JP6531978B2 - 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置 - Google Patents

液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置 Download PDF

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本発明は、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置に関するものである。
従来、ノズル板と液室基板と振動板とを積層した液滴吐出ヘッドが知られている。液室基板は、所定の配列方向に配列する複数の液室をそれぞれ形成するように互いに独立した複数の開口部を有し、ノズル板は、複数の液室にそれぞれ連通する複数のノズルを有する。振動板は、液室基板側とは反対側に、複数の液室それぞれに対応するように配列した複数の電気機械変換素子(圧電素子)が設けられている。
特許文献1には、振動板(弾性膜)を介して液室基板を支持する支持部材(裏打ち部材)を備えた液滴吐出ヘッド(液体噴射ヘッド)が記載されている。この支持部材は、液室基板の複数の液室(圧力発生部)が形成される開口部を区画する複数の隔壁それぞれに対応するように振動板の液室基板側とは反対側に接合された複数の補強壁を有する。この液滴吐出ヘッドでは、前記隔壁の剛性を高めることができるとされている。
しかしながら、上記特許文献1の液滴吐出ヘッドでは、前記配列方向における液室基板の両端部の近くに位置する液室(開口部)に対応する振動板の液室内壁を構成している液室内壁部分の変位量が、他の液室に対応する振動板の液室内壁部分の変位量よりも大きくなる特異的な変位特性を有することがわかった。振動板の液室内壁部分の変位特性は、液室の圧力変化に影響するため、液室から吐出される液滴の吐出量や液滴吐出時の吐出速度などの液滴吐出特性に大きく影響する。そのため、前記液室基板の両端部の近くに位置する液室(開口部)に対応する振動板の液室内壁部分の特異的な変位特性は、前記配列方向における液滴吐出特性のバラツキの原因となる。
上記課題を解決するために、本発明は、所定の配列方向に配列する複数の液室をそれぞれ形成するように互いに独立した複数の開口部を有する液室基板と、前記液室基板の複数の液室それぞれに連通する複数のノズルを有し、前記液室基板の一方の面側で各液室の内壁を構成するように設けられたノズル板と、前記液室基板の他方の面側で各液室の内壁を構成するように設けられた振動板と、前記振動板の前記液室基板側とは反対側の表面に、前記複数の液室それぞれに対応するように配列させて設けられた複数の電気機械変換素子と、前記複数の電気機械変換素子それぞれを非接触状態で囲んで個別化するように設けられ、前記液室基板の前記配列方向における複数の開口部が形成されていない複数の非開口部に対応するように、前記振動板の前記液室基板側とは反対側に直接又は中間層を介して接合された複数の補強壁を有する支持基板と、を備えた液滴吐出ヘッドであって、前記配列方向における前記液室基板の両端部それぞれの近くに位置する一又は複数の開口部に隣接する複数の非開口部に対応する複数の補強壁の互いに隣り合う補強壁間の間隔は、その他の複数の非開口部に対応する複数の補強壁の互いに隣り合う補強壁間の間隔よりも大きいことを特徴とするものである。
本発明によれば、液室基板の液室が形成される開口部に隣接する非開口部の剛性を高めることができるとともに、液室基板の液室の配列方向における液滴吐出特性のバラツキを抑制することができる。
本実施形態に係る液滴吐出ヘッドを構成する圧電アクチュエータの積層構成の一例を示す断面図。 (a)及び(b)はそれぞれ、本実施形態に係る電気機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッドの要部の概略構成の一例を示す断面図。 (a)は、本実施形態に係る液滴吐出ヘッドに組み込まれた圧電アクチュエータの概略構成の一例を示す断面図。(b)は、その圧電アクチュエータの上面図。 本実施形態に係る複数ノズルタイプの液体吐出ヘッドの複数の主要構成要素が配列している配列方向における中央部の一構成例を示す部分断面図。 液滴吐出ヘッドの電気機械変換素子の配列方向における変形特性(表面変位特性)のバラツキの説明図。 本実施形態に係る液体吐出ヘッドの電気機械変換素子の配列方向における端部の一構成例を示す部分断面図。 本実施形態に係る液体吐出ヘッドの電気機械変換素子の配列方向における端部の他の構成例を示す部分断面図。 本実施形態に係る液体吐出ヘッドの電気機械変換素子の配列方向における端部の更に他の構成例を示す部分断面図。 本実施形態に係る液体吐出ヘッドの電気機械変換素子の配列方向における端部の更に他の構成例を示す部分断面図。 (a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係る電気機械変換素子の製造工程において電気機械変換層の分極処理に用いられる分極処理装置40の概略構成例を示す斜視図及び正面図。 分極処理装置における分極処理の説明図。 (a)は、分極処理を行う前の電気機械変換素子のP−Eヒステリシスループの一例を示す特性図。(b)は、分極処理後の電気機械変換素子のP−Eヒステリシスループの一例を示す特性図。 本実施形態に係る液滴吐出装置(画像形成装置)の一例を示す斜視図。 図13の液滴吐出装置(画像形成装置)の機構部の一例を示す側面図。
以下、本発明に係る液滴吐出ヘッドの実施形態について説明する。本実施形態の液滴吐出ヘッドは、例えば、画像形成装置(液滴吐出装置)としてのインクジェット記録装置に使用することができる。
インクジェット記録装置は、騒音が極めて小さくかつ高速印字が可能であり、更には画像形成用の液体であるインクの自由度があり、安価な普通紙を使用できるなど多くの利点がある。そのために、インクジェット記録装置は、プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像形成装置として広く展開されている。
インクジェット記録装置において使用する液滴吐出ヘッドは、画像形成用の液滴(インク滴)を吐出するノズルと、ノズルに連通する液室と、液室内のインクを吐出するための圧力を発生する圧力発生手段とを備えている。液室は、インク流路、加圧液室、加圧室、圧力室、吐出室、個別液室等とも称される。本実施形態における圧力発生手段は、液室の壁面の一部を構成する振動板と、その振動板を変形させる圧電体からなる薄膜の電気機械変換膜を有する電気機械変換素子と、を備えたピエゾ方式の圧力発生手段である。この電気機械変換素子は、所定の電圧が印加されることにより自らが変形し、液室に対して振動板の表面を変位させることで液室内の液体に圧力を発生させる。この圧力により、液室に連通したノズルから液滴(インク滴)を吐出させることができる。
上記電気機械変換膜を構成する圧電体は、電圧の印加によって変形する圧電特性を有する材料である。この圧電体として、本実施形態では、ペロブスカイト結晶構造を有する三元系金属酸化物であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti1−x)O)を用いている。このPZTからなる電気機械変換膜(以下「PZT膜」という。)を有する電気機械変換素子に駆動電圧を印加したときの振動モードとしては、前述のように複数種類の振動モードがある。例えば、圧電定数d33による膜厚方向の変形を伴う縦振動モード(プッシュモード)や、圧電定数d31によるたわみ変形を伴う横振動モード(ベンドモード)がある。更には、膜の剪断変形を利用したシェアモード等もある。また、上記PZT膜を有する電気機械変換素子は、例えば半導体プロセスやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の技術を利用し、Si基板に液室及び電気機械変換素子を直接作り込むことができる。この電気機械変換素子により、液室内に圧力を発生させる圧力発生手段としての薄膜の圧電アクチュエータを形成することができる。
図1は、本実施形態に係る液滴吐出ヘッドを構成する圧電アクチュエータ20の積層構成の一例を示す断面図である。
図1において、圧電アクチュエータ20は、液室基板21と振動板(成膜振動板)22と電気機械変換素子200とが積層されている。電気機械変換素子200は、液室基板21上に振動板22を介して形成された第1の電極としての下部電極23と、下部電極23上に形成された電気機械変換膜24と、電気機械変換膜24上に形成された第2の電極としての上部電極25とを有している。なお、電気機械変換素子200の下部電極23と振動板22との間には、下部電極23と振動板22との密着性を高める密着層を設けてもよい。
下部電極23は、電気機械変換膜24の第1の表面としての下面に直接又は下地層などの中間層を介して設けられた金属層などからなる電極層である。また、上部電極25は、電気機械変換膜24の第2の表面としての上面に直接又は中間層を介して設けられた金属層などからなる電極層である。下部電極23と上部電極25との間に電圧を印加することにより、電気機械変換膜24の膜厚方向に電界を形成することができる。
図2(a)及び(b)はそれぞれ、本実施形態に係る電気機械変換素子200を備えた液滴吐出ヘッドの要部の概略構成の一例を示す断面図である。図2(a)の構成例では、下部電極23が複数の電気機械変換素子200について共有に用いられるように1つの共通電極として構成され、上部電極25が電気機械変換素子200ごとに対応した互いに独立した個別電極として構成された構成例を示している。また、図2(b)は、上部電極25が複数の電気機械変換素子200について共有に用いられるように1つの共通電極として構成され、下部電極23が電気機械変換素子200ごとに対応した互いに独立した個別電極として構成された構成例を示している。
図2において、本実施形態の液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズル26aが形成されたノズル基板26と、ノズル26aが連通する液室21aと、液室21a内の液体を昇圧させる吐出駆動手段(圧力発生手段)と、を備えている。そして、前記吐出駆動手段が、液室21aの壁の一部を構成する振動板22と、振動板22に配置された電気機械変換素子200と、を有する。
また、本実施形態の液滴吐出ヘッドは、液室基板21の部分に液室21aが形成され、液室21aの下端部分には、液滴を吐出するノズル26aが設けられたノズル板26が配置されている。そして、電気機械変換素子200に電圧が印加され、電気機械変換膜24が変位すると、振動板22が変形(表面変位)して液室21aの液体をノズル26aから吐出するように構成されている。
なお、図2の液滴吐出ヘッドの液室基板21又はその周辺の部材に、液室21aにインクなどの液体を供給する液体供給手段や液体が流れる流路を形成してもよい。流路を設ける場合は液体の流体抵抗を考慮してもよい。
