JP2014154740A - 圧電体薄膜素子、圧電アクチュエータ、液体噴射ヘッド及び液滴吐出装置 - Google Patents

圧電体薄膜素子、圧電アクチュエータ、液体噴射ヘッド及び液滴吐出装置 Download PDF

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昌弘 石杜
Masaru Magai
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智 水上
Takahiko Kuroda
隆彦 黒田
Koji Onishi
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Abstract

【課題】下部電極と振動板間の密着力が高く、経時的に安定した駆動力を有する圧電体薄膜素子を提供する。また、前記圧電体薄膜素子を備える圧電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】基板上に形成された振動板と、前記振動板上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された圧電体薄膜と、前記圧電体薄膜上に形成された上部電極とを有し、前記振動板は圧縮応力を有する膜とシリコン窒化膜を含み、前記下部電極は(111)配向を有する層を含み、前記シリコン窒化膜上に形成された金属酸化膜を最表層とする多層構造により構成されていることを特徴とする圧電体薄膜素子。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧電体薄膜素子、圧電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置に関するものである。
(圧電アクチュエータ)
従来より、液滴を吐出するノズルと、前記ノズルが連通し液滴となるインク等(以下インク)を収容した加圧室と、前記加圧室内のインクをノズルから吐出させるために振動する振動板とを備え、さらに、振動板を振動させる駆動源として、圧電素子などの電気−機械変換素子とインク流路の壁面を形成する振動板とこれに対向する電極からなるエネルギー発生手段を備えた液滴吐出ヘッドが知られている。また、前記液滴吐出ヘッドにおいて、駆動源又はエネルギー発生手段で発生したエネルギーにより振動板を振動させ加圧室内のインクを加圧することによって、ノズルからインク滴を吐出させるものが知られている。なお、前記加圧室は、インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室等とも称されることがある。
前記駆動源として用いられるアクチュエータとしては、半導体デバイス、電子デバイス等の膜構造体が知られている。このようなアクチュエータとして、たとえば、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものとの2種類が実用化されている。
このうち、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものとしては、たとえば、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、前記圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室に独立するように圧電素子を形成したものが知られている(特許文献1)。
このような圧電アクチュエータにおいては、圧電膜の自発分極軸のベクトル成分と電界印加方向とが一致するときに、電界印加強度の増減に伴う伸縮が効果的に起こり、大きな圧電定数が得られるため、圧電膜の自発分極軸と電界印加方向とは完全に一致することが最も好ましいとされている。また、インク吐出量のばらつき等を抑制するには、圧電膜の圧電性能の面内ばらつきが小さいことが好ましいとされており、これらの点を考慮し、結晶配向性に優れた圧電膜が好ましいとされている。
結晶配向性に関する技術としては、たとえば、表面にTiが島状に析出したTi含有貴金属電極上に圧電膜を成膜することで、結晶配向性に優れた圧電膜を成膜する技術(たとえば、〔特許文献2〕参照)、基板としてMgO基板を用いることで、結晶配向性に優れた圧電膜を成膜する技術(たとえば、〔特許文献3〕参照)、アモルファス強誘電体膜を成膜し、その後、急速加熱法によって該膜を結晶化させる強誘電体膜の製造方法に関する技術(たとえば、〔特許文献4〕参照)、成膜工程においては、正方晶系、斜方晶系、及び菱面体晶系のうちいずれかの結晶構造を有するペロブスカイト型複合酸化物(不可避不純物を含んでいてもよい)からなり、(100)面、(001)面、及び(111)面のうちいずれかの面に優先配向し、配向度が95%以上である圧電膜を成膜する圧電膜の製造方法に関する技術(たとえば、〔特許文献5〕参照)が知られている。
(振動板)
振動板については、従来から種々の検討がなされており、金属酸化膜を用いる技術(たとえば、〔特許文献6〕参照)や、ニッケル、クロム、アルミニウム、アルミナ、酸化シリコン、またはポリイミド系樹脂、その他、SiOや、ニッケル、クロム、アルミニウムの酸化物、ポリイミドなどの有機高分子材料を用いる技術(たとえば、〔特許文献7〕参照)などの試みがなされている。
