を調整することにより、所望の分極率を得ることができる。
図10に示すように、コロナ電極600を用いてコロナ放電させる場合、大気中の分子がイオン化されて陽イオンが発生する。この陽イオンが電極の第5電極パッド504(図7参照)を介して電気機械変換素子400に流れ込み電荷を蓄積させる。図7に示す電気機械変換素子400において、上部電極である第2電極407と下部電極である第1電極405に蓄積された電荷量の差により電気機械変換素子の上下に電位差が生じることで、分極処理が行われると考えられている。分極処理に必要な電荷量Qは、1E−8[C]以上であることが好ましく、4E−8[C]以上とするのがさらに好ましい。電荷量Qが1E−8[C]に満たないと分極処理が十分に行われないので、電気機械変換素子をアクチュエータとして連続駆動させたときに、十分な歪変位特性が得られなくなる。
次に、本発明に係る実施形態におけるより具体的な実施例について、比較例とともに説明する。
[実施例1]
基板としての6インチシリコンウェハ上に、振動板としてSiO膜(膜厚:約1.0[μm])を形成した。このSiO膜上に、スパッタ法により350[℃]でTi膜(膜厚:約20[nm])成膜し、RTA(急速熱処理)により750[℃]で熱酸化した。引き続き、第1電極(下部電極)としてPt膜(膜厚:約160[nm])をスパッタ法により約300[℃]で成膜した。Ti膜を熱酸化したTiO膜は、SiO膜とPt膜との間の密着層としての役割を持つ。
次に、PZT膜の下地層となる第1酸化物層であるPbTiO(PT)層の材料としてPb:Ti=1:1の組成比で調合したPT塗布液を準備した。また、PZT膜の材料としてPb:Zr:Ti=115:49:51の組成比で調合した溶液であるPZT前駆体塗布液を準備した。具体的なPZT前駆体塗布液の合成は次のように行った。まず、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、上記の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することで、PZT前駆体塗布液を合成した。このPZT濃度は0.5[mol/l]にした。PT塗布液に関してもPZT前駆体塗布液と同様に合成した。
これらの塗布液を用いて、最初にPT層をスピンコートにより成膜し、その後、ホットプレートにより120[℃]で乾燥を行った。そして、PZT膜をスピンコートにより成膜し、ホットプレートにより乾燥(120[℃])と熱分解(400[℃])を行った。このPZT前駆体溶液の塗布、乾燥及び熱分解の処理を3回繰り返して3層形成した。3層目の熱分解処理の後に、結晶化のための熱処理(温度730[℃])をRTA(急速熱処理)にて行った。この結晶化の熱処理が終わったときのPZT膜の膜厚は240[nm]であった。このPZT前駆体溶液の塗布、乾燥、熱分解及び結晶化の熱処理の工程を合計8回(24層)実施し、約2.0[μm]の膜厚のPZT膜を得た。
次に、上記PZT膜上に、第2酸化物層としてSrRuO膜(膜厚:40[nm])、第2電極(上部電極)としてPt膜(膜厚:125[nm])をそれぞれスパッタ法により成膜した。そして、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、その後、フォトリソグラフィーおよびエッチングによって図10に示すようなパターン形成をした。なお、エッチングには、サムコ製のICPエッチング装置を用いた。
パターン作成に続き、ALD法により第1絶縁保護膜としてのAL膜(膜厚:50[nm])に成膜した。AL膜の原材料として、ALにはシグマアルドリッチ社のTMAを、Oにはオゾンジェネレーターによって発生させたものを用いた。そして、AL、Oを交互に積層させることによりAL膜の成膜を進めた。第1絶縁保護膜には、エッチングによってコンタクトホール部を形成した。そして、スパッタ法により第5電極、第6電極としてのAL層をそれぞれ成膜し、フォトリソグラフィーおよびエッチングによってパターン形成をした後、プラズマCVDにより第2絶縁保護膜としてのSi層(膜厚:500[nm])を成膜した。最後に、アルカリ溶液(KOH溶液あるいはTMHA溶液)による異方性ウェットエッチングにより基板に加圧液室を形成した。以上より、電気機械圧電素子としての圧電アクチュエータ(薄膜PZTアクチュエータ)を備えた液滴吐出ヘッドを作製した。
この後、コロナ帯電処理により分極処理を行った。コロナ帯電処理にはφ50[μm]のタングステンのワイヤーを用いている。分極処理条件としては、処理温度80[℃]、コロナ電圧9[kV]、グリッド電圧2.5[kV]、処理時間30[s]、コロナ電極とグリッド電極との間の距離4[mm]、グリッド電極とステージとの間の距離4[mm]として行った。また、2つある第6電極パッド間の距離は80[μm]とした。
[実施例2]
振動板としてSiO膜の上に成膜したTi膜の膜厚を約50[nm]にしたこと、PZT膜の成膜後の熱分解温度を350℃にしたこと以外は実施例1と同じ方法で液滴吐出ヘッドを作製した。
[実施例3]
振動板としてSiO膜の上に成膜したTi膜の、膜厚を約50[nm]、成膜温度を500℃にしたこと、PZT膜の成膜後の熱分解温度を350℃にしたこと以外は実施例1と同じ方法で液滴吐出ヘッドを作製した。
[実施例4]
