JP6400991B2 - ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体 - Google Patents
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このような樹脂成形体の外観には、鋼やアルミニウム合金のようなメタリックな色調が要求される場合がある。特に近年では、樹脂成形体の美観に対する要求が高まり、樹脂成形体の外観には、単にメタリックな色調を有するだけでなく、光沢感を有したうえで高輝感を抑えたものが要求されている。また、メタリックな色調も、銀灰色のものから、やや白みがかった灰白色のものまで、様々な種類が要求されている。
例えば、特許文献1には、層状珪酸塩が分子レベルで均一に分散されたポリアミド樹脂に対し、メタリック色を発現する粒子を配合してなるポリアミド樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、ポリアミド樹脂、金属フレークを含有するポリアミド樹脂組成物が開示されている。
一方、ポリアミド樹脂に対し、層状珪酸塩、ヒンダードアミン系化合物を含有させ、成形体の黄化を抑制したポリアミド樹脂組成物も知られている(例えば、特許文献3)。
一方、特許文献3のようなヒンダードアミン化合物を含有させたポリアミド樹脂組成物は、確かに黄化等の光劣化に対し抑制効果があったが、湿熱条件下においては、ヒンダードアミン化合物がブリードアウトしやすい等、耐湿熱性は劣った。
本発明は、メタリック発色性、輝度が優れ、さらに耐光性、耐熱変色性、耐湿熱性が向上したポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
すなわち本発明の要旨は下記の通りである。
(2)メタリック顔料(C)が、アルミニウム、鉄、およびそれらの酸化物、ならびにチタンコーティングされたマイカから選ばれるいずれか1種であることを特徴とする(1)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(3)(2)に記載のポリアミド樹脂組成物を製造するための方法であって、膨潤性層状珪酸塩(B)の存在下に行なう重合体の重合反応工程を少なくとも1つ含むことを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
このようなポリアミド樹脂組成物は、自動車内装部品等の用途で、長期にわたって意匠性を高めることができ好適に用いることができる。
ポリアミド6と、ポリアミド11および/またはポリアミド12との混合物は、ポリアミド6の単独重合体と、ポリアミド11および/またはポリアミド12の単独重合体を溶融混合したものであっても、共重合体としたものであってもよい。
Ma(MgXLib)Si4OYFZ
(式中で、Mはイオン交換性のカチオンを表し、具体的にはナトリウムやリチウムが挙げられる。また、a、b、X、YおよびZはそれぞれ係数を表し、0≦a≦0.5、0≦b≦0.5、2.5≦X≦3、10≦Y≦11、1.0≦Z≦2.0である。)
また、タルク〔Mg3Si4O10(OH)2〕を出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして膨潤性を付与し、膨潤性フッ素雲母を得る方法もある(特開平2-149415号公報)。この方法では、所定の配合比で混合したタル
クと珪フッ化アルカリを、磁性ルツボ内で700〜1200℃の温度下に短時間加熱処理することによって、膨潤性フッ素雲母を得ることができる。この際、タルクと混合する珪フッ化アルカリの量は、混合物全体の10〜35質量%の範囲とすることが好ましい。この範囲を外れる場合には膨潤性フッ素雲母の生成収率が低下する傾向にある。
MaSi(Al2−aMg)O10(OH)2・nH20
(式中で、Mはナトリウム等のカチオンを表し、0.25≦a≦0.6である。また層間のイオン交換性カチオンと結合している水分子の数はカチオン種や湿度等の条件によって様々に変わりうるので、式中ではnH2Oで表した。)
またモンモリロナイトにはマグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイト等の同型イオン置換体の存在が知られており、これらを用いてもよい。
Na0.66(Mg5.34Li0.66)Si8O20(OH)4・nH2O
ヘクトライトは珪酸塩を主成分とする負に帯電した珪酸塩層とその層間に介在するイオン交換能を有するカチオンとからなる構造を有するものであり、その他の膨潤性層状珪酸塩と比較すると、水酸基を多く含むため層間に水分子が入り込みやすく(すなわち、親水性が高く)、膨潤しやすい。加えて、その他の膨潤性層状珪酸塩と比較すると、粒径も小さい。
メタリック顔料(C)の平均粒子径は、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置、例えば、マイクロトラック2(日機装社製)により測定が可能である。
メタリック顔料(C)の平均厚みは、電子顕微鏡によるメタリック顔料50個測定の単純平均により算出することができる。
メタリック顔料(C)のアスペクト比は、前記平均粒径の値を前記平均厚み値で除することにより求めることができる。