また、特許文献8では、振動板は熱酸化されたシリコン酸化膜、またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜されたシリコン酸化膜、酸化タンタル、シリコン窒化膜、酸化アルミニウム膜から適宜選択し、振動板の最表層には酸化ジルコニウムを成膜する構成であることが記載されている。しかしながら、振動板の層構成についての詳細な限定はなく、層の応力については詳細な記述はない。
また、特許文献9では、振動板として安定な膜質を有するLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法で成膜された引張応力を有する膜と圧縮応力を有する膜の3層以上を積層することにより、振動板全体の剛性と応力の制御を積層化、膜厚及び積層構成の組み合わせで実現できることが記載されている。あわせて、前記の手法によると圧電素子(電極層、強誘電体層)の材料、膜厚に適時対応でき、圧電体素子の焼成温度による振動板の剛性、応力の変動が少なく安定した振動板が得られることから、液滴吐出特性を高精度にでき、かつ安定した液滴吐出ヘッドを実現できることが記載されている。
しかし、振動板と下部電極間の密着性については不十分であり、十分なPt(111)ピーク強度を得ることができない。そのため、下部電極の結晶性又はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の結晶性が劣化し、信頼性の高い液滴吐出ヘッドの実現が困難である。
また、例えば〔特許文献1〕では、薄膜ヘッドの振動板は、Si単結晶とシリコン酸化膜から形成されている。しかし、この振動板構成では、振動板全体では圧縮応力となってしまい、適した膜厚でない場合、応力は一義的に決まり制御することができない。そのため、液滴吐出特性に重要な振動板剛性とは独立に振動板上に形成する圧電素子(電極層、強誘電体層)の材料との応力バランスを図ることができない。
したがって、振動板の初期撓みを制御できず、場合によっては吐出特性に影響を与えたり、電極層と振動板との剥離が生じたりしてしまうことがある。
そのため、振動板においては、振動板の剛性と膜応力を、振動板の構成膜である圧縮応力膜と引張応力膜を積層し、またその積層構成を最適化することにより、所望の値に設定する自由度を得る構成にすることが必要となる。また、振動板の最表層と下部電極において、十分な密着性を確保する必要がある。
(シリコン窒化膜)
一方、シリコン窒化膜は180MPa以上の高いヤング率を実現することができる。そのため、シリコン窒化膜を振動板の構成とすることにより、振動板の剛性を高めることができる。しかし、振動板剛性を主に決めているシリコン窒化膜は、引張応力が大きく、一度に0.3μm以上の膜厚を成膜することができないことから、剛性調整と応力緩和目的で補助層が必要となる。
また、シリコン窒化膜は下部電極との密着性が悪く、下部電極成膜時や圧電体薄膜成膜時に膜剥がれが生じる問題があるため、圧電体薄膜素子を電気機械変換素子として用いる場合には、圧電体薄膜素子、下部電極と振動板間の密着性を高め、圧電体薄膜で発生した変位振動を低下させることなく、振動板に伝え、振動特性を劣化させない必要がある。
そのため、下部電極と振動板間の密着性を高めるために、従来ではシリコン窒化膜の上にCVD法で成膜されたシリコン酸化膜を成膜しなければならなかった。
(シリコン酸化膜)
一方、CVD法で成膜されたシリコン酸化膜は吸湿することにより、膜応力が変動することが一般的に知られているが、CVD法で成膜されたシリコン酸化膜の吸湿により振動板応力が安定せず、結果的に液滴吐出特性の経時的なばらつきが生じてしまう。
そのため、結晶配向性に優れた、下部電極膜や圧電膜を形成するプロセスにおいては、高温での熱処理が必要とされている。
しかし、振動板において、高温での熱処理により、シリコン酸化膜からの脱ガスが発生してしまうため、下部電極の結晶性又はPZTの結晶性が劣化し、信頼性の高い液滴吐出ヘッドの実現が困難となる。それに加え、圧電素子形成のプロセスを制限することとなり、場合によっては歩留り、コストに影響を及ぼしてしまう。
本発明は、上記課題に対してなされたものである。すなわち、圧電体薄膜素子の振動板においては、膜の積層構成を最適化することにより、所望の値に設定する自由度が得られる構成の圧電体薄膜素子を提供することを目的とする。また、振動板の最表層と下部電極において、十分な密着性を有する圧電体薄膜素子を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、振動板の積層構成を最適化することで、振動板の剛性と膜応力を所望の値に設定する自由度が得られること及び下部電極と振動板間の密着性を高くすることにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、基板上に形成された振動板と、前記振動板上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された圧電体薄膜と、前記圧電体薄膜上に形成された上部電極とを有し、前記振動板は圧縮応力を有する膜とシリコン窒化膜とを含み、前記下部電極は(111)配向を有する層を含み、前記シリコン窒化膜上に形成された金属酸化膜を最表層とする多層構造により構成されていることを特徴とする圧電体薄膜素子である。
