以下、本発明に係る構成を図1から図23に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
(液体吐出ヘッド)
[第1の実施形態]
<液体吐出ヘッドの構成>
図1は、液体吐出ヘッドの一実施形態を示す液体吐出ヘッド1の断面図である。液体吐出ヘッド1は、基板10と、振動板20と、電気機械変換素子30と、絶縁保護膜40(第1の絶縁保護膜)とを有する。また、電気機械変換素子30は、下部電極31と、電気機械変換膜32と、上部電極33とを有する。
液体吐出ヘッド1において、基板10上に振動板20が形成され、振動板20上に電気機械変換素子30の下部電極31が形成される。また、下部電極31の所定領域に電気機械変換膜32が形成され、更に電気機械変換膜32上に上部電極33が形成される。絶縁保護膜40は、電気機械変換素子30を被覆している。絶縁保護膜40は、下部電極31及び上部電極33を選択的に露出する開口部を備えており、開口部を介して、下部電極31及び上部電極33から配線を引き回すことができる。
基板10の下部には、インク滴を吐出するノズル51を備えたノズル板50が接合される。ノズル板50、基板10、及び振動板20により、ノズル51に連通する圧力室10x(インク流路、加圧液室、加圧室、吐出室、液室等と称される場合もある)が形成される。振動板20は、圧力室10xの壁面の一部を形成する。換言すれば、圧力室10xは、基板10(側面を構成)、ノズル板50(下面を構成)、振動板20(上面を構成)で区画されて、ノズル51と連通している。
液体吐出ヘッド1を作製するには、まず、図2に示すように、基板10上に、振動板20、下部電極31、電気機械変換膜32、上部電極33を順次積層する。その後、下部電極31、電気機械変換膜32及び上部電極33を所望の形状にエッチングし、絶縁保護膜40で被覆する。そして、絶縁保護膜40に、下部電極31及び上部電極33を選択的に露出する開口部を形成する。その後、基板10を下方からエッチングして圧力室10xを作製する。次いで、基板10の下面にノズル51を有するノズル板50を接合し、液体吐出ヘッド1が完成する。
なお、図1では、1つの液体吐出ヘッド1のみを示したが、実際には、図3に示すように、液体吐出ヘッド1が所定方向に複数配列された液体吐出ヘッド2が作製される。液体吐出ヘッド2は、液体を吐出するノズル51と、ノズル51が連通する圧力室10xと、圧力室10x内の液体を昇圧させる吐出駆動手段と、を備えた構造体(液体吐出ヘッド1)が所定方向に複数配列された構造である。ここで、吐出駆動手段は、圧力室10xの壁の一部を構成する振動板20と、電気機械変換膜32を備えた電気機械変換素子30とを含む構成とすることができる。
また、液体吐出ヘッド2において、液体を吐出する液体吐出ヘッド1(圧力室10x、振動板20、電気機械変換素子30)の部分を駆動チャネル3(駆動ch)と呼ぶ。
次いで、配線等を含めた液体吐出ヘッド2の構成について説明する。図4は、液体吐出ヘッド2の配線等を例示する図であり、図4(a)は断面図、図4(b)は平面図である。なお、図4(b)において、絶縁保護膜40及び70の図示は省略されている。
図4の例では、絶縁保護膜40を2層(絶縁保護膜40a,40b)で構成している。2層目の絶縁保護膜40b上に、複数の配線60が設けられ、更に配線60上に絶縁保護膜70(第2の絶縁保護膜)が設けられている。絶縁保護膜40は複数の開口部40xを備えており、開口部40x内には下部電極31または上部電極33の表面が露出している。配線60は、開口部40xを介して上部電極33と接続されている(図4(b)のコンタクトホールHの部分)配線と、開口部40xを介して下部電極31と接続されている配線とを含んでいる。
絶縁保護膜70は複数の開口部70xを備えており、夫々の開口部70x内には夫々の配線60の表面が露出している。夫々の開口部70x内に露出する夫々の配線60は、電極パッド61、62、及び63となる。ここで、電極パッド61は共通電極パッドであり、配線60を介して各電気機械変換素子30に共通の下部電極31と接続されている。また、電極パッド62及び63は個別電極パッドであり、配線60を介して電気機械変換素子30毎に独立した上部電極33と接続されている。
<振動板の撓み(湾曲)>
ところで、液体吐出ヘッド2を作製する工程において、圧力室10xを作製した時点で、図5に示すように、振動板20は圧力室10x側に凸となるように撓む(湾曲する)。つまり、電気機械変換素子30に電圧を印加していない状態で、振動板20は圧力室10x側に凸となるように撓む(湾曲する)。このため、振動板20は圧力室10x側に凸状に撓んだ状態で形成される。振動板20の撓み量によっては、振動板20の変位量に影響を与える。また、振動板20が撓むと、インクを吐出させる際に残留振動が発生する。残留振動を抑制するためには、所定の波形の生成が必要となるが、所定の波形の周波数を小さくする必要があり、高周波での吐出性能を確保することが困難となる。
高周波での吐出性能を確保するためには、振動板20、電気機械変換膜32、絶縁保護膜40の剛性を高める必要があり、高いヤング率の材料を用いたり厚膜化したりする必要が生じる。液体吐出ヘッド2において、振動板20は、応力設計も考慮し、シリコン酸化膜(SiO2)、シリコン窒化膜(SiN)、ポリシリコン(Poly-Si)等を材料として含む複数の層から形成することができる。振動板20の膜厚は1μm以上3μm以下で作製されることが好ましい。更に、振動板20のヤング率を75GPa以上95GPa以下とすることで、高周波での吐出性能を確保することができる。
次いで、振動板20の撓み量について説明する。まず、図6を参照して振動板20の撓み量の定義について説明する。振動板20の撓み量を算出するには、撓み量計(CCI3000、アメテック社製)を用いて、圧力室10x側から図6(a)に例示する振動板20の撓み分布を取得する。
取得した撓み分布に基づいた振動板20の曲率半径Rの算出について説明する。図5に例示したように、振動板20の中央部は撓みが大きく、両端部は撓みが小さい。そこで、撓み量計を用いて取得した図6(a)に例示する振動板20の撓み分布の中で、撓み量が最小となる両端部の点A及びBを基準に、そこから中心となる点C(撓みの中心点)を求める。次に、両端部の点A及びBと撓みの中心点Cとの距離をXとする。そして、撓みの中心点Cを基準に0.8Xの距離にある2点D及びE求める。次いで、図6(b)に示すように、点D及び点Eを結ぶ線と中心点Cへの垂線の交点を点Fとし、点Fと点Cとの距離を距離Yとする。この距離Yは、撓み分布における点D及び点Eにおける高さと中心点Cにおける高さの差によって求めることができ、曲率円の中心を点Oとすると、点Oと点F間の距離が算出できる。したがって、点O、点E、点Fからなる直角三角形において、三平方の定理を用いて曲率半径Rを算出できる。