図3は、本実施形態の液滴吐出ヘッドにおける圧電アクチュエータ20及びその周辺の配線の具体的構成の一例を示す図である。図3(a)は、実施形態に係る液滴吐出ヘッドに組み込まれた圧電アクチュエータ20の概略構成の一例を示す断面図である。また、図3(b)は、その圧電アクチュエータ20の上面図である。なお、図3(b)については、電気機械変換素子200の構成が分かり易いように、第1、第2の絶縁保護膜(層間絶縁膜)31、38が除去された状態の図になっている。また、図3(a)は、図3(b)のI−I’矢視断面図である。
図3(a)に示すように、圧電アクチュエータ20は、下部電極23と電気機械変換膜24と上部電極25を備えた電気機械変換素子200を有している。また、図3(b)に示すように、かかる構成の複数の電気機械変換素子200が、基板21の面に沿った所定の方向に配列するように設けられている。この複数の電気機械変換素子200は、基板21上に振動板22を介して形成されている。
下部電極23及び上部電極25のうちのいずれか一方の電極については、複数の電気機械変換素子200について共有に用いられるように1つの共通電極として構成することができる。この場合、下部電極23及びび上部電極25のうちの他方の電極はそれぞれの電気機械変換素子200に対応した互いに独立した個別電極として別個に構成されることとなる。なお、図2の構成例では、下部電極23を共通電極として構成し、上部電極25を電気機械変換素子200毎に独立した別個の個別電極として構成した例を示している。
上部電極25及び下部電極23の上の所定エリアには層間絶縁膜としての第1の絶縁保護膜31が設けられている。第1の絶縁保護膜31は後述するように無機化合物により構成してもよい。また、第1の絶縁保護膜31の所定位置には、上部電極25および下部電極23が他の電極と電気的に接続できるようにコンタクトホール32が形成されている。
図3において、個別電極である上部電極25はそれぞれ、外部回路に接続するための個別電極パッド34に接続されている。上部電極(個別電極)25と個別電極パッド34との間は例えば接続部材35により電気的に接続することができる。
また、図3において、共通電極である下部電極23は、外部回路に接続するための共通電極パッド36に接続されている。と接続された構成とすることができ、下部電極(共通電極)23と共通電極パッド36との間は例えばパッド間接続部材37により電気的に接続することができる。
共通電極パッド36及び個別電極パッド34の上には、第2の絶縁保護膜38が設けられている。第2の絶縁保護膜38は例えば無機化合物により構成してもよい。また、第2の絶縁保護膜38には、共通電極パッド36及び個別電極パッド34それぞれの一部を露出させる開口部が設けられている。
図4は、本実施形態に係る複数ノズルタイプの液体吐出ヘッドの複数の主要構成要素が配列している配列方向における中央部の一構成例を示す部分断面図である。なお、図4は、前述の図2(a)に例示した主要構成要素(圧電素子)を所定の方向に複数配列した例を示しているが、図2(b)に例示した主要構成要素を複数配列するように構成してもよい。
図4において、本実施形態の液体吐出ヘッドの液室基板21は、所定の配列方向(図中の左右方向)に配列するように隔壁21bで区画された液室21aを形成するための複数の開口部21a’を有する。液室基板21の一方の面(図中の下面)側で液室21aの一部を構成するように、複数の液室21aそれぞれに連通する複数のノズル26aを有するノズル板26が設けられている。また、液室基板21の他方の面(図中の上面)側で液室21aの一部を構成するように振動板22が設けられている。振動板22の液室基板21とは反対側の表面には、複数の液室21aそれぞれに対応するように前記所定方向(図中の左右方向)に配列する複数の電気機械変換素子200が設けられている。また、本実施形態の液体吐出ヘッドは、振動板22の液室基板21側とは反対側から液室基板21の隔壁21bに対応するように接合された複数の補強壁28aを有する支持基板(「保持基板」ともいう。)28を備えている。振動板22上に共通電極として形成されている下部電極23の上面には、液室基板21の隔壁21bに対応するように凸状の段差部27が形成され、その段差部27を介して支持基板28の補強壁28aが接合されている。段差部27は、例えば配線として用いられる金属電極27aと、その金属電極を囲むように形成された絶縁膜27bとを用いて形成され、絶縁保護膜31(又は絶縁保護膜38)を介して下部電極23上に形成されている。
なお、支持基板28の補強壁28aは、振動板22の電気機械変換素子200によって駆動されない非活性部分に対応するように設けてもよい。この場合、補強壁28aの位置によって影響を受ける、電気機械変換素子200の駆動による振動板22の変位量のバラツキを抑制できる。
上記構成の液滴吐出ヘッドについて本発明者らが実験・検討したところ、次に示すように、上記配列方向における液室基板21の両端部側で振動板22が特異的な変形特性を有することがわかった。この特異的な変形は、上記配列方向における液室基板21の両端部それぞれの近くに位置する液室21aに対応する振動板22の液室内壁部分の変位量が、その他の液室21aに対応する振動板22の液室内壁部分より大きくなる変形特性である。前述のように振動板22の液室基板21側とは反対側から液室基板21の隔壁21bに対応するように複数の補強壁28aが接合されて隔壁21bの剛性を高めている。ところが、補強壁28aが接合されていることにより、製造時に上記配列方向における液室基板21の両端部側が他の部分(例えば中央部寄りの部分)よりも図中上方に大きく反ってしまう。
上記反りは例えば次のようなメカニズムで発生すると考えられる。上記複数の開口部21a’を有する液室基板21の2つの面のうち振動板22側の面は、上記隔壁(非開口部)21bの剛性を高めるための支持基板28の補強壁28aが接合されている。このため、液室基板21の振動板22側の面はその面に沿った方向に延びにくい。一方、液室基板21のノズル板26側の面は、比較的薄いノズル板26が取り付けられているものの、上記補強壁を有する支持基板は取り付けられていないため、その面に沿った方向に延びやすい。この液室基板21の2つ面における面方向の延びに関する特性差により、製造時に液室基板21が振動板22側に曲がる反りが発生する。特に、前記配列方向における液室基板21の両端部側では、上記延びを規制する力が弱いため、上記反りが大きくなる。
上記液室基板21の反りが大きくなると、その両端部側において振動板22の液室基板21の隔壁21bと支持基板28の補強壁28aとで挟まれた挾持部分に対する拘束力がより強くなる。この振動板22の挾持部分における拘束力が強いと、図5に示すように配列方向における両端部側において電気機械変換素子200で駆動される駆動時の振動板22の振動が上記挾持部分から逃げにくくなるため、振動板22の液室内壁部分の変位量が大きくなる。振動板22の液室内壁部分の変位特性は、その液室内壁部分に対応する液室21aから吐出される液滴の吐出量や液滴吐出時の吐出速度などの液滴吐出特性に大きく影響する。そのため、液室基板21の両端部の近くに位置する液室21aに対応する振動板22の液室内壁部分の特異的な変位特性は、前記配列方向における液滴吐出特性のバラツキの原因となる。
そこで、本実施形態では、前記配列方向における液室基板21の両端部それぞれの近くに位置する開口部21a’に隣接する複数の隔壁21bに対応する複数の補強壁28aの互いに隣り合う補強壁間の間隔L1を大きくしている。より具体的には、液室基板21の両端部それぞれの近くに位置する補強壁間の間隔L1を、その他の複数の隔壁21bに対応する複数の補強壁28aの互いに隣り合う補強壁間の間隔L0よりも大きくしている。
図6は、本実施形態に係る液体吐出ヘッドの電気機械変換素子の配列方向における端部の一構成例を示す部分断面図である。
図6の構成例では、電気機械変換素子200の配列方向の一方の端部(図中の左端部)Aにおける補強壁28aの間隔L1を、両端部以外における補強壁28aの間隔L0よりも大きくしている。また、図5では省略されているが、電気機械変換素子200の配列方向のもう一方の端部における補強壁28aの間隔L1についても、両端部以外における補強壁28aの間隔L0よりも大きくしている。これにより、液室基板21の両端部側での反りを抑制し、その反りの影響で高まりやすい補強壁28aによる上記振動板22の液室内壁部分に隣接する挾持部分に対する拘束力を低下させている。この振動板22の挾持部分に対する拘束力の低下により、液室基板21の両端部両端部の近くに位置する液室21aに対応する振動板22の液室内壁部分の変位量を、その他の液室21aに対応する振動板22の液室内壁部分の変位量と同程度まで抑えることができる。従って、上記配列方向における液滴吐出特性のバラツキを抑制することができる。
図7は、本実施形態に係る液体吐出ヘッドの電気機械変換素子の配列方向における端部の他の構成例を示す部分断面図である。なお、図7において、前述の図6と同様な部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
図7の構成例では、電気機械変換素子200の配列方向の端部(図中の左端部)Aでは、液室21に連通するノズルを形成していない。また、図7では省略されているが、電気機械変換素子200の配列方向のもう一方の端部においても、液室21に連通するノズルを形成していない。この構成の場合、上記液室基板21の両端部では液滴が吐出されないので、その両端部側において隔壁21aの剛性が若干低下しても、その剛性低下によるクロストークなどの液滴吐出特性の問題を解消することができる。
なお、図6及び図7の構成例において、前記間隔が大きくなっている補強壁間に対応する液室(開口部)21a及び電気機械変換素子200は2個以上であってもよい。例えば液室基板21の両端部側それぞれに位置する2個又は3個以上の開口部21a’に隣接する複数の隔壁21bに対応する複数の補強壁28aの互いに隣り合う補強壁間の間隔L1を、他の補強壁間の間隔L0よりも大きくしてもよい。
図8は、本実施形態に係る液体吐出ヘッドの電気機械変換素子の配列方向における端部の他の構成例を示す部分断面図である。なお、図8において、前述の図6と同様な部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
図8の構成例では、前記配列方向における液室基板21の両端部側それぞれに位置する2個の開口部21a’の互いに隣り合う部分の隔壁21bに対応する位置に、補強壁が設けられていない。すなわち、電気機械変換素子200の配列方向の端部(図中の左端部)Aにおける2個の電気機械変換素子200の素子間に補強壁が設けられていない。また、図8では省略されているが、電気機械変換素子200の配列方向のもう一方の端部においても、電気機械変換素子200の素子間に補強壁が設けられていない。このように補強壁を設けないことにより、液室基板21の両端部側での反りを抑制し、その反りの影響で高まりやすい補強壁28aによる上記振動板22の液室内壁部分に隣接する挾持部分に対する拘束力を低下させている。これにより、液室基板21の両端部それぞれの近くに位置する液室21aに対応する振動板22の液室内壁部分の変位量を、その他の液室21aに対応する振動板22の液室内壁部分の変位量と同程度まで抑えることができる。従って、上記液室基板21の液室21aの配列方向における液滴吐出特性のバラツキを抑制することができる。特に、この構成の場合は、前記配列方向の両端部におけるサイズを大きくすることなく、前記配列方向における両端部の液滴吐出特性のバラツキを抑制することができる。
