JP2013147559A - 樹脂組成物、該樹脂組成物からなる成形体、および該樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

樹脂組成物、該樹脂組成物からなる成形体、および該樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来のポリアリレート樹脂の耐熱性を損なうことなく、溶融時の流動性を向上させることにより成形性が顕著に改善された樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂組成物は、ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)、およびリン系化合物(D)を構成成分として含有し、各成分の質量比率が下記式(I)、(II)および(III)を満足することを特徴とする。
(A)/(B)=30/70〜90/10 (I)
(C)/{(A)+(B)+(C)}=10/100〜45/100 (II)
(D)/{(A)+(B)+(C)}=0.01/100〜2/100 (III)
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアリレート樹脂およびポリカーボネート樹脂を含有し、滞留安定性を維持しつつ、流動性を向上させた樹脂組成物に関するものである。さらに、本発明は、該樹脂組成物を含有する成形体、および該樹脂組成物の製造方法に関するものである。
ビスフェノール類と芳香族カルボン酸とからなるポリアリレート樹脂は、エンジニアリングプラスチックとして広く知られている。ポリアリレート樹脂は耐熱性、機械的強度、透明性に優れるため、その成形体は、電気・電子、自動車あるいは機械等の分野において幅広く応用されている。しかしながら、ポリアリレート樹脂は、溶融粘度が高いため成形時の流動性が悪いという問題点を有していた。
ポリアリレート樹脂の耐熱性、機械的特性、透明性を維持したまま流動性を向上させる試みとして、ポリアリレート樹脂とポリカーボネート樹脂を含有する樹脂組成物とすることが知られている。そして、このような樹脂組成物は、外観に優れ、耐熱性の低下も少ないうえ、さらにポリアリレート樹脂の流動性が改善されるという利点を有している。
一方、近年、自動車や電気製品において、軽量化および小型化が図られている。そして、それらを構成する部品においても、小型化が図られている。自動車や電気製品の構成部品となる成形体に対して小型化が図られた場合、特に薄肉である成形体が用いられる部品においては、非常に良好な流動性が求められる。しかしながら、ポリアリレート樹脂とポリカーボネート樹脂のみからなる樹脂組成物においては、流動性の改善がいまだ不十分であった。
ポリアリレート樹脂の流動性を改善するための手法として、例えば、特許文献1には、ポリアリレート樹脂に対し、流動性改質剤としてN−フェニルマレイミド−スチレン共重合体を配合することが開示されている。
また、特許文献2には、ポリアリレート樹脂およびポリカーボネート樹脂を含有する樹脂組成物の流動性を改善するために、無機充填剤およびN−フェニルマレイミド−スチレン共重合体を配合することが開示されている。
しかしながら、特許文献1および特許文献2の場合においては、N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体を用いて得られる樹脂組成物の流動性は改善されるものの、ポリアリレート樹脂と比較すると、滞留安定性(成形前に溶融状態で滞留している際の、高温に曝された場合の安定性)に劣ることがあった。一般的に、射出成型において、薄肉とされる場合であっても流動性を確保するためには、成形温度を高くする必要があった。しかしながら、このような高温下連続成形を行う際に、滞留安定性の悪い樹脂組成物を用いることは、得られる成形体の表面に分解ガスに由来する外観上の不具合や、熱劣化による機械的特性の低下が生じるという問題があった。一方で、滞留時の樹脂組成物の分解や熱劣化を抑制するためには、成形温度を下げることが効果的であるが、このような場合は、流動性の低下によって加工性が損なわれるため、高品質の薄肉成形体を得ることは難しかった。つまり、良好な流動性と滞留安定性とを両立しうるポリアリレート樹脂組成物は、いまだ得られていないのが現状である。
上記のような現状から、ポリアリレート樹脂およびポリカーボネート樹脂を含有する樹脂組成物であって、滞留安定性を維持しつつ、流動性が十分に改善された樹脂組成物が強く望まれている。
特開2001−279075号公報 特開2003−113296号公報
従って、本発明の目的は、上記のような問題を解決し、ポリアリレート樹脂およびポリカーボネート樹脂を含有する樹脂組成物において、滞留安定性を維持しつつ、溶融時の流動性が顕著に向上された樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)、およびリン系化合物(D)を構成成分とし、各々の成分を特定の割合で含有する樹脂組成物は、上記の課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、以下の内容を要旨とするものである。
(1)ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)、およびリン系化合物(D)を構成成分として含有し、各成分の含有割合が、質量比で、下記式(I)、(II)および(III)を満足することを特徴とする樹脂組成物。
(A)/(B)=30/70〜90/10 (I)
(C)/{(A)+(B)+(C)}=10/100〜45/100 (II)
(D)/{(A)+(B)+(C)}=0.01/100〜2/100 (III)
(2)N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)のモノマー比率が、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)を構成する全モノマーにおいて、質量比で、下記式(IV)を満足することを特徴とする(1)の樹脂組成物。
N−フェニルマレイミド/アクリロニトリル/スチレン=10〜45/1〜20/50〜75 (IV)
(3)(1)または(2)の樹脂組成物を含む成形体。
(4)(1)の樹脂組成物を製造する方法であって、ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)およびリン系化合物(D)を混練することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
(5)ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)およびリン系化合物(D)を混練するに際し、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)を得るための共重合体として、モノマーの質量比率が下記式(V)を満足するように調整された共重合体を用いることを特徴とする(4)の樹脂組成物の製造方法。
N−フェニルマレイミド/アクリロニトリル/スチレン/無水マレイン酸=10〜45/1〜20/50〜75/0.1〜5 (V)
(6)得られる樹脂組成物中にN−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)を含有させるために、N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体と、モノマーの質量比率が下記式(VI)の範囲内であるアクリロニトリル−スチレン共重合体とを、ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)およびリン系化合物(D)とともに混練することを特徴とする(4)の樹脂組成物の製造方法。
アクリロニトリル/スチレン=20/80〜30/70 (VI)
(7)N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)を混練するに際し、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)をモノマーの質量比率が上記式(VI)の範囲内であるアクリロニトリル−スチレン共重合体で、あらかじめ希釈することを特徴とする(4)の樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、流動改質剤として、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体を含有するため、流動性が顕著に向上された樹脂組成物を得ることができる。また、得られる成形体は、バリ、ヒケの発生が抑制されており、加えて、機械的特性においても優れたものである。さらに、本発明での樹脂組成物では、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体とリン系化合物を併用して用いることで、滞留安定性が向上し、従来よりも高温条件下での成形が可能となる。それにより、滞留安定性と流動性の改善効果が、さらに高められるという相乗効果も奏される。
一般的な非相溶樹脂同士でのアロイにおける、海島構造を示した概略図である。 本発明の樹脂組成物における、ネットワーク状の海島構造を示した概略図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)、およびリン系化合物(D)を必須の構成成分として含有するものである。