振動板としてSiO膜の上に成膜したTi膜の成膜温度を500[℃]、PZT膜の成膜後における、乾燥温度を140[℃]、熱分解温度を350℃にしたこと以外は実施例1と同じ方法で液滴吐出ヘッドを作製した。
[実施例5]
振動板としてSiO膜の上に成膜したTi膜の、膜厚を約50[nm]、成膜温度を500℃にしたこと以外は実施例1と同じ方法で液滴吐出ヘッドを作製した。
[実施例6]
振動板としてSiO膜の上に成膜したTi膜の成膜温度を500[℃]、PZT膜の成膜後における乾燥温度を140[℃]とした以外は実施例1と同じ方法で液滴吐出ヘッドを作製した。
[比較例1]
振動板としてSiO膜の上に成膜したTi膜の成膜後、第1酸化物層としてのPbTiO層の代わりに、下地層となるTiO層をスパッタ法により5[nm]成膜した以外は実施例1と同じ方法で液滴吐出ヘッドを作製した。
実施例1〜6及び比較例1の液滴吐出ヘッドに対し、基板の裏面側を掘加工した状態で、電気機械変換素子の初期状態および耐久性試験直後の状態における歪変位(圧電定数)について評価を行った。耐久性試験は、初期の圧電定数の評価後に、1010回電圧の印加を繰り返すものである。圧電定数は、電圧の印加によって15 0[kV/cm]の電界を形成させたときの電気機械変換素子の歪変形量を、基板の裏面側からレーザードップラー振動計によって計測し、シミュレーションによる合わせ込みを行うことにより算出した。さらに、基板の裏面側を掘加工した状態で、X線回折を用いて実施例1〜6及び比較例1のPZT膜についての結晶性評価を行った。
実施例1〜6及び比較例1において、X線回折のθ-2θ法による測定により、{100}面における配向率はいずれも80[%]以上であった。つまり、実施例1〜6及び比較例1のいずれのPZT膜も、{100}面に優先配向した膜であることを確認した。
実施例1〜6及び比較例1の電気機械変換素子のPZT膜について、あおり角を振った測定、及びロッキングカーブ法による測定をして得られた回折強度の分析結果について表1に示す。実施例1〜6では、あおり角を振った測定、及びロッキングカーブ法による測定をして得られた回折強度のピークのいずれについても3つのピークにピーク分離できる。これに対し、比較例1では、あおり角を振った測定、及びロッキングカーブ法による測定をして得られた回折強度のピークのいずれについてもピーク分離できなかった(ピークが1つ)。
実施例1〜6及び比較例1の電気機械変換素子について、あおり角を振った測定で得た回折強度のピークから、上述した分析によりFWHMstd(χ)を求めた。また、ロッキングカーブ法による測定で得た回折強度のピークから、上述した分析によりFWHMstd(ω)を求めた。実施例1〜6の電気機械変換素子については、さらにχstd、ωstdについても求めた。実施例1〜6及び比較例1の電気機械変換素子について、初期状態、および耐久性試験直後(1010回電圧の印加後)の圧電定数を測定した。これらの分析・測定結果について表1に示す。
Figure 0006414744
実施例1〜6の電気機械変換素子では、いずれも、FWHMstd(χ)が12°以下になった。また、実施例1〜6の電気機械変換素子では、いずれも、χstdが1°以上5°以下の範囲になった。一方、比較例1の電気機械変換素子では、FWHMstd(χ)が12.1°で12°を超えていた。
実施例1〜6の電気機械変換素子では、いずれも、FWHMstd(ω)が10°以下になった。また、実施例1〜6の電気機械変換素子では、いずれも、ωstdが1°以上5°以下の範囲になった。一方、比較例1の電気機械変換素子では、FWHMstd(χ)が10.3°で10°を超えていた。
実施例1〜6の電気機械変換素子では、初期状態および耐久性試験直後の圧電定数は、いずれも、電気機械変換素子として十分に機能し得る圧電定数の範囲(−120〜−160[pm/V])内にあった。圧電定数がこの範囲にあれば、一般的なセラミックス焼結体と同等であり、上記電気機械変換素子として実用上要求される歪変位が得られる。これに対し、比較例1の電気機械変換素子では、初期状態および耐久性試験直後の圧電定数は、いずれも、圧電定数が−120[pm/V]以下になった。
圧電定数については、実施例3、4では、初期の圧電定数が他の実施例と比べて大きくなっている。一方、実施例3、4では、初期の圧電定数に対する耐久性試験直後の圧電定数の低下の比率((初期の圧電定数−耐久性試験直後の圧電定数)/初期の圧電定数)は、他の実施例と比べて若干高くなっている。よって、FWHMstd(χ)が8°以下、χstdが1.5[°]以上3[°]以下の範囲にあることが好ましいといえる。また、FWHMstd(ω)が6°以下、ωstdが1.5[°]以上3[°]以下の範囲にあることが好ましいといえる。
ただし、実施例3、4では、耐久性試験直後の圧電定数は実施例1〜6でほぼ同じ値になっている。つまり、FWHMstd(χ)が12°以下、χstdが1[°]以上5[°]以下の範囲であれば、初期の圧電定数を十分に大きくできるとともに、電気機械変換素子をアクチュエータとして連続動作させた後も良好な圧電定数を維持できることが確認できた。また、FWHMstd(ω)が10°以下、ωstdが1[°]以上5[°]以下の範囲にあることが好ましいといえる。が2[°]〜8[°]の範囲であれば、初期の圧電定数を十分に大きくできるとともに、電気機械変換素子をアクチュエータとして連続動作させた後も良好な圧電定数を維持できることが確認できた。