図9は、本実施形態に係る液体吐出ヘッドの電気機械変換素子の配列方向における端部の他の構成例を示す部分断面図である。なお、図9において、前述の図6及び図8と同様な部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
図9の構成例では、電気機械変換素子200の配列方向の端部(図中の左端部)Aでは、液室21に連通するノズルを形成していない。また、図9では省略されているが、電気機械変換素子200の配列方向のもう一方の端部においても、液室21に連通するノズルを形成していない。この構成の場合、両端部では液滴が吐出されないので、両端部において隔壁21aの剛性が若干低下しても、その剛性低下によるクロストークなどの液滴吐出特性の問題を解消することができる。
なお、図8及び図9の構成例において、両端部における素子間に補強壁が設けられていない電気機械変換素子の個数は、3個以上であってもよい。
また、図8及び図9の構成例において、両端部における素子間に補強壁が設けられていない電気機械変換素子の個数は、液滴吐出ヘッド全体の電気機械変換素子の総数(例えば80個以上)の1/20以下であってもよい。この場合、液室基板21の両端部側以外において振動板22の変形量が過剰に低下することによる液滴吐出特性のバラツキを防止できる。
また、図6及び図7の構成例において、前記間隔が大きくなっている補強壁間に位置する電気機械変換素子200は液滴吐出に用いられないダミーの電気機械変換素子であってもよい。図8及び図9の構成例において、前記補強壁28aが設けられていない部分に対応する隔壁21bに隣接する複数の液室(開口部)21aそれぞれに対応する電気機械変換素子200は、液滴吐出に用いられないダミーの電気機械変換素子であってもよい。これらの場合、液室基板21の両端部側の液室から液滴が吐出されないので、液室基板21の両端部側において隔壁21aの剛性が若干低下しても、その剛性低下によるクロストークなどの液滴吐出特性の問題を解消することができる。
なお、上記ダミーの電気機械変換素子については、両端部の電気機械変換素子より内側の電気機械変換素子に設けられていてもよく、変位特性ならびに吐出特性を考慮して決めればよい。
次に、本実施形態に係る液滴吐出ヘッドの製造方法及び構成要素の具体例について説明する。
本実施形態の電気機械変換素子200は、液室基板21上に振動板22を介して形成される。まず、液室基板21上に接合された振動板22上に、下部電極23の電極層、電気機械変換膜24及び上部電極25の電極層が形成される。その後、上部電極25、電気機械変換膜24及び下部電極23を所望の形状にエッチングした後に、絶縁保護膜を作製し、液室基板21側からエッチングし、図2に示すような液体を吐出させるための液室21aを作製している。
高周波での液滴吐出性能を確保するためには、振動板22、電気機械変換膜24及び絶縁保護膜の剛性を高める必要があり、高いヤング率や厚膜化する必要が出てくる。特に振動板22に関しては、応力設計も考慮し、SiO、SiN、Poly−Siの材料からなる複数の層から形成される。また、振動板22は膜厚が1μm以上3μm以下の範囲で作製され、さらには振動板22のヤング率を75GPa以上95GPa以下の範囲にすることで高周波での吐出性能を確保している。
基板21の材料としては特に限定されるものではないが、加工の容易性や、入手しやすさ等を鑑みると、シリコン単結晶基板を用いることが好ましい。シリコン単結晶基板としては、面方位が{100}、{110}、{111}の3種あるが、特に限定されるものではなく、加工の内容等に応じて適切な基板を選択することができる。
例えば、基板21に対してエッチング加工を要する場合には、エッチング加工の内容にあわせて所定の面方位を有する基板を選択することができる。後述する液滴吐出ヘッドを形成する場合を例に説明すると、通常エッチングにより基板に液室を作製するが、この際のエッチング方法としては一般的に異方性エッチングが用いられている。ここで、異方性エッチングとは、結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものであり、例えばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、{100}面に比べて{111}面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位{100}では約54[°]の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位{110}では深い溝を掘ることができ、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができることが分かっている。このため、例えば液滴吐出ヘッドを構成する基板の場合には{110}の面方位を持ったシリコン単結晶基板を好ましく用いることができる。
基板21の厚さは用途等により選択することができ、特に限定されるものではないが、例えば、100〜600[μm]の厚みを持つものであってもよい。
液室21aの幅は、例えば、50μm以上70μm以下の範囲に設定し、さらに好ましくは55μm以上65μm以下になる。この値より大きくになると、残留振動が大きくなり高周波での吐出性能確保が難しくなり、この値より小さくなると、振動板22の変形量(表面変位量)が低下し、十分な吐出電圧が確保できなくなる。
振動板22としては、電気機械変換素子200によって発生した力を受けて、下地膜である振動板22が変形(表面変位)して、圧力室のインク滴を吐出させる機能を有する。そのため、下地膜としては所定の強度を有するものでもよい。振動板22の材料としては、Si、SiO、SiをCVD(Chemical Vapor Deposition)法により作製したものが挙げられる。さらに、前述の図1等に示すような下部電極23及び電気機械変換膜24の線膨張係数に近い線膨張係数を有する材料を選択してもよい。特に、電気機械変換膜24の材料としては、一般的にPZTが使用されることから、PZTの線膨張係数8×10−6(1/K)に近い5×10−6〜10×10−6(1/K)の線膨張係数を有する材料で振動板22を形成してもよい。さらには、7×10−6〜9×10−6(1/K)の線膨張係数を有する材料で振動板22を形成してもよい。振動板22の具体的な材料は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等である。これらの材料を用い、スパッタ法により、又はゾルゲル(Sol−gel)法を用いてスピンコーターにより、振動板22を作製することができる。振動板22の膜厚は0.1〜10[μm]の範囲でもよいし、さらには0.5〜3[μm]の範囲でもよい。この範囲より小さいと前述の圧力室の加工が難しくなり、この範囲より大きいと下地膜として変形(表面変位)しにくくなり、液滴吐出装置に用いた場合に液滴(インク滴)の吐出が不安定になる。
下部電極23及び上部電極25については、特に限定されるものではなく、任意に選択することができる。例えば、下部電極23及び上部電極25は、金属膜や酸化物電極膜により構成することができ、特に金属膜と酸化物電極膜の積層体で構成してもよい。また、下部電極23及び上部電極25はそれぞれ、電気的な抵抗が十分小さい金属層を有してもよい。金属層の金属材料としては、高い耐熱性と低い反応性を有する白金が用いることができる。但し、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあるため、イリジウムや白金−ロジウムなどの白金族元素や、これら合金膜を金属層に使用してもよい。また、白金を使用する場合には下地(特にSiO)との密着性が悪いために、中間層としてTi、TiO、Ta、Ta、Ta等を先に積層することが好ましい。作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着法等を用いることができる。膜厚は、0.05〜1[μm]の範囲に設定してもよいし、0.1〜0.5[μm]の範囲に設定してもよい。
また、下部電極23及び上部電極25は、電気機械変換膜24との界面に導電性を有した酸化物電極層を有してもよい。酸化物電極層の材料としては、例えばSrRuOやLaNiOを用いることができる。酸化物電極膜の成膜方法についても特に限定されるものではないが、例えばスパッタ法により成膜することができる。
下部電極23を構成する酸化物電極層は、その上に作製する電気機械変換膜24(PZT膜)の配向制御にも影響してくるため、配向優先させたい方位によっても選択される材料は異なってくる。本実施形態においては、PZT膜を{100}面に優先配向させたいため、酸化物電極層としては、LaNiO、TiO又はPbTiOからなるシード層を金属層上に作製し、その後PZT膜を形成してもよい。
上部電極25を構成する酸化物電極層としてはSROを用いることできる。酸化物電極層の膜厚は20[nm]〜80[nm]の範囲でもよいし、また30[nm]〜50[nm]の範囲でもよい。この膜厚範囲よりも薄いと初期の変形量(表面変位量)や経時おける変形量(表面変位量)劣化特性については十分な特性が得られない。また、この膜厚範囲を超えると、その後に成膜したPZT膜の絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなるおそれがある。
電気機械変換膜24(圧電体膜)の材料としては、Pbを含んだ酸化物(例えば、PZT)で形成することができる。以下、PZTで形成したときの電気機械変換膜を適宜「PZT膜」と記載する。PZTとは、ジルコン酸鉛(PbTiO)とチタン酸(PbTiO)の固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrOとPbTiOの比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53,Ti0.47)O、一般的にはPZT(53/47)とも示される。
電気機械変換膜24の材料としては、上記PZT以外の複合酸化物としてチタン酸バリウムなども挙げられる。この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。