ポリアリレート樹脂(A)(以下、「成分(A)」と称する場合がある)は、芳香族ジカルボン酸残基と、ビスフェノール類残基とから構成されているポリエステル樹脂である。成分(A)は、溶融重合、界面重合などの公知慣用の重合法により製造することができる。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、メチルテレフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(4−カルボキシフェノキシ)エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。
上記のなかでも、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸およびイソフタル酸が好ましく、溶融加工性および機械的特性の点から、両者を混合して用いることがより好ましい。テレフタル酸とイソフタル酸を混合して用いる場合、その共重合比率(モル比)は、界面重合法を選択した際の重合性の観点から、(テレフタル酸)/(イソフタル酸)=70/30〜30/70であることが好ましく、より好ましくは60/40〜40/60である。
ただし、複数の種類のビスフェノール成分を用いるなどの手法により、ポリアリレート樹脂(A)の結晶性を低下させた場合は、界面重合時の重合性、溶融加工時の加工性が向上する。したがって、テレフタル酸およびイソフタル酸の比率は、上記の限りではなく、任意に選択することが可能である。なお、得られるポリアリレート樹脂(A)の光変色を抑制する観点からは、イソフタル酸の比率が高い方が好ましい。また、ポリアリレート樹脂(A)の耐熱性を向上させる観点からは、テレフタル酸の比率が高い方が好ましい。
ビスフェノール類の具体例として、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンジフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどが挙げられる。これらのビスフェノール類は単独で使用してもよいし、あるいは2種類以上を併用してもよい。
上記の中でも、コストパフォーマンスおよび重合性の観点からは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを使用することが好ましい。また、耐熱性の観点からは、2−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンジフェノールを使用することが好ましい。
成分(A)のインヘレント粘度は、0.3〜1.0dl/gであることが好ましく、0.35〜0.7dl/gがより好ましく、0.40〜0.6dl/gであることがさらに好ましい。成分(A)のインヘレント粘度が0.3dl/g未満であると、得られる樹脂組成物の分子量が低くなるため、機械的特性、耐熱性に劣る場合がある。一方、1.0dl/gを超えると、成分(A)の溶融粘度が高くなるため、溶融加工時の変色や流動性の低下が起こる場合がある。なお、本発明において、インヘレント粘度とは、試料1.0gを1,1,2,2−テトラクロロエタン100mlに溶解して温度25℃の溶液を調製し、該溶液を用いて測定された値である。
本発明におけるポリカーボネート樹脂(B)(以下、「成分(B)」と称する場合がある)とは、ビスフェノール類残基とカーボネート残基で構成された樹脂である。ポリカーボネート樹脂(B)は、上記のポリアリレート樹脂(A)と類似のビスフェノール類残基を有するため、ポリアリレート樹脂(A)と良好な相溶性を示すものである。さらに、得られる樹脂組成物の耐衝撃性を向上させることができるという利点がある。
ビスフェノール類としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジチオジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどが挙げられる。
ビスフェノール類としては、その他にも、米国特許第2,999,835号明細書、米国特許第3,028,365号明細書、米国特許第3,334,154号明細書、米国特許第4,131,575号明細に記載されているジフェノールなどが使用できる。これらは単独で使用してもよいし、あるいは2種類以上混合して使用してもよい。これらの化合物の中でも、コストパフォーマンスの観点から、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを使用することが好ましく、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを単独で使用することが最も好ましい。
カーボネート残基を導入するための成分としては、例えば、ホスゲン、あるいはジフェニルカーボネートなどが挙げられる。
本発明において、成分(B)のインヘレント粘度は、0.3〜0.7dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.35〜0.65dl/gである。成分(B)のインヘレント粘度が0.3dl/g未満であると、得られる樹脂組成物の機械的特性、耐熱性に劣る場合がある。一方、0.7dl/gを超えると、成分(B)の溶融粘度が高くなるため、溶融加工時の変色や流動性の低下が起こる場合がある。
なお、上述の成分(B)における好ましいインヘレント粘度の範囲は、樹脂組成物中における後述のN−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)の含有割合によっても変化するものである。その詳細については、後述する。
本発明の樹脂組成物において、成分(A)と成分(B)との含有割合は、得られる樹脂組成物の耐熱性および機械的特性の観点から、質量比で、(A)/(B)=30/70〜90/10であることが必要であり、35/60〜80/20であることが好ましく、40/60〜70/30であることがより好ましい。この質量比において、成分(A)の比率が30質量%未満であると、十分な耐熱性が得られない場合がある。一方、成分(B)には、加工温度を下げる効果、靭性を向上させる効果、樹脂成分と成分(C)との相溶性を高める効果がある。そのため、成分(B)の比率が10質量%未満であると、得られる樹脂組成物における成形可能な温度が高くなるため、薄肉成形品や大型成形品を得る際には、過度に成形温度を高める必要が生じる。その結果、樹脂組成物の分解が起きたり、仮に分解を生じさせずに成形できた場合であっても、成分(B)が有する、靭性向上効果や成分(C)との相溶性向上効果が不足してしまい、結果として、得られる樹脂組成物から成形された成形体の靱性が不十分となったりするという問題がある。
N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)(以下、「成分(C)」と称する場合がある)は、モノマー成分としてのN−フェニルマレイミド、アクリロニトリルおよびスチレンよりなる三元共重合体である。成分(C)を用いることにより、成分(A)の良好な耐熱性を維持したまま、得られる樹脂組成物の流動性を向上させる効果が発現する。つまり、成分(C)は、本発明の樹脂組成物における流動性改質剤としての役割を担うものである。さらに、本発明においては、流動性改質剤として成分(C)を含有させることに起因して流動性が向上されすぎた場合に問題となる、バリやヒケ等の成形上の不具合が発現しにくくなるため、射出成形時にこのような不良を発現させることのない樹脂組成物を得ることができる。
なお、本発明においては、成分(C)は、各種のモノマー成分を直接重合することにより得られたN−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体であってもよく、また、N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体に対し、アクリロニトリル−スチレン共重合体を配合し、溶融混練によって希釈して得られたものであってもよい。
本発明においては、流動性改質剤である成分(C)がアクリロニトリル残基を含有することにより、成分(A)、成分(B)および成分(C)の相溶性を向上させることができる。さらに、樹脂組成物において、成分(C)中のなかでも特に流動性を向上させる役割を担うスチレン残基の相溶性を向上させることができる。つまり、本発明においては、成分(C)がアクリロニトリル残基を含有することにより、樹脂組成物全体の相溶性を十分に向上させることができるのである。
本発明の樹脂組成物において、成分(A)、成分(B)、および成分(C)の含有割合は、得られる樹脂組成物の流動性および機械的特性のバランスの観点から、質量比で、(C)/{(A)+(B)+(C)}=10/100〜45/100であることが必要であり、15/100〜40/100であることが好ましい。成分(C)の配合割合が、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して、10質量部未満であると、十分に樹脂組成物の流動性が改善しない。一方、45質量部を超えると、得られる樹脂組成物の機械的特性、滞留安定性が悪化し、実用性を欠くため好ましくない。
言うまでもないが、上記式は、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計を100質量部とした場合における、成分(C)の配合割合を表している。
