JP6102099B2 - 電気機械変換素子及びその製造方法、並びに液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置 - Google Patents

電気機械変換素子及びその製造方法、並びに液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置 Download PDF

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本発明は、電気機械変換素子及びその製造方法、並びに前記電気機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッド、及び前記液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置に関する。
プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像記録装置或いは画像形成装置として使用されるインクジェット記録装置及び液滴吐出ヘッドに関して、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する加圧室(インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室等とも称される)と、加圧室内のインクを加圧する圧電素子等の電気機械変換素子、或いはヒータ等の電気熱変換素子、若しくはインク流路の壁面を形成する振動板と、これに対向する電極からなるエネルギー発生手段とを備え、エネルギー発生手段で発生したエネルギーで加圧室内のインクを加圧することでノズルからインク滴を吐出させる構成が知られている。
上記電気機械変換素子の製造工程では、例えば、金属膜上にパターニングされた酸化物膜を形成して第1の電極を作製し、更に、酸化物膜上のみに電気機械変換膜としてPZT膜を形成し、更に、PZT膜上に第2の電極をパターニングする。酸化物膜上のみにPZT膜を形成することにより、PZT膜に含まれるPbの金属膜への拡散を抑えている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、上記のような製造方法では、第2の電極をパターニングする際のエッチングにおいて、第1の電極を構成する金属膜がオーバーエッチングされ、金属膜が薄くなって第1の電極の抵抗値が高くなるうえ、抵抗値のばらつきが大きくなる問題があった。金属膜を厚く形成すればこの問題を回避できるが、コストの面で問題となっていた。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、第1の電極(下部電極)の抵抗値が高くなることを防止可能な電気機械変換素子等を提供することを課題とする。
本電気機械変換素子は、第1の金属膜、前記第1の金属膜上に形成された第1の導電性酸化物膜、前記第1の導電性酸化物膜上に形成された第2の金属膜、及び前記第2の金属膜上の所定領域に形成された第2の導電性酸化物膜、を備えた第1の電極と、前記第2の導電性酸化物膜上に形成された電気機械変換膜と、前記電気機械変換膜上に形成された第2の電極と、を有し、前記第1の導電性酸化物膜は、前記第1の金属膜よりもエッチングレートの遅い導電性材料から形成され、前記導電性材料は、化学式ABOで記述され、AはSr、Ba、Ca、Laの何れか1つ以上、BはRu、Co、Niの何れか1つ以上を主成分とする複合酸化物、又は、IrO、RuOの何れかからなる酸化物であることを要件とする。
開示の技術によれば、第1の電極(下部電極)の抵抗値が高くなることを防止可能な電気機械変換素子等を提供できる。
第1の実施の形態に係る電気機械変換素子を例示する断面図である。 第1の実施の形態に係る電気機械変換素子の製造工程を例示する図(その1)である。 第1の実施の形態に係る電気機械変換素子の製造工程を例示する図(その2)である。 第1の実施の形態に係る電気機械変換素子の製造工程を例示する図(その3)である。 インクジェット塗布装置を例示する斜視図である。 比較例に係る電気機械変換素子の製造工程を例示する図である。 第1の実施の形態に係る電気機械変換素子を用いた液滴吐出ヘッドを例示する断面図である。 図7の液滴吐出ヘッドを複数個配置した例を示す断面図である。 インクジェット記録装置を例示する斜視図である。 インクジェット記録装置の機構部を例示する側面図である。 代表的な電界強度と分極のヒステリシス曲線を示す特性図である。 本実施例と比較例について第1の電極の膜厚の面内分布の測定結果を示す図である。
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
〈第1の実施の形態〉
[第1の実施の形態に係る電気機械変換素子の構造]
第1の実施の形態では、電気機械変換素子の例を示す。まず、電気機械変換素子の構造について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る電気機械変換素子を例示する断面図である。図1を参照するに、電気機械変換素子1は、第1の電極11と、電気機械変換膜13と、第2の電極14とを有する。なお、第1の電極11及び第2の電極14は、各々下部電極及び上部電極と称される場合もある。