本発明によれば、振動板の積層構成を最適化することにより、振動板の剛性と膜応力を所望の値に設定する自由度を得ることができる。
さらに、下部電極と振動板間の密着性を高くすることができ、本発明の振動板構成によれば、高温プロセスを行ったあとにおいても、下部電極の結晶性等を劣化させないため、経時的に安定した駆動力を有する圧電体薄膜素子が得られる。
本発明の圧電体薄膜素子の一実施形態に係る断面を示す概略図である。 本発明の圧電体薄膜素子を有する液滴吐出ヘッドの一実施形態に係る断面を示す概略図である。 本発明の圧電体薄膜素子を有する液滴吐出ヘッドが連なった場合の一実施形態に係る断面を示す概略図である。 実施例、比較例で作製した圧電体薄膜素子のX線回折法によるPt(111)強度の値を示す図である。 (a)はインクジェット記録装置の機構部の構成を示す断面図の一例であり、(b)は本発明に係る液滴吐出装置であるインクジェット記録装置の一実施形態に係る斜視図である。
(圧電体薄膜素子)
図1に本発明を適用した圧電体薄膜素子の一例の断面の概略を示す。圧電体薄膜素子10は、基板11上の下地膜として基板11上に成膜された成膜振動板である振動板12と、前記振動板12上に形成された密着層13と、前記密着層13上に形成された下部電極21と、前記下部電極21上に形成された圧電体薄膜16と、前記圧電体薄膜16上に形成された上部電極22とを有している。
圧電体薄膜素子10は、基板11上に、振動板12、密着層13、下部電極21、圧電体薄膜16、上部電極22が、この順で、半導体製造プロセス等の、膜構造体の製造において用いられる手法によって成膜されることによって形成される。
このとき、下部電極21は、振動板12上に、密着層13を介して間接的に形成されている。ただし、密着層13を省略して下部電極21を振動板12上に直接形成しても良い。また、密着層13は下部電極21に含まれる構成であっても良い(次に示す図2、図3参照)。なお、図2、図3においては、単に、密着層13の図示を省略したに過ぎない。また、振動板12は基板11上に直接形成されている。
また、圧電体薄膜素子10は、圧電体薄膜16を圧電膜として備えた圧電素子となっており、上部電極22は個別電極となっている。
基板11としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100〜600μmの厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、本構成においては、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を使用することができる。
図2、図3に示した圧力室31を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していくが、この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。たとえばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位(100)では約54.74°の傾斜を持つ構造体が作製されるのに対して、面方位(110)では深い溝をほることが可能であるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることが可能であることが分かっている。よって本構成としては(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。ただし、この場合、マスク材であるSiOもエッチングされてしまうため、この点に留意する。
振動板12は、圧電体薄膜16によって発生した力を受けて変形変位し、圧力室31内のインクをインク滴として吐出させる。そのため、振動板12は所定の強度を有したものであることが好ましい。
振動板12は、少なくとも圧縮応力を有する膜と引っ張り応力を有する膜を含むものである。このうち、圧縮応力を有する膜としてはシリコン酸化膜が挙げられる。引っ張り応力膜を有する膜としてはシリコン窒化膜を用いる。また、最表層には金属酸化膜が形成される。金属酸化膜としては、例えばAl、Ta、HfO、La、ZrOが挙げられる。このような構成の振動板は、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法で成膜され、半導体、MEMSデバイスで一般的に従来から適用されている膜であり、加工もし易いことから、新たなプロセス課題を持ち込まず、SOI等の高価な基板を用いることなく、安定した振動板が得られる。なお、振動板12は熱処理成膜法で成膜しても良い。
また、振動板12は、多層構造からなるものである。振動板構成膜の成膜の一例としては、まず、シリコン単結晶の基板11に、熱処理製膜法でシリコン酸化膜を成膜する。続けて同様にLPCVD法でシリコン窒化膜を成膜する。続けてALD法により金属酸化膜を成膜する。これで、振動板構成膜の成膜は完了する。ここで、各振動板構成膜の膜厚は、振動板の層全体で所望の振動板剛性、および応力になるように膜厚を設定している。シリコン窒化膜の膜厚は0.3μm以下であることが望ましい。