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)、ホスファイト系酸化防止剤(E)は通常、ポリアミド樹脂等の耐熱安定性を向上させ、例えば、耐熱変色性、熱による分子量低下等の劣化を抑制するための用いるものであるが、本発明においては、ポリアミド樹脂組成物の耐光性を向上し、用いるポリアミド樹脂の光劣化を顕著に抑制するものである。特に得られる成形体表面が光劣化し、クレージングが生じたり、モノマー、オリゴマー等の低分子量体が生成することを顕著に抑制する。特に、ホスファイト系酸化防止剤(E)を併用することで、ポリアミド樹脂組成物の耐光性向上のみならず、同時に色調変化も抑制する。
本発明において、ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、膨潤性層状珪酸塩(B)と、メタリック顔料(C)とを溶融混練することによって製造することができる。
本発明においては、膨潤性層状珪酸塩(B)の存在下に、ポリアミド樹脂(A)を構成するモノマー成分の重合反応をおこなって得られる、ポリアミド樹脂(A)と膨潤性層状珪酸塩(B)との混合物を使用して、この混合物とメタリック顔料(C)とを溶融混合してポリアミド樹脂組成物を製造することが好ましい。
膨潤性層状珪酸塩(B)の存在下に、ポリアミド樹脂(A)を構成するモノマー成分の重合反応をおこなうことにより、膨潤性層状珪酸塩(B)をポリアミド樹脂(A)に均一に分散することができ、得られる成形体が有する光沢度を一層高めることができる。
重合反応に使用する上記モノマーとしては、アミノカルボン酸やそのラクタムを使用することができるので、重合反応の原料のアミノカルボン酸として、そのラクタムが使用されてもよい。
また、重合後のポリアミド樹脂に残留しているアミノカルボン酸(ラクタム)を除去するために、ポリアミド樹脂のペレットに対して熱水による精練を行うことが好ましく、その条件としては、90〜100℃の熱水中で8時間以上の処理をすることが挙げられる。
メタリック顔料(C)の混練による破砕あるいは折損を極力抑制するためには、スクリューは二軸で用いるよりも単軸で用いることが好ましい。
溶融混練押出機へのメタリック顔料(C)の供給方法としては、前記混合物にメタリック顔料(C)を混合したものを、主ホッパーより一括投入してもよいが、メタリック顔料(C)の破砕あるいは折損を極力抑制するため、メタリック顔料(C)を押出機途中よりサイドフィーダーにて供給することが好ましく、なるべく押出機下流にて供給することがより好ましい。
前記混合物とメタリック顔料(C)とは、十分に溶融混練されていなくてもよく、その後の射出成形加工において、作業に支障がでない範囲で混合できていればよい。必要に応じて、前記混合物とメタリック顔料(C)をドライブレンドしたものを直接射出成形機に供給してもよく、射出成形機において溶融混練して、射出成形を行うこともできる。
メタリック顔料(C)は外部応力に対し脆いものであるため、このように、樹脂組成物の製造や成形体の成形において、溶融混練時のスクリュー剪断応力をメタリック顔料(C)に極力与えないことが、得られる成形体の光沢度を向上させる上で好ましい。
本発明の成形体、特に射出成形法により得られた成形体は、輝度が高いものであるが、射出成形時の各種条件、たとえば、樹脂温度、射出速度、射出圧、金型温度をバランス良く設定することで、さらに、輝度を向上することが可能である。なお、これらの条件は、溶融したポリアミド樹脂組成物の金型内での流動性、さらには、ポリアミド樹脂組成物中での膨潤性層状珪酸塩(B)、メタリック顔料(C)の分散性に影響を与えるため、慎重に設定する必要がある。たとえば、射出速度を高速とした場合には、メタリック顔料(C)の配向が乱れてしまい、輝度が低下する傾向があるため、射出速度は低速から中速とした方がよい。
得られた板状成形体の平滑性を、目視で評価した。
○:金型転写が十分なされており、平滑性を有する。
△:含有する顔料の浮きまたはヒケを生じていないが、平滑性がやや劣る。
×:含有する顔料の浮きまたはヒケを生じており、平滑性を有さない。
板状成形体を肉眼観察し、含有する顔料の分散状態を評価した。
○:均一に分散している。
△:やや分散に斑があり、濃淡がみられる。
×:濃淡がみられ、局所的に顔料が凝集している。
JIS Z8741に基づき、光沢度計(日本電色社製グロスメーターVG7000型)を用い、板状成形体の表面光沢度の測定を行った。光沢度は、実用的には、90%以上であることが好ましい。
照度1000Lxである蛍光灯下で板状成形体の法線とのなす角度45°の方向から観察し、肉眼にて輝度を官能評価した。
5:ギラギラ感を有するが、過剰である。
4:ギラギラ感を有するが、やや過剰である。
3:適度なギラギラ感を有する。
2:金属特有の輝きが不足する。
1:金属特有の輝きを有さない。
板状成形体を、キセノンウェザーメーター(アトラス社製C400i型)を用いて、ブラックパネル温度89℃、湿度50%RH、降雨なしの条件で放射露光量150MJ/m2の試験を行なった。試験前後で色差を測定して耐候性を評価した。
色差は、JIS Z8722に基づき、板状成形体の色差を測定した。耐性試験後の色差は、実用的には、ΔEが2以下であることが好ましい。
板状成形体を、熱風乾燥機(ESPEC社製PHH−101型)を用いて、温度105℃の条件にて、500時間の熱処理を行なった。試験前後で色差を測定して耐熱変色性を評価した。色差は、JIS Z8722に基づき、板状成形体の色差を測定した。耐熱変色性試験後の色差は、実用的には、ΔEが2以下であることが好ましい。
板状成形体を、恒温恒湿槽(ETAC社製FH14C型)を用いて、温度50℃、湿度95%RHの条件にて、240時間の熱処理を行なった。試験後のプレートを観察してブリードアウトの発生の有無を下記基準により評価した。耐湿熱性試験後にブリードアウトが発生しないことが好ましい。