第1の電極11は、第1の金属膜11a、第1の導電性酸化物膜11b、第2の金属膜11c、第2の導電性酸化物膜11dを有する。第1の金属膜11aは、例えば、シリコン等の基板上(図示せず)に形成されている。第1の金属膜11aの材料としては、例えば、アルカンチオールとの反応により、SAM(Self Assembled Monolayer)膜を形成可能な金属を用いることができる。
具体的には、低い反応性を有するルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、プラチナ(Pt)等の白金族金属や、これら白金族金属を含む合金材料等を用いることができる。第1の金属膜11aの厚さは、例えば、200nm程度とすることができる。
第1の金属膜11a上には、第1の導電性酸化物膜11bが形成されている。第1の導電性酸化物膜11bは、第2の電極14を形成する際のエッチングにおいて、第1の金属膜11aよりもエッチングレートの遅い導電性材料から形成されている。第1の導電性酸化物膜11bの材料としては、例えば、化学式ABOで記述され、AはSr、Ba、Ca、Laの何れか1つ以上、BはRu、Co、Niの何れか1つ以上を主成分とする複合酸化物を用いることができる。
具体的には、SrRuOやCaRuO、これらの固溶体である(Sr1−x Ca)O、LaNiOやSrCoO、これらの固溶体である(La, Sr)(Ni1−y Co)O(y=1でも良い)等を挙げることができる。又、それ以外の酸化物材料として、IrO、RuO等を挙げることができる。第1の導電性酸化物膜11bの厚さは、例えば、50nm程度とすることができる。なお、第1の導電性酸化物膜11bは、本発明に係る導電膜の代表的な一例である。
第1の導電性酸化物膜11b上の所定領域には、第2の金属膜11cが形成さている。第2の金属膜11cの材料は、前述の第1の金属膜11aの材料の中から適宜選択できる。但し、第2の金属膜11cの材料は、第1の金属膜11aの材料と同一でも良いし、異なっても良い。第2の金属膜11cの厚さは、例えば、500nm程度とすることができる。
なお、所定領域は、第2の導電性酸化物膜11d及び電気機械変換膜13と平面視において重複する領域である。但し、第2の金属膜11cは、第2の導電性酸化物膜11d及び電気機械変換膜13と平面視において重複する位置に形成され、更に、平面視において第2の導電性酸化物膜11d及び電気機械変換膜13の周囲に延在してもよい。例えば、第2の金属膜11cは、第1の導電性酸化物膜11b上の全面に形成されてもよい。
又、第2の金属膜11cが第2の導電性酸化物膜11d及び電気機械変換膜13と平面視において重複する位置に形成され、電気機械変換膜13に覆われていない部分の第1の導電性酸化物膜11bが電気機械変換膜13に覆われている部分の第1の導電性酸化物膜11bよりも薄くなっていてもよい。
第2の金属膜11c上(第2の金属膜11cの所定領域上)には、第2の導電性酸化物膜11dが形成されている。第2の導電性酸化物膜11dの材料は、前述の第1の導電性酸化物膜11bの材料の中から適宜選択できる。但し、第2の導電性酸化物膜11dの材料は、第1の導電性酸化物膜11bの材料と同一でも良いし、異なっても良い。第2の導電性酸化物膜11dの厚さは、例えば、50nm程度とすることができる。なお、第2の導電性酸化物膜11dは、本発明に係る導電性酸化物膜の代表的な一例である。
なお、第2の導電性酸化物膜11dに上記の材料を用いることにより、電気機械変換膜13がPbを含む場合でも、Pbが第2の金属膜11cに拡散するおそれを低減できる。つまり、Pbの拡散による第1の電極11の劣化を防止できる。
第1の電極11の第2の導電性酸化物膜11d上には、電気機械変換膜13が形成されている。電気機械変換膜13の材料としては、例えば、PZTを用いることができる。PZTとはジルコン酸鉛(PbZrO)とチタン酸鉛(PbTiO)の固溶体である。例えば、PbZrOとPbTiOの比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53、Ti0.47)O、一般にはPZT(53/47)と示されるPZT等を使用することができる。PbZrOとPbTiOの比率によって、PZTの特性が異なる。
電気機械変換膜13としてPZTを使用する場合、例えば、出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物を使用し、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ、PZTの前駆体溶液を作製する。酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物の混合量は、所望のPZTの組成(PbZrOとPbTiOの比率)に応じて、当業者が適宜選択できるものである。
なお、金属アルコキシド化合物は、大気中の水分により容易に分解する。そのため、PZT前駆体溶液に、安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミン等を添加してもよい。
電気機械変換膜13の材料として、例えば、チタン酸バリウム等を用いても構わない。この場合は、バリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウムの前駆体溶液を作製することが可能である。
これら材料は一般式ABOで記述され、A=Pb、Ba、Sr B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x、Ba)(Zr、Ti)O、(Pb1−x、Sr)(Zr、Ti)O、と表され、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。電気機械変換膜13の厚さは、例えば、1000nm程度とすることができる。