なお、成分(C)の含有量が、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して25質量部以上となる場合においては、機械的強度を向上させる観点から、機械的強度に優れる成分である成分(B)の含有量を増やすことが好ましい。つまり、成分(A)と成分(B)の含有割合を、質量比で、(A)/(B)=30/70〜80/20の範囲内とすることが好ましい。より好ましくは30/70〜70/30の範囲内である。成分(C)の含有量が、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量に対して25質量部以上となる場合においては、成分(A)の質量比率が30質量%未満であると、十分な耐熱性を有する樹脂組成物が得られない場合がある。一方、70質量%を超えると、十分な機械的特性を有する樹脂組成物が得られない場合がある。
また、成分(C)の含有量が、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して25質量部以上となる場合においては、成分(B)のインヘレント粘度は0.45〜0.7dl/gであることが好ましく、0.50〜0.65dl/gであることがより好ましい。成分(C)の含有量が、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して25質量部以上となる場合においては、成分(B)のインヘレント粘度が0.45dl/g未満であると、十分な機械的強度を有する樹脂組成物が得られない場合がある。一方、0.7dl/gを超えると、得られる樹脂組成物の溶融粘度が高くなり過ぎ、十分な流動性を確保することが難しくなる場合がある。
本発明の樹脂組成物において、成分(C)中におけるモノマーの質量比率は、成分(C)を構成する全モノマーにおいて、N−フェニルマレイミド/アクリロニトリル/スチレン=10〜45/1〜20/50〜70であることが好ましい。モノマーの質量比率がこのような範囲であることにより奏される効果について、以下に詳細に述べる。
成分(C)は、成分(C)を構成する全モノマーに対して、N−フェニルマレイミド残基を10〜45質量%含有することが好ましく、20〜40質量%含有することがより好ましい。N−フェニルマレイミド残基の比率が45質量%を超えると、得られる樹脂組成物の機械物性が悪化する。また、滞留安定性が悪化し、それに伴い、成形温度を下げる必要が生じてしまう。さらに、不必要にTg(ガラス転移温度)が高くなることでゲートシール時間が短くなるなどの現象が起こり、十分な流動性が得られなかったりする場合がある。一方、10質量%未満であると、得られる樹脂組成物の耐熱性が不足する場合がある。なお、耐熱性が不足する場合は、本発明の樹脂組成物から得られる成形体の表面に対して、アルミ蒸着のように薄い金属膜が製膜されるような場合においては、初期に得られる成形体の蒸着面(鏡面)の状態は良好であったとしても、高温での熱処理をほどこすと、該蒸着面にシワ状の外観異常が生じてしまう場合がある。
さらに、成分(C)においては、成分(A)、成分(B)および成分(C)の相溶性を向上させる目的で、成分(C)を構成する全モノマーに対して、アクリロニトリル残基を1〜20質量%の範囲で含有することが好ましく、3〜18質量%の範囲で含有することがより好ましい。アクリロニトリル残基の比率が20質量%を超えると、滞留安定性が悪化したり、黄色味が強くなったり、または耐熱性が不足したりする場合がある。さらに、N−フェニルマレイミド残基が過少である場合に生じるような、上述の蒸着面におけるシワ状の不具合が発現する場合がある。一方、1質量%未満であると、成分(A)、成分(B)および成分(C)の相溶性、機械的強度、耐熱性が低下する場合がある。あるいは、操業性に劣るものとなったり、得られる樹脂組成物を成形体とした際に高温熱処理をほどこした場合に、該成形体の表面が、いわゆるスキン層となって剥離したりしてしまう場合がある。
成分(C)は、流動性を向上させる目的で、成分(C)を構成する全モノマーに対して、スチレン残基を50〜75質量%含有することが好ましく、55〜70質量%含有することがより好ましい。スチレン残基の比率が75質量%を超えると、耐熱性が不足する場合がある。また、N−フェニルマレイミド残基が過少である場合に生じるような、上述の蒸着面におけるシワ状の不具合が生じたり、成形体とした際に高温熱処理をほどこすと、その表面がいわゆるスキン層となって剥離したりしてしまう場合がある。一方、50質量%未満であると、十分な流動性を有する樹脂組成物が得られない場合がある。なお、成分(C)中のスチレン残基としては、例えば、α−メチルスチレンの様な芳香族ビニル単量体を代替として用いることが出来る。
成分(C)のTgは、100〜180℃程度が好ましく、120〜170℃程度がより好ましい。成分(C)のTgが140℃未満であると、得られる樹脂組成物の耐熱性に劣る場合がある。一方、Tgが180℃を超える成分(C)は滞留安定性、流動性に劣るものとなり、本発明において使用することは好ましくない。
リン系化合物(D)(以下、成分(D)と称する場合がある)は、さらに、樹脂組成物の耐熱変色性を向上させ、樹脂組成物の色調変化や熱分解を抑制し得るものである。加えて、該樹脂組成物を連続して成形するに際し、成形時の溶融樹脂の流動性を安定させることができ、つまり、得られる樹脂組成物の滞留安定性を向上させる効果を有するものである。そして、長期ランニングにおいても流動性や外観のばらつきを抑制することが可能となり、安定的な成形を可能することができる。また、アウトガスや低分子揮発物の発生を低減する効果もあることから、金型表面汚染も低減され、結果として、金型メンテナンス頻度を下げる効果もあり、長期ランニング性能にも優れる。
より具体的には、本発明においては、流動性を改善するために上記の成分(C)を含有するものであるが、成分(C)に起因して滞留安定性が低下し、上記したような長期ランニング性能に劣ってしまう。そこで、成分(D)を併用することにより、滞留安定性の低下を抑制することができ、成分(D)非存在下では成形不可能な、高温領域での成形、生産を可能にする。成形温度をより高温な領域にまで上昇させることは、結果として、流動性を向上させることに繋がり、安定的に、薄肉成型品あるいは大型成型品を得ることができる。つまり、成分(D)を用いることで、滞留安定性が大幅に改善することにより、成分(C)の配合だけでは得ることが難しい流動性の優れた樹脂組成物を得ることができる。
成分(D)を用いる利点について、さらに述べる。
自動車ランプ部品、照明分野の電気・電子部品として用いられるような反射板等においては、近年の軽量化ニーズから薄肉化される傾向にあり、流動性が良好な樹脂組成物を用いることが重要である。その反面、流動性が良好である樹脂組成物とするために、低分子で溶融粘度の低い樹脂を用いたり、低分子可塑剤を配合したり、成形温度を上げたりすることが多い。このような場合には、樹脂の熱分解が発生しやすくなり、該熱分解によるアウトガスや低分子揮発物の発生に起因して、得られる成形体の表面が汚染される。このような成形体表面の汚染は、金型表面に二次転移することで、ますます成形体表面の汚染を助長し、さらには、成形体表面の平滑性も損なう結果となる。
前記成形体においては、表面にアルミ等の金属蒸着を行うことで反射板とすることができるが、成形体表面の汚染や表面平滑性の低下は、成形体の蒸着面に欠陥を生じさせ、反射板としての品位を落とす結果となる。しかしながら、本発明においては、成分(D)を用いているため、流動性と滞留安定性が向上された樹脂組成物を得ることができ、加えて、樹脂組成物の熱分解を抑制することができる。その結果、該樹脂組成物は成形時の作業性にも優れ、さらに該樹脂組成物から得られた成形体は、汚染が少なく平滑な表面を有しているという効果を奏する。表面汚染が少なく、平滑な表面を有した成形体に対して金属蒸着を行うことで、優れた反射材として好適に用いることができる。
成分(D)は、無機系リン化合物または有機系リン化合物のいずれであってもよい。
無機系リン化合物としては、例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸マンガン、などの無機リン酸塩が挙げられる。
有機系リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−36」、分子量633)、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−24G」、分子量604)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−8」、分子量733)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−4C」、分子量633)、(以上、アデカ社製)、テトラ(トリデシル−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
成分(D)の中でも、樹脂組成物の耐熱変色性を向上させ、さらに流動性をより向上させる観点から、ペンタエリスリトールジホスファイト骨格を有するものが好ましい。
さらに、成分(D)の分子量は、樹脂組成物の耐熱変色性を向上させ、さらに流動性をより向上させる観点から、600〜800であることが好ましい。