すなわち、シリコン窒化膜上に、金属酸化膜が最表層となる振動板構成にすることにより、振動板と下部電極間の密着性が高くすることができる。なお、これにより、圧電薄膜との密着性を維持可能な層構造を有する後述の液滴吐出ヘッドを実現することができる。
また、当該振動板構成では、高温プロセスを行ったあとにおいても、下部電極の結晶性、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)のような圧電体薄膜の結晶性が劣化しにくく、振動板膜応力、ヤング率の変動が小さく安定した振動板を得ることができるため、経時的に安定した駆動力が得られる圧電薄膜素子が実現できる。
さらに、シリコン基板上に圧縮応力を有する膜、例えば熱処理法で作成されたシリコン酸化膜等を成膜しておき、シリコン窒化膜、金属酸化膜と成膜すれば、振動板の剛性と膜応力を所望の値に設定する自由度を得ることができる。
次に、下部電極21は、(111)配向を有する層からなる。ただし、下部電極21が密着層13を含むように構成される場合には、密着層13を除く部分あるいは全体を、(111)配向を有する層とする。この点において、下部電極21は、(111)配向を有する層を含む。下部電極21の材質としては、Pt、Ir、IrO、RuO、LaNiO、SrRuOから選ばれる少なくとも1種類を主成分とする金属もしくは金属酸化物、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
圧電体動作時に、経時的に圧電体中の酸素が欠損するという可能性が従来技術として示されている。その欠損した酸素を補給するため、導電性の酸化物電極が利用される。すなわち、下部電極材料の項で記載した酸化物電極層が誘電体材料との接触界面で用いられる。中でもSrRuO(ルテニウム酸ストロンチウム)は、PZTと同じペロブスカイト型結晶構造を有しているので、界面での接合性に優れ、PZTのエピタキシャル成長を実現し易く、Pbの拡散バリア層としての特性にも優れている。
下部電極21を構成する金属材料としては従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金が用いられているが、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もある。よって、下部電極21を構成する金属材料としては、イリジウムや白金−ロジウムなどの白金族元素や、これら合金膜も挙げられる。
下部電極21の作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。下部電極21の膜厚としては、0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがさらに好ましい。またこのとき、圧電体薄膜16としてPZTを選択したときは、その結晶性として(111)配向を有していることが好ましい。そのため、下部電極21の材料としては、(111)配向性が高いPtが挙げられる。
密着層13は、中間層として備えられているものであり、Ti、TiO、Ta、Ta等を下部電極21より先に積層することによって形成されている。これは、振動板12によって形成されている下地と、下部電極21との密着性が低い場合に挿入される。
上部電極22の構成にはとくに制限はなく、上部電極22の材料としては、下部電極21で例示した材料、Al、Cu等の、一般に半導体プロセスで用いられる材料およびその組み合わせが挙げられる。
圧電体薄膜16の構成として、PZTが挙げられる。PZTとはジルコン酸鉛(PbZrO)とチタン酸(PbTiO)との固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrOとPbTiOとの比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53,Ti0.47)O、一般PZT(53/47)と示される。PZT以外の複合酸化物としてはチタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。
これら材料は一般式ABOで記述され、A=Pb、Ba、Sr、B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その例として(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O、(Pb1−x,Sr)(Zr,Ti)Oが挙げられ、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。上記材料の作製方法としては、スパッタ法もしくは、ゾルゲル法を用いてスピンコーターにて作製することが可能である。その場合は、パターニング化が必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンが得られる。
PZTをゾルゲル法により作製した場合、出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ均一溶液が得られることで、PZT前駆体溶液が作製される。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量、添加しても良い。