以下の説明においては特に記載のない限り、曲率半径Rは、上記の算出方法ににより算出されるものとするが、振動板20の曲率半径Rの算出方法は、図6に示す方法に限られるものではなく、例えば、振動板20の撓み分布の中で、撓みの中心点(上記点C)を求め、かつ、点Cと、点Cから両端側にそれぞれ所定距離だけ離れた2点の3点の座標点に基づいて算出するものであってもよい。
<液体吐出ヘッドの材料等>
次いで、液体吐出ヘッド2を構成する好適な材料等に関して説明する。基板10としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100~600μmの厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、液体吐出ヘッド2でも主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を使用することができる。
また、圧力室10xを作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していくが、この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが好ましい。なお、異方性エッチングとは、結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。
例えば、KOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位(100)では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝を掘ることができる。そのため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くできるため、液体吐出ヘッド2でも(110)の面方位を持つ単結晶基板を使用してもよい。但し、この場合、マスク材であるSiO2もエッチングされる点に留意が必要である。
また、圧力室10xの幅(短手方向の長さ)としては、50μm以上250μm以下が好ましく、60μm以上150μm以下が更に好ましい。
振動板20は、電気機械変換膜32によって発生した力を受けて変形変位し、圧力室10x内のインク滴を吐出させる。そのため、振動板20としては所定の強度を有したものであることが好ましい。具体的には、Si、SiO2、Si3N4等をCVD法等により作製したものが挙げられる。更に、振動板20の材料としては、下部電極31、電気機械変換膜32の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。
特に、電気機械変換膜32としてPZTを使用する場合には、振動板20の材料として、PZTの線膨張係数8×10-6(1/K)に近い5×10-6(1/K)~10×10-6(1/K)程度の線膨張係数を有した材料を選択することが好ましい。7×10-6(1/K)~9×10-6(1/K)程度の線膨張係数を有した材料を選択することが更に好ましい。
振動板20の具体的な材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等を挙げられる。これらは、スパッタ法若しくはSol-gel法を用いてスピンコーターにて作製することができる。
振動板20の膜厚としては1~10μmが好ましく、2~5μmが更に好ましい。
下部電極31及び上部電極33としては、金属材料として高い耐熱性と低い反応性を有する白金を用いることができる。但し、白金は、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、その場合には、イリジウムや白金-ロジウム等の白金族元素や、これらの合金膜を用いることができる。
なお、下部電極31及び上部電極33として白金を使用する場合には、下地となる振動板20(特にSiO2)との密着性が悪いため、Ti、TiO2、Ta、Ta2O5、Ta3N5等の密着層を介して積層することが好ましい。下部電極31及び上部電極33の作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜を用いることができる。下部電極31及び上部電極33の膜厚としては、0.05~1μmが好ましく、0.1~0.5μmが更に好ましい。
更に、下部電極31及び上部電極33において、金属材料と電気機械変換膜32との間に、SrRuO3やLaNiO3を材料とする酸化物電極膜を形成してもよい。なお、下部電極31と電気機械変換膜32との間の酸化物電極膜に関しては、その上に作製する電気機械変換膜32(例えばPZT膜)の配向制御にも影響するため、配向優先させたい方位によって選択される材料が異なる。
液体吐出ヘッド2において、電気機械変換膜32として圧電体、例えばPZTを用い、PZT(100)に優先配向させる場合には、下部電極31として、LaNiO3、TiO2、PbTiO3等のシード層を金属材料上に作製し、その後PZT膜を形成すると好ましい。
また、上部電極33と電気機械変換膜32との間の酸化物電極膜としてはSRO膜を用いることができ、SRO膜の膜厚としては、20nm~80nmが好ましく、30nm~50nmが更に好ましい。
電気機械変換膜32としては、好適にはチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いることができる。なお、PZTとはジルコン酸鉛(PbZrO3)とチタン酸鉛(PbTiO3)の固溶体であり、PbZrO3とPbTiO3の比率によって、PZTの特性が異なる。例えば、PbZrO3とPbTiO3の比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53、Ti0.47)O3、一般にはPZT(53/47)と示されるPZT等を使用することができる。
なお、電気機械変換膜32としてPZTを用いPZT(100)面を優先配向とする場合、Zr/Tiの組成比率については、組成比率Ti/(Zr+Ti)が0.45以上0.55以下が好ましく、0.48以上0.52以下が更に好ましい。
結晶配向については、ρ(hkl)=I(hkl)/ΣI(hkl)によって表される。ここで、ρ(hkl)は(hkl)面方位の配向度、I(hkl)は任意の配向のピーク強度、ΣI(hkl)は各ピーク強度の総和である。X線回折法のθ-2θ測定で得られる各ピーク強度の総和を1としたときの各々の配向のピーク強度の比率に基づいて算出される(100)配向の配向度は、0.75以上であることが好ましく、0.85以上であることが更に好ましい。