本実施形態では、電気機械変換膜24としてPZTを使用し、PZTの{100}面を優先配向とする場合について例示している。この場合、Zr/Tiの組成比率:Ti/(Zr+Ti)は、0.45(45%)以上及び0.55(55%)以下の範囲に設定してもよいし、更には0.48(48%)以上及び0.52(52%)以下の範囲に設定してもよい。
電気機械変換膜24におけるPZTの(100)配向の配向度ρ(100)は、例えば0.75以上であり、更に0.85以上であってもよい。結晶配向の配向度ρ(hkl)は、X線回折法のθ−2θ測定で得られる各ピーク強度の総和を1としたときの各々の配向のピーク強度の比率である次式(1)で算出される。
ρ(hkl)=I(hkl)/ΣI(hkl)・・・(1)
ここで、ρ(hkl)は(hkl)面方位の配向度である。また、I(hkl)は、X線回折法のθ−2θ測定における任意の配向に対応するピーク強度であり、ΣI(hkl)は各ピーク強度の総和である。
PZTの(100)配向の配向度ρ(100)が0.75よりも小さいと、圧電歪が十分得られず、変位量を十分確保できなくなる。
電気機械変換膜24の圧電材料は一般式ABOで記述され、A=Pb、Ba、Sr、B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O、(Pb1−x,Sr)(Zr,Ti)O、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を補償する作用を示す。
電気機械変換膜24の作製方法としては特に限定されるものではないが、例えばスパッタ法により、又は、ゾルゲル(Sol−gel)法を用いてスピンコーターにより作製することができる。いずれの場合でも、パターニング化が必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
電気機械変換膜(PZT膜)24をゾルゲル(Sol−gel)法により作製する場合は、例えば次の手順で作製する。まず、酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールにこれらの出発材料を溶解させ均一溶液を得ることで、PZT前駆体溶液が作製できる。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量、添加してもよい。
下部電極等が形成された下地基板全面にPZT膜を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100[nm]以下の膜厚が得られるように前駆体溶液の濃度を調整することが好ましい。
また、インクジェット工法により作製していく場合については、酸化物電極層と同様の作製フローにてパターニングされた膜を得ることができる。表面改質材については、下地の金属層の材料によっても異なるが、酸化物を下地とする場合は、主にシラン化合物を選定し、金属を下地とする場合は主にアルカンチオールを選定することができる。
電気機械変換膜24の膜厚としては特に限定されるものではなく、要求される変形量(表面変位量)等により任意に選択することができる。例えば、その膜厚は1〜3[μm]の範囲でもよいし、さらには1.5[μm]〜2.5[μm]の範囲でもよい。この範囲より小さいと図2に示すような液室21aの加工が難しくなり、この範囲より大きいと下地が変形・変位しにくくなり、液滴の吐出が不安定になる。
第1の絶縁保護膜31、第2の絶縁保護膜38及び接続部材35、37は、例えば次のように作製することができる。
第1の絶縁保護膜31は、成膜及びエッチングの工程による電気機械変換素子200へのダメージを防ぐとともに、大気中の水分が透過しづらい材料を用いてもよい。このため、例えば緻密な無機材料(無機化合物)を用いてもよい。また、第1の絶縁保護膜31は、薄膜で高い保護性能を得るには、酸化物、窒化物、炭化膜を用いてもよい。また、第1の絶縁保護膜31と接触する下地の材料(上部電極25及び下部電極23及び電気機械変換膜24の材料や基板21上面の材料)と密着性が高い材料であってもよい。このような材料としては、例えば、Al、ZrO、Y、Ta、TiOなどのセラミクス材料に用いられる酸化膜が挙げられる。
第1の絶縁保護膜31の成膜方法は特に限定されるものではないが、電気機械変換素子200を損傷しない成膜方法を選択してもよい。例えば、蒸着法又はALD法を用いることができ、中でも適用できる材料の選択肢が多いALD法により成膜してもよい。特にALD法によれば、膜密度の非常に高い薄膜を作製することができ、プロセス中での電気機械変換素子へのダメージを抑制することができる。
第1の絶縁保護膜31の膜厚は特に限定されるものではないが、電気機械変換素子の保護性能を確保できる十分な厚さであり、かつ、電気機械変換素子の変位を阻害しないように可能な限り薄くしてもよい。例えば、第1の絶縁保護膜31の膜厚は20[nm]以上、100[nm]以下の範囲であってもよい。100[nm]より厚い場合は、電気機械変換素子200の変位を阻害する場合がある。一方、20[nm]より薄い場合は電気機械変換素子200の保護層としての機能が十分ではなく、電気機械変換素子200の性能が低下する場合がある。
また、第1の絶縁保護膜31を複数層からなる構成としてもよい。例えば2層から構成する場合、2層目の絶縁保護膜を厚くするため、電気機械変換素子の振動変位を著しく阻害しないように上部電極付近において2層目の絶縁保護膜に開口部を形成する構成も挙げられる。この場合、2層目の絶縁保護膜としては、任意の酸化物、窒化物、炭化物またはこれらの複合化合物を用いることができる。例えば半導体デバイスで一般的に用いられるSiOを用いてもよい。成膜は任意の手法を用いることができ、CVD法、スパッタリング法等により成膜することができる。特に電極形成部等のパターン形成部の段差被覆を考慮すると等方的に成膜できるCVD法を用いてもよい。2層目の絶縁保護膜の膜厚についても特に限定されるものではなく、各電極に印加される電圧を考慮し、絶縁破壊されない膜厚を選択することができる。例えば、絶縁保護膜に印加される電界強度を、絶縁破壊しない範囲に設定する。さらに、絶縁保護膜の下地の表面性やピンホール等を考慮すると膜厚は200[nm]以上にしてもよく、更には500[nm]以上にしてもよい。
接続部材35、37の材料は特に限定されるものではなく、各種導電性材料を用いることができる。例えば、接続部材35、37は、Cu、Al、Au、Pt、Ir、Ag合金、Al合金から選択されるいずれかの金属電極材料で構成することができる。
又は接続部材35、37の作製方法についても特に限定されるものではなく、任意の方法により形成することができる。例えば、接続部材35、37は、スパッタ法又はスピンコート法を用いて作製し、その後フォトリソエッチング等により所望のパターンを得ることができる。
また、接続部材35、37の膜厚についても特に限定されるものではなく、例えば0.1[μm]以上及び20[μm]以下の範囲でもよく、さらには、0.2[μm]以上及び10[μm]以下の範囲でもよい。この範囲よりも膜厚が薄いと、抵抗が大きくなり電極に十分な電流を流すことができない場合がある。また、上記範囲よりも膜厚が厚いと製造プロセスに時間を要するため生産性が低下する場合がある。
また、第1の絶縁保護膜31を設ける場合、接続部材35、37はそれぞれ、第1の絶縁保護膜31にコンタクトホール部を設け、このコンタクトホール部において共通電極及び個別電極と接続することができる。コンタクトホール部のサイズは特に限定されるものではないが、例えば10[μm]×10[μm]の大きさとすることができる。また、コンタクトホール部における接触抵抗として、共通電極については10[Ω]以下、個別電極については1[Ω]以下となるように構成してもよい。このような範囲とすることにより、各電極に十分な電流を安定して供給できる。特に、共通電極については5[Ω]以下、個別電極については0.5[Ω]以下としてもよい。この範囲より大きいと、十分な電流を供給することができなくなり、液滴を吐出する際に不具合が発生する場合がある。
第2の絶縁保護膜38は、接続部材35、37を保護する機能を有するパシベーション層である。第2の絶縁保護膜38は、個別電極パッド34及び共通電極パッド36の部分を除き、接続部材35、37上を被覆する。これにより、これらの接続部材35、37に安価なAlもしくはAlを主成分とする合金材料を用いた場合でも、電気機械変換素子200の信頼性を高めることができる。また、これらの接続部材35、37に安価な材料を用いることができるため、電気機械変換素子200のコストを低減することができる。
第2の絶縁保護膜38の材料としては、特に限定されるものではなく、任意の無機材料、有機材料を使用することができ、例えば透湿性の低い材料を使用してもよい。無機材料としては、例えば、酸化物、窒化物、炭化物等を用いることができる。また、有機材料としては、例えば、ポリイミド、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。但し、有機材料の場合、絶縁保護膜として機能させるためには、その膜厚が厚くなり、パターニングを行うことが困難な場合がある。このため、薄膜で配線保護機能を発揮できる無機材料を用いてもよい。特に、接続部材35、37としてAl配線を用いた場合には、第2の絶縁保護膜としては半導体デバイスで実績のあるSiを用いてもよい。
第2の絶縁保護膜38の膜厚は200[nm]以上としてもよく、さらには500[nm]以上としてもよい。この範囲よりも膜厚が薄い場合は、十分なパシベーション機能を発揮できないため、接続部材の腐食による断線が発生する等して信頼性を低下させてしまう場合がある。
また、第2の絶縁保護膜38は、電気機械変換素子200上に開口部をもつ構造であってもよい。また、後述する液滴吐出ヘッドに適用する場合、第2の絶縁保護膜38はさらに振動板の部分にも開口部を有する構造としてもよい。これにより、より高効率かつ高信頼性の電気機械変換素子とすることができる。
また、第2の絶縁保護膜38は、共通電極パッド36及び個別電極パッド34を露出するための開口部を形成してもよい。この開口部の形成には、フォトリソグラフィー法とドライエッチングを用いることができる。
また、共通電極パッド36及び個別電極パッド34の面積については特に限定されるものではない。但し、共通電極パッド36及び個別電極パッド34と第2の絶縁保護膜38とを形成した後に分極処理を行う場合、各パッド36、34から電荷が供給されるため、分極処理が十分に行えるように面積を設定してもよい。例えば、各パッドの大きさは50×50[μm]以上に設定してもよく、さらには100×300[μm]以上に設定してもよい。共通電極パッド36及び個別電極パッド34の面積が、上記範囲よりも小さいと、十分な分極処理を行うことができず、連続駆動後の経時における変形量(表面変位量)の劣化が大きくなる場合がある。
ここまで作製された圧電素子に対して、分極処理装置を用いて分極処理を行う。
図10(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係る電気機械変換素子の製造工程において電気機械変換層の分極処理に用いられる分極処理装置40の概略構成例を示す斜視図及び正面図である。