下地基板全面にPZT膜を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことが必要になる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100nm以下の膜厚が得られるように前駆体濃度の調整が必要になる。
また、インクジェット工法により作製していく場合については、下部電極21と同様の作製フローにてパターニングされた膜を得ることが可能である。表面改質材については、下地である下部電極21の材料によっても異なるが、酸化物を下地とする場合は主にシラン化合物が選ばれ、金属を下地とする場合は主にアルカンチオールが選ばれる。
圧電体薄膜16の膜厚としては0.5〜5μmが好ましく、さらに好ましくは1μm〜2μmとなる。この範囲より小さいと十分な変位を発生することが出来なくなり、この範囲より大きいと何層も積層させていくため、工程数が多くなりプロセス時間が長くなる。
(液滴吐出ヘッド)
図2、図3に示すように、圧電体薄膜素子10は、液体噴射ヘッドである液滴吐出ヘッド30の一部として用いることが可能である。なお、図2に示す液滴吐出ヘッド30はノズルの構成の一例の概略であり、図3は図2に示したエレメントを複数個配列して形成された液滴吐出ヘッド30の概略を示している。
液滴吐出ヘッド30は、その駆動源として機能する圧電体薄膜素子10の他、エッチングして形成された基板11と、インクを収容するインク室である加圧室としての圧力室31と、圧力室31内のインクを液滴状に吐出するインク吐出口としてのノズル孔であるノズル32を備えたインクノズルとしてのノズル板33とを有している。
なお、基板11をエッチングすることにより、圧力室31となるキャビティーを形成し、前記キャビティーの上に基板を跨いで振動板を配置してもよい。
液滴吐出ヘッド30は、圧電体薄膜素子10が駆動することにより、ノズル32からインクの液滴を吐出する。具体的には、液滴吐出ヘッド30は、後述のように下部電極21、上部電極22に給電されることで圧電体薄膜16に応力が発生し、これによって振動板12を振動させ、この振動に伴って、ノズル32を通じ圧力室31内のインクを液滴状に吐出する。なお、圧力室31内にインクを供給するインク供給手段である液体供給手段、インクの流路、流体抵抗についての図示及び説明は省略している。
また、圧電薄膜素子10は、簡便な製造工程で形成可能であり、バルクセラミックスと同等の性能を持つとともに、その後の圧力室31形成のための裏面からのエッチング除去、ノズル32を有するノズル板33を接合することで、液滴吐出ヘッド30が製造可能である。
(インクジェット記録装置)
次に、本発明に係る液滴吐出装置を備えるインクジェット記録装置について説明する。
図5は、液滴吐出ヘッド30を液滴吐出ヘッドとして搭載した画像形成装置であるインクジェット記録装置の一例についての図である。ここで、同図(a)は同記録装置の機構部の側面図、同図(b)は同記録装置の斜視図である。インクジェット記録装置50は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
インクジェット記録装置50は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。インクジェット記録装置50は、記録媒体である用紙としての記録体である転写紙Sの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であるが、転写紙Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であってもよい。
インクジェット記録装置50は、記録装置本体81の内部に、主走査方向に移動可能なキャリッジ93と、キャリッジ93に搭載したインクジェットヘッドとしての記録ヘッドである液滴吐出ヘッド30と、液滴吐出ヘッド30へインクを供給する液体供給部としてのインクカートリッジ95とを有する液滴吐出装置82等を収納している。
インクジェット記録装置50は、本体81の下方部に前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット84を抜き差し自在に装着されるようになっている。また、本体81は、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒可能である。給紙カセット84は給紙トレイであっても良い。
インクジェット記録装置50は、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、液滴吐出装置82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
液滴吐出装置82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持している。キャリッジ93には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインクを吐出する液滴吐出ヘッド30が、複数のノズル32を主走査方向と交差する方向に配列した状態で、インク滴吐出方向を下方に向けて装着されている。またキャリッジ93には液滴吐出ヘッド30のそれぞれに各色のインクを供給するためのインクカートリッジ95を交換可能に装着されている。