電気機械変換膜32の作製方法としては、スパッタ法若しくはSol-gel法を用いてスピンコーターにて作製することができる。その場合は、パターニングが必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得ることができる。
PZTをSol-gel法により作製する場合には、まず、出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を用いる。そして、共通溶媒であるメトキシエタノールに溶解させ均一溶液を得ことで、PZT前駆体溶液が作製できる。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、PZT前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミン等を適量、添加してもよい。
下部電極31の全面にPZT膜を形成する場合、スピンコート等の溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100nm以下の膜厚が得られるようにPZT前駆体の濃度の調整が必要になる。
電気機械変換膜32の膜厚としては1~3μmが好ましく、1.5~2.5μmが更に好ましい。
電気機械変換膜32として、PZT以外のABO3型ペロブスカイト型結晶質膜を用いてもよい。PZT以外のABO3型ペロブスカイト型結晶質膜としては、例えば、チタン酸バリウム等の非鉛複合酸化物膜を用いても構わない。この場合は、バリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することが可能である。
これら材料は一般式ABO3で記述され、A=Pb、Ba、Sr B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1-x、Ba)(Zr、Ti)O3、(Pb1-x、Sr)(Zr、Ti)O3、と表され、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
絶縁保護膜40の材料としては、成膜およびエッチングの工程による圧電素子へのダメージを防ぐとともに、大気中の水分が透過しづらい材料を選定する必要があるため、緻密な無機材料とすることが好ましい。
薄膜で高い保護性能を得るには、酸化物、窒化物、炭化膜を用いることが好ましいが、絶縁保護膜40の下地となる電極材料、圧電体材料、振動板材料と密着性が高い材料を選定する必要がある。また、成膜法も圧電素子を損傷しない成膜方法を選定する必要がある。すなわち、反応性ガスをプラズマ化して基板上に堆積するプラズマCVD法やプラズマをターゲット材に衝突させて飛ばすことで成膜するスパッタリング法は好ましくない。好ましい成膜方法としては、蒸着法、ALD法(Atomic Layer Deposition)などが例示できるが、使用できる材料の選択肢が広いALD法が好ましい。特にALD法を用いることで、膜密度の非常に高い薄膜を作製し、プロセス中でのダメージを抑制できる。
絶縁保護膜40の好ましい材料としては、膜応力にも着目する必要があり、例えば、SiNのような引張応力を有するような膜材料が好ましい。他に、Al2O3,ZrO2,Y2O3,Ta2O3,TiO2などのセラミクス材料に用いられる酸化膜を用いることもできる。
絶縁保護膜40の膜厚は、電気機械変換素子30の保護性能を確保できる充分な薄膜とする必要があると同時に、振動板20の変位を阻害しないように可能な限り薄くする必要がある。好ましい絶縁保護膜40の膜厚は20nm~100nmの範囲である。
また絶縁保護膜40を2層(絶縁保護膜40a,40b)にする構成も考えられる。この場合は、2層目の絶縁保護膜40bを厚くするため、振動板20の振動変位を著しく阻害しないように上部電極33において2層目の絶縁保護膜40bを開口するような構成も挙げられる。例えば、駆動チャネル3やダミーチャネル4において、絶縁保護膜40を2層にする場合は、厚くした2層目の絶縁保護膜40bを開口した構成とすることもできる。
このとき2層目の絶縁保護膜40bとしては、任意の酸化物、窒化物、炭化物またはこれらの複合化合物を用いることができるが、半導体デバイスで一般的に用いられるSiO2を用いることができる。成膜は任意の手法を用いることができ、CVD法、スパッタリング法が例示でき、電極形成部等のパターン形成部の段差被覆を考慮すると等方的に成膜できるCVD法を用いることが好ましい。2層目の絶縁保護膜40bの膜厚は下部電極31と配線60に印加される電圧で絶縁破壊されない膜厚とする必要がある。すなわち、絶縁保護膜に印加される電界強度を、絶縁破壊しない範囲に設定する必要がある。さらに、2層目の絶縁保護膜の下地の表面性やピンホール等を考慮すると膜厚は200nm以上必要であり、さらに好ましくは500nm以上である。
絶縁保護膜70の機能は配線60の保護層の機能を有するパシベーション層である。図4に示す通り、電極パッド61,62の箇所(開口部70x)を除き、上部電極33と下部電極31上を被覆する。これにより電極材料に安価なAlもしくはAlを主成分とする合金材料を用いることができる。その結果、低コストかつ信頼性の高い液体吐出ヘッド2とすることができる。
絶縁保護膜70の材料としては、絶縁保護膜40と同様に、膜応力にも着目する必要があり、例えば、SiNのような引張応力を有するような膜材料が好ましい。
また、絶縁保護膜70の材料としては、任意の無機材料、有機材料を使用することができるが、透湿性の低い材料とする必要がある。無機材料としては、酸化物、窒化物、炭化物等が例示でき、有機材料としてはポリイミド、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が例示できる。ただし、有機材料の場合には厚膜とすることが必要となるため適さない。そのため、薄膜で配線保護機能を発揮できる無機材料とすることが好ましい。特に、Al配線上にSi3N4を用いることが、半導体デバイスで実績のある技術であるため好ましい。
また、膜厚は200nm以上とすることが好ましく、さらに好ましくは500nm以上である。
また、電気機械変換素子30上とその周囲の振動板20上に開口部をもつ構造が好ましい。これは、絶縁保護膜40の個別液室領域を薄くしていることと同様の理由である。これにより、高効率かつ高信頼性の液体吐出ヘッド2とすることが可能になる。