図10において、分極処理装置40は、コロナ電極41と、グリッド電極42と、対向電極を有するステージ43とを備えている。コロナ電極41及びグリッド電極42はそれぞれコロナ電極用電源411及びグリッド電極用電源421に接続されている。コロナ電極41は例えばワイヤー形状を有するものであってもよい。グリッド電極42については、メッシュ加工を施し、コロナ電極41に高電圧を印加したときに、コロナ放電により発生するイオンや電荷等を効率良く下のサンプルステージに降り注ぐように構成してもよい。また、放電処理対象(試料)である多数の電気機械変換素子が形成されたウェハ基板45に対して電荷が流れやすくするように、ウェハ基板45を設置するステージ43にはアース線44が接続された構成にしてもよい。また、ステージ43には、ウェハ基板45を加熱できるように温調機能を設けてもよい。この際の加熱温度は特に限定されるものではないが、最大350[℃]まで加熱できるように構成してもよい。
コロナ電極41及びグリッド電極42それぞれに印加する電圧の大きさや、ウェハ基板45と各電極間の距離は特に限定されるものではない。例えば、ウェハ基板45に対して十分に分極処理を施すことができるように、コロナ電極41及びグリッド電極42それぞれに印加する電圧の大きさやウェハ基板45と各電極間の距離は試料に応じて調整し、コロナ放電の強弱をつけるようにしてもよい。
図11は、分極処理装置40における分極処理の説明図である。
図11に示すように、コロナ電極41(例えば、コロナワイヤー)を用いてコロナ放電させる場合、分極処理は、大気中の分子401をイオン化させることで陽イオンを発生する。発生した陽イオンは、ウェハ基板の電気機械変換素子200の例えば共通電極パッドや個別電極パッドを介して電気機械変換膜に流れ込み、電気機械変換素子200に電荷が蓄積した状態となる。そして、上部電極と下部電極との電荷差によって内部電位差が生じて、分極処理が行われる。
上記分極処理に必要な電荷量Qについては特に限定されるものではないが、例えば電気機械変換素子200に1.0×10−8[C]以上の電荷量が蓄積されるようにしてもよい。また、電気機械変換素子200に4.0×10−8[C]以上の電荷量が蓄積されるようにしてもよい。このような範囲の電荷量を電気機械変換素子200に蓄積させることにより、より確実に後述の分極率となるように分極処理を行うことができる。蓄積される電荷量が、1.0×10−8[C]に満たない場合、電気機械変換素子の連続駆動後の変位劣化について十分な特性が得られない場合がある。
電気機械変換素子200の分極処理の状態については、電気機械変換素子200のP−Eヒステリシスループから判断することができる。
図12は、電気機械変換素子200の分極処理の状態を判断することができるP−Eヒステリシスループの例を示している。図12(a)は、分極処理を行う前の電気機械変換素子のP−Eヒステリシスループの一例を示す特性図であり、図12(b)は、分極処理後の電気機械変換素子のP−Eヒステリシスループの一例を示す特性図である。
図12(a)及び(b)に示すように、電気機械変換素子に電圧を印加して±150[kV/cm]の電界強度かけてヒステリシスループを測定した場合に、電気機械変換素子に電圧を印加する前の0[kV/cm]時の分極をPiniとする。また、電気機械変換素子に+150[kV/cm]の電圧印加後に0[kV/cm]まで戻したときの0[kV/cm]時の分極をPrとする。このとき、Pr−Piniの値を「分極率」として定義し、この分極率により、分極の状態が適切であるか否かを判断することができる。具体的には、図12(b)に示すように、分極処理を行った後の電気機械変換素子について測定した分極率Pr−Piniの値が所定値以下になった場合に、分極の状態が適切であると判断することができる。例えば、分極率Pr−Piniの値が10[μC/cm]以下になった場合に分極の状態が適切であると判断してよい。また、分極率Pr−Piniの値が5[μC/cm]以下となった場合に、分極の状態が適切であると判断してよい。Pr−Piniの値が十分に小さくなっていない場合は、分極が十分になされておらず、電気機械変換素子の所定駆動電圧に対する変形量(表面変位量)が安定しない状態となる。また、電気機械変換素子の連続駆動後の変形量(表面変位量)の劣化を抑制できない場合がある。
次に、本実施形態に係る液滴吐出ヘッドのより具体的な実施例について、比較例とともに説明する。
〔実施例1〕
実施例1における電気機械変換素子200の部分の構成は、前述の図2(b)の構成を採用し、図6、7に示すように電気機械変換素子200の配列方向の両端部における液室の隔壁のみを大きくした。
実施例1では、6インチシリコンウェハにSiO(膜厚:600[nm])、Si(膜厚:200[nm])、SiO(膜厚:100[nm])、SiN(膜厚:150[nm])、SiO(膜厚:1300[nm])、SiN(膜厚:150[nm])、SiO(膜厚:100[nm])、Si(膜厚:200[nm])、SiO(膜厚:600[nm])の順に形成した振動板22を作製した。
次に、振動板22上に下部電極23を次のように形成した。まず、下部電極23の密着膜として、チタン膜(膜厚:20[nm])を成膜温度350℃でスパッタ装置にて成膜した。その後、RTAを用いて750℃にて熱酸化し、引き続き金属膜として白金膜(膜厚160[nm])を成膜温度400℃でスパッタ装置にて成膜した。
次に、下地層となるPbTiO層(PT層)としてPb:Ti=1:1に調整した溶液(PT溶液)を準備した。更に、電気機械変換膜(PZT層)24としてPb:Zr:Ti=115:49:51に調整された溶液(PZT前駆体塗布液)とを準備した。これらの溶液を用いてスピンコート法により膜を成膜した。
PZTの具体的なPZT前駆体塗布液の合成については、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、先記の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。このPZT濃度は0.5[モル/リットル]にした。
PT溶液に関してもPZT同様に作製し、これらの液を用いて、最初にPT層をスピンコートにより成膜し、成膜後、120℃乾燥を実施し、その後PZTの液をスピンコートにより成膜し、120℃乾燥→400℃熱分解を行った。3層目の熱分解処理後に、結晶化熱処理(温度730℃)をRTA(急速熱処理)にて行った。このときPZTの膜厚は240[nm]であった。この工程を計8回(24層)実施し、約2[μm]のPZT膜厚を得た。
次に、第3、4の電極の酸化物膜としてSrRuO膜(膜厚:40[nm])、金属膜としてPt膜(膜厚:125[nm])をスパッタ成膜した。次に、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィでレジストパターンを形成した。その後、ICP(誘導結合プラズマ)エッチング装置(サムコ株式会社製)を用いて例えば前述の図3に示すようなパターンを作製した。次に、第1の絶縁保護膜として、ALD(原子層堆積)工法を用いてAl膜を50[nm]成膜した。このとき原材料としてAlについては、TMA(シグマアルドリッチ社)、Oについてはオゾンジェネレーターによって発生させたOを交互に積層させることで、成膜を進めた。その後、図3に示すように、エッチングによりコンタクトホール部を形成する。その後、第5、第6の電極およびメタル配線としてAlをスパッタ成膜し、エッチングによりパターニング形成し、第2の絶縁膜としてSiをプラズマCVD法により500[nm]成膜し、電気機械変換素子200を作製した。電気機械変換素子200は1つのチップ内に300個一列に並ぶようにレイアウトした。
また、同様の工程により、支持基板28を接合するための段差部(接合面段差)27を形成する。この段差部27は液室21aの隔壁21bに対応する位置に設けられている。第1の絶縁保護膜を形成する工程で、液室21aの隔壁21bに対応する位置に、第1の絶縁保護膜、メタル配線、第2の絶縁保護膜の各層と同じ層を形成している。すなわち、段差部27は、第1の絶縁保護膜と同じ層、メタル配線と同じ層、第2の絶縁保護膜と同じ層を積層したもので構成されている。また、段差部27は、電気機械変換素子200の活性部には設けられていなく、かつ、液室21aの隔壁21bに対応する部分の配列方向における外側に設けられていない。すなわち、段差部27は、振動板22の変形領域に影響を及ぼさない位置で形成されている。
この後、前述の図11の装置を用いてコロナ帯電処理により分極処理を行った。コロナ帯電処理にはφ50[μm]のタングステンのワイヤを用い、グリッド電極としてステンレス製の開口率60%のグリッド電極を用いた。分極処理条件としては、処理温度80[℃]、コロナ電圧9[kV]、グリッド電圧1.5[kV]、処理時間30[s]、コロナ電極−グリッド電極間距離4[mm]、グリッド電極−ステージ間距離4[mm]にて行った。
また第5、第6の電極に接続するための共通電極、個別電極パッドを形成したが、個別電極間パッドの距離は80[μm]とした。
その後、液室基板21の裏面のSiをエッチングし、図2に示すように液室21a(幅:60[μm])まで形成された電気機械変換素子200を作製した。このとき液室21aを有する液室基板21を支持するため、前述の図6に示すように支持基板28を接合した後に、ウエハ裏面からSiエッチングを実施した。
実施例1では、電気機械変換素子200の配列方向の両端部以外における補強壁28aの間隔L0(電気機械変換素子200を覆う開口部の隔壁の幅)は75[μm]とした。これに対し、電気機械変換素子200の配列方向の両端部における補強壁28aの間隔L1は上記L0よりも大きい150[μm]とした。その後、ダイシングすることで基板をチップ化し、個別化された液滴吐出ヘッドが得られた。
〔実施例2〕
実施例2では、電気機械変換素子200の配列方向の両端部における補強壁28aの間隔L1を225[μm]とした以外は、実施例1と同等である。
〔実施例3〕
実施例3では、下部電極23の電極層を形成したあと、通常のフォトリソグラフィでレジストパターンを形成した後、ICPエッチング装置(サムコ株式会社製)を用いて下部電極23をパターン化した。その後、実施例1と同様にPZTを成膜し、PZT膜をパターン化して電気機械変換膜24とし、その後、上部電極25を成膜した。上部電極25はPZT膜に沿ってパターン化は実施していない。その後は実施例1と同等の方法で作製した。
また、実施例3では、電気機械変換素子200の配列方向の両端部における補強壁28aの間隔L1を150[μm]とした。
〔実施例4〕
実施例4では、電気機械変換素子200の配列方向の両端部において電気機械変換素子200を覆う支持基板の開口は、3つの電気機械変換素子200が含められるように形成した。すなわち、電気機械変換素子200の配列方向の両端部における補強壁28aの間隔L1を、両端部以外における補強壁28aの間隔L0(75[μm])の3倍の225[μm]にした。それ以外の構成は、実施例1と同等である。