電気機械変換膜13上には、第2の電極14が形成されている。第2の電極14は、例えば、電気機械変換膜13上の外縁部を除く領域に形成されている。第2の電極14は、第3の導電性酸化物膜14aと第3の金属膜14bとが順次積層された積層構造とすることができる。
第3の導電性酸化物膜14aの材料は、前述の第1の導電性酸化物膜11bの材料の中から適宜選択できる。但し、第3の導電性酸化物膜14aの材料は、第1の導電性酸化物膜11bの材料と同一でも良いし、異なっても良い。第3の導電性酸化物膜14aの厚さは、例えば、50nm程度とすることができる。第3の金属膜14bの材料は、前述の第1の金属膜11aの材料の中から適宜選択できる。但し、第3の金属膜14bの材料は、第1の金属膜11aの材料と同一でも良いし、異なっても良い。第3の金属膜14bの厚さは、例えば、150nm程度とすることができる。
このように、第1の実施の形態に係る電気機械変換素子1では、従来の電気機械変換素子とは異なり、第1の金属膜11a上に第1の金属膜11aよりもエッチングレートの遅い導電性材料から第1の導電性酸化物膜11bが形成されている。これにより、電気機械変換素子1の製造工程において、第1の導電性酸化物膜11bがエッチングストップ層として機能し、第1の金属膜11aがエッチングされることを防止できる。その結果、第1の電極11を厚くできるため、第1の電極11の抵抗値が高くなることを防止できる。又、第1の電極11の抵抗値がばらつくことを防止できる。
なお、以降は、第1の金属膜11a、第2の金属膜11c、及び第3の金属膜14bとしてPt膜、第1の導電性酸化物膜11b、第2の導電性酸化物膜11d、及び第3の導電性酸化物膜14aとしてSrRuO膜、電気機械変換膜13としてPZT膜を用いた場合を例として説明を行う。
[第1の実施の形態に係る電気機械変換素子の製造方法]
次に、電気機械変換素子の製造方法について説明する。図2〜図4は、第1の実施の形態に係る電気機械変換素子の製造工程を例示する図である。まず、図2(a)に示す工程では、基板10を準備する。基板10上には、後述の工程で共通電極となる第1の電極11を形成するので、基板10としては、絶縁体又は表面が絶縁処理された導体や半導体を用いることができる。基板10としては、例えば、表面に酸化膜が形成されたシリコン等を用いることができる。
次に、図2(b)に示す工程では、基板10上に、例えばスパッタ法や真空蒸着等の真空成膜法等により、第1の金属膜11aとしてPt膜、第1の導電性酸化物膜11bとしてSrRuO膜、第2の金属膜11cとしてPt膜、及び第2の導電性酸化物膜11dとしてSrRuO膜を順次積層する。第1の金属膜11a、第1の導電性酸化物膜11b、第2の金属膜11c、及び第2の導電性酸化物膜11dの各々の厚さは、例えば、200nm、50nm、500nm、及び50nm程度とすることができる。なお、第1の金属膜11a、第1の導電性酸化物膜11b、第2の金属膜11c、及び第2の導電性酸化物膜11dは、共通電極となる第1の電極11の構成要素となる。
次に、図2(c)に示す工程では、例えば、フォトリソグラフィ法により、第2の導電性酸化物膜11d上の所定領域にレジスト層200を形成する。なお、レジスト層200を形成する所定領域は、後述の工程で電気機械変換膜13を形成する領域である。次に、図2(d)に示す工程では、レジスト層200をマスクとして第2の導電性酸化物膜11dをエッチングし、レジスト層200に覆われていない部分の第2の導電性酸化物膜11dを除去する。これにより、第2の金属膜11cの所定領域上に第2の導電性酸化物膜11dが形成される。次に、図2(e)に示す工程では、図2(d)に示すレジスト層200を除去する。
次に、図2(f)に示す工程では、第2の導電性酸化物膜11dから露出する第2の金属膜11cを表面改質させて疎水化する。具体的には、第2の金属膜11c及び第2の導電性酸化物膜11dを、例えばチオール化合物(アルカンチオール等)からなるSAM材料で浸漬処理し、第2の導電性酸化物膜11dから露出する第2の金属膜11cの表面にSAM膜12を自己配列させる。アルカンチオールとしては、例えば、CH3(CH2)−SH等を用いることができる。SAM材料は第2の導電性酸化物膜11d上には形成されず、第2の導電性酸化物膜11dから露出する第2の金属膜11c上のみに形成される。
これにより、SAM膜12が形成された領域(第2の金属膜11c上)は疎水部となり、SAM膜12が形成されていない領域(第2の導電性酸化物膜11d上)は親水部となる。例えば、SAM膜12が形成された領域(第2の金属膜11c上)の純水に対する接触角は92度となり疎水性を示し、SAM膜12が形成されていない領域(第2の導電性酸化物膜11d上)の純水に対する接触角は54度となり親水性を示す。
このように、SAM膜12を形成することにより、濡れ性のコントラストが高くなるため、後述の工程でインクジェット法によりPZT前駆体溶液13xを塗布する際の塗布精度を向上できる。
なお、1層の金属膜上に1層の導電性酸化物膜を形成して第1の電極とする技術が従来知られていた。本願では、第1の金属膜11a上に第2の導電性酸化物膜11bを形成し、更に、第2の導電性酸化物膜11b上に第2の金属膜11c及び第2の導電性酸化物膜11dを順次積層し、4層構成の第1の電極11としている。このように、本願の第1の電極11の層構成は、従来の2層から4層に増加しているが、スパッタ法による成膜は連続的に実施され、トータルの膜厚もあまり変わらないため、工程としては大きな増加はない。