ここで、PZT膜を有する圧電アクチュエータを備えた液体吐出ヘッドを複数個配置した構成例について説明する。図11は、上記図1で示したPZT膜406を有する圧電アクチュエータを備えた液体吐出ヘッドを複数個配置した構成例を示す断面図である。図11の構成例によれば、電気機械変換素子としての圧電アクチュエータを簡便な製造工程でバルクセラミックスと同等の性能を持つように形成できる。更に、その後の加圧液室の形成のための裏面からのエッチング除去と、ノズル孔を有するノズル板の接合とを行うことで、複数の液体吐出ヘッドが一括形成することができる。なお、図11中には液体供給手段、流路、流体抵抗についての図示を省略した。
実施例1〜6で作製した電気機械変換素子を用いて図11に示す構成の液体吐出ヘッドを作製し、インクの吐出評価を行った。この評価では、粘度を5[cp]に調整したインクを用い、単純Push波形により−10〜−30[V]の印加電圧を加えて、ノズル孔からのインクの吐出状況を確認した。その結果、実施例1〜6のいずれにおいても、全てのノズル孔から良好にインクの吐出ができていることが確認できた。
次に、本発明の実施形態に係る液滴吐出ヘッドを搭載した画像形成装置(液滴吐出装置)としてのインクジェット記録装置について説明する。
図12は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一例を示す斜視図であり、図13は、同インクジェット記録装置の機構部を側面から見た説明図である。本実施形態のインクジェット記録装置は、記録装置本体81の内部に印字機構部82等を収納している。印字機構部82は、主走査方向に移動可能なキャリッジと、キャリッジに搭載した液滴吐出ヘッド94へ画像形成用の液体であるインクを供給する液体カートリッジとしてのインクカートリッジ95等で構成されている。また、装置本体81の下方部には、前方側から多数枚の記録媒体としての用紙83を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)84を抜き差し自在に装着することができる。また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができる。そして、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
印字機構部82は、左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持している。このキャリッジ93には、複数のインク吐出口としてのノズルを主走査方向と交差する方向に配列し液滴吐出方向を下方に向けるように、複数の液滴吐出ヘッド94が装着されている。複数の液滴吐出ヘッド94は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びブラック(Bk)の各色の液滴を吐出するヘッド(インクジェットヘッド)である。また、キャリッジ93には、液滴吐出ヘッド94に各色の液体(インク)を供給するための各インクカートリッジ95が交換可能に装着されている。
インクカートリッジ95は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有している。この多孔質体の毛管力により液滴吐出ヘッド94へ供給される液体(インク)をわずかな負圧に維持している。また、本実施形態では各色に対応させて4個の液滴吐出ヘッド94を用いているが、各色の液滴を吐出する複数のノズルを有する1個の液滴吐出ヘッドを用いてもよい。
ここで、キャリッジ93は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100が張装されている。このタイミングベルト100はキャリッジ93に固定されており、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。
一方、給紙カセット84にセットした用紙83をヘッド94の下方側に搬送するために、給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、ガイド部材103と、搬送ローラ104と、先端コロ106とを備えている。給紙ローラ101及びフリクションパッド102は、給紙カセット84から用紙83を分離給装し、ガイド部材103は用紙83を案内する。また、搬送ローラ104は、給紙された用紙83を反転させて搬送する。先端コロ106は、搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を液滴吐出ヘッド94の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109が設けられている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112が設けられている。さらに、用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115,116とが配設されている。
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