〔実施例5〕
実施例5では、前述の図8に示すように、電気機械変換素子200の配列方向の両端部において電気機械変換素子200を覆う支持基板28の開口は、2つの電気機械変換素子200が含められるように形成した。すなわち、電気機械変換素子200の配列方向の両端部における補強壁28aの間隔L1を、両端部以外における補強壁28aの間隔L0(75[μm])の2倍の150[μm]にした。それ以外の構成は、実施例1と同等である。
〔実施例6〕
実施例6では、下部電極23の電極層を形成したあと、通常のフォトリソグラフィでレジストパターンを形成した後、ICPエッチング装置(サムコ株式会社製)を用いて下部電極23をパターン化した。その後、実施例1と同様にPZTを成膜し、PZT膜をパターン化して電気機械変換膜24とし、その後、上部電極25を成膜した。上部電極25はPZT膜に沿ってパターン化は実施していない。その後は実施例1と同等の方法で作製した。
また、実施例6では、実施例5同様に、電気機械変換素子200の配列方向の両端部において電気機械変換素子200を覆う支持基板の開口は、2つの電気機械変換素子200が含められるように形成した。すなわち、電気機械変換素子200の配列方向の両端部における補強壁28aの間隔L1を、両端部以外における補強壁28aの間隔L0(75[μm])の2倍の150[μm]にした。それ以外の構成は、実施例1と同等である。
〔比較例1〕
比較例1では、電気機械変換素子200の配列方向の両端部における補強壁28aの間隔L1を、両端部以外における補強壁28aの間隔L0と同じ75[μm]とした以外は、実施例1と同等である。
〔比較例2〕
電気機械変換素子200の配列方向の両端部において電気機械変換素子200を覆う支持基板の開口は、20個の電気機械変換素子200が含められるように形成した。すなわち、電気機械変換素子200の配列方向の両端部における補強壁28aの間隔L1を、両端部以外における補強壁28aの間隔L0(75[μm])の20倍の1500[μm]にした。それ以外の構成は、実施例4と同等である。
上記実施例1〜6及び比較例1、2で作製した電気機械変換素子200を含む液滴吐出ヘッドについて、振動板22の液室内壁部分及び電気機械変換素子200の表面変位特性の配列方向におおけるバラツキの評価を行った。これらの表面変位は、液室基板21の裏面側(例えば図6の下側)から掘加工を行い、振動評価を実施した。具体的には、電気機械変換素子200に150[kV/cm]の電界を形成する所定のパルス波形(1[kHz]の三角波)の駆動電圧を印加したときの振動板22の液室内壁部分である下面の表面変形量を、レーザードップラー振動計で計測した。表面変位特性のバラツキの評価は、配列方向における振動板22の液室内壁部分及び電気機械変換素子200の表面変位の平均値に対する、両端部での電気機械変換素子200の表面変位の増加量の比率(%)で評価した。すなわち、振動板22の液室内壁部分及び電気機械変換素子200の表面変位の平均値をDaとし、両端部側での表面変位をDtとしたとき、(Dt−Da)/Daの値(%)を表面変位特性のバラツキの値とした。
表1に、実施例1〜6及び比較例1、2における表面変位特性のバラツキの評価結果を示す。
表1の結果に示すように、実施例1〜6では、配列方向の端部における振動板22の液室内壁部分及び電気機械変換素子200の特異的な変位挙動は改善され、表面変位特性のバラツキを3.5%〜4.2%の範囲に抑制できることを確認した。但し、電気機械変換素子200の配列方向における液室基板21の両端部における補強壁28aの間隔L1を広げることによって液室基板21の隔壁21aの剛性が低下して液滴の吐出特性に影響を及ぼす場合もある。そのため、上記両端部における補強壁28aの間隔L1を広げる場合は、液室基板21の隔壁21aの剛性とつき合わせて考慮する必要がある。
表1の結果に示すように、上記表面変位特性のバラツキは、上部電極25及び下部電極23のパターニングのされ方によっても違いはなく、両端部における電気機械変換素子200の特異的な変位挙動は改善されている。
一方、比較例1、2ではそれぞれ、上記表面変位特性のバラツキの値が12.1%及び10.8%に達し、両端部における電気機械変換素子200が特異的な変位挙動を示したままとなった。
次に、本実施形態に係る液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置について説明する。
図13は、本実施形態に係る液滴吐出装置の一例を示す斜視図であり、図14は図13の液滴吐出装置の機構部の一例を示す側面図である。図13及び図14の液滴吐出装置は、画像形成装置であるインクジェット記録装置の例である。
本実施形態の液滴吐出装置は、記録装置本体91の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部92等を収納している。
記録装置本体91の下方部には前方側から多数枚の用紙93を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)94を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙93を手差しで給紙するための手差しトレイ95を開倒することができる。そして、給紙カセット94或いは手差しトレイ95から給送される用紙93を取り込み、印字機構部92によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ96に排紙する。
印字機構部92は、左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド101と従ガイドロッド102とでキャリッジ103を主走査方向に摺動自在に保持している。キャリッジ103にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッドからなるヘッド104を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列している。そして、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ103にはヘッド104に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ105を交換可能に装着している。
インクカートリッジ105は、上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有している。そして、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、記録ヘッドとしてここでは各色のヘッド104を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
ここで、キャリッジ103は、後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド101に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド102に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ103を主走査方向に移動走査するため、主走査モーター107で回転駆動される駆動プーリ108と従動プーリ109との間にタイミングベルト110を張装している。このタイミングベルト110をキャリッジ103に固定しており、主走査モーター107の正逆回転によりキャリッジ103が往復駆動される。
次に、給紙カセット94にセットした用紙93をヘッド104の下方側に搬送する機構について説明する。まず、給紙カセット94から用紙93を分離給装する給紙ローラ111及びフリクションパッド112と、用紙93を案内するガイド部材113と、給紙された用紙93を反転させて搬送する搬送ローラ114を有している。そして、この搬送ローラ114の周面に押し付けられる搬送コロ115及び搬送ローラ114からの用紙93の送り出し角度を規定する先端コロ116と、を設けている。搬送ローラ114は、副走査モーター117によってギヤ列を介して回転駆動される。
キャリッジ103の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ114から送り出された用紙93をヘッド104の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材119を設けている。この印写受け部材119の用紙搬送方向下流側には、用紙93を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ121、拍車122を設けている。さらに用紙93を排紙トレイ96に送り出す排紙ローラ123及び拍車124と、排紙経路を形成するガイド部材125、126とを配設している。
記録時には、キャリッジ103を移動させながら画像信号に応じてヘッド104を駆動することにより、停止している用紙93にインクを吐出して1行分を記録し、用紙93を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙93の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙93を排紙する。
また、キャリッジ103の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド104の吐出不良を回復するための回復装置127を配置している。回復装置127は、キャップング手段と吸引手段とクリーニング手段とを有している。キャリッジ103は印字待機中には、この回復装置127側に移動されてキャッピング手段でヘッド104をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド104の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出す。これにより、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
本実施形態の液滴吐出装置においては、前述の液滴吐出ヘッドを備えている。このため、液滴吐出ヘッドの電気機械変換素子はインク吐出特性を良好に保持できる変形量(表面変位量)を十分確保すると共に、連続吐出しても変形量(表面変位量)の劣化が十分抑制されるので、液滴吐出装置は安定したインク吐出を行うことが可能になる。
本実施形態の画像形成装置(インクジェット記録装置)においては前述の実施形態及び実施例1〜6で作製した液滴吐出ヘッドを搭載している。従って、電気機械変換素子(圧電素子)200の配列方向における変形量(表面変位量)のバラツキが抑制されているため、安定した濃度ムラのないインク滴吐出特性が得られ、画像品質が向上する。