配線60の材料としては、Ag合金,Cu,Al,Au,Pt,Irのいずれかから成る金属電極材料であることが好ましい。作製方法としては、スパッタ法、スピンコート法を用いて作製し、その後フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。膜厚としては、0.1~20μmが好ましく、0.2~10μmがさらに好ましい。
また、コンタクトホール部(例えば、10μm×10μm)での接触抵抗として、下部電極31としては10Ω以下、上部電極33としては1Ω以下が好ましく、さらに好ましくは、下部電極31としては5Ω以下、上部電極33としては0.5Ω以下である。
<溝を有する液体吐出ヘッド>
液体吐出ヘッド2においては、上述のように基板同士の接合時に接着剤の液体流路への流入を防止するため、圧力室10xの配列方向の端部側に、溝を設けることが知られており、溝には、圧力室形成基板を他の基板と接合する際の余剰な接着剤を導入することが可能である。
端部側の駆動チャネル3の変位量にバラつきが生じることについて、溝を設ける場合に対応したバラつきの抑制のための手段が必要であることがわかった。
図7は、溝11を設けた液体吐出ヘッド2を例示する断面図である。図7に示す液体吐出ヘッド2は、圧力室10xの配列方向の端部側に、圧力室10xと同様に基板10をノズル51が形成される方向からエッチングして作製された溝11が設けられている。溝11は、基板10を厚み方向に貫通した貫通溝であり、圧力室10x、溝11上の振動板20は露出している。なお、図7の例では、圧力室10xの配列方向の一端側に、4つの溝11が形成された例を示しているが、溝11の形成数は、一例であってこれに限られるものではない。また、図7の例では、圧力室10xの配列方向の一端側の一端側を図示しているが、他端側も同様の構成を有しており、溝11が形成される。
溝11の形成位置では、振動板20は、溝11の壁面の一部を形成し、振動板20上には電気機械変換素子30は形成されず、振動板20上に絶縁保護膜40、複数の配線60、絶縁保護膜70の順に形成される。配線60は、電気機械変換素子30に駆動信号や駆動電力を供給する配線層である。
その後、基板10の下面にノズル51を有するノズル板50が接着剤80により接合される。図7に示す液体吐出ヘッド2に、ノズル板50を接合した例を図8に示す。なお、ノズル51は、図8に示すように圧力室10xに対応する位置に形成され、溝11に対応する位置には形成されない。
本願発明者らは、図7に示すように、溝11を形成した液体吐出ヘッド2について、振動板20の撓み具合(撓み方および撓み量)について検討したところ、溝11を設けた場合は、溝11上の振動板20の撓みの影響を受けて、溝11に近い両端側の電気機械変換素子30の形成位置での振動板20の撓みに影響を与えてしまうことがわかった。
図9は、図7と同様の構成を有する液体吐出ヘッド2において、溝11を形成しない液体吐出ヘッド2を例示する断面図である。比較検討のため、図9に示すように、溝11を形成していない以外は、図7と同様の構成を有する液体吐出ヘッド2について、振動板20の撓み具合について検討した。
図10は、図7に示した溝11を有する構成と、図9に示した溝11を有しない構成での、駆動チャネル3の端部から1~20チャネルでの振動板20の撓み量と、端部から40チャネルと80チャネルでの振動板20の撓み量を示している。
図10によれば、図7に示す構成では、端部側の駆動チャネル3での撓み量が小さくなり、端部側の駆動チャネル3と中央側の駆動チャネル3の振動板20の撓み具合との間に差が生じることがわかる一方、図9に示す構成では、振動板20上の膜構成が異なっていても、その影響は受けずに、溝11に近い端部側の駆動チャネル3の振動板20の撓み具合と、溝11から離れた中央側の駆動チャネル3の振動板20の撓み具合との間には、差は生じないことがわかる。
この検討により、溝11に近い端部側の駆動チャネル3の振動板20の撓み具合と、溝11から離れた中央側の駆動チャネル3の振動板20の撓み具合との間に差が生じ、溝11の形成の有無が駆動チャネル間での振動板20の撓み具合にバラつきに影響することがわかった。これは、溝11の形成位置での振動板20からの応力影響により、溝11に近い端部側の駆動チャネル3の振動板20の撓み具合に変化が生じることによると考えられる。このように、液体吐出ヘッド2の駆動チャネル間で振動板20の撓み具合にバラつきが生じてしまうと、吐出性能に影響を与えてしまう。
これに対し、溝11の形成位置についても、振動板20上の層構成を、駆動チャネル3の振動板20の層構成と同一にすることができれば、溝11の形成位置での振動板20からの応力影響を低減して、駆動チャネル間での撓みのバラつきを抑制することができるとも考えられる。
しかしながら、配線抵抗等を考慮すると、液体吐出ヘッド2において配列方向の全てを、駆動チャネル3と全く同じ構造体に揃えることは難しく、図7に示したように、端部側の駆動チャネル3より外側にある構造体には、配線抵抗を下げるため、電気-機械変換膜32を形成せず配線60を形成する必要がある。
本実施形態に係る液体吐出ヘッド(液体吐出ヘッド2)は、液体を吐出する複数のノズル(ノズル51)に連通する液体吐出用の圧力室(圧力室10x)が所定方向(圧力室10xの配列方向)に複数並んで形成された圧力室形成基板と、圧力室形成基板の前記ノズル側とは反対側に設けられ、その一部が圧力室の壁面を構成する振動板層(振動板20)と、各圧力室に対応して振動板層上に設けられる電気機械変換素子(電気機械変換素子30)と、を備え、圧力室形成基板には、所定方向における圧力室の端部側に、ノズル側の面が開口された溝(溝11)が形成され、圧力室上の振動板層は、該圧力室側に撓んで形成されており、溝上の振動板層は、該溝の開口側に撓んで形成されているものである。なお、括弧内は実施形態での符号、適用例を示す。
すなわち、溝11上の振動板20と駆動チャネル3の振動板20の撓み方向が同一方向とするものである。ここで、溝11上の振動板20よりも、駆動チャネル3の振動板20の撓み度合は、大きいことが好ましい。また、溝11の形成位置での振動板20の曲率半径Rは、2000μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは6000μm以上とすることが好ましい。
ここで、駆動チャネル3位置の振動板20は、図5に示したように、液体吐出ヘッド2を作製する工程において、圧力室10xを作製した時点で、振動板20が圧力室10x側に凸となるように撓む。つまり、圧力室10x上の振動板20は、圧力室10x毎に圧力室10x側に凸状に撓んで(湾曲して)形成されている。