ここで、図2(f)に示す工程後に用いるインクジェット塗布装置60について説明する。図5は、インクジェット塗布装置を例示する斜視図である。図5に示すインクジェット塗布装置60において、架台61の上にY軸駆動手段62が設置してあり、その上に基板63を搭載するステージ64がY軸方向に駆動できるように設置されている。なおステージ64には図示されていない真空、静電気などの吸着手段が付随しており基板63が固定されている。
又、X軸支持部材65にはX軸駆動手段66が取り付けられており、これにZ軸駆動手段67上に搭載されたヘッドベース68が取り付けられており、X軸方向に移動できるようにされている。ヘッドベース68の上にはインクを吐出させるインクジェットヘッド69が搭載されている。インクジェットヘッド69には図示しない各インクタンクから各々着色樹脂インク供給用パイプ70を介してインクが供給される。
図2(f)に示す工程の後、図3(g)〜図3(i)に示す工程では、第2の導電性酸化物膜11d上(親水部上)に、インクジェット法により電気機械変換膜13を形成する。まず、図3(g)に示す工程では、図2(f)に示す構造体をインクジェット塗布装置60のステージ64上に載置し、インクジェットヘッド69から、第2の導電性酸化物膜11d上(親水部上)にPZT前駆体溶液13xを塗布する。PZT前駆体溶液13xは、最終的に電気機械変換膜13となるものである。このように、インクジェット法により電気機械変換膜13を形成することにより、電気機械変換膜13の原材料の使用量を減らすことができる。
次に、図3(h)に示す工程では、PZT前駆体溶液13xに熱処理を行い、単層の電気機械変換膜13aを形成する。インクジェット法を用いた場合、単層の電気機械変換膜13aは約30〜100nmの膜厚になるため、例えば、1000nmの電気機械変換膜13を形成するためには、図2(f)、図3(g)、及び図3(h)の工程を繰り返し、単層の電気機械変換膜13aを複数積層する。これにより、例えば、図3(i)に示すように、所望の膜厚(例えば、1000nm)の電気機械変換膜13が得られる。
次に、図4(j)に示す工程では、電気機械変換膜13の周囲に露出する第2の金属膜11c、第2の導電性酸化物膜11d、及び電気機械変換膜13の各々の外部に露出する面を覆うように、例えばスパッタ法や真空蒸着等の真空成膜法等により、第3の導電性酸化物膜14aとしてSrRuO膜、第3の金属膜14bとしてPt膜を順次積層する。第3の導電性酸化物膜14a及び第3の金属膜14bの各々の厚さは、例えば、150nm及び50nm程度とすることができる。
次に、図4(k)に示す工程では、例えば、フォトリソグラフィ法により、電気機械変換膜13上に形成された第3の金属膜14b上の外縁部を除く領域にレジスト層210を形成する。次に、図4(l)に示す工程では、レジスト層210をマスクとして第3の導電性酸化物膜14a及び第3の金属膜14bをエッチングし、レジスト層210に覆われていない部分の第3の導電性酸化物膜14a及び第3の金属膜14bを除去する。この工程により、第1の金属膜11a、第1の導電性酸化物膜11b、第2の金属膜11c、及び第2の導電性酸化物膜11dを備えた第1の電極11が形成される。又、電気機械変換膜13上に積層された第3の導電性酸化物膜14a及び第3の金属膜14bを備えた第2の電極14が形成される。
この際、第3の導電性酸化物膜14a及び第3の金属膜14bのエッチングのストップ位置を遅くしすぎると、電気機械変換膜13に覆われていない部分の第2の金属膜11cがエッチングされて除去される。しかし、SrRuO膜のエッチングレートは36nm/min程度であり、167nm/min程度であるPt膜のエッチングレートの約1/5程度である。そのため、第1の導電性酸化物膜11bがエッチングストップ層として機能し、第1の金属膜11aはエッチングされない。
なお、第3の導電性酸化物膜14a及び第3の金属膜14bのエッチングのストップ位置によっては、電気機械変換膜13に覆われていない部分の第2の金属膜11cが残存している場合もある。つまり、第2の金属膜11cは、第2の導電性酸化物膜11d及び電気機械変換膜13と平面視において重複する位置に形成され、更に、平面視において第2の導電性酸化物膜11d及び電気機械変換膜13の周囲に延在してもよい。例えば、第2の金属膜11cは、第1の導電性酸化物膜11b上の全面に形成されてもよい。
又、第3の導電性酸化物膜14a及び第3の金属膜14bのエッチングのストップ位置によっては、電気機械変換膜13に覆われていない部分の第1の導電性酸化物膜11bの一部が除去される場合もある。つまり、第2の金属膜11cが第2の導電性酸化物膜11d及び電気機械変換膜13と平面視において重複する位置に形成され、電気機械変換膜13に覆われていない部分の第1の導電性酸化物膜11bが電気機械変換膜13に覆われている部分の第1の導電性酸化物膜11bよりも薄くなっていてもよい。
次に、図4(m)に示す工程では、レジスト層210を除去することにより、電気機械変換素子1が完成する。
ここで、比較例を用いて、本実施の形態に係る電気機械変換素子1の奏する効果について説明する。図6は、比較例に係る電気機械変換素子の製造工程を例示する図である。