また、キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液滴吐出ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ93は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段で液滴吐出ヘッド94がキャッピングされ、吐出口であるノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド94の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出す。これにより、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このように、このインクジェット記録装置においては本発明の前述の実施形態及び実施例1〜6で作製した液滴吐出ヘッドを搭載している。従って、振動板の駆動不良によるインク滴の吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られて、画像品質が向上する。
本実施形態では、{100}面に優先配向させたPZT膜において、θ-2θ法による測定で得られた回折強度のピークのうち、{100}面に対応する回折強度のピークの回折強度が最大となる位置(2θ)で、あおり角を振った測定を行った。これにより得られた回折強度曲線を例に、ピークの形状が上述した特徴を有するとき電気機械変換素子の歪変位を大きくできることを述べた。しかし、このことはこの例に限るものではない。{n00}面(nはある正の整数)に優先配向させたペロブスカイト結晶構造を有する電気機械変換膜においても同様のことが言える。つまり、この膜の{n00}面と平行な{N00}面(Nはある正の整数)に対応する回折強度のピークの回折強度が最大となる位置(2θ)で、あおり角を振った測定で得られた回折強度のピークの形状に上述した特徴があれば、電気機械変換素子の歪変位を大きくできる。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
基板又は下地膜上に直接又は間接的に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された{100}面に優先配向されたペロブスカイト結晶構造を有する圧電体からなる電気機械変換膜と、前記電気機械変換膜上に形成された上部電極とを備える電気機械変換素子において、前記電気機械変換膜が、X線回折のθ−2θ法による測定で得られた回折強度のピークのうち{200}面に対応する回折強度のピークにおいて回折強度が最大となる位置(2θ)で、あおり角(χ)を振った測定により得られる回折強度のピークがピーク分離により3つのピークに分離することができ、前記3つのピークのそれぞれにおいて回折強度が最大となる位置での回折強度をそれぞれpeak1、peak2、peak3とし、前記3つのピークの半値幅をそれぞれσ1、σ2、σ3としたときに、peak1、peak2、peak3をそれぞれσ1、σ2、σ3の重みとしたσ1、σ2、σ3の加重平均FWHMstd(χ)(=(σ1×peak1+σ2×peak2+σ3×peak3)/(peak1+peak2+peak3))が12°以下である。
上記電気機械変換膜の結晶成長方向のばらつきが少ないと、上記電気機械変換膜においてあおり角を振った測定で得た回折強度のピークの半値幅が狭くなる。結晶成長方向のばらつきが少なければ、圧電効果によって上記電気機械変換膜を有する電気機械変換素子の歪変位が大きくなる。つまり、上記半値幅によって、電気機械変換膜を有する電気機械変換素子の歪変位の大小を判断できる。
上記電気機械変換膜において、あおり角を振った測定で得た回折強度のピークが、1つの結晶面に対応するピークの半値幅は、上記電気機械変換膜を有する電気機械変換素子の歪変位の大小と相関がある。しかし、上記あおり角を振った測定で得た回折強度のピークが、複数の結晶面に対応するピークが重なり合って1つのピークのようになったものである場合、ピーク分離をせずに半値幅を求めても電気機械変換素子の歪変位の大小を正確に判断できない。上記場合に、ピーク分離した後の各ピークに対する半値幅を各ピークにおける最大回折強度をそれぞれ重みとして加重平均したもの(FWHMstd(χ))を半値幅とすることで、電気機械変換素子の歪変位の大小を正確に判断することができる。各ピークの重みとして各ピークにおける最大回折強度を用いたのは、ピークの最大回折強度が小さければ、そのピークに対応する結晶面の、電気機械変換素子の歪変位への寄与度が小さくなるからである。上記半値幅の加重平均FWHMstd(χ)が12°以下の電気機械変換膜では、膜の厚さ方向において結晶の組成変化が少なく、上記電気機械変換膜を有する電気機械変換素子の歪変位を十分に大きくができる(圧電定数の範囲が−120〜−160[pm/V])ことを実験により確認した。
(態様B)