インクカートリッジ95は、上方に大気と連通する図示しない大気口、下方には液滴吐出ヘッド30へインクを供給する図示しない供給口を有しているとともに、内部にはインクが充填された図示しない多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により液滴吐出ヘッド30へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。本構成の液滴吐出ヘッド30は各色に対応して複数備えられているが、各色のインクを吐出するノズルを有する1つのヘッドでもよい。
キャリッジ93は、後方側に対応した用紙搬送方向下流側を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装され、前方側に対応した用紙搬送方向上流側を従ガイドロッド92に摺動自在に載置されている。キャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間に、キャリッジ93を固定したタイミングベルト100を張装し、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動するようになっている。
インクジェット記録装置50は、給紙カセット84にセットした用紙83を液滴吐出ヘッド30の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とを有する。搬送ローラ104は副走査モータ107によって図示しないギヤ列を介して回転駆動される。
液滴吐出ヘッド30の下方には、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を液滴吐出ヘッド30の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109が設けられている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設け、さらに用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115、116とを配設している。
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド30を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液滴吐出ヘッド30の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117は、図示を省略するが、キャップ手段と、吸引手段と、クリーニング手段を有している。キャリッジ93は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段で液滴吐出ヘッド30をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で液滴吐出ヘッド30のノズル32を密封し、図示しないチューブを通して吸引手段でノズル32からインクとともに気泡等を吸い出し、ノズル板33の表面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体81下部に設置された図示しない廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このような構成のインクジェット記録装置50においては液滴吐出ヘッド30を搭載しており、この液滴吐出ヘッド30が、圧電薄膜素子10、すなわち、振動板12の表面粗さの適正化により、下部電極21、圧電体薄膜16の結晶配向を適正化した圧電体薄膜素子10を備えていることにより、経時的に安定してインク吐出特性が得られ、インク滴吐出不良が防止ないし抑制され、良好な画像品質が得られる。
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
たとえば、圧電体薄膜素子は、基板、下地膜、密着層、下部電極、圧電体薄膜、上部電極のうち、少なくとも下地膜、下部電極、圧電薄膜、上部電極を有していれば良く、これに加えて密着層、基板を備えていても良い。
本発明を適用するインクジェット記録装置は、上述のインクジェット記録装置に限らず、複写機、ファクシミリの単体、あるいはこれらの複合機、これらに関するモノクロ機等の複合機、その他、電気回路形成に用いられる装置、バイオテクノロジー分野において所定の画像を形成するのに用いられる装置であっても良い。
本発明の圧電体薄膜素子は、その適用範囲がインクジェット記録装置に限られない。また、インクジェット記録装置において、液滴吐出ヘッドと異なる部分に、アクチュエータとして備えられていても良い。圧電体薄膜素子は、インクジェット技術を利用した3次元造型技術等に応用可能である。
以下、実施例にて本発明の圧電体薄膜素子、前記圧電体薄膜素子を有する圧電アクチュエータ、前記圧電アクチュエータを有する液滴吐出ヘッド及び前記液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
基板としてのシリコンウエハに振動板をLPCVD、ALD法によって形成した。振動板は、具体的に、熱処理成膜法で厚さ1000nmのシリコン酸化膜を成膜し、その後、LPCVD法で膜厚240nmのシリコン窒化膜を成膜した。