まず、図6(a)に示す工程では、図2(a)〜図3(i)と同様の工程を実行して、基板10上に第1の電極11x及び電気機械変換膜13を積層する。但し、第1の実施の形態に係る第1の電極11とは異なり、第1の電極11xは第1の金属膜11a(Pt膜)及び第1の導電性酸化物膜11b(SrRuO膜)の2層構成である。電気機械変換膜13は、第1の金属膜11aの所定領域に形成された第1の導電性酸化物膜11b上に形成される。換言すれば、平面視において、電気機械変換膜13の周囲には、第1の金属膜11aが露出している。
次に、図6(b)に示す工程では、電気機械変換膜13の周囲に露出する第1の金属膜11a及び電気機械変換膜13の各々の外部に露出する面を覆うように、例えばスパッタ法や真空蒸着等の真空成膜法等により、第3の金属膜14bとしてPt膜を積層する。
次に、図6(c)に示す工程では、例えば、フォトリソグラフィ法により、電気機械変換膜13上に形成された第3の金属膜14b上の外縁部を除く領域にレジスト層210を形成する。次に、図6(d)に示す工程では、レジスト層210をマスクとして第3の金属膜14bをエッチングし、レジスト層210に覆われていない部分の第3の金属膜14bを除去する。
次に、図6(e)に示す工程では、レジスト層210を除去する。この工程により、第1の電極11xの第1の導電性酸化物膜11b上に電気機械変換膜13が形成され、電気機械変換膜13上の外縁部を除く領域に第2の電極である第3の金属膜14bが形成された電気機械変換素子1xが完成する。
比較例の図6(d)に示す工程では、第3の金属膜14b(Pt膜)のエッチングのストップ位置を遅くしすぎると、第3の金属膜14b(Pt膜)がエッチングされた後に連続して第1の電極11xの第1の金属膜11a(Pt膜)がエッチングされるため、第1の電極11xが薄くなり、第1の電極11xの抵抗値が高くなるおそれがある。なお、導電性酸化物膜を介して第3の金属膜14bを形成する場合も同様の問題が生じるおそれがある。
これに対し、本実施の形態の図4(l)に示す工程では、第1の導電性酸化物膜11bがエッチングストップ層として機能し、第1の金属膜11aがエッチングされないため、第1の電極11が薄くなり、第1の電極11の抵抗値が高くなることを防止できる。又、第1の電極11の抵抗値がばらつくことを防止できる。
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、第1の実施の形態に係る電気機械変換素子を用いた液滴吐出ヘッドの例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
図7は、第1の実施の形態に係る電気機械変換素子を用いた液滴吐出ヘッドを例示する断面図である。図7を参照するに、液滴吐出ヘッド2は、電気機械変換素子1と、ノズル板20と、圧力室基板30と、振動板40とを有する。ノズル板20には、インク滴を吐出するノズル21が形成されている。ノズル板20、圧力室基板30、及び振動板40により、ノズル21に連通する圧力室31(インク流路、加圧液室、加圧室、吐出室、液室等と称される場合もある)が形成されている。振動板40は、インク流路の壁面の一部を形成している。なお、図7において、液体供給手段、流路、流体抵抗等についての記述は省略する。
電気機械変換素子1は、密着層50を介して、振動板40上に搭載されており、圧力室31内のインクを加圧する機能を有する。密着層50は、例えばTi、TiO、TiN、Ta、Ta、Ta等からなる層であり、電気機械変換素子1の第1の電極11と振動板40との密着性を向上する機能を有する。但し、密着層50は、必要に応じて設ければよい。
電気機械変換素子1において、第1の電極11と第2の電極14との間に電圧が印加されると、電気機械変換膜13が機械的に変位する。電気機械変換膜13の機械的変位にともなって、振動板40が例えば横方向(d31方向)に変形変位し、圧力室31内のインクを加圧する。これにより、ノズル21からインク滴を吐出させることができる。
なお、図8に示すように、液滴吐出ヘッド2を複数個並設し、液滴吐出ヘッド3を構成することもできる。
このように、第1の実施の形態に係る電気機械変換素子1は、例えば、インクジェット記録装置において使用する液滴吐出ヘッドの構成部品として用いることができるが、これには限定されない。第1の実施の形態に係る電気機械変換素子1を、例えば、マイクロポンプ、超音波モータ、加速度センサ、プロジェクター用2軸スキャナ、輸液ポンプ等の構成部品として用いてもよい。
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態では、液滴吐出ヘッド3(図8参照)を搭載したインクジェット記録装置の例を示す。図9は、インクジェット記録装置を例示する斜視図である。図10は、インクジェット記録装置の機構部を例示する側面図である。なお、インクジェット記録装置4は、本発明に係る液滴吐出装置の代表的な一例である。
図9及び図10を参照するに、インクジェット記録装置4は、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ93、キャリッジ93に搭載した液滴吐出ヘッド3の一実施形態であるインクジェット記録ヘッド94、インクジェット記録ヘッド94へインクを供給するインクカートリッジ95等で構成される印字機構部82等を収納する。