基板又は下地膜上に直接又は間接的に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された{100}面に優先配向されたペロブスカイト結晶構造を有する圧電体からなる電気機械変換膜と、前記電気機械変換膜上に形成された上部電極とを備える電気機械変換素子において、前記電気機械変換膜が、{200}面でX線回折のロッキングカーブ法による測定を行って得られた回折強度のピークにsinωを乗じて照射面積補正したものがピーク分離により3つのピークに分離することができ、前記3つのピークのそれぞれにおいて回折強度が最大となる位置での回折強度をそれぞれpeak1'、peak2'、peak3'とし、前記3つのピークの半値幅をそれぞれσ1'、σ2'、σ3'としたときに、peak1'、peak2'、peak3'をそれぞれσ1'、σ2'、σ3'の重みとしたσ1'、σ2'、σ3'の加重平均FWHMstd(ω)(=(σ1'×peak1'+σ2'×peak2'+σ3'×peak3')/(peak1'+peak2'+peak3'))が10°以下である。
上記電気機械変換膜の厚さ方向において結晶の組成変化が少ないと、上記電気機械変換膜においてロッキングカーブ法による測定で得た回折強度のピークの半値幅が狭くなる。厚さ方向において結晶の組成変化が少なければ、圧電効果によって上記電気機械変換膜を有する電気機械変換素子の歪変位が大きくなる。つまり、上記半値幅によって、電気機械変換膜を有する電気機械変換素子の歪変位の大小を判断できる。
上記電気機械変換膜において、ロッキングカーブ法による測定で得た回折強度のピークが1つの結晶面に対応するピークの半値幅は、上記電気機械変換膜を有する電気機械変換素子の歪変位の大小と相関がある。しかし、ロッキングカーブ法による測定で得た回折強度のピークが、複数の結晶面に対応するピークが重なり合って1つのピークのようになったものである場合、ピーク分離をせずに半値幅を求めても電気機械変換素子の歪変位の大小を正確に判断できない。上記場合に、ピーク分離した後の各ピークに対する半値幅を各ピークにおける最大回折強度をそれぞれ重みとして加重平均したもの(FWHMstd(ω))を半値幅とすることで、電気機械変換素子の歪変位の大小を正確に判断することができる。各ピークの重みとして各ピークにおける最大回折強度を用いたのは、ピークの最大回折強度が小さければ、そのピークに対応する結晶面の、電気機械変換素子の歪変位への寄与度が小さくなるからである。上記半値幅を加重平均したものが10°以下の電気機械変換膜では、膜の厚さ方向において結晶の組成変化が少なく、圧電効果による歪変位を十分に大きくすることができる(圧電定数の範囲が−120〜−160[pm/V])ことを実験により確認した。
(態様C)
態様Aにおいて、前記3つのピークのそれぞれについて回折強度が最大となるあおり角をχ1、χ2、χ3とし、χ2が基板面に対しほぼ垂直に成長している結晶面に対応するあおり角であるとすると、χ2とχ1との差の絶対値(|χ2−χ1|)と、χ3とχ2との差の絶対値(|χ3−χ2|))と、の算術平均χstd(=((|χ2−χ1|)+(|χ3−χ2|))/2)が1°以上5°以下である。
(態様D)
態様Bにおいて、前記3つのピークのそれぞれにおいて回折強度が最大となる試料基板面と入射X線の角度を小さい順にω1、ω2、ω3(ω1<ω2<ω3)としたときに、ωstd=((ω2−ω1)+(ω3−ω2))/2とすると、ωstdが1°以上5°以下である。
(態様E)
態様A〜Dのいずれか一において、I{hkl}を{hkl}面に対応する回折強度のピークにおける回折強度、ΣIを回折強度のピークが得られる各面にそれぞれ対応する回折強度のピークにおける回折強度を合計したものとするときに、ρ{hkl}=I{hkl}/ΣIとすると、ρ{100}が0.75以上である。
ρ{hkl}が0.75よりも小さくなると、圧電効果による歪変位が十分得られないので電気機械変換素子の変位量が十分に確保できなくなる。
(態様F)
態様A〜Eにおいて、前記基板の裏面には掘り加工された箇所を有し、前記電気機械変換膜が、前記堀加工された箇所に拘束物がない状態でX線回折のθ−2θ法による測定で得られた回折強度のピークのうち{200}面に対応する回折強度のピークの回折強度が最大となる位置が2θ=44.45°以上44.75°以下にあり、X線回折のθ−2θ法による測定で得られた回折強度のピークのうち{200}面に対応する回折強度のピークおよび{400}面に対応する回折強度のピークがいずれも非対称な形状を有している。
(態様G)
態様A〜Fのいずれか一において、X線回折のθ−2θ法による測定で得られた回折強度のピークのうち{200}面に対応する回折強度のピークおよび{400}面に対応する回折強度のピークのそれぞれに対しピーク分離を行ったときに、前記ピーク分離を行った後に得られた回折強度のピークには正方晶のaドメイン構造に帰属されるピークおよび正方晶のcドメイン構造に帰属されるピークがある。
(態様H)
態様A〜Gのいずれか一において、前記電気機械変換膜と前記下部電極との間にはチタン酸鉛からなるシード層を備えている。
(態様I)
液滴を吐出するノズルと、該ノズルに連通する加圧室と、該加圧室内の液体に圧力を発生させる圧力発生手段とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、前記圧力発生手段として、態様A〜Hのいずれかの電気機械変換素子を備えた。
(態様J)
態様Iの液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置。
94 液滴吐出ヘッド
401 基板
402 振動板
403 ノズル版
404 加圧液室
405 第1電極
406 PZT膜
407 第2電極
408 第1酸化物層
409 第2酸化物層
特開2008−192868号公報