このような成分(D)の好ましい例としては、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−36」、分子量633)、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−24G」、分子量604)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−8」、分子量733)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−4C」、分子量633)などが挙げられる。中でも、耐熱変色性および流動性に優れる観点から、PEP−36、PEP−24Gが最も好適に使用できる。
本発明の樹脂組成物における成分(D)の含有量は、質量比で、下記式の範囲内であることが必要である。
(D)/{(A)+(B)+(C)}=0.01/100〜2/100
つまり、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対し、成分(D)の含有量が0.01〜2質量部であることが必要であり、好ましくは0.02〜1.0質量部であり、より好ましくは0.03〜0.5質量部である。2質量部を超えると、押出加工時の滞留安定性が低下し、また得られる樹脂組成物の機械的特性が低下することがある。一方、0.01質量部未満であると、得られる樹脂組成物において、耐熱変色性、流動性および滞留安定性に劣るものとなる。加えて、成形時の金型からの離型性が低下したり、金型ガスベントの詰まりが発生したりして、連続射出成形が困難になるという問題がある。
また、本発明の樹脂組成物が流動性に優れる理由(特に、成分(C)の配合量が少ない場合であっても、十分な流動性向上が見られる理由)、および優れた機械的特性が得られる理由について、モルフォロジー(分散形態)の観点および相溶性の観点から、以下に詳細に説明する。
本発明の成分(C)は、樹脂成分[成分(A)および成分(B)]に対し非相溶な樹脂である。一般的に、非相溶な樹脂系のアロイにおいて、モルフォロジーに強い影響力を持っているのは配合量であり、図1に示すように、配合量の多い樹脂成分が海成分になり、配合量の少ない樹脂成分が島成分となるような海島構造をとる。
通常、島成分は、海成分中に十分分散するまで混練度を高め微分散を行っている。このような樹脂組成物は機械的特性がバランスよく向上する傾向がある。微分散された島成分は、図1に示すように、その直径が数百nm〜1μmもしくはそれ以下となっている。このような微分散は、溶融粘度の差が小さいものである2種類の樹脂を用いて分散性を高める方法、反応性樹脂等の相溶化剤を用いて2種類の樹脂の親和性を高めながら分散性を高める方法を用いることにより、実施することができる。
しかしながら、上記のような方法は、機械的特性の改善には適しているが、流動性を十分に改善させることは困難であった。なぜなら、溶融粘度の差が小さな2種類の樹脂を用いる方法は、そもそも両者の流動特性は同程度であり、特異的に流動性を向上させるには不十分であるからである。さらに、反応性樹脂等の相溶化剤を用いて2種類の樹脂における親和性を高めることは、2種類の樹脂における界面接着力を高め機械的特性を向上させることには寄与するが、特異的に流動性を向上させることは難しいからである。
一方、図2に示す通り、本発明の樹脂組成物のように、相対的に溶融粘度の低い樹脂成分[成分(C)]、および溶融粘度の高い樹脂成分[成分(A)および成分(B)]を用いた場合は、溶融粘度の低い樹脂成分の方が海成分となり易い傾向にある。本発明では、溶融粘度差が非常に大きな2種成分のアロイであるため、成分(C)の配合量を徐々に増やしていった場合、通常のアロイに比べ少ない配合量でも相転移が起き(C)成分が海となる。この(C)成分が海となった場合、成分(C)の流動性が、得られる樹脂組成物の流動性に大きく影響を与える。
つまり、本発明においては、樹脂成分[成分(A)および成分(B)]の流動性を大きく向上させることを目的として、溶融粘度の低い成分(C)を配合させることで、その配合量が少ないものであっても、図1に示されるような島成分とはならず、図2に示すように海成分となることで、少ない配合量で効率的に樹脂組成物の流動性を大きく向上させる。成分(C)の配合が多い場合には、樹脂組成物の系全体の溶融粘度が低下してしまうため、溶融混練時に十分なせん断力を与えることができず、樹脂成分[成分(A)および成分(B)]を微分散することができない。
本発明において、図2のようなモルフォロジーとなる理由には、成分(C)の溶融粘度が樹脂成分[成分(A)および成分(B)]に比べ極端に低いこと、かつ成分(C)の配合比率が小さいことから、溶融混練において十分なせん断効果が働かないためであると推察される。
さらに、本発明においては、アクリロニトリル残基、及び無水マレイン酸を含有する成分(C)を用いることにより、海成分および島成分の界面の接着性を良好とすることができる。その結果、得られる樹脂組成物の機械的特性の低下を抑制することができる。つまり、本発明においては、機械的特性を維持しつつ、流動性が顕著に向上された樹脂組成物を得ることが可能となる。
本発明の樹脂組成物が良好な流動性と機械物性を有する理由について、以下に述べる。
すなわち、本発明の樹脂組成物においては、溶融粘度差が極端に大きな非相溶成分同士のアロイ樹脂であり、この溶融粘度差に起因して、上述の図2のような、ネットワーク状の海島構造を形成する。このモルフォロジーは、樹脂組成物に対して流動性を付与する観点では優れており、成分(C)が海成分となるため、成分(C)の配合量が少ない場合であっても、良好な流動性を有する樹脂組成物を得ることができる。なお、この様なモルフォロジーを有するアロイでは、一般的には機械物性等に懸念があるとされるが、本発明においては、非反応性の残基であるアクリロニトリル残基、及び無水マレイン酸の効果により相溶化が促されており、機械物性の懸念が見られないという効果が奏される。以上のような機構により、本発明の樹脂組成物は、優れた流動性と機械物性を両立した樹脂組成物となるのである。
ここで、射出成形時の流動性を十分に向上させるために、図2に示されるようなネットワーク状の海島構造を取ることを目的とし、成分(C)を構成するモノマーのうち、N−フェニルマレイミド残基の質量比を、10〜45質量%の範囲内とすることが好ましい。45質量%を超えると、成分(C)の溶融粘度が高くなり、成分(C)の含有量が少ない段階においては海島構造の相転移が起きず、つまり、上記のような海島構造を採ることができず、流動性に優れた樹脂組成物を得ることが出来ない。仮に、成分(C)の含有量を増やすことで、海島構造の相転移を発現させても、成分(C)のガラス転移温度が高くなりすぎ、金型内部において短時間で樹脂組成物が固化してしまい、ゲートシール時間(射出工程で金型に溶融樹脂が充填されてからゲートが固化するまでの時間)が短くなる。そのため、樹脂組成物が十分に流動せず、つまり流動性が向上しない。なお、本発明においては、溶融粘度の低い成分(C)を配合することにより、樹脂組成物全体での溶融粘度を低減するという効果だけでなく、金型内部での固化速度を低く抑え、ゲートシール時間を長くすることができるという効果も併せて奏される。
本発明の樹脂組成物は、薄肉成形品を得る際の成形性に優れている。本発明の樹脂組成物が、薄肉成形品を得る際の成形性に優れる理由について、以下に詳細に説明する。
一般に、流動性が良い樹脂組成物は、射出成形時にバリが生じやすいという問題がある。ここで、バリとは、射出成型において、金型が閉じた状態でキャビティプレートとコアプレートの合わせ目からの溶融樹脂の漏れ、入れ子部分、エジェクタピンなどの隙間に溶融樹脂がはみ出す現象である。通常、良流動の樹脂組成物を用いた射出成型では、金型精度が甘い場合には、前記溶融樹脂の漏れ、はみ出しが少なからず発生する。そして、バリを低減することを目的として、流動性が良い樹脂組成物を低圧で射出成形すると、今度は溶融樹脂充填時の充填が不足してヒケが生じる場合があり、良好な成形をおこなうことが困難である。つまり、従来の射出成型法においては、流動性が優れる材料であっても、成形性に劣ってしまう場合がある。
上記のような問題が解消された樹脂組成物として、各種の樹脂と微細フィラーとを含有するナノコンポジット材料が知られている。「無機・有機ハイブリット材料の開発と応用」(監修 梶原鳴雪、株式会社シーエムシー出版発行、第48頁、2000年)によると、ナノコンポジット材料が流動性と低バリ性を両立することができるのは、溶融粘度のせん断速度依存性が高いためであると説明されている。つまり、射出成型での流動初期はせん断速度が高いため良好な流動性を有し、一方、射出成形での流動末端(流動末期)は比較的せん断速度が低くなるため、見かけの溶融粘度が上昇し、バリの低減へとつながるのである。つまり、良流動で、かつバリが低減された樹脂組成物は、微細フィラーの配向を適切な状態に調整したり、微細フィラーの分散性を良好なものにしたりすることにより付与される特性であると説明されている。
これに対して、本発明の樹脂組成物は、上記微細フィラーの配合を行わずに、溶融粘度のせん断速度依存性を高めることができる。そして、高せん断領域においては流動性が向上し、低せん断領域においてはバリを低減することが可能となる。また微細フィラーの配合を行わずに、良流動でかつバリが低減されているため、樹脂組成物の密度を高めること無く、流動性とバリ低減効果を高めた樹脂組成物とすることができる。