一方、溝11上の振動板20上には、上記のように、絶縁保護膜40、配線60、および絶縁保護膜70が形成され、電気機械変換素子30は形成されない。配線抵抗を下げる必要があるため、駆動チャネル3以外の領域では、配線60を形成する領域を多くすることが好ましいためである。
すなわち、溝11上の振動板20上には、引張応力が強い電気機械変換素子30が形成されないため、溝11上の振動板20は、駆動チャネル3の振動板20とは膜の応力状態がことなる。
つまり、駆動チャネル3の振動板20は、引張応力が働き、圧力室10x側に凸となるように撓むのに対し、溝11上の振動板20には、圧縮応力が働き、溝11とは反対側に凸となるように撓むこととなる。
このように、溝11上の振動板20の撓みの応力状態(圧縮応力)と、駆動チャネル3の振動板20の撓みの応力状態(引張応力)が異なる状態では、駆動チャネル3の端部側(例えば、端部から20チャネル)での撓み量が大きくなってしまうこととなり、変位量のバラつきが発生し、振動板20の撓みに影響をあたえてしまう。
そこで、本実施形態では、溝11上の振動板20上の層構成、すなわち、配線60の厚みや材料、および/または、絶縁保護膜40,70の厚みや材料を制御することで、溝11上の振動板20の撓み方向、撓み度合を調整し、溝11上の振動板20の撓みを、溝11毎に溝11側に凸となるように撓むようにして、駆動チャネル3の振動板20の撓み方向と同一とするものである。換言すれば、溝11上の振動板20にも引張応力が働く応力状態とするものである。
また、その際の撓み度合を、十分に小さいものとして、駆動チャネル3の振動板20の撓み度合よりも小さくなるようにすることが好ましい。
例えば、上述のように、引張応力を有するSiN膜を絶縁保護膜40,70に用いることが好ましい。このとき、SiN膜の膜厚を制御することで、駆動チャネル3の振動板20と同様の応力状態に調整することができる。なお、溝11上での引張応力が大きすぎると、駆動チャネル3の端部側(例えば、端部から20チャネル)での撓み量が大きくなってしまうこととなり、バラつきが発生してしまうため、溝11上での引張応力は、適切に調整されることが必要である。
このように、溝11上の振動板20上の層構成を制御することで、溝11上の振動板20と駆動チャネル3の振動板20の撓み方向を同一側とするとともに、溝11上の振動板20よりも、駆動チャネル3の振動板20の撓み度合を大きくすることができる。
以上説明したように、本実施形態に係る液体吐出ヘッド2は、溝11上の振動板20の撓みによる影響があっても、駆動チャネル3の振動板20が受ける影響を小さくしている。これにより、溝11を有する構成であっても、溝11に近い端部側の駆動チャネル3の振動板20の撓みへの影響を抑えるようにして、駆動チャネル間での振動板20の撓み量のバラつき発生を抑制することができる。
次いで、撓み度合の評価手法について説明する。撓み度合は、例えば、振動板20の曲率半径Rを用いて評価することができる。なお、曲率半径Rの算出は、例えば、図6で説明した算出方法で算出するものであればよい。
図11(a)は溝11の形成位置での振動板20の曲率半径、(b)は駆動チャネル3の振動板20の曲率半径、を示す説明図である。振動板20上の層構成の図示は省略している。溝11の形成位置での振動板20の曲率半径をRa、駆動チャネル3の振動板20の曲率半径をRbとしたとき、Ra>Rbを満たすことが好ましい。
また、撓み度合を、振動板20の撓み量を用いて評価することができる。図12(a)は溝11の形成位置での振動板20の撓み量、(b)は駆動チャネル3の振動板20の撓み量、を示す説明図である。
ここでは、図12に示すように、振動板20の撓み分布の中で、撓みの中心点Cから、振動板20に撓みがないと仮定した場合の振動板20の形成位置を示す線(図中の点線)への垂線の長さを撓み量と定義する。そして、溝11の形成位置での振動板20の撓み量a、駆動チャネル3の振動板20の撓み量をbとしたとき、a<bを満たすことが好ましい。
ここまで、溝11の形成位置での振動板20と、駆動チャネル3の振動板20の撓み度合の関係を規定する例を説明したが、必ずしも駆動チャネル3の振動板20の撓み量との関係は規定される必要はなく、溝11の形成位置での振動板20の撓み方向を溝11側とするとともに、その曲率半径を十分に大きい値とすることで、駆動チャネル3群の振動板20の撓み量のバラつき発生を抑制することができる。
次に、溝11の大きさや、形成位置について説明する。図13(a)は、ノズル板50が接合されていない状態での液体吐出ヘッド1の圧力室の配列方向での断面図、(b)はノズル板50側から見た平面図である。図13に示す例は、図7に示した液体吐出ヘッド2と層構成は同様であるが、溝11の間隔と、最端部の駆動チャネル3(最端部の圧力室10x)と溝11との距離を所定の関係を満たすようにしたものである。
ここで、図13に示すように、圧力室10xの配列方向(圧力室の短手方向)をX方向、これに直交する方向(圧力室の長手方向)をY方向とする。溝11のX方向の大きさをX1、Y方向の大きさをY1、圧力室10xのX方向の大きさをX2、Y方向の大きさをY2としたとき、次式(1)を満たしていることが好ましい。
X1≦X2、かつY1<Y2 ・・・(1)
このように、溝11の大きさを圧力室10xに比べて、小さくすることでさらに好適に応力影響を小さくすることができる。なお、X方向の大きさは同じであってもよい(X1=X2)。
また、溝11の大きさは、X1,Y1ともに100μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは50μmである。
また、溝11の配置間隔は、X方向で30μm以上、Y方向で30μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは100μm以上である。
また、最端部の駆動チャネル3(最端部の圧力室10x)と溝11との距離Zは、100μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは200μmである。
このように、溝11の大きさや形成位置を所定条件を満たすように形成することで、より好適に、端部の駆動チャネル3への応力影響を低減でき、駆動チャネル間での性能バラつきを抑制できることができる。
以上説明した本実施形態に係る液体吐出ヘッド2によれば、溝11を有する構成において、駆動チャネル間での振動板20の撓み具合のバラつき発生を抑制し、良好な吐出性能を得ることができる。