Claims (10)

  1. 基板又は下地膜上に直接又は間接的に形成された下部電極と、
    前記下部電極上に形成された{100}面に優先配向されたペロブスカイト結晶構造を有する圧電体からなる電気機械変換膜と、
    前記電気機械変換膜上に形成された上部電極とを備える電気機械変換素子において、
    前記電気機械変換膜が、X線回折のθ−2θ法による測定で得られた回折強度のピークのうち{200}面に対応する回折強度のピークにおいて回折強度が最大となる位置(2θ)で、あおり角(χ)を振った測定により得られる回折強度のピークがピーク分離により3つのピークに分離することができ、前記3つのピークのそれぞれにおいて回折強度が最大となる位置での回折強度をそれぞれpeak1、peak2、peak3とし、前記3つのピークの半値幅をそれぞれσ1、σ2、σ3としたときに、peak1、peak2、peak3をそれぞれσ1、σ2、σ3の重みとしたσ1、σ2、σ3の加重平均FWHMstd(χ)(=(σ1×peak1+σ2×peak2+σ3×peak3)/(peak1+peak2+peak3))が12°以下であることを特徴とする電気機械変換素子。
  2. 基板又は下地膜上に直接又は間接的に形成された下部電極と、
    前記下部電極上に形成された{100}面に優先配向されたペロブスカイト結晶構造を有する圧電体からなる電気機械変換膜と、
    前記電気機械変換膜上に形成された上部電極とを備える電気機械変換素子において、
    前記電気機械変換膜が、{200}面でX線回折のロッキングカーブ法による測定を行って得られた回折強度のピークにsinωを乗じて照射面積補正したものがピーク分離により3つのピークに分離することができ、前記3つのピークのそれぞれにおいて回折強度が最大となる位置での回折強度をそれぞれpeak1'、peak2'、peak3'とし、前記3つのピークの半値幅をそれぞれσ1'、σ2'、σ3'としたときに、peak1'、peak2'、peak3'をそれぞれσ1'、σ2'、σ3'の重みとしたσ1'、σ2'、σ3'の加重平均FWHMstd(ω)(=(σ1'×peak1'+σ2'×peak2'+σ3'×peak3')/(peak1'+peak2'+peak3'))が10°以下であることを特徴とする電気機械変換素子。
  3. 請求項1に記載の電気機械変換素子において、
    前記3つのピークのそれぞれについて回折強度が最大となるあおり角をχ1、χ2、χ3とし、χ2が基板面に対しほぼ垂直に成長している結晶面に対応するあおり角であるとすると、χ2とχ1との差の絶対値(|χ2−χ1|)と、χ3とχ2との差の絶対値(|χ3−χ2|))と、の算術平均χstd(=((|χ2−χ1|)+(|χ3−χ2|))/2)が1°以上5°以下であることを特徴とする電気機械変換素子。
  4. 請求項2に記載の電気機械変換素子において、
    前記3つのピークのそれぞれにおいて回折強度が最大となる試料基板面と入射X線の角度を小さい順にω1、ω2、ω3(ω1<ω2<ω3)としたときに、ωstd=((ω2−ω1)+(ω3−ω2))/2とすると、ωstdが1°以上5°以下であることを特徴とする電気機械変換素子。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一の電気機械変換素子において、
    I{hkl}を{hkl}面に対応する回折強度のピークにおける回折強度、ΣIを回折強度のピークが得られる各面にそれぞれ対応する回折強度のピークにおける回折強度を合計したものとするときに、ρ{hkl}=I{hkl}/ΣIとすると、ρ{100}が0.75以上であることを特徴とする電気機械変換素子。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一の電気機械変換素子において、
    前記基板の裏面には掘り加工された箇所を有し、前記電気機械変換膜が、前記堀加工された箇所に拘束物がない状態でX線回折のθ−2θ法による測定で得られた回折強度のピークのうち{200}面に対応する回折強度のピークの回折強度が最大となる位置が2θ=44.45°以上44.75°以下にあり、X線回折のθ−2θ法による測定で得られた回折強度のピークのうち{200}面に対応する回折強度のピークおよび{400}面に対応する回折強度のピークがいずれも非対称な形状を有していることを特徴とする電気機械変換素子。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一の電気機械変換素子において、
    X線回折のθ−2θ法による測定で得られた回折強度のピークのうち{200}面に対応する回折強度のピークおよび{400}面に対応する回折強度のピークのそれぞれに対しピーク分離を行ったときに、前記ピーク分離を行った後に得られた回折強度のピークには正方晶のaドメイン構造に帰属されるピークおよび正方晶のcドメイン構造に帰属されるピークがあることを特徴とする電気機械変換素子。
  8. 請求項1乃至7のいずれか一の電気機械変換素子において、
    前記電気機械変換膜と前記下部電極との間にはチタン酸鉛からなるシード層を備えていることを特徴とする電気機械変換素子。
  9. 液滴を吐出するノズルと、
    該ノズルに連通する加圧室と、
    該加圧室内の液体に圧力を発生させる圧力発生手段とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記圧力発生手段として、請求項1乃至8のいずれかの電気機械変換素子を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  10. 請求項9の液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置。
JP2014251811A 2014-12-12 2014-12-12 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置 Active JP6414744B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014251811A JP6414744B2 (ja) 2014-12-12 2014-12-12 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置
US14/956,689 US10112391B2 (en) 2014-12-12 2015-12-02 Electromechanical transducer element, liquid droplet discharge head, and image forming apparatus