本発明の樹脂組成物が、溶融粘度のせん断速度依存性が高くなる理由は明確ではないが、成分(C)が、樹脂成分[成分(A)および成分(B)]よりせん断速度依存性の高い樹脂であることが一因と考えられる。つまり、成分(C)が海成分であることにより、射出成型での溶融樹脂において、低せん断領域(流動末端)では、樹脂成分[成分(A)および成分(B)]が、図2のような状態となるため、バリが抑制されるものと考えられる。
また、本発明の樹脂組成物は図2に示されるように、樹脂成分[成分(A)および成分(B)]の島成分が、微分散されず、数μm〜数10μm程度の大きさであることも一因と考えられる。つまり、このような島成分は、高せん断領域においては、流動効果、ずり応力等により、扁平状となり、樹脂の流動にあたり障害ない形状を取るが、低せん断領域においては図2のような状態となるため、流動にあたって抵抗の大きな形状となり、さらに大きな島径は金型のパーティングライン間隙等への侵入もしづらいため、流動性を抑制する一方で、バリ抑制効果を発現する。
上記溶融粘度のせん断速度依存性が高いことを示す具体的な現象としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。すなわち、一般的な流動性の指標として知られるメルトフローレートなどのような、低せん断領域での流動性確認試験においては、本発明の樹脂組成物は、成分(C)の有無により顕著な変化は見られない。一方、高せん断領域での流動性確認試験として知られるバーフロー流動長のような試験方法においては、成分(C)の有無およびその含有量により、樹脂組成物の流動性が大きく変化する。なお、バーフロー流動長試験は、実際の射出成形と相関が高い試験である。つまり、例えメルトフローレートが低くとも、バーフロー流動長試験が良好であれば、実際の射出成形に供される樹脂組成物は良流動でかつバリが低減された樹脂組成物であると言える。
上記の様な理由により、本発明においては、バリが低減された樹脂組成物を得やすく、結果として、射出成型時に十分に圧力をかけることが可能となりヒケが生じづらい。さらに本発明における成分(C)には、ゲートシール時間を長くする効果を奏するものである。ここで、ゲートシールとは射出された溶融樹脂が流動後冷却され、特にゲート部の樹脂が固化流動停止する現象である。ゲートシールすると、もはや樹脂組成物を流動させることができないため、通常、ゲートシール時間内に射出、保圧等の一連の操作を完了させることが肝要である。本発明においてはゲートシール時間を長くすることが可能となるため、成形条件の自由度が広がり、これにより、保圧を低圧で長時間の設定とし易く、結果としてバリやヒケの発現が抑制された樹脂組成物となる。
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、前記の成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の他に、熱や光に対する安定性の観点から、フェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ビンダードアミン系化合物、イオウ化合物、あるいはこれらの混合物などが含まれていてもよい。
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、成分(C)や成分(D)以外の添加剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、顔料、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、滑剤、有機系充填剤、無機系充填剤など)を含んでもよい。
本発明の樹脂組成物の製造方法について、以下に説明する。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)および必要に応じてその他の添加剤を、公知の混練方法で、均一に混練するものである。例えば、各々の成分を、タンブラーやヘンシェルミキサーを用いて均一にドライブレンドした後、溶融混練押出して、冷却工程、カッティング工程、および乾燥工程に付して、ペレット化するなどの方法が挙げられる。
溶融混練に際しては、単軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等の一般的な混練機を使用することが出来るが、分散性向上の観点から二軸押出機を使用することが好ましい
本発明の製造方法においては、各々の成分を直接混合することができる。ただし、本発明の樹脂組成物は、成分(A)および成分(B)のみからなる樹脂組成物と比較すると、成分(C)に起因して、溶融粘度がはるかに低くなる。そのため、ガラス転移温度(Tg)の高い(A)成分が、未溶融で残留する場合がある。このような場合においては、成分(A)、成分(B)および成分(D)を一旦混合して溶融することにより、予め樹脂組成物を得た後、得られた樹脂組成物に対し成分(C)を混合すればよい。
本発明の製造方法においては、成分(A)と成分(B)との相溶性を高める目的で、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)を混練させるための共重合体として、モノマーの質量比率が、N−フェニルマレイミド/アクリロニトリル/スチレン/無水マレイン酸=10〜45/1〜20/50〜70/0.1〜5となるように調整された共重合体を用いることが好ましい。つまり、成分(C)に対して、無水マレイン酸残基が特定の割合で導入された共重合体を用いることが好ましい。
すなわち、成分(C)に対して無水マレイン酸残基が導入される場合において、成分(C)を構成する全モノマーに対して、無水マレイン酸残基の質量比が、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.2〜3質量%であることがより好ましい。成分(C)を構成する全モノマーに対して、無水マレイン酸残基の0.1質量%未満であると、成分(A)と成分(B)との相溶性が不十分となる場合がある。一方、成分(C)を構成する全モノマーに対して、無水マレイン酸残基の質量比が5質量%を超えると、滞留安定性や機械物性が損なわれる場合がある。
なお、成分(C)に対し、無水マレイン酸残基を導入する方法としては、特に限定されず、例えば、アニリンなどで後イミド化する際に、イミド化率を抑え、無水マレイン酸残基を残す方法などが挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物の製造方法においては、成分(A)と成分(B)との相溶性を高める目的で、成分(C)に対し無水マレイン酸残基を導入することに代えて、成分(C)に対して、無水マレイン酸を混合した混合物を混練してもよい。このような混合物を用いる場合であっても、成分(C)における各々のモノマーの質量比率は、上記の範囲とすることが好ましい。
なお、無水マレイン酸残基や無水マレイン酸は、溶融混練中に分解してしまうため、最終的に得られる樹脂組成物には、残存されない場合がある。
一般的に、成分(C)やN−フェニルマレイミド−スチレン共重合体においては、後イミド化法で重合される場合がある。このような方法では、成分(D)にアニリンが残留する場合がある。アニリンは成分(A)や成分(B)の分解を促進する作用を有するため、本発明の樹脂組成物からは、アニリンを除くことが好ましい。アニリンを除く具体的な手法は、特に限定されず、例えば、樹脂組成物を得る際のコンパウンド時に十分な脱気を行う方法や、カルボジイミド化合物やエポキシ化合物のようなアニリンと反応性を有する化合物を添加し、アニリンを不活性化させる方法が挙げられる。
また、本発明の製造方法においては、成分(C)を混練させるために、アニリン濃度を低減させ、さらに、N−フェニルマレイミド残基の比率を、容易に好ましい範囲とすることができる観点から、以下の(i)や(ii)の手法を採用することが好ましい。このような手法を用いることで、アニリン濃度を低減させ、N−フェニルマレイミド残基の比率を容易に好ましい範囲とすることができ、加えて、成分(C)のTgを下げることができる。それにより、加工温度を低くすることができ、その結果、滞留安定性、耐熱性および流動性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
(i)N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体と、モノマーの質量比率が下記式(V)の範囲内であるアクリロニトリル−スチレン共重合体とを、ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)およびリン系化合物(D)とともに混練する。
アクリロニトリル/スチレン=20/80〜30/70 (V)
(ii)N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)を混練するに際し、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)をモノマーの質量比率が上記式(V)の範囲内であるアクリロニトリル−スチレン共重合体で、あらかじめ希釈する。