次いで、ALD法によって膜厚30nmのAl膜を成膜した。次いで、膜厚50nmのチタン膜による密着層を成膜し、さらに下部電極として、膜厚100nmの白金膜をスパッタ成膜し、さらに膜厚50nmのSrRuO膜をスパッタ成膜した。このとき、SrRuO膜のスパッタ成膜時の基板加熱温度については550℃にて成膜を実施した。
なお、下部電極を構成している白金膜、SrRuO膜はそれぞれ、圧電体薄膜素子における第1の電極、第2の電極となっている。
また、密着層であるチタン膜は、金属酸化膜(Al膜)と白金膜との間の密着層となっている。
圧電体薄膜の作成にあたってはPb:Zr:Ti=110:53:47の組成比で調合した溶液を準備した。具体的な前駆体塗布液の合成については、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。
次に、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、上述の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。前記PZT前駆体溶液の濃度は0.5モル/リットルとした。
前記PZT前駆体溶液を用いて、スピンコートにより圧電体薄膜を成膜し、成膜後、120℃で乾燥をした後、500℃で熱分解を行った。
3層目の熱分解処理後に、温度750℃による結晶化熱処理を急速熱処理であるRTA(rapid thermal annealing)により行った。このときPZTの膜厚は240nmであった。この工程を計8回実施し、24層で約2μmのPZT膜厚を得た。
次に、上部電極として膜厚40nmのSrRuO膜、さらに膜厚125nmの白金Pt膜をスパッタ成膜した。なお、上部電極を構成しているSrRuO膜、白金Pt膜はそれぞれ、圧電体薄膜素子における第3の電極、第4の電極となっている。
その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、フォトリソグラフィーでレジストパターンを形成した後、ICPエッチング装置(サムコ社製)を用いてパターンを作製した。
さらに、基板を構成しているシリコンウエハに加工を施し、圧力室とノズルを備えたノズル板を形成した。以上のようにして、圧電体薄膜素子を作製した。
(実施例2)
振動板の振動板構成を変化させ、最表層のAl膜をLPCVD法によるTaに変更したこと以外は、実施例1と同様に圧電体薄膜素子を作製した。
(実施例3)
密着層のTiを除いた以外は、実施例1と同様に圧電体薄膜素子を作製した。
(実施例4)
密着層をTiOに変更したことは、実施例1と同様に圧電体薄膜素子を作製した。まず、チタン膜をスパッタ法により振動板上に形成する。続いて、RTA装置を用いて700℃、1分、O雰囲気でチタン膜を熱酸化して、チタン膜を酸化チタン膜にする。
(実施例5)
振動板の振動板構成を変化させ、最表層のAl膜をLPCVD法によるHfOに変更したこと以外は、実施例1と同様に圧電体薄膜素子を作製した。
(実施例6)
振動板の振動板構成を変化させ、最表層のAl膜をLPCVD法によるLaに変更したこと以外は、実施例1と同様に圧電体薄膜素子を作製した。
(実施例7)
振動板の振動板構成を変化させ、最表層のAl膜をLPCVD法によるZrOに変更したこと以外は、実施例1と同様に圧電体薄膜素子を作製した。
(実施例8)
下部電極の構成を変更し、SrRuO膜を除いたこと以外は、実施例1と同様に圧電体薄膜素子を作製した。
(比較例1)
振動板の振動板構成を変化させ、熱処理成膜法で厚さ1000nmのシリコン酸化膜のみを振動板としたこと以外は、実施例1と同様に圧電体薄膜素子を作製した。
シリコン単結晶基板に、熱処理成膜法でシリコン酸化膜のみを成膜した場合には、下部電極、PZTの結晶性は良好なものが得られることがわかっており、リファレンスとした。比較例1では振動板は圧縮応力を受けた厚さ1000nmのシリコン酸化膜のみであるので、振動板構成は、所望の振動板剛性、および応力になるように設定が困難となり、所望の液滴速度を得ることは困難である。
(比較例2)
振動板の振動板構成を変化させ、最表層のAl膜をLPCVD法によるシリコン酸化膜に変更したこと以外は、実施例1と同様に圧電体薄膜素子を作製した。
(比較例3)
振動板の振動板構成を変化させ、最表層のAl膜を除いた以外は、実施例1と同様に圧電体薄膜素子を作製した。しかし、下部電極を成膜中に膜剥がれが生じてしまった。
(比較例4)
振動板の振動板構成を変化させ、最表層のAl膜をLPCVD法によるシリコン酸化膜に変更し、密着層をTiOに変更したこと以外は、実施例1と同様に圧電体薄膜素子を作製した。
(比較例5)
下部電極の構成を変更し、SrRuO膜をITO膜に変更したこと以外は、実施例1と同様に圧電体薄膜素子を作製した。比較例5で作製した圧電体薄膜素子を、下記にて記述する液滴速度Vjの劣化率のリファレンスとした。
(X線回折法による測定)
実施例1〜4、比較例1、2で作製した圧電体薄膜素子について、Pt(111)強度をX線回折法により測定したところ、図4に示すような結果が得られた。
比較の基準となる比較例1のPtの(111)面のピーク強度を図4で示すように「1」とし、これにより実施例1〜4、比較例2のPtの(111)面のピーク強度を規格化した。