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014251811A JP6414744B2 (ja) 2014-12-12 2014-12-12 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2016115755A JP2016115755A (ja) 2016-06-23
JP2016115755A5 JP2016115755A5 (ja) 2017-11-16
JP6414744B2 true JP6414744B2 (ja) 2018-10-31

Family

ID=56110318

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014251811A Active JP6414744B2 (ja) 2014-12-12 2014-12-12 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置

Country Status (2)

Country Link
US (1) US10112391B2 (ja)
JP (1) JP6414744B2 (ja)

Families Citing this family (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017157773A (ja) 2016-03-04 2017-09-07 株式会社リコー 電気機械変換素子、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
US10160208B2 (en) 2016-04-11 2018-12-25 Ricoh Company, Ltd. Electromechanical-transducing electronic component, liquid discharge head, liquid discharge device, and liquid discharge apparatus
US9987843B2 (en) 2016-05-19 2018-06-05 Ricoh Company, Ltd. Liquid discharge head, liquid discharge device, and liquid discharge apparatus
JP6746205B2 (ja) 2016-06-09 2020-08-26 株式会社ミツトヨ 保持構造
US10239312B2 (en) 2017-03-17 2019-03-26 Ricoh Company, Ltd. Liquid discharge head, liquid discharge device, and liquid discharge apparatus
US10636959B2 (en) * 2017-03-31 2020-04-28 General Electric Company Insitu corona poling of piezoelectric ceramics
US20180323039A1 (en) * 2017-05-05 2018-11-08 Applied Materials, Inc. Active far edge plasma tunability
US10556431B2 (en) 2017-06-23 2020-02-11 Ricoh Company, Ltd. Electromechanical transducer element, liquid discharge head, liquid discharge device, and liquid discharge apparatus
JP6939214B2 (ja) 2017-08-01 2021-09-22 株式会社リコー 電気−機械変換素子、液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置
US10596581B2 (en) 2018-03-09 2020-03-24 Ricoh Company, Ltd. Actuator, liquid discharge head, liquid discharge device, and liquid discharge apparatus
JP7369355B2 (ja) 2019-07-26 2023-10-26 株式会社リコー 圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置、及び、圧電素子の製造方法