上記の手法(i)および(ii)に関し、アクリロニトリル−スチレン共重合体のモノマー比率は、質量比で、アクリロニトリル/スチレン=20/80〜30/70であることが好ましく、21/79〜28/72であることがより好ましい。つまり、アクリロニトリル−スチレン共重合体に含まれるアクリロニトリル残基の質量比が、成分(C)、またはN−フェニルマレイミド−スチレン共重合体との相溶性の観点から、20〜30質量%であることが好ましく、21〜28質量%であることがより好ましい。アクリロニトリル−スチレン共重合体のモノマー比率がこの範囲を外れると、アクリロニトリル−スチレン共重合体とN−フェニルマレイミド−スチレン共重合体、もしくはアクリロニトリル−スチレン共重合体と成分(C)との相溶性が不足し、ガラス転移温度の低いアクリロニトリル−スチレン共重合体のガラス転移点を十分に高めることができない。その結果、樹脂組成物から得られた成形体に、アルミ蒸着を施した場合にシワ状の外観異常が生じる場合がある。
なお、成分(A)、成分(B)、成分(D)、N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体およびアクリロニトリル−スチレン共重合体を混合すると、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体またはN−フェニルマレイミド−スチレン共重合体が、樹脂組成物中に未溶融で残留してしまう場合がある。このような問題を防止するためには、N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体およびアクリロニトリル−スチレン共重合体を混合することにより得られた成分(C)を、予め、成分(A)、成分(B)および成分(D)を含む樹脂組成物に添加する方法を採用することが好ましい。
上述のようにして得られた本発明の樹脂組成物は、任意の成形方法で成形され、本発明の成形体とすることができる。成形方法は特に制限されず、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法などが適用できる。
本発明の成形体は、耐熱性や機械物性に優れるばかりでなく、流動性が顕著に向上されている。そのため、厚さ0.5〜1.5m程度という薄肉で、しかも大型な成型体(例えば、リフレクター、エクステンションリフレクターなど)であっても、好適に成形することができる。また、本発明の成形体は、表面平滑性に優れるため、該成形体の表面にアルミ蒸着を行うことで鏡面とすることができる。
本発明の成形体は、このような特性を生かして、電気・電子分野におけるスイッチやコネクターなどの機構部品やハウジング類、自動車分野におけるアンダーボンネット部品や外装部品、外板部品あるいはリフレクターなどの光学部品、あるいは機械分野におけるギアやベアリングリテーナーなどに好適に使用することができる。特に、リフレクターにおいては、耐熱性や良好なアルミ蒸着適性を生かして、自動車、オートバイ等のヘッドライト、リアランプで用いるエクステンションリフレクター、回転灯で用いるリフレクターとして好適に用いることができる。
さらに、本発明の成形体は、流動性や加工性に優れるのみならず、長期にわたって電球(バルブ)、LEDの発光時の熱に曝された場合において、成形体の変色、変形、アウトガス、および蒸着の剥離などが抑制され、初期の高輝度性能を維持することが可能である。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれらによって限定されるものではない。
以下に、実施例、比較例で実施した評価方法、および実施例、比較例で使用した原材料について記載する。
なお、本明細書において、「ベース樹脂組成物」とは、[(A)+(B)+(C)+(D)]からなる樹脂組成物に対して、(A)/(B)の配合比率が同一でかつ(C)および(D)を含まない樹脂組成物を示す。例えば、実施例1に対しては、比較例3が、ベース樹脂組成物に該当する。
1.評価方法
(1)インヘレント粘度(dl/g)
ISO 1628−1に従って、ウベローデ型粘度管を使用して測定した。つまり、1,1,2,2−テトラクロロエタンを溶媒とし、この溶媒100mlに対して試料1gを添加して得られた溶液(すなわち、濃度1g/dlの溶液)を、温度25℃において測定した。
(2)荷重たわみ温度(℃)
ISO 75−1に従って、厚み4mmの試験片を用いて、荷重1.8MPaで測定した。また試験片にアニール処理を施す場合には、同一形状の試験片において、アニール処理前後について測定を実施した。なお、アニール処理は成形体の内部歪を除く目的で実施し、140℃にて3時間熱風乾燥機内に静置した。
また、アニール処理を施さない場合は、荷重たわみ温度が140℃以上であれば実用に耐えうるものであり、アニール処理を施した場合は、荷重たわみ温度が150℃以上であれば実用に耐えうるものと判断した。また、ベース樹脂組成物との荷重たわみ温度の差が20℃以上であるものは、ベース樹脂組成物の耐熱性が損なわれており、実使用において問題があると判断した。
(3)バーフロー流動長(mm)
実施例および比較例で得られたペレット状の樹脂組成物を、120℃にて12時間以上熱風乾燥した後、射出成型機(FANUC社製、商品名「S2000i−100B」)にて、シリンダ温度320℃、金型温度120℃、射出圧力120MPa、射出時間4秒、設定射出速度100mm/秒で成形した際の試験片の流動長を測定した。金型は厚み1mm、幅20mm、長さ330mmのバーフロー試験金型を用いた。
本発明においては、320℃で成形した際のバーフロー流動長が50mm以下であると、薄肉成形が困難となるか、もしくは成形温度を高く設定する必要があり、ランニングコストに劣り、実使用において問題があると判断した。
(4)バーフロー流動長向上度(%)
上記(3)の測定方法に基づき、下記式によりバーフロー流動長向上度を算出した。これはN−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)を添加することによるバーフロー流動長の変化度合いを示す値である。なお、下記式において、[成分(A)+成分(B)+成分(C)+成分(D)]からなる樹脂組成物のバーフロー流動長およびベース樹脂組成物のバーフロー流動長は、同一成形温度で測定した値である。
バーフロー流動長向上度(%)={[成分(A)+成分(B)+成分(C)+成分(D)]からなる樹脂組成物のバーフロー流動長}/{ベース樹脂組成物のバーフロー流動長}×100
本発明においては、バーフロー流動長向上度が200%以上であるものについては、流動性を向上させる効果が十分あり、実用性があると判断した。
また表1に、成分(A)と成分(B)からなる樹脂組成物の成形温度を上記の(3)に記載されたシリンダ温度(320℃)を370℃へ変更し、バーフロー流動長を測定した際の測定値と、成形温度を320℃から370℃へ変更したことによるバーフロー流動長向上度を示す(後述の比較例1〜14)。なお、成形温度を320℃から370℃へ変更したことによるバーフロー流動長向上度は、下記式により算出される。
(成形温度上昇によるバーフロー流動長向上度)(%)=[(370℃におけるバーフロー流動長)/(320℃におけるバーフロー流動長)]×100
なお、370℃での成形温度は、ポリアリレート樹脂とポリカーボネート樹脂からなる樹脂組成物を、熱分解や顕著な着色等の不具合を発生させることなく、成形性よく成形しうる上限付近の成形温度を意味するものである。
Figure 2013147559
後述の表2〜表6における成分(C)を配合することによるバーフロー流動長向上度(つまり、320℃のシリンダ温度におけるバーフロー流動長向上度)が、表1に記載するベース樹脂組成物の成形温度上昇(つまり、320℃から370℃への温度上昇)によるバーフロー流動長向上度を下回る場合は、成分(C)を添加することによる流動性向上効果が不十分であり、十分な効果を示していないものと判断した。
(5)引張破断伸度(%)
ISO 527−1に従って、厚み4mmの試験片を用いて測定した。
本発明においては、引張破断伸度が10%以上であるものを実用に耐えうるものとした。
(6)曲げ試験
ISO 178に従って、厚み4mmの試験片を用いて、曲げ弾性率(GPa)および曲げ破断歪(%)を測定した。曲げ破断歪は高いほど好ましい値であり、5%以上であることが好ましく、8%以上であることがより好ましく、10%以上であることがより好ましい。
本発明においては、曲げ破断歪が5%以上であるものを実用に耐えうるものとした。
(7)シャルピー衝撃強度
ISO 179−1に従って、測定した。シャルピー衝撃値は高いほど好ましい値であり、5以上であることが好ましい。
(8)滞留安定性試験
(8)−1.
滞留安定性試験に用いられる成形品の作製方法
実施例、比較例にて得られたペレット状の樹脂組成物を、120℃にて12時間以上熱風乾燥した後、射出成型機(FANUC製、商品名「S2000i−100B」)にて、シリンダ温度320℃または350℃、金型温度120℃(金型実温度)に設定し、成形を実施した。金型は、縦200mm、横53mm、深さ8mm平均肉厚1.5mmの箱型成形品を得ることが可能な金型を用いた。
成形は、成形サイクル(10秒間の樹脂射出及び保圧時間、成形品金型内冷却時間および5秒間の成形品取り出し時間の総計)を30秒から開始し、十分なショット数(例えば、20ショット)を重ねたのち30秒ごとに、成型品金型内冷却時間を延ばすことで、成形サイクルを延ばし、最終的に3.0分まで延ばした。それぞれの成形サイクルにおいて、射出圧力、クッション量等の射出成型状況が安定した段階で成形品をサンプリングし、滞留安定性評価用の成形品とした。
なお、成形体は、成形サイクルが長いほど長期間成形温度に曝されることとなる。このような場合においては、滞留安定性が不足する樹脂組成物であると、以下(8)−2.(8)−3.に記載する評価において、目視で確認できるような不具合が生じ、実使用に耐えないものとなる。
(8)−2.