なお、本発明は、図7や図13に示した液体吐出ヘッド2の構成に限らず、余剰接着剤を導入するための逃げ溝等、溝11に相当する構成を有する他の種々の液体吐出ヘッドに適用することができる。
[第2の実施形態]
以下、本発明に係る液体吐出ヘッドの他の実施形態について説明する。なお、上記実施形態と同様の点についての説明は適宜省略する。
液体吐出ヘッド2において、例えば、図14に示すように、電気機械変換素子30(駆動チャネル3)の配列方向の端部側に、液滴の吐出を行わないダミー電気機械変換素子34を有するダミーチャネル4を配設することで、液体の充填時の気泡を排出し、液体の充填性を良好にすることが知られている(参考文献:特開2014-177049号公報)。液体吐出ヘッド2において、液体の吐出を目的としないダミー圧力室12(図15)、振動板20、電気機械変換素子30をダミーチャネル4(ダミーch)という。
そこで、第2の実施形態では、圧力室10xの配列方向において、駆動チャネル3の端部側にダミーチャネル4を設けるとともに、さらに、ダミーチャネル4の端部側に溝11を設けたものである。なお、ダミーチャネル4の配列数(チャネル数)は、一端部につき1以上であればよいが、液体の充填性向上のために、好ましくは一端部につき3つ以上配列されていることが好ましい。
図15は、液体吐出ヘッド2の他の実施形態(第2の実施形態)を示す図である。図15(a)は、ノズル板50が接合されていない状態での液体吐出ヘッド1の圧力室の配列方向での断面図、(b)はノズル板50側から見た平面図である。また、図15に示す液体吐出ヘッド2に、接着剤80によりノズル板50を接合した例を図16に示す。なお、ノズル51は、図16に示すように圧力室10xに対応する位置に形成され、ダミー圧力室12および溝11に対応する位置には形成されない。
ここで、ダミーチャネル4の圧力室(ダミー圧力室12)の構成、および、ダミーチャネル4の振動板20上の層構成は、駆動チャネル3と同様の構成によればよい。したがって、ダミーチャネル4の振動板20も、液体吐出ヘッド2を作製する工程において、ダミー圧力室12を作製した時点で、振動板20がダミー圧力室12側に凸となるように撓む。このため、振動板20は、ダミー圧力室12毎にダミー圧力室12側に凸状に撓んだ状態で形成される。
また、最端部のダミーチャネル4(最端部のダミー圧力室12)と溝11との距離Zは、30μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは100μmである。なお、溝11の大きさ、溝11の間隔等は、第1の実施形態と同様の構成であることが好ましい。
第2の実施形態では、溝11上の振動板20、ダミーチャネル4の振動板20、および駆動チャネル3の振動板20の撓み方向をすべて同一としている。また、溝11上の振動板20よりも、ダミーチャネル4および駆動チャネル3の振動板20の撓み度合を大きいことが好ましい。
溝11上の振動板20、ダミーチャネル4の振動板20、および駆動チャネル3の振動板20の撓み方向をすべて同一とすることで、溝11側からの応力影響を抑えることができる。
また、溝11上の振動板20よりも、ダミーチャネル4および駆動チャネル3の振動板20の撓み度合を大きくすることで、溝11側からの応力影響を抑えることができる。
以上説明した第2の実施形態に係る液体吐出ヘッドによれば、溝11側からの端部の駆動チャネル3への応力影響を低減でき、駆動チャネル間の性能バラつきを抑制できることができる。さらに、圧力室10xの配列方向において、駆動チャネル3と溝11の間にダミーチャネル4を設けていることで、ダミーチャネル4を有しない構成(第1の実施形態)に比べて、液体の充填性を良好なものとすることができる。
[第3の実施形態]
図17は、液体吐出ヘッド2の他の実施形態(第3の実施形態)を示す図である。図17(a)は、ノズル板50が接合されていない状態での液体吐出ヘッド1の圧力室の配列方向での断面図、(b)はノズル板50側から見た平面図である。
上記第1および第2の実施形態では、溝11は、基板10を貫通する構成であったが、第3の実施形態では、溝11は、基板10のノズル51側の面が開口され、基板10を貫通しない非貫通形状を有している。
以上説明した第3の実施形態に係る液体吐出ヘッドでは、振動板20と溝11の間には基板10の一部が存在している。このため、溝11上の振動板20に撓みが生じないようにすることで、溝11側からの端部の駆動チャネル3への応力影響を低減でき、駆動チャネル間での性能バラつきを抑制できることができる。
[第4の実施形態]
図18は、液体吐出ヘッド2の他の実施形態(第4の実施形態)を示す断面図である。ここまで、基板10にノズル板50が直接接合される例について説明したが、基板10のノズル51側に接合される基板はノズル板50に限られるものではない。例えば、図18に示すように、圧力室10xとノズル51とを連通する連通管が設けられた基板である連通管基板90を基板10に接合し、連通管基板90をノズル板50に接合するものであってもよい。
(液体を吐出する装置)
本発明に係る液体吐出ヘッドを有する液体を吐出する装置の一例について図19及び図20を参照して説明する。図19は同装置の要部平面説明図、図20は同装置の要部側面説明図である。
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
このキャリッジ403には、液体吐出ヘッド2及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド2は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド2は、複数のノズル51からなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
液体吐出ヘッド2の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド2に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド2に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、或いは、エアー吸引等で行うことができる。
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
更に、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド2の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド2のノズル面(ノズル51が形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422等で構成されている。