記録装置本体81の下方部には、多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット84(或いは給紙トレイでもよい)を抜き差し自在に装着することができる。又、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができる。給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持する。キャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド94を、複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。又、キャリッジ93は、インクジェット記録ヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
インクカートリッジ95は、上方に大気と連通する図示しない大気口、下方にはインクジェット記録ヘッド94へインクを供給する図示しない供給口を、内部にはインクが充填された図示しない多孔質体を有している。多孔質体の毛管力によりインクジェット記録ヘッド94へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。又、インクジェット記録ヘッド94としてここでは各色のヘッドを用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドを用いてもよい。
キャリッジ93は、用紙搬送方向下流側を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、用紙搬送方向上流側を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。タイミングベルト100は、キャリッジ93に固定されている。
又、インクジェット記録装置4は、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101、フリクションパッド102、用紙83を案内するガイド部材103、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105、搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106、を設けている。これにより、給紙カセット84にセットした用紙83を、インクジェット記録ヘッド94の下方側に搬送される。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
用紙ガイド部材である印写受け部材109は、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83をインクジェット記録ヘッド94の下方側で案内する。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設けている。更に、用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115、116とを配設している。
画像記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じてインクジェット記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、インクジェット記録ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を有する。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有する。キャリッジ93は、印字待機中に回復装置117側に移動されてキャッピング手段でインクジェット記録ヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。又、記録途中等に、記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でインクジェット記録ヘッド94の吐出口を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出す。又、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。更に、吸引されたインクは、本体下部に設置された図示しない廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このように、インクジェット記録装置4においては、液滴吐出ヘッド3の一実施形態であるインクジェット記録ヘッド94を搭載しているので、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られるため、画像品質を向上できる。
[実施例]
本実施例では、第1の実施の形態の図2〜図4を用いて説明した工程に基づいて電気機械変換素子を作製した。まず、基板として6インチシリコンウェハを準備し、6インチシリコンウェハ上に、第1の金属膜としてPt膜を200nm、第1の導電性酸化物膜としてSrRuO膜を50nm、第2の金属膜としてPt膜を500nm、及び第2の導電性酸化物膜としてSrRuO膜を50nm、スパッタ法で順次成膜した(図2(a)及び図2(b)参照)。なお、図2〜図4では基板10上に1つの電気機械変換素子1を作製する例を示したが、本実施例では、6インチシリコンウェハ上に多数の電気機械変換素子を作製する。
次に、第2の導電性酸化物膜(SrRuO膜)上にフォトレジストでパターニングを行い、電気機械変換膜を形成する領域以外の第2の導電性酸化物膜(SrRuO膜)をエッチングして除去した(図2(c)〜図2(e)参照)。