インヘレント粘度保持率(%)(滞留安定性)
まず、成形前のペレット状の樹脂組成物のインヘレント粘度を測定した。次いで、(8)−1に記載の方法にて、成形サイクルが3.0分の際に得られた成形品のインヘレント粘度を測定した。
下記式によりインヘレント粘度保持率(滞留安定性)を算出した。そして、得られた値をもとに、樹脂組成物の滞留安定性を評価した。
インヘレント粘度保持率(%)=[(成形サイクルが3.0分である場合の成形体を構成する樹脂組成物のインヘレント粘度)/(成形前の樹脂組成物ペレットのインヘレント粘度)]×100
本発明においては、インヘレント粘度保持率(滞留安定性)は、得られる成形体の機械物性及び外観の観点から、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい特性である。本試験でインヘレント粘度保持率が80%未満となる場合、本温度での成形は実用的に不可能であると判定した。
(8)−3.成形品外観(滞留安定性)
上記(8)−1.の方法にて、得られた成形体の外観を、各成形サイクルにおいて確認し、シルバー状の外観不良が発生する成形体の成形サイクルを確認した。なお、本発明でのシルバー状の外観不良とは、滞留安定性が不足する樹脂を滞留させた際に、熱分解等に由来するガスが成形機内部で発生し、射出成型時に樹脂組成物成形品のゲート付近から放射状に入るスジを示す。
ただし、滞留安定性の劣る樹脂組成物を本試験に適用させた場合、発泡、成形品の割れ等の極度の成形不良が生じ、通常の工程で成形出来ない場合がある。そのような場合は、表中に、「0.5以下」と記載した。
本発明では、シルバー状の外観不良が生じる成形サイクルが1.5分以上となることが好ましく、2.0分以上となることがより好ましく、3.0分になることがより好ましい。つまり、本試験においては、シルバー状の外観不良が生じる成形サイクルが、1.5分未満であると本温度での成形は実用的に不可能であるものと判定した。
上記8の滞留安定性試験における、インヘレント粘度保持率、及び成形品外観の判定の結果、320℃での成形が実用的に不可能であるものと判定された樹脂組成物は、実用性に欠くものであると判定した。
(9)バリ評価
射出成型により、十分に保圧をかけ、実施例、比較例で得た樹脂組成物をISO527−1に従った、厚み4mmのダンベル状試験片とした。得られたダンベル状試験片の末端に生じるバリの大きさ(単位:μm)を光学顕微鏡にて計測した。バリの大きさは、130μm以下であることが好ましく、120μm以下であることがより好ましい。
(10)ヒケ評価
(9)のバリ評価において、得られたダンベル状成形体の表面平滑性を目視で確認をした。十分に平滑性が高いものを○、末端部分に若干のヒケが生じているものを△、ダンベルの中心部分(ネックとネックの間)にもヒケを生じているものを×とした。
(11)蒸着プレートにおける外観変化温度
得られる成形体に面する部分に対し、8000番の鏡面加工を施された金型を用い、320℃×30秒の成形サイクルとした以外は、上記(8)−1.の方法と同様にして、実施例、比較例で得た樹脂組成物から、厚みが2mmであるプレート状の成形体を得た。得られた成形体の全表面に対し、アルミニウムをアンダーコートすることなく、直接蒸着した。得られたアルミニウム蒸着済みの成形体を、120℃、130℃、140℃および150℃の4種類の温度条件にて、それぞれ2時間熱処理した後、蒸着面を観察して、鏡面にシワ状の乱れが見られるようになる温度を確認した。なお、高温における熱処理であるほど過酷な条件となり、シワ状の乱れが生じやすいものである。
シワ状の乱れが発生する温度が高い温度領域であるほど、蒸着プレートの温度耐久性が高いと判断をし、150℃であってもシワ状乱れが生じないものを、150℃以上とした。150℃以上であるものが最も温度耐久性に優れると判断した。
2.原料
・ポリアリレート樹脂(A)
・(A−1)
ユニチカ社製、商品名「L Powder」
ビスフェノールA、テレフタル酸、イソフタル酸からなり、共重合比が、ビスフェノールA/テレフタル酸/イソフタル酸=50/25/25である。インヘレント粘度が0.54dl/gであり、Tgが195℃である。
・(A−2)
ユニチカ社製、商品名「D Powder」
ビスフェノールA、テレフタル酸、イソフタル酸からなり、共重合比が、ビスフェノールA/テレフタル酸/イソフタル酸=50/25/25である。インヘレント粘度が0.72dl/gであり、Tgが197℃である。
・(A−3)
ビスフェノールA、4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンジフェノール、テレフタル酸(以下TMCと記載する)、イソフタル酸からなり、共重合比がビスフェノールA/TMC/テレフタル酸/イソフタル酸=37.5/12.5/25/25である。インヘレント粘度が0.55dl/gであり、Tgが212℃である。
・ポリカーボネート樹脂(B)
・(B−1)
住友ダウ社製 商品名「カリバー200−3」
ビスフェノールとホスゲンからなるポリカーボネート樹脂であり、インヘレント粘度が0.645dl/gである。
・(B−2)
住友ダウ社製 商品名「カリバー200−30」
ビスフェノールとホスゲンからなるポリカーボネート樹脂であり、インヘレント粘度が0.435dl/gである。
・N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)
・(C−1)
N−フェニルマレイミド/アクリロニトリル/スチレン/無水マレイン酸の共重合比率が27/19/53/1、Tgが145℃、インヘレント粘度が0.70dl/gである。
・N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)を含有させるためのN−フェニルマレイミド−スチレン共重合体
・(C−2)
N−フェニルマレイミド/スチレン/無水マレイン酸の共重合比率が50/48/2、Tgが196℃、インヘレント粘度が0.56dl/gである。
・(C−3)
N−フェニルマレイミド/スチレン/無水マレイン酸の共重合比率が47/51/2、Tgが185℃、インヘレント粘度が0.49dl/gである。
・(C−4)
N−フェニルマレイミド/スチレン/無水マレイン酸の共重合比率が48/45.5/6.5、Tgが196℃、インヘレント粘度が0.56dl/gである。
・N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体を含有させるためのアクリロニトリル−スチレン共重合体
・(C−5)
アクリロニトリル/スチレンの共重合比率が22/78、Tgが100℃、インヘレント粘度が0.45dl/gである。
・(C−6)
アクリロニトリル/スチレンの共重合比率が27/73、Tgが100℃、インヘレント粘度が0.67dl/gである。
・(C−7)
アクリロニトリル/スチレンの共重合比率が40/60、Tgが100℃、インヘレント粘度が0.59dl/gである。
・N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)以外の流動性改質剤
東洋スチレン社製「トーヨースチロールGP G100C」
Tgが90℃、インヘレント粘度が0.6dl/gであるスチレン樹脂である。
・リン系化合物(D)
・(D−1)
ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(アデカ社製、「アデカスタブPEP−36」)
・(D−2)
ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(アデカ社製、「アデカスタブPEP−8」)
・(D−3)
亜リン酸ナトリウム(試薬)
・ヒンダードフェノール系化合物
ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン社製、「Iruganox 1010」)
(実施例1)
ポリアリレート樹脂(A−1)、ポリカーボネート樹脂(B−1)、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C−1)およびリン系化合物(D−1
を、表1に記載された割合で、総仕込み量5kgでドライブレンドした。その後、ロスインウェイト式連続定量供給装置(クボタ社製、商品名「CE−W−1」)を用いて、ベント部を一か所有するスクリュー径26mmの二軸押出機(東芝機械社製、商品名「TEM26SS」)の主供給口に供給した。そして、押出機のバレル温度設定340℃、ベント減圧度−0.099MPa(ゲージ圧)、吐出量20kg/h、スクリュー回転数300rpmで溶融混練し、ダイスからストランド状に引き取った樹脂組成物を温浴槽にて冷却固化し、ペレタイザでカッティングすることにより、ペレット状の樹脂組成物を得た。このペレット状の樹脂組成物を、熱風乾燥機内にて120℃、12時間以上乾燥したものを用いて、各種評価を実施した。評価結果を表2に示す。
Figure 2013147559
実施例2〜38、比較例1〜29
表2〜6に示すように各々の成分の組成を変更した以外は、実施例1の手法と同様の手法により、樹脂組成物のペレットを得、各種評価を実施した。それぞれの評価結果を表3〜6に示す。
なお、表2、および後述の表3〜表6中において、−は、ベース樹脂組成物の例であり、数値の規定上存在し得ない値であるため記載していない。
Figure 2013147559
Figure 2013147559
Figure 2013147559
Figure 2013147559
なお、実施例36については、成分(C)はN−フェニルマレイミド−スチレン共重合体とアクリロニトリル−スチレン共重合体をあらかじめ実施例記載の二軸押出機にてブレンドした組成物を調整し、得られた組成物を用い、実施例1同様の手法にて評価用の樹脂組成物を得た。
また、実施例11〜19、36〜38、比較例23〜26については、成分(C)を含有させる成分として、表4に示す割合で、アクリロニトリル−スチレン共重合体とN−フェニルマレイミド−スチレン共重合体とを用いた。
実施例1〜38で得られた樹脂組成物は、流動性、滞留安定性、機械的特性のバランスに優れるものであった。また、得られた成形体からなる蒸着プレートにおいても、130℃以上という高温でなければ外観変化が起きず良好な結果であった。さらに、バリやヒケの発生も抑制されていた。