比較例2において、振動板の最表層であるAl膜を、LPCVD法により形成されたシリコン酸化膜にした場合では、Pt(111)ピーク強度は、比較例1の12%程度まで下がってしまった。
圧縮応力を有するシリコン酸化膜と引っ張り応力を有するシリコン窒化膜、このシリコン窒化膜上に形成された金属酸化膜を最表層として構成される振動板を有する実施例1〜4では、Ptの(111)面のピーク強度は80%以上に改善されている。Pt(111)のピーク強度が高いほどその上方に形成されるPZT膜の膜質は良くなる。
(密着力の測定)
実施例1〜7、比較例1〜4で作製した圧電体薄膜素子について密着力を測定したところ、表1に示すような結果が得られた。密着力の測定は、ナノインデンターを用いたスクラッチ試験により行った。密着力が大きいほど密着性を維持できる。
なお、比較例3は作製中に膜剥がれが生じてしまったため、測定はできなかった。
表1から、実施例1〜7が比較例に比べて高く、圧電薄膜との密着性を維持可能な層構造を有する液滴吐出ヘッドを実現することができる。
(吐出評価)
実施例1〜8、比較例2、4、5で作製した圧電体薄膜素子を用いて、図3に示した液滴吐出ヘッドを作製し液の吐出評価を行った。粘度を5cpに調整したインクを用いて、単純Push波形により−10〜−30Vの印可電圧を加えたときの吐出状況を確認したところ、全てどのノズル孔からも吐出されていることを確認した。
(液滴速度の劣化率の評価)
表2に耐久性試験後液滴速度Vjの劣化率を示す。1010回後すなわち1010回繰り返し印加電圧を加えた耐久性試験直後のVj特性においては、実施例1〜7、比較例2、4に比べて、下部電極のSrRuO膜をITO膜に変更した比較例5は、10%以上劣化しているのが確認され、耐久性で劣っており、下部電極として適当でないと判断した。すなわち、下部電極構成が適切でないために、液滴速度Vjの劣化が大きくなったといえる。実施例1〜8では、比較例2、4に比べ、液滴劣化が少なくすることができており、耐久試験として良好な結果を示した。
10 圧電体薄膜素子
11 基板
12 振動板
13 密着層
16 圧電体薄膜
21 下部電極
22 上部電極
30 液滴吐出ヘッド
50 インクジェット記録装置
82 液滴吐出装置
95 液体供給部
特開2002−67316号公報 特開2004−186646号公報 特開2004−262253号公報 特開2003−218325号公報 特開2007−258389号公報 特開2005−144918号公報 特開2004−262253号公報 特許第3541877号公報 特開2012−158011号公報

Claims (9)

  1. 基板上に形成された振動板と、
    前記振動板上に形成された下部電極と、
    前記下部電極上に形成された圧電体薄膜と、
    前記圧電体薄膜上に形成された上部電極と
    を有し、
    前記振動板は圧縮応力を有する膜とシリコン窒化膜とを含み、
    前記下部電極は(111)配向を有する層を含み、前記シリコン窒化膜上に形成された金属酸化膜を最表層とする多層構造により構成されていることを特徴とする圧電体薄膜素子。
  2. 基板中に形成されたキャビティーと、
    前記キャビティー上に前記基板を跨いで配置された振動板と、
    前記振動板上に形成された下部電極と、
    前記下部電極上に形成された圧電体薄膜と、
    前記圧電体薄膜上に形成された上部電極と
    を有し、
    前記振動板は圧縮応力を有する膜とシリコン窒化膜とを含み、
    前記下部電極は(111)配向を有する層を含み、前記シリコン窒化膜上に形成された金属酸化膜を最表層とする多層構造により構成されていることを特徴とする圧電体薄膜素子。
  3. 前記振動板の圧縮応力を有する膜として、シリコン酸化膜を少なくとも含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電体薄膜素子。
  4. 前記シリコン窒化膜の膜厚が0.3μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電体薄膜素子。
  5. 前記シリコン窒化膜はLPCVD法によって成膜され、前記金属酸化膜がALD法により成膜され、前記圧電体薄膜がゾルゲル法により成膜されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電体薄膜素子。
  6. 前記金属酸化膜は、Al、Ta、HfO、La、ZrOのうち少なくとも1種類を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の圧電体薄膜素子。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の圧電体薄膜素子を備えることを特徴とする圧電アクチュエータ。
  8. 請求項7に記載の圧電アクチュエータを備えることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  9. 請求項8に記載の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする液滴吐出装置。
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