次に、第2の金属膜(Pt膜)及び第2の導電性酸化物膜(SrRuO膜)を、CH(CH)−SHからなるSAM材料で浸漬処理し、第2の導電性酸化物膜(SrRuO膜)から露出する第2の金属膜(Pt膜)の表面にSAM膜を自己配列させ、疎水化した(図2(f)参照)。
次に、第2の導電性酸化物膜(SrRuO膜)上に電気機械変換膜を形成した(図3(g)〜図3(i)参照)。具体的には、インクジェット塗布装置60(図5参照)を用いて、インクジェット法により、第2の導電性酸化物膜(SrRuO膜)上(親水部上)にPZT前駆体溶液を塗布した。PZT前駆体の出発材料には、酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を10モル%過剰にした。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。
イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、先記の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。このPZT濃度は0.1モル/リットルにした。一度の成膜で得られるPZTの膜厚は100nm程度が好ましく、PZT前駆体溶液の前駆体濃度は成膜面積と前駆体塗布量の関係から適正化される。
PZT前駆体溶液は、接触角のコントラストのため、親水部である第2の導電性酸化物膜(SrRuO膜)上のみに広がりパターンを形成した。これを第一の加熱(溶媒乾燥)として120℃処理後、有機物の熱分解を行った。このときの膜厚は90nmであった。引き続き繰返し処理としてイソプロピルアルコール洗浄後、同様の浸漬処理にてSAM膜を形成した。本工程でもSAM膜は第2の導電性酸化物膜(SrRuO膜)上には形成されないので、フォトリソグラフィの工程を実施せずにSAM膜のパターンが得られた。
又、このときの接触角は純水に対してSAM膜上は92度、PZT膜上は34度であった。この状態で1度目に形成したPZT膜上に位置合わせを行って、再度インクジェット塗布装置60によりPZT前駆体溶液を塗布した。更に1回目と同じ加熱プロセスを実施して重ねぬりされたPZT膜を得た。このときの膜厚は180nmであった。
このような工程を6回繰り返し540nmのPZT膜を得たのち、結晶化熱処理(温度700℃)をRTA(急速熱処理)にて行った。膜にクラックなどの不良は生じなかった。更に6回のSAM処理→PZT前駆体溶液の選択塗布→120℃乾燥→500℃熱分解を行い、結晶化処理し、膜厚が1000nmの電気機械変換膜(PZT膜)を得た。膜にクラックなどの不良は生じなかった。
次に、電気機械変換膜(PZT膜)の周囲に露出する第2の金属膜(Pt膜)、第2の導電性酸化物膜(SrRuO膜)、及び電気機械変換膜(PZT膜)の各々の外部に露出する面を覆うように、スパッタ法により、第3の導電性酸化物膜としてSrRuO膜を50nm、第3の金属膜としてPt膜を150nm、順次積層した(図4(j)参照)。
次に、電気機械変換膜(PZT膜)上に形成された第3の金属膜(Pt膜)上の外縁部を除く領域にフォトレジストをスピンコート法で塗布した(図4(k)参照)。
次に、フォトレジストをマスクとして第3の導電性酸化物膜(SrRuO膜)及び第3の金属膜(Pt膜)をエッチングし、フォトレジストに覆われていない部分の第3の導電性酸化物膜(SrRuO膜)及び第3の金属膜(Pt膜)を除去し、更にフォトレジストを除去して第2の電極を作製した(図4(l)及び図4(m)参照)。これで、基板上に電気機械変換素子が作製された。
次に、作製した電気機械変換素子の電気特性、及び電気機械変換能(圧電定数)の評価を行った。電気機械変換膜の比誘電率は1220、誘電損失は0.02、残留分極は19.3μC/cm、抗電界は36.5kV/cmであり、通常のセラミック焼結体と同等の特性であった(P−Eヒステリシス曲線は図11参照)。
電気機械変換能は、電界印加による変形量をレーザードップラ振動計で計測し、シミュレーションによる合わせ込みから算出した。作製した電気機械変換素子の圧電定数d31は120pm/Vとなり、こちらもセラミック焼結体と同等の値であった。これは液滴吐出ヘッドとして十分設計できうる特性値である。
続いて、電気機械変換膜(PZT膜)の更なる厚膜化を試みた。すなわち、6回までの熱分解アニールのたびに結晶化処理を行い、これを10回繰り返したところ5μmのパターン化された電気機械変換膜(PZT膜)がクラック等の欠陥を伴わずに得られた。
[比較例]
比較例では、図6に示した工程により、6インチシリコンウェハ上に多数の電気機械変換素子1xを作製した。なお、第1の金属膜としてPt膜を200nm、第1の導電性酸化物膜としてSrRuO膜を50nmを成膜する点は、実施例と同様である。
[比較結果]
ここで、本実施例(第1の電極が4層構成である場合)と比較例(第1の電極が2層構成である場合)において、第1の電極の膜厚の6インチシリコンウェハ上の面内分布を測定し、比較した。なお、ここでは、本実施例で作製した多数の電気機械変換素子において、平面視において各電気機械変換膜の周囲に露出する第1の金属膜(Pt膜)及び第2の導電性酸化物膜(SrRuO膜)の積層部分を第1の電極の膜厚として測定した。又、比較例で作製した多数の電気機械変換素子において、平面視において各電気機械変換膜の周囲に露出する第1の金属膜(Pt膜)を第1の電極の膜厚として測定した。