実施例7は(C)成分の配合量が40質量部と多いが、その際のベース樹脂の(A)/(B)成分比率が最適ではないため、例えば実施例10のような組成物に比べ、機械物性に劣り、改善の余地を残すものであった。
実施例13は、(C)成分中の無水マレイン酸濃度が最適値ではないため、例えば実施例11のような組成物に比べ、滞留安定性に劣り改善の余地を残すものであった。
実施例18は、(C)成分をアクリロニトリル−スチレン共重合体で希釈しているが、希釈に用いるアクリロニトリル−スチレン共重合体中のアクリロニトリル残基含量が最適値ではないため、滞留安定性や、蒸着品の耐熱性に劣り、改善の余地を残すものであった。
実施例17で得られた樹脂組成物は、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)を含有させるために、N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体と、アクリロニトリル−スチレン共重合体とを用いたものであるが、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体中におけるN−フェニルマレイミド残基の量が比較的少ないものであったため、蒸着プレートを熱処理に曝した際に130℃で外観変化が起きてしまい、改善の余地を残すものであった。
実施例20、21は、(C)成分の配合量が30質量部と多いが、その際のベース樹脂の(A)/(B)成分比率が最適ではないため、例えば実施例22のような組成物に比べ、機械物性に劣り、改善の余地を残すものであった。
実施例26〜28は(C)成分の配合量が30質量部と多いが、その際の際のベース樹脂の(A)/(B)成分比率が最適ではないため、あるいは(B)成分のインヘレント粘度が最適ではないため、例えば、最適なベース樹脂を選択している実施例22や、(C)成分配合量が20質量部の実施例23〜25に比べ機械物性に劣り、改善の余地を残すものであった。
実施例29は、組成比率等は最適であるが、(A)成分のインヘレント粘度が最適値より高いため、例えば実施例9の組成物に比べ流動性に劣り、改善の余地を残すものであった。
実施例35は、リン系化合物(D)が配合されているが、最適の範囲よりは過多であったため、滞留安定性に、改善の余地を残すものであった。
実施例36は、実施例15と同一組成物ではあるが、製造方法が異なり、(C)成分として、N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体をあらかじめブレンドしているため、種々特性において実施例15を上回るものであった。
実施例37で得られた樹脂組成物は、(C)成分中のN−フェニルマレイミド量、アクリロニトリル量が最適値ではないため、例えば実施例11のような組成物に比べ流動性、機械的特性に劣り、改善の余地を残すものであった。
実施例38は、(C)成分をスチレン樹脂で希釈しているため、N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体とスチレン樹脂の相溶性が不足しており、蒸着プレートを熱処理に曝した際に130℃で外観変化が起きてしまい、改善の余地を残すものであった。
比較例1〜14で得られた樹脂組成物は、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)およびリン系化合物(D)が含有されていないものであった。そのため、バーフロー流動長の絶対値が不足しており(つまり、流動性に顕著に劣るものであり)、薄肉成形には適さない樹脂組成物である。
比較例15および22で得られた樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂が用いられておらず、ポリアリレート樹脂のみからなるベース樹脂に対し、成分(C)および成分(D)を適量配合したものである。これらは、バーフロー流動長向上度が高く、流動性が大きく向上していたが、比較例15においては、機械物性が劣った樹脂組成物しか得られなかった。また、比較例22においては、流動長が十分でない。つまり、比較例15および22から、ポリカーボネート樹脂が含有されない場合は、流動性および各種の機械物性のバランスが良好である樹脂組成物は得られないことが明らかである。
比較例16および17で得られた樹脂組成物は、ポリアリレート樹脂(A)/ポリカーボネート樹脂(B)の配合比率が本発明にて規定された範囲外であった。比較例16はポリカーボネート樹脂の配合量が過少であるため、機械物性が不十分であった。また、比較例17はポリアリレート樹脂の配合量が過少であるため、耐熱性が不十分であり、いずれも実用性を欠くものであった。
比較例18および20で得られた樹脂組成物は、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)の含有量が過少であったため、十分な流動性向上効果が発現しないものであった。
比較例19および21で得られた樹脂組成物は、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)の含有量が過多であったため、機械物性が低下していた。さらに、ポリアリレート樹脂が本来有する特性である耐熱性が損なわれているものであった。
比較例23〜25で得られた樹脂組成物は、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体におけるアクリロニトリル残基を含有しないものであったため、また、(C)成分中のN−フェニルマレイミド含量が多いため、滞留安定性や流動性に劣り、ベース樹脂からの流動性向上効果も劣るものであった。
比較例26で得られた樹脂組成物は、アクリロニトリル残基を含有していないため、また、N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体を希釈する成分としてスチレン共重合体を用いているため、(C)成分の相溶性が不十分となり、十分な蒸着品の耐熱性が得られないものであった。
比較例27で得られた樹脂組成物は、リン系化合物(D)の含有量が過少であり、比較例28で得られた樹脂組成物は、リン系化合物(D)の含有量が過多であったため、いずれも滞留安定性に劣るものであった。
比較例29で得られた樹脂組成物は、リン系化合物(D)が配合されず代わりに、ヒンダードフェノール系化合物を用いているため、滞留安定性に劣るものであった。
1:配合量の少ない成分
2:配合量の多い成分
3:本発明の樹脂組成物における成分C
4:本発明の樹脂組成物における樹脂成分[成分(A)および成分(B)]

Claims (7)

  1. ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)、およびリン系化合物(D)を構成成分として含有し、各成分の含有割合が、質量比で、下記式(I)、(II)および(III)を満足することを特徴とする樹脂組成物。
    (A)/(B)=30/70〜90/10 (I)
    (C)/{(A)+(B)+(C)}=10/100〜45/100 (II)
    (D)/{(A)+(B)+(C)}=0.01/100〜2/100 (III)
  2. N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)のモノマー比率が、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)を構成する全モノマーにおいて、質量比で、下記式(IV)を満足することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
    N−フェニルマレイミド/アクリロニトリル/スチレン=10〜45/1〜20/50〜75 (IV)
  3. 請求項1または2に記載の樹脂組成物を含む成形体。
  4. 請求項1に記載の樹脂組成物を製造する方法であって、ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)およびリン系化合物(D)を混練することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
  5. ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)およびリン系化合物(D)を混練するに際し、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)を得るための共重合体として、モノマーの質量比率が下記式(V)を満足するように調整された共重合体を用いることを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物の製造方法。
    N−フェニルマレイミド/アクリロニトリル/スチレン/無水マレイン酸=10〜45/1〜20/50〜75/0.1〜5 (V)
  6. 得られる樹脂組成物中にN−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)を含有させるために、N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体と、モノマーの質量比率が下記式(VI)の範囲内であるアクリロニトリル−スチレン共重合体とを、ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)およびリン系化合物(D)とともに混練することを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物の製造方法。
    アクリロニトリル/スチレン=20/80〜30/70 (VI)
  7. N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)を混練するに際し、N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(C)をモノマーの質量比率が上記式(VI)の範囲内であるアクリロニトリル−スチレン共重合体で、あらかじめ希釈することを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物の製造方法。
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