また、上記実施例1〜6で作製した電気機械変換素子を用いて液体吐出ヘッドを作製し、液の吐出評価を行った。粘度を5[cp]に調整したインクを用いて、単純台形波形により−10〜30[V]の印加電圧を加えたときの吐出状況を確認したところ、全てどのノズル孔からも吐出できていることを確認した。
なお、上記実施形態は、液滴吐出ヘッドから吐出した液滴を用紙に着弾させて画像を形成する画像形成装置に適用した場合について説明したが、上記実施形態で例示された構成などは、画像形成装置以外の液滴吐出装置にも適用することができる。例えば、上記実施形態で例示された構成などは、液滴を着弾させて付与する媒体が、用紙以外の媒体(記録媒体、転写材、記録紙)である液滴吐出装置の場合も同様に適用することができる。また、液滴を着弾させて付与する媒体が、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体である液滴吐出装置の場合も同様に適用することができる。また、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与する装置だけでなく、文字等の意味を持たないパターンを媒体に付与する(単に液滴を吐出する)装置にも適用することができる。また、パターニング用の液体レジストを吐出して被着弾媒体上に着弾させる装置にも適用することができる。また、遺伝子分析試料(DNA試料)を吐出して被着弾媒体上に着弾させる液滴吐出装置や、三次元造型用の液滴吐出装置などにも適用することができる。また、上記実施形態に係る画像形成装置には、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
所定の配列方向に配列する複数の液室21aをそれぞれ形成するように互いに独立した複数の開口部21a’を有する液室基板21と液室基板21の複数の液室21aそれぞれに連通する複数のノズル26aを有し、液室基板21の一方の面側で各液室21aの内壁を構成するように設けられたノズル板26と、液室基板21の他方の面側で各液室21aの内壁を構成するように設けられた振動板22と、振動板22の液室基板21側とは反対側の表面に、複数の液室21aそれぞれに対応するように配列させて設けられた複数の電気機械変換素子200と、液室基板21の前記配列方向における複数の開口部21a’が形成されていない複数の隔壁21bなどの非開口部に対応するように、振動板22の液室基板21側とは反対側に直接又は中間層を介して接合された複数の補強壁28aを有する支持基板28と、を備えた液滴吐出ヘッドであって、前記配列方向における液室基板21の両端部それぞれの近くに位置する一又は複数の開口部に隣接する複数の非開口部に対応する複数の補強壁28aの互いに隣り合う補強壁間の間隔L1は、その他の複数の非開口部に対応する複数の補強壁28aの互いに隣り合う補強壁間の間隔L0よりも大きい。
本態様Aによれば、上記実施形態について説明したように、前記配列方向において液室基板の複数の開口部が形成されていない複数の非開口部に対応するように、振動板の液室基板側とは反対側に直接又は中間層を介して複数の補強壁が接合されている。これらの複数の補強壁により液室基板の複数の非開口部それぞれを補強し、非開口部の剛性を高めることができる。
また、以下に示すように補強壁間の間隔を規定することにより、前記配列方向における液室基板の両端部の近くに位置する液室に対応する振動板の液室内壁を構成している液室内壁部分の特異的な変位特性を抑制することができる。
前記配列方向における液室基板の両端部の近くに位置する液室(開口部)に対応する振動板の液室内壁部分は、他の液室に対応する振動板の液室内壁部分よりも駆動時の変位量が大きくなる特異的な変位特性を有するおそれがある。この振動板の液室内壁部分の特異的な変位特性の原因について、本発明者らが実験及び検討を行った結果、前記配列方向における液室基板の両端部側での液室基板の反りが影響していることがわかった。すなわち、上記構成の液滴吐出ヘッドでは、上記複数の開口部を有する液室基板の2つの面のうち振動板側の面は、振動板を介して、上記非開口部の剛性を高めるための支持基板の補強壁が接合されている。このため、液室基板の振動板側の面はその面に沿った方向に延びにくい。一方、液室基板のノズル板側の面は、比較的薄いノズル板が取り付けられているものの、上記補強壁を有する支持基板は取り付けられていないため、面に沿った方向に延びやすい。この液室基板の2つ面における面方向の延びに関する特性差により、製造時に液室基板が振動板側に曲がる反りが発生する。特に、前記配列方向における液室基板の両端部側では、上記延びを規制する力が弱いため、上記反りが大きくなる。この液室基板の両端部側で強い反りが発生すると、その両端部それぞれの近くに位置する液室に対応する振動板の液室内壁部分に隣接する挾持部分(液室基板の非開口部と支持基板の補強壁とで挟まれている部分)を拘束する拘束力がより強くなる。この振動板の挾持部分における上記拘束力が強いと、その振動板を電気機械変換素子で駆動したときに振動板の振動が上記挾持部分から逃げにくくなり、振動板の液室内壁部分に振動エネルギーがより集中し、振動板の液室内壁部分の変位量が大きくなる。従って、上記配列方向における液室基板の両端部それぞれの近くに位置する液室に対応する振動板の液室内壁部分の駆動時の変位量が、他の液室に対応する振動板の液室内壁部分よりも大きくなる特異的な変形特性を有する。以上示したように、上記配列方向における液室基板の両端部側での大きな反りの影響により、前記配列方向における液室基板の両端部の近くに位置する液室(開口部)に対応する振動板の液室内壁部分が上記特異的な変位特性を有することがわかった。
本態様Aでは、前記配列方向における液室基板の両端部の近くに位置する液室に対応する振動板の液室内壁部分における特異的な変位特性について得られた知見により、次のように補強壁間の間隔を規定している。すなわち、前記配列方向における液室基板の両端部それぞれの近くに位置する一又は複数の開口部に隣接する複数の非開口部に対応する複数の補強壁の補強壁間の間隔を、その他の複数の非開口部に対応する複数の補強壁の補強壁間の間隔よりも大きくしている。このように液室基板の両端部それぞれの近くでの補強壁間の間隔を大きくすることにより、液室基板の振動板側の面に沿った方向の延びを規制する力を低下させ、前述の製造時に発生する液室基板の両端部側での反りを抑制できる。このように液室基板の両端部側での反りを抑制できるため、その反りの影響で高まりやすい前述の振動板の液室内壁部分に隣接している挾持部分に対する拘束力を低下させている。この振動板の挾持部分に対する拘束力の低下により、振動板を電気機械変換素子で駆動したときの振動板の振動が挾持部分を介して若干逃げるようになるため、前記振動板の液室内壁部分への振動エネルギーの集中を緩和できる。よって、液室基板の両端部それぞれの近くに位置する液室に対応する振動板の液室内壁部分の変位量を、他の液室に対応する振動板の液室内壁部分と同程度まで抑えることができる。従って、上記液室基板の液室の配列方向における液滴吐出特性のバラツキを抑制することができる。
以上のように、液室基板の液室が形成される開口部に隣接する非開口部の剛性を高めることができるとともに、液室基板の液室の配列方向における液滴吐出特性のバラツキを抑制することができる。
(態様B)
上記態様Aにおいて、前記間隔が大きくなっている補強壁間に位置する電気機械変換素子は、液滴吐出に用いられないダミーの電気機械変換素子である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、前記間隔が大きくなっている補強壁間に位置する液室に圧力変化は発生しないことにより、当該液室に連通するノズルから液滴が吐出されない。従って、上記液室基板の両端部側において隔壁21aの剛性が若干低下しても、その剛性低下によるクロストークなどの液滴吐出特性の問題を解消することができる。
(態様C)
上記態様A又はBにおいて、前記ノズル板は、前記間隔が大きくなっている補強壁間に対応する開口部によって形成される液室に連通するノズルを有していない。
これによれば、上記実施形態について説明したように、前記間隔が大きくなっている補強壁間に位置する液室に隣接する隔壁の剛性が若干低下しても、その剛性低下によるクロストークなどの液滴吐出特性の問題を解消することができる。
(態様D)
所定の配列方向に配列する複数の液室21aをそれぞれ形成するように互いに独立した複数の開口部21a’を有する液室基板21と液室基板21の複数の液室21aそれぞれに連通する複数のノズル26aを有し、液室基板21の一方の面側で各液室21aの内壁を構成するように設けられたノズル板26と、液室基板21の他方の面側で各液室21aの内壁を構成するように設けられた振動板22と、振動板22の液室基板21側とは反対側の表面に、複数の液室21aそれぞれに対応するように配列させて設けられた複数の電気機械変換素子200と、液室基板21の前記配列方向における複数の開口部21a’が形成されていない複数の隔壁21bなどの非開口部に対応するように、振動板22の液室基板21側とは反対側に直接又は中間層を介して接合された複数の補強壁28aを有する支持基板28と、を備えた液滴吐出ヘッドであって、前記配列方向における前記液室基板の両端部側それぞれに位置する二以上の開口部の互いに隣り合う部分の非開口部に対応する位置に、前記補強壁が設けられていない。
これによれば、上記実施形態について説明したように、前記配列方向において液室基板の複数の開口部が形成されていない複数の非開口部に対応するように、振動板の液室基板側とは反対側に直接又は中間層を介して複数の補強壁が接合されている。これらの複数の補強壁により液室基板の複数の非開口部それぞれを補強し、非開口部の剛性を高めることができる。
また、本態様Dでは、前記配列方向における液室基板の両端部側それぞれに位置する二以上の開口部の互いに隣り合う部分の非開口部に対応する位置に、補強壁が設けられていない。このように補強壁を設けないことにより、液室基板の振動板側の面に沿った方向の延びを規制する力を低下させ、前述の製造時に発生する液室基板の両端部側での反りを抑制できる。このように液室基板の両端部側での反りを抑制できるため、その反りの影響で高まりやすい前述の振動板の液室内壁部分に隣接している挾持部分に対する拘束力を低下させている。この振動板の挾持部分に対する拘束力の低下により、振動板を電気機械変換素子で駆動したときの振動板の振動が挾持部分を介して若干逃げるようになるため、前記振動板の液室内壁部分への振動エネルギーの集中を緩和できる。よって、液室基板の両端部それぞれの近くに位置する液室に対応する振動板の液室内壁部分の変位量を、他の液室に対応する振動板の液室内壁部分と同程度まで抑えることができる。従って、上記液室基板の液室の配列方向における液滴吐出特性のバラツキを抑制することができる。