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド2を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
このように、この装置では、上述の液体吐出ヘッドを備えているので、振動板駆動不良による液体の吐出不良がなく、安定した液体の吐出特性が得られて、高画質画像を安定して形成することができる。
(液体吐出ユニット)
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを有する液体吐出ユニットの一例について図21を参照して説明する。図21は同ユニットの要部平面説明図である。
この液体吐出ユニットは、液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド2で構成されている。
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくとも何れかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを有する液体吐出ユニットの他の例について図22を参照して説明する。図22は同ユニットの正面説明図である。
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド2と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド2と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドまたは液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置等も含むことができる。
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、または、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液等も含まれる。
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等が含まれる。
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等がある。
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたもの等が含まれる。
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合等で互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
例えば、液体吐出ユニットとして、図20で示した液体吐出ユニット440のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブ等で互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、図21で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、図22で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータ等を使用するものでもよい。
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等は何れも同義語とする。
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
例えば、上記の実施の形態では、上部電極を個別電極、下部電極を共通電極とした場合について説明したが、本発明はこれに限られない。すなわち、上部電極を共通電極、下部電極を個別電極とした構成においても同様の効果を得られる。
以下、本発明の実施例を説明する。
[実施例1]
基板10として6インチのシリコンウェハを準備し、基板10にSiO2(膜厚600nm)、Si(膜厚200nm)、SiO2(膜厚100nm)、SiN(膜厚150nm)、SiO2(膜厚130nm)、SiN(膜厚150nm)、SiO2(膜厚100nm)、Si(膜厚200nm)、SiO2(膜厚600nm)の膜を順に形成して振動板20を作製した。
その後、振動板20上に密着層としてチタン膜(膜厚20nm)を成膜温度350℃でスパッタ装置にて成膜した後、RTA(急速熱処理)を用いて750℃にて熱酸化した。更に、密着層上に白金膜(膜厚160nm)を成膜温度400℃でスパッタ装置にて成膜し、下部電極31を作製した。
次に、下部電極31上に下地層となるPbTiO3層としてPb:Ti=1:1に調整された溶液と、電気機械変換膜32としてPb:Zr:Ti=115:49:51に調整された溶液とを準備し、スピンコート法により膜を成膜した。
具体的な前駆体塗布液の合成については、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。
イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、先記の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。このPZT濃度は0.5モル/リットルにした。PTの溶液に関してもPZT同様に作製し、これらの液を用いて、最初にPT層をスピンコートにより成膜し、成膜後、120℃乾燥を実施し、その後PZTの液をスピンコートにより成膜し、120℃乾燥→400℃熱分解を行った。
3層目の熱分解処理後に、結晶化熱処理(温度730℃)をRTAにて行った。このときPZTの膜厚は240nmであった。この工程を計8回(24層)実施し、電気機械変換膜32として約2μmのPZT膜を得た。
次に、上部電極33を構成する酸化物電極膜として、SrRuO3膜(膜厚40nm)、金属膜として白金膜(膜厚125nm)をスパッタ法で成膜した。その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィーでレジストパターンを形成した後、ICPエッチング装置(サムコ製)を用いて図4に示すようなパターンを作製した。これにより、振動板20上に電気機械変換素子30が作製された。
次に、電気機械変換素子30上に、絶縁保護膜40aとして、ALD工法を用いてAl2O3膜を50nm成膜した。このとき原材料としてAlについては、TMA(シグマアルドリッチ社)、Oについてはオゾンジェネレーターによって発生させたO3を交互に積層させることで、成膜を進めた。