Family Cites Families (27)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001312812A (ja) * 2000-04-27 2001-11-09 Showa Denko Kk 磁気記録媒体、その製造方法、磁気記録再生装置、および磁性膜表面の結晶面傾き分布評価方法
JP2008028030A (ja) 2006-07-19 2008-02-07 Seiko Epson Corp 圧電素子および液体噴射ヘッド
JP2008192868A (ja) 2007-02-06 2008-08-21 Fujifilm Corp 圧電体膜及びそれを用いた圧電素子、液体吐出装置
JP4266036B2 (ja) * 2007-04-26 2009-05-20 富士フイルム株式会社 圧電体、圧電素子、及び液体吐出装置
JP4662084B2 (ja) * 2008-07-25 2011-03-30 セイコーエプソン株式会社 液体吐出ヘッドおよび液体噴射装置
JP5724168B2 (ja) 2009-10-21 2015-05-27 株式会社リコー 電気−機械変換素子とその製造方法、及び電気−機械変換素子を有する液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置
WO2012036103A1 (en) 2010-09-15 2012-03-22 Ricoh Company, Ltd. Electromechanical transducing device and manufacturing method thereof, and liquid droplet discharging head and liquid droplet discharging apparatus
JP5741799B2 (ja) 2010-12-06 2015-07-01 セイコーエプソン株式会社 液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電素子
JP5768393B2 (ja) 2011-02-10 2015-08-26 株式会社リコー インクジェットヘッド及び画像形成装置
JP5644581B2 (ja) 2011-02-22 2014-12-24 株式会社リコー インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置
JP5754178B2 (ja) 2011-03-07 2015-07-29 株式会社リコー インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置
JP5708098B2 (ja) 2011-03-18 2015-04-30 株式会社リコー 液体吐出ヘッド、液体吐出装置および画像形成装置
JP2012253161A (ja) 2011-06-01 2012-12-20 Seiko Epson Corp 圧電素子及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置
JP5892406B2 (ja) 2011-06-30 2016-03-23 株式会社リコー 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置
JP5811728B2 (ja) 2011-09-16 2015-11-11 株式会社リコー 電気−機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置
JP5943178B2 (ja) 2011-12-01 2016-06-29 セイコーエプソン株式会社 圧電素子の製造方法、液体噴射ヘッドの製造方法、液体噴射装置の製造方法、超音波デバイスの製造方法及びセンサーの製造方法
JP6060485B2 (ja) * 2012-01-19 2017-01-18 セイコーエプソン株式会社 圧電素子、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、強誘電体デバイス、焦電体デバイス、及び、圧電体デバイス
US9324934B2 (en) * 2012-03-06 2016-04-26 Konica Minolta, Inc. Piezoelectric thin film, piezoelectric element, ink-jet head, and ink-jet printer
JP2013197522A (ja) 2012-03-22 2013-09-30 Ricoh Co Ltd 圧電体薄膜素子とその製造方法、該圧電体薄膜素子を用いた液滴吐出ヘッドおよびインクジェット記録装置
JP2013201198A (ja) 2012-03-23 2013-10-03 Ricoh Co Ltd 電気機械変換素子及びその製造方法、圧電型アクチュエータ、液滴吐出ヘッド、インクジェット記録装置
JP5382196B2 (ja) * 2012-12-27 2014-01-08 セイコーエプソン株式会社 液体吐出ヘッドの製造方法
JP6156068B2 (ja) * 2013-03-14 2017-07-05 株式会社リコー 圧電体薄膜素子及びインクジェット記録ヘッド、並びにインクジェット式画像形成装置
JP6273829B2 (ja) 2013-09-13 2018-02-07 株式会社リコー 電気機械変換素子とその製造方法、及び電気機械変換素子を有する液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置
CN104512115B (zh) * 2013-09-26 2016-08-24 精工爱普生株式会社 压电元件、液体喷射头以及液体喷射装置
JP6478139B2 (ja) 2014-03-18 2019-03-06 株式会社リコー 液滴吐出ヘッドの製造方法
US9837596B2 (en) * 2014-06-13 2017-12-05 Tdk Corporation Piezoelectric device, piezoelectric actuator, piezoelectric sensor, hard disk drive, and inkjet printer apparatus
JP6620543B2 (ja) * 2015-03-11 2019-12-18 株式会社リコー 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置

Also Published As

Publication number Publication date
US20160167383A1 (en) 2016-06-16
US10112391B2 (en) 2018-10-30
JP2016115755A (ja) 2016-06-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6414744B2 (ja) 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置
JP6525255B2 (ja) 電気機械変換素子、電気機械変換素子の製造方法、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置
JP6551773B2 (ja) 液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置
US9385298B2 (en) Electromechanical conversion element, liquid drop discharge head and image forming apparatus
US9196821B2 (en) Electromechanical transducer, droplet ejection head, and method for manufacturing electromechanical transducer
JP6390170B2 (ja) 電気−機械変換素子、電気−機械変換素子の製造方法、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置
JP6341446B2 (ja) 電気機械変換素子の製造方法、電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置
US9969161B2 (en) Electromechanical transducer element, liquid discharge head, liquid discharge device, and liquid discharge apparatus
JP6939214B2 (ja) 電気−機械変換素子、液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置
US10556431B2 (en) Electromechanical transducer element, liquid discharge head, liquid discharge device, and liquid discharge apparatus
JP6460450B2 (ja) 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、画像形成装置および液滴吐出装置
JP6531978B2 (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置
JP5998543B2 (ja) 電気−機械変換素子、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置
JP7351106B2 (ja) 電気機械変換素子、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び圧電装置
JP2015005554A (ja) 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、画像形成装置、及び、電気機械変換素子の製造方法
JP6909420B2 (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
JP6460449B2 (ja) 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置
JP2019009413A (ja) 電気機械変換素子、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
JP6287188B2 (ja) 圧電アクチュエータ、圧電アクチュエータの製造方法、液滴吐出ヘッド、液体カートリッジ、及び画像形装置
JP2017191928A (ja) 電気機械変換電子部品、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
JP2013065698A (ja) 電気−機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置
JP2014154740A (ja) 圧電体薄膜素子、圧電アクチュエータ、液体噴射ヘッド及び液滴吐出装置
JP6638371B2 (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置
JP2013140828A (ja) 電気−機械変換素子の製造方法及び液滴吐出ヘッド及びインクジェットプリンタ
JP6287178B2 (ja) 電気−機械変換素子及び液滴吐出ヘッド

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171004

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20171117

TRDD Decision of grant or rejection written
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180831

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180907

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180920

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6414744

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151