以上のように、液室基板の液室が形成される開口部に隣接する非開口部の剛性を高めることができるとともに、液室基板の液室の配列方向における液滴吐出特性のバラツキを抑制することができる。特に、本態様Dでは、液室基板の両端部における補強壁の位置を配列方向における外側に変更する必要がないため、液室基板の配列方向における大サイズ化を回避できる。
(態様E)
上記態様Dにおいて、前記液室基板に有する前記複数の開口部の総数は80以上であり、前記補強壁が設けられていない部分に対応する前記非開口部に隣接する複数の開口部の個数は、前記複数の開口部の総数の1/20以下である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、前記液室基板の両端部側の開口部以外において振動板の変形量が過剰に低下することを防止できる。
(態様F)
上記態様D又はEにおいて、前記補強壁が設けられていない部分に対応する前記非開口部に隣接する複数の開口部それぞれに対応する電気機械変換素子は、液滴吐出に用いられないダミーの電気機械変換素子である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、前記補強壁が設けられていない部分に対応する非開口部に隣接する複数の液室に圧力変化は発生しないことにより、当該複数の液室に連通するノズルから液滴が吐出されない。従って、上記液室基板の両端部側において隔壁21aの剛性が若干低下しても、その剛性低下によるクロストークなどの液滴吐出特性の問題を解消することができる。
(態様G)
上記態様D乃至Fのいずれかにおいて、前記ノズル板は、前記補強壁が設けられていない部分に対応する前記非開口部に隣接する複数の開口部によってそれぞれ形成される複数の液室に連通するノズルを有していない。
これによれば、上記実施形態について説明したように、前記補強壁が設けられていない部分に対応する非開口部に隣接する複数の液室に隣接する隔壁の剛性が若干低下しても、その剛性低下によるクロストークなどの液滴吐出特性の問題を解消することができる。
(態様H)
上記態様A乃至Gのいずれかにおいて、前記支持基板の補強壁は、前記振動板の前記電気機械変換素子によって駆動されない非活性部分に対応するように設けられている。
これによれば、上記実施形態について説明したように、補強壁の位置よって影響を受ける、電気機械変換素子の駆動による振動板の変形のバラツキを抑制できる。
(態様I)
上記態様A乃至Hのいずれかにおいて、前記複数の電気機械変換素子が設けられた第1のウエハと、前記支持基板が設けられた第2のウエハとを接合し、その接合したウエハ接合部材を切断して個別化されている。
これによれば、上記実施形態について説明したように、ウエハ接合部材を切断して個別化されるときに発生しやすい上記配列方向の両端部における液室基板の反りを抑制することができる。
(態様J)
上記態様A乃至Iのいずれかの液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、液室基板の液室を区画する隔壁の剛性不足による液室間のクロストークなどの液滴吐出特性の劣化を防止できるので、複数のノズルそれぞれから吐出される液滴の量や速度の精度を高めることができる。また、電気機械変換素子の配列方向における液滴吐出特性のバラツキを抑制できるので、複数のノズルそれぞれから吐出される液滴の前記配列方向の両端部における吐出ムラを低減することができる。
(態様K)
上記態様A乃至Iのいずれかの液滴吐出ヘッドを有する画像形成装置である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、液室基板の液室を区画する隔壁の剛性不足による液室間のクロストークなどの液滴吐出特性の劣化を防止できる。従って、複数のノズルそれぞれから吐出される画像形成用の液滴の量や速度の精度を高めることができる。また、電気機械変換素子の配列方向における液滴吐出特性のバラツキを抑制できるので、複数のノズルそれぞれから吐出される画像形成用の液滴の前記配列方向の両端部における吐出ムラを低減することができる。従って、画像形成用の液滴吐出による濃度ムラの少ない所定濃度の画像を形成することができる。
20 圧電アクチュエータ
21 液室基板
21a 液室
21a’ 開口部
21b 隔壁(非開口部)
22 振動板
23 下部電極
24 電気機械変換膜(PZT膜)
25 上部電極
26 ノズル板
26a ノズル
27 段差部
28 支持基板
28a 補強壁
200 電気機械変換素子(圧電素子)
特開2004−082623号公報

Claims (10)

  1. 所定の配列方向に配列する複数の液室をそれぞれ形成するように互いに独立した複数の開口部を有する液室基板と、
    前記液室基板の複数の液室それぞれに連通する複数のノズルを有し、前記液室基板の一方の面側で各液室の内壁を構成するように設けられたノズル板と、
    前記液室基板の他方の面側で各液室の内壁を構成するように設けられた振動板と、
    前記振動板の前記液室基板側とは反対側の表面に、前記複数の液室それぞれに対応するように配列させて設けられた複数の電気機械変換素子と、
    前記液室基板の前記配列方向における複数の開口部が形成されていない複数の非開口部に対応するように、前記振動板の前記液室基板側とは反対側に直接又は中間層を介して接合された複数の補強壁を有する支持基板と、を備えた液滴吐出ヘッドであって、
    前記配列方向における前記液室基板の両端部それぞれの近くに位置する一又は複数の開口部に隣接する複数の非開口部に対応する複数の補強壁の互いに隣り合う補強壁間の間隔は、その他の複数の非開口部に対応する複数の補強壁の互いに隣り合う補強壁間の間隔よりも大きく、
    前記間隔が大きくなっている補強壁間に位置する電気機械変換素子は、液滴吐出に用いられないダミーの電気機械変換素子であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 請求項1の液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記ノズル板は、前記間隔が大きくなっている補強壁間に対応する開口部によって形成される液室に連通するノズルを有していないことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  3. 所定の配列方向に配列する複数の液室をそれぞれ形成するように互いに独立した複数の開口部を有する液室基板と、
    前記液室基板の複数の液室それぞれに連通する複数のノズルを有し、前記液室基板の一方の面側で各液室の内壁を構成するように設けられたノズル板と、
    前記液室基板の他方の面側で各液室の内壁を構成するように設けられた振動板と、
    前記振動板の前記液室基板側とは反対側の表面に、前記複数の液室それぞれに対応するように配列させて設けられた複数の電気機械変換素子と、
    前記液室基板の前記配列方向における複数の開口部が形成されていない複数の非開口部に対応するように、前記振動板の前記液室基板側とは反対側に直接又は中間層を介して接合された複数の補強壁を有する支持基板と、を備えた液滴吐出ヘッドであって、
    前記配列方向における前記液室基板の両端部それぞれの近くに位置する一又は複数の開口部に隣接する複数の非開口部に対応する複数の補強壁の互いに隣り合う補強壁間の間隔は、その他の複数の非開口部に対応する複数の補強壁の互いに隣り合う補強壁間の間隔よりも大きく、
    前記ノズル板は、前記間隔が大きくなっている補強壁間に対応する開口部によって形成される液室に連通するノズルを有していないことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  4. 所定の配列方向に配列する複数の液室をそれぞれ形成するように互いに独立した複数の開口部を有する液室基板と、
    前記液室基板の複数の液室それぞれに連通する複数のノズルを有し、前記液室基板の一方の面側で各液室の内壁を構成するように設けられたノズル板と、
    前記液室基板の他方の面側で各液室の内壁を構成するように設けられた振動板と、
    前記振動板の前記液室基板側とは反対側の表面に、前記複数の液室それぞれに対応するように配列させて設けられた複数の電気機械変換素子と、
    前記液室基板の前記配列方向における複数の開口部が形成されていない複数の非開口部に対応するように、前記振動板の前記液室基板側とは反対側に直接又は中間層を介して接合された複数の補強壁を有する支持基板と、を備えた液滴吐出ヘッドであって、
    前記配列方向における前記液室基板の両端部側それぞれに位置する二以上の開口部の互いに隣り合う部分の非開口部に対応する位置に、前記補強壁が設けられていないことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  5. 請求項4の液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記液室基板に有する前記複数の開口部の総数は80以上であり、
    前記補強壁が設けられていない部分に対応する前記非開口部に隣接する複数の開口部の個数は、前記複数の開口部の総数の1/20以下であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  6. 請求項4又は5の液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記補強壁が設けられていない部分に対応する前記非開口部に隣接する複数の開口部それぞれに対応する電気機械変換素子は、液滴吐出に用いられないダミーの電気機械変換素子であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  7. 請求項4乃至6のいずれかの液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記ノズル板は、前記補強壁が設けられていない部分に対応する前記非開口部に隣接する複数の開口部によってそれぞれ形成される複数の液室に連通するノズルを有していないことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  8. 請求項1乃至7のいずれかの液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記支持基板の補強壁は、前記振動板の前記電気機械変換素子によって駆動されない非活性部分に対応するように設けられていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  9. 請求項1乃至のいずれかの液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置。
  10. 請求項1乃至のいずれかの液滴吐出ヘッドを有する画像形成装置。
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