結果を図12に示す。図12からわかるように、本実施例では、第1の電極の平均膜厚は220nm程度(Pt膜が200nm程度、SrRuO膜が20nm程度)であり、第1の電極の膜厚の基板上の面内分布(平均膜厚に対する膜厚の最厚部と最薄部との差の比率)は10%程度であった。
これに対し、比較例では、第1の電極の平均膜厚は140nm程度であり、第1の電極の膜厚の基板上の面内分布は20%以上であった。これは、比較例では、本実施例の第2の導電性酸化物膜(SrRuO膜)のようにエッチングストップ層として機能する層が存在しないためである。このように、第1の電極にエッチングストップ層を設けることにより、第1の電極のオーバーエッチングによる高抵抗値化を防止でき、かつ、第1の電極の膜厚の面内ばらつきを低減でき、電気機械変換素子の歩留まりを向上できることが確認された。
以上、好ましい実施の形態及び実施例について詳説したが、上述した実施の形態及び実施例に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
1 電気機械変換素子
2、3 液滴吐出ヘッド
4 インクジェット記録装置
10 基板
11 第1の電極
11a 第1の金属膜
11b 第1の導電性酸化物膜
11c 第2の金属膜
11d 第2の導電性酸化物膜
12 SAM膜
13、13a 電気機械変換膜
13x PZT前駆体溶液
14 第2の電極
14a 第3の導電性酸化物膜
14b 第3の金属膜
20 ノズル板
21 ノズル
30 圧力室基板
31 圧力室
40 振動板
50 密着層
60 インクジェット塗布装置
61 架台
62 Y軸駆動手段
63 基板
64 ステージ
65 X軸支持部材
66 X軸駆動手段
67 Z軸駆動手段
68 ヘッドベース
69 インクジェットヘッド
70 着色樹脂インク供給用パイプ
81 記録装置本体
82 印字機構部
83 用紙
84 給紙カセット
85 手差しトレイ
86 排紙トレイ
91 主ガイドロッド
92 従ガイドロッド
93 キャリッジ
94 インクジェット記録ヘッド
95 インクカートリッジ
97 主走査モータ
98 駆動プーリ
99 従動プーリ
100 タイミングベルト
101 給紙ローラ
102 フリクションパッド
103 ガイド部材
104 搬送ローラ
105 搬送コロ
106 先端コロ
107 副走査モータ
109 印写受け部材
111 搬送コロ
112 拍車
113 排紙ローラ
114 拍車
115、116 ガイド部材
117 回復装置
200、210 レジスト層
特開2010−207364号公報

Claims (9)

  1. 第1の金属膜、前記第1の金属膜上に形成された第1の導電性酸化物膜、前記第1の導電性酸化物膜上に形成された第2の金属膜、及び前記第2の金属膜上の所定領域に形成された第2の導電性酸化物膜、を備えた第1の電極と、
    前記第2の導電性酸化物膜上に形成された電気機械変換膜と、
    前記電気機械変換膜上に形成された第2の電極と、を有し、
    前記第1の導電性酸化物膜は、前記第1の金属膜よりもエッチングレートの遅い導電性材料から形成され、
    前記導電性材料は、化学式ABOで記述され、AはSr、Ba、Ca、Laの何れか1つ以上、BはRu、Co、Niの何れか1つ以上を主成分とする複合酸化物、又は、IrO、RuOの何れかからなる酸化物である電気機械変換素子。
  2. 前記第1の導電性酸化物膜は、前記第1の金属膜上の全面に形成されている請求項1記載の電気機械変換素子。
  3. 前記第2の金属膜は、前記第2の導電性酸化物膜と平面視において重複する位置にのみ形成されている請求項1又は2記載の電気機械変換素子。
  4. 前記第2の金属膜は、前記第2の導電性酸化物膜と平面視において重複する位置に形成され、更に、平面視において前記第2の導電性酸化物膜の周囲に延在している請求項1又は2記載の電気機械変換素子。
  5. 請求項1乃至4の何れか一項記載の電気機械変換素子を具備する液滴吐出ヘッド。
  6. 請求項5記載の液滴吐出ヘッドを具備する液滴吐出装置。
  7. 第1の金属膜の所定領域上に前記第1の金属膜よりもエッチングレートの遅い導電性材料を用いて第1の導電性酸化物膜を形成する工程と、
    前記第1の導電性酸化物膜上に第2の金属膜及び第2の導電性酸化物膜を順次積層する工程と、
    前記第2の導電性酸化物膜をパターニングし、前記第2の金属膜上の所定領域のみに前記第2の導電性酸化物膜を形成する工程と、
    前記第2の金属膜上の所定領域に形成された前記第2の導電性酸化物膜上に電気機械変換膜を形成する工程と、
    前記電気機械変換膜上、及び前記電気機械変換膜の周囲に露出する前記第2の金属膜上に導体層を形成する工程と、
    前記導体層をエッチングし、前記電気機械変換膜上に第2の電極を形成する工程と、を有する電気機械変換素子の製造方法。
  8. 前記電気機械変換膜を形成する工程は、前記第2の導電性酸化物膜から露出する前記第2の金属膜を表面改質させて疎水化する工程と、
    前記疎水化する工程の後、前記第2の導電性酸化物膜上にインクジェット法により電気機械変換膜を形成する工程と、を含む請求項7記載の電気機械変換素子の製造方法。
  9. 前記疎水化する工程では、チオール化合物を用いて前記第2の金属膜を表面改質する請求項8記載の電気機械変換素子の製造方法。
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