その次に、絶縁保護膜40bとして、Si3N4をプラズマCVD法により1000nm成膜し、その後、図4に示すように、エッチングによりコンタクトホールHを形成した。その後、Alをスパッタ法で成膜し、エッチングによりパターニングして配線60を形成し、絶縁保護膜70としてSi3N4をプラズマCVD法により500nm成膜した。
その後、図15に示すように基板10の裏面をエッチングして圧力室10x(X2:幅60μm、Y2:長さ1000μm)を形成し、液体吐出ヘッド2とした。但し、基板10の下部には、ノズル51を備えたノズル板50は接合されていなく、液体吐出ヘッド2は半完成状態である。
このとき、図23に示すように、圧力室10xを保持するため、裏面に電気機械変換素子30に対応する個数の凹部15xが形成された保持基板15を用いた。具体的には、圧力室10xを形成する前に、各電気機械変換素子30が各凹部15x内に収容されるように、保持基板15を接着層を介して基板10上に接合した。その後、基板10の裏面をエッチングして圧力室10xを形成した。
この際、ダミーチャネル4を1つ(一端側での形成数である。以下同様)形成するとともに、溝11(X1:幅60μm,Y1:長さ60μm)を形成した。隣接する溝11の間隔は、X方向、Y方向ともに60μmとした。また、溝11とダミーチャネル4との距離Zを、60μmとした。溝11の曲率半径は2300μm、端部の駆動チャネル3の曲率半径は4500μmであった。
[実施例2]
絶縁保護膜40bとしてSi3N4をプラズマCVD法により700nm成膜し、絶縁保護膜70としてSi3N4をプラズマCVD法により300nm成膜し、ダミーチャネル4を4つ形成した以外は実施例1と同様に液体吐出ヘッド2を作製した。溝11の曲率半径は6400μm、端部の駆動チャネル3の曲率半径は4200μmであった。
[実施例3]
基板10として6インチのシリコンウェハを準備し、基板10にSiO2(膜厚1200nm)、Si(膜厚400nm)、SiO2(膜厚200nm)、SiN(膜厚300nm)、SiO2(膜厚260nm)、SiN(300nm)、SiO2(膜厚200nm)、Si(400nm)、SiO2(膜厚1200nm)の膜を順に形成して振動板20を作製した。
絶縁保護膜40bとしてSi3N4をプラズマCVD法により700nm成膜し、絶縁保護膜70としてSi3N4をプラズマCVD法により300nm成膜し、圧力室10xの幅を100μmとして、ダミーチャネル4を4つ形成するとともに、溝11(X1:幅100μm,Y1:長さ100μm)を形成した。隣接する溝11の間隔は、X方向、Y方向ともに30μmとした。また、溝11とダミーチャネル4との距離を、30μmとした。上記以外は、実施例1と同様に液体吐出ヘッド2を作製した。溝11の曲率半径は6200μm、端部の駆動チャネル3の曲率半径は4250μmであった。
[実施例4]
図7に示すように基板10の裏面をエッチングして圧力室10xを作製し(ダミーチャネル非形成)、絶縁保護膜40bとしてSi3N4をプラズマCVD法により700nm成膜し、絶縁保護膜70としてSi3N4をプラズマCVD法により300nm成膜し、最端部の駆動チャネル3と溝11との距離を100μmとした以外は実施例1と同様に液体吐出ヘッド2を作製した。溝11の曲率半径は6500μm、端部の駆動チャネル3の曲率半径は4300μmであった。
[実施例5]
図17に示すように基板10の裏面をエッチングして圧力室10x、およびダミーチャネル4を4つ作製し、溝11部では基板10をハーフエッチングにより非貫通とした以外は実施例1と同様に液体吐出ヘッド2を作製した。端部の駆動チャネル3の曲率半径は4400μmであった。
[比較例1]
絶縁保護膜40bとしてSi3N4をプラズマCVD法により1500nm成膜し、絶縁保護膜70としてSi3N4をプラズマCVD法により1000nm成膜し、基板10の裏面をエッチングして圧力室10x、およびダミーチャネル4を4つ作製した以外は実施例1と同様に液体吐出ヘッド2を作製した。溝11の曲率半径は1200μm、端部の駆動チャネル3の曲率半径は4600μmであった。
[比較例2]
図9に示すように基板10の裏面をエッチングして圧力室10xを作製し、溝11およびダミーチャネル4を形成しない以外は実施例1と同様に液体吐出ヘッド2を作製した。端部の駆動チャネル3の曲率半径は4350μmであった。
[実施例1~5、比較例1~2の検討]
実施例1~5、比較例1~2で作成した液体吐出ヘッド2について、ノズル接合性および液体の充填性の評価を行った。表1に評価結果、および各実施例、比較例の詳細を示す。
表1において、実施例1~5では各々の端部から20chまでの駆動チャネル群における振動板20の曲率半径Rの最大値と最小値の差(曲率半径差)は何れも1500μm以下であるが、比較例1では2000μmよりも大きくなっている。また、比較例1では、溝11の曲率半径が駆動チャネル3の曲率半径よりも小さくなっている。
表1から分かるように、実施例1~5については、変位差(Δδ/δ_ave)がチップ内の各々の端部から20chまでのチャネル群における変位傾きとして目標とする8%以内に収まっているが、比較例1については13%と大きなバラつきを有していた。なお、δは150kv/cmの電界強度かけて評価を行ったときの電気機械変換膜32の変位特性であり、Δδは電気機械変換膜32の配列方向に対する変位特性δの傾き差、δ_aveは変位特性δの平均値である。
実施例1~5、比較例1~2で作製した各液体吐出ヘッド2(半完成状態の液体吐出ヘッド2)の基板10の下部にノズル51を備えたノズル板50を接合し、液体吐出ヘッド2を完成させ、液の吐出評価を行った。
具体的には、粘度を5cpに調整したインクを用いて、単純Push波形により-10~-30Vの印可電圧を加えたときの吐出状況を確認した。その結果、溝11を形成しない比較例2では、ノズル接合時に接着剤が圧力室10xに入り込む等の不具合が確認された(ノズル接合性:×)。
一方、溝11を形成した実施例1~5で作製した各液体吐出ヘッド2に関しては、いずれも良好なノズル接合性を得られた(ノズル接合性:◎)。また、実施例1~3,5について、ダミーチャネル4を設けることで、液体の充填性を良好なものとし、気泡等による吐出不具合を解消できることを確認した。また、溝11の曲率半径を駆動チャネル3の曲率半径よりも大きくした実施例2,3では、溝11の曲率半径が駆動チャネル3の曲率半径よりも小さい実施例1よりも、良好な充填性を得られた(充填性:◎)。