◎:ブリードアウトが全くない。
○:主にポリアミド6に起因するオリゴマ等の析出あり。実用上大きな問題なし。
×:耐候剤およびポリアミドオリゴマ等の析出あり。
(1)ポリアミド樹脂モノマー成分
・ε−カプロラクタム(宇部興産社製)
・ポリアミド11(アルケマ社製「BMN O」)
・B−1:膨潤性フッ素雲母(コープケミカル社製「ME−100」)
・C−1:アルミ粉末マスターバッチ(東洋アルミニウム社製「NME U20TZ」、ポリエチレンに対しアルミ粉末(平均粒子径20μm、平均厚み4μm)を70質量%練り込んだもの)
・D−1:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASFジャパン社製「Irganox1010」)
・D−2:N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)](BASFジャパン社製「Irganox1098」)
・E−1:ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ADEKA社製「アデカスタブPEP−36」)
・E−2:テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]4,4’−ジイルビスホスフォナイト(BASFジャパン社製「IRGAFOS P−EPQ」)
・チオエーテル系酸化防止剤(ADEKA社製「アデカスタブAO−412S」)
・ヒンダードアミン系光安定剤(a)(クラリアント社製「Nylostab S−EED」)
・ヒンダードアミン系光安定剤(b)(BASFジャパン社製「CHIMASSORB 2020FDL」)
・シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤(クラリアント社製「SanduvorVSU」)
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製「Tinuvin234」)
ε−カプロラクタム100質量部に対して、亜リン酸0.4質量部、膨潤性層状珪酸塩(B−1)4質量部、水5質量部を仕込み、80℃で1時間攪拌した後、260℃、0.7MPa下で1時間攪拌し、次いで260℃、常圧で1時間攪拌し、重合を行ない、膨潤性層状珪酸塩(B−1)を3.2質量%含有するポリアミド樹脂(P−1)を得た。
得られた膨潤性層状珪酸塩含有ポリアミド樹脂(P−1)80質量部とポリアミド11を20質量部、メタリック顔料(C−1)1質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D−1)0.2質量部およびホスファイト系酸化防止剤(E−1)0.3質量部を一括混合し、単軸押出機の主ホッパーより投入し、溶融混練を行い、ダイスよりストランド状に押出しした後、冷却、ペレタイズし、ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。溶融混練は、樹脂温度260℃、スクリュー回転200rpm、吐出量30kg/hにて行った。
得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、射出成形機(東芝機械社製EC−100II型)にて、樹脂温度260℃、金型温度100℃、保圧30MPa、射出速度100mm/s、射出圧力100MPa、冷却時間10秒の条件で射出成形を行い、縦90mm×横50mm×厚さ2mmの板状成形体を得た。なお、金型は短辺方向中央にサイドゲート1点を有するものを用いた。得られた板状成形体につき、各種評価を行った。その結果を表1に示す。
表1に記載の配合量で各成分を配合した以外は実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物ペレットを得て、さらに射出成形を行った。得られた板状成形体を用いて各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
Claims (4)
- ポリアミド樹脂(A)100質量部、膨潤性層状珪酸塩(B)1〜10質量部、メタリック顔料(C)0.5〜5質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)0.1〜0.4質量部およびホスファイト系酸化防止剤(E)0.2〜0.6質量部を含み、ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド6と、ポリアミド11および/またはポリアミド12との混合物であり、ポリアミド樹脂(A)におけるポリアミド6の含有量が50〜90質量%であって、膨潤性層状珪酸塩(B)が、フッ素雲母であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
- メタリック顔料(C)が、アルミニウム、鉄、およびそれらの酸化物、ならびにチタンコーティングされたマイカから選ばれるいずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物を製造するための方法であって、膨潤性層状珪酸塩(B)の存在下に行なう重合体の重合反応工程を少なくとも1つ含むことを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
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